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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C30B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C30B |
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管理番号 | 1345415 |
審判番号 | 不服2017-14426 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-09-29 |
確定日 | 2018-10-24 |
事件の表示 | 特願2016- 16818「ワイヤーの気相合成」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月 7日出願公開、特開2016-121065〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成23年5月11日(パリ条約による優先権主張2010年5月11日、スウェーデン)を国際出願日とする特願2013-510045号(以下「原出願」という。)の一部を平成28年2月1日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月15日付けで拒絶理由が通知され、平成29年5月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月23日付けで平成29年5月19日付け手続補正書でした補正について補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がされ、これに対し、平成29年9月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2.平成29年9月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成29年9月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。) 「半導体ナノワイヤー(1)を形成する方法であって、 - 気体中に浮遊する触媒種晶粒子(2)を供給すること、 - 形成しようとする前記半導体ナノワイヤー(1)の構成物質を含む気体状前駆物質(3、4)を供給すること、および、 - 高温にされた反応器の中で、少なくとも1つの触媒粒子の表面に少なくとも1つの種結晶を形成すること、および、 - 前記触媒種晶粒子が前記気体中に浮遊している間に、前記気体状前駆物質(3、4)を含む気相合成において、前記形成された種結晶の少なくとも1つから、少なくとも1つの単結晶の半導体ナノワイヤー(1)を、高温にされた反応器の中でエピタキシャルに成長させること、を含み、 前記触媒種晶粒子(2)が、前記気体状前駆物質(3、4)と混合されたエアロゾルとして供給され、 前記半導体ナノワイヤー(1)は、シリコン半導体ナノワイヤー、ゲルマニウム半導体ナノワイヤー、III-V族半導体ナノワイヤー、若しくはII-VI族半導体ナノワイヤーである、 方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、平成28年3月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。(なお、平成29年5月19日付けの手続補正は、平成29年5月23日付けの補正の却下の決定により却下された。) 「ワイヤー(1)を形成する方法であって、 - 気体中に浮遊する触媒種晶粒子(2)を供給すること、 - 形成しようとする前記ワイヤー(1)の構成物質を含む気体状前駆物質(3、4)を供給すること、および、 - 前記触媒種晶粒子が前記気体中に浮遊している間に、前記気体状前駆物質(3、4)を含む気相合成において、前記触媒種晶粒子(2)から前記ワイヤー(1)を成長させること、 を含む方法。」 2.補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ワイヤー」及び「気相合成」の内容について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2004-507104号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 摘示1 「【0146】 ナノワイヤのようなバルクドープ半導体を成長するために、および成長中にそのようなナノワイヤをドープするために、使用できる多くの方法がある。 例えば、レーザ支援触媒成長(LCG)を使用して、SiNW(細長いナノスケール半導体)を合成することができる。図2および3に示すように、所望の材料(例えば、InP)および触媒材料(例えば、Au)で構成された複合ターゲットのレーザ気化で、高温高密度の蒸気が生成され、この蒸気は、緩衝用ガスとの衝突を介して液体ナノクラスタに急速に凝縮する。液体ナノクラスタが所望の相で過飽和になったとき、成長が始まり、反応物が使用可能である限り続く。ナノワイヤが高温ゾーンから出て行くとき、または温度が下がったとき、成長は終わる。Auは、一般に、広い範囲の細長いナノスケール半導体を成長させるための触媒として使用される。しかし、触媒は、Auだけに限定されない。(Ag、Cu、Zn、Cd、Fe、Ni、Co...)のような広い範囲の材料を、触媒として使用することができる。一般に、所望の半導体材料と合金を形成することができるが、この所望の半導体の元素のほかにもっと安定な化合物を形成しない金属はなんでも触媒として使用することができる。緩衝ガスはAr、N2および他の不活性ガスであることができる。ときには、H2と緩衝ガスの混合物を使用して、残留酸素による不要な酸化が起こらないようにすることがある。望ましいときに、反応ガスを導入することもできる(例えば、GaNのためにアンモニア)。このプロセスの重要な点はレーザ融蝕であり、これによって、液体ナノワイヤが生成され、引き続いて、結晶ナノワイヤの大きさが決定され、それの成長方向が方向付けされる。結果として得られるナノワイヤの直径は、触媒クラスタの大きさによって決定され、一方で、触媒クラスタの大きさは、成長条件(例えば、環境圧力、温度、流量...)を制御することで変えることができる。例えば、低圧で、一般に、より小さい直径のナノワイヤが生成される。さらに、直径制御は、一様な直径の触媒クラスタを使用して行うことができる。」 摘示2 「【0150】 ナノワイヤを成長するために使用することができる他の方法は、触媒化学気相成長法(C-CVD)である。C-CVDは、LCGと同じ基本原理を使用し、ただ異なるステップは、C-CVD法では、反応分子(例えば、シランおよびドーパント)が気相分子からのものである(レーザ気化による蒸気源に対立するものとして)。」 摘示3 「【0154】 実施例 ナノワイヤにおけるドーピングおよび電気的輸送 単結晶n型およびp型シリコンナノワイヤ(SiNW)を製造し、電気的輸送測定により特徴を調べた。・・・」 摘示4 「 」 摘示5 「 」 摘示6 「 」 (3)引用発明 摘示1及び摘示4より、「レーザ支援触媒成長(LCG)を使用して、SiNW(細長いナノスケール半導体)を合成する方法について、管状炉内で、所望の材料及び触媒材料で構成された複合ターゲットをレーザ気化させて高温高密度の蒸気を生成し、この蒸気を緩衝用ガスと衝突させて液体ナノクラスタに凝縮し、当該液体ナノクラスタを液体ナノワイヤに成長させて、結晶ナノワイヤを合成する」ことが記載されていると認められるとともに、摘示5より、「当該結晶ナノワイヤの合成が、触媒ナノクラスタ上で材料が核生成し成長する」ことによりなされるものと認められる。 ここで、上記「所望の材料」はシリコン(Si)といえ、摘示3より、得られたシリコンナノワイヤ(SiNW)が単結晶であるものと認められる。 上記より、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「レーザ支援触媒成長(LCG)を使用して、シリコンナノワイヤ半導体を合成する方法であって、管状炉内で、シリコン及び触媒材料の高温高密度の蒸気を生成し、この蒸気を緩衝用ガスと衝突させてシリコン及び触媒の液体ナノクラスタに凝縮し、この液体ナノクラスタを液体ナノワイヤに成長させ、この液体ナノワイヤにおいて、触媒ナノクラスタ上でシリコンを核生成及び成長させてシリコンナノワイヤ半導体の単結晶とする、方法。」 (4)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「管状炉」は、本件補正発明における「高温にされた反応器」に相当し、以下同様に、「シリコン」が「半導体ナノワイヤー(1)の構成物質」、「緩衝用ガス」が「気体」、「触媒ナノクラスタ」が「触媒(種晶)粒子」、「核」が「種結晶」、にそれぞれ相当し、核から単結晶への「成長」は「エピタキシャル成長」といえるから、本件補正発明のうち、 「半導体ナノワイヤー(1)を形成する方法であって、 - 気体中に浮遊する触媒種晶粒子(2)を供給すること、 - 形成しようとする前記半導体ナノワイヤー(1)の構成物質を供給すること、および、 - 高温にされた反応器の中で、少なくとも1つの触媒粒子の表面に少なくとも1つの種結晶を形成すること、および、 - 前記触媒種晶粒子が前記気体中に浮遊している間に、前記形成された種結晶の少なくとも1つから、少なくとも1つの単結晶の半導体ナノワイヤー(1)を、高温にされた反応器の中でエピタキシャルに成長させること、を含み、 前記半導体ナノワイヤー(1)は、シリコン半導体ナノワイヤー、である、 方法。」 の点は、引用発明と一致し、以下の点で両者は相違する。 (相違点) 本件補正発明では、半導体ナノワイヤー(1)の構成物質が「気体状前駆物質」として供給され、「前記触媒種晶粒子(2)が、前記気体状前駆物質(3、4)と混合されたエアロゾルとして供給され」、「前記気体状前駆物質(3、4)を含む気相合成において」単結晶をエピタキシャルに成長させるのに対し、引用発明は、シリコンが高温高密度の蒸気として供給され、液相ナノワイヤにおいて触媒ナノクラスタ上に単結晶を成長させる点。 なお、請求人は審判請求書において、引用発明のナノワイヤの成長は、高温の反応器の中で行われるものではないと主張しているが、摘記4に記載された装置構成からみて、引用発明におけるナノワイヤの合成は全て管状炉内で行われていると認められるから、該主張は採用できない。 (5)相違点についての判断 摘示2及び摘示6には、ナノワイヤの成長の他の方法として、触媒化学気相成長法(C-CVD)が記載され、C-CVD法について、LCGと同じ基本原理であるが、蒸気に代えてシランなどの反応分子を使用し、気相分子からの成長をすることが記載されている。 してみると、引用発明において、シリコンを蒸気ではなく、気体状前駆物質であるシランとして供給し、該シラン中で触媒ナノクラスタを生成させてエアロゾルとし、該シランを含む気相合成において単結晶を成長させることは、引用文献4の記載から、当業者が容易になし得た製法変更といえる。 そして、本願明細書【0021】には「ナノワイヤーに限定されないが、本発明の方法によって製造される半導体ナノワイヤーは、従来のプレーナ処理に対して、いくつかの利点を備えている。プレーナ技術を用いて組み立てた半導体装置には、連続層間における格子不整合等といった、いくらかの制約がある一方で、本発明のナノワイヤー形成によれば、連続する小片またはシェル中の半導体材料の選択の自由度がさらに増し、それゆえに、ナノワイヤーのバンド構造を調整できる可能性がさらに増す。また、場合によっては、ナノワイヤーはプレーナ層より欠陥密度が低く、半導体装置中のプレーナ層を少なくとも部分的にナノワイヤーで置き換えることによって、欠陥に関する制約を減らすことができる。さらに、ナノワイヤーによって、さらなるエピタキシャル成長のためのテンプレートとして欠陥密度の低い表面が提供される。基材とワイヤーの間の格子不整合は、基材ベースの合成に比べて、考慮しなくてもよい程度である。」と記載され、上記相違点に係る構成を有する本件補正発明により、半導体材料の選択の自由度の増加、欠陥密度の低下という効果が奏されるものと認められるが、これらは、プレーナ層に対するナノワイヤーの効果であって、引用発明においても同様に奏されるものと解され、上記相違点により予測を超える顕著な効果が奏されるといえない。 (6)小括 したがって、本件補正発明は、引用文献4に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替え て準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成29年9月29日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年3月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の1(2)に記載のとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4を含む下記の引用文献1?4に記載された発明であり、また仮に引用文献4を含む引用文献1?4に記載された発明でないとしても、引用文献4を含む引用文献1?4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.S. H. Kim et al.,Understanding ion-mobility and transport properties of aerosol nanowires,J. Aerosol Sci.,英国,Elsevier Ltd.,2007年8月1日,Vol. 38,pp. 823-842 引用文献2.特表2007-527844号公報 引用文献3.米国特許出願公開第2004/0109814号明細書 引用文献4.特表2004-507104号公報 3.引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4の記載事項は、前記第2の2(2)に記載したとおりであり、第2の2(3)に記載したとおりの引用発明が記載されている。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2の2で検討した本件補正発明から、「高温にされた反応器の中で、少なくとも1つの触媒粒子の表面に少なくとも1つの種結晶を形成すること」、「前記形成された種結晶の少なくとも1つから、少なくとも1つの単結晶の半導体ナノワイヤー(1)を、高温にされた反応器の中でエピタキシャルに成長させること」、「前記触媒種晶粒子(2)が、前記気体状前駆物質(3、4)と混合されたエアロゾルとして供給され、前記半導体ナノワイヤー(1)は、シリコン半導体ナノワイヤー、ゲルマニウム半導体ナノワイヤー、III-V族半導体ナノワイヤー、若しくはII-VI族半導体ナノワイヤーである」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(4)、(5)に記載したとおり、引用文献4に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、斯かる本件補正発明を包含する本願発明も、引用文献4に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の理由について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-05-24 |
結審通知日 | 2018-05-29 |
審決日 | 2018-06-11 |
出願番号 | 特願2016-16818(P2016-16818) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C30B)
P 1 8・ 575- Z (C30B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塩谷 領大 |
特許庁審判長 |
大橋 賢一 |
特許庁審判官 |
新居田 知生 馳平 憲一 |
発明の名称 | ワイヤーの気相合成 |
代理人 | 片山 健一 |
代理人 | 大野 聖二 |
代理人 | 津田 理 |