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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1345438
審判番号 不服2018-3758  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-15 
確定日 2018-11-13 
事件の表示 特願2016-116533「情報入力システム、媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月17日出願公開、特開2016-194936、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)11月22日(優先権主張 平成22年11月22日)を国際出願日とする特願2012-545774号の一部を平成25年6月3日に新たな特許出願とした特願2013-117228号の一部を平成28年6月10日に新たな特許出願(特願2016-116533号)としたものであって、平成29年4月10日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年8月17日付けで手続補正がされたが、平成29年8月17日付け手続補正が平成29年12月15日付けで却下されるとともに同日付で拒絶査定がなされ、これに対して平成30年3月15日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年7月5日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年9月7日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1、3に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2 本願請求項1-14に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.国際公開第2010/002147号

理由3 本願請求項1-14に係る発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1-14に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2010/002147号(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2010-198799号公報
3.特開2002-164021号公報
4.特開2007-279356号公報

第4 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、平成30年9月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
静電容量方式のタッチパネルと、
該タッチパネルを入力手段とする情報処理手段と、
該タッチパネルに載置される薄板状の媒体と、
からなる情報入力システムであって、
前記薄板状の媒体は、
該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含み、
前記タッチパネルと接面されるように形成された導体部と、前記線状に形成された導電体と、が電気的に接続されており、
前記タッチパネルは、前記媒体の、前記線状に形成された導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記線状に形成された導電体を介して、前記導体部を感知し、
前記情報処理手段は、前記感知された導体部の形状、大きさ、配置または静電容量の大きさの違いで、媒体情報を認識することを特徴とする情報入力システム。」

本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明5は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「媒体」の発明である。
本願発明6-12は、本願発明5を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。原文省略。訳文は特表2011-527466号公報を参照して当審訳。以下同様。)。

(1) 段落【30】(上記公表公報の段落【0024】を参照。)
(訳:【30】
接触カード100の裏面に形成される突起は、図2に点線で表示された領域の中の一つの領域に形成されることもでき、複数の領域に形成されることもできるなど、多様な領域に形成されることができる。即ち、接触カード100の裏面の突起110_1、110_2は接触カード100の前面に印刷された印刷情報によって予め決められた方式で所定の領域に形成される。それぞれの印刷情報及び印刷情報に関するそれぞれの特性情報別に突起が形成される領域が異なり、突起が形成される位置によって接触カード100の特性情報が決められる。一方、突起が形成される領域の大きさは、タッチスクリーンが認識できる解像度及び認識プログラムによって多様に決められることができる。)

(2) 段落【38】-【39】(上記公表公報の段落【0032】-【0033】を参照。)
(訳:【38】
図6は本発明の実施形態によるタッチスクリーンを利用した接触カード認識システムのブロック図である。
【39】
本発明の実施形態による接触カードを利用した接触カード認識システムは、接触カード100、タッチスクリーン200、判読部300、制御部400、コードデータベース520、及び接触カードの特性データベースを保存している保存部500を含み、さらに、入力部600または補助スクリーン280をさらに含むことができる。)

(3) 段落【41】-【42】(上記公表公報の段落【0035】-【0036】を参照。)
(訳:【41】
突起が形成された接触カード100がタッチスクリーン200に載せられると、タッチスクリーン200は接触カードの突起を感知して突起に対応する領域に該当する位置情報を生成して判読部300に提供する。前記位置情報は接触カード100で突起が形成された位置を横及び縦軸位置を示す情報で、予め決められた基準点に座標情報として表現されることもできる。突起が形成された位置が複数である場合、位置情報は全ての突起が形成された位置に対する情報を含む。
【42】
判読部300は接触カード100の突起の位置情報に基づいてコードデータベース520を検索し、コードデータベース520から接触カード突起の位置情報によるコード情報を生成する。ここで、コードデータベース520は突起の位置情報別にそれに対応するコード情報を保存しているデータベースである。)

(4) 段落【88】-【89】(上記公表公報の段落【0082】-【0083】を参照。)
(訳:【88】
本発明は圧力感応式タッチスクリーン、即ち、圧力抵抗膜方式によるタッチスクリーンを例に説明しているが、静電容量方式(Capacitive Overlay)または電子誘導方式など多様な方式のタッチスクリーンに適用されることができる。
【89】
ただ、前記静電容量方式のタッチスクリーンが適用される場合、前記接触カード100の前面は金属のような導電性物質からなるか、コーティング(Coating)され、裏面は非導電性物質から形成される。この時、前記突起は金属のような導電性物質として導電性物質である前記前面から連結されて前記裏面に突出されるように形成される。)

よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「接触カード100の裏面の突起110_1、110_2は接触カード100の前面に印刷された印刷情報によって予め決められた方式で所定の領域に形成され、突起が形成される位置によって接触カード100の特性情報が決められ、
接触カードを利用した接触カード認識システムは、接触カード100、タッチスクリーン200、判読部300を含み、
突起が形成された接触カード100がタッチスクリーン200に載せられると、タッチスクリーン200は接触カードの突起を感知して突起に対応する領域に該当する位置情報を生成して判読部300に提供し、
判読部300は、接触カード突起の位置情報によるコード情報を生成し、
圧力抵抗膜方式によるタッチスクリーンに替えて、静電容量方式または電子誘導方式など多様な方式のタッチスクリーンに適用されることができ、
前記静電容量方式のタッチスクリーンが適用される場合、前記接触カード100の前面は金属のような導電性物質からなるか、コーティング(Coating)され、裏面は非導電性物質から形成され、この時、前記突起は金属のような導電性物質として導電性物質である前記前面から連結されて前記裏面に突出されるように形成される、
接触カード認識システム。」

2 引用文献2-4
(1) 当審拒絶理由に引用した引用文献2には、図面とともに、段落【0001】、【0005】に、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、電気回路、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途に用いることができる透明導電性材料に関するものである。」

「【0005】
一方、透明導電性材料としては、透明樹脂フィルム上に、金属細線をメッシュパターン状に形成し、金属細線の線巾やピッチ、さらにはパターン形状などを調整することにより、高い光線透過率を維持し、高い導電性を付与する方法もある。」

これらの記載から、引用文献2には、電気回路、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途で用いられる透明導電性材料において、メッシュパターン状に形成した金属細線を採用することで、光透過率を維持しつつ、高い導電性を付与することが記載されていると認定できる。

(2) 当審拒絶理由に引用した引用文献3には、図面とともに、段落【0001】、【0053】に、以下の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外部電極を備えた蛍光ランプおよびこれを用いた照明装置に関する。」

「【0053】すなわち、外部電極は、帯(リボン)状や、メッシュ状、波形状または櫛歯状などの異形形状をなしていることが許容される。また、一対の外部電極間の間隔は、平行な一定距離であってもよいし、管軸方向に沿って規則的に変化していてもよい。また、一対の外部電極は、箔などの導電性薄膜により形成されているものが好適であるが、要すれば金属細線を編んだメッシュ構造体、金属板のプレス打ち抜き成形体などであってもよい。」

これらの記載から、引用文献3には、照明装置の蛍光ランプの外部電極において、メッシュ構造の金属細線を採用できることが記載されていると認定できる。

(3) 当審拒絶理由に引用した引用文献4には、図面とともに、段落【0001】-【0005】、【0012】、【0015】に、以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、表面全体が熱可塑性フィルムで覆われた可撓性を有する画像表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示媒体として、紙媒体や電子ディスプレイデバイスの他に、電子ディスプレイと紙の両者の長所を併せ持った電子ペーパーまたはデジタルペーパーと呼ばれる画像表示媒体が注目されている。
【0003】
また、この様な電子ペーパーにより表示機能を付加したICカードの開発も行われており、このICカードを外的ダメージから守るために、熱圧着により表面に熱可塑性フィルムを形成する技術がある。
【0004】
図10(a)、(b)は、従来の熱可塑性フィルムを有する画像表示媒体(電子ペーパー付きICカード)の断面図である。
【0005】
画像表示媒体100は液晶等からなる表示層101と、表示層101を挟んで対向配置された透明な第1および第2の薄膜電極102、103を有する透明な第1および第2の基板104、105と、第1および第2の薄膜電極102、103表面に形成された外部と電気的な接続を行うための第1および第2の取出電極106、107(第2の取り出し電極は図示しない)と、構成部分全体を覆うようにして表面に形成された、第1および第2の取出電極106、107に外部から接続を行うための取出孔108を有する熱可塑性フィルム200と、を有して概略構成される。」

「【0012】
上記本発明の一態様によれば、前記第1および第2の取出電極と前記第1および第2の薄膜電極とが直接接合されずに、前記第1および第2の中間電極を介して接続されており、前記第1および第2の中間電極は前記第1および第2の取出電極よりも剛性、または硬度が低いため、前記画像表示媒体に曲げ、捩り等の変形を加えた場合に、前記第1および第2の中間電極が変形時の応力を分散し、前記第1および第2の薄膜電極におけるクラックの発生が抑えられる。それにより、前記画像表示媒体に曲げ、捩り等の変形を加えても画像表示品質を保つことが可能となる。前記剛性は、例えば、曲げ剛性、捩り剛性である。」

「【0015】
前記第1および第2の中間電極は、シート状電極、複数の帯状電極、複数の線状電極からなるものであってもよい。また、メッシュ構造、不織布構造を有するものであってもよい。」

これらの記載から、引用文献4には、電子ペーパー付きICカードの表示部の薄膜電極と外部接続用の取出電極とを「中間電極」を介して接続することで、曲げ、捻り等の変形による「薄膜電極」のクラック発生を防ぎ、画像表示品質を保つものにおいて、「中間電極」に「メッシュ構造」を採用できることが記載されていると認定できる。

(4) 上記引用文献2-4の各記載から、一般に、導電体として、金属細線等のメッシュ構造のものが、周知技術であると認められる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比

本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「静電容量方式のタッチスクリーン」は、本願発明1の「静電容量方式のタッチパネル」に相当する。

イ 引用発明の「判読部300」は、「接触カード突起の位置情報によるコード情報を生成」するから、本願発明1の「該タッチパネルを入力手段とする情報処理手段」に相当する。

ウ 引用発明の「接触カード100」は、本願発明1の「該タッチパネルに載置される薄板状の媒体」に相当する。

エ 引用発明の「接触カードを利用した接触カード認識システム」は、本願発明1の「情報入力システム」に相当する。

オ 引用発明の「前記静電容量方式のタッチスクリーンが適用される場合、前記接触カード100の前面は金属のような導電性物質からなるか、コーティング(Coating)され」ることは、本願発明1の「前記薄板状の媒体は」、「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含」むことと、「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、導電体を含」む点で共通するといえる。

カ 引用発明の「突起」は、「前記突起は金属のような導電性物質」であるから、本願発明1の「前記タッチパネルと接面されるように形成された導体部」と「導体部」である点で共通するといえる。
よって、引用発明の「前記突起は金属のような導電性物質として導電性物質である前記前面から連結されて前記裏面に突出されるように形成される」ことは、本願発明1の「前記タッチパネルと接面されるように形成された導体部と、前記線状に形成された導電体と、が電気的に接続されて」いることと、「導体部と、前記導電体と、が電気的に接続されて」いる点で共通するといえる。

キ 引用発明の「突起が形成された接触カード100がタッチスクリーン200に載せられると、タッチスクリーン200は接触カードの突起を感知して突起に対応する領域に該当する位置情報を生成して判読部300に提供し」ていることは、ここで、接触カード100をタッチスクリーン200に載せる操作は、「指」によって行われることが明らかであることを考慮すると、本願発明1の「前記タッチパネルは、前記媒体の、前記線状に形成された導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記線状に形成された導電体を介して、前記導体部を感知」することと、「前記タッチパネルは、前記媒体の、前記導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記導電体を介して、前記導体部を感知」する点で共通するといえる。

ク 引用発明の「判読部300は、接触カード突起の位置情報によるコード情報を生成し」ていることは、「前記情報処理手段は、前記感知された導体部の形状、大きさ、配置または静電容量の大きさの違いで、媒体情報を認識すること」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

<一致点>
「静電容量方式のタッチパネルと、
該タッチパネルを入力手段とする情報処理手段と、
該タッチパネルに載置される薄板状の媒体と、
からなる情報入力システムであって、
前記薄板状の媒体は、
該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、導電体を含み、
導体部と、前記導電体と、が電気的に接続されており、
前記タッチパネルは、前記媒体の、前記導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記導電体を介して、前記導体部を感知し、
前記情報処理手段は、前記感知された導体部の形状、大きさ、配置または静電容量の大きさの違いで、媒体情報を認識することを特徴とする情報入力システム。」

[相違点1]
「導電体」の形状について、本願発明1では、「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含み」、「導体部と、前記線状に形成された導電体と、が電気的に接続されており」、「前記線状に形成された導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記線状に形成された導電体を介して、前記導体部を感知し」ているのに対して、引用発明では、「前記接触カード100の前面は金属のような導電性物質からなるか、コーティング(Coating)され」るものであって、「線状に形成された」ものではない点。

[相違点2]
「導体部」の形状について、本願発明1では、「前記タッチパネルと接面されるように形成された導体部」であるのに対して、引用発明の「突起」は、「前記静電容量方式のタッチスクリーンが適用される場合、・・・(中略)・・・、この時、前記突起は金属のような導電性物質として導電性物質である前記前面から連結されて前記裏面に突出されるように形成される」ものであって、「前記タッチパネルと接面されるように形成された」ものではない点。

(2) 当審の判断
上記[相違点1]について検討する。
引用発明、及び、引用発明を認定した引用文献1は、主に「圧力抵抗膜方式によるタッチスクリーン」に係るものである。引用文献1の段落【88】には「多様な方式のタッチスクリーン」にも適用可能であることが記載され、続く段落【89】には「静電容量方式のタッチスクリーン」に適用した場合、「前記接触カード100の前面は金属のような導電性物質からなるか、コーティング(Coating)され」ること、すなわち、カードの前面を金属等の導電性物質とすることが記載されるのみであって、本願発明1のように「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含」む構成は記載も示唆も無い。
一方、本願発明1は、「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含み」、「前記タッチパネルは、前記媒体の、前記導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記導電体を介して、前記導体部を感知し」、「前記情報処理手段は、前記感知された導体部の形状、大きさ、配置または静電容量の大きさの違いで、媒体情報を認識する」構成を備えるから、本願発明1において、「導体部」の静電容量を検出して、「導体部」の形状等を感知するための技術的な前提として、「線状に形成された導電体」側の静電容量は、「導体部」の形状等の感知に影響せず、原則的に感知されないものと理解するのが自然である。
すなわち、本願発明1は、静電容量方式のタッチパネルに載置される媒体の表面が指でタッチされた場合に、「線状に形成された導電体」の静電容量が原則的に感知されないことによって、「導体部」の形状等を確実に感知するという格別な効果を奏するものであると理解できる。
以上から、たとえ引用文献2-4の各記載から、一般に、導電体として、金属細線等のメッシュ構造のものが、周知技術であるとしても、引用発明の静電容量方式のタッチパネルに載置される媒体に対して、上記周知技術を採用することで、上記[相違点1]に係る、「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含み」、「導体部と、前記線状に形成された導電体と、が電気的に接続されており」、「前記線状に形成された導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記線状に形成された導電体を介して、前記導体部を感知し」ている構成とすることは、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
念のため、引用文献2-4に記載された技術的事項を個別に検討しても、
引用文献2には、電気回路、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途で用いられる透明導電性材料において、メッシュパターン状に形成した金属細線を採用することで、光透過率を維持しつつ、高い導電性を付与することが記載され、
引用文献3には、照明装置の蛍光ランプの外部電極において、メッシュ構造の金属細線を採用できることが記載され、
引用文献4には、電子ペーパー付きICカードの表示部の薄膜電極と外部接続用の取出電極とを「中間電極」を介して接続することで、曲げ、捻り等の変形による「薄膜電極」のクラック発生を防いで、画像表示品質を保つものにおいて、「中間電極」に「メッシュ構造」を採用できることがそれぞれ記載されているものの、
静電容量方式のタッチパネルに載置される媒体において、「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含み」、「導体部と、前記線状に形成された導電体と、が電気的に接続されており」、「前記線状に形成された導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記線状に形成された導電体を介して、前記導体部を感知し」ている構成を採用することについては、いずれの文献にも記載も示唆も無い。

また、本願発明1の上記[相違点1]に係る、静電容量方式のタッチパネルに載置される媒体において、「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含み」、「導体部と、前記線状に形成された導電体と、が電気的に接続されており」、「前記線状に形成された導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記線状に形成された導電体を介して、前記導体部を感知し」ている構成とすることが、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 請求項2-12について
本願発明2-12も、本願発明1の上記[相違点1]に係る、静電容量方式のタッチパネルに載置される媒体において、「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含み」、「導体部と、前記線状に形成された導電体と、が電気的に接続されており」、「前記線状に形成された導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記線状に形成された導電体を介して、前記導体部を感知し」ている構成と、同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成30年9月7日付けの補正により補正された、請求項1-12は、静電容量方式のタッチパネルに載置される媒体において、「該媒体の少なくとも一部の表面または内部に、線状に形成された導電体を含み」、「導体部と、前記線状に形成された導電体と、が電気的に接続されており」、「前記線状に形成された導電体が形成された領域の表面が指によりタッチされると、前記線状に形成された導電体を介して、前記導体部を感知し」ているという技術事項を有するものであり、当該技術的事項は、原査定における引用文献A(引用文献1)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-12は、原査定における引用文献Aに記載された発明ではなく、また、当業者であっても、原査定における引用文献A及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

また、平成30年9月7日付けの補正により補正された、請求項1-12において、請求項1の「前記媒体情報」が「媒体情報」と補正され、請求項2の「前記媒体面」が「前記媒体の媒体面」と補正され、請求項6(補正後の請求項5及び6に対応。)の「前記導電体部」が「前記線状に形成された導電体」と補正され、「前記媒体情報」が「媒体情報」と補正され、「該情報処理装置」が削除され、「該媒体面」が「該媒体の媒体面」と補正された結果、記載不備の拒絶の理由は解消した。

したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-10-29 
出願番号 特願2016-116533(P2016-116533)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松田 岳士間野 裕一  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 情報入力システム、媒体  

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