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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01L
管理番号 1345588
審判番号 不服2018-1823  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-08 
確定日 2018-11-20 
事件の表示 特願2013-245630「触覚センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日出願公開、特開2014-115282、請求項の数(25)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月28日(パリ条約による優先権主張 2012年12月5日 韓国)の出願であって、平成29年3月1日付けで拒絶理由が通知され、平成29年6月5日付けで手続補正がなされたが、平成29年9月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ(謄本送達日 平成29年10月10日)、これに対し、平成30年2月8日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次の通りである。

2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由2(特許法第36条第6項第1号)について
・請求項 30

●理由3(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-30
・引用文献等 1-5

<引用文献等一覧>
1.特開昭63-171334号公報
2.特開2003-004481号公報
3.特開2012-173100号公報
4.特公昭50-019057号公報
5.特表2011-525240号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-25に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明25」という。)は、平成30年2月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-25に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、6、11、13、25は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の第1電極が備えられる第1基板と、
前記複数の第1電極それぞれに対応する複数の第2電極が備えられる第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に提供され、伸長または圧縮可能な誘電体と、
を含み、
前記複数の第1電極のいずれか1つの第1電極に対応する第2電極は、前記いずれか1つの第1電極に対して前記第2基板内で一方向にずれて配置され、前記いずれか1つの第1電極に隣接する他の第1電極に対応する他の第2電極は、前記他の第1電極に対して前記第2基板内で他方向にずれて配置され、
前記複数の第1電極は、前記複数の第2電極に一対一にマッチングされ、
前記複数の第1電極は互いに離隔配置され、
前記複数の第2電極は互いに離隔配置され、
前記誘電体の一部は、前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされ、
前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され、
前記複数の第1電極の頂点は前記複数の第1電極にそれぞれ対応する前記複数の第2電極にオーバーラップされ、前記複数の第2電極の頂点は前記複数の第2電極にそれぞれ対応する前記複数の第1電極にオーバーラップされるように配置されることを特徴とする触覚センサ。」

「【請求項6】
複数の第1電極が備えられる第1基板と、
前記複数の第1電極それぞれに対応する複数の第2電極が備えられる第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に提供され、伸長または圧縮可能な誘電体と、
を含み、
前記対応するそれぞれの第1電極及び第2電極は互いに一部のみがオーバラップされるようにずれて配置し、前記複数の第1電極のいずれか1つの第1電極に対応する第2電極は、前記いずれか1つの第1電極に対して前記第2基板内で一方向にずれて配置され、前記いずれか1つの第1電極に隣接する他の第1電極に対応する他の第2電極は、前記他の第1電極に対して前記第2基板内で他方向にずれて配置され、
前記第1基板に第1方向にせん断力を加えると、前記複数の第1電極のうち少なくとも一部の第1電極及びこれに対応する前記第2電極間の電気容量は増加または減少し、
前記第1基板に第1方向と反対方向にせん断力を加えると、前記少なくとも一部の第1電極及びこれに対応する前記第2電極間の電気容量は前記第1基板に第1方向にせん断力を加えたときと反対に変わり、
前記複数の第1電極は、前記複数の第2電極に一対一にマッチングされ、
前記複数の第1電極は互いに離隔配置され、
前記複数の第2電極は互いに離隔配置され、
前記誘電体の一部は、前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされ、
前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され、
前記複数の第1電極の頂点は前記複数の第1電極にそれぞれ対応する前記複数の第2電極にオーバーラップされ、前記複数の第2電極の頂点は前記複数の第2電極にそれぞれ対応する前記複数の第1電極にオーバーラップされるように配置されることを特徴とする触覚センサ。」

「【請求項11】
4個の第1電極を含む第1基板と、
前記4個の第1電極の一部とそれぞれオーバラップされる4個の第2電極を含む第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に提供され、伸長または圧縮可能な誘電体を含み、
前記4個の第1電極のいずれか1つの第1電極に対応する第2電極は、前記いずれか1つの第1電極に対して前記第2基板内で一方向にずれて配置され、前記いずれか1つの第1電極に隣接する他の第1電極に対応する他の第2電極は、前記他の第1電極に対して前記第2基板内で他方向にずれて配置され、
前記4個の第1電極で第2電極とオーバラップされる4個の部分のそれぞれの位置は、対応するそれぞれの第1電極の中心を基準として互いに異なる方向に配置し、
前記4個の第1電極は、前記4個の第2電極に一対一にマッチングされ、
前記4個の第1電極は互いに離隔配置され、
前記4個の第2電極は互いに離隔配置され、
前記誘電体の一部は、前記4個の第1電極又は前記4個の第2電極にオーバーラップされ、
前記4個の第1電極又は前記4個の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され、
前記4個の第1電極の頂点は前記4個の第1電極にそれぞれ対応する前記4個の第2電極にオーバーラップされ、前記4個の第2電極の頂点は前記4個の第2電極にそれぞれ対応する前記4個の第1電極にオーバーラップされるように配置されることを特徴とするセンサ。」

「【請求項13】
4個の第1電極を含む第1基板と、
前記4個の第1電極と一部のみが重なり、前記第1電極よりもっと広がるように配置された4個の第2電極を含み、前記第1基板から離隔された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に提供され、伸長または圧縮可能な誘電体を含み、
前記4個の第1電極のいずれか1つの第1電極に対応する第2電極は、前記いずれか1つの第1電極に対して前記第2基板内で一方向にずれて配置され、前記いずれか1つの第1電極に隣接する他の第1電極に対応する他の第2電極は、前記他の第1電極に対して前記第2基板内で他方向にずれて配置され、
前記4個の第1電極は、前記4個の第2電極に一対一にマッチングされ、
前記4個の第1電極は互いに離隔配置され、
前記4個の第2電極は互いに離隔配置され、
前記誘電体の一部は、前記4個の第1電極又は前記4個の第2電極にオーバーラップされ、
前記4個の第1電極又は前記4個の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され、
前記4個の第1電極の頂点は前記4個の第1電極にそれぞれ対応する前記4個の第2電極にオーバーラップされ、前記4個の第2電極の頂点は前記4個の第2電極にそれぞれ対応する前記4個の第1電極にオーバーラップされるように配置されることを特徴とするセンサ。」

「【請求項25】
複数の第1電極を含む上部基板と、
複数の第2電極を含む下部基板と、
前記上部基板と下部基板との間に配置され、伸長または圧縮可能な誘電体と、を含み、
前記複数の第1電極及び第2電極は、
第1電極と、前記第1電極から予め設定された第1設定量だけオーバラップされるように配置する第2電極を含む第1グループと、
第1電極と、前記第1電極から予め設定された第2設定量だけオーバラップされるように配置する第2電極を含む第2グループと、
を含み、
前記複数の第1電極のいずれか1つの第1電極に対応する第2電極は、前記いずれか1つの第1電極に対して前記下部基板内で一方向にずれて配置され、前記いずれか1つの第1電極に隣接する他の第1電極に対応する他の第2電極は、前記他の第1電極に対して前記下部基板内で他方向にずれて配置され、
前記複数の第1電極は、前記複数の第2電極に一対一にマッチングされ、
前記複数の第1電極は互いに離隔配置され、
前記複数の第2電極は互いに離隔配置され、
前記誘電体の一部は、前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされ、
前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され、
前記複数の第1電極の頂点は前記複数の第1電極にそれぞれ対応する前記複数の第2電極にオーバーラップされ、前記複数の第2電極の頂点は前記複数の第2電極にそれぞれ対応する前記複数の第1電極にオーバーラップされるように配置されることを特徴とする触覚センサ。」

本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明7は、本願発明6を減縮した発明である。

本願発明8-10は、本願発明1又は本願発明6を減縮した発明である。

本願発明12は、本願発明11を減縮した発明である。

本願発明14-22は、本願発明11又は本願発明13を減縮した発明である。

本願発明23は、本願発明1、本願発明11又は13を減縮した発明である。

本願発明24は、本願発明1、本願発明6、本願発明11又は13を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開昭63-171334号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
a 「この発明は、容量測定集成体に関する。」(第2頁右上欄第19行)

b 「第2図と第3図に示す集成体において、xまたはy方向の力をより正確に測定することができる。第2図の集成体において、小なる円形コンデンサ面10に対向し、電気的に離隔された三つの扇型コンデンサ面一組を配設してある。扇面17乃至19は、コンデンサ面10より大なる外周を有する。本測定集成体にxまたはy方向の力が現れたときは、コンデンサ面10が扇面17乃至19に平行に動き、個々の容量が変化する。四つの方形コンデンサ面13乃至16の全体が小なるコンデンサ面10に、第3図の如く、対向して配置されると、この変化は特に顕著となる。」(第4頁左下欄第2-14行)

c 「本実施例においては、コンデンサ面10、14および15がシート30と31に圧着されている。シート30と31各々は、圧縮誘電体(エラストマー)20または21に接着され、二つの誘電体20と21は、互いに積層接続されている。この誘電体20と21は、その電気特性に関して反対の温度係数を有し、温度が個々のコンデンサの容量に影響を及ぼさないように寸法どりがしてある。
シート30と31上のコンデンサ面14と15または10は、切り欠きもしくは間隙40により離隔され、個々の面間に、シート30と31を介して機械的結合が起こらないようにしてある。更に、切り欠きまたは溝を設けて、実質上全集成体の可撓性を高めてある。」(第5頁左上欄第5-20行)


図3


図4


図5

ここで、上記cの「コンデンサ面10、14および15がシート30と31に圧着されている」の記載、図3、図4及び図5の記載より、複数のコンデンサ面10がシート31に圧着され、複数のコンデンサ面13乃至16がシート30に圧着されていることが読み取れる。

また、上記cの「シート30と31上のコンデンサ面14と15または10は、切り欠きもしくは間隙40により離隔され」の記載、図3、図4及び図5の記載より、シート31上のコンデンサ面は10は、切り欠きもしくは間隙40により互いに離隔され、シート30上のコンデンサ面13乃至16は、切り欠きもしくは間隙40により互いに離隔されていることが読み取れる。

したがって、上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「複数のコンデンサ面10がシート31に圧着され、
複数のコンデンサ面13乃至16がシート30に圧着され(上記c、図3-5)、
シート30と31各々は、圧縮誘電体(エラストマー)20または21に接着され、二つの誘電体20と21は、互いに積層接続され(上記c)、
四つの方形コンデンサ面13乃至16の全体が小なるコンデンサ面10に、対向して配置され(上記b)、
シート31上のコンデンサ面は10は、切り欠きもしくは間隙40により互いに離隔され、
シート30上のコンデンサ面13乃至16は、切り欠きもしくは間隙40により互いに離隔されており(上記c、図3-5)、
xまたはy方向の力をより正確に測定することができる(上記b)、
容量測定集成体(上記a)。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特開2003-004481号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0009】
【発明の実施の形態】図1は、浮上支持される可動子の動きを検出するために、コンデンサ板、あるいは電極を用いて動きを検出するための微小電気機械システム(MEMS)装置10を示す。MEMS装置10は、集積回路チップの一部として保護筐体(図示せず)内に封入される場合がある。中間層40が、上側層30と下側層20との間に配置され、接続用材料60を用いてそれぞれ接続される。層20、30、40には、たとえば、半導体ウェーハを用いることができる。一実施形態では、各層20、30、40は個別の半導体ウェーハであり、接続用材料はウェーハボンド60である。他の実施形態では、各層20、30、40は1枚の半導体ウェーハの一部を用いることができるか、あるいは2つ以上のウェーハの一部を用いることができる。
【0010】中間層40は可動子50を有し、可動子50には、下側層20および上側層30に対して移動することができ、下側層20と上側層30との間に配置される任意の物体を用いることができる。一実施形態では、可動子50は中間層40の半導体ウェーハの一部であり、下側層20および上側層30に対して3次元内を移動することができる。3ウェーハの実施形態を用いて、可動子50にさらに大きな質量を与えることができる。たとえば外部からの力によって、MEMS装置10が移動するとき、可動子50は下側層20および上側層30に対して移動する。」

「【0013】図1に示される実施形態では、可動子50は、その上側および下側の両表面上に5つの可動子電極70,72を有する。5つのカウンタ電極80、82が、下側層20および上側層30上に配置される。電極70、72、80、82は、キャパシタンスを測定するために、適当な回路を有するキャパシタンス検出器(図示せず)に接続される。図1に示されるように、可動子50は3次元x、yおよびz内を移動することができる。ただし、zは板20と30との間の垂直な次元である。可動子50がxおよびy次元を移動するのに応じて、対応する電極70、80のある部分あるいは全ての間の重なり合う面積が変化し、キャパシタンスが変化するようになる。可動子50がz次元内を移動するのに応じて、電極70、72、80、82間の距離が変化し、キャパシタンスが変化するようになる。その回路は、各電極70、72、80、82の場合のこれらの変化を検出する。各キャパシタンスに基づいて、MEMS装置10は、可動子50が移動したことと、その移動の方向とを判定する。」

「【0016】図4は、カウンタ電極80、82と可動子電極70、72との重なりを示す、可動子50の平面図を示す。図4に示される実施形態では、可動子50は5つの可動子電極70、72と、5つのカウンタ電極80、82とを備える。一実施形態では、中央のカウンタ電極82は主に、電極70、72、80、82間の距離が変化しz軸に沿って移動することを指示しているか否かを判定するために用いることができる。中央のカウンタ電極82はzカウンタ電極82と呼ばれ、中央の可動子電極72は、z可動子電極72と呼ばれる。本明細書で用いられる、用語z電極72、82、すなわちzカウンタ電極82およびz可動子電極72は、その方向が中間層40に直交するか否かに関係なく、およびその動きが、電極72、82間の距離の変化、電極72、82間の重なり合う面積の変化、あるいは任意の他の態様によるキャパシタンスの変化によって検出されるか否かに関係なく、中間層40の平面の外側の方向への動きを検出することができる任意の電極のことを指す。可動子電極70、72およびカウンタ電極80、82の対は、コンデンサと呼ばれる場合がある。z電極72、82の対は、zコンデンサと呼ばれる場合がある。z電極72、82は主に、z方向への動きを検出するために用いることができる。この実施形態では、z電極72、82は、その間のキャパシタンスが、可動子50がxあるいはy方向内を移動するのに応じて、概ね変化しないように設計することができる。たとえば、z可動子電極72は、可動子50がxおよびy方向内を移動する際に重なり合う面積が変化しないように、zカウンタ電極82より小さく(あるいはその逆に)することができる。」

「【0017】図4に示される実施形態では、外側のカウンタ電極80は、対応する外側の可動子電極70と重なり合う面積を有する。・・・」


図4

図4及び【0017】の記載から、5つの可動子電極70,72は、中央の可動子電極72と、中央の可動子電極72のX、-X、Y、-Y方向にそれぞれ配置された4つの外側の可動子電極70であり、5つのカウンタ電極80、82は、中央のカウンタ電極82と、中央のカウンタ電極82のX、-X、Y、-Y方向にそれぞれ配置された4つの外側のカウンタ電極80であり、4つの外側のカウンタ電極80は、4つの外側の可動子電極70より面積が大きく、重なり合う面積を有しながらより外方に配置されていることが見て取れる。

上記記載より、引用文献2には、次の事項が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献2の記載箇所を示す。)。
「浮上支持される可動子の動きを検出するための微小電気機械システム(MEMS)装置10であって、
MEMS装置10は、中間層40が、上側層30と下側層20との間に配置され(【0009】)、
中間層40は可動子50を有し、可動子50には、下側層20および上側層30に対して移動することができ(【0010】)、
可動子50は、その上側および下側の両表面上に5つの可動子電極70,72を有し(【0013】)、
5つの可動子電極70,72は、中央の可動子電極72と、中央の可動子電極72のX、-X、Y、-Y方向にそれぞれ配置された4つの外側の可動子電極70であり(図4)、
5つのカウンタ電極80、82が、下側層20および上側層30上に配置され(【0013】)、
5つのカウンタ電極80、82は、中央のカウンタ電極82と、中央のカウンタ電極82のX、-X、Y、-Y方向にそれぞれ配置された4つの外側のカウンタ電極80であり(図4)、
中央の可動子電極72は、可動子50がxおよびy方向内を移動する際に重なり合う面積が変化しないように、中央のカウンタ電極82より小さくすることができ(【0016】)、
4つの外側のカウンタ電極80は、4つの外側の可動子電極70より面積が大きく、重なり合う面積を有しながらより外方に配置されている(図4、【0017】)、
MEMS装置10。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3(特開2012-173100号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0021】
図1?図3に示すように、本実施形態の静電容量型センサ1は、誘電層2と、表側電極01X?16Xと、裏側電極01Y?16Yと、表側配線01x?16xと、裏側配線01y?16yと、表側基材3と、裏側基材4と、表側配線用コネクタ5と、裏側配線用コネクタ6と、制御装置7と、を備えている。なお、後述する検出部A0101?A1616の符号「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、表側電極01X?16Xに対応している。下二桁の「△△」は、裏側電極01Y?16Yに対応している。
【0022】
誘電層2は、ウレタン発泡体製であって、四角形板状を呈している。ウレタン発泡体は、本発明の「発泡体」の概念に含まれる。誘電層2には、全面的に多数の貫通孔20が配置されている。貫通孔20は、断面円形を呈している。貫通孔20は、非加熱状態でウレタン発泡体を打ち抜くことにより形成されている。貫通孔20は、上下方向(表裏方向)に誘電層2を貫通している。」

「【0029】
検出部A0101?A1616は、図2にハッチングで示すように、表側電極01X?16Xと、裏側電極01Y?16Yと、が上下方向に交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部A0101?A1616は、各々、表側電極01X?16Xの一部と、裏側電極01Y?16Yの一部と、誘電層2の一部と、を備えている。検出部A0101?A1616は、合計256個(=16個×16個)配置されている。検出部A0101?A1616は、誘電層2の略全面に亘って、均等に配置されている。
【0030】
図4に、図2の円IV内の拡大図を示す。図4に示すように、検出部A0116(具体的には検出部A0116を構成する誘電層2の一部)には、多数の貫通孔20が配置されている。上方または下方から見て、単一の検出部A0116全面に占める、多数の貫通孔20の総面積は、全ての検出部A0101?A1616において一定である。このため、全ての検出部A0101?A1616の、上下方向のばね定数は一定である。」

「【0034】
[作用効果]
次に、本実施形態の静電容量型センサ1の作用効果について説明する。本実施形態の静電容量型センサ1によると、誘電層2に多数の貫通孔20が穿設されている。このため、発泡体の密度が高く、誘電層の硬度が高い場合であっても、誘電層2つまり検出部A0101?A1616の上下方向のばね定数を小さくすることができる。すなわち、発泡体の密度を上げたことによるばね定数の増加分を、誘電層2に貫通孔20を配置することにより、相殺できる。」


図4

上記記載より、引用文献3には、次の技術が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献2の記載箇所を示す。)。
「誘電層2と、表側電極01X?16Xと、裏側電極01Y?16Yを備えている静電容量型センサ1において(【0021】)、
誘電層2に全面的に多数の貫通孔20を配置し(【0022】)、
表側電極01X?16Xと、裏側電極01Y?16Yと、が上下方向に交差する部分に配置されている検出部A0101?A1616に、多数の貫通孔20を配置する技術(【0029】、【0030】)。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4(特公昭50-019057号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「第1図は本発明にしたがって構成されたはかりマットの実施例である。はかりマット10は、外部導電層11,12と、図示のような柔軟な誘電体絶縁層14,15で分離された中央導電層13とによって構成される。外部導電層11,12および中央導電層13は、厚さ約1.4mm(0.055in)でラベストス社がカタログ番号N-2170-Aとして市販しているようなショア硬度60の値を持つ柔軟な導電ゴム材料で作られている。誘電体絶縁層14,15は外部導電層11,12の内面に接着された複数個の間隔を置いた非導電性のゴム片で構成され、一つの絶縁層の各ゴム片が他の絶縁層の各ゴム片と直角になるように配置され、各ゴム片は断面約1.6mm角(1/16in角)で、約1.6mm(1/16in)離れている。」(第3欄第15-29行)

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5(特表2011-525240号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0027】
[00035]第1及び第2の金属接点は、電極として機能させることができる。本発明にしたがって有用と考えられる代表的な接点材料は、独立して選択され、銅、銅ベースのハイブリッド材料、銀、炭素、カーボンナノチューブ、グラフェン、銀/炭素複合体、銀ベースのハイブリッド材料、金、金ベースのハイブリッド材料、酸化インジウムスズ(indium-tin-oxide)、フッ化物がドープされた酸化スズ、フッ化物がドープされた酸化亜鉛、ガリウムがドープされた酸化亜鉛、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛、酸化アンチモンスズ(antimonium-tin oxide)、及び酸化亜鉛スズ(zinc-tin oxide)の1以上が挙げられる。ここで用いる「独立して選択」という用語は、第1及び第2の接点が協働して伝導する限りにおいて、第1及び第2の接点のそれぞれの接点材料を他の接点の材料とは関係なく選択することができることを意味する。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「コンデンサ面10」、「シート31」、「コンデンサ面13乃至16」、「シート30」が、それぞれ、本願発明1の「第1電極」、「第1基板」、「第2電極」、「第2基板」に相当する。

イ 引用発明の「複数のコンデンサ面10が」「圧着され」た「シート31」は、本願発明1の「複数の第1電極が備えられる第1基板」に相当する。

ウ 引用発明は、「四つの方形コンデンサ面13乃至16の全体が小なるコンデンサ面10に、対向して配置され」ているので、「コンデンサ面10」と「コンデンサ面13乃至16」が、対応しているといえる。
したがって、引用発明の「複数のコンデンサ面13乃至16が」「圧着され」た「シート30」は、本願発明1の「前記複数の第1電極それぞれに対応する複数の第2電極が備えられる第2基板」に相当する。

エ 引用発明の「シート30と31各々」に「接着され」、「互いに積層接続され」た「圧縮誘電体(エラストマー)20」と「21」は、本願発明1の「前記第1基板と前記第2基板との間に提供され、伸長または圧縮可能な誘電体」に相当する。

オ 引用発明の「シート31上のコンデンサ面は10は、切り欠きもしくは間隙40により互いに離隔され」ることは、本願発明1の「前記複数の第1電極は互いに離隔配置され」ることに相当する。

カ 引用発明の「シート30上のコンデンサ面13乃至16は、切り欠きもしくは間隙40により互いに離隔され」ることは、本願発明1の「前記複数の第2電極は互いに離隔配置され」ることに相当する。

キ 引用発明は「複数のコンデンサ面10がシート31に圧着され、複数のコンデンサ面13乃至16がシート30に圧着され、シート30と31各々は、圧縮誘電体(エラストマー)20または21に接着され、二つの誘電体20と21は、互いに積層接続され」ているので、「誘電体20と21」の一部は、「複数のコンデンサ面10」又は「複数のコンデンサ面13乃至16」にオーバーラップされており、このことは、本願発明1の「前記誘電体の一部は、前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされ」ることに相当する。

ク 引用発明の「xまたはy方向の力をより正確に測定することができる、容量測定集成体」は、本願発明1の「触覚センサ」に相当する。

すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「複数の第1電極が備えられる第1基板と、
前記複数の第1電極それぞれに対応する複数の第2電極が備えられる第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に提供され、伸長または圧縮可能な誘電体と、
を含み、
前記複数の第1電極は互いに離隔配置され、
前記複数の第2電極は互いに離隔配置され、
前記誘電体の一部は、前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされる触覚センサ。」

(相違点1)
第1電極と第2電極の配置が、本願発明1は、「前記複数の第1電極は、前記複数の第2電極に一対一にマッチングされ、」「前記複数の第1電極のいずれか1つの第1電極に対応する第2電極は、前記いずれか1つの第1電極に対して前記第2基板内で一方向にずれて配置され、前記いずれか1つの第1電極に隣接する他の第1電極に対応する他の第2電極は、前記他の第1電極に対して前記第2基板内で他方向にずれて配置され、」「前記複数の第1電極の頂点は前記複数の第1電極にそれぞれ対応する前記複数の第2電極にオーバーラップされ、前記複数の第2電極の頂点は前記複数の第2電極にそれぞれ対応する前記複数の第1電極にオーバーラップされるように配置される」のに対して、引用発明は、「四つの方形コンデンサ面13乃至16の全体が小なるコンデンサ面10に、対向して配置され」ているが、そのような特定がない点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され」るが、引用発明の「誘電体20と21」には、中空部が形成されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、先ず上記相違点2について検討する。
引用文献3には、誘電層2と、表側電極01X?16Xと、裏側電極01Y?16Yを備えている静電容量型センサ1において、誘電層2に全面的に多数の貫通孔20を配置し、表側電極01X?16Xと、裏側電極01Y?16Yと、が上下方向に交差する部分に配置されている検出部A0101?A1616に、多数の貫通孔20を配置する技術が記載されている(上記「第4 3」)。
しかしながら、引用文献3には、「表側電極01X?16X」又は「裏側電極01Y?16Y」にオーバーラップされない「誘電層2」の一部にのみ中空部が形成されることは記載されていない。

また、引用文献3は、発泡体の密度が高く、誘電層の硬度が高い場合であっても、検出部A0101?A1616の上下方向のばね定数を小さくするために、誘電層2に多数の貫通孔20を穿設するのであるから(上記「第4 3【0034】」)、引用発明に、引用文献3に記載された「誘電層2に全面的に多数の貫通孔20を配置し、」「検出部A0101?A1616に、多数の貫通孔20を配置する」技術を適用するに際し、さらに、「複数のコンデンサ面10」又「複数のコンデンサ面13乃至16」にオーバーラップされない「誘電体20と21」の部分のみに貫通孔を配置する構成とすることにも、阻害要因がある。

よって、引用発明に、引用文献3に記載された技術を適用し、上記相違点2に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

また、引用文献2、4、5には、触覚センサにおいて、複数の第1電極又は複数の第2電極にオーバーラップされない誘電体の一部にのみ中空部が形成されることは記載されていない。

したがって、引用発明、引用文献2-5に記載された技術に基づいて、上記相違点2に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2-5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2-10、25について
本願発明2-10、25も、上記相違点2に係る本願発明1の「前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2-5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明11-22について
本願発明11-22は、上記相違点2に係る本願発明1の「前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2-5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 本願発明23、24について
本願発明23、24は、上記相違点2に係る本願発明1の「前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され」と同一又は対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2-5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 原査定について
1 理由2(特許法第36条第6項第1号)について
審判請求時の補正により、請求項30は削除されており、原査定の理由2を維持することはできない。

2 理由3(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、請求項1-25は「前記複数の第1電極又は前記複数の第2電極にオーバーラップされない前記誘電体の他の一部にのみ中空部が形成され」という構成又は対応する構成を備えるものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由3を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-05 
出願番号 特願2013-245630(P2013-245630)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01L)
P 1 8・ 537- WY (G01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 公文代 康祐大森 努  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
須原 宏光
発明の名称 触覚センサ  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
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