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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F25D
管理番号 1345801
審判番号 不服2017-18452  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-12 
確定日 2018-11-27 
事件の表示 特願2013-141609号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月22日出願公開、特開2015- 14427号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月5日の出願であって、平成29年2月10日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年4月14日付け手続補正書により手続補正がされ、平成29年9月6日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年12月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年4月25日に審判請求人から上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1-4、6-7に基いて、また、本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献1-7に基いて、それぞれ、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開平11-211339号公報
2.特開2003-075046号公報
3.実願昭59-009190号(実開昭60-123588号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
4.特開平08-189754号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2000-165061号公報(周知技術を示す文献)
6.実願昭50-111028号(実開昭52-025376号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
7.特開2000-018800号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成29年12月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、
この冷蔵庫本体に設けられた冷却器収容部と、
この冷却器収容部に配設された冷却器と、
この冷却器の下方に当該冷却器の除霜時の除霜水を受けるように設けられた樋と、
前記冷却器を前記貯蔵室側から覆うように設けられた冷却器カバーと、
この冷却器カバーの裏面側の周縁部に設けられ下部が前記樋の外面に接触するシール部材と、
前記冷却器カバーの下部を前記冷蔵庫本体に固定する固定手段と、を備え、
前記固定手段により前記冷却器カバーの下部を前記冷蔵庫本体に固定することにより前記冷却器カバーの下部と前記樋とで前記シール部材を挟んで圧縮する構成とし、
前記冷却器カバーの下部と前記樋との間で圧縮される部分の前記シール部材の上端部は、当該シール部材と対応する前記樋の上端部とほぼ同位置である構成とし、
さらに、前記冷却器カバーに、前記樋の上面開口部まで突出する水切りリブを設けたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記シール部材は、水分を吸収し難いものであることを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】 断熱箱体内の下部に、断熱仕切壁により上部貯蔵室と仕切られた冷凍室を設けるようにしたものであって、
前記断熱箱体内の奥壁面側に前記断熱仕切壁の上下に跨がる高さに位置して設けられた冷却器と、
前記断熱箱体の奥壁面側に設けられ、前記冷却器からの冷気を冷気供給ダクトを通して各室に供給し、前記上部貯蔵室からの空気を前記冷却器の側方に設けられたリターンダクトを通して該冷却器の下部に戻すための冷気流通機構と、
前記冷却器の下方に設けられ除霜運転時の除霜水を受ける排水樋と、
前面に下部中央部に位置する吸込口とその上部に位置する冷気吹出口とを有し、下部が前記排水樋の前部に突当てられるように設けられて前記冷凍室内の奥壁面を構成すると共に、裏面側が仕切部により上下に仕切られることにより、前記冷気吹出口を冷気供給ダクトに連通させる空間及び前記吸込口を前記リターンダクトの下端部と共に前記冷却器の下部に連通させるように側方に延びる吸込通路を形成する前カバーとを具備し、
前記前カバーの裏面には、前記仕切部の下方部に位置して、該前カバーの裏面における着霜や結露によって生ずる水を後方に案内して前記排水樋へ落とすための案内板部が設けられていることを特徴とする冷蔵庫。」(下線は、当審で付与したものである。以下同様である。)
「【0002】
【発明が解決しようとする課題】・・・野菜室と冷凍室とを上下に仕切っている断熱仕切壁の上下に跨がる高さに位置して、冷却器やその周辺構成部品を設けなければならない事情が生じていた。」(当審注」「・・・」は省略を意味する。以下同様である。)
「【0004】このものは、内箱に断熱仕切壁を予め取付けておいた状態で、断熱箱体の形成(発泡断熱材の現場発泡)を行い、断熱仕切壁の両側縁部を内箱に強固に密着固定するようにしている。そして、断熱仕切壁の後部に確保された組付空間部に対し、冷却器を配設すると共に、ファン装置を取付けたエバカバーと、熱絶縁材等からなるダンパカバーにダンパ装置を組込んだダンパユニットとを上方から嵌込むように取付け、その後、冷気吹出口及び吸込口を有し、冷凍室の奥壁面を形成する前カバーを、冷凍室の前方から取付けるものである。
【0005】このとき、前カバーは、前記冷却器の下方部に設けられた排水樋の前部に突当てられてねじ止めされ、これと共に、その排水樋や、内箱、エバカバーとの接触部にエアシール用のソフトテープが貼付けられるようになっている。そして、前カバーの裏面側部分は、仕切部によりほぼ上下に仕切られ、その上部の冷気吹出口側が、前記エバカバーの前面部に形成される冷気供給ダクトに連通され、仕切部の下部の吸込口側が、前カバーの裏面側の側部に形成されたリターンダクトを介して冷却器の下部に連通されるようになっている。
【0006】ところで、上記前カバーにおいては、その裏面のうち吸込口側のリターンダクトに連通する部分(仕切壁の下部部分)に、比較的温度が高く湿気を含んだ空気が流通することになるが、冷凍室内との間の温度差により、前カバーの裏面にて結露,氷結(着霜)が生ずる事情がある。このため、冷却器の除霜運転時に、解けた水が、前カバーと排水樋との間のエアシール部分に溜まったり、溜まった水が吸込口部分を通って冷凍室内に流れ落ちる虞があった。
【0007】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、いわゆるボトムフリーザタイプのものにあって、冷凍室の奥壁面を形成する前カバーの裏面における結露,氷結による水が吸込口を通って冷凍室内に流れ落ちることを極力防止することができる冷蔵庫を提供するにある。」
「【0010】ここで、前記前カバーにおいては、その裏面のうち仕切部の下方部の吸込通路を形成する部分にて結露,氷結(着霜)が生ずる事情があり、冷却器の除霜運転時に、その水が解けて流れるようになるが、その水は、案内板部によって後方に案内され、前カバーと排水樋との間のエアシール部分に溜まったり吸込口部分を通って冷凍室内に流れ落ちることなく、排水樋に落とされるようになる。」
「【0016】これによれば、前カバーにおいて、結露,氷結(着霜)が生じやすい部分に、熱絶縁材を設けたので、結露,着霜を極力防止することができ、しかも、その熱絶縁材の背面に水切板が設けられているので、多少の結露,着霜があっても、それが解けた水は、水切板によって排水樋に落とされるようになる。」
「【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明のいくつかの実施例について図面を参照しながら説明する。
(1)第1の実施例
まず、図1ないし図8を参照して、本発明の第1の実施例(請求項1に対応)について述べる。
【0018】図5及び図6は、本実施例に係るボトムフリーザタイプの冷蔵庫の本体1の構成を概略的に示している。ここで、本体1は、前面が開口した縦長矩形箱状の断熱箱体2内に、上下3段に貯蔵室を有して構成されている。前記断熱箱体2は、周知のように、プラスチック製の内箱3と鋼板製の外箱4との間に、ウレタンフォーム等の発泡断熱材5をいわゆる現場発泡方式で充填して構成されている。
【0019】この本体1内に構成される3つの貯蔵室は、上から順に、冷蔵室6、野菜室7、冷凍室8とされており、そのうち冷蔵室6が最も大きい容積(高さ方向寸法)を有して構成されている。この場合、前記冷蔵室6及び野菜室7は、共に例えば約3℃の温度帯とされ、それら両室の間は、仕切板9により上下に区画されている。前記冷蔵室6内は、棚板10により上下複数段に仕切られるようになっており、その最下段にチルド・パーシャル室11が設けられている。また、冷蔵室6の奥壁部には、前記野菜室7の上端部にまで跨がるようにダクト形成部材12が設けられている。このダクト形成部材12は、内箱3との間に上部冷気供給ダクト13を形成するように設けられ、複数の吹出口12aから冷蔵室6及び野菜室7内に冷気を供給するようになっている。」
「【0021】そして、前記冷凍室8は、例えば約-18℃の温度帯とされるようになっており、前記野菜室7とこの冷凍室8との間は、図7にも示すように、断熱仕切壁16により上下に仕切られている。この断熱仕切壁16は、ほぼ薄形矩形箱状をなすプラスチック製の外殻体16a内に、発泡スチロール等の断熱材16bを設けて構成されている。また、断熱仕切壁16の前端部には、内部に防露パイプ等が配設される仕切カバー17が取付けられるようになっている。」
「【0024】図8に示すように、この排水樋24は、除霜運転時の除霜水を受けるためのもので、横長の矩形容器状をなし、その底部の出口部24aが、排水口25(図5参照)に接続されている。この排水口25は、前記傾斜状断熱壁23を貫通し、その下端部が前記機械室20内の除霜水蒸発皿22の上方に位置されている。そして、図8に示すように、この排水樋24の前面部には、3箇所に位置して、後述する前カバーを取付けるためのねじ止めボス部24bが一体に形成されている。また、この排水樋24内には、前記冷却器18の真下に位置される除霜用ヒータ26が配設されている。」
「【0027】前記冷気流通機構33は、前記冷却器18の前面を覆うように配置されると共にファン装置34が取付けられるエバカバー35や、そのエバカバー35の上半部の前面側に設けられ内部にダンパ装置36が組込まれると共に前記野菜室の奥壁を構成するダンパユニット37を備えて構成されている。そして、前記エバカバー35の下半部の前面側に位置して、前記冷凍室8の奥壁面を構成する前カバー38が設けられるようになっている。」
「【0034】さて、前記前カバー38について、図1ないし図4も参照して述べる。図5等に示すように、この前カバー38は、プラスチックからなり、冷凍室8の奥壁面を構成するほぼ矩形状の主板部38aと、その主板部38aの側縁部から後方に折曲がる側壁部38bとを一体に有している。この前カバー38は、前記エバカバー35の下半部のやや前方に位置して、前記断熱仕切壁16の後端部下面部と、前記排水樋24の前面との間に上下にかけ渡される形態で取付けられるようになっている。」
「【0035】このとき、図7及び図1に示すように、この前カバー38(主板部38a)の下辺部には、3箇所に位置して前方に突出する(裏面側で凹となる)ボス部38cが設けられており、これらボス部38cが、前記排水樋24のねじボス部24bに夫々嵌挿された形態で、前面側からねじ止めされることにより、前カバー38が取付けられるようになっている。また、図1,図7に示すように、前記主板部38aの右側部下部には、前記リターンダクト19の下端部と排水樋24との間の隙間部分の前面を塞ぐ延出部38dが一体に設けられている。」
「【0040】尚、この前カバー38を取付けるに際しては、その裏面側には、上縁部及び吸込口44の下端部を除く周縁部、及び、仕切壁47の後端部にソフトテープ等のシール材49(図2?図4に一部のみ図示)が設けられ、断熱箱体2(内箱3)やエバカバー35、排水樋24の前面との間のエアシールがなされるようになっている。
【0041】そして、前カバー38の裏面には、図1に示すように、前記仕切壁47の下方部のうち吸込口44の左右部に夫々位置して、後方へ突出するリブ状の案内板部50,50が一体に設けられている。これら案内板部50は、中央側(吸込口44側)に向けて緩やかに傾斜するように横方向に延び、図3,図4にも示すように、その中央側の端部から上方に延びる縦壁部50aを一体に有して構成されている。また、図2に示すように、この案内板部50の後方への突出長さは、仕切壁47よりもやや短く構成されている。後の作用説明にて述べるように、この案内板部50は、前カバ38ーの裏面における着霜や結露によって生ずる水を後方に案内して前記排水樋24内に確実に落とす機能を有している。尚、このとき、吸込口44部分においては昇華が行われるため、水滴となることはない。」
「【0049】ところが、本実施例では、図2に示すように、前カバー38の裏面の結露,着霜する部分の下方部に、案内板部50が設けられているので、解けた水は、案内板部50によって後方に案内され、排水樋24の前端部ではなくそれよりも後方にて落下するようになる。これにて、その水はエアシール部分に落ちることはなく確実に排水樋24内に落下することになり、冷却器18の除霜水と共に排出されるようになるのである。また、案内板部50の中央側端部に縦壁部50aが設けられているので、解けた水が、中央側に流れてそのまま吸込口44部分に落下することも未然に防止することができるのである。」
「図2


「図5



また、排水樋(24)と前カバー(38)とをエアシール(【0040】)するためには、シール材(49)の挟持部は圧縮されることが技術常識であり、他方、該シール材(49)について、図2を参照すると、シール材(49)の上端部が圧縮されていない態様で挟持されていることが看取できる。

したがって、上記記載事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「断熱箱体内の下部に、断熱仕切壁により上部貯蔵室と仕切られた冷凍室を設けるようにした冷蔵庫本体と、
前記断熱箱体内の奥壁面側に前記断熱仕切壁の上下に跨がる高さに位置して設けられた冷却器と、
前記断熱箱体の奥壁面側に設けられ、前記冷却器からの冷気を冷気供給ダクトを通して各室に供給し、前記上部貯蔵室からの空気を前記冷却器の側方に設けられたリターンダクトを通して該冷却器の下部に戻すための冷気流通機構と、
前記冷却器の下方に設けられ除霜運転時の除霜水を受ける排水樋と、
前面に下部中央部に位置する吸込口とその上部に位置する冷気吹出口とを有し、下部が前記排水樋の前部に突当てられるように設けられて前記冷凍室内の奥壁面を構成すると共に、裏面側が仕切部により上下に仕切られることにより、前記冷気吹出口を冷気供給ダクトに連通させる空間及び前記吸込口を前記リターンダクトの下端部と共に前記冷却器の下部に連通させるように側方に延びる吸込通路を形成する前カバーとを具備し、
前記前カバーは、前記断熱仕切壁の後端部下面部と、前記排水樋の前面との間に上下にかけ渡される形態で取付けられ、前記冷却器の下方部に設けられた前記排水樋の前部に突当てられてねじ止めされ、これと共に、前記排水樋や、内箱、エバカバーとの接触部にエアシール用のソフトテープ等のシール材が貼付けられるようになっていて、
前記排水樋と前記前カバーとの間に、前記シール材の下方側部が圧縮され、前記シール材の上端部が圧縮されていない態様で挟持されていて、
前記前カバーの裏面には、前記仕切部の下方部に位置して、該前カバーの裏面における着霜や結露によって生ずる水を後方に案内して前記排水樋へ落とすための案内板部が設けられている、
冷蔵庫。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 内箱と、該内箱内に設けられた食品収納室と、該食品収納室と前記内箱との間に設けられ、冷却器を収納する冷却器収納室と、前記食品収納室と前記冷却器収納室とを仕切るファングリルとを有し、前記ファングリルに断熱体を収納したものを前記冷却器を介在させた状態で前記内箱に接合するようにし、その接合部分を、一方を凸形状、他方を凹形状としたことを特徴とする冷蔵庫。」
「【請求項7】 前記接合部分にシール材を介在させたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の冷蔵庫。」
「【0021】この冷却器収納室7を組み立てる際には、図2に示すように、外箱2と内箱3との間に断熱体4を充填した冷蔵庫本体5内に、冷却器12と霜取ヒータ14を配置し、続いて図3に示すように、ファングリル11内に、断熱体18と、送風機13が取り付けられたベルマウス16とを収納して組み立て体を構成するとともに、この組み立て体における凹形状24(図1参照)を、内箱3において冷却器12の左右に位置する部分に形成された凸形状21に嵌合する。そして、ファングリル11の左右から外方に延出するリブ11aに設けられた取付孔11bにネジ25を通し、内箱3に固定することで組み立てを行う。」

3.その他の文献について
また、拒絶理由通知において、周知技術を示す文献として引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
「〔考案の背景〕
この種冷蔵庫の背面シール構造は第2図に示すようなものがある。1は内箱で、2はアトイタである。4は内箱1とアトイタ2の間に充填した断熱材3の中に、内箱1とアトイタ2の間を貫通する空間を設けるべく設置した収納ケースであり、庫内側に設置した蒸発器(図示せず)に接続する配管6を収納する空間を有している。7は前記配管6を収納した空間を庫外の空気と遮断すべく、収納ケース4背面側開口部を閉塞する断熱蓋体で、挿入部7a全周には前記収納ケース内壁4a全周に当接する弾力性を有したシール材8を取付けている。
該シール材8は前記した如く、収納ケース4に収納した配管6を庫外の空気から遮断すべく設けられている。9は前記シール材8同様、配管6を庫外の空気から遮断する目的で、断熱蓋体7のツバ部7b全周に配設したひも状シール材(パテ)であり、断熱蓋体7のツバ部7bとアトイタ2の間で圧押して取付けられる。10はカバーであり、断熱蓋体7を覆うべく取付けられている。
本構造に於ては、収納ケース内壁4a部と断熱蓋体挿入部7a間でシール材8を圧縮させて庫外の空気を遮断する構造である為、シール材8の圧縮代が少ない場合は、収納ケース4の発泡時の発泡圧力による変形代を吸収できずシールが完全にできず、又、圧縮代を多く取りすぎた場合は、断熱蓋体7挿入時、シール材8が収納ケース4開口部端面に引掛り、取付作業性が悪くなるなど、シ-ル性と作業性の相反した要素を満足する圧縮代(シール寸法)を得ることは非常に困難であった。」(2?3ページ)
同じく引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【0027】・・・排水パイプ12のフランジ部周囲に独立気泡で形成されたシールテープ17が設けられ、水受け部21の底部21aの裏側に押圧して設置されている。排水パイプ12は断熱材16を貫通して下方に延設されている。
【0028】次に動作について説明する。冷却器9から滴下した除霜水は露受け皿20に落下し、排水筒20aに集まって排水パイプ12を通り冷蔵庫の下方に設けられた蒸発皿13に流れる。発泡スチロールにより成形された断熱材16は、その表面を水受け部21を一体に成形した内箱3で覆われているので、除霜水は直接断熱材16に接触することはない。また、排水用筒20aより流れ出る除霜水は表面張力や毛細管作用によって水受け部21の底部21aを伝わって断熱材16の方向へ流れることがあるが、排水用筒20aの先端が水受け部21の凹部21bの孔21cを貫通し、凹部21bの面より下方へ突出しているため水切りが良く、さらに水受け部21の凹部21bの底部中央は段差をもってさらに低く形成されているので二重の水切り構造となり、除霜水の回り込みによる断熱材16への水の付着はなくなる。
【0029】また、排水パイプ12の先端に配設されたシーリングテープ17が水受け部21の底部21aに排水パイプ12で押圧してシールしているので、冷蔵庫外部から排水パイプ12の開口部を通って進入する暖かい湿った外気が水受け部21の底部21aに接触して結露しても、断熱材まで水は染み込むことはない。」
同じく引用文献5には、次の事項が記載されている。
「【0027】図8(A)は、上記のようにして電線群Dを挿通したグロメット10の小径筒部10aの軸線方向断面図であり、グロメット10の線間止水構造を示している。小径筒部10aの内径は前述したように、電線群Dの径以下であるため、小径筒部10aは発泡シート11を圧縮して、発泡シート11及び小径筒部10aの内壁との間の隙間を残存しないようにしている。また、小径筒部10aの三箇所の突起10dでは、特に、密嵌が強くなり、密閉性をより高めている。
【0028】また、図8(B)は、突起10dにおけるグロメット10の小径筒部10aの軸直角方向断面図である。発泡シート11は強く圧縮されて、発泡シート11の多数の独立気泡11aを確実に押しつぶし、発泡シート11同士の隙間等も密着されると共に、夫々電線間等や電線と小径筒部10a内壁との間等のあらゆる隙間に、発泡シート11は変形して入り込んでいる。上記のような線間止水構造を有することで、グロメット10における止水性を高めることができる。
【0029】また、三箇所の突起10d以外の箇所で、圧縮が不足することにより独立気泡11aが完全に押しつぶされなくても、各気泡は連通していないため、毛細管現象が生じることもない。同様に、圧縮不足により発泡シート11と小径筒部10aの内壁等との隙間が完全に密閉されなくても、突起10dを設けた箇所で確実に密閉されているので、浸水を突起10dの設置箇所で止めることができる。」
さらに、拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献6には、次の事項が記載されている。
「5はとい(樋)で、冷凍室内箱背面下部に8の可撓性パツキンを介して9のネジで固着されている。」(2ページ)



同じく、引用文献7には、次の事項が記載されている。
「【0059】蒸発皿110の前壁130には、三角形状のヒレ部134が設けられている。このヒレ部134は、機械室48の傾斜した壁132に対応しており、蒸発皿110を配した場合には、図9に示すように、ヒレ部134と前壁132との間にシール部材136を配して熱風が漏れないようにしておく。」
「図9



第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「上部貯蔵室」、「冷凍室」は本願発明1の「貯蔵室」に相当し、以下同様に、
「冷蔵庫本体」は「冷蔵庫本体」に、
「冷却器」は「冷却器」に、
「排水樋」は「樋」に、
「前カバー」は「冷却器カバー」に、
「シール材」は「シール部材」に、
「ねじ」は「固定手段」に、
「案内板部」は「水切りリブ」に、
「冷蔵庫」は「冷蔵庫」に、それぞれ相当する。
引用発明の「前記断熱箱体内の奥壁面側に前記断熱仕切壁の上下に跨がる高さに位置して設けられた冷却器と、
前記断熱箱体の奥壁面側に設けられ、前記冷却器からの冷気を冷気供給ダクトを通して各室に供給し、前記上部貯蔵室からの空気を前記冷却器の側方に設けられたリターンダクトを通して該冷却器の下部に戻すための冷気流通機構と」を備えることは、冷却器を収容する部分を有して、冷却器を配設するものであることは明らかであるから、本願発明1の「この冷蔵庫本体に設けられた冷却器収容部と、この冷却器収容部に配設された冷却器と」を備えることに相当する。
引用発明の「前面に下部中央部に位置する吸込口とその上部に位置する冷気吹出口とを有し、下部が前記排水樋の前部に突当てられるように設けられて前記冷凍室内の奥壁面を構成すると共に、裏面側が仕切部により上下に仕切られることにより、前記冷気吹出口を冷気供給ダクトに連通させる空間及び前記吸込口を前記リターンダクトの下端部と共に前記冷却器の下部に連通させるように側方に延びる吸込通路を形成する前カバー」は、引用文献1の図5でみて、前カバー38が貯蔵室側から冷却器18を覆うように設けられているといえるから、本願発明1の「前記冷却器を前記貯蔵室側から覆うように設けられた冷却器カバー」に相当する。
引用発明の「前カバー」が「前記排水樋や、内箱、エバカバーとの接触部にエアシール用のソフトテープ等のシール材が貼付けられるようになってい」る態様は、引用文献1の図2でみて、前カバー38の下方に設けられているシール材49の下部が排水樋24の外面に接触しているので、本願発明1の「この冷却器カバーの裏面側の周縁部に設けられ下部が前記樋の外面に接触するシール部材」を備える態様に相当する。
そして、引用発明の「前記前カバーは、前記断熱仕切壁の後端部下面部と、前記排水樋の前面との間に上下にかけ渡される形態で取付けられ、前記冷却器の下方部に設けられた前記排水樋の前部に突当てられてねじ止めされ」ている態様は、断熱仕切壁を含む冷蔵庫本体に前カバーの下部が固定されているともいい得るから、本願発明1の「固定手段」が「前記冷却器カバーの下部を前記冷蔵庫本体に固定する」態様に相当する。
そうすると、引用発明の「前記排水樋と前記前カバーとの間に、前記シール材の下方側部が圧縮され」た構成は、本願発明1の「前記固定手段により前記冷却器カバーの下部を前記冷蔵庫本体に固定することにより前記冷却器カバーの下部と前記樋とで前記シール部材を挟んで圧縮する構成」に相当する。
また、引用発明の「前記排水樋と前記前カバーとの間に、前記シール材の下方側部が圧縮され、前記シール材の上端部が圧縮されていない態様で挟持されてい」ることは、引用文献1の図2でみて、シール材49が前カバー38と排水樋24で挟持されて圧縮されている部分が排水樋24の上端部とほぼ同位置であることから、本願発明1の「前記冷却器カバーの下部と前記樋との間で圧縮される部分の前記シール部材の上端部は、当該シール部材と対応する前記樋の上端部とほぼ同位置である構成とし」ていることと、「シール部材が前記冷却器カバーの下部と前記樋との間で圧縮される部分は、当該シール部材と対応する前記樋の上端部とほぼ同位置である構成」を有している限りで一致している。
さらに、引用発明の「前記前カバーの裏面には、前記仕切部の下方部に位置して、該前カバーの裏面における着霜や結露によって生ずる水を後方に案内して前記排水樋へ落とすための案内板部が設けられている」ことは、引用文献1の図2でみて、案内板部50が排水樋24の上面開口部まで突出しているから、本願発明1の「前記冷却器カバーに、前記樋の上面開口部まで突出する水切りリブを設けたこと」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、
この冷蔵庫本体に設けられた冷却器収容部と、
この冷却器収容部に配設された冷却器と、
この冷却器の下方に当該冷却器の除霜時の除霜水を受けるように設けられた樋と、
前記冷却器を前記貯蔵室側から覆うように設けられた冷却器カバーと、
この冷却器カバーの裏面側の周縁部に設けられ下部が前記樋の外面に接触するシール部材と、
前記冷却器カバーの下部を前記冷蔵庫に固定する固定手段と、を備え、
前記固定手段により前記冷却器カバーの下部を前記冷蔵庫本体に固定することにより前記冷却器カバーの下部と前記樋とで前記シール部材を挟んで圧縮する構成とし、
前記シール部材が前記冷却器カバーの下部と前記樋との間で圧縮される部分は、当該シール部材と対応する前記樋の上端部とほぼ同位置である構成とし、
さらに、前記冷却器カバーに、前記樋の上面開口部まで突出する水切りリブを設けた、冷蔵庫。」

(相違点)
シール部材が冷却器カバーの下部と樋との間で圧縮される部分は、当該シール部材と対応する前記樋の上端部とほぼ同位置である構成について、本願発明1は、「前記冷却器カバーの下部と前記樋との間で圧縮される部分の前記シール部材の上端部は、当該シール部材と対応する前記樋の上端部とほぼ同位置である構成」を備えるとしているのに対し、引用発明は、「前記排水樋と前記前カバーとの間に、前記シール材の下方側部が圧縮され、前記シール材の上端部が圧縮されていない態様で挟持されてい」るとしている点。

(2)相違点についての判断
相違点に係る本願発明1の「前記冷却器カバーの下部と前記樋との間で圧縮される部分の前記シール部材の上端部」との特定は、本願発明1のシール部材の上端部は、冷却器のカバーと樋とで挟まれて圧縮されている態様を特定しているものと認められる。そして、本願発明1は、そのような「前記シール部材の上端部」が「当該シール部材と対応する前記樋の上端部とほぼ同位置である構成と」するものである。
一方、引用発明において、シール材は、シール材の下方側部は挟持されて圧縮されるものの、シール材の上端部は圧縮されないものであり、引用文献2?5をみても、前カバーと排水樋とに挟持されるシール材及びシール材の上端部と排水樋の上端部との配置態様についての記載はない。
また、周知例として示された引用文献6には、樋を冷凍室内箱背面下部に可撓性パッキンを介してネジで固着する態様が開示されているが、引用文献6の第4図は寸法等の付与された精緻な図面ではなく、同図の記載を併せてみても、その詳細は不明であるというべきであるから、引用発明の圧縮されてないシール材の上端部を極めて小さくしたり、除去するなどの記載ないし示唆があるとはいえない。
この点については、引用文献7も同様である。
加えて、引用発明は、「【0006】ところで、上記前カバーにおいては、その裏面のうち吸込口側のリターンダクトに連通する部分(仕切壁の下部部分)に、比較的温度が高く湿気を含んだ空気が流通することになるが、冷凍室内との間の温度差により、前カバーの裏面にて結露,氷結(着霜)が生ずる事情がある。このため、冷却器の除霜運転時に、解けた水が、前カバーと排水樋との間のエアシール部分に溜まったり、溜まった水が吸込口部分を通って冷凍室内に流れ落ちる虞があった。」という課題を解決するために、「案内板部」を設けることをその主要な構成としている(引用文献1:「【0010】ここで、前記前カバーにおいては、その裏面のうち仕切部の下方部の吸込通路を形成する部分にて結露,氷結(着霜)が生ずる事情があり、冷却器の除霜運転時に、その水が解けて流れるようになるが、その水は、案内板部によって後方に案内され、前カバーと排水樋との間のエアシール部分に溜まったり吸込口部分を通って冷凍室内に流れ落ちることなく、排水樋に落とされるようになる。」参照。)。
そうすると、引用発明において、シール材の上端部と排水樋の上端部との配置関係に着目する動機付けも特段認めることができない。
以上のとおりであるから、引用発明において、排水樋と前カバーとの間に、シール材が、シール材の上端部を圧縮していない態様で挟持されているものを、シール材の上端部を圧縮させて、その上端部を当該シール材と対応する前記排水樋の上端部とほぼ同位置である構成とすることを、当業者が容易
に想到し得たということはできない。
そして、本願発明1は、当該構成を採用することにより、「本願発明によれば、冷却器カバーと樋との間に、シール部材の上端部を底部とする溝が形成されない構成、あるいは、溝が形成されたとしてもその深さが僅かとなる構成」とし、「シール部材を冷却器カバーの下部と樋との間で挟圧してシール性の向上を図りつつ、そのシール部材の大きさを『溝が形成されない程度の最小限の大きさ』に抑えることができ、シール部材の使用量を抑えることができ、製造コストの抑制を図ることができます。」(平成29年4月14日意見書「3-2」参照。)との効果を奏し、ひいては、「冷却器カバーの裏面側の周縁部にシール部材を設けたものにおいて、冷却器カバーの下部から庫内側への落水を防止できる冷蔵庫を提供する。」(【0004】)との課題を解決するものと認められる。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4、6、7に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、上記相違点に係る本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?7に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
理由2(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1及び2は、「前記冷却器カバーの下部と前記樋との間で圧縮される部分」について、「前記シール部材の上端部は、当該シール部材と対応する前記樋の上端部とほぼ同位置である構成」を備えるという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?7に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-12 
出願番号 特願2013-141609(P2013-141609)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F25D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 庭月野 恭  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 窪田 治彦
山崎 勝司
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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