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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1345583
審判番号 不服2017-17755  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-30 
確定日 2018-11-01 
事件の表示 特願2013-135413号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月19日出願公開、特開2015- 8824号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月27日の出願であって、平成29年3月3日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月12日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年9月1日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年11月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年11月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
(1) 本件補正は特許請求の範囲の請求項1の補正を含むものであり、平成29年5月12日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。

(補正前:平成29年5月12日付けの手続補正)
「【請求項1】
遊技を行うことが可能な遊技機であって、
少なくとも第1の部材と、第2の部材と、第3の部材とを有し、各部材が所定位置に移動することによって、一の装飾体を形成する可動装飾体ユニット
を備え、
前記第3の部材は、押圧部を有し、
前記第1の部材と前記第2の部材との少なくとも一方は、前記押圧部に押圧される被押圧部を有し、
前記第3の部材は、前記一の装飾体が形成される際に、前記被押圧部が前記押圧部に押圧されるように動作して、前記第1の部材と前記第2の部材とが近接する方向に力を加えることによって、前記第1の部材と前記第2の部材とが離反するのを防止する
ことを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正:平成29年11月30日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技を行うことが可能な遊技機であって、
少なくとも第1の部材と、第2の部材と、第3の部材とを有し、各部材が所定位置に移動することによって、一の装飾体を形成する可動装飾体ユニット
を備え、
前記第3の部材は、凸状の押圧部を有し、
前記第1の部材と前記第2の部材とは、それぞれ被押圧部を有し、
前記第1の部材と前記第2の部材とが近接することで、前記第1の部材の被押圧部と前記第2の部材の被押圧部とにより凹部が形成され、
前記一の装飾体が形成される際に、前記凸状の押圧部が前記凹部を押圧することにより、前記第1の部材と前記第2の部材とが近接する方向に力を加え、前記第1の部材と前記第2の部材とが離反するのを防止する
ことを特徴とする遊技機。」

(2) 本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の4つの補正事項ア?エからなる。

ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「押圧部」を「凸状の押圧部」とする補正。

イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記第1の部材と前記第2の部材との少なくとも一方は、前記押圧部に押圧される被押圧部を有し」を、「前記第1の部材と前記第2の部材とは、それぞれ被押圧部を有し」とする補正。

ウ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「被押圧部」について、「前記第1の部材と前記第2の部材とが近接することで、前記第1の部材の被押圧部と前記第2の部材の被押圧部とにより凹部が形成され」るとする補正。

エ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記第3の部材は、前記一の装飾体が形成される際に、前記被押圧部が前記押圧部に押圧されるように動作して、前記第1の部材と前記第2の部材とが近接する方向に力を加えることによって、前記第1の部材と前記第2の部材とが離反するのを防止する」を、「前記一の装飾体が形成される際に、前記凸状の押圧部が前記凹部を押圧することにより、前記第1の部材と前記第2の部材とが近接する方向に力を加え、前記第1の部材と前記第2の部材とが離反するのを防止する」とする補正。

2 補正の適否
(1) 上記1(2)アの補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の図5?7、図10?14等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「押圧部」を「凸状の」ものに限定するものである。

(2) 上記1(2)イの補正は、当初明細書等の【0110】等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「前記第1の部材と前記第2の部材との少なくとも一方は、前記押圧部に押圧される被押圧部を有し」を、「前記第1の部材と前記第2の部材とは、それぞれ被押圧部を有し」に限定するものである。

(3) 上記1(2)ウの補正は、当初明細書等の図12?14等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「被押圧部」について、「前記第1の部材と前記第2の部材とが近接することで、前記第1の部材の被押圧部と前記第2の部材の被押圧部とにより凹部が形成され」る点を限定するものである。

(4) 上記1(2)エの補正は、上記1(2)ア、ウの補正と表現を整合させるための補正である。

(5) 以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)ア?エの補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)ア?エの補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記「1 本件補正の概要」に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである(A?Gは、本願補正発明を分説するために当審で付与した。)。
「A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 少なくとも第1の部材と、第2の部材と、第3の部材とを有し、各部材が所定位置に移動することによって、一の装飾体を形成する可動装飾体ユニット
を備え、
C 前記第3の部材は、凸状の押圧部を有し、
D 前記第1の部材と前記第2の部材とは、それぞれ被押圧部を有し、
E 前記第1の部材と前記第2の部材とが近接することで、前記第1の部材の被押圧部と前記第2の部材の被押圧部とにより凹部が形成され、
F 前記一の装飾体が形成される際に、前記凸状の押圧部が前記凹部を押圧することにより、前記第1の部材と前記第2の部材とが近接する方向に力を加え、前記第1の部材と前記第2の部材とが離反するのを防止する
G ことを特徴とする遊技機。」

(2)先願明細書等
原査定の拒絶の理由において提示された、本願の出願日前に出願された特願2013-116481号(特開2014-233452号公報参照)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には以下の記載がある。(下線は当審で付与した。)

・記載事項

ア 「【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1から図35を参照し、第1実施形態として、本発明をパチンコ遊技機(以下、単に「パチンコ機」という)10に適用した場合の一実施形態について説明する。図1は、第1実施形態におけるパチンコ機10の正面図であり、図2はパチンコ機10の遊技盤13の正面図であり、図3はパチンコ機10の背面図である。
【0018】
図1に示すように、パチンコ機10は、略矩形状に組み合わせた木枠により外殻が形成される外枠11と、その外枠11と略同一の外形形状に形成され外枠11に対して開閉可能に支持された内枠12とを備えている。外枠11には、内枠12を支持するために正面視(図1参照)左側の上下2カ所に金属製のヒンジ18が取り付けられ、そのヒンジ18が設けられた側を開閉の軸として内枠12が正面手前側へ開閉可能に支持されている。
【0019】
内枠12には、多数の釘や入賞口63,64等を有する遊技盤13(図2参照)が裏面側から着脱可能に装着される。この遊技盤13の前面を球(遊技球)が流下することにより弾球遊技が行われる。なお、内枠12には、球を遊技盤13の前面領域に発射する球発射ユニット112a(図4参照)やその球発射ユニット112aから発射された球を遊技盤13の前面領域まで誘導する発射レール(図示せず)等が取り付けられている。」

イ 「【0317】
第1結合動作ユニット500及び第2結合動作ユニット600は、第1係合部材539及び一対の第2結合部材630をそれぞれ昇降および揺動させることで、図31に示す退避位置または図32に示す結合位置に配置する。図31に示す退避位置では、第1係合部材539が上昇されると共に、一対の第2結合部材630がリンク機構の傾倒により左右に離間され、第3図柄表示装置81(図2参照)の前面側が開放された状態とされる(図6参照)。一方、図32に示す結合位置では、第1係合部材539が下降されると共に、一対の第2結合部材630がリンク機構の起立により互いに近接され、これら第1係合部材539及び一対の第2結合部材630が第3図柄表示装置81の前面側に配置されると共に互いに結合される(図12参照)。
【0318】
この場合、第1結合動作ユニット500及び第2結合動作ユニット600によれば、左右に隣り合わせに配置された一対の第2結合部材630へ向けて、第1係合部材539が下降され、その第1係合部材539の下面539eが一対の第2結合部材630のそれぞれの上面630aに当接されることで、互いを近接させる方向への力が一対の第2結合部材630に作用される。これにより、第1係合部材539の下面539eと一対の第2結合部材630の上面630aとを密着させることができるだけでなく、左右に隣り合う一対の第2結合部材630の対向面どうしも密着させることができる。その結果、これら各結合部材539,630を、互いの間に隙間が形成されることを抑制しつつ、結合させることができる。よって、複数の部材を結合させることによる演出効果の向上を図ることができる。」

ウ 「【0363】
第1結合部材539は、正面側から遊技者に視認される装飾部を形成する共に、第2結合動作ユニット600の一対の第2結合部材630に当接して結合状態を形成するための部材であり(図32参照)、正面視縦長の矩形板状に形成される本体部539aと、その本体部539aの長手方向に沿って直線状に延設される溝状の開口である案内溝539bと、本体部534aの下方に連設される装飾部539cと、本体部532aの背面側において案内溝539bに沿って複数の歯がラックギヤとして刻設されるラック部539dと、を備える。」

エ 「【0398】
第2結合部材630は、正面側から遊技者に視認される装飾部を形成すると共に結合位置において第1結合部材539に結合される部材であり(図32参照)、第1結合部材539の下面539eが当接される上面630aと、他方の第2結合部材630が隣り合う際に互いに当接される対向面630bとが形成される。」

オ 「【0414】
この場合、本実施形態では、図32及び図45に示すように、一対の第2結合部材630は、その上面630a側(図32及び図45上側)における正面視形状(図32及び図45に図示する形状)が、中央が下方(図32及び図45下方)へ向けて凹む凹形状とされる一方、第1結合部材539は、下面539e側(図32及び図45下側)における正面視形状(図32及び図45に図示する形状)が、一対の第2結合部材630の形状に対応して、中央が下方(図32及び図45下方)へ向けて突出する突出形状とされる。」

カ 「【図32】



キ 「【図45】



・認定事項

ク 記載事項イの【0317】、【0318】には、「第1係合部材539」が記載されているが、同じ符号「539」が振られている記載事項ウ?オの「第1結合部材539」と同一のものであることが明らかである。

ケ 記載事項イの【0317】から、図32には、一対の第2結合部材630が互いに近接されることが図示されているといえ、また、記載事項オの【0414】から、図32には、「一対の第2結合部材630は、その上面630a側における正面視形状が、中央が下方へ向けて凹む凹形状とされ」ることが示されているといえる。
したがって、先願明細書等には、「一対の第2結合部材630が互いに近接されると、一対の第2結合部材630は、その上面630a側における正面視形状が、中央が下方へ向けて凹む凹形状とされ」ることが記載されているといえる。

コ 上記記載事項ア?キ及び認定事項ク、ケからみて、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。なお、a?gについては本願補正発明のA?Gに対応させて付与した。

「a 弾球遊技が行われるパチンコ機10であって、(記載事項アの【0017】、【0019】)
b 結合位置では、装飾部を形成する第1結合部材539が下降されると共に、装飾部を形成する一対の第2結合部材630が互いに近接され、これら第1結合部材539及び一対の第2結合部材630が互いに結合される、第1結合動作ユニット500と第2結合動作ユニット600を備え、(記載事項イの【0317】、ウの【0363】、エの【0398】、認定事項ク)
c 第1結合部材539は、下面539e側における正面視形状が、中央が下方へ向けて突出する突出形状を有し、(記載事項オの【0414】)
d 一対の第2結合部材630は、それぞれ第1結合部材539の下面539eが当接する上面630aを有し、(記載事項イの【0318】、認定事項ク)
e 一対の第2結合部材630が互いに近接されると、一対の第2結合部材630は、その上面630a側における正面視形状が、中央が下方へ向けて凹む凹形状とされ、(認定事項ケ)
f 結合位置において、第1結合部材539の下面539eが一対の第2結合部材630のそれぞれの上面630aに当接されることで、互いを近接させる方向への力が一対の第2結合部材630に作用される(記載事項イの【0318】、認定事項ク)
g パチンコ機10。(記載事項アの【0017】)」

(3) 本願補正発明と先願発明との対比
本願補正発明と先願発明とを対比する(対比にあたっては、本願補正発明の構成A?Gと先願発明の構成a?gについて、それぞれ(a)?(g)の見出しを付して行った。)。

(a) 先願発明の「弾球遊技が行われるパチンコ機10」は、本願補正発明の「遊技を行うことが可能な遊技機」に相当する。

(b) 先願発明の「一対の第2結合部材630」及び「第1結合部材539」は、それぞれ本願補正発明の「第1の部材と、第2の部材」及び「第3の部材」に相当する。
先願発明において、「装飾部を形成する第1結合部材539」と「装飾部を形成する一対の第2結合部材630が互いに結合され」れば、一つの装飾体が形成されることは自明であるから、先願発明の「結合位置」及び「第1結合動作ユニット500と第2結合動作ユニット600」は、それぞれ本願補正発明の「所定位置」及び「一の装飾体を形成する可動装飾体ユニット」に相当する。

(c) 「株式会社岩波書店 広辞苑第六版」には、「とつ【凸】」について、「物の表面が部分的に出ばっていること。でこ。」と記載されている。
そして、先願発明の「中央が下方へ向けて突出する突出形状」は、中央が出ばっている形状を意味するから、先願発明において、「中央が下方へ向けて突出する突出形状」であることは、本願補正発明において、「凸状」であることに相当する。
また、構成fに記載されるように、「第1結合部材539の下面539e」は、「一対の第2結合部材630のそれぞれの上面630aに当接される」が、このとき、「互いを近接させる方向への力が一対の第2結合部材630に作用される」ことから、「第2結合部材630のそれぞれの上面630a」を「押圧」する機能を有することが明らかである。
よって、先願発明の「第1結合部材539は、下面539e側における正面視形状が、中央が下方へ向けて突出する突出形状を有」することは、本願補正発明の「前記第3の部材は、凸状の押圧部を有」することに相当する。

(d) 上記(c)に記載したとおり、「第1結合部材539の下面539e」は、「第2結合部材630のそれぞれの上面630a」を「押圧」する機能を有することから、「一対の第2結合部材630」の「第1結合部材539の下面539eが当接する上面630a」は、「押圧」される部位である。したがって、先願発明において、「一対の第2結合部材630は、それぞれ第1結合部材539の下面539eが当接する上面630aを有」することは、本願補正発明において、「前記第1の部材と前記第2の部材とは、それぞれ被押圧部を有」することに相当する。

(e) 先願発明の「中央が下方へ向けて凹む凹形状とされ」る部位は、本願補正発明の「凹部」に相当する。したがって、先願発明において、「一対の第2結合部材630が互いに近接されると、一対の第2結合部材630は、その上面630a側における正面視形状が、中央が下方へ向けて凹む凹形状とされ」ることは、本願補正発明において、「前記第1の部材と前記第2の部材とが近接することで、前記第1の部材の被押圧部と前記第2の部材の被押圧部とにより凹部が形成され」ることに相当する。

(f) 先願発明において、「互いを近接させる方向への力が一対の第2結合部材630に作用され」れば、「互いに離反するのを防止する」作用が働くことは自明である。したがって、先願発明において、「結合位置において、第1結合部材539の下面539eが一対の第2結合部材630のそれぞれの上面630aに当接されることで、互いを近接させる方向への力が一対の第2結合部材630に作用される」ことは、本願補正発明において、「前記一の装飾体が形成される際に、前記凸状の押圧部が前記凹部を押圧することにより、前記第1の部材と前記第2の部材とが近接する方向に力を加え、前記第1の部材と前記第2の部材とが離反するのを防止する」ことに相当する。

(g) 上記(a)のとおり、先願発明の構成gは、本願補正発明の構成Gに相当する。

以上のことから、本願補正発明と先願発明は、
「A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 少なくとも第1の部材と、第2の部材と、第3の部材とを有し、各部材が所定位置に移動することによって、一の装飾体を形成する可動装飾体ユニット
を備え、
C 前記第3の部材は、凸状の押圧部を有し、
D 前記第1の部材と前記第2の部材とは、それぞれ被押圧部を有し、
E 前記第1の部材と前記第2の部材とが近接することで、前記第1の部材の被押圧部と前記第2の部材の被押圧部とにより凹部が形成され、
F 前記一の装飾体が形成される際に、前記凸状の押圧部が前記凹部を押圧することにより、前記第1の部材と前記第2の部材とが近接する方向に力を加え、前記第1の部材と前記第2の部材とが離反するのを防止する
G ことを特徴とする遊技機。」
で一致し、相違点はない。

(4)小括
以上のとおり、本願補正発明は、先願発明と同一の発明であり、しかも、本願補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとはいえず、また、本願の出願日時点において、その出願人が先願発明の出願人と同一であるともいえないので、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、平成29年11月30日に提出した審判請求書の「(4) 本願発明と引用発明との対比」において、本件補正(平成29年11月30日付け手続補正)により補正された請求項1記載の発明と先願発明の構成について、以下の主張を行っている。

「該記載と図37、図44の記載とによれば、他の先願1には、「第3の部材(第1結合部材539)は、凹部(第1結合部材539の下面539eに凹設される凹部539e1)を有し、第1の部材と第2の部材と(一対の第2結合部材630)が近接することで、第1の部材の上面630aに突設された凸部と、第2の部材の上面630aに突設された凸部とにより押圧部が形成され、一の装飾体が形成される際に、凸部630a1が凹部539e1に収納(凹凸嵌合)されることにより、結合位置において、第3の部材に対する第1の部材と第2の部材との相対変位(前後方向および左右方向)を規制する」との事項が開示されていると認められる。
このように、他の出願1に記載の発明は、補正後の本願発明における、「前記第3の部材は、凸状の押圧部を有し、・・・前記第1の部材と前記第2の部材とが近接することで、前記第1の部材の被押圧部と前記第2の部材の被押圧部とにより凹部が形成され、前記一の装飾体が形成される際に、前記凸状の押圧部が前記凹部を押圧することにより、前記第1の部材と前記第2の部材とが近接する方向に力を加え、前記第1の部材と前記第2の部材とが離反するのを防止する」との構成を有するものではない。」

しかしながら、上記「(3) 本願補正発明と先願発明との対比」の(c)、(e)、(f)において示したとおり、先願発明は、「中央が下方へ向けて突出する突出形状」を有する「第1結合部材539の下面539e」(本願補正発明の「凸部」に相当)が、「一対の第2結合部材630」の「上面630a」(本願補正発明の「凹部」に相当)に当接されることで、互いを近接させる方向への力が一対の第2結合部材630(本願補正発明の「第1の部材」と「第2の部材」に相当)に作用されるものであり、当該作用は、先願明細書等に記載の「凸部630a1」及び「凹部539e1」の存在にかかわらず、生じ得るものである。
そうすると、先願発明は、請求人の主張する上記構成を有しているといえるから、審判請求人の主張は採用できない。

イ 審判請求人は、上記審判請求書の「(4) 本願発明と引用発明との対比」において、本件補正により補正された請求項1記載の発明と先願発明の効果について、以下の主張を行っている。

「かかる構成上の相違により、本願発明は他の出願1に記載された発明と比較して有利な下記の効果を奏する。
補正後の本願発明によれば、第3の部材は、凸状の押圧部を有し、第1の部材と第2の部材とは、それぞれ被押圧部を有し、第1の部材と第2の部材とが近接することで、第1の部材の被押圧部と第2の部材の被押圧部とにより凹部が形成され、一の装飾体が形成される際に、凸状の押圧部が凹部を押圧することにより、第1の部材と第2の部材とが近接する方向に力を加え、第1の部材と第2の部材とが離反するのを防止するので、例えば、第1部材と第2部材とが僅かに離反している状態といった、第1部材と第2部材とが完全に離反していない状態とはなっていなくても、その離反の程度が第3部材の凸状の押圧部よりも小さければ、そのまま第1の部材の被押圧部と第2の部材の被押圧部とにより形成される凹部に対して凸状の押圧部を作用させることができ、ひいては、各部材を結合させる設計上のタイミングに煩わせることなく、高速に各部材を移動させることができる。
その結果、第1部材と第2部材とが結合するタイミングと、第3部材が結合するタイミングとを限りなく一致させることができるため、遊技者に違和感を与えないようにすることができる。
これに対し、他の出願1に記載の発明は、第1部材と第2部材とが完全に離反していない状態になってからでないと、第1部材と第2部材とに対して第3部材を作用させることができず、一の装飾体を形成するにあたり、第1部材と第2部材と第3部材とを高速で移動させるのに適さない。
その結果、他の出願1に記載の発明は、第1部材と第2部材と第3部材とを不具合なく結合させようとすると、第1部材と第2部材とが結合するタイミングと、第3部材が結合するタイミングとにズレが生じ易く、一の装飾体を形成する演出に違和感が生じ、興趣を損ねてしまう可能性がある。」

しかしながら、審判請求人が「補正後の本願発明」が奏する効果として主張する効果は、先願明細書等に記載されるような「凸部630a1」と「凹部539e1」を有さない場合の効果であるが、本件補正により補正された請求項1にはこれらの有無については記載がないから、「補正後の本願発明」は、「凸状の押圧部」や「凹部」に加えて、先願明細書等に記載されるような「凸部630a1」と「凹部539e1」も併せ持つ発明を排除するものではない。
よって、審判請求人の主張は、特許請求の範囲の請求項1の記載に基づくものではないため、採用できない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年5月12日付けの手続補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「第2[理由]1 本件補正の概要」において「補正前」として記載した次のとおりのものである。
「【請求項1】
遊技を行うことが可能な遊技機であって、
少なくとも第1の部材と、第2の部材と、第3の部材とを有し、各部材が所定位置に移動することによって、一の装飾体を形成する可動装飾体ユニット
を備え、
前記第3の部材は、押圧部を有し、
前記第1の部材と前記第2の部材との少なくとも一方は、前記押圧部に押圧される被押圧部を有し、
前記第3の部材は、前記一の装飾体が形成される際に、前記被押圧部が前記押圧部に押圧されるように動作して、前記第1の部材と前記第2の部材とが近接する方向に力を加えることによって、前記第1の部材と前記第2の部材とが離反するのを防止する
ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
平成29年9月1日付け拒絶査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、上記先願明細書等に記載された発明と同一の発明であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないというものである。

3 先願明細書等
先願明細書等に記載されている先願発明は、前記「第2[理由]3(2)コ」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2[理由]1(2)」のとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2[理由]3 独立特許要件」に記載したとおり、先願発明と同一であるから、本願発明も同様の理由により、先願発明と同一である。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一の発明であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとはいえず、また、本願の出願日時点において、その出願人が先願発明の出願人と同一であるともいえないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2018-08-29 
結審通知日 2018-09-04 
審決日 2018-09-18 
出願番号 特願2013-135413(P2013-135413)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 沙絵  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 荒井 誠
濱野 隆
発明の名称 遊技機  
代理人 佐伯 義文  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 平野 昌邦  
代理人 松沼 泰史  

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