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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1345702
審判番号 不服2017-13625  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-13 
確定日 2018-11-08 
事件の表示 特願2015- 81530号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日出願公開、特開2015-128687号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成23年6月30日に出願した特願2011-145131号の一部を平成27年4月13日に新たな特許出願(特願2015-81530号)としたものであって、平成28年4月21日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年6月22日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年11月24日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成29年1月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年6月14日付け(発送日:平成29年6月20日)で、平成29年1月19日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年9月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成30年5月31日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年7月31日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願請求項1に記載された発明
平成30年7月31日付け手続補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、当該補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。A?Eは分説のため当審にて付与した。)。

「A 表面に遊技制御用の電子部品が実装される制御基板と、該制御基板を内部に収納するための透明な基板ボックスとを備えた遊技機において、
B 前記基板ボックスに収納前の前記制御基板は、
B1 複数の機種に共通の配線パターンが設けられ、前記電子部品が実装される実装領域部と、
B2 各々に異なる識別情報が表示され、前記配線パターンが設けられない複数の識別領域部と、
B3 前記実装領域部と前記複数の識別領域部との間に設けられた破断部と、
を備え、
C 前記基板ボックスは、
C1 前記複数の識別領域部のうち特定の識別領域部以外の識別領域部を前記破断部において切除した状態の前記制御基板を収納するものであり、
C2 前記制御基板の表面に対向する面の前記識別領域部の識別情報表示面に対向する部分に、当該識別領域部に向けて落ち込む段差部を備え、
C3 前記制御基板の表面に対向する部分が、カバー部材により、前記段差部に当接しないようにカバーされ、
D 前記制御基板は、
D1 前記識別領域部が、前記制御基板の一側縁に前記実装領域部の一部と並んで形成されており、
D2 前記識別領域部と前記実装領域部の前記一部との境界に切り込み部を有する
E ことを特徴とする遊技機。」

第3 当審の平成30年5月31日付け拒絶理由の概要
当審の平成30年5月31日付け拒絶理由の概要は以下のとおりである。

1)本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2)本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2006-102245号公報
2.特開2006-068112号公報(新たに引用された文献)
3.特開2008-136497号公報(新たに引用された文献)

第4 刊行物に記載された事項
1 刊行物1の記載
(1) 当審の平成30年5月31日付け拒絶理由において上記第3で示したとおり提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-102245号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機を制御する各種の電子部品を実装するためのベース基板と、
前記ベース基板上に形成された配線パターンと、
前記ベース基板上に表示された識別標識と
を備える遊技機の制御基板であって、
前記識別標識は、前記ベース基板上における前記配線パターンの形成領域以外の領域に複数表示されており、
各前記識別標識は、前記制御基板を特定するための同種類の表示である
ことを特徴とする遊技機の制御基板。

【請求項7】
遊技機を制御する各種の電子部品を実装するためのベース基板上に、配線パターンが形成されるとともに、識別標識が表示された遊技機の制御基板の製造方法であって、
前記ベース基板上における前記配線パターンの形成領域以外の領域に、前記制御基板を特定するための同種類の前記識別標識を複数表示した後、
前記ベース基板ごと、各前記識別標識から選択した1つの前記識別標識以外の前記識別標識の表示領域部分をすべて前記ベース基板から切除する
ことを特徴とする遊技機の制御基板の製造方法。」

イ 「【0022】
すなわち、識別標識が、その制御基板を使用する遊技機の製造業者であれば、その制御基板のベース基板上には、異なる複数の遊技機の製造業者がすべて一緒に表示される。また、識別標識が、その制御基板を使用する遊技機の機種であれば、異なる複数の遊技機の機種がすべて一緒に表示される。さらに、識別標識が、その制御基板の種類であれば、異なる複数の制御基板の種類がすべて一緒に表示される。なお、制御基板の種類としては、例えば、型式、管理記号、管理番号、メイン制御基板であるか、サブ制御基板であるか、他の制御基板であるか等を示す記号等が挙げられる。
【0023】
このように、この制御基板には、制御基板を特定するための同種類の表示が複数あるので、ベース基板上に形成された配線パターンが同一の制御基板を使用する異なる遊技機の製造業者、異なる遊技機の機種、異なる制御基板の種類等に共通して使用することが可能となり、その結果、制御基板を有効に活用することができるようになる。
【0024】
そして、この制御基板を実際に使用する遊技機の製造業者、遊技機の機種、制御基板の種類等が確定したならば、その時点で、不要な遊技機の製造業者、遊技機の機種、制御基板の種類等を切除して出荷すれば良い。したがって、本発明の遊技機の制御基板は、配線パターンが同一の制御基板を量産して在庫しておくことができ、制御基板の生産性を大幅に向上させることができる。」

ウ 「【0040】
図1は、本発明の遊技機の制御基板を使用した弾球遊技機10の表面側(遊技者側)を示す正面図である。
図1に示すように、弾球遊技機10の遊技領域11には、図柄変動表示装置12、発射装置から発射された遊技球の特定入賞口13、大入賞口14、及びアウト口15等が配置されている。」

エ 「【0049】
次に、本発明の遊技機の制御基板の実施形態について説明する。
図3は、本発明の遊技機の制御基板の一実施形態であるメイン制御基板20を示す斜視図であり、在庫時の状態を示す図である。
図3に示すように、メイン制御基板20は、絶縁性のベース基板21と、このベース基板21上にプリント形成された配線パターン22とを備えている。そして、このベース基板21上の配線パターン22に合わせて各種の電子部品(図示せず)を実装することにより、弾球遊技機10(図1参照)の遊技の進行等を制御するメイン制御基板20が完成する。
【0050】
ここで、ベース基板21上における配線パターン22の形成領域以外の領域(図2に示すメイン制御基板20では、ベース基板21の一辺側の端部)には、このメイン制御基板20を使用する弾球遊技機10(図1参照)の製造業者23(本発明における識別標識に相当するもの)が3つ表示(×印、○印、△印)されている。
【0051】
すなわち、図3に示すメイン制御基板20は、3つの製造業者23a,23b,23cに共通して出荷できるものであり、各製造業者23a,23b,23cの表示は、ベース基板21上に配線パターン22をプリント形成するのと同時に、同様の方法でプリント形成されている。
【0052】
また、ベース基板21上の配線パターン22、及び各製造業者23a,23b,23cの表示領域部分は、絶縁皮膜24ですべて覆われている。そのため、各製造業者23a,23b,23cの表示は、後から消すことができない。そして、出荷先が確定するまでこの状態で在庫され、出荷先が確定したならば、その時点で、不要な製造業者23(3つの製造業者23a,23b,23cの中の2つ)の表示領域部分を切除する。
【0053】
図4は、本発明の遊技機の制御基板の一実施形態であるメイン制御基板20を示す斜視図であり、出荷先が製造業者23aである場合を示す図である。
上述したように、出荷先が製造業者23aと確定した場合には、図3に示す他の製造業者23b,23cの表示領域部分を切除する。

【0055】
したがって、ベース基板21上には、絶縁皮膜24で覆われた配線パターン22、及び製造業者23aの表示領域部分のみが残ることとなり、このメイン制御基板20aが製造業者23a用であることが明確となる。すなわち、このメイン制御基板20aの出荷先が製造業者23aと確定する。」

オ 「【0066】
図7及び図8に示す基板カバー27及び基板ベース28は、透明なABS樹脂の成形品からなっている。そして、この基板カバー27は、基板ベース28の一端側に、回転可能に連結されている。すなわち、基板カバー27の1つの短辺側の側壁27aと、基板ベース28の1つの短辺側の側壁28aとは、相互に、ヒンジ30によって回転可能に連結されている。そのため、基板カバー27は、基板ベース28に対して、ヒンジ30を中心に回転する。
【0067】
また、図7に示すように、基板ベース28には、縦横のリブ29が形成されている。このリブ29は、メイン制御基板20a(図6参照)を載置するものである。すなわち、図7に示す基板ベース28のリブ29上にメイン制御基板20a(図6参照)を載置し、開いた状態となっている基板カバー27を回転させて閉じれば、図8に示すように、基板ベース28の上面側が全面的に基板カバー27で覆われ、基板カバー27の内部にメイン制御基板20aが収容された略箱形の形状となる。

【0071】
さらに、基板ベース28の他の短辺側の側壁28bと、基板カバー27の他の短辺側の側壁27bとは、ロック部材35によって封止される。すなわち、ロック部材35の側面には、一対のベースロック爪35aと一対のカバーロック爪35bとが形成されている。そして、基板ベース28の側壁28bに設けられたロックボックス28eにこのロック部材35を一度挿入してしまえば、ロックボックス28e内にロック部材35のベースロック爪35aが嵌まり込み、ロックボックス28eからロック部材35が二度と抜けないようになる。」

カ 「【図3】



(2) 上記記載から、刊行物1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

ア 上記(1)アの【請求項1】の「遊技機を制御する各種の電子部品を実装するためのベース基板」との記載、上記(1)エの【0049】の「メイン制御基板20は、絶縁性のベース基板21…を備えている。…このベース基板21上の配線パターン22に合わせて各種の電子部品(図示せず)を実装する」との記載から、刊行物1には、「遊技機を制御する各種の電子部品が実装されるベース基板21を備えるメイン制御基板20a」が記載されているといえる。

イ 上記(1)オの【0066】の記載から、刊行物1には、「透明な基板カバー27及び基板ベース28」が記載されているといえ、上記(1)オの【0071】の記載から、「基板カバー27及び基板ベース28」は、「ロック部材35によって封止される」といえる。また、【0067】には、「基板ベース28の上面側が全面的に基板カバー27で覆われ、基板カバー27の内部にメイン制御基板20aが収容された略箱形の形状となる」と記載されている。
よって、刊行物1には、「ロック部材35によって封止される透明な基板カバー27及び基板ベース28とを備え、前記基板ベース28の上面側が全面的に前記基板カバー27で覆われ、前記基板カバー27の内部に前記メイン制御基板20aが収容された略箱形の形状となること」が記載されているといえる。

ウ 上記(1)エの【0049】には、「図3は、本発明の遊技機の制御基板の一実施形態であるメイン制御基板20を示す斜視図であり、在庫時の状態を示す図である。」、「このベース基板21上の配線パターン22に合わせて各種の電子部品(図示せず)を実装する」と記載されているから、刊行物1には、「在庫時の状態のメイン制御基板20」は、「電子部品が実装される配線パターンの形成領域を備えること」が記載されているといえる。
また、上記(1)イの【0023】の「配線パターンが同一の制御基板を使用する…異なる遊技機の機種…に共通して使用することが可能となり」との記載から、刊行物1には、「制御基板」に、「異なる遊技機の機種の間で同一である配線パターンが設けられること」が記載されているといえる。また、【0024】の「したがって、本発明の遊技機の制御基板は、配線パターンが同一の制御基板を量産して在庫しておくことができ」との記載から、上記「制御基板」は、「在庫時の状態のメイン制御基板20」を意味することが明らかである。
よって、刊行物1には、「在庫時の状態のメイン制御基板20」は、「異なる遊技機の機種の間で同一である配線パターンが設けられ、前記電子部品が実装される配線パターンの形成領域を備えること」が記載されているといえる。

エ 上記(1)エの【0052】には、図3に関し、「各製造業者23a,23b,23cの表示領域部分」と記載されており、また、図3から、製造業者23aの表示領域部分、製造業者23bの表示領域部分、製造業者23cの表示領域部分が設けられていることが見てとれる。そして、上記(1)イの【0022】の記載から、上記各「製造業者」は「識別標識」であり、これらの「識別標識」は異なるものといえる。
また、【0050】の記載から、識別領域の表示領域部分は、「配線パターン22の形成領域以外」の部分であるといえる。
したがって、刊行物1には、「在庫時の状態のメイン制御基板20」は、「各々に異なる識別標識が表示され、前記配線パターンの形成領域以外の部分である複数の表示領域部分」を備えることが記載されているといえる。

オ 上記(1)アの【請求項7】には、「各前記識別標識から選択した1つの前記識別標識以外の前記識別標識の表示領域部分をすべて前記ベース基板から切除する」ことが記載されている。
また、上記(1)エの【0053】、【0055】には、上記「選択した1つの前記識別標識」及び「選択した1つの前記識別標識以外の前記識別標識」の具体例として、それぞれ「製造業者23a」、「製造業者23b,23c」が記載されており、「製造業者23b,23cの表示領域を切除」された基板として「メイン制御基板20a」が記載されている。そして、(2)イに記載のとおり、刊行物1には、上記「メイン制御基板20a」が、「基板カバー27の内部に」「収容され」ることが記載されているといえる。
したがって、刊行物1には、「基板カバー27」が、「前記各識別標識から選択した1つの識別標識以外の識別標識の表示領域部分をすべて切除した状態のメイン制御基板20aを内部に収容する」ことが記載されているといえる。

カ 上記(1)エの【0050】には、「…ベース基板21の一辺側の端部…には、…製造業者23(本発明における識別標識に相当するもの)が3つ表示(×印、○印、△印)されている。」と記載されており、また、図3から、製造業者23aの表示領域部分、製造業者23bの表示領域部分、製造業者23cの表示領域部分が、メイン制御基板20の「一辺側の端部」に設けられていることが見てとれる。また、図3から、上記「表示領域部分」が、上記「一辺側の端部」において、「メイン制御基板20」が備える「ベース基板21」の一部と並んで形成されていることが見て取れる。
したがって、刊行物1には、「前記複数の表示領域部分が、前記メイン制御基板20の一辺側の端部において、前記メイン制御基板20が備えるベース基板21の一部と並んで形成されている」ことが記載されているといえる。

キ 上記(1)ア?カの記載事項、及び、上記(2)ア?カの認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?eは、本願発明の記号A?Eに対応させて付した。)。

「a 遊技機を制御する各種の電子部品が実装されるベース基板21を備えるメイン制御基板20と、ロック部材35によって封止される透明な基板カバー27及び基板ベース28とを備え、前記基板ベース28の上面側が全面的に前記基板カバー27で覆われ、前記基板カバー27の内部に前記メイン制御基板20aが収容された略箱形の形状となる、弾球遊技機10において、((1)ウの【0040】、(2)ア、イ)
b 在庫時の状態のメイン制御基板20は、
b1 異なる遊技機の機種の間で同一である配線パターンが設けられ、前記電子部品が実装される配線パターンの形成領域と、((2)ウ)
b2 各々に異なる識別標識が表示され、前記配線パターンの形成領域以外の部分である複数の表示領域部分と、((2)エ)
を備え、
c 前記基板カバー27は、
c1 前記各識別標識から選択した1つの識別標識以外の識別標識の表示領域部分をすべて切除した状態のメイン制御基板20aを内部に収容するものであり、((2)オ)
d 前記在庫時の状態の前記メイン制御基板20は、
d1 前記複数の表示領域部分が、前記メイン制御基板20の一辺側の端部において、前記メイン制御基板20が備えるベース基板21の一部と並んで形成されている((2)カ)
E ことを特徴とする弾球遊技機。((1)ウの【0040】)」

2 刊行物2の記載
(1) 当審の平成30年5月31日付け拒絶理由において上記第3で示したとおり提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-068112号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0051】
また、基板本体100aには、識別情報表示領域120a?120dのそれぞれを基板本体100aから選択的に除去できるようにする表示領域除去手段が設けられている。具体的に、そのような表示領域除去手段は、本実施形態の場合、各識別情報表示領域120a?120dの両側に形成され且つ基板本体100aの端縁から延びるスリット125と、これらのスリット125同士を接続するように基板本体100aにミシン目状に刻設される切り取り用の連続する複数の貫通穴127とから成る。無論、各識別情報表示領域120a?120dの周囲にわたって切り取り用の複数の貫通穴127が連続的に形成されていても良い。」

イ 「【0056】
また、本実施形態においては、複数の識別情報表示領域120a?120dが基板本体100aの端面に沿って隣接して設けられるとともに、各識別情報表示領域120a?120dの両側に形成され且つ基板本体100aの端縁から延びるスリット125と、これらのスリット125同士を接続するように基板本体100aにミシン目状に刻設される切り取り用の連続する複数の貫通穴127とにより、識別情報表示領域120a?120dを基板本体100aから選択的に除去する表示領域除去手段が構成されている。したがって、識別情報表示領域120a?120dをミシン目に沿って切り取って基板本体100aから簡単に除去することができる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、本発明がスロットマシンに適用されているが、本発明はパチンコ機等の他の遊技機にも適用できる。また、前述した実施形態では、本発明が主基板としてのメイン制御基板100に適用されているが、本発明は、周辺基板としてのサブ制御基板200や他の中継基板等にも適用することができる。また、前述した実施形態において、基板本体100aに設けられる識別情報表示領域は4つであったが、識別情報表示領域の数は任意である。」

ウ 「【図4】



(2) 上記記載から、刊行物2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

ア 図4から、各基板本体100aと識別情報表示領域120a?120dとの間に複数の貫通穴127が設けられていることが見てとれる。

イ 上記(1)ア?ウの記載事項、及び、上記(2)アの認定事項を総合すると、刊行物2には、「基板本体100aと複数の識別情報表示領域120a?120dとの間にミシン目状に複数の貫通穴127を設け、かつ、複数の識別情報表示領域120a?120dの両側にスリット125を設ける」との技術事項(以下「刊行物2記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

3 刊行物3の記載
(1) 当審の平成30年5月31日付け拒絶理由において上記第3で示したとおり提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-136497号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0030】
手段11.手段1乃至9のいずれかにおいて、前記制御基板を透明性材料により形成された基板ボックス(基板ボックス273)に収容してなる制御装置(主制御装置270)を備え、
前記製造地表示部を前記制御基板の部品搭載面(部品搭載面551a)に設け、
さらに、前記基板ボックスは、前記部品搭載面に搭載された各種電子部品を収容する収容部(収容部561)と、当該収容部よりも前記部品搭載面に近い位置にて当該部品搭載面に沿って平板状に延び、前記製造地表示部と対峙する対峙部(上縁側重なり部562a)とを備えていることを特徴とする遊技機。」

イ 「【0132】
以上のように用途表示部277,278及び製造地表示部279が形成されていることにより、偽造基板を日本国外で製造し、それを日本国内に輸入しようとする行為を抑制することができる。つまり、正規の主制御基板271において用途表示部277,278及び製造地表示部279が形成されている場合、不正行為者にとってはその不正交換を容易に見破られないようにするために、偽造基板においても用途表示部277,278及び製造地表示部279を形成する必要が生じる。かかる事情において、日本国外で製造した偽造基板の製造地表示部279に日本製である旨が表示されていると、少なくともその偽造基板の日本国内への輸入に際して、税関にて製造地表示の誤認表示に該当するということで輸入停止措置がなされる。特に、用途表示部277,278が設けられておりその基板の用途が各種不正行為の対象となるものとして広く知られたパチンコ機10である旨が表示されている状態において、製造地表示の誤認表示がなされている場合、輸入停止措置がなされる可能性は高くなる。さらには、製造地表示部279において製造地の表示が英単語によってなされており、また第2用途表示部278において用途の表示がローマ字によってなされていることにより、日本国内への輸入時だけでなく、日本へ向けた輸出時において輸出停止装置がなされることも期待できる。」

ウ 「【0172】
主制御装置270は、図24に示すように、上記第1の実施の形態と同様に、ボックスベース280とボックスカバー290とからなる基板ボックス273を備えており、当該基板ボックス273の内部空間に主制御基板551が収容されている。主制御基板551は、ボックスカバー290にネジ止めされている。この場合に、主制御基板551におけるCPUチップ552などが搭載された部品搭載面551aはボックスカバー290側を向いている。
【0173】
主制御基板551の部品搭載面551aには、上記第1の実施の形態と同様に、用途表示部555,556及び製造地表示部557が設けられている。これらの具体的な構造、表示内容、及び形成方法は上記第1の実施の形態における用途表示部277,278及び製造地表示部279と同一であるため、説明を省略する。但し、部品搭載面551aにおける、これら用途表示部555,556及び製造地表示部557が設けられた位置は上記第1の実施の形態と異なっている。具体的には、各種表示部277?279は、部品搭載面551aにおけるボックスカバー290との当接領域に設けられている。そこで、かかる当接領域について詳細に説明する。
【0174】
ボックスカバー290は、図25に示すように、主制御装置270の厚み方向に段差状となっており、主制御基板551の部品搭載面551a上に搭載されたCPUチップ552等の電子部品を収容するための収容部561を有するとともに、主制御基板551と重なるようにして平板状に延びる重なり部562を有する。収容部561は、主制御基板551との間の間隔が、部品搭載面551aに搭載された電子部品のうち最も背が高いものの高さ寸法よりも大きくなるように形成されており、重なり部562との連結部分を構成する段差部563によってその周壁が構成されている。」

エ 「【0181】
上縁側当接領域Sに各種表示部555?557が設けられていることにより、図25(b)に示すように、各種表示部555?557はボックスカバー290の上縁側重なり部562aと当接している。これにより、主制御基板551が基板ボックス273に収容された状態であっても、各種表示部555?557の表示内容を極力近い位置で確認することができる。また、各種表示部555?557は、受けコネクタ565に対して離間された位置にあり、開口部564と重なっていない。したがって、各種表示部555?557は上縁側重なり部562aによって全体が覆われており、基板ボックス273外に露出していない。

【0183】
主制御基板551の部品搭載面551aにおいてボックスカバー290の上縁側重なり部562aと当接する上縁側当接領域Sに製造地表示部557を形成した。これにより、製造地表示部557の表示内容を基板ボックス273を通して確認する場合において、当該表示内容を極力近い位置で確認することができる。よって、例えば国外で製造された偽造基板が同じく偽造された基板ボックスに収容されて日本国内に輸入された場合に、税関等において製造地表示部の視認性が低下してしまい製造地表示の誤認表示が見落とされてしまうといった不都合の発生を抑制することができる。」

(2) 上記記載から、刊行物3には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

ア 上記(1)アの【0030】の記載及び上記(1)ウの【0172】の記載から、刊行物3には、「主制御基板551を内部空間に収納する透明な基板ボックス273」が記載されており、該「基板ボックス273」は「ボックスカバー290」を有することが記載されているといえる。

イ 上記(1)イの【0132】の「用途表示部277,278及び製造地表示部279が形成されていることにより、偽造基板を日本国外で製造し、それを日本国内に輸入しようとする行為を抑制することができる。」との記載から、「用途表示部277,278及び製造地表示部279」は、不正を抑制するために形成されるものであると認められる。そして、上記(1)ウの【0173】に記載されるように、「用途表示部555,556及び製造地表示部557」の「具体的な…表示内容…は上記第1の実施の形態における用途表示部277,278及び製造地表示部279と同一である」から、「用途表示部555,556及び製造地表示部557」も不正を抑制するために形成されるものであると認められる。

ウ 上記(1)ウの【0174】の記載と上記(1)エの【0181】の記載から、刊行物3には、「ボックスカバー290に、収容部561の周壁を構成する段差部563と上縁側重なり部562aとを設け、各種表示部555?557に該上縁側重なり部562aを当接させること」が記載されているといえる。

エ 上記(1)ア?エの記載事項、及び、上記(2)ア?ウの認定事項を総合すると、刊行物3には、「主制御基板551を内部空間に収納する透明な基板ボックス273のボックスカバー290に((2)ア)、収容部561の周壁を構成する段差部563と上縁側重なり部562aとを設け((2)ウ)、不正を抑制するために形成される用途表示部555、556及び製造地表示部557((2)イ)に該上縁側重なり部562aを当接させる((2)ウ)」との技術事項(以下「刊行物3記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願発明の構成A?Eと引用発明の構成a?eについて、それぞれ(a)?(e)の見出しを付して行った。)。

(a) 引用発明の「遊技機を制御する各種の電子部品が実装されるベース基板21を備えるメイン制御基板20」は、本願発明の「表面に遊技制御用の電子部品が実装される制御基板」に相当する。
また、引用発明の「透明な基板カバー27及び基板ベース28」は、「前記基板ベース28の上面側が全面的に前記基板カバー27で覆われ」「略箱形の形状」をなすものであるから、本願発明の「透明な基板ボックス」に相当する。そして、引用発明において、「前記基板カバー27の内部に前記メイン制御基板20aが収容され」ることは、本願発明において、「透明な基板ボックス」の「内部」に「制御基板」が「収納」されることに相当する。
したがって、引用発明の「遊技機を制御する各種の電子部品が実装されるベース基板21を備えるメイン制御基板20と、ロック部材35によって封止される透明な基板カバー27及び基板ベース28とを備え、前記基板ベース28の上面側が全面的に前記基板カバー27で覆われ、前記基板カバー27の内部に前記メイン制御基板20aが収容された略箱形の形状となる、弾球遊技機10」は、本願発明の「表面に遊技制御用の電子部品が実装される制御基板と、該制御基板を内部に収納するための透明な基板ボックスとを備えた遊技機」に相当する。

(b) 引用発明の構成c、c1に記載されるように、「メイン制御基板20」は、「前記各識別標識から選択した1つの識別標識以外の識別標識の表示領域部分をすべて切除した状態」で、「基板カバー27」に「収容」されるから、引用発明の構成b、b2に記載される「複数の表示領域部分」を備える「在庫時の状態のメイン制御基板20」は、「基板カバー27」に「収容」する前の基板である。
したがって、引用発明の「在庫時の状態のメイン制御基板20」は、本願発明の「前記基板ボックスに収納前の前記制御基板」に相当する。

(b1) 引用発明の「異なる遊技機の機種の間で同一である配線パターンが設けられ、前記電子部品が実装される配線パターンの形成領域」は、本願発明の「複数の機種に共通の配線パターンが設けられ、前記電子部品が実装される実装領域部」に相当する。

(b2) 引用発明の「各々に異なる識別標識が表示され、前記配線パターンの形成領域以外の部分である複数の表示領域部分」は、本願発明の「各々に異なる識別情報が表示され、前記配線パターンが設けられない複数の識別領域部以外の識別領域部」に相当する。

(c)、(c1) 引用発明において、「基板カバー27」が「メイン制御基板20aを内部に収容する」ことは、本願発明において、「基板ボックス」が「制御基板を収納する」ことに相当する。
また、引用発明の「前記各識別標識から選択した1つの識別標識以外の識別標識の表示領域部分」は、本願発明の「前記複数の識別領域部のうち特定の識別領域部以外の識別領域部」に相当する。さらに、引用発明の「切除」は、本願発明の「切断」に相当する。
したがって、引用発明の構成c、c1と、本願発明の構成C、C1とは、「基板ボックスは」、「前記複数の識別領域部のうち特定の識別領域部以外の識別領域部を切除した状態の前記制御基板を収納する」点で共通する。

(d) 引用発明の「前記在庫時の状態の前記メイン制御基板20」は、本願発明の「前記制御基板」に相当する。

(d1) 引用発明の「前記複数の表示領域部分」、及び、「前記メイン制御基板20の一辺側の端部」は、それぞれ本願発明の「前記識別領域部」、及び、「前記制御基板の一側縁」に相当する。また、引用発明の「前記メイン制御基板20が備えるベース基板21の一部」と、本願発明の「前記実装領域部の一部」とは、「制御基板の一部」である点で共通する。したがって、引用発明の構成d1と本願発明の構成D1とは、「前記識別領域部が、前記制御基板の一側縁に前記制御基板の一部と並んで形成されている」点で共通する。

(e)引用発明の構成eは、本願発明の構成Eに相当する。

上記(a)?(e)の検討により、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「A 表面に遊技制御用の電子部品が実装される制御基板と、該制御基板を内部に収納するための透明な基板ボックスとを備えた遊技機において、
B 前記基板ボックスに収納前の前記制御基板は、
B1 複数の機種に共通の配線パターンが設けられ、前記電子部品が実装される実装領域部と、
B2 各々に異なる識別情報が表示され、前記配線パターンが設けられない複数の識別領域部と、
を備え、
C 前記基板ボックスは、
C1’ 前記複数の識別領域部のうち特定の識別領域部以外の識別領域部を切除した状態の前記制御基板を収納するものであり、
D 前記制御基板は、
D1’ 前記識別領域部が、前記制御基板の一側縁に前記制御基板の一部と並んで形成されている
E ことを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1](構成B3、C1)
本願発明は、「前記実装領域部と前記複数の識別領域部との間に設けられた破断部」を備え、「前記複数の識別領域部のうち特定の識別領域部以外の識別領域部を前記破断部において切除」するとの構成を有するのに対して、引用発明は、そのような構成を有さない点。

[相違点2](構成C2)
本願発明は、「前記制御基板の表面に対向する面の前記識別領域部の識別情報表示面に対向する部分に、当該識別領域部に向けて落ち込む段差部を備え」るとの構成を有するのに対して、引用発明は、そのような構成を有さない点。

[相違点3](構成C3)
本願発明は、「前記制御基板の表面に対向する部分が、カバー部材により、前記段差部に当接しないようにカバーされ」るとの構成を有するのに対して、引用発明は、そのような構成を有さない点。

[相違点4](構成D1、D2)
本願発明は、「前記識別領域部が、前記制御基板の一側縁に前記実装領域部の一部と並んで形成されており、前記識別領域部と前記実装領域部の前記一部との境界に切り込み部を有する」との構成を有するのに対して、引用発明は、そのような構成を有さない点。

第6 当審における判断
1 相違点について
ア 相違点1、4について
上記相違点1、4は、いずれも「識別領域部」を「実装領域部」から容易に切り離すことができるようにする構成についてのものであるので、まとめて検討する。
上記「第4 2 刊行物2の記載」に記載のとおり、刊行物2には、「基板本体100aと複数の識別情報表示領域120a?120dとの間にミシン目状に複数の貫通穴127を設け、かつ、複数の識別情報表示領域120a?120dの両側にスリット125を設ける」との技術事項(刊行物2記載の技術事項)が記載されている。また、これにより、識別表示領域120a?120dを基板本体100aからミシン目に沿って簡単に除去することができることが記載されている(上記「第4 2(1)イ」の【0056】を参照)。ここで、「ミシン目状に複数の貫通穴127」が設けられた部分と、「スリット125」は、それぞれ本願発明の「破断部」、「切り込み部」に相当するものである。
ここで、本願発明において「識別領域部が」「実装領域部の一部と並んで形成されて」いる点に関しては、ベース基板21の識別標識の表示領域部分以外のどの部分に電子部品を設けるかは当業者が必要に応じて適宜選択できる程度の設計事項であり、そのように構成したことに格別の発明性があるとは認められない。そして、引用発明の「複数の表示領域部分」と刊行物2に記載の「複数の識別情報表示領域120a?120d」とは、制御基板に形成された識別情報を表示するための領域であり1つのみ残して切除される点で共通するものであるから、引用発明において刊行物2記載の技術事項を採用し、「複数の表示領域部分」の削除を簡単にできるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。よって、引用発明に刊行物2記載の技術事項を採用し、上記相違点1、4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2、3について
上記相違点2、3は、いずれも「識別領域部に向けて落ち込む段差部」に関する構成についてのものであるので、まとめて検討する。
上記「第4 3 刊行物3の記載」に記載のとおり、刊行物3には、「主制御基板551を内部空間に収納する透明な基板ボックス273のボックスカバー290に、収容部561の周壁を構成する段差部563と上縁側重なり部562aとを設け、不正を抑制するために形成される用途表示部555、556及び製造地表示部557に該上縁側重なり部562aを当接させる」との技術事項(刊行物3記載の技術事項)が記載されている。また、上縁側重なり部562aを用途表示部555、556及び製造地表示部557に当接させることで、視認性が低下するとの不都合を防止することができるとの効果が記載されている(上記「第4 3(1)エ」の【0183】を参照)。ここで、「段差部563と上縁側重なり部562a」、「用途表示部555、556及び製造地表示部557」は、それぞれ本願発明の「識別表示部に向けて落ち込む段差部」、「識別表示部」に相当するものである。
そして、引用発明の「表示領域部分」と刊行物3に記載の「用途表示部555、556及び製造地表示部557」とは、不正を防止するための表示部という点で共通している。
一方、本願遡及日前に、制御基板の基板ボックスを封印する構成として、封印シールと制御基板の表面に対向する部分とをカバー部材によりカバーする技術が、周知である(以下「周知技術1」という。例えば、特開2011-83367号公報の【0026】、図3には、透明な基板ボックス34において、電子タグシール36と制御基板35の表面に対向する部分とを保護カバー37によりカバーすることが記載されている(ここで、【0035】、【0048】、【0049】の記載から、電子タグシール36が、【0005】に記載されるような「封印シール」の機能を有することは明らかである。)。特開2011-110327号公報の【0031】、図3にも同様の事項が記載されている。また、特開2009-261639号公報の【0640】?【0642】、【0644】、【0646】、図122、141には、透明な基板ボックス3000において、封印シール3107と主制御基板1350の表面に対向する部分とを封印シールカバー3108でカバーすることが記載されている。)。
そして、引用発明と周知技術1とは、遊技を制御するための制御基板を基板ボックスに収容し封止する点で共通する技術に関するものである。
これらのことから、引用発明において、「識別情報表示領域120a?120d」の視認性向上のため刊行物3記載の技術事項を採用し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすること、及び、引用発明において、基板カバー27及び基板ベース28を封止するための構成として上記周知技術1を適用することとし、その際、段差部とカバー部材が「当接」しないようにすることで上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである(カバー部材を設けるにあたり、視認性向上のために設けた段差部とカバー部材を「当接」させてしまうと、向上させたはずの視認性が損なわれることになるから、段差部とカバー部材が「当接」しないようにすることは、当業者が当然になし得たことである。)。

ウ よって、本願発明は、引用発明、刊行物2、3に記載の技術事項、及び周知技術1に基づき、当業者が容易に想到し得たものである。

2 請求人の主張について
請求人は、平成30年7月31日付け意見書において、
「本願発明は「前記制御基板の表面に対向する部分が、カバー部材により、前記段差部に当接しないようにカバーされ」という構成(以下「構成(A)」という)を備えています。すなわち、カバー部材が実装領域部を基板ボックスの外側からカバーしているため、基板ボックスのうち実装領域部を覆っている部分が外力で傷つくことを防止でき、基板ボックスに形成された傷が邪魔になって実装領域部がチェック(目視による確認)しにくくなる等の事態を回避することが可能となります。さらに、実装領域部よりもチェック頻度の高い識別領域部については、カバー部材でカバーされていないため、カバー部材を取り外さなくても識別領域部をチェックすることができます。したがって、本願発明は、「基板ボックスに制御基板を収納した状態で識別領域部をチェックする際にも、基板ボックスに制御基板を収納した状態で実装領域部をチェックする際にも、チェックしやすい」という格別の効果(以下「効果(ア)」という)を奏することができます。」との主張する。
しかしながら、例えば、周知技術1を示す文献として提示した特開2011-83367号公報の【0046】に「このとき、貼着部46には保護カバー37を装着しているので、電子タグシール36が不用意に傷ついたりして識別情報を発信不能となる不都合を未然に防ぐことができる。」と記載されているように、カバー部材にその被覆部分の傷付きを防止する機能があることは当然のことであるから、「基板ボックスに形成された傷が邪魔になって実装領域部がチェック(目視による確認)しにくくなる等の事態を回避することが可能と」なるとの効果が生じることは当業者が予測し得たことにすぎないし、「識別領域部については、カバー部材でカバーされていないため、カバー部材を取り外さなくても識別領域部をチェックすることができ」るとの効果も、当業者が予測し得たことにすぎないから、請求人の主張は採用できない。

3 小括
本願発明により奏される効果は、引用発明、刊行物2、3に記載の技術事項、及び周知技術1から当業者が予測できる範囲内のものであり、格別顕著なものとは言えない。
そうすると、上記「1 相違点について」において検討したとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2、3に記載の技術事項、及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-05 
結審通知日 2018-09-11 
審決日 2018-09-26 
出願番号 特願2015-81530(P2015-81530)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 俊彦  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 蔵野 いづみ
荒井 誠
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  
代理人 荒船 良男  

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