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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1345453
審判番号 不服2017-12446  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-23 
確定日 2018-10-25 
事件の表示 特願2016- 99825「圧電素子ユニット,レンズ駆動装置,および圧電素子ユニットの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開,特開2016-180993〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年9月14日に出願された特願2012-203353号(以下,「親出願」という。)の一部を新たな特許出願として平成26年7月29日に出願された特願2014-154204号(以下,「子出願」という。)の一部を,さらに新たな特許出願として平成28年5月18日に出願された特願2016-99825号(以下,「本件出願」という。)であって,平成28年12月6日付けで拒絶の理由が通知され,平成29年2月9日に意見書及び手続補正書の提出されたが,同年5月17日付けで,平成28年12月6日付けの拒絶理由通知により通知された理由(以下,「原査定の理由」という。)による拒絶査定がなされ,その謄本は平成29年5月23日に請求人に送達された。
これに対し,同年8月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,それと同時に手続補正書が提出され,同年10月4日に審判請求書を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年8月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年8月23日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正について
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,その補正の一部には,本件補正前の請求項1の記載を本件補正後の請求項1のとおりに補正する補正事項(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
圧電体層を挟んで積層された内部電極と,積層方向に沿って延在する側面に形成されており前記内部電極に対して電気的に接続される一対の外部電極と,を有する積層型圧電素子と,
前記外部電極に接合した配線部と,
前記積層型圧電素子の前記積層方向における一方の端面と当該一方の端面に対向するように配置される錘部材の取付面とを連結する第1の樹脂部と,
前記積層型圧電素子の前記積層方向における他方の端面と当該他方の端面に対向するように配置されるシャフトの取付面とを連結する第2の樹脂部と,
前記シャフトに対して移動自在に係合された移動部材と,を有し,
前記第1の樹脂部は,前記一方の端面および前記錘部材の前記取付面から,前記外部電極に固定してある前記配線部の先端部まで連続しており,前記配線部の先端部を覆っていることを特徴とするレンズ駆動装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
圧電体層を挟んで積層された内部電極と,積層方向に沿って延在する側面に形成されており前記内部電極に対して電気的に接続される一対の外部電極と,を有する積層型圧電素子と,
前記外部電極に接合した配線部と,
前記積層型圧電素子の前記積層方向における一方の端面と当該一方の端面に対向するように配置される錘部材の取付面とを連結する第1の樹脂部と,
前記積層型圧電素子の前記積層方向における他方の端面と当該他方の端面に対向するように配置されるシャフトの取付面とを連結する第2の樹脂部と,
前記シャフトに対して移動自在に係合された移動部材と,を有し,
前記第1の樹脂部は,前記一方の端面および前記錘部材の前記取付面から,前記外部電極に固定してある前記配線部の先端部周辺まで連続しており,前記配線部の先端部周辺を覆っていることを特徴とするレンズ駆動装置。」(下線は,当審で付加したものである。下線については,以下同じである。)

(3)本件補正の目的について
本件補正事項は,具体的には,本件補正前の請求項1の発明特定事項のうち,樹脂部が連続して覆う部分についての特定事項である「配線部の先端部」に対して「(配線部の先端部)周辺」と変更するものである。
ここで,「周辺」とは,「あるものをとりまく,まわりの部分。中心から離れたところ。周囲。」なる意味を有する語句であるから,本件補正事項の「配線部の先端部周辺」は,「配線部の先端部をとりまく,まわりの部分。配線部の先端部の中心から離れたところ。配線部の先端部の周囲。」を意味することになる。
上記を踏まえると,補正前の発明において,少なくとも「配線部の先端部」が第1の樹脂部によって覆われることを特定されていたものが,補正後の発明においては,「配線部の先端部」が第1の樹脂部によって覆われない,つまり,第1の樹脂部の領域が配線部の先端部の直前で止まってしまうものなど,配線部の先端部が第1の樹脂部によって覆われることを含まないことをも包含することとなった。
してみると,「配線部の先端部の直前」が「配線部の先端部周辺」に他ならないことを踏まえると,本件補正事項により,樹脂部が連続して覆う部分が「配線部の先端部」を含むものから,「(配線部の先端部)周辺」まで連続し覆うもの,すなわち,先端部を覆うものではないものに変更するものである点は,本件補正前の請求項1において記載されているいずれかの発明特定事項を限定するものに該当せず,本件補正事項の目的は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものとはいえない。
また,本件補正前の請求項1において,誤記があったとも,明りようでない記載があったとも認められないから,該補正事項が誤記の訂正や明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは明らかである。
したがって,本件補正事項による補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反してされたものというほかないから,同法第159条第1項において読み替えて適用される同法第53条の規定により却下すべきものである。

2 独立特許要件についての検討
上記のとおり,本件補正事項により,樹脂部が連続して覆う部分が「配線部の先端部」を含むものから,「(配線部の先端部)周辺」まで連続して覆うもの,すなわち,(配線部の)先端部を覆うものではないものに変更するものである点で,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものではないものの,「配線部の先端部」に加えて,その周辺をも覆うものに限定するものであると捉えた部分には,第1の樹脂部が覆う領域を限定していると解する余地もあることから,念のため,本件補正事項の目的がいわゆる限定的減縮に該当するものであると仮定し,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
「配線部の先端部周辺」に関し,上述した「周辺」の語句の意味を踏まえても,配線部の先端部を中心として,どこまでの範囲を「周辺」とするのかについて明確であるとはいえない。
つまり,「一方の端面および前記錘部材の前記取付面から,前記外部電極に固定してある前記配線部の先端部周辺まで連続しており」と特定されている「第1の樹脂部」が覆う領域が,「一方の端面および前記錘部材の前記取付面」を始点として,どこまで連続しているのかについて具体的に把握することができず,明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮したとしても,当該発明特定事項が示す範囲について,当業者が理解できるとはいえない。
したがって,本件補正発明は,明確ではない。

以上検討したように,本件補正発明は,明確ではなく,特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正発明は,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり,本件補正は,上記1(3)において検討したように,本件補正事項の目的が特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれにも該当しないことから,同項の規定に違反してされたものであり,また,仮に本件補正事項の目的が同項第2号に該当するとしても,本件補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件発明について
1 本件発明
上記第2における補正の却下の決定により,本件補正(平成29年8月23日にされたもの)は却下された。
したがって,本件の請求項1ないし6に係る発明は,平成29年2月9日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本件発明」という。)は,上記第2の1(1)に説示したとおりのものである。

第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,平成28年12月6日付けの拒絶理由通知書により通知された理由であり,そのうちの理由1ないし理由3の概要は次のとおりである。
1 原査定の理由1(特許法第36条第6項第1号)
原査定の拒絶の理由の理由1における指摘事項は,次のとおりである。
請求項1-6には,課題を解決するための手段が反映されておらず,請求項1-6に係る発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
よって,請求項1-6に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものではない。

2 原査定の理由2(特許法第29条第1項第3号)
本件の明細書等に記載された事項が,親出願の出願当初の明細書等に記載された事項,親出願の分割直前の明細書に記載された事項,及び,子出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえず,分割の要件を満たしていないので,出願日のそ及は認められず,本願は,親出願の時にしたものとはみなされず,現実の出願時にしたものとして取り扱うこととなり,親出願の公開公報である引用文献1(特開2014-60214号公報)は,公知文献となる。
そして,引用文献1には,請求項1ないし3及び6に係る発明に該当する発明が記載されているので,請求項1ないし3及び6に係る発明は,引用文献1に記載された発明である。

3 原査定の理由3(特許法第29条第2項)
本件の明細書等に記載された事項が,親出願の出願当初の明細書等に記載された事項,親出願の分割直前の明細書に記載された事項,及び,子出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえず,分割の要件を満たしていないので,出願日のそ及は認められず,本願は,親出願の時にしたものとはみなされず,現実の出願時にしたものとして取り扱うこととなり,親出願の公開公報である引用文献1(特開2014-60214号公報)は,公知文献となる。
そして,引用文献1には,請求項1ないし3及び6に係る発明に該当する発明が記載されており,請求項1ないし6に係る発明は,引用文献1に記載された発明から当業者が容易に発明し得たものである。

第5 当審の判断
1 原査定の理由1(特許法第36条第6項第1号)について
(1)請求項1についての検討
本件明細書には以下の記載がある。
ア「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,好適な抗折強度を有しており,駆動装置の一部として好適に用いられる圧電素子ユニットと,その圧電素子ユニットが含まれるレンズ駆動装置,および圧電素子ユニットの製造方法を提供することを目的とする。」

イ「【課題を解決するための手段】…
【0012】
本発明に係る圧電素子ユニットは,樹脂部が,ハンダ部となる配線部の先端部を覆っているため,配線部の先端部周辺に発生した脆弱部分を樹脂部が補強することにより,配線部の先端部周辺で積層型圧電素子が折れることを効果的に防止することができる。また,樹脂部は,積層型圧電素子と接続部材とを連結する機能を兼ねているため,本発明に係る圧電素子ユニットはシンプルな構造を有しており,製造が容易である。また,樹脂部は,配線部の先端部と積層型圧電素子との接合を補強する作用を奏するため,圧電素子ユニットは優れた信頼性を有する。
【0013】
また,例えば,前記樹脂部は,前記はんだ部の表面であって前記外部電極から隆起したはんだ隆起表面の全体を覆っていても良い。
【0014】
樹脂部がはんだ隆起表面全体を覆うことにより,このような圧電素子ユニットは,はんだ部周辺で積層型圧電素子が折れる現象をより効果的に防止することができる。また,はんだ部が樹脂部の内部に埋め込まれた状態となるため,はんだ部が,樹脂部と積層型圧電素子との接合を強化するアンカーとして作用し,圧電素子ユニットは,高い接合信頼性を有する。」

ウ「【0051】
実施例
以下に,本発明をさらに詳細な実施例を挙げて説明するが,本発明は下記の実施例に限定されない。
【0052】
図6(a)は,参考例に係る圧電素子ユニット100を表す概念図であり,図6(b)は,実施例に係る圧電素子ユニット10を表す概念図である。実施例に係る圧電素子ユニット10は,図1?図5を用いて説明したように,熱硬化性接着剤(公報においては「熱効果性接着剤」と記載されているが,当審で誤記と認めて上記のとおり認定した。)が硬化して形成された第1樹脂部52が,配線部32を外部電極28aに固定するはんだ部30全体を覆っている。実施例に係る圧電素子ユニット10に用いた積層型圧電素子20の寸法は,1.0mm×1.0mm×1.5mmである。
【0053】
参考例に係る圧電素子ユニット100は,錘42と積層型圧電素子20とを接続する第1樹脂部101が,はんだ部30を覆っていない点で,実施例に係る圧電素子ユニット10と異なるが,その他の構成は,圧電素子ユニット10と同様である。なお,参考例に係る圧電素子ユニット100の第1樹脂部101は,第1樹脂部101を形成するために用いる熱硬化性接着剤の使用量を,実施例に係る圧電素子ユニット10に比べて減少させることにより,形成した。

【0056】
また,参考例に係る圧電素子ユニット100(図6(a))では,はんだ部30の境界部分である位置P1,P2近傍で積層型圧電素子20が破断したのに対して,実施例に係る圧電素子ユニット10(図6(b))では,第1樹脂部52の境界部分である位置P3近傍で積層型圧電素子20が破断した。参考例に係る圧電素子ユニット100では,はんだ部30が形成されたことにより,はんだ部30と積層型圧電素子20との接触部分付近で応力が生じ,この応力がはんだ部30の境界部分である位置P1,P2近傍に脆弱部分を形成し,これが破断に関係したと考えられる。
【0057】
これに対して,実施例に係る圧電素子ユニット10では,第1樹脂部52が,はんだ部30近傍を補強することにより,はんだ部30の境界部分近傍での破断を防止できたものと考えられる。また,図7に見られるような抗折強度の上昇は,積層型圧電素子20の破断位置が,はんだ部30の境界部分から離れた位置P3に移動したことと,関連があると考えられる。」

上記記載アに接した当業者は,本件発明が解決しようとする課題は「好適な抗折強度を有しており,駆動装置の一部として好適に用いられる圧電素子ユニットを提供する」ことにあると理解する。

上記記載イに接した当業者は,課題を解決するための手段は「はんだ部周辺で積層型圧電素子が折れる現象をより効果的に防止する」ために,「樹脂部が,はんだ部となる配線部の先端部を覆う」ことにあると理解する。

上記記載ウに接した当業者は,圧電素子ユニット100の外部電極28aを配線部32に固定するはんだ部30に対して,該はんだ部30を熱硬化性接着剤が硬化して形成された第1樹脂部52が覆わない場合は,該はんだ部30の境界部分である位置P1,P2近傍に脆弱部分が形成され,該はんだ部30を熱硬化性接着剤が硬化して形成された第1樹脂部52が覆う場合は,第1樹脂部52の境界部分である位置P3近傍に脆弱部分が形成されることを理解する。
そして,第1樹脂部52も,はんだ部30も,レンズ駆動装置の使用時の温度環境において,変形することのない硬い領域となっていることは自明であって,そのような硬い領域の境界部分である位置近傍に脆弱部分が形成されていることを踏まえると,本件発明における「外部電極に接合した配線部」とは,外部電極と配線部とを「はんだ」で形成された硬い領域によって接合されることで,はんだ部の境界部分である位置近傍に脆弱部分が形成される積層型圧電素子を発明の前提としていることは明らかであって,外部電極に配線部が接合されていれば,どのような接合手段であってもよいというものではない。
しかしながら,本件発明には,単に「外部電極に接合した配線部」と記載されているのみであって,外部電極と配線部とがどのような接合手段で接合しているかについては特定されておらず,硬い領域を形成しえない接合手段をも包含しており,上記の前提を欠く本件発明は,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されていないため,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる。
したがって,本件の請求項1に記載された発明によっては,課題を解決し得るものと認識することはできない。

(2)原査定の理由1についての検討の小括
以上のとおりであるから,本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,原査定の理由で指摘したとおり,発明の詳細な説明に記載したものではなく,本件の特許請求の範囲の請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 原査定の理由2(特許法第29条第1項第3号)について
(1)請求項1についての検討
ア 本件出願が分割要件を満たしているか否かについての検討
原査定の理由2は,本件出願が分割要件を満たしておらず,本件出願の出願日がそ及しないとしたことに起因するものであるから,本件出願が分割要件を満たしているか否かについて検討する。
「第5 当審の判断」,「1 原査定の理由1(特許法第36条第6項第1号)について」で検討したとおり,本件発明の「外部電極に接合した配線部」は,外部電極と配線部とがどのような接合手段で接合しているかについて,特定しない記載である。
また,本件発明の「外部電極に固定してある前記配線部の先端部」も,外部電極に配線部の先端部が固定してあることは特定しているものの,外部電極と配線部の先端部とがどのような固定手段で接合しているかについて特定しない記載である。
つまり,本件発明は,外部電極と配線部(の先端部)とが「はんだ部」以外の接合手段によって接合するものをも包含する記載であるといえる。

イ 親出願の出願当初及び分割直前の明細書の記載
親出願の出願当初及び分割直前の明細書には以下の記載がある。
(ア)「【0030】
図2は,圧電素子ユニット10における第1樹脂部52の周辺を拡大して表示した斜視図である。第1外部電極28aには,はんだが固化したはんだ部30を介して,配線部32が接続されている。なお,第1外部電極28aとは反対側の側面に形成されている第2外部電極28bにも,第1外部電極28aと同様に,はんだ部30を介して配線部32が接続されている。
【0031】
配線部32の先端を第1外部電極28aに固定しているはんだ部30は,第1外部電極
28aが形成されている第1側面25aのうち,どの位置に配置されていても良い。例えば,第1実施形態に係る圧電素子ユニット10において,はんだ部30は,積層方向の中央より錘42に近接する側に設けられている。また,はんだ部30は,第1外部電極28aと確実に接合するために,第1外部電極28aが形成されている第1側面25aのうち,積層方向に垂直な方向の中央部付近に設けられている。
【0032】
図3は,図2に示す圧電ユニットを,III-IIIで示す断面線に沿って切断した部分拡大断面図である。はんだ部30は,配線部32の先端部付近及び第1外部電極28aの表面に接触しており,配線部32の先端部と第1外部電極28aとを,電気的かつ物理的に接続している。なお,はんだ部30によって被覆されている配線部32の先端部付近は,線皮(被覆)が除去されて芯線が露出している。
【0033】
はんだ部30の少なくとも一部は,第1樹脂部52によって覆われている。すなわち,第1樹脂部52は,錘42の第1取付面42a及び積層型圧電素子20の第1端面22から,第1外部電極28aに接続するはんだ部30まで連続しており,はんだ部30を被覆している。また,図3に示すように,第1樹脂部52は,はんだ部30のうち,第1外部電極28aから隆起したはんだ隆起表面30aの全体を被覆することが好ましい。」

ウ 当審の判断
上記記載(ア)から,親出願の明細書において積層型圧電素子の外部電極に配線部の先端部を接続する際に,はんだ部を介して接続し,前記はんだ部を樹脂部によって覆う圧電素子ユニットは記載されているが,本件発明が含みうる積層型圧電素子の外部電極と配線部(の先端部)との接合を,はんだ部を介さずに接合した圧電素子ユニットは,親出願の出願当初及び分割直前の明細書等には記載された事項でなく,親出願の出願当初及び分割直前の明細書等の記載から自明な事項ではない。
そして,当該圧電素子ユニットは,親出願の出願当初及び分割直前の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないとする根拠は見いだせない。
また,本件の明細書等に記載された事項と子出願の出願当初の明細書等に記載された事項との関係についても同様である。
したがって,本件出願は特許法第44条に規定する分割出願であるということはできない。
よって,同条第2項に規定される出願日のそ及は認められず,本件出願の出願日は現実の出願日である平成28年5月18日である。

エ 引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0020】
第1実施形態
図1は,本発明の一実施形態に係る圧電素子ユニット10を利用したレンズ駆動装置60を示す概念図である。圧電素子ユニット10は,積層型圧電素子20,錘42,シャフト44及びこれらを連結する第1及び第2樹脂部52,54を有する。また,圧電素子ユニット10は,図2又は図3に示すように,積層型圧電素子20と駆動回路58とを電気的に接続する配線部32や,配線部32を第1及び第2外部電極28a,28bに固定するはんだ部30等を,さらに有する。
【0021】
図1に示すように,レンズ駆動装置60は,圧電素子ユニット10の他に,シャフト44に対して移動自在に係合された移動部材56と,積層型圧電素子20に電圧を印加する駆動回路58とを有している。移動部材56はレンズを保持しており,移動部材56及びこれに保持されるレンズは,シャフト44に沿って,シャフト44に対して相対移動することができる。」

(イ)「【0025】
積層型圧電素子20の内部において,第1内部電極27aと,第2内部電極27bは,圧電体層26を挟んで交互に積層されている。第1外部電極28aと第2外部電極28bは,積層型圧電素子20の面のうち,積層方向に沿って延在する側面に形成されている。図2に示すように,第1外部電極28aは,積層方向に沿って延在する第1側面25aに形成されており,第2外部電極28bは,第1側面25aとは反対方向を向く第2側面(不図示)に形成されている。
【0026】
図1に示すように,第1内部電極27aは,第1外部電極28aに電気的に接続されており,第2内部電極27bは,第2外部電極28bに電気的に接続されている。また,図2に示すように,積層型圧電素子20の側面のうち,第1及び第2外部電極28a,28bが形成されていない第3側面25c及び第4側面(不図示)には,マイグレーションを防止するための樹脂層が形成されていても良い。」

(ウ)「【0029】
図1に示すように,圧電素子ユニット10では,積層型圧電素子20の積層方向における一方の端面である第1端面22に対して対向するように,錘42の第1取付面42aが配置されている。第1端面22と第1取付面42aとは,第1樹脂部52によって連結されており,積層型圧電素子20と錘42は,第1樹脂部52によって相互に固定されている。」

(エ)「【0030】
図2は,圧電素子ユニット10における第1樹脂部52の周辺を拡大して表示した斜視図である。第1外部電極28aには,はんだが固化したはんだ部30を介して,配線部32が接続されている。なお,第1外部電極28aとは反対側の側面に形成されている第2外部電極28bにも,第1外部電極28aと同様に,はんだ部30を介して配線部32が接続されている。」

(オ)「【0033】
はんだ部30の少なくとも一部は,第1樹脂部52によって覆われている。すなわち,第1樹脂部52は,錘42の第1取付面42a及び積層型圧電素子20の第1端面22から,第1外部電極28aに接続するはんだ部30まで連続しており,はんだ部30を被覆している。また,図3に示すように,第1樹脂部52は,はんだ部30のうち,第1外部電極28aから隆起したはんだ隆起表面30aの全体を被覆することが好ましい。
【0034】
図2に示すように,第1樹脂部52は,第1外部電極28aが形成された第1側面25aのうち,積層方向に垂直な方向の両端部に位置する樹脂部端部52aと,樹脂部端部52aの間に位置する樹脂部中央部52bを有している。このように,樹脂部中央部52bの積層方向に沿う長さを,樹脂部端部52aの積層方向に沿う長さより長くすることにより,第1樹脂部52は,はんだ部30を確実に被覆しつつ,第1樹脂部52が積層型圧電素子20の変位を阻害してしまう問題を,抑制することが可能である。
【0035】
また,図1に示すように,積層型圧電素子20の積層方向における他方の端面である第2端面24には,第2樹脂部54を介してシャフト44が接続されている。シャフト44の第2取付面44aは,積層型圧電素子20の第2端面24に対向するように配置されており,第2樹脂部54は,第2端面24と第2取付面44aとを連結する。」

(カ)「【0043】
次に,図5(a)に示すように,積層型圧電素子20に対して,配線部32を接続する。その際,まず,配線部32の先端部の被覆を除去して芯線を露出させ,次に第1及び第2外部電極28a,28bの所定位置及び芯線に対して予備はんだを行い,最後に配線部32と外部電極28a,28bの予備はんだを接触させた状態で溶融させることにより,はんだ部30を形成することができる。」

引用文献1の上記記載事項を含め,引用文献1の全記載を総合すると,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「圧電体層26を挟んで交互に積層されている第1内部電極27aと第2内部電極27bと,積層方向に沿って延在する側面に形成されている第1外部電極28aと第2外部電極28bであって,第1内部電極27aは,第1外部電極28aに電気的に接続され,第2内部電極27bは,第2外部電極28bに電気的に接続される積層型圧電素子20と,
配線部32の先端部の被覆を除去して芯線を露出させ,第1及び第2外部電極28a,28bの所定位置及び芯線に対して予備はんだを行い,配線部32と外部電極28a,28bの予備はんだを接触させた状態で溶融させることにより形成したはんだ部30を介して,第1及び第2外部電極28a,28bには配線部32が接続され,
圧電素子ユニット10の積層型圧電素子20の積層方向における一方の端面である第1端面22に対して対向するように,錘42の第1取付面42aが配置され,該第1端面22と第1取付面42aとは,第1樹脂部52によって連結され,
積層型圧電素子20の積層方向における他方の端面である第2端面24には,第2樹脂部54を介してシャフト44が接続され,シャフト44の第2取付面44aは,積層型圧電素子20の第2端面24に対向するように配置されており,第2樹脂部54は,第2端面24と第2取付面44aとを連結され,
シャフト44に対して移動自在に係合された移動部材56と,
第1樹脂部52は,錘42の第1取付面42a及び積層型圧電素子20の第1端面22から,第1外部電極28aに接続するはんだ部30まで連続しており,はんだ部30のうち,第1外部電極28aから隆起したはんだ隆起表面30aの全体を被覆することが好ましいレンズ駆動装置60。」

オ 対比・判断
(ア)対比
本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「圧電体層26」は,本件発明の「圧電体層」に相当する。
以下同様に,「第1内部電極27a,第2内部電極27b」は「内部電極」に,
「第1外部電極28a,第2外部電極28b」は「外部電極」に,
「積層型圧電素子20」は「積層型圧電素子」に,
「配線部32」は「配線部」に,
「第1端面22」は「一方の端面」に,
「錘42」は「錘部材」に,
「第1取付面42a」は「(錘部材の)取付面」に,
「第1樹脂部52」は「第1の樹脂部」に,
「第2端面24」は「他方の端面」に,
「シャフト44」は「シャフト」に,
「第2取付面44a」は「(シャフトの)取付面」に,
「第2樹脂部54」は「第2の樹脂部」に,
「移動部材56」は「移動部材」に,
「レンズ駆動装置60」は「レンズ駆動装置」に,それぞれ相当する。
引用発明において「第1外部電極28aと第2外部電極28b」は,本件発明の「外部電極」と同様に,「一対」であることは自明である。
引用発明において「外部電極」と「配線部」は,はんだ部30を介して接続されているが,これは「外部電極」と「配線部」が接合されていることに他ならないから,引用発明は本件発明の「外部電極に接合した配線部」に相当する構成を有していることは明らかである。
引用発明において「第1の樹脂部」は,錘42の第1取付面42a及び積層型圧電素子20の第1端面22から,第1外部電極28aに接続するはんだ部30まで連続しており,はんだ部30を被覆しており,該「はんだ部30」は,第1外部電極28aから隆起したはんだ隆起表面30aの全体を被覆することが好ましいものである。また,「はんだ部30」は,「(被覆を除去して芯線を露出させた)配線部32の先端部」と「外部電極28a,28b」とを接続しているから,引用発明は本件発明の「第1の樹脂部は,前記一方の端面および前記錘部材の前記取付面から,前記外部電極に固定してある前記配線部の先端部まで連続しており,前記配線部の先端部を覆っている」に相当する構成を有していることは明らかである。
したがって,本件発明と引用発明とは,次の点で一致し,相違点はない。
(一致点)
「圧電体層を挟んで積層された内部電極と,積層方向に沿って延在する側面に形成されており前記内部電極に対して電気的に接続される一対の外部電極と,を有する積層型圧電素子と,
前記外部電極に接合した配線部と,
前記積層型圧電素子の前記積層方向における一方の端面と当該一方の端面に対向するように配置される錘部材の取付面とを連結する第1の樹脂部と,
前記積層型圧電素子の前記積層方向における他方の端面と当該他方の端面に対向するように配置されるシャフトの取付面とを連結する第2の樹脂部と,
前記シャフトに対して移動自在に係合された移動部材と,を有し,
前記第1の樹脂部は,前記一方の端面および前記錘部材の前記取付面から,前記外部電極に固定してある前記配線部の先端部まで連続しており,前記配線部の先端部を覆っていることを特徴とするレンズ駆動装置。」
よって,本件発明と引用発明との間に相違点はないから,本件発明と引用発明との間に差異はない。

(イ)原査定の理由2についての検討の小括
以上のとおりであるから,本件発明は引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

3 原査定の理由3(特許法第29条第2項)について
(ア)請求項1についての検討
引用文献1に記載された発明については「2 原査定の理由2について」,「(1)請求項1についての検討」,「エ 引用文献1に記載された発明」で検討したとおりである。

(イ)対比・判断
本件発明と引用発明とを対比する。
本件発明における「外部電極に接合した配線部」は,例えば出願人が平成29年10月4日に提出した審判請求書の補正書で述べているように「導電性接合剤」,「溶接」,「半田又は導電性接着剤等」を用いて接合することを含みうる記載である。
したがって,「外部電極」と「配線部」との接合に関して,引用発明において「はんだ部30」を介している点で,本件発明と引用発明とは一応相違し,その他の点で一致する。

(ウ)相違点についての判断
電極と配線部との接合(接続)に用いられる接合手段として,「導電性接合剤」,「溶接」,「半田又は導電性接着剤等」は,いずれも,引用文献をあげるまでもなく周知技術である。
そして,いずれの周知技術を用いたとしても格別の作用効果は生じず,また,引用発明の「はんだ部」に替えて「導電性接合剤」,「溶接」,「導電性接着剤等」を適用することに,格別の技術的困難性があったとも認めることはできない。
したがって,相違点に係る本件発明の構成は,引用発明及び周知技術から,当業者が容易に想到し得たものである。
以上のように,本件発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(エ)原査定の理由3についての検討の小括
以上のとおりであるから,本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第6 まとめ
以上のとおりであるから,本件発明は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,同法49条第4号に該当する。
さらに,本件発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,また特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,同法49条第2号に該当する。
したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-21 
結審通知日 2018-08-28 
審決日 2018-09-10 
出願番号 特願2016-99825(P2016-99825)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 537- Z (G02B)
P 1 8・ 113- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森内 正明岡田 弘  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 吉村 尚
荒井 隆一
発明の名称 圧電素子ユニット、レンズ駆動装置、および圧電素子ユニットの製造方法  
代理人 前田・鈴木国際特許業務法人  
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