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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
管理番号 1345450
審判番号 不服2017-5901  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-25 
確定日 2018-10-25 
事件の表示 特願2015-120733号「車載機器接続用アダプタ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月10日出願公開、特開2015-221663号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年9月15日に出願した特願2010-207344号(以下「原出願」という。)の一部を平成27年6月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 6月24日付け:拒絶理由通知
同年 8月 2日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 1月23日付け:拒絶査定
同年 4月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年12月13日付け:拒絶理由通知
平成30年 2月13日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月25日付け:拒絶理由通知(最後の拒絶理由通知。以下
「当審拒絶理由通知」という。)
同年 6月26日 :意見書、手続補正書の提出

第2 平成30年6月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年6月26日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成30年6月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、請求項1について補正前後の記載を示すと以下のとおりである。

(1)補正前の請求項1

「ケース本体と、
そのケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部と、
前記一面と反対の面側から外部に引き出される接続ケーブルと、
前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部と、
を備え、
前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための開口部を設け、
前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部から外部に引き出される一方、前記接続部はコネクタとし、前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けたことを特徴とする車載機器接続用アダプタ。」

(2)補正後の請求項1(下線は補正箇所を示し、本件補正において付されたとおりである。)
「ケース本体と、
そのケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部と、
前記一面と反対の面側から外部に引き出される電源線を備える接続ケーブルと、
前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部と、
を備え、
前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための開口部を設け、
前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位に設けられた孔部内を通って前記電源線が前記ケース本体から引き出され、前記接続ケーブルは前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢をとる一方、前記接続部はコネクタとし、前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の前記ケース本体の左壁側に沿って設けたことを特徴とする車載機器接続用アダプタ。」

2 補正の適否
(1)新規事項の追加の有無、特別な技術的特徴の変更の有無及び補正の目的の適否について
ア 本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「接続ケーブル」について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0041】?【0042】の記載等を根拠に「電源線を備える」と限定し、「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部から外部に引き出される」としていたものを、当初明細書等の段落【0033】、【0041】、【0048】の記載及び図1、3、14、18の図示内容等を根拠に「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位に設けられた孔部内を通って前記電源線が前記ケース本体から引き出され、前記接続ケーブルは前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢をとる」と限定するものである。
イ また、本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であって、当審拒絶理由通知の拒絶の理由に示す事項である「開口部」について、「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けた」としていたものを、当初明細書等の段落【0028】の記載等を根拠に「前記ケース本体の前記反対側の面の前記ケース本体の左壁側に沿って設けた」と記載を明瞭化するものである。

ウ 本件補正は上記ア、イのとおり、新規事項を追加するものではない。また、本件補正は、特別な技術的特徴を変更(シフト補正)をしようとするものではないことも明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものであり、また、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(上記アの補正)、又は当審拒絶理由通知の拒絶の理由に示す事項についての特許法第17条の2第5項第4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する(上記イの補正)。

エ そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(2)独立特許要件
ア 本件補正発明及び明細書の記載事項
本件補正発明は、上記「1(2)」に記載したとおりのものである。
また、本件補正後の本願の願書に添付した明細書(以下「本願補正明細書」という。)における発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。また、以下「A1」?「C1」の記載事項は、それぞれ「記載事項A1」?「記載事項C1」という。)。

A1「【0005】
OBD2コネクタから出力される車両情報は、車両の車速、インジェクション噴射時間、吸入空気量等多種多様なものがあり、故障診断以外にも使える有用な情報がある。この車両情報を、ナビゲーション装置、燃費計、ドライブレコーダ、GPSロガー、その他の各種の車載機器に取り込むことで、車載機器の性能・機能の向上をさせることができる。
【0006】
特許文献1の図1中の符号5で示されるように、矩形状のケース本体の一端面側(便宜上、前面)が開口して、車両のOBD2コネクタに連結するコネクタ部となり、その反対側の背面側にケーブルが連結され、そのケーブルは、係る背面と直交する方向に延びるように配置される。
【0007】
車両のOBD2コネクタは、運転席側の足下付近の右側・左側・中央などの各位置や、ステアリング右脇パネル等各種の位置に設定され、比較的奥まった場所などにある。故障診断装置のように、一時的に車両のOBD2コネクタに接続して使用する場合には、そのように奥まった場所のOBD2コネクタに対して上記のアダプタを連結し、アダプタの背面に接続されるケーブルを運転席側に向かって引き出すようにすることで、当該故障診断装置を車内の広い空間に持ってくることができるので問題はない。しかし、上述したように、OBD2コネクタから出力される車両情報を車載機器に取り込む使用形態を考えた場合、特許文献1等に示される従来の構造では、以下に示す問題を生じる。
【0008】
すなわち、車載機器は、運転中に使用するものが多いので、車載機器とOBD2コネクタとを接続ケーブルで連結した状態で運転することになる。上述したように、OBD2コネクタが運転席の足回り付近に配置されることからも、運転中に運転者の足に引っかかることを防止する必要があるという課題がある。また、運転席前方側の奥まった箇所に装着されたアダプタの背面から真っ直ぐに延びてくる接続ケーブルは、好ましい配線レイアウトを容易にとることができないという課題がある。
【0009】
また、OBD2コネクタの設置位置は、車種により異なるとともに、そのOBD2コネクタに連携させる車載機器もその機種や使用者の好み等により車室内での設置位置が異なる。その結果、OBD2コネクタ(アダプタ)と、車載機器の相対的な設置位置関係も多種になる。そのような多種のパターンに対し、接続ケーブルの配線を容易に行いたいという課題もある。」

B1「【0041】
また、外部とのインタフェースとなる接続コネクタ部21は、第2プリント配線基板16b上に実装し、平型ヒューズ18を装着するヒューズ差込部24は、第1プリント配線基板16a上に実装している。このヒューズ差込部24は、箱状の本体の奥側に平型ヒューズ18の2本の端子を差し込むコネクタを備え、コネクタの他端側すなわち本体の外側は、図5に示すように第1プリント配線基板16aに半田付けされ固定されている。この他端側の一方のピン24aは、端子ピン13dのうち、車両バッテリーからの電源が供給される端子に第1プリント配線基板16a上の配線パターンによって電気的に接続されている。他端側の他方のピン24bは、第1プリント配線基板16a上に設けた電源回路に接続され、電源回路からプリント配線基板16a,16b上の各部及び接続ケーブル15の電源線へ電源を供給している。このようにすると、小さいケース本体10の空間内に効率よく各部品を配置することができる。また、車両側からの電源ラインは、接続端子部13を経由してケース本体10内の回路に導かれるので、当該電源ラインに近い場所に平型ヒューズ18を配置することができ、各回路素子の保護が適切に行える。
【0042】
さらに本実施形態では、接続ケーブル15は、電源線として2本(+,アース)、信号線として2本(送信用,受信用)の4芯(図示省略)としている。また、信号線はツイスト線として、送信用と受信用でそれぞれ2本ずつ使用し、合計6芯とすることもできるしその他の形態も可能である。ケース本体2の外側に引き出された4芯の外周は、保護チューブ15aで覆われて断線等しないように保護される。その4芯の先端は、接続ブッシュ14内を貫通してケース本体2内に導かれ、コネクタ部22に接続される。このコネクタ部22は、その端子ピン(図示省略)を第2プリント配線基板16bの所定位置に形成された4つの端子用孔部16b′(図16参照)に接続する。これにより、回路部16に設けられた処理回路・電源回路は、当該4芯に電気的に導通される。また、ケース本体2では、当該4芯は保護チューブ15a,接続ブッシュ14に覆われることなく露出した状態となっているので、容易に曲げることができる。
【0043】
接続ブッシュ14は、略矩形のブロック体からなるブッシュ本体14aを備え、一つの面14a′に接続ケーブル15(保護チューブ)が接続される。また、その接続ケーブル15(保護チューブ)が接続される面14a′に隣接する面が、ケース本体2への取り付け面14a″となる。この取り付け面14a″には、円筒状の首部14cが形成されさらにその首部14cの先端側には外側に突出する円板状のフランジ部14dが形成される。首部14cの外径は、上ケース10の台座10hに設けた凹部10h′,下ケース11の台座11hに設けた凹部11h′の直径と等しいか若干小さくし、首部14cの長さは、上ケース10や下ケース11の台座10h,11hにおける厚さと等しいか若干長く設定している。これにより、首部14cを上下から上ケース10(台座10h),下ケース11(台座11h)で挟み込むことで、首部14cは、凹部10h′,11h′で形成される円形の開口部に収まるとともに、回転可能となる。
【0044】
さらにブッシュ本体14a内には、接続ケーブル15を取り付ける1つの面14a′から取り付け面14a″ひいては首部10cに至るL字型の貫通孔14eが形成され、貫通孔10eの両端は、それぞれの面14a′,14a″に開口する。そして、接続ケーブル15を構成する4芯が貫通孔10e内に挿入され、先端が首部10c側から外部に引き出されるようになっている。」

C1「【0046】
これにより、図1等に示すように、細長なブッシュ本体14aがケース本体2の長手方向と平行な方向に倒れた状態では、接続ケーブル15も水平方向(ここでは、右側壁10g側)に延びる姿勢となる。このとき、ブッシュ本体14aの側壁は、台座10hに設けた突起10h″に接触し、ブッシュ本体14aが起立する方向に垂直平面内で回転するのを阻止する。また、ブッシュ本体14aの逆方向の回転は、ストッパー部材11h″により阻止される。よって、図示する姿勢を保持する。
【0047】
一方、ブッシュ本体14aを起立させるべく垂直平面内で回転させるように付勢すると、その付勢力が一定以上になると、ブッシュ本体14a(取り付け面14a″)は突起10h″を乗り上げ回転を開始する。そして、180度回転させると、ブッシュ本体14aは、上記の図示した姿勢と反対向きでケース本体2の長手方向と平行な方向に倒れた状態となる。この状態では、接続ケーブル15も水平方向(ここでは、左側壁10f側)に延びる姿勢となる。このとき、ブッシュ本体14aの側壁は、台座10hに設けた突起10h″に接触し、ブッシュ本体14aが起立する方向に垂直平面内で回転するのを阻止する。また、ブッシュ本体14aの逆方向の回転は、ストッパー部材11h″により阻止される。よって、係る反対向きに倒れた姿勢を保持する。
【0048】
つまり、接続ケーブル15をケース本体2(上ケース10)の左側壁10f側に引き出す姿勢と、右側壁10h側に引き出す姿勢といった2つの引き出し方向をとることができる。しかも、ストッパー部材11h″を設けたことで、接続ブッシュ14は、180度の回転角度範囲内で正逆回転することになり、同一方向に何回も回転して接続ケーブル15を構成する通信線や電源線が切断されるのを抑制している。
【0049】
また、図1等に示すように接続ブッシュ14が水平方向に倒れた状態から90度回転して、接続ブッシュ14が垂直方向に起立した状態では、接続ケーブル15はケース本体2の上方に延びる配置となる。このとき突起10h″がブッシュ本体14aの低段部10b内に入り込み、その姿勢を軽く保持する。つまり、本実施形態では、接続ブッシュ14の保持姿勢(接続ケーブル15の引き出し方向)は、上記の左右の2つの水平方向に加え、上方に向く姿勢でも保持でき、合計3つの方向となる。」

D1 さらに、本願には、以下の図が添付されている。
【図1】 【図3】

【図20】 【図21】



イ 各引用文献の記載等
(ア)引用文献1に記載された事項及び発明
本願の原出願の出願日前に頒布された特表2009-539661号公報(平成21年11月19日公表。以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。また、以下「1a」?「1c」の記載事項は、それぞれ「記載事項(1a)」?「記載事項(1c)」という。)。

(1a)
「【請求項12】
車両運転者に対し、良燃費で車両を運転することを促す指導フィードバックを与えるアフターマーケット装置であって、
前記車両運転者にフィードバックを与え、前記車両のアクセル制御アセンブリへの設置を容易にする取り付け部を有する触覚アクチュエータと、
前記車両の診断ポートに接続するための第1インタフェースと、ヒューマン-マシンインタフェースと通信するための第2インタフェースとを有し、前記車両が、前記ヒューマン-マシンインタフェースを介して選択可能な燃料節約設定における複数の速度閾値および加速度閾値の少なくとも1つを越えた時に、前記触覚アクチュエータを介して前記運転者に指導フィードバックを与えるように構成された触覚コントローラとを備えた装置。」

(1b)「【0018】
図1は車両システム10のブロック図である。車両システム10は、上記にて要約された利点を有する触覚装置12を特徴とする。触覚装置12は、電子制御ユニット(ECU)またはマイクロコントローラ14と、アクセルペダル18と連動する少なくとも1つのモータ16とを備えている。マイクロコントローラ14は独立したモジュールであってもよいが、この機能はパワートレインまたはエンジン制御モジュール20に組み込まれていてもよい。トランスミッション制御モジュール20aはまた、エンジン及びトランスミッション制御モジュールを別個に設けてもよいことを示すために図示されている。ドライバーがコンピュータに基づく指導フィードバックのみに迅速に反応できるとすれば、マイクロコントローラ14の機能による追加負荷は、エンジン制御モジュールのその他の機能よりも重要ではなくなる。マイクロコントローラ14の好適な一例として、テキサス・インスツルメンツ社のTMS470R1B1M 16/32-Bit RISCマイクロコントローラチップが挙げられる。このマイクロコントローラチップは、1MBのフラッシュメモリと、2つのコントローラエリアネットワーク(CAN)コントローラを特徴とする。このCANバスプロトコルは、今日の車両システムにおいて多く利用されている。しかしながら、ここに開示する触覚装置は、どのバス構造やバスプロトコルにも限定されるものではない。図1において、その他の好適なマイクロコントローラは、イベントおよびその他のデータを記録するのに使用され得る不揮発性メモリを備えていなくてもよいため、フラッシュメモリ回路14aはマイクロコントローラ14に接続されている。マイクロコントローラ14の機能がエンジン制御モジュール20またはその他の車載コントローラに組み込まれているかどうかに関係なく、マイクロコントローラの関連するメモリには指導方法がプログラムされている。この方法は、図8を参照しながら後述する。ディーラーにおけるサービス面から言えば、この方法を含むソフトウェア命令を、フラッシュメモリまたはEEPROMメモリを備えた既存の車載コントローラにアップロードすればよい。いずれの場合においても、車両システム内の適当なコントローラを、ここに記載する指導フィードバック方法を提供できるように構成すればよい。
【0019】
主として図2に示すアフターマーケットの実施形態において、マイクロコントローラ14は、パワートレイン制御モジュール20にOBD-IIデータポートインタフェース15を介して結合される。OBD-IIとは、車内空間(一般的にハンドル下部)においてアクセス可能な標準16ピンコネクタの装備を必要とする、車載診断装置に関する米国の自動車規格のことである。直流電源は、この車載コネクタを介して利用することができる。アフターマーケット実施形態においては、車両に搭載されたCANバスに直接接続することもまた1つの方法であるが、標準OBD-IIコネクタを用いることにより、適切な絶縁データポートを得るために特に設計された接続ポイントを単純に、かつ低コストで得ることができる。同様のデータポートは、欧州車載診断(EOBD)規格に基づき、欧州においても導入されている。
【0020】
図2に示すように、OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装することが好ましい。同図において、コネクタ23は筐体22に取り付けられているが、その代わりに、コネクタ23はリボンケーブル等を介して筐体に連結することもできる。その中に回路基板を有する市販のOBD-IIインタフェース製品としては、Multiplex Engineering社(カリフォルニア州ゴレタ)のT16-002インタフェースが挙げられる。RS232インタープリタ回路用OBD(PWM)であるElm Electronics社(カナダ、トロント)のELM320は、OBD Diagnostics社(カリフォルニア州レドンドビーチ)のオールインワンスキャンツール(All-In-One scan tool)等のいくつかのOBD-IIデータインタフェースの基礎を形成するものである。出力インタフェース24は、例えばRS-232Cコネクタ25のような、対話出力を提供するためのコネクタを含むことが好ましい。RS-232C連結は、コンピュータまたはPDA26のような携帯端末との接続のために、一般的にはOBD-IIスキャンツールと共に使用される。図2ではPDA26に接続される取り外し可能なワイヤが示されているが、AutoEnginuity, L.L.C.社(アリゾナ州メサ、www.autoenginuity.comを参照)のブルートゥース送受信機を用いたワイヤレス通信を行うことも可能である。また、スイッチ30の機能は、代替アフターマーケットパッケージとして、PDA26のソフトウェアプログラムに組み込むことができる。
【0021】
図2に示す触覚装置12の実施形態は、好ましくは正規販売業者によって、アフターマーケットユニットとして梱包されて販売され、迅速かつ適正に取り付けられてもよい(PDA26の有無に関わらず)。モータ16は、アクセルペダルの適当な個所、例えばペダルの裏側や、アクセルペダルと連動可能なその他の個所に取り付けられ、ドライバーがアクセルペダルを介して触覚フィードバックを受けられるようになっている。例えば、モータ16は、裏面接着式のプラスチック製取り付けクリップ28を用いて、アクセルペダルアセンブリの一部である固定ブラケット27に固定してもよい。当然のことながら、その他の好適な取り付け方法を適宜使用することも可能である。しかし、スナップ式固定タングのような簡単なコネクタを用いることが、コストを抑えるためにも一般的に好ましい。例えば、適当な例として、ベルクロ(登録商標)面ファスナーを用いてもよい。こうすることにより、アフターマーケット装置12を別の車両に容易に移動させることができる。このような再利用可能な取り付け方法は、装置を別の車両で使用できるように、アップデートしたソフトウェアによって再設定できることから、リース車両において特に有用である。
【0022】
図1に示すように、モータ駆動回路17は、マイクロコントローラ14と触覚モータ16との間に電気的に結合されている。モータ駆動回路17は、マイクロコントローラ14からの出力信号に応じて、触覚モータ16に電気出力を与えて通電する。また、図2に示すように、別の駆動回路17を用いて、ブレーキペダル36の触覚モータ34に通電してもよい。モータ駆動回路17は、触覚モータ16に十分な電気出力を選択的に与えることができる回路であればどのような回路であってもよい。モータ駆動回路の一例は、1999年4月27日発行のNishiumiらの米国特許第5,897,437号「コントローラパック」("Controller Pack")の図15に記載されている。この特許は、ここに参考として組み込まれる。」

(1c)引用文献1には以下の図が示されている。



また、上記記載事項及び図示内容によれば、以下の事項が認められる。
(1d)段落【0020】の「図2ではPDA26に接続される取り外し可能なワイヤが示されている」(記載事項(1b))という記載及び図2(記載事項(1c))の図示内容を参照すると、モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から、ワイヤが外部に引き出されることが看取できる。

(1e)【請求項12】の「前記車両運転者にフィードバックを与え、前記車両のアクセル制御アセンブリへの設置を容易にする取り付け部を有する触覚アクチュエータと」という記載(記載事項(1a))及び段落【0021】の「モータ16は、アクセルペダルの適当な個所、・・・に取り付けられ、ドライバーがアクセルペダルを介して触覚フィードバックを受けられるようになっている。」(記載事項(1b))という記載を参照すると、「モータ16」が「触覚アクチュエータ」の具体的態様であることは明らかである。

(1f)【請求項12】の「前記車両の診断ポートに接続するための第1インタフェース」という記載(記載事項(1a))及び段落【0019】の「アフターマーケットの実施形態において、マイクロコントローラ14は、パワートレイン制御モジュール20にOBD-IIデータポートインタフェース15を介して結合される。OBD-IIとは、車内空間(一般的にハンドル下部)においてアクセス可能な標準16ピンコネクタの装備を必要とする、車載診断装置に関する米国の自動車規格のことである。」(記載事項(1b))という記載を参照すると、「OBD-IIデータポートインタフェース15」が「第1インタフェース」の具体的態様であることは明らかである。

(1g)【請求項12】の「ヒューマン-マシンインタフェースと通信するための第2インタフェース」という記載(記載事項(1a))及び段落【0020】の「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装する・・・出力インタフェース24は、・・・RS-232Cコネクタ25のような、対話出力を提供するためのコネクタを含む」(記載事項(1b))という記載を参照すると、「出力インタフェース24」が「第2インタフェース」の具体的態様であることは明らかである。

(1h)段落【0019】の「アフターマーケットの実施形態において、マイクロコントローラ14は、パワートレイン制御モジュール20にOBD-IIデータポートインタフェース15を介して結合される。OBD-IIとは、車内空間(一般的にハンドル下部)においてアクセス可能な標準16ピンコネクタの装備を必要とする、車載診断装置に関する米国の自動車規格のことである。」という記載及び段落【0020】の「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装する」という記載(いずれも記載事項(1b))を参照すると、「OBD-IIデータポートインタフェース15」は「OBD-IIデータインタフェース15」と同一のものを意味する。

(1i)段落【0021】の「モータ16は、アクセルペダルの適当な個所・・に取り付けられ、ドライバーがアクセルペダルを介して触覚フィードバックを受けられるようになっている。」という記載及び段落【0022】の「モータ駆動回路17は、マイクロコントローラ14と触覚モータ16との間に電気的に結合されている。モータ駆動回路17は、マイクロコントローラ14からの出力信号に応じて、触覚モータ16に電気出力を与えて通電する。」という記載(いずれも記載事項(1b))を参照すると、「モータ16」は「触覚モータ16」と同一の物を意味する。

(1j)段落【0020】の「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装する・・・コネクタ23は筐体22に取り付けられ」(記載事項(1b))という記載を参照すると、「コネクタ23」は「嵌め合わせOBD-IIコネクタ23」と、「筐体22」は「モジュール筐体22」とそれぞれ同一の物を意味する。

(1k)段落【0020】の「出力インタフェース24は、例えばRS-232Cコネクタ25のような、対話出力を提供するためのコネクタを含む・・・RS-232C連結は、コンピュータまたはPDA26のような携帯端末との接続のために、・・・使用され」(記載事項(1b))という記載を参照すると、RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタがコンピュータまたはPDA26のような携帯端末との接続のために使用されることが明らかである。

(1l)段落【0019】の「アフターマーケットの実施形態において、マイクロコントローラ14は、パワートレイン制御モジュール20にOBD-IIデータポートインタフェース15を介して結合される。OBD-IIとは、車内空間(一般的にハンドル下部)においてアクセス可能な標準16ピンコネクタの装備を必要とする、車載診断装置に関する米国の自動車規格のことである。」という記載及び段落【0020】の「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装する」という記載(いずれも記載事項(1b))を踏まえて、【請求項12】の「車両運転者に対し、良燃費で車両を運転することを促す指導フィードバックを与えるアフターマーケット装置であって、前記車両運転者にフィードバックを与え、前記車両のアクセル制御アセンブリへの設置を容易にする取り付け部を有する触覚アクチュエータと、前記車両の診断ポートに接続するための第1インタフェースと、ヒューマン-マシンインタフェースと通信するための第2インタフェースとを有し、前記車両が、前記ヒューマン-マシンインタフェースを介して選択可能な燃料節約設定における複数の速度閾値および加速度閾値の少なくとも1つを越えた時に、前記触覚アクチュエータを介して前記運転者に指導フィードバックを与えるように構成された触覚コントローラとを備えた装置。」という記載を参照すると、「車両運転者に対し、良燃費で車両を運転することを促す指導フィードバックを与えるアフターマーケット装置」は、「触覚アクチュエータ」と、当該触覚アクチュエータを「標準16ピンコネクタの装備を必要とする、車載診断装置に関する米国の自動車規格」に接続するための装置とを含むことが明らかである。

以上の記載事項(1a)?(1c)、認定事項(1d)?(1l)を総合すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。

<引用発明1>
「車両運転者に対し、良燃費で車両を運転することを促す指導フィードバックを与えるアフターマーケット装置であって、
前記車両運転者にフィードバックを与え、前記車両のアクセル制御アセンブリへの設置を容易にする取り付け部を有する触覚アクチュエータと、
前記車両の診断ポートに接続するための第1インタフェースと、ヒューマン-マシンインタフェースと通信するための第2インタフェースとを有し、前記車両が、前記ヒューマン-マシンインタフェースを介して選択可能な燃料節約設定における複数の速度閾値および加速度閾値の少なくとも1つを越えた時に、前記触覚アクチュエータを介して前記運転者に指導フィードバックを与えるように構成された触覚コントローラとを備えた装置において、
上記触覚アクチュエータは触覚モータ16であり、
上記第1インタフェースはOBD-IIデータインタフェース15であり、
上記第2インタフェースは出力インタフェース24であり、
直流電源は、車載コネクタを介して利用することができ、
OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装し、
嵌め合わせOBD-IIコネクタ23はモジュール筐体22に取り付けられ、
出力インタフェース24は、RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタを含み、
RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタは、コンピュータまたはPDA26のような携帯端末との接続のためのものであり、
モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から、ワイヤが外部に引き出され、
触覚モータ16は、アクセルペダルの適当な個所に取り付けられ、ドライバーがアクセルペダルを介して触覚フィードバックを受けられるようになっており、
モータ駆動回路17は、マイクロコントローラ14と触覚モータ16との間に電気的に結合され、モータ駆動回路17は、マイクロコントローラ14からの出力信号に応じて、触覚モータ16に電気出力を与えて通電する
アフターマーケット装置における、
触覚モータ16を標準16ピンコネクタの装備を必要とする、車載診断装置に関する米国の自動車規格に接続するための装置。」

(イ)引用文献2に記載された事項
本願の原出願の出願日前に頒布された米国特許第6644999号明細書(2003年11月11日公開。以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(2a)第1欄第13行?第48行
「2. Background Information
・・・
In both the desktop configuration and the stand alone configuration, the cable assembly includes a cable that is attached to a connector. The connector is usually a seventeen to twenty four pin connector that is plugged into the graphics card. The low profile desktop configuration may require the that the connector be at a ninety degree angle to the axis of the cable whereas the stand alone configuration may require that the connector be at a different orientation with respect to the axis of the cable. However, for economic and other reasons, it may be desirable to be able to use the same cable assembly design for both the desktop configuration and the stand alone configuration. Accordingly, it may be desirable to have a cable assembly where the connector is relatively moveable about an axis of the cable.」

当審訳
「2.背景の情報
・・・
デスクトップ構成及び独立型の構成の両方において、ケーブル組立体は、コネクタに取り付けられたケーブルを含む。コネクタは、通常、グラフィックスカードに接続されている、17?24ピンコネクタである。低背のデスクトップ構成は、コネクタがケーブルの軸線に対して90度の角度を成すことを必要とするであろうが、独立型の構成では、ケーブルの軸線に関し、コネクタが異なる向きであることが必要であろう。しかし、経済的その他の理由のため、デスクトップ構成および独立型の両方の構成について同一のケーブル組立体の設計を使用することができることが望ましい。従って、コネクタがケーブルの軸の回りに相対的に移動可能な、ケーブル・アセンブリを有することが望ましい。」

(2b)第2欄第66行?第3欄第53行
「FIG. 2 illustrates cable assembly 200 . Cable assembly 106 of FIG. 1A and FIG. 1B may be based on cable assembly 200 . Cable assembly 200 may be thought of as a plug and display (P&D) cable assembly.
Cable assembly 200 may include cable 202 and connector 204 . Cable 202 may include wires 206 , shield 208 , and jacket 210 . Each of wires 206 may be a metallic strand or rod that is electrically insulated so as to safely conduct electricity. Although there may be any number of wires 206 , in one embodiment, the number of wires 206 ranges from seventeen to twenty four.
・・・
Connector 204 may include posts 212 , cover 214 , shell 216 , and flange 218 . posts 212 may provide an electrical pathway between wires 206 and, for example, graphics card 110 of FIG. 1A. Posts 212 may either be male or female pins that are supported by flange 218 . Each wire 206 may be connected to an assigned post 212 within cover 214 . Cover 214 may serve to enclose wires 206 as well as the connection point between wires 206 and posts 212 .
Shell 216 may include keys 220 and be mounted against flange 218 so as to enclose the mating ends of posts 212 . Along with keys 220 , shell 216 may provide orientation and insertion guidance of connector 204 with respect to graphics card 110 . In this capacity, flange 218 may serve to limit the insertion of connector 204 into an input/output of graphics card 110 .・・・
Where wires 206 exit from jacket 210 and enter cover 214 , the electromagnetic field caused from these wires 206 may be free to interfere with local electronics. To work to prevent this, connector 204 may further include Electromagnetic Interference (EMI) shield 224 . As a metal structure, EMI shield 224 may provide a seal between jacket 210 and EMI shield 224 .
Disposed about connector 204 and portions of cable 202 may be housing 226 . Housing 226 is discussed in connection with the remainder of the figures. Connector 204 and cable 202 may be thought of as interrelated electrical connectors. In this sense, housing 226 may permit relatively movement between connector 204 and cable 202 so that cable assembly 200 may serve as cable assembly 106 of FIG. 1A and FIG. 1B.」

当審訳
「図2はケーブル組立体200を示している。図1A及び図1Bのケーブルアセンブリ106はケーブルアセンブリ200に基づくことができる。ケーブル組立体200は、プラグ及びディスプレイ(P&D)ケーブルアセンブリとして考えられてもよい。
ケーブルアセンブリ200は、ケーブル202およびコネクタ204を含むことができる。ケーブル202は、ワイヤ206、シールド208、およびジャケット210を含むことができる。各ワイヤ206の安全に電気を伝導するよう、電気的に絶縁された金属ストランドまたはロッドであってもよい。任意の数のワイヤ206であってもよいが、一実施形態では、ワイヤ206の数は、17?24の範囲である。
・・・
コネクタ204は、ポスト212、カバー214、シェル216、およびフランジ218を含むことができる。ポスト212は、ワイヤ206と、例えば、図1Aのグラフィックカード110との間の電気的経路を提供することが可能である。ポスト212は、フランジ218により支持されている雄型または雌型のピンであってもよい。各ワイヤ206は、カバー214内の割り当てられたポスト212に接続されてもよい。カバー部材214は、ワイヤ206とポスト212との間の接続点だけでなくワイヤ206を取り囲むように機能することができる。
シェル216はキー220を含み、フランジ218に対向してポスト212の嵌合端を包囲するよう取り付けられてもよい。キー220と共に、シェル216は、グラフィックカード110に対するコネクタ204の配向及び挿入のガイドを提供することができる。この能力において、フランジ218は、グラフィックカード110の入出力へのコネクタ204の挿入を制限するために機能することができる。・・・
電線206がジャケット210から出るところ及びカバー214に入るところは、これらのワイヤ206に起因する電磁界が、ローカルの電子機器に干渉することが妨げられない。これを防止するために、コネクタ204は、電磁干渉(EMI)シールド224をさらに含むことができる。金属構造として、EMIシールド224は、ジャケット210と、EMIシールド224との間にシールを提供することができる。
ハウジング226は、コネクタ204とケーブル202の一部の周りに配置されてもよい。ハウジング226は、図面の残余に関連して説明される。コネクタ204及びケーブル202は、相互に関連する電気コネクタと考えることができる。この意味で、ハウジング226は、ケーブル組立体200は、図1Aおよび図1Bのケーブル組立体106として作用することになるよう、コネクタ204とケーブル202との間の相対的移動を可能にすることができる。」

(2c)第5欄第33行?第6欄第40行
「FIG. 6 illustrates housing 600 of the invention. FIG. 7 illustrates an exploded view of housing 600 . Housing 600 may include cable shell 602 and main shell 604 .
Cable shell 602 may have interior material removed to form cavity 606 . Cable shell 602 may also include mating surface 608 , neck 610 , flange 612 , and detent 614 , and detent 616 .
Cavity 606 may be a hollow area within the body of cable shell 602 that permits wires, such as those of cable 202 (FIG. 2 ), to be disposed within and through cable shell 602 .・・・
Detent 614 and detent 616 may serve as a catch or lever that locks the rotational movement of cable shell 602 relative to main shell 604 . Each detent may extend radially outward from neck 610 along mating surface 608 .
Main shell 604 may have interior material removed to form cavity 620 . Main shell 604 may also include mating surface 622 , collar 624 , slots 626 , and slots 628 .
In one embodiment, main shell 604 is formed in a single piece where collar 624 designed to slip over flange 612 . However, if main shell 604 may slip over flange 612 , main shell 604 may slip away from flange 612 by reversing the process. In an alternate embodiment, main shell 604 includes first shell piece 630 and second shell piece 632 .
・・・
FIG. 6 displays main shell 604 at a ninety degree orientation to cable shell 602 . Such an orientation may be sufficient to employ in personal computer system 100 of FIG. 1A where the long axis (XZ plane) of connector 122 runs along the long axis (YZ plane) of cable 120 . Alternatively, FIG. 8 illustrates main shell 604 at a different ninety degree orientation to cable shell 602 . FIG. 8A is a cross sectional view of housing 600 taken generally off of line A-A of FIG. 8 .
The orientation illustrated in FIG. 8 may be sufficient to employ in personal computer system 150 of FIG. 1A(当審注:「1B」の誤記) where the long axis (XZ plane) of connector 122 is ninety degrees to the long axis (YZ plane) of cable 120 . Angle 640 may be defined as the divergence between the XZ plane and the YZ plane. Angle 640 may range between zero and one hundred eighty degrees. In one embodiment, angle 640 ranges between zero and ninety degrees. Here, housing 600 may permit cable 120 of FIG. 1B to be rotated with respect to the long axis of connector 122 .」

当審訳
「図6は本発明のハウジング600を示している。図7はハウジング600の分解図を示している。ハウジング600は、ケーブルシェル602とメインシェル604を含んでいてもよい。
ケーブルシェル602は、キャビティ606から取り除く内側材料を有してもよい。ケーブルシェル602は、嵌合面608と、ネック610と、フランジ612と、つめ614と、つめ616を含むことができる。
キャビティ606は、ケーブル202(図2)のようなワイヤをケーブルシェル602内部及び貫通して配設することを可能にする、ケーブルシェル602のボディ内の中空領域であってもよい。・・・
つめ614とつめ616は、メインシェル604に対するケーブルシェル602の相対回転運動をロックする、キャッチまたはレバーとして働くことができる。各つめは、嵌合面608に沿って、ネック610から径方向外向きに延びていてもよい。
メインシェル604は、キャビティ620から取り除く内側材料を有してもよい。また、メインシェル604は、嵌合面622、カラー624、スロット626、およびスロット628を含むことができる。
一実施形態では、メインシェル604は、カラー624がフランジ612上を滑るように設計された単一の部品で形成されている。しかし、メインシェル604がフランジ612の上で滑ることが可能ならば、逆向きのプロセスによってて、フランジ612から滑って離れることができる。別の実施形態では、メインシェル604は第1シェル片630と第2シェル片632とを備えている。
・・・
図6はケーブルシェル602に対し90度の配向にあるメインシェル604を示す。そのような配向は、コネクタ122の長軸(XZ平面)がケーブル12の長軸(YZ平面)に沿って90度である、図1Aにおけるパーソナル・コンピュータ・システム100で使用するのに十分であろう。代替では図8はケーブルシェルと異なる90度の配向にあるメインシェル604を示す図である。図8Aは図8のA-A線のに沿って生成されたハウジング600の断面図である。
図8に示す配向は、コネクタ122の長軸(XZ平面)がケーブル120の長軸(YZ平面)と90度である、図1Bのパーソナルコンピュータシステム150で使用するのに十分であろう。角度640は、XZ平面とYZ平面との間の偏差として定義されてもよい。角度640は、0から180度の間の範囲であってもよい。一実施形態では、角度640は0度と90度との間である。ここで、ハウジング600は、図1Bのケーブル120をコネクタ122の長軸に対して回転させることができる。」

(2d)引用文献2には以下の図が示されている。






(ウ)引用文献3に記載された事項
本願の原出願の出願日前に頒布された米国特許第7435090号明細書(2008年10月14日公開。以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(3a)第1欄第23行?第32行
「Electrical connectors for video cables are typically longitudinally aligned with a longitudinal axis of an electrical jack of the connector, such that the cable is typically projecting orthogonally away from a connector on, for example, the back of a computer or a video display monitor. In situations where there is limited space in an orthogonal direction, however, such as up against a wall or within a small space, such conventional cables may not be able to be used. Consequently, there is a need for cables having electrical connectors capable of projecting from different angles from the jack.」

当審訳
「ビデオケーブル用電気コネクタは、典型的には、コネクタの電気ジャックの長手方向軸線と長手方向に整列された状態であるが、そのようなケーブルは、典型的には、例えば、コンピュータモニタまたはビデオ表示モニタの背面の、コネクタから直交する方向に離れるように突出するようになっている。しかしながら、壁に対向している、または小さな空間内であるような、この直交する方向における空間が限られている状況においては、この種の従来のケーブルを使用することができないことがある。その結果、ジャックからの異なる角度での突出することが可能な電気コネクタを有するケーブルが必要とされている。」

(3b)第3欄第65行?第5欄第28行
「The electrical connector 10 includes a cable 40 that has an outer electrically insulating sheath 50 and contains at least one insulated electrical conductor 60 . The cable 40 has a distal end 44 and a proximal end 46 . The cable 40 may include as many as 36 electrical conductors 60 when, for example, the electrical signal is a video signal. However, other numbers of conductors 60 may be included within the cable 40 for other types of signals, as is known in the art.
The electrical connector 10 further includes a substantially L-shaped plug 70 that has a conduit 80 therethrough for conveying the at least one electrical conductor 60 of the cable 40 therethrough. The L-shaped plug 70 further includes a distal end 74 and a proximal end 76 ( FIG. 2 ), each of which have mutually perpendicular longitudinal axes 90 , 100 respectively. The distal end 74 is adapted to receive the proximal end 46 of the cable 40 therein, and includes a substantially flat retaining forward side 110 . The proximal end 76 comprises an annular sleeve 120 fixed to the forward side 110 of the distal end 74 and further includes a retaining ring 130 fixed to the sleeve 120 ( FIG. 3 ). The retaining ring has a larger diameter d1 than the diameter d2 of the sleeve 120 ( FIG. 2 ). As such, a rotational channel 140 is defined by the sleeve 120 , ring 130 , and the forward side 110 of the distal end 74 of the L-shaped plug 70 .
The electrical connector further includes a connector housing 150 ( FIGS. 1 and 2 ) which comprises a distal end 154 and a proximal end 156 . The distal end 154 includes a plug retaining means 160 adapted to rotationally capture the rotational channel 140 of the plug 70 . The proximal end 156 includes a jack 170 electrically connected to at least one of the at least one electrical conductors 60 .
・・・
In use, the electrical signal may be conducted through the cable 40 , plug 70 , housing 150 , and jack 170 , the cable 40 and plug 70 being rotationally captured by the housing 150 . As such, the cable 40 may be rotated to any suitable position to facilitate the installation of the plug 170 into the destination 30 , but only through a limited arch 220 .」

当審訳
「電気コネクタ10は、外側電気絶縁シース50を有し、少なくとも1つの絶縁された電気導体60を含むするケーブル40を含む。ケーブル40は、遠位端44および近位端46を有している。例えば、電気信号がビデオ信号であるときに、ケーブル40は、36本の電気導体60を含むことができる。しかし、当技術分野で知られている他の信号のタイプ用の、他の数の導体60をケーブル40内に含めることができる。
電気コネクタ10は、さらに、ケーブル40の少なくとも1つの電気導体60を通して移送するための貫通管路80を有する、実質的にL字形状のプラグ70を含んでいる。L字形状のプラグ70は、さらに、遠位端74と近位端76を含み(図2)、その各々は、それぞれ相互に垂直な長手方向軸線90、100を含む。遠位端74は、ケーブル40の近位端46を受けるように構成され、実質的に平坦を保持している前方側部110を備えている。近位端76は、遠位端74の前方側部110に固定された環状スリーブ120を含み、さらにスリーブ120に固定された止め輪130を含んでいる(図3)。止め輪は、スリーブ120の直径d2よりも大きい直径d1を有する(図2)。このように、スリーブ120、リング130、及びL字形状のプラグ70の遠位端74の前方側部110によって回転チャネル140が画定される。
電気コネクタはさらに、遠位端154と近位端156を有するコネクタハウジング150(図1及び2)を備えている。遠位端154は、プラグ70の回転溝140を回転的に捕捉するように適合されたプラグ保持手段160を含む。近位端156は、少なくとも1つの電気導体60の少なくとも1つと電気的に接続される、ジャック170を含む。
・・・
使用時に、電気信号は、ケーブル40、プラグ70、ハウジング150及びジャック170を通して伝導され、ケーブル40及びプラグ70はハウジング150に回転的に捕捉される。このように、ケーブル40は、弧220により限定されるが、プラグ170を宛先30に取り付けることを容易にするいずれの位置にも回転し得る。」

(3c)引用文献3には以下の図が示されている。



(エ)引用文献4に記載された事項
本願の原出願の出願日前に頒布された実願平1-17010号(実開平2-108266号)のマイクロフィルム(平成2年8月28日公開。以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

(4a)明細書第3ページ第17行?第4ページ第3行
「上記のように構成された本考案においては、プラグ本体の外側近接部のコードの折曲部の損傷を防止すると共にチューブが回転してコードを接続方向に向けることによりコードの折曲りを防止できる。」

(4b)明細書第4ページ第11行?第5ページ第11行
「第1図において、1、2は,各分割されたプラグ本体であり、このプラグ本体1、2はその一側に端子受溝3を有しており、さらに中央部にはプラグ本体固定ビス穴4を有している。5は、プラグ本体1、2の他の側に設けられた後述するプロテクタチューブの受穴、6はプロテクタチューブをプラグ本体1、2に固定する浮溝である。7はプラグ端子であり、このプラグ端子7はコード8に接続されており、このプラグ端子7とコード8の接続部分にはL字型のプロテクタチューブ9を設け、プラグ本体に回転可能に組込まれている。
次に,上記の実施例の動作について説明する。
プラグ端子7とコード8が接続され、この接続部分にはプロテクタチューブ9が設けられる。このプロテクタチューブ9は、プラグ本体1、2の受溝6内に回転可能に収容され、プロテクタチューブ受穴5で受けられる。このため,第2図に示されるように、接続方法が変わってもコードはその方向に向けられ、コードの折曲がりが防止できる。」

(4c)引用文献4には以下の図が示されている。



(オ)引用文献5に記載された事項
本願の原出願の出願日前に頒布された特開平10-50398号公報(平成10年2月20日公開。以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。

(5a)「【0002】
【従来の技術】電気コネクタは、信号搬送ケーブルと、レセプタクルまたはプラグとの間のインタフェースを与えるために、電子産業分野において用いられている。レセプタクルまたはプラグは、通信ケーブルのような他のケーブルの終端とすることのできるレセプタクルまたはプラグ、もしくはコンピュータやプリンタ等のような電子デバイスのレセプタクルまたはプラグである。信号搬送ケーブルは、典型的にケーブルジャケットで覆われた複数本のワイヤを有している。好ましくは、ワイヤとケーブルジャケットとの間に編組シールドが設けられ、編組シールドはケーブルワイヤを電磁シールドするために接地される。ケーブルがインタフェースされる電気デバイスは、しばしば狭いスペースに用いられるか、または多くの他のデバイスに相互接続される。したがって、多くのケーブルが狭いスペースでデバイス間を走り、それらのケーブルの配線が重要な設計要素となる。
【0003】従来技術で知られる電気コネクタにおいては、ケーブルは典型的に電気コネクタから後方へまっすぐに延ばされる。ケーブルは、多くの場合、半剛性で、太い(例えば、直径が9.52mm(3/8インチ)以上)から、コネクタのすぐ背後の部分のケーブルの撓みはわずかである。そのため、これらのコネクタのケーブルは、適切に配線できず、配線できた場合でも、狭いスペースでケーブルを屈げる結果、ケーブルにかなりの歪みが生じる。
【0004】ケーブル配線を容易にし、複数のケーブル出口部を電気コネクタに設けることによって、ケーブル歪みを減少させる試みがこれまで行われてきた。例えば、米国特許第4,629,276号明細書を参照。これらのコネクタは、複数のケーブル出口方向を備えており、各ケーブル出口方向は固定すなわち不動である。すなわち、コネクタが一度組み立てられると、ケーブル出口方向は、そのコネクタを分解でもしなければ変更することができない。ケーブル出口方向を変更するために、コネクタの分解の必要があるというのは、厄介で時間の浪費である。さらに、複数のケーブル出口方向の数は制限される。そのため、狭いスペースでは、それらの電気コネクタでさえ、ケーブルを効率的に配線することができない。例えば、制限されたケーブル出口方向は、ケーブル保持構造の利用を制限してしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、電子産業分野においては、電気ケーブルの効率的な配線を可能とする動的多方向ケーブル出口を有する電気コネクタが必要とされる。さらに、このような電気コネクタにおいて、ケーブルワイヤを電磁シールドする必要がある。本発明は、これらおよび他の必要事項に対処するものである。」

(5b)「【0007】
【発明の実施の形態】図1および図4において、コンピュータのような電気デバイスの組合せコネクタに電気ケーブル40をインタフェースする電気コネクタ10の一例が示されている。電気コネクタ10は、ハウジング20と、このハウジング20内で旋回可能に設けられた旋回部材30を有している。ハウジング20は、図4に示すように、内部空間を形成する2つの対称な本体部からなり、金属またはプラスチックで形成することができる。この実施例では、ハウジング20は亜鉛ダイカスト金属筐体よりなる。図示していないが、その金属筐体は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂または類似の材料で作製されたプラスチック外側ハウジング内に収納できる。
【0008】電気コネクタ10の前部は、組合せコネクタ内に差し込む複数のコンタクトを有している。電気コネクタ10の後部端では、ハウジング20は旋回部材30を収容する開口部22を定め、以下に詳しく説明するように、開口部22から電気ケーブル40を無制限の多数の方向に引き出せる。開口部22は、電気ケーブルの直径よりも大きい直径の円形にすることができる。
【0009】図2?図4に最良に示すように、本実施例の旋回部材30は、外側球殻34を内側球体36の周りに設けて構成されている。内側球体36は、保持する電気ケーブル40を通すケーブル通路32を定める。図3に最良に示すように、ケーブル通路32の端部には、ケーブル出口部35が定められている。ケーブル通路32の周りには、内側球体36内に電気ケーブル40をしっかりと保持する一連の円周方向リッジ37と、円周方向溝39とが、以下に明らかにする目的で設けられている。外側球殻34は、一対の対抗するスロット38を定める。スロット38は、電気ケーブル40の径よりも大きい幅を有し、電気ケーブル40が外側球殻34に挿通できるようケーブル出口部35に整合させることができる。スロット38はまた、電気ケーブル40が以下に示されるように外側球殻34に対応して回転できるようにする。
【0010】図4に示すように、外側球殻34と内側球体36は、それぞれ2つの球体部材よりなり、その球体部材を例えばリベット結合、リセスネジ、接着または他の手段によって組み立て、外部球殻34と内側球体36を形成することができる。本実施例では、球体部材は、図4に最良に示すように、対称形である。他の実施例では、球体部材は非対称形とすることもできる。例えば、図5に示すように、内側球体36は、内側球体36の約3/4を形成する一方の球体部材36bと、内側球体36の1/4を形成する他方の球体部材36aとから構成できる。外側球殻34と内側球体36の両方とも、亜鉛金属ダイカストのような、導体材料で作製することができる。
【0011】図2?図4で最良に示すように、旋回部材30は、ケーブル出口部35が開口部22に整合して開口部22内で旋回するように、ハウジング20の後端部に旋回可能に設けられている。ハウジング20内で旋回部材30を旋回可能に設けるためには、ハウジング20は、旋回部材30の中心を通るラインに沿ってその内部空間内に突出する直線状に配置された一対の枢支軸50を有している。外側の枢支軸50は、外側球殻34の外面に設けた一対の孔52に支持される。外側球殻34内に内側球体36を旋回可能に設けるためには、外側球殻34はその内面から半径方向内側へ突出して延びる直線状に配置された別の一対の枢支軸60を有している。内側の枢支軸60は、内側球体36の外面に設けた別の一対の孔62に支持される。図4に最良に示すように、外側および内側の枢支軸50,60と、対応する孔52,62とは、断面が円形のシリンドリカル形状とすることができる。
【0012】本実施例において、外側枢支軸50は、ハウジング20に対して垂直に設けられ、外側球殻34を左右に旋回させる。内側枢支軸60は、ハウジング20に対して水平に設けられ、内側球体36を外側球殻34に対して上下に旋回させる。したがって、電気ケーブル40は、あらゆる方向に向くように回転することができる。しかし、外側枢支軸50と内部枢支軸60は、電気ケーブル40がその長さ方向軸の周りで回転するのを防ぐ。その結果、ケーブルワイヤ44のねじりが防止される。電気コネクタ10の以上に説明された形態は、単に一例に過ぎないことがわかる。
【0013】ハウジング20の内部での旋回部材30の旋回は、図1?図3に示す電気ケーブル40のx-y-z軸によって、より十分に理解できる。電気ケーブル40がy軸の周りに回転すると、外側球殻34は枢支軸50によって固定されたままで、内側球体36がハウジング20に対して回転し、電気ケーブル40は外側球殻34のスロット38内でスライドする。電気ケーブル40がz軸の周りに回転すると、内側球体36は、枢支軸60によって外側球殻34に対して固定されたままである。しかし、外側球殻34と内側球体36の両方とも、ハウジング20に対して旋回する。
【0014】電気ケーブル40を電気コネクタ10から引き出せる最大角度は、図2および図3に最良に示すように、開口部22の端部24によって決められる。例えば、本実施例で、旋回部材30の約4分の1が端部24を越えて存在するので、最大出口角度は約45°である。別の実施例では、旋回部材30が端部24を越えて存在する量は、上述したものよりも大きくまたは小さくすることができる。例えば、約90°の出口角度とするためには、旋回部材30は、その約半分が端部24を越えて存在するように設けられる。さらに、図2および図3に最良に示すように、開口部22の端部24は、電気ケーブル40の歪みを逃しかつ剪断を防止するように面取りされる。
【0015】本発明の範囲は、上記実施例における枢支軸の位置や数に限定されないし、旋回部材30の構造に限定されないことに留意すべきである。例えば、他の実施例において、枢支軸と孔の配置は、逆にすることができる。すなわち、ハウジングが一対の孔を有し、外側球殻が一対の外側枢支軸を有し、および/または、内側球体が一対の枢支軸を有し、外側球殻が一対の内側孔を有する。さらに別の実施例において、枢支軸50,60の各対を、1つの枢支軸で置き換えることができる。さらに別の実施例では、2つの回転軸が必要とされる場合に、外側枢支軸50と内側枢支軸60が平行に配置されないならば、枢支軸50,60は互いに垂直に配置できない。さらに、ハウジング20および/または外側球殻34が適切に構成されるならば、枢支軸50,60を、異なる面に、および球体部材の中心を通って延びないライン上に配置できる。さらに、ただ1つの軸の周りでのケーブルの回転が要求される場合、旋回部材30を、一組の枢支軸と協働する1つの球体部材で構成することができる。
【0016】さらに、別の実施例においては、旋回部材30は、外側球殻と内側球体による構成とするよりもむしろ、ハウジング20の枢支軸50を支持するために外面周辺に設けられた溝をもつ、ただ1つの球体部材によって構成できる。その溝は、電気ケーブル40がその長さ方向軸の周りで回転しないように、ケーブル通路32の長さ方向軸にほぼ平行に延ばすことができる。さらに、別の実施例においては、ハウジング20が適切に構成されるならば、旋回部材30を非球体にすることができる。」

(5c)引用文献5には以下の図が示されている。





(カ)引用文献6に記載された事項
本願の原出願の出願日前に頒布された米国特許出願公開第2006/0246742号明細書(2006年11月2日公開。以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。

(6a)「[0005] FIG. 5 shows an additional connector including a connecting terminal 50 , a main body 52 mounted to the connecting terminal 52(当審注:「50」の誤記) , and a cable 54 . The cable 54 extends from the connecting terminal 50 and is received in the main body 52 . The cable 54 does not move in the main body 52 . If an external space's length out of computers in a direction of the connector extending is short than a length of the connector, the computers must be moved to accommodate the connector. It is inconvenient in using such a connector. The cable of the connector is also inconveniently managed.」

当審訳
「[0005] 図5は、接続端子50、接続端子50に取り付けられた本体52と、ケーブル54と、を含む付加的なコネクタを示している。ケーブル54は、接続端子50から延びて本体52に収容されている。ケーブル54は、本体52内で移動しない。もし、コネクタが延びる方向の、コンピュータの外部空間の長さがコネクタの長さよりも短い場合には、コンピュータは、コネクタを収容するために移動されなければならない。このようなコネクタを使用することは不便である。コネクタのケーブルはまた不便に管理される。」

(6b)「[0014] Referring to FIGS. 1 and 2 , a connective apparatus acting as a rotatable connector in accordance with a preferred embodiment of the present invention includes a connecting terminal 20 and a hollow receiving member 40 . In the preferred embodiment, the rotatable connector is a universal serial bus (USB) connector having a USB interface for further connection.
[0015] The connecting terminal 20 includes a cable 26 having a plurality of signal wires and extending reward from a middle portion of a rear side of the connecting terminal 20 . A pair of ears 22 extends from opposite ends of the rear side. A retaining space 24 is formed between the two ears 22 . The cable 26 extends from the retaining space 24 . A pivot hole 28 is defined in each ear 22 .
[0016] The receiving member 40 includes a projection portion 42 extending therefrom toward the connecting terminal 20 . A pair of shafts 44 protrudes from two sides of the projection portion 42 , corresponding to the pivot holes 28 of the connecting terminal 20 . A through hole 46 is defined in the receiving member 40 from a front side to a rear side thereof, corresponding to the cable 26 of the connecting terminal.
[0017] Referring also to FIG. 3 , in assembly, the cable 26 of the connecting terminal 20 is extended through the receiving member 40 from the front side to the rear side. The projection portion 42 of the receiving member 40 is received in the retaining space 24 of the connecting terminal 20 . The shafts 44 are received in the corresponding pivot holes 28 of the connecting terminal 20 . Thus, the rotatable connector is formed. The cable 26 of the connecting terminal 20 can slide in the through hole 46 of the receiving member 40 .
[0018] Referring also to FIG. 4 , in using, the shafts 44 of the receiving member 40 can pivot in the pivot holes 28 of the connecting terminal 20 . The receiving member 40 can rotate around the connecting terminal 20 in a range of 180 degree. The cable 26 is bent with the receiving member 40 to be conveniently managed.」

当審訳
「[0014] 図1及び図2を参照すると、本発明の好ましい実施形態による、回転可能なコネクタとして機能する接続装置は、接続端子20と、中空の受け部材40とを具備する。好ましい実施形態では、回転可能なコネクタは、さらなる接続のためのUSBインターフェースを有するユニバーサル・シリアル・バス(USB)コネクタである。
[0015] 接続端子20は、複数の信号線を有し、接続端子20の背面の中央部から後方に延在するケーブル26を含んでいる。1対の耳22が背面の反対側の端部から延びている。保持空間24は2つの耳部22の間に形成される。ケーブル26は保持空間24から延びている。ピボット孔28がそれぞれの耳22に規定される。
[0016] 受け部材40は、そこから接続端子20に向かって延びる突出部42を含む。一対のシャフト44が突出部42の2つの側面から突き出しており、接続端子20のピボット孔28に対応している。スルーホール46は受け部材40の前面から背面に向けて規定され、接続端子のケーブル46に対応している。
[0017] また、図3を参照すると、組立体においては、接続端子20のケーブル26は受け部材40を前面から背面に貫通して延設されている。受け部材40の突出部42は、接続端子20の保持空間24に収容される。シャフト44は、接続端子20の対応するピボット孔28に受けられている。このように、回転可能なコネクタが形成される。接続端子20のケーブル26は、受け部材40の貫通孔46内で摺動することができる。
[0018] また、図4を参照すると、使用において、受け部材40のシャフト44は、接続端子20のピボット孔28内で枢動することができる。受け部材40は、180度の範囲で接続端子20の周囲を回転することができる。ケーブル26は受け部材40により屈曲され、容易に管理される。」

(6b)引用文献6には以下の図が示されている。





(キ)引用文献7に記載された事項
本願の原出願の出願日前に頒布された米国特許出願公開第2010/0105241号明細書(2010年4月29日公開。以下「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。

(7a)「[0027] A connector cable positioner 10 is provided, according to various aspects. In one aspect, as illustrated in FIGS. 1A , 1B, and 1C, cable positioner 10 may include at least one of: a body 12 having a longitudinal axis, a proximal end 13 configured for engaging a connector, a distal end 14 , a bore 16 defined in the positioner for providing passage of the cable through the positioner, and at least one groove 20 .
[0028] Body 12 is not limited to a size and shape. In one aspect, the body can be formed integrally with connector 5 . In another aspect, however, the body can be formed separately from connector 5 . In this aspect, body 12 can be sized and shaped so that at least a portion of the proximal end 13 of the body can be inserted onto, and/or attached to, or otherwise engage with a portion of the connector. In still another aspect, the height of the body can be between about 10 and 30 mm, the width of the body 12 can be between about 30 and 60 mm, and the depth of the body can be between about 10 and 30 mm.
[0029] In one aspect, body 12 can be formed from materials such as, for example and without limitation, plastic, rubber, polypropylene, and the like. In another aspect, the body can be formed from the same material as connector 5 , however, the body can also be formed from other materials. In yet another aspect, body 12 can define at least one grip area 30 . Grip area 30 can be a recessed area in body 12 configured to provide a user of positioner 10 a means to grip the positioner and the connector 5 .
[0030] In another aspect, referring again to FIG. 1A , body 12 may define bore 16 to facilitate passage through positioner 10 of a portion of a cable 7 shown in FIG. 2A attached to connector 5 . Bore 16 in FIG. 1A , in one aspect, can have a cross-sectional area the same as, or greater than, the cross-sectional area of cable 7 shown in FIG. 2A . In yet another aspect, the bore can extend through body 12 from proximal end 13 to distal end 14 , such that when positioner 10 is inserted onto, attached to, or otherwise coupled with, connector 5 , cable 7 can extend through the positioner.」

当審訳
「[0027] コネクタケーブルポジショナ10は、様々な態様で提供される。一態様では、図1A、1B、1Cに示されているように、ケーブルポジショナ10は、少なくとも1つの:長手方向軸線を有する本体12と、コネクタと係合するように構成された近位端13、遠位端14、ポジショナを通してケーブルの通路を提供するために、ポジショナ内に画定されたボア16と、少なくとも1つの溝20を含むことができる。
[0028] 本体12は、サイズおよび形状が限定されるものではない。一態様では、本体は、コネクタ5と一体的に形成することが可能である。別の態様においては、しかしながら、本体は、コネクタ5と別個に形成することができる。この態様では、本体12は、本体の近位端13の少なくとも一部分の上に挿入、及び/又は結合、あるいは他のコネクタ部分と係合できるようなサイズと形状にすることができる。さらに別の態様では、本体の高さは、約10mmと30mmの間とすることができ、本体12の幅は約30mmと60mmmの間とすることができ、本体の深さは、約10mmと30mmの間であることができる。
[0029] 一態様では、本体12は、例えば、限定されるものではないが、プラスチック、ゴム、ポリプロピレン等のような材料から形成することができる。別の態様では、本体は、コネクタ5と同じ材料から形成することができるが、しかしながら、本体は、他の材料から形成することもできる。さらに別の態様では、本体12は、少なくとも1つのグリップ領域30を画成することができる。グリップ領域30は、ポジショナ10のユーザにポジショナ10及びコネクタ5を把持する手段を提供するために構成された、本体12の窪んだ領域とすることができる。
[0030] 別の態様では、再び図1Aを参照すると、本体12は、ポジショナ10を貫通する、図2Aに示されているコネクタ5に結合されたケーブル7の一部分の通路を画定するボア16を規定することができる。一態様では、図1Aのボア16は、図2Aに示されているケーブル7の断面積と同じかそれ以上の断面積を有することができる。さらに別の態様では、ボアは、本体12を遠位端14から近位端13から延びて、ポジショナ10がコネクタに挿入、結合あるいは他の結合をされると、ケーブル7がポジショナを貫いて延びることができる。」

(7b)「[0039] In use, connector 5 with positioner 10 attached to it, or formed therewith, can be installed and/or used to make a connection as needed. In the case of an OBD connector, this typically will be under the dashboard of a vehicle. At least a portion of cable 7 attached to the connector can be inserted into the at least one groove 20 of positioner 10 before, or after, the connector has been installed. In one aspect, the portion of the at least one groove 20 having a cross-sectional area smaller than the cross-sectional area of cable 7 of connector 5 can hold the cable in a fixed position. In another aspect, and as described above, at least one tab 24 can reduce the cross-sectional area of the at least one groove 20 .・・・ The cable can be inserted into any of the at least one groove that the user desires in order to minimize the obtrusiveness of the cable and/or to route the cable in a desired direction. For example, the connector cable positioner can hold the cable of an OBD connector 5 so that the cable does not interfere with the driver of a vehicle in which the OBD connector and the connector cable positioner are installed.
[0040]・・・In another embodiment, rather than, or in addition to, the body defining grooves, the body can define one, or more, split rings. The split rings may be formed on, or attached to, the distal end of the body and may be formed from a material that is flexible enough to allow a cable to expand the ring as a cable is pushed through the split in the ring, yet rigid and resilient enough so that the split in the ring(s) springs back together after the cable is surrounded by the ring(s). In the groove/tab embodiment, the cable deforms more than the tabs as the cable is pushed through the tabs into the groove, whereas with the split rings, the rings substantially deform with respect to the cable at the split as the cable is pushed through the split in the ring.・・・」

当審訳
「[0039] 使用の際、ポジショナ10に結合された、あるいは一緒に形成されたコネクタ5は、必要に応じて接続を行うために、設置され及び/又は使用される。OBDコネクタの場合、これは、通常、車両のダッシュボードの下にあるであろう。コネクタに取り付けられたケーブル7の少なくとも一部は、コネクタの設置前あるいは設置後に、ポジショナ10の少なくとも1つの溝20に挿入される。一態様では、コネクタ5のケーブル7の断面積よりも小さい断面積を有する少なくとも1つの溝20の部分は、、ケーブルを固定位置に保持することができる。別の態様では、上述したように、少なくとも1つのタブ24は、少なくとも1つの溝20の断面積を減少させることができる。・・・ケーブルは、ケーブルの障害性を最小にする及び/またはケーブルを所望の方向に沿わせるために、ユーザが望むいずれか1つの、少なくとも1つの溝に挿入される。例えば、コネクタケーブルのポジショナは、OBDコネクタ5のケーブルを保持して、OBDコネクタとコネクタケーブルポジショナが設置されている車両の運転者と干渉しないようにする。
[0040] ・・・別の実施形態では、本体に溝を形成するのではなく、またはそのことに加えて、本体は、1つ又は複数の分割リングを形成することができる。分割リングは遠位端の上に形成あるいは結合されることができ、ケーブルがリング内の裂け目を押して通されるよう、ケーブルがリングを拡張することを可能にするのに十分可撓な、けれども、ケーブルがリングに囲まれた後には、共にスプリングバックするように十分な剛性と弾性のある、材料から形成することができる。溝/タブの実施形態では、ケーブルは、タブを通って溝中に押し込まれると、タブよりもケーブルが変形したが、分割リングでは、ケーブルがリングの裂け目を押して通されると、裂け目の箇所のケーブルではなくて分割リングが実質的に変形する。・・・」

(7c)引用文献7には以下の図が示されている。





ウ 特許法第36条第6項第2号についての当審の判断
ウ-1
(ア)請求項1における「前記一面と反対の面側から外部に引き出される電源線を備える接続ケーブル」との記載について、本件補正発明が明確であるといえるためには、当該記載が意味する具体的な事物の範囲を当業者が一意に理解できることが必要である。

(イ)上記記載において、構文上「前記一面と反対の面側から外部に引き出される」対象が「電源線」と「接続ケーブル」のいずれであるのか不明確であるから、上記記載は、
(a)「電源線」が「前記一面と反対の面側から外部に引き出される」ことを意味する
(b)「接続ケーブル」が「前記一面と反対の面側から外部に引き出される」ことを意味する
のように多義的に解釈し得るものである。

ウ-2
(ア)請求項1における「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位に設けられた孔部内を通って前記電源線が前記ケース本体から引き出され」との記載について、本件補正発明が明確であるといえるためには、当該記載が意味する具体的な事物の範囲を当業者が一意に理解できることが必要である。

(イ)ケース本体の構造上、ケース本体の孔部内を通る線状の物体は必ずケース本体から引き出されるものと解される。
しかしながら、上記記載のうち、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位に設けられた孔部内を通って」という記載における主語は「接続ケーブル」、「前記電源線が前記ケース本体から引き出され」という記載における主語は「電源線」となっているから、孔部内を通った物体(接続ケーブル)がケース本体から引き出されている物体(電源線)と整合しておらず、上記記載が具体的にどのような構成を意味するのか判然としない。

ウ-3
(ア)請求項1における「前記接続ケーブルは前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢をとる」との記載について、本件補正発明が明確であるといえるためには、当該記載が意味する具体的な事物の範囲を当業者が一意に理解できることが必要である。

(イ)本件補正後の本願の図21の図示内容(記載事項D1)によれば、本件補正発明は可撓性を有する「接続ケーブル」をも想定しているところ、可撓性の接続ケーブルはその部位ごとに伸びる方向が異なり得るから、「前記接続ケーブル」の「前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢」を規定するためには、何らかの定義が必要であるといえる。
しかしながら、本願補正明細書の段落【0046】?【0049】の「細長なブッシュ本体14aがケース本体2の長手方向と平行な方向に倒れた状態では、接続ケーブル15も水平方向(ここでは、右側壁10g側)に延びる姿勢となる。・・・そして、180度回転させると、ブッシュ本体14aは、上記の図示した姿勢と反対向きでケース本体2の長手方向と平行な方向に倒れた状態となる。この状態では、接続ケーブル15も水平方向(ここでは、左側壁10f側)に延びる姿勢となる。・・・接続ケーブル15をケース本体2(上ケース10)の左側壁10f側に引き出す姿勢と、右側壁10h側に引き出す姿勢といった2つの引き出し方向をとることができる。・・・接続ブッシュ14の保持姿勢(接続ケーブル15の引き出し方向)は、上記の左右の2つの水平方向に加え、上方に向く姿勢でも保持でき、合計3つの方向となる。」(記載事項C1)という記載を参照しても、「前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢」の定義は判然とせず、
(a)引き出し方向及び途中の経路を限定せず、接続ケーブルがケース本体の右側壁に達していることを意味する
(b)引き出される箇所において接続ケーブルがケース本体の右側壁に伸びている、すなわち、(接続ブッシュ14の保持姿勢により)接続ケーブルの引き出し方向が右側壁側であることを意味する
のように多義的に解釈し得るものである。

ウ-4 以上のとおり、本願補正明細書の記載を参照しても、上記「ウ-1(ア)」、「ウ-2(ア)」、「ウ-3(ア)」に示した記載が意味する具体的な事物の範囲を一意に当業者が理解することができない。
したがって、本件補正発明は明確でない。

エ 特許法第29条第2項についての当審の判断
エ-1 対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「モジュール筐体22」、「ワイヤ」、「回路基板21」及び「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」は、その意味、機能または構造からみて、本件補正発明の「ケース本体」、「接続ケーブル」、「回路部」及び「接続部」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明1の「嵌め合わせOBD-IIコネクタ23」は「モジュール筐体22」の「一端に」備えられているから、上記(ア)も踏まえると、その意味、機能または構造からみて、本件補正発明の「そのケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部」に相当する。

(ウ)引用発明1において「直流電源」は「車載コネクタを介して利用することができ」、「ワイヤ」を通じて「モジュール筐体22に収容された回路基板21」に実装された「モータ駆動回路17」から「アクセルペダルの適当な個所に取り付けられ」た「触覚モータ16」に「電気出力を与えて通電する」から、「ワイヤ」が電源を供給する線を備えることは明らかである。また、引用発明1の「ワイヤ」は、「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から」「外部に引き出される」ものであるから、「ワイヤ」及び「ワイヤ」が備える電源を供給する線は、共に、「モジュール筐体22の、OBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から」「外部に引き出され」ているといえる。
そうすると、上記「ウ ウ-1」で述べたとおり、本件補正発明の「前記一面と反対の面側から外部に引き出される電源線を備える接続ケーブル」という発明特定事項の意味は必ずしも明確でないが、上記「ウ ウ-1」に示したいずれの意味においても、その意味、機能または構造からみて、引用発明1の「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から」「外部に引き出される」「ワイヤ」は、本件補正発明の「前記一面と反対の面側から外部に引き出される電源線を備える接続ケーブル」に相当する。

(エ)引用発明1の「一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容され」、「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17」を「実装し」た「回路基板21」は、その意味、機能または構造からみて、本件補正発明の「前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部」に相当する。

(オ)「アダプタ」の字義は「機能や規格の異なる機器を接合したり、別用途に使用したりするための補助器具。」を意味すると解される(株式会社岩波書店・広辞苑第六版)。当該字義と本願補正明細書の段落【0001】の「本発明は、車両に設けられた車両情報を出力するコネクタに接続するための車載機器接続用アダプタに関するものである。」という記載を踏まえると、本件補正発明の「車載機器接続用アダプタ」の意味は、要するに、車載機器を、車両に設けられた車両情報を出力するコネクタに接続するための補助器具である。
そうすると、その意味、機能または構造からみて、引用発明1における「触覚モータ16」は本件補正発明の「車載機器」に、引用発明1の「標準16ピンコネクタの装備を必要とする、車載診断装置に関する米国の自動車規格に接合するための装置」は本件補正発明の「車載機器接続用アダプタ」に、それぞれ相当する。

(カ)引用発明1は、「モジュール筐体22」の「一端に」「嵌め合わせOBD-IIコネクタ23」を、「他端に」「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタを含」む「出力インタフェース24を備え」ているから、「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」が「モジュール筐体22」の「嵌め合わせOBD-IIコネクタ23」と反対側の面に設けられていることは明らかである。また、引用発明1の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」は、「コンピュータまたはPDA26のような携帯端末との接続のためのものであ」ることを踏まえると、引用発明1の「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装し」、「出力インタフェース24は、RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタを含み、RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタは、コンピュータまたはPDA26のような携帯端末との接続のためのものであ」ることは、本件補正発明の「前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための開口部を設け」ることと、「前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための構成を設け」る限度で一致する。

(キ)引用発明1の「ワイヤ」は「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から」「外部に引き出される」ものであるところ、当該「ワイヤ」が、モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対側の面から引き出されることも明らかであり、上記(ウ)を踏まえると、引用発明1の「ワイヤ」が「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から」「外部に引き出される」ことは、本件補正発明の「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位に設けられた孔部内を通って前記電源線が前記ケース本体から引き出され、前記接続ケーブルは前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢をとる」ことと、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面から外部に引き出される」限度で一致する。

(ク)引用発明1の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」がコネクタであることは明らかであるから、引用発明1の「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装し」、「出力インタフェース24は、RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタを含」むことは、本件補正発明の「前記接続部はコネクタとし、前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の前記ケース本体の左壁側に沿って設けたこと」と、「前記接続部はコネクタとし」た限度で一致する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明1とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

<一致点1>
「ケース本体と、
そのケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部と、
前記一面と反対の面側から外部に引き出される電源線を備える接続ケーブルと、
前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部と、
を備え、
前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための構成を設け、
前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面から外部に引き出される一方、前記接続部はコネクタとした
車載機器接続用アダプタ。」

<相違点1>
「ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための構成を設け」ることに関し、
本件補正発明は、外部機器と接続する接続部への接続のための「開口部」を設け、「前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の前記ケース本体の左壁側に沿って設け」ているのに対して、
引用発明1は、ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための構成が開口部を備えるかどうか特定されていない点。

<相違点2>
「接続ケーブル」が「前記ケース本体の前記反対側の面から外部に引き出される」ことに関し、
本件補正発明は、「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位に設けられた孔部内を通って前記電源線が前記ケース本体から引き出され、前記接続ケーブルは前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢をとる」のに対して、
引用発明1は、「ワイヤ」を引き出す構成がそのように特定されていない点。

エ-2 判断
以下相違点について検討する。
<相違点1について>
(ア)引用発明1の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」は、「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17」が実装され、「モジュール筐体22に収容された回路基板21」に接続するためのものであって、開口部がなければ、「モジュール筐体22に収容された回路基板21」に接続できないのであるから、「モジュール筐体22」(本件補正発明の「ケース本体」に相当。)が「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」(本件補正発明の「接続部」に相当。)に接続するための開口部を備えていると理解するのが自然かつ合理的である。
そうすると、ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のために開口部を設ける点は実質的な相違点とはいえないし、仮にそうでないとしても、外部機器と接続する接続部への接続のために開口部を設けることは、特に例示するまでもなく、周知慣用の技術的事項といえるから、引用発明1において、ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のために開口部を設けることは、当該周知慣用の技術的事項を踏まえて当業者が容易になし得たといえる。
さらに、本件補正発明は、「前記開口部」を設ける位置を「前記ケース本体の前記反対側の面の前記ケース本体の左壁側に沿って」と特定するものであるが、引用文献1の図2(記載事項(1c))には、RS-232Cコネクタ25がモジュール筐体22の一の端部に沿った位置に記載されているから、引用発明1の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」(接続部)への開口部を、「モジュール筐体22」(ケース本体)の一の壁側に沿って設けることが示唆されているということもできる。また、引用発明1の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」(接続部)への開口部の「モジュール筐体22」(ケース本体)における位置を、車載機器との接続性等を考慮して最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
そうすると、「前記開口部」のケース本体の壁との位置関係における位置を「前記ケース本体の前記反対側の面の前記ケース本体の左壁側に沿って」と特定することは設計事項の域を出るものではない。

<相違点2について>
(イ)「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位に設けられた孔部内を通って前記電源線が前記ケース本体から引き出され」ていることについて
a 上記「ウ ウ-2」で述べたとおり、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位に設けられた孔部内を通って前記電源線が前記ケース本体から引き出され」という発明特定事項の意味は必ずしも明確でないが、本願補正明細書の段落【0042】の「接続ケーブル15は、電源線として2本(+,アース)、信号線として2本(送信用,受信用)の4芯(図示省略)としている。また、信号線はツイスト線として、送信用と受信用でそれぞれ2本ずつ使用し、合計6芯とすることもできるしその他の形態も可能である。ケース本体2の外側に引き出された4芯の外周は、保護チューブ15aで覆われて断線等しないように保護される。その4芯の先端は、接続ブッシュ14内を貫通してケース本体2内に導かれ、コネクタ部22に接続される。」(記載事項B1)という記載を参照すると、少なくとも電源線が「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位に設けられた孔部内」を通っていれば、当該発明特定事項を充足すると解されるので、以下検討する。

b 引用発明1の「ワイヤ」は、「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から」「引き出され」、「モジュール筐体22に収容された回路基板21」に実装された「モータ駆動回路17」から「アクセルペダルの適当な個所に取り付けられ」た「触覚モータ16」に「電気出力を与えて通電する」ためのものであるところ、孔部がなければ、「モータ駆動回路17」と「触覚モータ16」の間を「ワイヤ」がつなぐことができないのであるから、「モジュール筐体22」(本件補正発明の「ケース本体」に相当。)が「嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側」に「ワイヤ」(本件補正発明の「接続ケーブル」に相当。)を通すための孔部を備えていると理解するのが自然かつ合理的である。

c 上記「エ-1(ウ)」で述べたとおり、「ワイヤ」(接続ケーブル)が電源を供給する線を備えることは明らかであるから、上記a、bをも踏まえると、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面」「に設けられた孔部内を通って前記電源線が前記ケース本体から引き出され」る点は実質的な相違点とはいえない。また、仮にそうでないとしても、ワイヤを通すために孔部を設けることは、特に例示するまでもなく、周知慣用の技術的事項といえるから、引用発明1において、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面」「に設けられた孔部内を通って前記電源線が前記ケース本体から引き出され」る構成とすることは、当該周知慣用の技術的事項を踏まえて当業者が容易になし得たといえる。
さらに、本件補正発明は、接続ケーブルを通し電源線を引き出す「孔部」を設ける位置を、ケース本体の反対側の面の「長手方向中央部位」に特定するものであるが、引用発明1の「ワイヤ」を引き出すための孔部の「モジュール筐体22」(ケース本体)長手方向における位置を、触覚モータ16との接続性等を考慮して最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
そうすると、「孔部」のケース本体の長手方向における位置を「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位」に特定することは設計事項の域を出るものではない。

(ウ)「前記接続ケーブルは前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢をとる」ことについて
a 上記「ウ ウ-3」で述べたとおり、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢をとる」という発明特定事項の意味は必ずしも明確でないが、上記「ウ ウ-3(イ)(a)」の意味、要するに、引き出し方向及び途中の経路を限定せず、接続ケーブルがケース本体の右側壁に達しているという意味であるとも理解できるところ、引用文献1の図2(記載事項(1c))には、触覚モータ16に接続される「ワイヤ」(本件補正発明の「接続ケーブル」に相当。)が「モジュール筐体22」(本件補正発明の「ケース本体」に相当。)の「RS-232Cコネクタ25」の設けられた壁と反対の壁側に向かって伸びる態様で記載されているから、引用文献1には、引用発明1の「ワイヤ」(接続ケーブル)の姿勢を、「モジュール筐体22」(ケース本体)の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」(接続部)がそれに沿って設けられた壁(本件補正発明の「左側壁」に相当。)と反対側の壁側、すなわち右側壁に伸びる姿勢とすることが記載されているということもできる。また、引用発明1において「ワイヤ」(接続ケーブル)を伸ばす方向を、触覚モータ16との接続性や車載機器との接続性等を考慮して最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
そうすると、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢をとる」点は実質的な相違点とはいえないか、あるいは設計事項の域を出るものではない。

b 次に、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の右壁側に伸びる姿勢をとる」という発明特定事項の意味は必ずしも明確でないが、上記「ウ ウ-3(イ)(b)」の意味、要するに、引き出される箇所において接続ケーブルがケース本体の右側壁に伸びている、すなわち、接続ケーブルの引き出し方向が右側壁側であるという意味であるとも理解できるところ、引用文献2の第1欄第13行?第48行の「デスクトップ構成および独立型の両方の構成について同一のケーブル組立体の設計を使用することができることが望ましい。従って、コネクタがケーブルの軸の回りに相対的に移動可能な、ケーブル・アセンブリを有することが望ましい。」(記載事項(2a))という記載、第2欄第66行?第3欄第53行の「ケーブルアセンブリ200は、ケーブル202およびコネクタ204を含むことができる。ケーブル202は、ワイヤ206、シールド208、およびジャケット210を含むことができる。・・・コネクタ204は、ポスト212、カバー214、シェル216、およびフランジ218を含むことができる。・・・ケーブル組立体200は、図1Aおよび図1Bのケーブル組立体106として作用することになるよう、コネクタ204とケーブル202との間の相対的移動を可能にすることができる。」(記載事項(2b))という記載、第5欄第33行?第6欄第40行の「図6はケーブルシェル602に対し90度の配向にあるメインシェル604を示す。そのような配向は、コネクタ122の長軸(XZ平面)がケーブル12の長軸(YZ平面)に沿って90度である、図1Aにおけるパーソナル・コンピュータ・システム100で使用するのに十分であろう。・・・図8に示す配向は、コネクタ122の長軸(XZ平面)がケーブル120の長軸(YZ平面)と90度である、図1Bのパーソナルコンピュータシステム150で使用するのに十分であろう。」(記載事項(2c))という記載及び図2、6、8(記載事項(2d))の図示内容を参照すると、引用文献2には、ケーブルシェル602の回転によりコネクタ204に対するケーブル202の配向を変更できる構成が記載されており、ケーブルを様々な設置環境に対応した姿勢とするために、ケーブルを孔部内に通し、その孔部に接続した部品を回転させ、ケーブルが外部に引き出される面内でケーブルの配向を変更できる引き出し構成は、周知の技術的事項(以下「周知の技術的事項1」という。)といえる。さらに、周知例としては、上記引用文献2に加え、引用文献3(電気コネクタ10、L字形状のプラグ70、ケーブル40)、引用文献4(プラグ本体1、2、プロテクタチューブ9、コード8)が挙げられる。
そうすると、「アフターマーケット装置」に様々な設置環境が想定されることは明らかといえるところ、そのような「アフターマーケット装置」における「触覚モータ16を標準16ピンコネクタの装備を必要とする、車載診断装置に関する米国の自動車規格に接合するための装置」であって具体的な「ワイヤ」(接続ケーブル)の引き出し構成が特定されていない引用発明1において、「ワイヤ」(接続ケーブル)を様々な設置環境に対応した姿勢とするために、上記周知の技術的事項1を踏まえて「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面」(本件補正発明の「前記一面と反対の面」に相当。)内で「ワイヤ」(接続ケーブル)の配向を変更できる構成、要するに、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の」「壁側に伸びる姿勢をとる」構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
さらに、本件補正発明は、接続ケーブルの伸びる姿勢の向きを「ケース本体の右壁側」と特定するものであるが、上記aで述べたように、引用文献1には、引用発明1の「ワイヤ」(接続ケーブル)の伸びる姿勢を、「モジュール筐体22」(ケース本体)の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」(接続部)がこれに沿って設けられた壁(左側壁)と反対側の壁側、すなわち右側壁に向けることが記載されているということもできるし、また引用発明1において「ワイヤ」(接続ケーブル)を引き出す方向を、触覚モータ16との接続性や車載機器との接続性等を考慮して最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
そうすると、接続ケーブルの伸びる姿勢を「ケース本体の右壁側」と特定する点は実質的な相違点とはいえないか、あるいは設計事項の域を出るものではない。

c 引用文献5の段落【0005】の「電子産業分野においては、電気ケーブルの効率的な配線を可能とする動的多方向ケーブル出口を有する電気コネクタが必要とされる。」(記載事項(5a))という記載、段落【0007】?【0015】の「コンピュータのような電気デバイスの組合せコネクタに電気ケーブル40をインタフェースする電気コネクタ10の一例が示されている。電気コネクタ10は、ハウジング20と、このハウジング20内で旋回可能に設けられた旋回部材30を有している。・・・外側枢支軸50は、ハウジング20に対して垂直に設けられ、外側球殻34を左右に旋回させる。内側枢支軸60は、ハウジング20に対して水平に設けられ、内側球体36を外側球殻34に対して上下に旋回させる。したがって、電気ケーブル40は、あらゆる方向に向くように回転することができる。・・・ただ1つの軸の周りでのケーブルの回転が要求される場合、旋回部材30を、一組の枢支軸と協働する1つの球体部材で構成することができる。」(記載事項(5b))という記載及び図1?4(記載事項(5c))の図示内容を参照すると、引用文献5には、旋回部材30の回転により電気コネクタ10に対する電気ケーブル40の配向を変更できる構成が記載されており、効率的な配線を可能とするために、電気ケーブルが通される孔部に接続した部品を回転させ、電気ケーブルが外部に引き出される面と垂直な面内でケーブルの配向を変更できる引き出し構成は、周知の技術的事項(以下「周知の技術的事項2」という。)といえる。さらに、周知例としては、上記引用文献5に加え、引用文献6(受け部材40、接続端子20、ケーブル26)が挙げられる。
そうすると、「アフターマーケット装置」に様々な設置環境が想定されることは明らかといえるところ、そのような「アフターマーケット装置」における「触覚モータ16を標準16ピンコネクタの装備を必要とする、車載診断装置に関する米国の自動車規格に接合するための装置」であって具体的な「ワイヤ」(接続ケーブル)の引き出し構成が特定されていない引用発明1において、「ワイヤ」(接続ケーブル)の様々な設置環境における効率的な配線を可能とするために、上記周知の技術的事項2を踏まえて「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面」(前記一面と反対の面)と垂直な面内で「ワイヤ」(接続ケーブル)の配向を変更できる構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
さらに、本件補正発明は、接続ケーブルの伸びる姿勢の向きを「ケース本体の右壁側」と特定するものであるが、上記aで述べたように、引用文献1には、引用発明1の「ワイヤ」(接続ケーブル)の伸びる姿勢を、「モジュール筐体22」(ケース本体)の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」(接続部)がこれに沿って設けられた壁(左側壁)と反対側の壁側、すなわち右側壁に向けることが記載されているということもできるし、また引用発明1において「ワイヤ」(接続ケーブル)を引き出す方向を、触覚モータ16との接続性や車載機器との接続性等を考慮して最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
そうすると、接続ケーブルの伸びる姿勢を「ケース本体の右壁側」と特定する点は実質的な相違点とはいえないか、あるいは設計事項の域を出るものではない。

d 引用文献7の段落[0027]?[0029]の「コネクタケーブルポジショナ10は、様々な態様で提供される。一態様では、図1A、1B、1Cに示されているように、ケーブルポジショナ10は、少なくとも1つの:長手方向軸線を有する本体12と、コネクタと係合するように構成された近位端13、遠位端14、ポジショナを通してケーブルの通路を提供するために、ポジショナ内に画定されたボア16と、少なくとも1つの溝20を含むことができる。・・・一態様では、本体は、コネクタ5と一体的に形成することが可能である。」(記載事項(7a))という記載、[0039]?[0040]の「使用の際、ポジショナ10に結合された、あるいは一緒に形成されたコネクタ5は、必要に応じて接続を行うために、設置され及び/又は使用される。OBDコネクタの場合、これは、通常、車両のダッシュボードの下にあるであろう。コネクタに取り付けられたケーブル7の少なくとも一部は、コネクタの設置前あるいは設置後に、ポジショナ10の少なくとも1つの溝20に挿入される。・・・ケーブルは、ケーブルの障害性を最小にする及び/またはケーブルを所望の方向に沿わせるために、ユーザが望むいずれか1つの、少なくとも1つの溝に挿入される。例えば、コネクタケーブルのポジショナは、OBDコネクタ5のケーブルを保持して、OBDコネクタとコネクタケーブルポジショナが設置されている車両の運転者と干渉しないようにする。・・・別の実施形態では、本体に溝を形成するのではなく、・・・本体は、1つ又は複数の分割リングを形成することができる。分割リングは遠位端の上に形成あるいは結合されることができ、ケーブルがリング内の裂け目を押して通されるよう、ケーブルがリングを拡張することを可能にするのに十分可撓な、けれども、ケーブルがリングに囲まれた後には、共にスプリングバックするように十分な剛性と弾性のある、材料から形成することができる。」という記載(記載事項(7b))及び図1、2(記載事項(7c))の図示内容を参照すると、引用文献7には、OBDコネクタとコネクタケーブルポジショナが設置されている車両の運転者と干渉しないようにするために、本体12の遠位端14にボア16から引き出されるケーブルを通す分割リングを形成し、ケーブルを引き出す方向を変更できる構成が記載されている。
そうすると、「嵌め合わせOBD-IIコネクタ23」が設けられた「アフターマーケット装置」であって、具体的な「ワイヤ」(接続ケーブル)の引き出し構成が特定されていない引用発明1において、「ワイヤ」(接続ケーブル)を車両の運転者と干渉しないようにするために、上記引用文献7に記載された技術的事項を参考とし、「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面」(前記一面と反対の面)に分割リングを設けて、「ワイヤ」(接続ケーブル)を引き出す方向を変更できる構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
さらに、本件補正発明は、接続ケーブルの伸びる姿勢の向きを「ケース本体の右壁側」と特定するものであるが、上記aで述べたように、引用文献1には、引用発明1の「ワイヤ」(接続ケーブル)の姿勢を、「モジュール筐体22」(ケース本体)の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」(接続部)がこれに沿って設けられた壁(左側壁)と反対側の壁側、すなわち右側壁に伸びる姿勢とすることが記載されているということもできるし、また引用発明1において「ワイヤ」(接続ケーブル)を引き出す方向を、触覚モータ16との接続性や車載機器との接続性等を考慮して、あるいは、ケーブルの障害性を最小にするという上記引用文献7に記載された技術的事項の意義を踏まえて、最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
そうすると、接続ケーブルの伸びる姿勢を「ケース本体の右壁側」と特定する点は実質的な相違点とはいえないか、あるいは設計事項の域を出るものではない。

e 以上a?dによれば、相違点2に係る本件補正発明の構成は、実質的な相違点といえないか、あるいは、引用発明1、引用発明1及び周知の技術的事項1、引用発明1及び周知の技術的事項2又は引用発明1及び引用文献7に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たといえる。

オ 小括
したがって、本件補正後の本願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明1)、引用文献1に記載された発明(引用発明1)及び引用文献2?4に記載された技術的事項(周知の技術的事項1)、引用文献1に記載された発明(引用発明1)及び引用文献5?6に記載された技術的事項(周知の技術的事項2)、又は引用文献1に記載された発明(引用発明1)及び引用文献7に記載された技術的事項に基いて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるとはいえない。

(3) むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明及び明細書の記載事項
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成30年2月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1(1)補正前の請求項1」に記載されたとおりのものである。

また、当初明細書等における発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。

A2「【0020】
(10)前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部を設けるとよい。このようにすると、別の車載機器を接続することができ、拡張性・汎用性が高くなる。」

B2「【0028】
上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、他方の側壁(右側壁)10gに沿って下端から上方に切り込まれた細長凹状切欠部10e″が形成される。窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部である。USBその他の接続コネクタ部21を設ける場合、この窓孔10e′に当該端子部を配置することで、当該端子部を窓孔10e′を介して外部に露出させ、外部機器と接続できるようにする。また、係る外部機器との接続コネクタ部21を設けない場合、窓孔10e′は、目隠し部材17を貼って閉塞する。さらに,この目隠し部材17は、樹脂などからなる板材や、シール等各種のものを用いることができる。このようにすることで、外部機器との接続コネクタ部を設けるものと設けないものに対し、上ケース10を共用できる。細長凹状切欠部10″は、平型ヒューズ18を着脱するための装着口の一部を構成する。
【0029】
さらに後壁10eの下方中央部位には、後方に向けて突出する台座10hを設けている。の台座10hは、下端中央に半円状の凹部10h′を設け、さらに台座10hの表面上方には2つの突起10h″を設けている。また、後壁10eの内面側には、その下端から下方に突出するように、爪片10iを設けている。
【0030】
一方、下ケース11の前壁11aは、その上端側から凹状に切り欠かれた凹状切欠部11a′が形成される。上ケース10と下ケース11を接合した際に、凹状切欠部10a′,11a′とが一体となってケース本体2の前側開口部を構成する。
【0031】
また、下ケース11の底板11bの上面の前壁11a側には、上記の支柱10cに対向する位置に孔部11cが形成される。さらに、下ケース11の底板11bの上面の前壁11a側には、帯板状の突片11dが形成される。この突片11dと前壁11aとは、所定の距離隔てて配置され、両者11d,11aの間には、所定の空間が形成される。この突片11d,前壁11a間の距離は、上ケース10の突片10d,前壁10a間の距離と等しくしている。さらにまた、底板11bの後側中央には、小窓孔11b′が形成される。
【0032】
下ケース11の後壁11eには、右側壁11gに沿って上端から下方に切り込まれた凹状切欠部11e″が形成される。この凹状切欠部11e″の幅は、上ケース10の後壁10eに形成した細長凹状切欠部10e″の幅と等しくし、さらに、その設置位置も上ケース10と下ケース11とを接合した際に、細長凹状切欠部10e″と凹状切欠部11e″とが対向するように設定している。両者10e″,11e″が一体となって上下に延びる細長な矩形状の開口部を構成する。これら細長凹状切欠部10e″と凹状切欠部11e″からなる開口部が、平型ヒューズ18の装着口を構成する。このように、平型ヒューズ18の装着口をケース本体2の背面となる後壁10e側に設けることで、車載機器接続用アダプタ1を車両に装着した状態で平型ヒューズ18を交換することが容易にできる。また、例えばヒューズ差込部を側面側に設ける場合に比べ内部の基板の面積を大きく取ること可能となる。そして、平型ヒューズ18を装着した状態では、平型ヒューズ18が装着口から露出する。
【0033】
さらに後壁11eの上方中央部位には、後方に向けて突出する台座11hを設けている。台座11hは、上端中央に半円状の凹部11h′を設け、さらに台座11hの表面(外面)下方には、後方に突出する板状のストッパー部11h″を設けている。凹部11h′の半径は、上ケース10の台座10hに設けた凹部10h′と等しくし、上ケース10と下ケース11とを接合した状態では両凹部10h′,11h′が合わさって円形の孔部を構成するようになっている。また、下ケース11の後壁11eの内面(ケース本体2の前方側)の所定位置には、上ケース10の後壁10eの内面側に設けた爪片10iと嵌め合う凸条11iを備える。
【0034】
上ケース10の下端と下ケース11の上端を突き合わせた際には、支柱10cの下端が、下ケース11の孔部11cの周辺に接触する。また、このとき上ケース10の爪片10iが、下ケースの凸条11iを乗り越えて下方に移動することから、両者10i,11iが連携され、位置決めされると共に、ケース本体2の背面側で、上ケート10と下ケース11が仮固定される。よって、孔部11cよりネジ19を挿入し、そのネジ19を締めることで、ネジ19が支柱10cの下端に設けた孔部10c′(ネジ穴)と締結し、上ケート10と下ケース11が連結・固定される。」

C2「【0041】
また、外部とのインタフェースとなる接続コネクタ部21は、第2プリント配線基板16b上に実装し、平型ヒューズ18を装着するヒューズ差込部24は、第1プリント配線基板16a上に実装している。このヒューズ差込部24は、箱状の本体の奥側に平型ヒューズ18の2本の端子を差し込むコネクタを備え、コネクタの他端側すなわち本体の外側は、図5に示すように第1プリント配線基板16aに半田付けされ固定されている。この他端側の一方のピン24aは、端子ピン13dのうち、車両バッテリーからの電源が供給される端子に第1プリント配線基板16a上の配線パターンによって電気的に接続されている。他端側の他方のピン24bは、第1プリント配線基板16a上に設けた電源回路に接続され、電源回路からプリント配線基板16a,16b上の各部及び接続ケーブル15の電源線へ電源を供給している。このようにすると、小さいケース本体10の空間内に効率よく各部品を配置することができる。また、車両側からの電源ラインは、接続端子部13を経由してケース本体10内の回路に導かれるので、当該電源ラインに近い場所に平型ヒューズ18を配置することができ、各回路素子の保護が適切に行える。
【0042】
さらに本実施形態では、接続ケーブル15は、電源線として2本(+,アース)、信号線として2本(送信用,受信用)の4芯(図示省略)としている。また、信号線はツイスト線として、送信用と受信用でそれぞれ2本ずつ使用し、合計6芯とすることもできるしその他の形態も可能である。ケース本体2の外側に引き出された4芯の外周は、保護チューブ15aで覆われて断線等しないように保護される。その4芯の先端は、接続ブッシュ14内を貫通してケース本体2内に導かれ、コネクタ部22に接続される。このコネクタ部22は、その端子ピン(図示省略)を第2プリント配線基板16bの所定位置に形成された4つの端子用孔部16b′(図16参照)に接続する。これにより、回路部16に設けられた処理回路・電源回路は、当該4芯に電気的に導通される。また、ケース本体2では、当該4芯は保護チューブ15a,接続ブッシュ14に覆われることなく露出した状態となっているので、容易に曲げることができる。
【0043】
接続ブッシュ14は、略矩形のブロック体からなるブッシュ本体14aを備え、一つの面14a′に接続ケーブル15(保護チューブ)が接続される。また、その接続ケーブル15(保護チューブ)が接続される面14a′に隣接する面が、ケース本体2への取り付け面14a″となる。この取り付け面14a″には、円筒状の首部14cが形成されさらにその首部14cの先端側には外側に突出する円板状のフランジ部14dが形成される。首部14cの外径は、上ケース10の台座10hに設けた凹部10h′,下ケース11の台座11hに設けた凹部11h′の直径と等しいか若干小さくし、首部14cの長さは、上ケース10や下ケース11の台座10h,11hにおける厚さと等しいか若干長く設定している。これにより、首部14cを上下から上ケース10(台座10h),下ケース11(台座11h)で挟み込むことで、首部14cは、凹部10h′,11h′で形成される円形の開口部に収まるとともに、回転可能となる。
【0044】
さらにブッシュ本体14a内には、接続ケーブル15を取り付ける1つの面14a′から取り付け面14a″ひいては首部10cに至るL字型の貫通孔14eが形成され、貫通孔10eの両端は、それぞれの面14a′,14a″に開口する。そして、接続ケーブル15を構成する4芯が貫通孔10e内に挿入され、先端が首部10c側から外部に引き出されるようになっている。」

D2 さらに、本願には、以下の図が添付されている。
【図1】 【図3】



2 当審拒絶理由通知の拒絶の理由
当審拒絶理由通知の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
(1)本願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)平成30年2月13日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(3)本願の請求項1に係る発明は、引用文献1(審決注:後記「4(1)」の引用文献8)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(4)本願の請求項1に係る発明は、引用文献2(審決注:上記「第2 2(2)イ(ア)の引用文献1」)に記載された発明に基いて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-61948号公報
引用文献2:特表2009-539661号公報

3 原出願の明細書の記載事項
本願の出願直前の原出願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「原出願明細書等」という。)における発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。

a「【0020】
(10)前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部を設けるとよい。このようにすると、別の車載機器を接続することができ、拡張性・汎用性が高くなる。」

b「【0028】
上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、他方の側壁(右側壁)10gに沿って下端から上方に切り込まれた細長凹状切欠部10e″が形成される。窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部である。USBその他の接続コネクタ部21を設ける場合、この窓孔10e′に当該端子部を配置することで、当該端子部を窓孔10e′を介して外部に露出させ、外部機器と接続できるようにする。また、係る外部機器との接続コネクタ部21を設けない場合、窓孔10e′は、目隠し部材17を貼って閉塞する。さらに,この目隠し部材17は、樹脂などからなる板材や、シール等各種のものを用いることができる。このようにすることで、外部機器との接続コネクタ部を設けるものと設けないものに対し、上ケース10を共用できる。細長凹状切欠部10″は、平型ヒューズ18を着脱するための装着口の一部を構成する。
【0029】
さらに後壁10eの下方中央部位には、後方に向けて突出する台座10hを設けている。の台座10hは、下端中央に半円状の凹部10h′を設け、さらに台座10hの表面上方には2つの突起10h″を設けている。また、後壁10eの内面側には、その下端から下方に突出するように、爪片10iを設けている。
【0030】
一方、下ケース11の前壁11aは、その上端側から凹状に切り欠かれた凹状切欠部11a′が形成される。上ケース10と下ケース11を接合した際に、凹状切欠部10a′,11a′とが一体となってケース本体2の前側開口部を構成する。
【0031】
また、下ケース11の底板11bの上面の前壁11a側には、上記の支柱10cに対向する位置に孔部11cが形成される。さらに、下ケース11の底板11bの上面の前壁11a側には、帯板状の突片11dが形成される。この突片11dと前壁11aとは、所定の距離隔てて配置され、両者11d,11aの間には、所定の空間が形成される。この突片11d,前壁11a間の距離は、上ケース10の突片10d,前壁10a間の距離と等しくしている。さらにまた、底板11bの後側中央には、小窓孔11b′が形成される。
【0032】
下ケース11の後壁11eには、右側壁11gに沿って上端から下方に切り込まれた凹状切欠部11e″が形成される。この凹状切欠部11e″の幅は、上ケース10の後壁10eに形成した細長凹状切欠部10e″の幅と等しくし、さらに、その設置位置も上ケース10と下ケース11とを接合した際に、細長凹状切欠部10e″と凹状切欠部11e″とが対向するように設定している。両者10e″,11e″が一体となって上下に延びる細長な矩形状の開口部を構成する。これら細長凹状切欠部10e″と凹状切欠部11e″からなる開口部が、平型ヒューズ18の装着口を構成する。このように、平型ヒューズ18の装着口をケース本体2の背面となる後壁10e側に設けることで、車載機器接続用アダプタ1を車両に装着した状態で平型ヒューズ18を交換することが容易にできる。また、例えばヒューズ差込部を側面側に設ける場合に比べ内部の基板の面積を大きく取ること可能となる。そして、平型ヒューズ18を装着した状態では、平型ヒューズ18が装着口から露出する。
【0033】
さらに後壁11eの上方中央部位には、後方に向けて突出する台座11hを設けている。台座11hは、上端中央に半円状の凹部11h′を設け、さらに台座11hの表面(外面)下方には、後方に突出する板状のストッパー部11h″を設けている。凹部11h′の半径は、上ケース10の台座10hに設けた凹部10h′と等しくし、上ケース10と下ケース11とを接合した状態では両凹部10h′,11h′が合わさって円形の孔部を構成するようになっている。また、下ケース11の後壁11eの内面(ケース本体2の前方側)の所定位置には、上ケース10の後壁10eの内面側に設けた爪片10iと嵌め合う凸条11iを備える。
【0034】
上ケース10の下端と下ケース11の上端を突き合わせた際には、支柱10cの下端が、下ケース11の孔部11cの周辺に接触する。また、このとき上ケース10の爪片10iが、下ケースの凸条11iを乗り越えて下方に移動することから、両者10i,11iが連携され、位置決めされると共に、ケース本体2の背面側で、上ケート10と下ケース11が仮固定される。よって、孔部11cよりネジ19を挿入し、そのネジ19を締めることで、ネジ19が支柱10cの下端に設けた孔部10c′(ネジ穴)と締結し、上ケート10と下ケース11が連結・固定される。」

c「【0041】
また、外部とのインタフェースとなる接続コネクタ部21は、第2プリント配線基板16b上に実装し、平型ヒューズ18を装着するヒューズ差込部24は、第1プリント配線基板16a上に実装している。このヒューズ差込部24は、箱状の本体の奥側に平型ヒューズ18の2本の端子を差し込むコネクタを備え、コネクタの他端側すなわち本体の外側は、図5に示すように第1プリント配線基板16aに半田付けされ固定されている。この他端側の一方のピン24aは、端子ピン13dのうち、車両バッテリーからの電源が供給される端子に第1プリント配線基板16a上の配線パターンによって電気的に接続されている。他端側の他方のピン24bは、第1プリント配線基板16a上に設けた電源回路に接続され、電源回路からプリント配線基板16a,16b上の各部及び接続ケーブル15の電源線へ電源を供給している。このようにすると、小さいケース本体10の空間内に効率よく各部品を配置することができる。また、車両側からの電源ラインは、接続端子部13を経由してケース本体10内の回路に導かれるので、当該電源ラインに近い場所に平型ヒューズ18を配置することができ、各回路素子の保護が適切に行える。
【0042】
さらに本実施形態では、接続ケーブル15は、電源線として2本(+,アース)、信号線として2本(送信用,受信用)の4芯(図示省略)としている。また、信号線はツイスト線として、送信用と受信用でそれぞれ2本ずつ使用し、合計6芯とすることもできるしその他の形態も可能である。ケース本体2の外側に引き出された4芯の外周は、保護チューブ15aで覆われて断線等しないように保護される。その4芯の先端は、接続ブッシュ14内を貫通してケース本体2内に導かれ、コネクタ部22に接続される。このコネクタ部22は、その端子ピン(図示省略)を第2プリント配線基板16bの所定位置に形成された4つの端子用孔部16b′(図16参照)に接続する。これにより、回路部16に設けられた処理回路・電源回路は、当該4芯に電気的に導通される。また、ケース本体2では、当該4芯は保護チューブ15a,接続ブッシュ14に覆われることなく露出した状態となっているので、容易に曲げることができる。
【0043】
接続ブッシュ14は、略矩形のブロック体からなるブッシュ本体14aを備え、一つの面14a′に接続ケーブル15(保護チューブ)が接続される。また、その接続ケーブル15(保護チューブ)が接続される面14a′に隣接する面が、ケース本体2への取り付け面14a″となる。この取り付け面14a″には、円筒状の首部14cが形成されさらにその首部14cの先端側には外側に突出する円板状のフランジ部14dが形成される。首部14cの外径は、上ケース10の台座10hに設けた凹部10h′,下ケース11の台座11hに設けた凹部11h′の直径と等しいか若干小さくし、首部14cの長さは、上ケース10や下ケース11の台座10h,11hにおける厚さと等しいか若干長く設定している。これにより、首部14cを上下から上ケース10(台座10h),下ケース11(台座11h)で挟み込むことで、首部14cは、凹部10h′,11h′で形成される円形の開口部に収まるとともに、回転可能となる。
【0044】
さらにブッシュ本体14a内には、接続ケーブル15を取り付ける1つの面14a′から取り付け面14a″ひいては首部10cに至るL字型の貫通孔14eが形成され、貫通孔10eの両端は、それぞれの面14a′,14a″に開口する。そして、接続ケーブル15を構成する4芯が貫通孔10e内に挿入され、先端が首部10c側から外部に引き出されるようになっている。」

d さらに、原出願には、以下の図が添付されている。
【図1】 【図3】



4 各引用文献の記載等
(1)引用文献8に記載された事項及び発明
当審拒絶理由通知の拒絶の理由に引用文献1として示され、本願の現実の出願日前に頒布された特開2012-61948号公報(原出願の公開公報。以下「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。

(8a)「【請求項1】
ケース本体と、
ケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部と、
前記一面と反対側の面から外部に引き出される接続ケーブルと、
その接続ケーブルを前記ケース本体の前記反対側の面と平行な平面内で設定された角度範囲内で正逆回転可能にする回転機構と、
前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部と、
を備えた車載機器接続用アダプタ。」

(8b)「【請求項6】
前記ケース本体には、平型ヒューズを装着するヒューズ差込部を備えたことを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の車載機器接続用アダプタ。」

(8c)「【請求項7】
前記ヒューズ差込部の装着口は、前記ケース本体の前記反対側の面に設けたことを特徴とする請求項6に記載の車載機器接続用アダプタ。」

(8d)「【請求項8】
前記接続端子部が接続される第1の基板と、当該第1の基板に重ねて配置され前記第1の基板と接続される第2の基板を備え、
前記第2の基板は、前記平型ヒューズ差込部を避けるように配置するとともに、前記第1の基板に前記平型ヒューズ差込部のコネクタを接続するように構成したことを特徴とする請求項7に記載の車載機器接続用アダプタ。」

(8e)「【請求項10】
前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部を設けたことを特徴とする請求項1?9のいずれか1項に記載の車載機器接続用アダプタ。」

(8f)「【請求項11】
前記ケース本体には、スイッチ操作部が露出する開口部を設け、
前記スイッチ操作部がない場合には当該開口部をシールで覆うようにしたことを特徴とする請求項1?10のいずれか1項に記載の車載機器接続用アダプタ。」

(8g)「【0025】
ケース本体2は、上下に2分割された上ケース10と下ケース11を互いの先端縁部同士を突き合わせて連結する。本実施形態では、下ケース11は、底浅で皿状のケースであり、上ケース10は下方及び前方が大きく開放し、さらに下ケース11に比べると高さ(厚さ)が大きく設定している。これら上ケース10,下ケース11は、ABSその他の樹脂から形成され、硬度は110度以上の硬質樹脂と言われる材料で製造するのが好ましい。
・・・
【0028】
上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、他方の側壁(右側壁)10gに沿って下端から上方に切り込まれた細長凹状切欠部10e″が形成される。窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部である。USBその他の接続コネクタ部21を設ける場合、この窓孔10e′に当該端子部を配置することで、当該端子部を窓孔10e′を介して外部に露出させ、外部機器と接続できるようにする。また、係る外部機器との接続コネクタ部21を設けない場合、窓孔10e′は、目隠し部材17を貼って閉塞する。さらに,この目隠し部材17は、樹脂などからなる板材や、シール等各種のものを用いることができる。このようにすることで、外部機器との接続コネクタ部を設けるものと設けないものに対し、上ケース10を共用できる。細長凹状切欠部10″は、平型ヒューズ18を着脱するための装着口の一部を構成する。
【0029】
さらに後壁10eの下方中央部位には、後方に向けて突出する台座10hを設けている。の台座10hは、下端中央に半円状の凹部10h′を設け、さらに台座10hの表面上方には2つの突起10h″を設けている。また、後壁10eの内面側には、その下端から下方に突出するように、爪片10iを設けている。
・・・
【0032】
下ケース11の後壁11eには、右側壁11gに沿って上端から下方に切り込まれた凹状切欠部11e″が形成される。この凹状切欠部11e″の幅は、上ケース10の後壁10eに形成した細長凹状切欠部10e″の幅と等しくし、さらに、その設置位置も上ケース10と下ケース11とを接合した際に、細長凹状切欠部10e″と凹状切欠部11e″とが対向するように設定している。両者10e″,11e″が一体となって上下に延びる細長な矩形状の開口部を構成する。これら細長凹状切欠部10e″と凹状切欠部11e″からなる開口部が、平型ヒューズ18の装着口を構成する。このように、平型ヒューズ18の装着口をケース本体2の背面となる後壁10e側に設けることで、車載機器接続用アダプタ1を車両に装着した状態で平型ヒューズ18を交換することが容易にできる。また、例えばヒューズ差込部を側面側に設ける場合に比べ内部の基板の面積を大きく取ること可能となる。そして、平型ヒューズ18を装着した状態では、平型ヒューズ18が装着口から露出する。
【0033】
さらに後壁11eの上方中央部位には、後方に向けて突出する台座11hを設けている。台座11hは、上端中央に半円状の凹部11h′を設け、さらに台座11hの表面(外面)下方には、後方に突出する板状のストッパー部11h″を設けている。凹部11h′の半径は、上ケース10の台座10hに設けた凹部10h′と等しくし、上ケース10と下ケース11とを接合した状態では両凹部10h′,11h′が合わさって円形の孔部を構成するようになっている。また、下ケース11の後壁11eの内面(ケース本体2の前方側)の所定位置には、上ケース10の後壁10eの内面側に設けた爪片10iと嵌め合う凸条11iを備える。」

(8h)「【0043】
接続ブッシュ14は、略矩形のブロック体からなるブッシュ本体14aを備え、一つの面14a′に接続ケーブル15(保護チューブ)が接続される。また、その接続ケーブル15(保護チューブ)が接続される面14a′に隣接する面が、ケース本体2への取り付け面14a″となる。この取り付け面14a″には、円筒状の首部14cが形成されさらにその首部14cの先端側には外側に突出する円板状のフランジ部14dが形成される。首部14cの外径は、上ケース10の台座10hに設けた凹部10h′,下ケース11の台座11hに設けた凹部11h′の直径と等しいか若干小さくし、首部14cの長さは、上ケース10や下ケース11の台座10h,11hにおける厚さと等しいか若干長く設定している。これにより、首部14cを上下から上ケース10(台座10h),下ケース11(台座11h)で挟み込むことで、首部14cは、凹部10h′,11h′で形成される円形の開口部に収まるとともに、回転可能となる。
【0044】
さらにブッシュ本体14a内には、接続ケーブル15を取り付ける1つの面14a′から取り付け面14a″ひいては首部10cに至るL字型の貫通孔14eが形成され、貫通孔10eの両端は、それぞれの面14a′,14a″に開口する。そして、接続ケーブル15を構成する4芯が貫通孔10e内に挿入され、先端が首部10c側から外部に引き出されるようになっている。」
(審決注:「貫通孔10e」は「貫通孔14e」の、「首部10c」は「首部14c」の、それぞれ誤記と認める。)

(8i)引用文献8には以下の図が示されている。



また、上記記載事項及び図示内容によれば、以下の事項が認められる。
(8j)請求項10の「前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部を設けた」(記載事項(8e))という記載、段落【0028】の「上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、・・・窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部である。」(記載事項(8g))という記載を参照すると、上ケース10の後壁10eが、ケース本体2の「前記反対側の面」をなすことが明らかである。

(8k)段落【0025】の「ケース本体2は、上下に2分割された上ケース10と下ケース11を互いの先端縁部同士を突き合わせて連結する。」(記載事項(8g))という記載、段落【0029】?【0033】の「後壁10eの下方中央部位には、後方に向けて突出する台座10hを設けている。の台座10hは、下端中央に半円状の凹部10h′を設け、・・・後壁11eの上方中央部位には、後方に向けて突出する台座11hを設けている。台座11hは、上端中央に半円状の凹部11h′を設け、さらに台座11hの表面(外面)下方には、後方に突出する板状のストッパー部11h″を設けている。凹部11h′の半径は、上ケース10の台座10hに設けた凹部10h′と等しくし、上ケース10と下ケース11とを接合した状態では両凹部10h′,11h′が合わさって円形の孔部を構成するようになっている。」(記載事項(8g))という記載、段落【0043】?【0044】の「首部14cを上下から上ケース10(台座10h),下ケース11(台座11h)で挟み込む・・・接続ケーブル15を構成する4芯が貫通孔10e内に挿入され、先端が首部10c側から外部に引き出されるようになっている。」(記載事項(8h))という記載及び図1、3(記載事項(8i))の図示内容によれば、接続ケーブル15が引き出される側の面の、ケース本体の長手方向中央部位に首部14cを設け、接続ケーブル15は、首部14c側から引き出されていることが認められる。

以上の記載事項(8a)?(8i)、認定事項(8j)、(8k)を総合すると、引用文献8には、次の発明が記載されていると認められる。

<引用発明2>
「ケース本体2と、
ケース本体2の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部と、
前記一面と反対側の面から外部に引き出される接続ケーブル15と、
前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部と、
を備えた車載機器接続用アダプタであって、
ケース本体2は、上下に2分割された上ケース10と下ケース11を互いの先端縁部同士を突き合わせて連結し、
上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部であり、窓孔10e′は、目隠し部材17を貼って閉塞し、
上ケース10の後壁10eは上記ケース本体2の前記反対側の面をなし、
接続ケーブル15が引き出される側の面の、ケース本体の長手方向中央部位に首部14cを設け、接続ケーブル15は、首部14c側から引き出され、
前記ケース本体には、平型ヒューズを装着するヒューズ差込部を備え、前記ヒューズ差込部の装着口は、前記ケース本体の前記反対側の面に設け、
前記接続端子部が接続される第1の基板と、当該第1の基板に重ねて配置され前記第1の基板と接続される第2の基板を備え、
前記第2の基板は、前記平型ヒューズ差込部を避けるように配置するとともに、前記第1の基板に前記平型ヒューズ差込部のコネクタを接続するように構成し、
前記ケース本体には、スイッチ操作部が露出する開口部を設け、
当該開口部をシールで覆うようにした
車載機器接続用アダプタ。」

(2)引用文献1に記載された事項及び発明
当審拒絶理由通知の拒絶の理由に引用文献2として示され、本願の原出願の出願日前に頒布された引用文献1に記載された事項及び発明は、上記「第2 2(2)イ(ア)」に記載したとおりであり、引用文献1に記載された発明は、上記「第2 2(2)イ(ア)」に示した「引用発明1」のとおりである。

5 当審の判断
5-1 特許法第36条第6項第2号について
(1)請求項1における、「外部機器と接続する接続部への接続のための開口部」に関し、「前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けた」との記載について、本願発明が明確であるといえるためには、当該記載が意味する具体的な事物の範囲を当業者が理解できることが必要である。

(2)「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分」は、その文言からみて、「前記ケース本体の前記反対側の面」のうち、「長手方向中央」に属さない範囲を意味すると解されるところ、「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分」を一意に特定するためには、「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央」の範囲が一意に特定できる必要がある。
しかしながら、「中央」の字義は「まんなか。」あるいは「物事の中心となる枢要な位置。また、その位置にあるもの。」(株式会社岩波書店・広辞苑第六版)であり、すなわち特定の位置を意味するものと解されるから、「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央」という記載を参照しても、「前記ケース本体の前記反対側の面」のうち、どこからどこまでが「長手方向中央」に属するのか、その範囲は判然としない。
また、本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。記載事項は当初明細書等における明細書と同一。)の段落【0028】、【0029】、【0033】の「上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、他方の側壁(右側壁)10gに沿って下端から上方に切り込まれた細長凹状切欠部10e″が形成される。窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部である。USBその他の接続コネクタ部21を設ける場合、この窓孔10e′に当該端子部を配置することで、当該端子部を窓孔10e′を介して外部に露出させ、外部機器と接続できるようにする。・・・後壁10eの下方中央部位には、後方に向けて突出する台座10hを設けている。・・・後壁11eの上方中央部位には、後方に向けて突出する台座11hを設けている。台座11hは、上端中央に半円状の凹部11h′を設け、さらに台座11hの表面(外面)下方には、後方に突出する板状のストッパー部11h″を設けている。凹部11h′の半径は、上ケース10の台座10hに設けた凹部10h′と等しくし、上ケース10と下ケース11とを接合した状態では両凹部10h′,11h′が合わさって円形の孔部を構成するようになっている。」(記載事項B2)という記載等を参照しても、「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央」の範囲を理解できる記載はない。

(3)以上のとおり、本願明細書の記載を参照しても、「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央」の範囲、ひいては上記「前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けた」という記載が意味する具体的な事物の範囲を当業者が理解することができない。
したがって、本願発明は明確でない。

5-2 特許法第17条の2第3項について
(1)補正の内容
平成30年2月13日付け手続補正(以下「本件前補正」という。)は特許請求の範囲を補正するものであって、本件前補正による補正後の請求項1の記載を示すと以下のとおりである(下線は補正箇所を示し、本件前補正において付されたとおりである。)。

「ケース本体と、
そのケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部と、
前記一面と反対の面側から外部に引き出される接続ケーブルと、
前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部と、
を備え、
前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための開口部を設け、
前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部から外部に引き出される一方、前記接続部はコネクタとし、前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けたことを特徴とする車載機器接続用アダプタ。」

(2)補正の適否
本件前補正により補正された請求項1は、「外部機器と接続する接続部への接続のための開口部」に関し、「前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けた」という発明特定事項(以下「事項A」という。)を含んでいる。
また、上記事項Aについて、請求人は平成30年2月13日付け意見書(【意見の内容】1.)で「[0028][0029]図1図3等の記載に基づき発明を特定する補正をしました。」と主張しているので、以下に検討する。
上記5-1で述べたとおり、「前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けた」という記載の意味は必ずしも明確ではないが、本願明細書の段落【0028】の「上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、他方の側壁(右側壁)10gに沿って下端から上方に切り込まれた細長凹状切欠部10e″が形成される。・・・細長凹状切欠部10″(審決注:「10″」は「10e″」の誤記と認める。)は、平型ヒューズ18を着脱するための装着口の一部を構成する。」(記載事項B2)という記載を参照すると、細長凹状切欠部10e″、すなわち平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置は、ケース本体の長手方向における端部をなす他方の側壁(右側壁)10gに沿っているので、少なくとも、当該平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置は、事項Aにおける「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分」に該当すると解される。そうすると、事項Aは、「前記開口部」、すなわち「外部機器と接続する接続部への接続のための開口部」を、平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置に設ける態様をも含むといえる。また、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部から外部に引き出される」(請求項1)から、事項Aは、接続ケーブルが引き出される位置と平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置との間に設ける態様を含み得るともいえる。
これに対して、当初明細書等を参照すると、段落【0028】の「上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、・・・窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部である。」(記載事項B2)という記載、段落【0041】の「外部とのインタフェースとなる接続コネクタ部21は、第2プリント配線基板16b上に実装し」(記載事項C2)という記載及び図1、3(記載事項D2)の図示内容によれば、当初明細書等に記載された「前記開口部」の位置は「一方の側壁(左側壁)10fに沿っ」た位置であると理解でき、他の記載を参照しても、「前記反対側の面の長手方向中央でない部分」に及んで設け得ると解すべき合理性があるとはいえない。そうすると、当初明細書等は、「前記開口部」を上記平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置などに設ける態様を含むような、一般化された「前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設け」る構成を記載したものとはいえない。
したがって、上記事項Aは当初明細書等に記載された事項から自明でない事項を含んでいる。
してみると、本件前補正は「当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである」とはいえない。

よって、本件前補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

5-3 特許法第29条第1項第3号について
(1)本願の出願日について
上記5-2で述べたとおり、本願発明は上記事項Aを含んでいる。
上記5-1で述べたとおり、「前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けた」という記載の意味は必ずしも明確ではないが、本願明細書の段落【0028】の「上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、他方の側壁(右側壁)10gに沿って下端から上方に切り込まれた細長凹状切欠部10e″が形成される。・・・細長凹状切欠部10″(審決注:「10″」は「10e″」の誤記と認める。)は、平型ヒューズ18を着脱するための装着口の一部を構成する。」(記載事項B2)という記載を参照すると、細長凹状切欠部10e″、すなわち平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置は、ケース本体の長手方向における端部をなす一方の側壁(左側壁)10fに沿っているので、少なくとも、平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置は、事項Aにおける「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分」に該当すると解される。そうすると、事項Aは、「前記開口部」、すなわち「外部機器と接続する接続部への接続のための開口部」を、平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置に設ける態様をも含むといえる。また、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部から外部に引き出される」(請求項1)から、事項Aは、接続ケーブルが引き出される位置と平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置との間に設ける態様を含み得るともいえる。
これに対して、原出願明細書等を参照すると、段落【0028】の「上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、・・・窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部である。」(記載事項b)という記載、段落【0041】の「外部とのインタフェースとなる接続コネクタ部21は、第2プリント配線基板16b上に実装し」(記載事項c)という記載及び図1、3(記載事項d)の図示内容によれば、原出願明細書等に記載された開口部の位置は「一方の側壁(左側壁)10fに沿っ」た位置であると理解でき、他の記載を参照しても、「前記反対側の面の長手方向中央でない部分」に及んで設け得ると解すべき合理性があるとはいえない。そうすると、原出願明細書等は、「前記開口部」を上記平型ヒューズ18を着脱するための装着口の位置に設ける態様などを含むような、一般化された「前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設け」る構成を記載したものとはいえない。
したがって、上記事項Aは原出願明細書等に記載された事項から自明でない事項を含んでいる。
そうすると、原出願が、そのような事項Aを含む本願発明を包含するものでないことは明らかであるから、本願は、二以上の発明を包含する原出願の一部を新たな特許出願とするものではなく、適法になされた分割出願とは認められない。よって、本願の出願日は、現実の出願日である平成27年6月16日である。

(2)引用文献8に記載された事項及び発明
引用文献8に記載された事項及び発明は、上記「4(1)」に記載したとおりであり、引用文献8に記載された発明は、上記「4(1)」に示した「引用発明2」のとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比する。

ア 引用発明2の「ケース本体2」、「接続ケーブル15」、「回路部」、「車載機器接続用アダプタ」及び「接続部コネクタ部21」は、その意味、機能または構造からみて、本願発明の「ケース本体」、「接続ケーブル」、「回路部」、「車載機器接続用アダプタ」及び「接続部」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明2の「ケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部」は、その意味、機能または構造からみて、本願発明の「そのケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部」に相当する。

ウ 引用発明2の「接続ケーブル15」は、「ケース本体の一面」と「反対側の面から外部に引き出される」ものであるから、ケース本体の一面の反対の面側から外部に引き出されることは明らかである。したがって、引用発明2の「前記一面と反対側の面から外部に引き出される接続ケーブル15」は、本願発明の「前記一面と反対の面側から外部に引き出される接続ケーブル」に相当する。

エ 引用発明2の「前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部」は、その意味、機能または構造からみて、本願発明の「前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部」に相当する。

オ 引用発明2の「窓孔10e′」は、「ケース本体2の前記反対側の面をな」す「上ケース10の後壁10e」に形成されており、「外部機器を接続する接続コネクタ部21」を「配置するための開口部」であるから、引用発明2の「窓孔10e′」は、本願発明の「開口部」に相当する。
そうすると、引用発明2の「ケース本体2は、上下に2分割された上ケース10と下ケース11を互いの先端縁部同士を突き合わせて連結し、上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部であり」、「上ケース10の後壁10eは上記ケース本体2の前記反対側の面をな」すことは、本願発明の「前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための開口部を設け」たことに相当する。

カ 引用発明2の「接続ケーブル15」は「接続ケーブル15が引き出される側の面の、ケース本体の長手方向中央部位に」「設け」た「首部14c側から引き出される」ものである。そうすると、引用発明2の「接続ケーブル15が引き出される側の面の、ケース本体の長手方向中央部位に首部14cを設け、接続ケーブル15は、首部14c側から引き出される」ことは、その意味、機能または構造からみて、本願発明の「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部から外部に引き出される」ことに相当する。

キ 引用発明2の「接続部コネクタ部21」はコネクタであることは明らかである。また、引用発明2の「窓孔10e′」は「上記ケース本体2の前記反対側の面をな」す「上ケース10の後壁10e」の「一方の側壁(左側壁)10fに沿って」「形成され」るところ、ケース本体の長手方向における端部をなす一方の側壁(左側壁)10fに沿っているので、少なくとも、窓孔10e′の位置は、「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分」に該当すると解される。
そうすると、引用発明2の「上ケース10の後壁10eには、一方の側壁(左側壁)10fに沿って縦長な長方形状の窓孔10e′が形成され、窓孔10e′は、外部機器を接続する接続コネクタ部21を配置するための開口部であ」ることは、本願発明の「前記接続部はコネクタとし、前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けた」ことに相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明2とは以下の点で一致し、本願発明と引用発明2との間に差異はない。

<一致点2>
「ケース本体と、
そのケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部と、
前記一面と反対の面側から外部に引き出される接続ケーブルと、
前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部と、
を備え、
前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための開口部を設け、
前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部から外部に引き出される一方、前記接続部はコネクタとし、前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けた
車載機器接続用アダプタ。」

したがって、本願発明は、引用発明2、すなわち、引用文献8に記載された発明であるといえ、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

5-4 特許法第29条第2項について
仮に、本願が適法になされた分割出願であり、その出願日が原出願の出願日である平成22年9月15日に遡及する場合について、以下検討する。

(1)引用文献1に記載された事項及び発明
引用文献1に記載された事項及び発明は、上記「4(2)」で述べたように、上記「第2 2(2)イ(ア)」に記載したとおりであり、引用文献1に記載された発明は、上記「第2 2(2)イ(ア)」に示した「引用発明1」のとおりである。

(2)対比・判断
ア 対比
上記「第2 2(2)エ エ-1」を踏まえ、本願発明と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「嵌め合わせOBD-IIコネクタ23」は「モジュール筐体22」の「一端に」備えられているから、その意味、機能または構造からみて、本願発明の「そのケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部」に相当する。

(イ)引用発明1の「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から」「外部に引き出される」「ワイヤ」は、その意味、機能または構造からみて、本願発明の「前記一面と反対の面側から外部に引き出される電源線を備える接続ケーブル」に相当する。

(ウ)引用発明1の「一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容され」、「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17」を「実装し」た「回路基板21」は、その意味、機能または構造からみて、本願発明の「前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部」に相当する。

(エ)引用発明1は、「モジュール筐体22」の「一端に」「嵌め合わせOBD-IIコネクタ23」を、「他端に」「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタを含」む「出力インタフェース24を備え」ているから、「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」が「モジュール筐体22」の「嵌め合わせOBD-IIコネクタ23」と反対側の面に設けられていることは明らかである。また、引用発明1の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」は、「コンピュータまたはPDA26のような携帯端末との接続のためのものであ」ることを踏まえると、引用発明1の「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装し」、「出力インタフェース24は、RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタを含み、RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタは、コンピュータまたはPDA26のような携帯端末との接続のためのものであ」ることは、本願発明の「前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための開口部を設け」ることと、「前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための構成を設ける」限度で一致する。

(オ)引用発明1の「ワイヤ」は「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から」「外部に引き出される」ものであるところ、当該「ワイヤ」が、モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対側の面から引き出されることも明らかであり、上記(イ)を踏まえると、引用発明1の「ワイヤ」が「モジュール筐体22の、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23が設けられたのと反対の面側から」「外部に引き出される」ことは、本願発明の「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部から外部に引き出される」ことと、「前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面から外部に引き出される」限度で一致する。

(カ)引用発明1の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」がコネクタであることは明らかであるから、引用発明1の「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17は、一端に嵌め合わせOBD-IIコネクタ23を、他端に出力インタフェース24を備えたモジュール筐体22に収容された回路基板21に実装し、嵌め合わせOBD-IIコネクタ23はモジュール筐体22に取り付けられ、出力インタフェース24は、RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタを含」むことは、本願発明の「前記接続部はコネクタとし、前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設けたこと」と、「前記接続部はコネクタとし」た限度で一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明1とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

<一致点3>
「ケース本体と、
そのケース本体の一面に設けられた、車両に装着するための接続端子部と、
前記一面と反対の面側から外部に引き出される接続ケーブルと、
前記ケース本体内に内蔵され、前記接続端子部と前記接続ケーブルを電気的に接続する回路部と、
を備え、
前記ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための構成を設け、
前記接続ケーブルは前記ケース本体の前記反対側の面から外部に引き出される一方、前記接続部はコネクタとした
車載機器接続用アダプタ。」

<相違点3>
「ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための構成を設け」ることに関し、
本願発明は、外部機器と接続する接続部への接続のための「開口部」を設け、「前記開口部は前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分に設け」ているのに対して、
引用発明1は、ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のための構成が開口部を備えるかどうか特定されていない点。

<相違点4>
「接続ケーブル」が「前記ケース本体の前記反対側の面から外部に引き出される」ことに関し、
本願発明は、「長手方向中央部から」外部に引き出されるのに対して、
引用発明1は、「ワイヤ」が長手方向中央部から引き出されていない点。

イ 判断
以下相違点について検討する。
<相違点3について>
引用発明1の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」は、「OBD-IIデータインタフェース15、マイクロコントローラ14およびモータ駆動回路17」が実装され、「モジュール筐体22に収容された回路基板21」に接続するためのものであって、開口部がなければ、「モジュール筐体22に収容された回路基板21」に接続できないのであるから、「モジュール筐体22」(本願発明の「ケース本体」に相当。)が「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」(本願発明の「接続部」に相当。)に接続するための開口部を備えていると理解するのが自然かつ合理的である。
そうすると、ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のために開口部を設ける点は実質的な相違点とはいえないし、仮にそうでないとしても、外部機器と接続する接続部への接続のために開口部を設けることは、特に例示するまでもなく、周知慣用の技術的事項といえるから、引用発明1において、ケース本体の前記反対側の面に、外部機器と接続する接続部への接続のために開口部を設けることは、当該周知慣用の技術的事項を踏まえて当業者が容易になし得たといえる。
さらに、本願発明は、「前記開口部」を設ける位置を「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分」と特定するものであるが、引用発明1の「RS-232Cコネクタ25のような対話出力を提供するためのコネクタ」(接続部)への開口部の「モジュール筐体22」(ケース本体)長手方向における位置を、車載機器との接続性等を考慮して最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
そうすると、「前記開口部」のケース本体長手方向における位置を「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央でない部分」に特定することは設計事項の域を出るものではない。

<相違点4について>
引用発明1の「ワイヤ」(接続ケーブル)を外部へ引き出す位置を、触覚モータ16との接続性等を考慮して最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものである。
そうすると、「ワイヤ」(接続ケーブル)を外部へ引き出す位置の、ケース本体の長手方向における位置を「前記ケース本体の前記反対側の面の長手方向中央部位」に特定することは設計事項の域を出るものではない。

そうすると、本願発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明することができたものといえる。

第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また、平成30年2月13日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
さらに、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用文献8に記載された発明(引用発明2)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
さらにまた、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用文献1に記載された発明(引用発明1)に基いて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-24 
結審通知日 2018-08-28 
審決日 2018-09-11 
出願番号 特願2015-120733(P2015-120733)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B60R)
P 1 8・ 113- WZ (B60R)
P 1 8・ 121- WZ (B60R)
P 1 8・ 55- WZ (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉田 和博  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 出口 昌哉
中田 善邦
発明の名称 車載機器接続用アダプタ  

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