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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1345566
審判番号 不服2017-4934  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-06 
確定日 2018-10-29 
事件の表示 特願2012- 77033「照明装置、投射装置および投射型映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日出願公開、特開2012-230360〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成24年 3月29日 特許出願(優先権主張、特願2011-909
72号、平成23年4月15日、日本国)
平成27年 2月17日 手続補正書
平成27年10月27日 拒絶理由通知(同年10月30日発送)
平成28年 1月 4日 意見書・手続補正書
平成28年 6月13日 拒絶理由通知(最後、同年6月17日発送)
平成28年 8月 9日 意見書・手続補正書
平成29年 1月 4日 拒絶査定(同年1月6日送達)
平成29年 4月 6日 審判請求書・手続補正書
平成30年 2月 8日 審尋(同年2月9日発送)
平成30年 4月10日 回答書
平成30年 4月27日 拒絶理由通知(同年5月8日発送、以下「当審
拒絶理由通知」という。)
平成30年 6月20日 意見書・手続補正書

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年6月20日付け手続補正により補正された請求項1-11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1は以下のとおりである。
「複数の入射領域に入射されたコヒーレント光を拡散し得る光学素子と、
同一波長の複数のコヒーレント光を出射する複数のコヒーレント光源と、
前記複数のコヒーレント光源と前記光学素子の前記複数の入射領域との間に配置され、それぞれ離隔して配置される複数の出射端から前記複数の入射領域にコヒーレント光を導く複数の光ファイバと、を備え、
前記光学素子は、前記光学素子の各入射領域に入射して拡散された前記同一波長の複数のコヒーレント光のそれぞれが、被照明領域の全域をそれぞれ相違する入射角度で同時かつ重畳して照明するように、前記複数のコヒーレント光源から前記複数の光ファイバを介して入射された各コヒーレント光を拡散させ、
前記複数の光ファイバは、前記複数の出射端から出射されたコヒーレント光が前記光学素子の対応する入射領域のみに入射されるように配置されることを特徴とする照明装置。」(以下「本願発明」という。)

3 当審拒絶理由通知
当審拒絶理由通知で通知した拒絶理由の概要は、本件出願の特許請求の範囲の請求項1-11に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



引用する刊行物
特開2007-33576号公報(以下「引用例1」という。)
特開2001-281599号公報(以下「引用例2」という。)


4 引用発明
(1)引用例1には、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置及び画像表示装置、並びにプロジェクタに関するものである。」

イ 「【背景技術】
【0002】
液晶装置等の空間光変調装置で生成された画像情報を含む色光を投射系を用いてスクリーン上に投射する投射型画像表示装置(プロジェクタ)において、光源にレーザを用いる技術が提案されている。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザ光により空間光変調装置の入射面を均一な照度分布で照明するために所定の光学系を用いる場合、光学系の構成によっては、装置の大型化や複雑化、あるいは装置コストの上昇を招く可能性がある。また、光学系の構成によっては、光利用効率等の低下を招く可能性がある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、装置の大型化や複雑化、あるいは装置コストの上昇を抑え、所定面を効率良く照明できる照明装置を提供することを目的とする。また、照明装置で照明された光を用いて画像を表示する画像表示装置、並びにプロジェクタを提供することを目的とする。」

エ 「【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
【0006】
本発明の第1の観点によると、レーザ光を射出するレーザ光源装置と、前記レーザ光源装置から射出されたレーザ光が入射されるとともに、該入射されたレーザ光により回折光を生成し、前記回折光で第1面上を所定の照明領域で照明する回折光学素子とを備えた照明装置が提供される。」(注:下線は、当審が付加した。以下同様。)

オ 「【0025】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。…

【0034】
図6は本実施形態に係る照明装置1(1R、1G、1B)を備えた画像表示装置を示す概略構成図である。本実施形態においては、画像表示装置として、空間光変調装置で生成された画像情報を含む色光を投射系を介してスクリーン上に投射する投射型画像表示装置(プロジェクタ)を例にして説明する。

【0038】
第1照明装置1Rのレーザ光源装置2は、赤色(R)のレーザ光を射出する。第1照明装置1Rは、回折光学素子4Kにより赤色のレーザ光から所望の領域を照明する回折光を生成し、その生成された回折光で第1ライトバルブ10Rの入射面11を照明する。
【0039】
第2照明装置1Gのレーザ光源装置2は、緑色(G)のレーザ光を射出する。第2照明装置1Gは、回折光学素子4Kにより緑色のレーザ光から所望の領域を照明する回折光を生成し、その生成された回折光で第2ライトバルブ10Gの入射面11を照明する。
【0040】
第3照明装置1Bのレーザ光源装置2は、青色(B)のレーザ光を射出する。第3照明装置1Bは、回折光学素子4Kにより青色のレーザ光から所望の領域を照明する回折光を生成し、その生成された回折光で第3ライトバルブ10Bの入射面11を照明する。」

カ 「【0047】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0048】
図7は第2実施形態に係る照明装置1を示す図であり、図7(A)は側面図、図7(B)は斜視図である。図7において、照明装置1は複数のレーザ光源装置2を備えている。複数のレーザ光源装置2はアレイ状に配置されており、本実施形態においては、一次元方向(X方向)に複数並んで設けられている。…

【0052】
このように、レーザ光源装置2の光射出面をアレイ状に複数配置してもよい。こうすることにより、光量を増大することができ、高い照度で第1面11を照明することができる。そして、この照明装置1によって、画像情報を含む第1面(ライトバルブの入射面を含む)11を照明することにより、画像表示装置PJは、高輝度な画像を表示することができる。」

キ 「【0055】
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。図8は第3実施形態に係る照明装置1を示す図であり、図8(A)は側面図、図8(B)は斜視図である。図8において、照明装置1は複数のレーザ光源装置2を備えている。複数のレーザ光源装置2はアレイ状に配置されており、本実施形態においては、一次元方向(X方向)に複数並んで設けられている。レーザ光源装置2の光射出面は+Z側を向いており、各レーザ光源装置2は+Z方向に向けてレーザ光L1を射出する。
【0056】
回折光学素子4Kは、複数のレーザ光源装置2のそれぞれに対応するように複数設けられている。図8に示す例では、複数のレーザ光源装置2は一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられており、回折光学素子4Kは、それら複数のレーザ光源装置2に対応するように、支持部材4B上で一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられている。そして、複数の回折光学素子4Kのそれぞれは、複数のレーザ光源装置2の位置及び特性等に応じて最適化されている。
【0057】
複数の回折光学素子4Kのそれぞれは、複数のレーザ光源装置2のそれぞれから射出されたレーザ光L1に基づいて生成した回折光L2で、第1面11上の所定領域を重畳的に照明できるように、その表面条件(凹部どうしのピッチ及び凹部の深さを含む)が最適化されている。回折光学素子3Kそれぞれの表面条件を最適化する設計手法としては、上述の反復フーリエ法など、所定の演算手法が挙げられる。
【0058】
また、各回折光学素子4Kのそれぞれは、上述の実施形態同様、照明領域を矩形状に設定することができる。
【0059】
各レーザ光源装置2から射出されたレーザ光L1は、各光学素子4Kにより所望の領域を照明する回折光L2に変換された後、第1面11に照明される。
【0060】
このように、複数の回折光学素子4Kのそれぞれで生成した回折光L2で、第1面11上の所定領域を重畳的に照明することができる。これにより、第1面11を高い照度で効率良く照明することができる。また、スペックルパターンの発生を抑え、第1面11をほぼ均一な照度分布で照明することができる。」

ク 図6、7、8は、以下のとおりである。

(2)以下、引用発明を認定する。
ア 上記(1)エ、キの記載によれば、以下の照明装置が開示されている。
「レーザ光を射出する複数のレーザ光源装置と、
前記レーザ光源装置から射出されたレーザ光が入射されるとともに、該入射されたレーザ光により回折光を生成し、前記回折光で、空間光変調装置の入射面を含む所定部材の第1面上を所定の照明領域で照明する回折光学素子とを備えた照明装置であって、
前記複数のレーザ光源装置は一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられており、
前記回折光学素子は、それら複数のレーザ光源装置に対応するように、支持部材上で一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられており、
前記複数の回折光学素子のそれぞれは、複数のレーザ光源装置のそれぞれから射出されたレーザ光に基づいて生成した回折光で、前記第1面上の所定領域を重畳的に照明することにより、スペックルパターンの発生を抑え、前記第1面をほぼ均一な照度分布で照明する、
照明装置。」

イ 上記(1)オの記載と図6によれば、第1実施形態において、第1照明装置1Rのレーザ光源装置2は、赤色(R)のレーザ光を射出し、第2照明装置1Gのレーザ光源装置2は、緑色(G)のレーザ光を射出し、第3照明装置1Bのレーザ光源装置2は、青色(B)のレーザ光を射出することが開示されている。
次に、上記(1)カの記載と図7によれば、第2実施形態は、複数のレーザ光源装置2を備えることにより、光量を増大することが開示されている。ここで、第2実施形態が光量を増大するものであることに照らせば、図7に描かれた複数のレーザ光源装置2の波長は、同一であると解される。
そして、上記(1)キの記載と図8によれば、第3実施形態は、複数の回折光学素子4Kのそれぞれを、複数のレーザ光源装置2の位置及び特性等に応じて最適化することにより、第1面11上の所定領域を重畳的に照明することが開示されている。
してみると、レーザー光源装置2が単数である第1実施形態に対し、第2実施形態ではレーザー光源装置2を複数として光量を増大させ、さらに、第3実施形態では第1面11上の所定領域を重畳的に照明していることが理解でき、以上を総合すれば、第3実施形態の複数のレーザ光源装置2は、第2実施形態と同様に同一の波長であると解される。

ウ 請求人は、平成28年8月9日付け意見書の「4.」において、【0081】の記載を根拠に複数のレーザ光L1の波長が相違する旨主張する。しかしながら、請求人が主張の根拠とする記載は、
「【0081】
なお、上述の実施形態のプロジェクタPJは、各基本色光(R、G、B)を射出可能なレーザ光源装置2をそれぞれ有する第1、第2、第3照明装置1R、1G、1Bを有しているが、赤色光(R)を射出する赤色レーザ光源装置、緑色光(G)を射出する緑色レーザ光源装置、及び青色光(B)を射出する青色レーザ光源装置をアレイ状に配置した構成を有する照明装置を1つ有する構成であってもよい。この場合、各基本色光を射出可能なレーザ光源装置のレーザ光射出動作を時分割で行い、その各レーザ光源装置のレーザ光射出動作に同期して、ライトバルブの動作を制御することにより、1つの照明装置及び1つのライトバルブでスクリーン100上にフルカラー画像を表示することができる。」
である。上記記載を検討すると、該記載は、
ア 各基本光を射出可能なレーザ光源装置2をそれぞれ有する照明装置を3つ有する構成、
イ 各基本光を射出可能なレーザ光源装置2を有する照明装置を1つ有する構成、
の両者を開示するものであって、上記イのみを開示する旨の請求人の上記主張は採用することができない。

エ 以上によれば、引用例1には以下の発明が開示されている。
「同一の波長のレーザ光を射出する複数のレーザ光源装置と、
前記レーザ光源装置から射出されたレーザ光が入射されるとともに、該入射されたレーザ光により回折光を生成し、前記回折光で、空間光変調装置の入射面を含む所定部材の第1面上を所定の照明領域で照明する回折光学素子とを備えた照明装置であって、
前記複数のレーザ光源装置は一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられており、
前記回折光学素子は、それら複数のレーザ光源装置に対応するように、支持部材上で一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられており、
前記複数の回折光学素子のそれぞれは、複数のレーザ光源装置のそれぞれから射出されたレーザ光に基づいて生成した回折光で、前記第1面上の所定領域を重畳的に照明することにより、スペックルパターンの発生を抑え、前記第1面をほぼ均一な照度分布で照明する、
照明装置。」(以下「引用発明」という。)

5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の「複数の入射領域に入射されたコヒーレント光を拡散し得る光学素子」と、引用発明の「複数のレーザ光源装置に対応するように、支持部材上で一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられ」、「前記レーザ光源装置から射出されたレーザ光が入射されるとともに、該入射されたレーザ光により回折光を生成…する回折光学素子」を対比する。
ア 引用発明の「回折光学素子」は「レーザ光が入射される」から「入射領域」を備えるところ、「複数並んで設けられ」るから「複数の入射領域」を備える。
イ 引用発明の「前記レーザ光源装置から射出されたレーザ光」は本願発明の「コヒーレント光」に相当し、引用発明の「入射されたレーザ光により回折光を生成…する」ことは、本願発明の「入射されたコヒーレント光を拡散」することに相当する。
ウ してみると、両者は相当関係にある。

(2)本願発明の「同一波長の複数のコヒーレント光を出射する複数のコヒーレント光源」と、引用発明の「同一の波長のレーザ光を射出する複数のレーザ光源装置」を対比する。
引用発明の「レーザ光」、「レーザ光源装置」は、それぞれ、本願発明の「コヒーレント光」、「コヒーレント光源」に相当する。してみると、両者は相当関係にある。

(3)本願発明の「前記光学素子は、前記光学素子の各入射領域に入射して拡散された前記同一波長の複数のコヒーレント光のそれぞれが、被照明領域の全域をそれぞれ相違する入射角度で同時かつ重畳して照明するように、前記複数のコヒーレント光源から前記複数の光ファイバを介して入射された各コヒーレント光を拡散させ」ることと、引用発明の「支持部材上で一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられて」いる「前記複数の回折光学素子のそれぞれは、複数のレーザ光源装置のそれぞれから射出された」「同一波長の」「レーザ光に基づいて生成した回折光で、前記第1面上の所定領域を重畳的に照明すること」を対比する。
ア 引用発明の「回折光学素子」が「複数のレーザ光源装置2のそれぞれから射出された」「同一波長の」「レーザ光に基づいて生成した回折光で、前記第1面上の所定領域を重畳的に照明する」ことは、本願発明の「光学素子」が「入射領域に入射して拡散された」「複数のコヒーレント光のそれぞれが、被照明領域の全域を同時かつ重畳して照明する」ことに相当する。
イ 引用発明の「回折光学素子」は、「支持部材上で一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられて」いるから、「レーザ光に基づいて生成した回折光」が「第1面上の所定領域を重畳的に照明する」角度は、それぞれ相違する。
ウ してみると、両者は、「前記光学素子は、前記光学素子の各入射領域に入射して拡散された前記同一波長の複数のコヒーレント光のそれぞれが、被照明領域の全域をそれぞれ相違する入射角度で同時かつ重畳して照明するように、前記複数のコヒーレント光源から入射された各コヒーレント光を拡散させ」る点で一致する。

(4)以上によれば、本願発明と引用発明は、
「複数の入射領域に入射されたコヒーレント光を拡散し得る光学素子と、
同一波長の複数のコヒーレント光を出射する複数のコヒーレント光源と、
を備え、
前記光学素子は、前記光学素子の各入射領域に入射して拡散された前記同一波長の複数のコヒーレント光のそれぞれが、被照明領域の全域をそれぞれ相違する入射角度で同時かつ重畳して照明するように、前記複数のコヒーレント光源から入射された各コヒーレント光を拡散させる照明装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点: 本願発明は、「前記複数のコヒーレント光源と前記光学素子の前記複数の入射領域との間に配置され、それぞれ離隔して配置される複数の出射端から前記複数の入射領域にコヒーレント光を導く複数の光ファイバ」を備え、「前記複数の光ファイバを介して」「前記光学素子は」「前記複数のコヒーレント光源から」「各コヒーレント光」が「入射され」、「前記複数の光ファイバは、前記複数の出射端から出射されたコヒーレント光が前記光学素子の対応する入射領域のみに入射されるように配置され」るのに対し、引用発明は、複数の光ファイバを有していない点。

6 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)引用例2には、投写型表示装置の照明系に関する技術が開示されており、【0024】、【0025】には、以下の記載がある。
ア 「【0024】さてレーザーを光源に用いた場合、光源発光の偏光性が高く、また空間コヒーレンシーのきわめて高い光源である。従って単に光源として用いると投影された画像はスペックルが多く、ちらつきとして視認されてしまう。
【0025】本実施例では図2に示すように半導体レーザーから出射した光をカップリングレンズアレイ209により集光し光ファイバーアレイ210に導入する。この光ファイバーアレイ210中で反射伝播する中で偏光、位相が複雑に乱れ、結果としてスペックルの原因となる空間コヒレンシーを低下させることができる。次に光ファイバーアレイ210の出射端から発生した光は、集光アレイレンズ202で再び集光され、偏光変換光学系203に入射する。」
イ 図2は、以下のとおりである。

上記記載によれば、引用例2には、カップリングレンズアレイ209と集光アレイレンズ202の間に光ファイバーアレイ210(複数の光ファイバー)を導入することにより、レーザ光が光ファイバーを伝搬すると、偏光、位相が複雑に乱れ、結果としてスペックルの原因となる空間コヒレンシーを低下させる旨の技術事項(以下「引用例2に開示された技術事項」という。)が開示されている。
引用発明は「スペックルパターンの発生を抑え、前記第1面をほぼ均一な照度分布で照明する」照明装置であるから、引用発明において、スペックルパターンの発生を更に低減する目的で、引用例2に開示された技術事項を採用し、引用発明の「複数のレーザ光源装置」と「複数の回折光学素子」の間に複数の光ファイバーを導入し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を備えるよう構成することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(2)作用効果について
本願発明が奏するスペックルを低減する旨の作用効果は、引用発明、引用例2に開示された技術事項に基づいて当業者が予測しうる程度のものであって、格別顕著なものとは認められない。
また、光ファイバを用いることで各部品の配置の制約を少なくできることは当業者に周知の技術事項であるから、本願発明が奏する光学系の配置の制約を少なくできる旨の作用効果は、当業者が容易に予測しうる程度のものである。

(3)請求人は、平成30年6月20日付け意見書「4.」において、
本願発明では、複数の光ファイバの複数の出射端から出射されたコヒーレント光が光学素子の対応する入射領域のみに入射するのでスペックル低減効果が劣化しないのに対し、
引用例1では、隣り合うレーザ光源装置2から出射されたコヒーレント光が一つの回折光学素子4K上で重なり合って、所望のスペックル低減効果が得られなくなるおそれがある、
旨主張するので、以下検討する。
引用発明は、「前記回折光学素子は、それら複数のレーザ光源装置に対応するように、支持部材上で一次元方向(X軸方向)に複数並んで設けられており、前記複数の回折光学素子のそれぞれは、複数のレーザ光源装置2のそれぞれから射出されたレーザ光に基づいて」「回折光」を生成するものである。そうすると、引用発明は、レーザ光の直進性からみて、レーザ光源装置から出射したレーザ光が、該レーザ光源装置と対応する回折光学素子に入射し、該回折光学素子は、該レーザ光に基づいて回折光を生成するから、請求人が主張するように、隣り合うレーザ光源装置2から出射されたレーザ光が一つの回折光学素子上で重なり合うものとは認められない。よって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に開示された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

7 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に開示された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-24 
結審通知日 2018-08-28 
審決日 2018-09-13 
出願番号 特願2012-77033(P2012-77033)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 博之  
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 野村 伸雄
小松 徹三
発明の名称 照明装置、投射装置および投射型映像表示装置  
代理人 川崎 康  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
代理人 中村 行孝  

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