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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1345711
審判番号 不服2018-600  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-17 
確定日 2018-11-08 
事件の表示 特願2016-141233「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-179344〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月26日に出願した特願2014-264977号の一部を平成28年7月19日に新たな特許出願(特願2016-141233号)としたものであって、平成29年6月30日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年9月1日に意見書が提出されたところ、平成29年10月10日付け(発送日:平成29年10月17日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年1月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。
第2 平成30年1月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年1月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、
「【請求項2】
遊技者に有利な特別遊技に当選したか否かの判定に基づいて、表示手段を用いて演出を行わせる演出制御手段を備えた遊技機であって、
前記演出制御手段は、
前記特別遊技に当選した可能性があることを示すリーチ状態になる前において、前記表示手段に所定の画像を表示させるリーチ前演出を行わせることが可能であり、
前記リーチ前演出を行わせているときに、遊技者が前記所定の画像を視認困難または視認不能となる予告画像を表示させる予告演出を複数回行なわせることが可能であり、
前記予告演出において、所定の形状を表す前記予告画像であって通常の表示色の前記予告画像を表示させる通常予告演出を行なわせるときと、前記所定の形状を表す前記予告画像であって前記通常の表示色とは異なる特定の表示色の前記予告画像を表示させる第1特定予告演出を行なわせるときと、前記所定の形状とは異なる特定の形状を表す前記予告画像を表示させる第2特定予告演出を行なわせるときと、があり、
前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出を行わせず、前記予告演出において前記第2特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出および前記第1特定予告演出の何れも行わせず、
前記通常予告演出が行われたときよりも、前記第1特定予告演出または前記第2特定予告演出が行われたときの方が、前記特別遊技に当選した可能性が高く、且つ、前記第1特定予告演出が行われたときと、前記第2特定予告演出が行われたときとで、前記特別遊技に当選した可能性が異なることを特徴とする遊技機。」
から、
「【請求項2】
A 遊技者に有利な特別遊技に当選したか否かの判定に基づいて、表示手段を用いて演出を行わせる演出制御手段を備えた遊技機であって、
B 前記演出制御手段は、
前記特別遊技に当選した可能性があることを示すリーチ状態になる前において、前記表示手段に所定の画像を表示させるリーチ前演出を行わせることが可能であり、
前記リーチ前演出を行わせているときに、遊技者が前記所定の画像を視認困難または視認不能となる予告画像を表示させる予告演出を複数回行なわせることが可能であり、
C 前記予告演出において、所定の形状を表す前記予告画像であって通常の表示色の前記予告画像を表示させる通常予告演出を行なわせるときと、前記所定の形状を表す前記予告画像であって前記通常の表示色とは異なる特定の表示色の前記予告画像を表示させる第1特定予告演出を行なわせるときと、前記所定の形状とは異なる特定の形状を表す前記予告画像を表示させる第2特定予告演出を行なわせるときと、があり、
D 前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出および前記第1特定予告演出を行わせず、前記予告演出において前記第2特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出、前記第1特定予告演出および前記第2特定予告演出の何れも行わせず、
E 前記通常予告演出が行われたときよりも、前記第1特定予告演出または前記第2特定予告演出が行われたときの方が、前記特別遊技に当選した可能性が高く、且つ、前記第1特定予告演出が行われたときと、前記第2特定予告演出が行われたときとで、前記特別遊技に当選した可能性が異なることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。また、当審においてA?Eに分説した。)。

2 補正の適否について
上記補正は、補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「予告演出」に関して、補正前の「前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出を行わせず、前記予告演出において前記第2特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出および前記第1特定予告演出の何れも行わせ」ない点を、「前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出および前記第1特定予告演出を行わせず、前記予告演出において前記第2特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出、前記第1特定予告演出および前記第2特定予告演出の何れも行わせ」ない点に限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項2に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2010-158477号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 記載事項
(1-a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、1回の図柄変動ゲーム中に、複数種類の予告演出を実行可能に構成した遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遊技機の一種であるパチンコ遊技機では、複数種類の図柄を変動させて表示する図柄変動ゲームが行われている。そして、パチンコ遊技機では、遊技の興趣を向上させるために、図柄変動ゲーム中に様々な遊技演出を行っている。このような遊技演出としては、例えば、図柄変動ゲームの所定時期に、当該ゲームが大当りとなる可能性を示唆する予告演出としてのステップアップ演出がある(例えば、特許文献1参照)。ステップアップ演出にて、複数種類のキャラクタを順番に表示することにより、大当りとなる期待度を表示されるキャラクタの種類によって徐々に高めることができる。
・・・
【0005】
この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、遊技演出のバリエーションを増やすことにより、遊技の興趣を向上させる遊技機を提供することにある。」

(1-b)「【0026】
また、本実施形態において、演出表示装置28における各列は、図柄変動ゲームが開始すると、予め定めた変動方向(縦スクロール方向)に沿って飾り図柄が変動表示されるようになっている。そして、図柄変動ゲームが開始すると(各列の飾り図柄が変動を開始すると)、演出表示装置28において遊技者側から見て左列(左図柄)→右列(右図柄)→中列(中図柄)の順に飾り図柄が停止表示されるようになっている。そして、停止表示された左図柄と右図柄が同一種類の場合には、その図柄組み合わせ([1↓1]など、「↓」は変動中を示す)からリーチ状態を認識できる。リーチ状態は、複数列のうち、特定列(本実施形態では左列と右列)の飾り図柄が同一種類となって停止表示され、かつ前記特定列以外の列(本実施形態では中列)の飾り図柄が変動表示されている状態である。このリーチ状態を認識できる図柄組み合わせが飾り図柄によるリーチの図柄組み合わせ(リーチ図柄)となる。また、本実施形態のパチンコ機10では、図柄変動ゲームの開始後、最初に飾り図柄を停止表示させる左列が第1停止表示列になるとともに、次に飾り図柄を停止表示させる右列が第2停止表示列になり、さらに最後に飾り図柄を停止表示させる中列が第3停止表示列となる。
【0027】
また、本実施形態のパチンコ遊技機10では、演出表示装置28の表示領域(画像表示面)を特別図柄表示装置30の表示領域よりも大きく形成し、演出表示装置28を遊技者の正面に目立つように配置している。このため、遊技者は、特別図柄表示装置30よりも自身の目の前で多彩な画像によって表示演出(例えば、リーチ演出や予告演出)が行われる演出表示装置28の表示内容に注目し、該演出表示装置28の図柄変動ゲームで導出されて確定停止表示される図柄組み合わせから大当り又ははずれを認識することになる。」

(1-c)「【0059】
そして、主制御用CPU45aは、図柄変動ゲームの開始直前に、主制御用RAM45cの所定の記憶領域に格納した大当り判定用乱数の値を読み出し、その読み出した大当り判定用乱数の値と主制御用ROM45bに記憶されている大当り判定値とを比較し、大当りか否かの大当り判定を行う。大当り判定の判定結果が肯定(大当り判定用乱数の値と大当り判定値とが一致)の場合、主制御用CPU45aは、大当りを決定する。大当りを決定した主制御用CPU45aは、大当り図柄用乱数の値をもとに、特別図柄表示装置30で行われる図柄変動ゲームで確定停止表示させる大当り図柄(特別図柄)を決定する。特別図柄の大当り図柄は、図3に示すように、大当り遊技の種類毎に振り分けられていることから、大当り図柄を決定することによって遊技者に付与する大当り遊技の種類を決定したことになる。そして、大当り図柄を決定した主制御用CPU45aは、決定した大当り図柄を主制御用RAM45cに記憶する。また、大当りを決定した主制御用CPU45aは、変動パターン振分用乱数の値を主制御用RAM45cから取得し、該値に対応する変動パターンを大当り演出用の変動パターンP1?P4の中から選択して決定する。
【0060】
一方、主制御用CPU45aは、大当り判定の判定結果が否定(大当り判定用乱数の値と大当り判定値とが不一致)の場合、はずれを決定する。そして、はずれを決定した主制御用CPU45aは、はずれリーチ演出を実行するか否かを乱数抽選で決定する。はずれリーチ演出の実行を決定した場合、主制御用CPU45aは、特別図柄表示装置30に確定停止表示させる特別図柄としてはずれ図柄を決定するとともに、変動パターン振分用乱数の値を主制御用RAM45cから取得し、該値に対応する変動パターンをはずれリーチ演出用の変動パターンP5?P8の中から選択して決定する。一方、はずれリーチ演出の非実行を決定した場合、主制御用CPU45aは、前述同様にはずれ図柄を決定するとともに、変動パターン振分用乱数の値を主制御用RAM45cから取得し、該値に対応する変動パターンをはずれ演出用の変動パターンP9,P10の中から選択して決定する。
【0061】
特別図柄及び変動パターンを決定した主制御用CPU45aは、所定の制御コマンドを所定のタイミングでサブ統括制御基板46(統括制御用CPU46a)に出力する。具体的に言えば、主制御用CPU45aは、変動パターンを指示するとともに図柄変動ゲームの開始を指示する変動パターン指定コマンドを最初に出力する。次に、主制御用CPU45aは、特別図柄を指示する特別図柄用の停止図柄指定コマンドを出力する。そして、主制御用CPU45aは、指示した変動パターンに定められている変動時間の経過時に、図柄変動ゲームの終了(図柄の確定停止)を指示する図柄停止コマンドを出力する。また、主制御用CPU45aは、図柄変動ゲームの開始時に特別図柄用の保留記憶数を1減算(-1)し、特別図柄用の保留記憶数を書き換える。そして、主制御用CPU45aは、図柄変動ゲームの開始に伴って特別図柄表示装置30の表示内容を制御する。すなわち、主制御用CPU45aは、図柄変動ゲームの開始により特別図柄の変動を開始させ、決定した変動パターンに定められている変動時間の経過時に決定した特別図柄(大当り図柄又ははずれ図柄)を確定停止表示させる。
【0062】
次に、サブ統括制御基板46について説明する。
サブ統括制御基板46の統括制御用CPU46aは、変動パターン指定コマンドを入力すると、その変動パターン指定コマンドを演出表示制御基板47、及び音声・ランプ制御
基板48に出力する。また、統括制御用CPU46aは、特別図柄用の停止図柄指定コマンドを入力した際、当該停止図柄指定コマンドにより大当り図柄が指定されている場合には、その指定された特別図柄の大当り図柄を統括制御用RAM46cに記憶する。また、統括制御用CPU46aは、図柄停止コマンドを入力すると、該コマンドを演出表示制御基板47、及び音声・ランプ制御基板48に出力する。
【0063】
また、統括制御用CPU46aは、変動パターン指定コマンドで指定された変動パターンの種類と停止図柄指定コマンドで指定された停止図柄(特別図柄)の種類から、演出表示装置28で実行される図柄変動ゲームにおいて導出する飾り図柄の図柄組み合わせを決定する。具体的に言えば、統括制御用CPU46aは、大当り演出用の変動パターンが指定され、かつ指示された特別図柄が大当り図柄の場合には、最終的に確定停止表示させる前記飾り図柄の図柄組み合わせとして大当り図柄(大当りの図柄組み合わせ)を決定する。また、統括制御用CPU46aは、はずれ演出用の変動パターンが指定され、特別図柄の停止図柄指定がはずれ図柄の場合には、最終的に確定停止表示させる前記飾り図柄の図柄組み合わせとしてはずれ図柄(はずれの図柄組み合わせ)を決定する。このとき、統括制御用CPU46aは、飾り図柄の図柄組み合わせとしてリーチ図柄を含めずに(左右列の図柄が同一図柄とならないように)決定する。一方、統括制御用CPU46aは、はずれリーチ演出用の変動パターンが指定され、特別図柄の停止図柄指定がはずれ図柄の場合には、最終的に確定停止表示させる前記飾り図柄の図柄組み合わせとしてはずれ図柄(はずれリーチの図柄組み合わせ)を決定する。このとき、統括制御用CPU46aは、飾り図柄の図柄組み合わせとしてリーチ図柄を含めて(左右列の図柄が同一図柄となるように)決定する。そして、飾り図柄を決定した統括制御用CPU46aは、飾り図柄を指示する飾り図柄用の停止図柄指定コマンドを演出表示制御基板47に出力する。」

(1-d)「【0088】
そして、本実施形態の予告パターンY1?Y3には、実行優先度が設定されており、予告パターンY1の実行優先度が一番高く、次に予告パターンY2の実行優先度が高く、予告パターンY3の実行優先度が一番低くなっている。そして、図10及び図11に示すように、1回の図柄変動ゲームにおいて、複数回の実行段階で予告演出が実行される場合には、前の実行段階の予告パターンの実行優先度と同じ又は低い予告パターンに基づき予告演出が実行されるようになっている。また、はずれ演出用の変動パターンP9,P10が決定された場合には、実行優先度が高い予告パターンY1が決定されやすくなっている一方、実行優先度が低い予告パターンY2,Y3が決定されにくい、又は決定されないようになっている。また、大当り演出用又ははずれリーチ演出用の変動パターンP1?P8のうち、大当り期待度の高いリーチ演出SR1?SR3が演出内容に含まれる変動パターンP1?P3,P5?P7が決定された場合には、実行優先度が低い予告パターンY3が決定されやすくなっている。その一方で、大当り演出用又ははずれリーチ演出用の変動パターンP1?P8のうち、大当り期待度の低いリーチ演出NRが演出内容に含まれる変動パターンP4,P8が決定された場合には、予告パターンY2よりも実行優先度が低い予告パターンY3が決定されないようになっている。以上により、実行優先度が低ければ低いほど、予告パターンとして決定されにくくなっており、また、大当り期待度が高くなっている。」

(1-e)「【0112】
以上により、本実施形態では、統括制御用CPU46aが、予告パターンを決定する予告決定手段となる。また、統括制御用CPU46aが、表示結果決定手段となる。また、統括制御用CPU46a及び表示制御用CPU47aが、演出制御手段となる。
【0113】
次に、予告演出の具体的な演出態様を図15?図19に従って説明する。
図15、図16では、変動パターンP1に基づく図柄変動ゲームが実行されるときに、実行パターンJP3が選択され、1段階目の実行段階にて予告パターンY1が、2段階目の実行段階にて予告パターンY2が、3段階目の実行段階にて予告パターンY3が、決定されるものとして説明する。また、1段階目の実行段階にて予告キャラクタC1、背景色「白」、文字列「無」が決定され、2段階目の実行段階にて予告キャラクタC2、背景色「赤」、文字列「無」が決定され、3段階目の実行段階にて予告キャラクタC3、背景色「金」、文字列「激アツ」が決定されるものとして説明する。
【0114】
変動パターンP1に基づく図柄変動ゲームが開始されると、演出表示装置28は、3列の飾り図柄を変動表示する(図15(a)参照)。次に、図柄変動ゲーム開始から1段階目の実行段階に到達すると、演出表示装置28は、前提より予告パターンY1に基づく予告演出を実行する。すなわち、演出表示装置28は、背景色が白色であって文字列が表示されない扉が閉鎖する様子を表示する(図15(b))。次に、演出表示装置28は、扉が開放する様子を表示すると共に、扉の中から予告キャラクタC1が出現する様子を表示する(図15(c))。そして、扉が閉鎖する直前において、1段階目の実行段階における予告パターンY1に基づく予告演出が終了するとともに、2段階目の実行段階に到達する。
【0115】
次に、図柄変動ゲーム開始から2段階目の実行段階に到達すると、演出表示装置28は、前提より予告パターンY2に基づく予告演出を実行する。すなわち、演出表示装置28は、背景色が赤色(図では左下斜線で示す)であって文字列が表示されない扉が閉鎖する様子を表示する(図15(d))。次に、演出表示装置28は、扉が開放する様子を表示すると共に、扉の中から予告キャラクタC2が出現する様子を表示する(図15(e))。また、その際、演出表示装置28は、予告キャラクタC2と共に、確定停止表示させる飾り図柄のうち1部(図15では、左右列の飾り図柄)を表示する(図15(e))。そして、扉が閉鎖する直前において、2段階目の実行段階における予告パターンY2に基づく予告演出が終了するとともに、3段階目の実行段階に到達する。
【0116】
同様に、図柄変動ゲーム開始から3段階目の実行段階に到達すると、演出表示装置28は、前提より予告パターンY3に基づく予告演出を実行する。すなわち、演出表示装置28は、背景色が金色(図では右下斜線で示す)であって文字列「激アツ」が表示された扉が閉鎖する様子を表示する(図15(f))。次に、演出表示装置28は、扉が開放する様子を表示すると共に、扉の中から予告キャラクタC3が出現する様子を表示する(図15(g))。また、その際、演出表示装置28は、予告キャラクタC3と共に、変動パターンP1に基づき、実行させるリーチ演出SR1を示す(図15(g))。次に、演出表示装置28は、再び扉が閉鎖する様子を表示する(図15(h))。そして、演出表示装置28は、扉を開放させて、3列の飾り図柄が変動表示する表示画面に戻る(図16(a))。これにより、3段階目の実行段階における予告パターンY3に基づく予告演出が終了する。そして、演出表示装置28は、変動パターンP1に基づき、リーチ演出SR1を実行する(図16(b))。その後、演出表示装置28は、変動パターンP1に基づき、飾り図柄用の停止図柄指定コマンドにより指定された飾り図柄による大当り図柄を表示する(図16(c))。」

イ 認定事項
(1-f)図10(c)には、実行パターンJP3に対応する予告演出として、変動パターンY1→Y1→Y1、Y1→Y1→Y2、Y1→Y2→Y2、Y1→Y2→Y3、Y2→Y2→Y3の場合の変動パターンが示されていると認められる。

(1-g)段落【0059】には、「主制御用CPU45aは、図柄変動ゲームの開始直前に、主制御用RAM45cの所定の記憶領域に格納した大当り判定用乱数の値を読み出し、その読み出した大当り判定用乱数の値と主制御用ROM45bに記憶されている大当り判定値とを比較し、大当りか否かの大当り判定を行う。大当り判定の判定結果が肯定(大当り判定用乱数の値と大当り判定値とが一致)の場合、主制御用CPU45aは、大当りを決定する。・・・また、大当りを決定した主制御用CPU45aは、変動パターン振分用乱数の値を主制御用RAM45cから取得し、該値に対応する変動パターンを大当り演出用の変動パターンP1?P4の中から選択して決定する。」と記載され、段落【0061】には、「特別図柄及び変動パターンを決定した主制御用CPU45aは、所定の制御コマンドを所定のタイミングでサブ統括制御基板46(統括制御用CPU46a)に出力する。具体的に言えば、主制御用CPU45aは、変動パターンを指示するとともに図柄変動ゲームの開始を指示する変動パターン指定コマンドを最初に出力する。」と記載されている。
そして、段落【0063】には、「統括制御用CPU46aは、変動パターン指定コマンドで指定された変動パターンの種類と停止図柄指定コマンドで指定された停止図柄(特別図柄)の種類から、演出表示装置28で実行される図柄変動ゲームにおいて導出する飾り図柄の図柄組み合わせを決定する。」と記載されているから、統括制御用CPU46aは、出力された変動パターン指定コマンドにより、演出表示装置28で実行される図柄変動ゲームを制御するものといえる。
また、段落【0027】には「パチンコ遊技機10」が記載されている。
よって、これらの記載から、引用例1には、大当り判定の判定結果に基づいて変動パターンを決定するとともに変動パターン指定コマンドを統括制御用CPU46aに出力する主制御用CPU45aと、出力された変動パターン指定コマンドにより、演出表示装置28で実行される図柄変動ゲームを制御する統括制御用CPU46aとを備えたパチンコ遊技機10が記載されていると認められる。

(1-h)段落【0088】には、「本実施形態の予告パターンY1?Y3には、実行優先度が設定されており、予告パターンY1の実行優先度が一番高く、次に予告パターンY2の実行優先度が高く、予告パターンY3の実行優先度が一番低くなっている。そして、図10及び図11に示すように、1回の図柄変動ゲームにおいて、複数回の実行段階で予告演出が実行される場合には、前の実行段階の予告パターンの実行優先度と同じ又は低い予告パターンに基づき予告演出が実行されるようになっている。・・・実行優先度が低ければ低いほど、予告パターンとして決定されにくくなっており、また、大当り期待度が高くなっている。」と記載されているから、複数回の実行段階で予告演出が実行される場合には、大当り期待度が同じ又は高い予告パターンに基づき予告演出が実行されるといえる。
そして、上記(1-f)の認定事項によれば、変動パターンのY2の後は、Y2又はY3となるから、Y2よりも大当り期待度の低いY1は行われない。また、Y3は最後の予告パターンであるため、その後は、Y1、Y2、Y3は行われないことになる。
よって、引用例1には、予告パターンY2の予告演出を行わせた後に、前記予告パターンY2よりも大当り期待度が低い予告パターンY1の予告演出を行わせず、予告パターンY3の予告演出を行わせた後に、予告パターンY1、予告パターンY2および予告パターンY3の予告演出の何れも行わせない点が記載されていると認められる。

(1-i)上記(1-h)で検討した段落【0088】の記載から、引用例1には、大当り期待度は、予告パターンY1の予告演出、予告パターンY2の予告演出、予告パターンY3の予告演出の順に高くなっている点が記載されていると認められる。

上記(1-a)?(1-e)の記載事項及び(1-f)?(1-i)の認定事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「a 大当り判定の判定結果に基づいて変動パターンを決定するとともに変動パターン指定コマンドを統括制御用CPU46aに出力する主制御用CPU45aと、出力された変動パターン指定コマンドにより演出表示装置28で実行される図柄変動ゲームを制御する統括制御用CPU46aとを備えたパチンコ遊技機10であって(認定事項(1-g))、
b、c 前記統括制御用CPU46aにより制御される前記演出において、
図柄変動ゲームが開始されると、3列の飾り図柄が変動表示され(図15(a))、次に、図柄変動ゲーム開始から1段階目の実行段階に到達すると、予告パターンY1に基づく予告演出が実行され、背景色が白色であって文字列が表示されない扉が閉鎖する様子が表示され(図15(b))、次に、扉が開放する様子が表示されると共に、扉の中から予告キャラクタC1が出現する様子が表示され(図15(c))、次に、図柄変動ゲーム開始から2段階目の実行段階に到達すると、予告パターンY2に基づく予告演出が実行され、背景色が赤色であって文字列が表示されない扉が閉鎖する様子が表示され(図15(d))、次に、扉が開放する様子が表示されると共に、扉の中から予告キャラクタC2が出現する様子が表示され、その際、前記予告キャラクタC2と共に、確定停止表示させる飾り図柄のうち1部(左右列の飾り図柄)が表示され(図15(e))、次に、図柄変動ゲーム開始から3段階目の実行段階に到達すると、予告パターンY3に基づく予告演出が実行され、背景色が金色であって文字列「激アツ」が表示された扉が閉鎖する様子が表示され(図15(f))、次に、扉を開放させて、3列の飾り図柄が変動表示する表示画面に戻り(図16(a))、次に、変動パターンP1に基づくリーチ演出SR1が実行され(図16(b))、次に、変動パターンP1に基づき、飾り図柄用の停止図柄指定コマンドにより指定された飾り図柄による大当り図柄が表示される(図16(c))演出を行わせるものであり(段落【0112】?【0116】)、
d 予告パターンY2の予告演出を行わせた後に、前記予告パターンY2よりも大当り期待度が低い予告パターンY1の予告演出を行わせず、予告パターンY3の予告演出を行わせた後に、予告パターンY1、予告パターンY2および予告パターンY3の予告演出の何れも行わせず(認定事項(1-h))、
e 大当り期待度は、予告パターンY1の予告演出、予告パターンY2の予告演出、予告パターンY3の予告演出の順に高くなっている(認定事項(1-i))、
パチンコ遊技機10(段落【0027】)。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2013-252273号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2-a)「【0063】
この制御装置は、パチンコ遊技機1の動作を統括的に制御する主制御基板24と、主制御基板24からコマンドを受けて演出の制御をする演出制御基板25を中心に構成される。電源基板28は、主制御基板24を初めとした各基板に接続され、外部電源から交流電圧24Vを受けて直流電圧に変換し、各基板に供給する。」

(2-b)「【0081】
次に、図5を参照して、実施例1の演出画面について説明する。
【0082】
以下の演出画面は、遊技の中で液晶表示装置36の表示領域に表示される。また、ここで行われる演出は、遊技者が演出ボタン(例えば、左演出ボタン13)を複数回操作することで、最終的に予告演出ウィンドウが1つ残り、残った予告演出ウィンドウに関する演出が行われるものである。
【0083】
図5(a)に示す通り、予告演出ウィンドウ55a?55dには、それぞれアイテムA、B、C、Dが描かれている。例えば、最終的に予告演出ウィンドウ55aが残った場合には、図柄の変動表示の際にアイテムAを用いた演出が行われる。
【0084】
以下、図6に示す演出ボタンの操作による画面変化のフローチャートと併せて説明する。まず、予告画面1が表示されたか否かを判定する(ステップS01)。予告画面1(図5(a))には、予告演出ウィンドウ55a?55d、複数の演出ボタンマーク56、及び操作指示マーク57が表示されている。演出ボタンマーク56は、3個重ねて表示され、遊技者に演出ボタンを3回操作することを促す表示となっている。なお、表示領域右下の矢印58′は、装飾図柄が変動中であることを示している。」

(2-c)「【0101】
最後に、予告演出と図柄変動表示が行われる(ステップS14)。例えば、予告演出が開始する前に右図柄が停止し、リーチの状態となる(図示省略)。今回、予告演出ウィンドウ55cが残ったので、変動表示の際、例えば、主人公がアイテムCを装備して敵と戦う等の予告演出が行われる(図示省略)。その後、中図柄が停止し、当り又は外れを表示する。そして、この処理を終了する。
【0102】
以上のように、演出ボタンを複数回操作することが指示された場合には、操作する度に予告演出ウィンドウ55a?55dの1つが壊れ、最終的に残った1つの予告演出ウィンドウに関する予告演出が行われる。演出ボタンを操作する度に液晶表示装置36の表示領域の様子と演出ボタンマーク56の個数が変化するので、遊技者は、1回1回の操作に意味があることを認識する。
【0103】
予告演出ウィンドウは、大当りの期待度によってフレームの形状や色を異ならせてもよい。これにより、遊技者は、最終的に大当り期待度が高い予告演出ウィンドウが残ることを期待して、遊技に積極的に参加するようになる。」

上記(2-a)?(2-c)の記載事項を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例2記載の事項」という。)。

「液晶表示装置36の表示領域において、装飾図柄が変動中に、複数の予告演出ウィンドウ55a?55dが表示され、遊技者が演出ボタンを操作する度に予告演出ウィンドウ55a?55dの1つが壊れ、最終的に予告演出ウィンドウが1つ残り、残った予告演出ウィンドウに関する予告演出が行われ、その後リーチ状態となるものであり、前記予告演出ウィンドウは、大当りの期待度によってフレームの形状や色を異ならせる(段落【0082】、【0101】?【0103】)、パチンコ遊技機1(段落【0063】)」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(下記の(a)?(e)は、引用発明の構成に対応している。)。

(a)引用発明の「大当り」、「演出表示装置28」、「統括制御用CPU46a」は、それぞれ、本願補正発明の「特別遊技」、「表示手段」、「演出制御手段」に相当する。
そして、引用発明において、「大当り判定の判定結果に基づいて変動パターンを決定するとともに変動パターン指定コマンドを統括制御用CPU46aに送信する主制御用CPU45aと、送信された変動パターン指定コマンドにより演出表示装置28で実行される図柄変動ゲームを制御する」ことは、主制御用CPU45aの大当り判定の判定結果に基づいて統括制御用CPU46aで演出表示装置28で実行される図柄変動ゲームを制御するといえる。
よって、引用発明の構成aは、本願補正発明の構成Aに相当する。

(b、c)引用発明において、変動パターンP1に基づくリーチ演出SR1(図16(b))は、本願補正発明の「特別遊技に当選した可能性があることを示すリーチ状態」に相当するから、「3列の飾り図柄が変動表示され(図15(a))」、「扉が開放する様子が表示されると共に、扉の中から予告キャラクタC1が出現する様子が表示され(図15(c))」、「扉が開放する様子が表示されると共に、予告キャラクタC2と共に、確定停止表示させる飾り図柄のうち1部(左右列の飾り図柄)が表示され(図15(e))」る点は、本願補正発明の「所定の画像を表示させるリーチ前演出」に相当する。
そして、引用発明の「予告パターンY1に基づく予告演出が実行され、背景色が白色であって文字列が表示されない扉が閉鎖する様子が表示され(図15(b))」、「予告パターンY2に基づく予告演出が実行され、背景色が赤色であって文字列が表示されない扉が閉鎖する様子が表示され(図15(d))」、「予告パターンY3に基づく予告演出が実行され、背景色が金色であって文字列「激アツ」が表示された扉が閉鎖する様子が表示され(図15(f))」る点は、何れも扉が封鎖する様子が表示され、図15(a)、(c)、(e)の飾り図柄の変動表示や、予告キャラクタC1、C2の表示が、閉鎖された扉が表示されることにより、視認不能となるものであるから、本願補正発明の「前記リーチ前演出を行わせているときに、遊技者が前記所定の画像を視認困難または視認不能となる予告画像を表示させる予告演出を複数回行なわせる」点に相当する。
よって、引用発明の構成bは、本願補正発明の構成Bに相当する。

また、引用発明の「扉が封鎖する様子」、「背景色が白色」、「背景色が赤色」は、本願補正発明の「所定の形状を表す予告画像」、「通常の表示色」、「通常の表示色とは異なる特定の表示色」に相当するから、引用発明における「予告パターンY1に基づく予告演出が実行され、背景色が白色であって文字列が表示されない扉が閉鎖する様子」のが表示、「予告パターンY2に基づく予告演出が実行され、背景色が赤色であって文字列が表示されない扉が閉鎖する様子」の表示は、それぞれ、本願補正発明の「通常予告演出」、「第1特定予告演出」に相当する。
そして、引用発明の「予告パターンY3に基づく予告演出が実行され、背景色が金色であって文字列「激アツ」が表示された扉が閉鎖する様子」の表示と、本願補正発明の「所定の形状とは異なる特定の形状を表す前記予告画像を表示させる第2特定予告演出」とは、「前記予告画像を表示させる第2特定予告演出」である点で共通する。
よって、引用発明の構成cと本願補正発明の構成Cとは、「前記予告演出において、所定の形状を表す前記予告画像であって通常の表示色の前記予告画像を表示させる通常予告演出を行なわせるときと、前記所定の形状を表す前記予告画像であって前記通常の表示色とは異なる特定の表示色の前記予告画像を表示させる第1特定予告演出を行なわせるときと、前記予告画像を表示させる第2特定予告演出を行なわせるときと、があ」る点で共通する。

(d)引用発明の「予告パターンY2の予告演出を行わせた後に、前記予告パターンY2よりも大当り期待度が低い予告パターンY1の予告演出を行わせ」ない点と、本願補正発明の「前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出および前記第1特定予告演出を行わせ」ない点とは、「前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出を行わせ」ない点で共通する。
また、引用発明「予告パターンY3の予告演出を行わせた場合、その後に予告パターンY1の予告演出、予告パターンY2の予告演出、予告パターンY3の予告演出の何れも行わせな」いことは、本願補正発明の「前記予告演出において前記第2特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出、前記第1特定予告演出および前記第2特定予告演出の何れも行わせ」ないことに実質的に相当する。
よって、引用発明の構成dと本願補正発明の構成Dとは、「前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出を行わせず、前記予告演出において前記第2特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出、前記第1特定予告演出および前記第2特定予告演出の何れも行わせ」ない点で共通する。

(e)引用発明は「大当り期待度は、予告パターンY1の予告演出、予告パターンY2の予告演出、予告パターンY3の予告演出の順に高くなっている」ものであるが、このことは、大当り期待度は、予告パターンY1の予告演出における、背景色が白色の閉鎖する扉の表示が行われたときよりも、予告パターンY2の予告演出における、背景色が赤色の閉鎖する扉の表示または予告パターンY3の予告演出における、背景色が金色の閉鎖する扉の表示が行われたときの方が大当り期待度が高いこと、及び、予告パターンY2の予告演出における、背景色が赤色の閉鎖する扉の表示と、予告パターンY3の予告演出における、背景色が金色の閉鎖する扉の表示が行われたときとで大当り期待度が異なることを意味するものである。
よって、引用発明の構成eは、本願補正発明の構成Eに相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技者に有利な特別遊技に当選したか否かの判定に基づいて、表示手段を用いて演出を行わせる演出制御手段を備えた遊技機であって、
B 前記演出制御手段は、
前記特別遊技に当選した可能性があることを示すリーチ状態になる前において、前記表示手段に所定の画像を表示させるリーチ前演出を行わせることが可能であり、
前記リーチ前演出を行わせているときに、遊技者が前記所定の画像を視認困難または視認不能となる予告画像を表示させる予告演出を複数回行なわせることが可能であり、
C’ 前記予告演出において、所定の形状を表す前記予告画像であって通常の表示色の前記予告画像を表示させる通常予告演出を行なわせるときと、前記所定の形状を表す前記予告画像であって前記通常の表示色とは異なる特定の表示色の前記予告画像を表示させる第1特定予告演出を行なわせるときと、前記予告画像を表示させる第2特定予告演出を行なわせるときと、があり、
D’ 前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出を行わせず、前記予告演出において前記第2特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出、前記第1特定予告演出および前記第2特定予告演出の何れも行わせず、
E 前記通常予告演出が行われたときよりも、前記第1特定予告演出または前記第2特定予告演出が行われたときの方が、前記特別遊技に当選した可能性が高く、且つ、前記第1特定予告演出が行われたときと、前記第2特定予告演出が行われたときとで、前記特別遊技に当選した可能性が異なることを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
第2特定予告演出で表示される予告画像に関して、本願補正発明では「所定の形状とは異なる特定の形状を表す予告画像」であり、第2特定予告演出で表示される形状は、通常予告演出、第1特定予告演出で表示される形状とは異なるのに対して、引用発明では「所定の形状を表す予告画像」であり、第2特定予告演出で表示される形状は、通常予告演出、第1特定予告演出で表示される形状と同じである点。(構成C)

[相違点2]
予告演出において第1特定予告演出を行わせた場合に、その後に行われる予告演出に関して、本願補正発明では「前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出および前記第1特定予告演出を行わせ」ないのに対して、引用発明では「前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出を行わせ」ない点。(構成D)

(4)判断
上記相違点1?2について検討する。
ア 上記相違点1について
引用例2記載の事項には、要するに、リーチ前の装飾図柄の変動中に行われる、複数の予告演出ウィンドウ55a?55dを用いた予告演出において、大当り期待度によって予告演出ウィンドウのフレームの形状や色が異なることが記載されている。
そして、引用発明と引用例2記載の事項とは、共に、リーチ前に複数の予告画像を用いた演出を行う遊技機であるとともに、大当り期待度を示唆する画像が何らかの形状を有している点で共通するものである(具体的には、大当り期待度を示唆する画像は、引用発明では「扉」であり、引用例2記載の事項では「フレーム」である。)。
してみると、引用発明に引用例2記載の事項を適用して、大当り期待度を示唆する画像の形状を、大当り期待度によって異ならせるようにし、引用発明における予告パターンY3の予告演出における大当り期待度を示唆する画像である扉の形状が、予告パターンY1の予告演出、予告パターンY2の予告演出において表示される扉の形状と異なるように構成し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記相違点2について
弾球遊技機の技術分野において、大当り期待度を示唆する予告演出を複数回行う際に、前回の演出よりも今回の演出で示唆される大当り期待度を高くすることは、本願の出願遡及日前において周知の技術である(例えば、特開2013-183757号公報の【請求項1】、【請求項2】、段落【0055】?【0059】、図9、10には、1回の判定の結果を報知するための1回の報知演出中に特定の演出を複数回実行させる場合に、特定の演出が実行される毎に期待度を必ず上昇させる点が、特開2011-188881号公報の段落【0336】?【0342】、図24には、絵柄図柄のサイズが段階毎に拡大されるステップアップ予告を行うことにより、大当り期待度を高めていく点が、特開2013-022167号公報の段落【0155】、【0156】、図13には、演出画像を演出表示SUE1?SUE4に切り替えて表示させるステップアップ予告において、演出態様が変化する回数(ステップ数)が多いほど、より大当り期待度が高くなる点が記載されている。)。
そして、引用発明と周知の技術とは、大当り期待度を示唆する予告演出を複数回行う遊技機である点で共通するものであるから、引用発明に上記周知の技術を適用し、引用発明において、予告パターンY2の予告演出を行わせた後、予告パターンY1の予告演出および予告パターンY2の予告演出の何れも行わせずに、前記予告パターンY2よりも大当り期待度の高い予告パターンY3の予告演出を行わせるように構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(5)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明、引用例2記載の事項および周知の技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成28年7月19日付けの特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたおりのものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項2】
遊技者に有利な特別遊技に当選したか否かの判定に基づいて、表示手段を用いて演出を行わせる演出制御手段を備えた遊技機であって、
前記演出制御手段は、
前記特別遊技に当選した可能性があることを示すリーチ状態になる前において、前記表示手段に所定の画像を表示させるリーチ前演出を行わせることが可能であり、
前記リーチ前演出を行わせているときに、遊技者が前記所定の画像を視認困難または視認不能となる予告画像を表示させる予告演出を複数回行なわせることが可能であり、
前記予告演出において、所定の形状を表す前記予告画像であって通常の表示色の前記予告画像を表示させる通常予告演出を行なわせるときと、前記所定の形状を表す前記予告画像であって前記通常の表示色とは異なる特定の表示色の前記予告画像を表示させる第1特定予告演出を行なわせるときと、前記所定の形状とは異なる特定の形状を表す前記予告画像を表示させる第2特定予告演出を行なわせるときと、があり、
前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出を行わせず、前記予告演出において前記第2特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出および前記第1特定予告演出の何れも行わせず、
前記通常予告演出が行われたときよりも、前記第1特定予告演出または前記第2特定予告演出が行われたときの方が、前記特別遊技に当選した可能性が高く、且つ、前記第1特定予告演出が行われたときと、前記第2特定予告演出が行われたときとで、前記特別遊技に当選した可能性が異なることを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由
(1)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2010-158477号公報
引用文献2:特開2013-252273号公報
引用文献3:特開2008-125626号公報
引用文献4:特開2009-254520号公報
引用文献5:特開2010-110442号公報

3 刊行物
引用例1、2及びその記載事項、並びに引用発明は、上記「第2 3(1)」、「第2 3(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「予告演出」に関して、「前記予告演出において前記第1特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出および前記第1特定予告演出を行わせず、前記予告演出において前記第2特定予告演出を行わせた場合、その後に前記通常予告演出、前記第1特定予告演出および前記第2特定予告演出の何れも行わせ」ない点から、「および前記第1特定予告演出」及び「および前記第2特定予告演出」との限定を省くものである。
そして、本願発明と引用発明とを対比すると、相違点は、上記「第2 3(3)」で検討した相違点1と同様のものとなるから、上記「第2 3(4)」で検討したとおり、当業者が、引用発明、引用例2記載事項に基づいて、容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-10 
結審通知日 2018-09-11 
審決日 2018-09-25 
出願番号 特願2016-141233(P2016-141233)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小泉 早苗  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 蔵野 いづみ
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 鈴木 均  

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