• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1345552
審判番号 不服2017-10302  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-11 
確定日 2018-11-20 
事件の表示 特願2013-178426「携帯電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月16日出願公開、特開2015- 49521、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月29日の出願であって、平成28年12月5日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年2月13日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ、同年4月3日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年7月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、手続補正がされ、平成30年3月28日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月31日付けで意見書が提出され、同年8月8日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年10月2日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年4月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記A-Bの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献A.特開2013-061411号公報
引用文献B.特開2007-241537号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)本件出願の請求項1-6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記1-3の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:野田 ユウキ、Microsoft Windows 7 Windows 7 パーフェクトマスター HomePremium.Professional.Ultimate対応、株式会社秀和システム、2010年12月8日、第1版第2刷、p.512-515,535-537
引用文献2:特開2007-241537号公報 (原査定の引用文献B)
引用文献3:特開2013-61411号公報(原査定の引用文献A)

第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成30年10月2日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
表示部と、外部出力部と、表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、
前記外部出力部が他の電子機器に接続されることを契機として、前記表示部および前記他の電子機器に第1画像を表示させる複製モードへ移行し、
前記複製モードにおいて、前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作があると、前記第1画像から前記一部の領域に関する画像のみが抽出された第2画像を生成して前記複製モードから前記他の電子機器に前記第2画像を表示させる拡張モードに切り替え、
前記拡張モードにおいて、前記表示部に対する前記第2画像の表示を終了させる第2の操作があると、前記複製モードに戻ること、
を特徴とする携帯電子機器。」

なお本願発明2-4は、本願発明1を直接又は間接的に引用し、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由通知に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

a)「9.1モビリティセンターでモバイルコンピューターを集中管理する
Process モビリティセンターでプレゼンテーション設定を起動するには
ここでは、モビリティセンターを起動して、その中の一つであるプレゼンテーション設定を起動します。

1スタートメニューから、すべてのプログラム→アクセサリ→Windowsモビリティセンターを選択します。」(第514頁第1-6行の記載。)

b)「Section9.5
Level-
Windows7

ノートパソコンに接続した外付けディスプレイを使う
Keyword ・ノートパソコン ・複製 ・拡張 ・ディスプレイ
ノートパソコンに外付けのディスプレイを接続すると、ノートパソコンの液晶ディスプレイと外付けのディスプレイの2つが利用できるようになります。プロジェクターとして利用する場合には、2台のディスプレイを複製(ミラー)として設定します。また、マルチディスプレイとして1つの幅広いデスクトップを形成することもできます。

Point モビリティセンターで外付けディスプレイを設定する
モビリティセンターに外付けディスプレイについての設定を登録しておくには、次のように操作します。
1 外付けディスプレイを接続する
2 モビリティセンターを起動する
3 ディスプレイの接続を設定する

ノートパソコンの弱い部分の一つがディスプレイの広さだといわれています。携帯性を考える必要のない室内で、デザインや製図などの広いディスプレイが必要な場合には、大型の外付けディスプレイに接続することがあります。また、プレゼンテーションでも、ディスプレイ端子にプロジェクターを接続することがあります。このようなノートパソコンの使い勝手をよくする機能が、モビリティセンターには用意されています。
外付けディスプレイは、パソコンに接続しただけで自動的にインストールが行われて、使用できるようになります。標準では、ノートパソコンのディスプレイと同じ画面が表示される複製(ミラー)モードになっています。
モビリティセンターでは、複製のほか、各ディスプレイに異なるデスクトップを表示する拡張モード、そしてノートパソコンのディスプレイをオフにして、外付けディスプレイのみに表示するモードを選択することができます。」(第535頁の記載。)

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、ノートパソコンとして、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ノートパソコンは携帯性を考える必要のない室内で、大型の外付けディスプレイに接続することがあり、このようなノートパソコンの使い勝手をよくする機能が、モビリティセンターには用意されており、
外付けディスプレイは、パソコンに接続しただけで自動的にインストールが行われて、使用できるようになり、標準では、ノートパソコンのディスプレイと同じ画面が表示される複製(ミラー)モードになっており、
モビリティセンターでは、複製のほか、各ディスプレイに異なるデスクトップを表示する拡張モードを選択することができ、
モビリティセンターを起動するには、スタートメニューから、すべてのプログラム→アクセサリ→Windowsモビリティセンターを選択する
ノートパソコン。」

2.引用文献2について
当審拒絶理由通知に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

c)「【0048】
次に、図4および図5を参照し、タブレットPC10の表示画面11およびプロジェクタ20の投射画面31の表示例を参照しながら、上記の画像拡大投射処理についてさらに詳細に説明する。なお、左右に位置する画面例は、時間軸において対応するものである。
【0049】
例えば、表示画面11および投射画面31上に、図4(a)に示すような画像(コンテンツ)が表示されているとき、同図(b)に示すように、表示画面11への書き込みによって拡大範囲E1が指定されると、これに伴って投射画面31上にも拡大範囲E1を表示する。
【0050】
また、プロジェクタ20は、この拡大範囲E1の表示と並行して、矩形範囲E2の補正(補正矩形範囲データの生成)、拡大率の算出、および補正対象画像G3の生成処理を行っており(図3のS08?S10に相当)、図5(a)に示すように、補正矩形範囲E3を表示すると共に当該補正矩形範囲E3に含まれる補正対象画像G3を拡大投射する。また、タブレットPC10は、プロジェクタ20から送信された補正矩形範囲データに基づいて、表示画面11上に補正矩形範囲E3を表示する。このとき、表示画面11上には、初期画像G0、書き込まれた拡大範囲E1および補正矩形範囲E3が表示されることとなる。なお、拡大範囲E1が解除された場合は、表示画面11から拡大範囲E1および補正矩形範囲E3の表示が削除される。
【0051】
また、図5(a)の状態から、同図(b)に示すように補正矩形範囲E3が移動されると(補正矩形範囲E3の移動に伴って、当然拡大範囲E1も移動する)、投射画面31の表示も変化する。なお、移動途中の画面表示については特に図示していないが、補正矩形範囲E3の移動に伴って、両画面11,31も刻々と変化する。」

3.引用文献3について
当審拒絶理由通知に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

d)「【0035】
次に、図8に示すように、第1モニタM1に表示されている画像のうち、発表者が聴講者に拡大して示したい部分をマウスカーソルカーソルCAで選択する(上記図3のステップS4)。選択された画像は拡大され、図9に示すように、その拡大画像のウィンドウW1が第2モニタM2にのみその対応する位置に表示される(上記図3のステップS5?S7)。
【0036】
このように、発表者が第2モニタM2に表示されている画像の一部を拡大して聴講者に見せたい場合は、第1モニタM1に表示されている画像の対応する部分をマウス21により選択し、選択された画像の拡大画像を第2モニタM2だけに表示することとしたので、発表者は、第1モニタM1に表示される画像の全体を見てプレゼンテーションを行うことができ、効率的にプレゼンテーションを行うことができる。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.引用発明1の「ノートパソコンのディスプレイ」は本願発明1の「表示部」に相当する。
また、引用発明1の「ノートパソコン」は「ディスプレイ」を有すると共に「外付けディスプレイ」が接続されるものであるから、引用発明1の「ノートパソコン」が「外部出力部」と「表示制御部」といい得る構成を有することは明らかである。

イ.引用発明1の「外付けディスプレイ」は本願発明1の「他の電子機器」に、引用発明1の「ノートパソコンのディスプレイ」に表示される画面は本願発明1の「第1画像」にそれぞれ相当し、引用発明1が「外付けディスプレイは、パソコンに接続しただけで自動的にインストールが行われて、使用できるようになり、標準では、ノートパソコンのディスプレイと同じ画面が表示される複製(ミラー)モードになって」いることは、本願発明1の「前記外部出力部が他の電子機器に接続されることを契機として、前記表示部および前記他の電子機器に第1画像を表示させる複製モードへ移行」することに相当する。

ウ.引用発明1の「モビリティセンターを起動するには、スタートメニューから、すべてのプログラム→アクセサリ→Windowsモビリティセンターを選択」し「モビリティセンター」で「拡張モード」を選択することは、「ノートパソコンのディスプレイ」に表示される画面に対して操作を行っていることは明らかであり、本願発明1の「前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作」に相当する。
引用発明1において、「各ディスプレイに異なるデスクトップを表示する」ために、「ノートパソコンのディスプレイ」に表示されるデスクトップの画面と異なるデスクトップの画面を生成し、該異なるデスクトップの画面を「外付けディスプレイ」に表示していることは明らかであり、該異なるデスクトップの画面は、本願発明1の「第1の操作」があると生成される「前記第1画像から前記一部の領域に関する画像のみが抽出された第2画像」と「第2画像」である点では共通する。
また、引用発明1の「ノートパソコン」は、「複製(ミラー)モード」で動作中に、「モビリティセンター」で「拡張モード」を選択することも当然に想定されるものであるから、引用発明1の「ノートパソコン」において、「複製(ミラー)モード」で動作中に「モビリティセンター」で「各ディスプレイに異なるデスクトップを表示する拡張モードを選択する」ことは、本願発明1の「前記複製モードにおいて、前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作があると、前記第1画像から前記一部の領域に関する画像のみが抽出された第2画像を生成して前記複製モードから前記他の電子機器に前記第2画像を表示させる拡張モードに切り替え」ることと「前記複製モードにおいて、前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作があると、第2画像を生成して前記複製モードから前記他の電子機器に前記第2画像を表示させる拡張モードに切り替え」る点では共通するといえる。

エ.引用発明1の「ノートパソコン」は、「拡張モード」で動作中に、「モビリティセンター」で「複製(ミラー)モード」を選択することも当然に想定されるものであり、当該「複製(ミラー)モード」を選択すると「ノートパソコンのディスプレイと同じ画面が表示される複製(ミラー)モード」となることは明らかであるから、引用発明1の「ノートパソコン」において、「拡張モード」で動作中に「複製(ミラー)モードを選択する」ことは、本願発明1の「前記拡張モードにおいて、前記表示部に対する前記第2画像の表示を終了させる第2の操作があると、前記複製モードに戻ること」に相当する。

オ.上記イ.-エ.の表示が「表示制御部」により行われていることは明らかである。

カ.引用発明1の「ノートパソコン」は、本願発明1の「携帯電子機器」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点と相違点とがあるといえる。

〈一致点〉
「表示部と、外部出力部と、表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、
前記外部出力部が他の電子機器に接続されることを契機として、前記表示部および前記他の電子機器に第1画像を表示させる複製モードへ移行し、
前記複製モードにおいて、前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作があると、第2画像を生成して前記複製モードから前記他の電子機器に前記第2画像を表示させる拡張モードに切り替え、
前記拡張モードにおいて、前記表示部に対する前記第2画像の表示を終了させる第2の操作があると、前記複製モードに戻ること、
を特徴とする携帯電子機器。」
である点。

〈相違点〉
本願発明1は、「第2画像」は、「前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作があると、前記第1画像から前記一部の領域に関する画像のみが抽出された第2画像を生成」したものであるのに対し、引用発明は、「第2画像」は、「異なるデスクトップ」である点。

(2)相違点についての判断
引用文献2の【0048】-【0051】及び【図4】、【図5】には、タブレットPCの表示画面への書き込みにより拡大範囲が指定されると、プロジェクタは補正対象画像を拡大投射する技術が記載され、引用文献3の【0035】-【0036】、及び【図9】には、選択された画像を拡大し、その拡大画像のウィンドウW1を、その対応する位置に表示させ、拡大された部分と、それ以外の部分とが区別できる表示を行う旨の技術が記載されているものの、引用文献2及び引用文献3の何れにも、「前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作があると、前記第1画像から前記一部の領域に関する画像のみが抽出された第2画像を生成」し他の電子機器に表示させることは、記載も示唆もされていない。
また、「前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作があると、前記第1画像から前記一部の領域に関する画像のみが抽出された第2画像を生成」し他の電子機器に表示させることは、本願出願日前周知技術であったものとも認められず、「各ディスプレイに異なるデスクトップを表示する」ものである引用発明において、「前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作があると、前記第1画像から前記一部の領域に関する画像のみが抽出された第2画像を生成」し他の電子機器に表示させる動機はない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献3記載の技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1を引用するものであり、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献3記載の技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
本願発明1-4は、「前記表示部に表示される前記第1画像の一部の領域に対する第1の操作があると、前記第1画像から前記一部の領域に関する画像のみが抽出された第2画像を生成」し他の電子機器に表示させるという技術的事項を有するものである。
これに対して、上記「第6 対比・判断」、「1.本願発明1について」の「(2)相違点についての判断」において述べたように、引用文献A(引用文献3)及び引用文献B(引用文献2)には、上記技術的事項は記載されていない。
したがって、本願発明1-4は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Bに基づいて容易に発明できたものではなく、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-05 
出願番号 特願2013-178426(P2013-178426)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 菊地 陽一
山田 正文
発明の名称 携帯電子機器  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ