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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1345736
審判番号 不服2017-15031  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-10 
確定日 2018-11-05 
事件の表示 特願2015-196722「触媒コンバーター装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月12日出願公開、特開2016-26279〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2009年8月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年8月27日、米国)を国際出願日とする特願2011-524149号の一部を平成27年10月2日に新たな特許出願としたものであって、平成28年7月21日付け(発送日:同年7月26日)で拒絶理由が通知され、同年11月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月4日付け(発送日:同年1月10日)で最後の拒絶理由が通知され、同年2月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月15日付け(発送日:同年6月19日)で拒絶査定がされ、これに対して同年10月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び平成28年11月2日の手続補正により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面からみて、次のとおりのものである。

「【請求項1】
内燃機関の排気系に用いられる触媒コンバーター装置であって、該装置は、
一つのガスの入口および一つのガスの出口を含む筐体と、
前記筐体内に配置された基体要素を含み、前記基体要素は、触媒材料を担持し、複数のゾーンを具え、前記ゾーンのそれぞれは独立した流体通路を画定し、前記流体通路は前記基体要素の一端において前記筐体の内部で合わさり前記入口とつながっており、前記基体要素のもう一方の一端において前記筐体の内部で合わさり前記出口とつながっており、少なくとも一つの壁部が前記ゾーンをそれぞれ少なくとも部分的に仕切り、前記少なくとも一つの壁部は前記ゾーンを互いに独立に昇温させるように前記ゾーン間の熱の流れを抑制するための断熱材を含み、前記ゾーン間のガスの流れを通さない、
装置。」


第3 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

1.(新規性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について

・請求項1
・引用文献等1
・備考
引用文献1(段落【0013】ないし【0033】及び図1ないし9)には、以下に特定される発明が記載されている。
「内燃機関の排気系に用いられる触媒コンバーター装置(段落【0029】)であって、該装置は、
一つのガスの入口および一つのガスの出口を含む筐体(金属容器11)と、
前記筐体内に配置された基体要素(ハニカムセグメント2a,2b)を含み、
前記基体要素は、触媒材料を担持し(段落【0029】)、複数のゾーンを具え(図1、3参照)、前記ゾーンのそれぞれは独立した流体通路を画定し、前記流体通路は前記基体要素の一端において前記筐体の内部で合わさり前記入口とつながっており、前記基体要素のもう一方の一端において前記筐体の内部で合わさり前記出口とつながっており、少なくとも一つの壁部(接合材7、圧縮弾性材料A3)が前記ゾーンをそれぞれ少なくとも部分的に仕切り、前記少なくとも一つの壁部は前記ゾーンを互いに独立に昇温させるように前記ゾーン間の熱の流れを抑制するための断熱材を含み、前記ゾーン間のガスの流れを通さない(段落【0022】)、装置。」
引用文献1の接合材7が単なる接着剤であっても、その熱伝導率は有限の値を有するのであるから、断熱作用を呈することは自明である。ましてや、段落【0024】に記載されているように、接合剤7の材料として、各種セラミック材が選択されれば、断熱作用を呈することは明らかである。また、圧縮弾性材料A3はセラミック繊維製マットであるから、断熱作用を呈することは明らかである。
したがって、接合材7及び圧縮弾性材料A3が、ゾーンを互いに独立に昇温させるようにゾーン間の熱の流れを抑制する作用を呈することは自明である。

・請求項2ないし8
(省略)

<引用文献等一覧>

1.特開2002-292225号公報(本審決の引用文献。)


第4 引用文献の記載事項、引用発明

1.引用文献の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2002-292225号公報(以下、「引用文献」という。)には、「ハニカム構造体及びそのアッセンブリ」に関して、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

1)「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、内燃機関、ボイラー、化学反応機器および燃料電池用改質器等の触媒作用を利用する触媒用担体または排ガス中の微粒子捕集フィルター等に用いられるハニカム構造体及びそのアッセンブリに関し、特に使用時の熱応力による破損に対する耐久性に優れたハニカム構造体及びそのアッセンブリに関する。」

2)「【0010】・・・また、ハニカム構造体が自動車排ガス浄化用として用いられることが好ましく、ディーゼル微粒子捕集用フィルターとして用いられることがさらに好ましい。さらに、ハニカムセグメントが互いに隣接する面の間の一部又は全部に圧縮弾性材料A、好ましくはセラミック繊維製マット、さらに好ましくはアルミナまたはムライト組成を主成分とする非膨脹性マットを配することが好ましい。・・・」

3)「【0014】 図1(a)は本発明に係るハニカム構造体の一実施形態を示すハニカム構造体の断面-模式図である。本発明のハニカム構造体1は図1(b)、(c)に示されるような隔壁10により仕切られた軸方向に貫通する多数の流通孔6を有するハニカムセグメント2a及び2bが一体化されることにより構成される。
【0015】 本発明の重要な特徴は、図1(b)、(c)に示されるように、最外周面23を構成しないハニカムセグメント2aの平均壁厚(図1(b)参照)が、最外周面を構成するハニカムセグメント2bの平均壁厚(図1(c)参照)よりも厚いことである。本発明において平均壁厚とは、ハニカムセグメントの外周壁を含めない隔壁6の平均の厚さを意味する。この様な構成にしたことにより、本発明のハニカム構造体は、壁厚の厚い中心部の反応速度を低く抑えられるので、構造体内最大温度は低くくなり、壁厚の薄い外側構造体の温度は高くなる結果、十分な反応率、浄化効率、再生効率を保持しながら、構造体全体の温度分布を小さくできる。従って、本発明のハニカム構造体は反応率、浄化効率、再生効率等の効率を高く保ちつつ熱応力破壊に対する改良された耐久性を示すものとなる。」

4)「【0017】 図2は本発明の別の実施形態を示したものであるが、この場合には中心部4個の断面四角形状のハニカムセグメント2cが内側セグメントとなり、各々8個のハニカムセグメント2f、2e及4個のハニカムセグメント2dの合計20個が外側セグメントとなる。従って、内側セグメント2cの少なくとも1つのセグメントにおける平均壁厚が、外側セグメント2f、2d及び2eのうち少なくとも1つのセグメントにおける平均壁厚より厚い構成となっている。」

5)「【0022】 本発明におけるハニカム構造体1はハニカムセグメント2が一体化されたものであるが、例えば接合材7を用いてハニカムセグメント2が互いに隣接する面4を接合することができる。また、圧縮弾性材料Aをハニカムセグメントの互いに隣接する面に配することも好ましい。さらに、図1に示されるように、圧縮弾性材料A3、好ましくはセラミック繊維製マットを内側セグメント2aと外側セグメント2bが互いに隣接する面4abに配することが好ましく、更に、図2に示されるように、外側セグメント2e同士が互いに隣接する面4eeに圧縮弾性材料A3を配することも好ましい。この様に圧縮弾性材料Aを各面間に配することにより、熱応力が緩和され、ハニカム構造体の耐久性がさらに向上する。
【0023】 本発明において、圧縮弾性材料Aは耐熱性とクッション性を備えることが好ましい。耐熱性及びクッション性を有する圧縮弾性材料Aとしては、バーミュキュライトを実質上含まない非膨脹性材料、又は少量のバーミュキュライトを含む低膨脹性材料であり、アルミナ、高アルミナ、ムライト、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、チタニアからなる群より選ばれた少なくとも1種あるいはそれらの複合物からなるセラミック繊維を主成分とすることが好ましく、この中でもバーミュキュライトを実質上含まずアルミナ又はムライトを主成分とする非膨脹性材料がより好ましい。さらに、これらの繊維製マットであることが好ましく、セラミック繊維製マットがアルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨脹性マットであることがさらに好ましい。これらのセラミック製マットは、被処理流体の漏れを防止する観点からシール性を有することがさらに好ましい。圧縮弾性材料Aの好適な具体例は、3M社製/1100HTや三菱化学社製/マフテック等である。」

6)「【0026】 図3は図1に示すハニカム構造体を金属容器11に保持したハニカム構造体アッセンブリ8の断面-模式図である。図3に示す本発明のハニカム構造体アッセンブリ8は、ハニカム構造体1の最外周面23に圧縮弾性材料Bを圧縮状態で配することによりハニカム構造体1を金属容器11に圧縮把持してなるものである。
【0027】 本発明において圧縮弾性材料Bとしては、前述の圧縮弾性材料Aと同様に耐熱性及びクッション性を有することが好ましく、さらにシール性を有することが好ましいが、非膨脹性材料であっても膨脹性材料であっても良い。好ましい圧縮弾性材料Bはアルミナ、高アルミナ、ムライト、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、チタニアからなる群より選ばれた少なくとも1種あるいはそれらの複合物を主成分とするセラミック繊維等であるが、これらの繊維製マットであることがさらに好ましい。具体的には前述の3M社製/1100HTや三菱化学社製/マフテック等を用いることが出来るが、膨脹性マットである3M社製/インタラムマット等を用いることもできる。
【0028】本発明において、ハニカム構造体1を圧縮弾性材料Bとともに圧縮状態で金属容器11内に入れる方法は、図4に示すガイド17を用いた押込み方法、図5に示す金属板11cを巻き付けて引っ張ることで面圧を付与し、金属板11cの合わせ部を溶接して固定する巻き絞め方法、あるいは図6に示す2分割された金属容器11a,11bで負荷を与えながら挟み込み、2つの金属容器11a,11bの合わせ面(つば)16a,16bの個所を溶接することで一体化容器とするクラムシェル方法が好適である。また、この他に、図7に示すような、金属塑性加工技術を応用した、金属容器11を外部からタップ(加圧型)12を介して圧縮圧力を加えて金属容器11の外径寸法を絞る方法(スウェージング方法)も好適である。更には、図8に示すように、塑性加工を応用した方法で金属容器11を回転させながら加工治具18を用いて最外周面を塑性加工により絞り込む方法、いわゆる回転鍛造方法によることで金属容器の外径を絞り、面圧を付与する方法も可能である。
【0029】本発明のハニカム構造体又はハニカム構造体アッセンブリを触媒担体として、内燃機関、ボイラー、化学反応機器、燃料電池用改質器等に用いる場合、ハニカムセグメントに触媒能を有する金属を担持させるようにする。触媒能を有する代表的なものとしてはPt、Pd、Rh等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種をハニカムセグメントに担持させることが好ましい。」

7)「【0031】 このような、ハニカムセグメントから構成されるハニカム構造体の一端面より粒子状物質を含んだ排気ガスを通すと、排気ガスは当該一端面側の流通孔が封じられていない流通孔よりハニカム構造体の内部に流入し、濾過能を有する多孔質の隔壁を通過し、他端面側の封じられていない孔より排出される。この隔壁を通過する際に粒子状物質が隔壁に捕捉される。端面を封じるための材料は上記ハニカムセグメント2に好適な材料の中から選ぶことができる。」

8)「【0033】本発明において、ハニカム構造体アッセンブリに触媒を担持させる方法としては、触媒担持前に金属容器11内にセルハニカム構造体1を把持し、ハニカム構造体アッセンブリ8としてから、ハニカム構造体1に触媒を担持させる方法が可能である。この方法によれば、触媒担持工程中に、ハニカム構造体1が欠けたり、破損したりする可能性を回避することが出来る。また、ハニカムセグメント2に触媒成分を担持した後に、ハニカム構造体1とし、これを金属容器11内に収納把持してなることが、本発明のハニカム構造体又はハニカム構造体アッセンブリを触媒コンバータとして用いる場合に好ましい。」

9)「【図面の簡単な説明】
・・・
【図7】 金属容器内へハニカム構造体を収納するためのスウェージング方法の一例を示す流通孔方向に対する平行断面図である。
【図8】 金属容器内へハニカム構造体を収納するためのスウェージング方法の一例を示す流通孔方向に対する平行断面図である。」

10)上記1)、2)、7)及び8)から、ハニカム構造体1は、内燃機関の排気系に用いられる触媒コンバーター装置にも用いられることが分かる。

11)上記6)(特に、段落【0028】)、7)ないし9)並びに図7及び8の図示内容から、金属容器11は一つのガスの入口および一つのガスの出口を含むことが分かる。

12)上記3)ないし5)及び図1ないし3の図示内容から、ハニカムセグメント2の互いに隣接する面に配される圧縮性弾性材料Aがシール性を有することで、ハニカムセグメント2ごとに(例えば、図1では、ハニカムセグメント2a、2bごとに、図2では、ハニカムセグメント2c、2d、2eごとに)独立した流体通路が画定される、すなわち、ハニカムセグメント2のそれぞれは独立した流体通路を画定するといえる。

13)上記3)ないし7)及び9)並びに図1ないし3、7、8の図示内容から、上記流体通路がハニカム構造体1の一端において金属容器11の内部で合わさり上記入口とつながり、また、上記流体通路がハニカム構造体1のもう一方の一端において金属容器11の内部で合わさり上記出口とつながるといえる。

2.引用発明
上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容からみて、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「内燃機関の排気系に用いられる触媒コンバーター装置であって、該装置は、
一つのガスの入口および一つのガスの出口を含む金属容器11と、
前記金属容器11内に配置されたハニカム構造体1を含み、前記ハニカム構造体1は、触媒能を有する金属を担持し、複数のハニカムセグメント2を具え、前記ハニカムセグメント2のそれぞれは独立した流体通路を画定し、前記流体通路は前記ハニカム構造体1の一端において前記金属容器11の内部で合わさり前記入口とつながっており、前記ハニカム構造体1のもう一方の一端において前記金属容器11の内部で合わさり前記出口とつながっており、アルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨張性のセラミック繊維製マットからなる圧縮弾性材料Aが前記ハニカムセグメント2の互いに隣接する面に配され、前記アルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨張性のセラミック繊維製マットからなる圧縮弾性材料Aはシール性を有する
装置。」


第5 対比・判断

1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「金属容器11」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「筐体」に相当し、以下同様に、「ハニカム構造体1」は「基体要素」に、「触媒能を有する金属」は「触媒材料」に、「アルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨張性のセラミック繊維製マットからなる圧縮弾性材料A」は「少なくとも1つの壁部」に、「前記ハニカムセグメント2の互いに隣接する面に配され」は「前記ゾーンをそれぞれ少なくとも部分的に仕切り」に、「シール性を有する」は「ゾーン間のガスの流れを通さない」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明においては、ハニカムセグメント2の互いに隣接する面に配されるシール性を有する圧縮性弾性材料Aによって、ハニカムセグメント2ごとに対応して流体通路が形成されるものである。一方、本願発明の「ゾーン」について、発明の詳細な説明の記載を参酌すると「ゾーン508はそれぞれが一体の基体要素からなるものとすることができる。」との記載がある(段落【0068】)。そうすると、引用発明の「ハニカムセグメント2」は、本願発明の「ゾーン」に相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「内燃機関の排気系に用いられる触媒コンバーター装置であって、該装置は、
一つのガスの入口および一つのガスの出口を含む筐体と、
前記筐体内に配置された基体要素を含み、前記基体要素は、触媒材料を担持し、複数のゾーンを具え、前記ゾーンのそれぞれは独立した流体通路を画定し、前記流体通路は前記基体要素の一端において前記筐体の内部で合わさり前記入口とつながっており、前記基体要素のもう一方の一端において前記筐体の内部で合わさり前記出口とつながっており、少なくとも一つの壁部が前記ゾーンをそれぞれ少なくとも部分的に仕切り、前記少なくとも一つの壁部は前記ゾーン間のガスの流れを通さない、
装置。」

[相違点]
「壁部」に関して、本願発明においては「前記ゾーンを互いに独立に昇温させるように前記ゾーン間の熱の流れを抑制するための断熱材を含」むものであるのに対して、引用発明においては「アルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨張性のセラミック繊維製マットからなる圧縮弾性材料A」であって、「ハニカムセグメント2を互いに独立に昇温させるように前記ハニカムセグメント2間の熱の流れを抑制するための断熱材を含」むのかが不明である点。

2.相違点についての判断(その1)
アルミナ、シリカ、アルミナシリカ(ムライト)などのセラミック繊維製のマット状の部材を断熱材として用いることは本願の優先日前から慣用的に行われていたことである(例えば、特開2000-220448号公報の段落【0004】、【0037】及び図1、特開平11-82006号公報の段落【0008】及び図1、特開平7-189679号公報の段落【0008】、【0015】及び図1を参照。)。
また、引用文献の段落【0023】には「圧縮弾性材料Aの好適な具体例は、3M社製/1100HTや三菱化学社製/マフテック等である。」と記載されており、段落【0026】及び【0027】には「・・・図3に示す本発明のハニカム構造体アッセンブリ8は、ハニカム構造体1の最外周面23に圧縮弾性材料Bを圧縮状態で配することによりハニカム構造体1を金属容器11に圧縮把持してなるものである。・・・本発明において圧縮弾性材料Bとしては、前述の圧縮弾性材料Aと同様に耐熱性及びクッション性を有することが好ましく、・・・具体的には前述の3M社製/1100HTや三菱化学社製/マフテック等を用いることが出来るが、膨脹性マットである3M社製/インタラムマット等を用いることもできる。」と記載されている。すなわち、圧縮弾性材料Aと圧縮弾性材料Bとを、同じ材料のものとすることが記載されている。
そして、触媒担持体の最外周面とその容器との間に配置する部材を断熱材とすることは、本願の優先日前から慣用的に行われていたことである(例えば、前述の特開2000-220448号公報の段落【0004】、【0037】及び図1、特開平11-82006号公報の段落【0008】及び図1、特開平7-189679号公報の段落【0008】、【0015】及び図1を参照。)。
このような技術常識からみて、引用発明の「アルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨張性のセラミック繊維製マットからなる圧縮弾性材料A」が断熱材であることは、当業者にとって自明の事項であるといえる。
さらに、引用文献の段落【0023】において圧縮弾性材料Aとして例示されている「三菱化学社製/マフテック」は、断熱材として用いられているものである(三菱ケミカル株式会社のホームページの中の「製品情報」→「アルミナ繊維/無機材料」→「結晶質アルミナ繊維MAFTEC_((R))」を参照されたい。URLは下記のとおり。)
https://www.m-chemical.co.jp/products/departments/mcc/maf-metal/product/1200576_7334.html
(冒頭の「MAFTEC_((R))」の説明には、「MAFTEC_((R))」は、「主に製鉄所などの炉内断熱材や、自動車の排ガスを浄化する触媒コンバータにおいて走行中の振動や衝撃からセラミック触媒担体を守る把持材(サポート材)として、長年に亘り世界中で実績を有しております。」との記載がある。また、ラインナップ「MAFTEC_((R)) Blanket」の代表物性の表には、グレードMLSの用途として「耐火断熱材」が記載されており、グレードMLS-2の用途として「把持材」が記載されており、熱伝導率はグレードMLSもMLS-2もほぼ同じである。)
この点からも、引用発明の「アルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨張性のセラミック繊維製マットからなる圧縮弾性材料A」は断熱材であるといえる。
そして、引用発明の「アルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨張性のセラミック繊維製マットからなる圧縮弾性材料A」が断熱材であるならば、当該圧縮弾性材料Aには、それによって仕切られるハニカムセグメント2を互いに独立に昇温させるようにハニカムセグメント2間の熱の流れを抑制するという作用効果があることも自明である。
そうすると、上記相違点は実質的なものではなく、本願発明は、引用発明と差異がない。
よって、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3.相違点についての判断(その2)
アルミナ、シリカ、アルミナシリカ(ムライト)などのセラミック繊維製のマット状の部材を断熱材として用いることは前述のとおり慣用技術である。
また、引用文献の段落【0023】、【0026】及び【0027】には前述のとおり、圧縮弾性材料Aと圧縮弾性材料Bとを、同じ材料のものとすることが記載されている。
そして、触媒担持体の最外周面とその容器との間に断熱材を配置することは、前述のとおり慣用技術である。
そうしてみると、引用発明において、「アルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨張性のセラミック繊維製マットからなる圧縮弾性材料A」を断熱材とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。
そして、引用発明において「アルミナ又はムライト組成を主成分とする非膨張性のセラミック繊維製マットからなる圧縮弾性材料A」を断熱材とした場合、当該圧縮弾性材料には、それによって仕切られるハニカムセグメントを互いに独立に昇温させるようにハニカムセグメント間の熱の流れを抑制するという作用効果を奏することは自明である。
よって、引用発明及び慣用技術に基づいて、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、本願発明は、引用発明及び慣用技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

請求人は「引用文献1の発明では、中心部の温度上昇の抑制及び外周部を高温に保つことにより構造体内の温度分布を均一にすることで、ハニカム構造体内のクラック発生を抑制するという作用効果が生じる。よって、・・・引用文献1において、本願発明1のような、『ゾーンを互いに独立に昇温させるようにゾーン間の熱の流れを抑制するための断熱材を含む壁部』を用いることには阻害事由があるというべきである。換言すれば、引用文献1の発明は、ハニカム構造体の内側と外側とで、ハニカムセグメントの壁厚を異ならせることで温度分布を均一にして熱応力に対する耐久性を改良できるということを骨子とするものであるので、各セグメント間の接合剤や圧縮弾性材料には熱の移動性に実質的影響を与えない(熱伝導率が高く、断熱作用が低い)材料のものを採用しようとするのが当然で、本願発明1のように『断熱材を含む壁部』のようなものを採用することはあり得ない。」と主張している(審判請求書第7ページ第18行?第8ページ第2行)。
しかしながら、引用文献には「【0015】 本発明の重要な特徴は、図1(b)、(c)に示されるように、最外周面23を構成しないハニカムセグメント2aの平均壁厚(図1(b)参照)が、最外周面を構成するハニカムセグメント2bの平均壁厚(図1(c)参照)よりも厚いことである。本発明において平均壁厚とは、ハニカムセグメントの外周壁を含めない隔壁6の平均の厚さを意味する。この様な構成にしたことにより、本発明のハニカム構造体は、壁厚の厚い中心部の反応速度を低く抑えられるので、構造体内最大温度は低くくなり、壁厚の薄い外側構造体の温度は高くなる結果、十分な反応率、浄化効率、再生効率を保持しながら、構造体全体の温度分布を小さくできる。従って、本発明のハニカム構造体は反応率、浄化効率、再生効率等の効率を高く保ちつつ熱応力破壊に対する改良された耐久性を示すものとなる。」(段落【0015】)と記載されているように、最外周面23を構成しないハニカムセグメント2aの壁厚を厚くして中心部の反応速度を低く抑えることで、構造体内最大温度を低くし、最外周面23を構成するハニカムセグメント2bの壁厚を薄くして外側構造体の温度が高くなるようにすることで、構造体全体の温度分布を小さくしているのであって、高温の部位から低温の部位への熱の移動を促進することで全体の温度分布を小さくしているのではないから、引用発明において、ハニカムセグメント2間に断熱材を用いることに阻害事由はない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

したがって、本願発明は、引用発明及び慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用文献に記載された発明及び慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-06-12 
結審通知日 2018-06-13 
審決日 2018-06-26 
出願番号 特願2015-196722(P2015-196722)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 粟倉 裕二
鈴木 充
発明の名称 触媒コンバーター装置  
代理人 木下 洋平  
代理人 亀卦川 巧  
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