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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G02B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02B 審判 全部申し立て 2項進歩性 G02B |
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管理番号 | 1345833 |
異議申立番号 | 異議2018-700038 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-01-18 |
確定日 | 2018-09-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6164117号発明「液晶配向剤、位相差フィルム及び位相差フィルムの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6164117号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6164117号の請求項2、3、5-11に係る特許を維持する。 特許第6164117号の請求項1,4についての異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6164117号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成26年2月25日(優先権主張 平成25年6月18日)に特許出願され、平成29年6月30日にその特許権の設定登録がされ、平成29年7月19日に特許公報が発行され、その後、その特許について、平成30年1月18日に特許異議申立人 西あけみにより特許異議の申立てがされ、平成30年4月6日付けで取消理由が通知され、平成30年6月8日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正」という。)がなされたものである。 なお、平成30年6月25日付けで、特許異議申立人に対し、訂正請求があった旨の通知を送付したが、発送の日から30日以内に特許異議申立人からの意見書の提出はなされなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の趣旨 本件訂正の請求の趣旨は、「特許第6164117号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?11について訂正することを求める。」というものである。 2 本件訂正請求について 本件訂正前の請求項1?10について、請求項2?10は請求項1を引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 3 訂正の内容 本件訂正の訂正事項は以下のとおりである。なお、合議体において、訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記重合体成分として、前記繰り返し単位(a)を有する重合体[A]と、前記繰り返し単位(b)及び前記繰り返し単位(c)を有する重合体[B]と、を含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。」と記載されているのを、「重合体成分として、光配向性基を有する繰り返し単位(a)を有する重合体[A]と、テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有する繰り返し単位(b)、並びにオキセタニル基及びオキシラニル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する繰り返し単位(c)を有する重合体[B]と、を含有する、ポリ(メタ)アクリレート基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3、5、6、8?10についても同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に、「前記繰り返し単位(a)、前記繰り返し単位(b)及び前記繰り返し単位(c)よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体は、ポリオルガノシロキサン及び(メタ)アクリル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。」と記載されているのを、「前記重合体[A]及び前記重合体[B]は、ポリオルガノシロキサン及び(メタ)アクリル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項2又は3に記載の液晶配向剤。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6、8?10についても同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1?5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。」と記載されているのを、「請求項2、3及び5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項8?10についても同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に「(メタ)アクリレート化合物[E]を更に含有する、請求項1?6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。」と記載されているのを、「トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、又はポリカーボネートからなる合成樹脂基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、 重合体成分として、光配向性基を有する繰り返し単位(a)を有する重合体[A]と、テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有する繰り返し単位(b)、並びにオキセタニル基及びオキシラニル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する繰り返し単位(c)を有する重合体[B]と、を含有し、 (メタ)アクリレート化合物[E]を更に含有する、液晶配向剤。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項11についても同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれか一項に記載の液晶配向剤。」と記載されているのを、「請求項2、3、5及び6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9及び10についても同様に訂正する。)。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、」と記載されているのを、「請求項2、3、5、6及び8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する位相差フィルム。」と記載されているのを、「請求項2、3,5、6及び8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する位相差フィルム。」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する位相差フィルム。」と記載されているのを、「請求項7に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する位相差フィルム。」に訂正し、新たに請求項11とする。 4 訂正の目的の適否 (1)訂正事項1及び訂正事項3 訂正事項1及び訂正事項3による訂正は、請求項を削除するもの、すなわち特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (2)訂正事項2 訂正事項2による訂正は、請求項間の引用関係を解消するとともに、繰り返し単位(b)について、訂正前の「5員環以上の複素環」を「テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種」に限定し、「液晶配向剤」について、「ポリ(メタ)アクリレート基板への液晶配向膜形成用の」とする用途の限定を加えるものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (3)訂正事項4 訂正事項4による訂正は、訂正事項1により請求項1が削除されたことにともない、これと整合するように記載を改めたものといえる。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (4)訂正事項5、7、8 訂正事項5、7、8による訂正は、訂正事項1により請求項1が削除され、訂正事項3により請求項4が削除されたことにともない、記載を引用する請求項群から、請求項1、4を除いたものである。 したがって、訂正事項5、7、8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (5)訂正事項6 訂正事項6による訂正は、請求項間の引用関係を解消するとともに、「液晶配向剤」について「トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、又はポリカーボネートからなる合成樹脂基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、」とする用途の限定を加え、繰り返し単位(b)について、訂正前の「5員環以上の複素環」を「テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種」に限定するものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (6)訂正事項9及び訂正事項10 訂正事項10による訂正は、訂正事項6によって、請求項7が請求項1の記載を引用しないものとなったことにともない、請求項10のうち請求項7の記載を引用するものを、新たな請求項11としたものである。また、訂正事項9による訂正は、請求項10のうち請求項7の記載を引用しないものについて、訂正事項1により請求項1が削除されたこと及び訂正事項3により請求項4が削除されたことにともない、記載を引用する請求項から請求項1、4を除いたものである。 したがって、訂正事項9、10は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものといえる。 (7)むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3又は4号に掲げる事項を目的とするものといえる。 5 新規事項の有無 (1)訂正事項1及び訂正事項3 訂正事項1及び訂正事項3による訂正は、請求項を削除するものであるから、訂正事項1及び訂正事項3による訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。 (2)訂正事項2及び訂正事項6 本件特許の明細書段落【0019】には、繰り返し単位(b)における芳香族複素環の具体例として、「テトラヒドロフラン」及び「γ-ブチロラクタム」が挙げられている。また、段落【0125】?【0158】における実施例1、2、4?7、9で用いられている化合物は、何れも「テトラヒドロフラン環」又は「γ-ブチロラクタム環」を有している。そうすると、訂正事項2及び訂正事項6による訂正のうち、繰り返し単位(b)について、訂正前の「5員環以上の複素環」を「テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種」に限定する訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。 また、本件特許の明細書段落【0117】には、「先ず、本発明の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する。ここで使用される基板としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートなどの合成樹脂からなる透明基板を好適に例示することができる。」との記載がある。また、上記実施例1、2、4?7、9で用いられている基板は、いずれも「アクリルフィルム」である。そうすると、訂正事項2による訂正のうち、「ポリ(メタ)アクリレート基板への液晶配向膜形成用の」とする用途の限定を加える訂正事項と、訂正事項6による訂正のうち、「トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、又はポリカーボネートからなる合成樹脂基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、」とする用途の限定を加える訂正事項は、いずれも、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。 さらに、訂正事項2及び訂正事項6による訂正のうち、請求項間の引用関係を解消する訂正事項が、願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。 (3)訂正事項4 訂正事項4による訂正は、訂正事項1による訂正と整合するように、請求項5の記載を改めたものであるから、訂正事項4による訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。 (4)訂正事項5、7?10 訂正事項5、7?10による訂正は、訂正事項1?訂正事項4及び訂正事項6による訂正と整合するように、請求項5、6及び8?10が引用する請求項を改めたものであるから、訂正事項5、7?10による訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 6 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1及び訂正事項3 訂正事項1及び訂正事項3による訂正は、請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2及び訂正事項6 訂正事項2及び訂正事項6による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2又は請求項7に係る発明の繰り返し単位(b)について、訂正前の「5員環以上の複素環」を「テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種」に限定する訂正事項を含むものであり、当該訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項2及び訂正事項6による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2又は請求項7に係る発明の「液晶配向剤」について、「ポリ(メタ)アクリレート基板への液晶配向膜形成用の」とする用途の限定、又は、「トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、又はポリカーボネートからなる合成樹脂基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、」とする用途の限定を加える訂正事項を含むものであり、当該訂正事項も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 さらに、訂正事項2及び訂正事項6による訂正は、請求項間の引用関係を解消する訂正事項を含むものであり、当該訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (3)訂正事項4 訂正事項4による訂正は、訂正事項1による訂正と整合するように、請求項5の記載を改めたものであるから、当該訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (4)訂正事項5、7?10 訂正事項5、7?10による訂正は、訂正事項1?訂正事項4及び訂正事項6による訂正と整合するように、請求項5、6及び8?10が引用する請求項を改めたものであるから、当該訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、いずれの訂正事項も、特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 7 むすび 以上のとおり、本件訂正による訂正事項1?10は、何れも、特許法第120条の5第2項ただし書き第1、3又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定、及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 本件訂正により訂正された訂正請求項2、3、5?11に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明2」、「本件特許発明3」、「本件特許発明5」?「本件特許発明11」という。)は、その特許請求の範囲の請求項2、3、5?11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(請求項1及び請求項4は削除された。) 「【請求項2】 重合体成分として、光配向性基を有する繰り返し単位(a)を有する重合体[A]と、テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有する繰り返し単位(b)、並びにオキセタニル基及びオキシラニル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する繰り返し単位(c)を有する重合体[B]と、を含有する、ポリ(メタ)アクリレート基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤。 【請求項3】 前記重合体[B]はアルコキシシリル基を有する、請求項2に記載の液晶配向剤。 【請求項5】 前記重合体[A]及び前記重合体[B]は、ポリオルガノシロキサン及び(メタ)アクリル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項2又は3に記載の液晶配向剤。 【請求項6】 (メタ)アクリロキシ基、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニル基、イソシアネート基、アミノ基及びチオール基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するシラン化合物[D]を更に含有する、請求項2、3及び5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。 【請求項7】 トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、又はポリカーボネートからなる合成樹脂基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、 重合体成分として、光配向性基を有する繰り返し単位(a)を有する重合体[A]と、テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有する繰り返し単位(b)、並びにオキセタニル基及びオキシラニル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する繰り返し単位(c)を有する重合体[B]と、を含有し、 (メタ)アクリレート化合物[E]を更に含有する、液晶配向剤。 【請求項8】 位相差フィルムの製造用である、請求項2、3、5及び6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。 【請求項9】 請求項2、3、5、6及び8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、 前記塗膜に光照射する工程と、 前記光照射した後の塗膜上に重合性液晶を塗布して硬化させる工程と、を含む位相差フィルムの製造方法。 【請求項10】 請求項2、3、5、6及び8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する位相差フィルム。 【請求項11】 請求項7に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する位相差フィルム。」 2 取消理由の概要 平成30年4月6日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 理由1(サポート要件) 本件特許の発明の詳細な説明が、様々な基板及び複素環を含む本件訂正前の請求項1?10に係る発明の範囲においても、同様の効果を奏すると当業者が認識できるように記載されていたということはできないから、本件訂正前の請求項1?10に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。 したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 理由2(新規性) 本件特許は、本件訂正前の請求項1、4、5に係る発明が、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する出願に対してされたものである。 理由3(進歩性) 本件特許は、本件訂正前の請求項1、4?10に係る発明が、甲第1?3号証に記載された発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定を満たしていない出願に対してされたものである。 甲第1号証:特表2009-512903号公報 甲第2号証:特開2011-252099号公報 甲第3号証:特開2012-37868号公報 3 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明 (1)甲第1号証 ア 本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特表2009-512903号公報)には、以下の記載事項がある。(なお、公報に付されていた下線を削除し、合議体が引用発明の認定に用いた箇所に下線を付した。以下同様。) (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記化学式1で示される液晶配向共重合体: 【化1】 前記化学式1において、 M_(1)?M_(4)は、各々独立して高分子鎖にある反復単位であって、アクリル、メタアクリル、クロトン、マレイック、マレアミック、シトラコン、イタコン、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、およびマレイックイミドからなる群から選択され、 p、q、r、sは反復単位のモル分率であって、p+q+r+s=1で、p=0.1?0.9、q=0.1?0.9、r=0?0.3、s=0?0.3であり、 A_(1)は、A_(3)またはA_(4)が置換または非置換された光反応性基であり、 A_(2)は、A_(3)またはA_(4)が置換または非置換されたメソゲン基であり、 A_(3)は、熱硬化性基であり、 A_(4)は、A_(3)の熱硬化反応を誘導して架橋化を起こす架橋基である。 但し、r=0の場合、A_(1)はA_(3)が置換された光反応性基であるか、A_(2)はA_(3)が置換されたメソゲン基であり、 s=0の場合、A_(1)はA_(4)が置換された光反応性基であるか、A_(2)はA_(4)が置換されたメソゲン基である。 【請求項2】 前記A_(1)は、下記構造式からなる群から選択された1種を含む、請求項1に記載の液晶配向共重合体: 【化2】 前記構造式において、 S_(1)は、スペーサであって、-O-;-NH-;またはC_(1)?C_(6)のアルキル鎖の両末端に同一または相異なるように、エーテル基、アミン基、エステル基、およびアミド基からなる群から選択された官能基が導入された2価官能基であり、 S_(2)は、光二量化や異性化が可能なエノン構造を有する基であって、-NH-CO-(CH=CH)-、-O-CO-(CH=CH)-、-(CH=CH)-CO-NH-、-(CH=CH)-CO-O-、-CO-(CH=CH)-、または-(CH=CH)-CO-であり、 Yは、末端に置換された配位子であって、水素、ヒドロキシ、C_(1)?C_(10)のアルキルオキシ、ハロゲン、アミン、ニトリル、ニトロ、グリシジル、イソシアネート、テトラヒドロピラニルカルボン酸、および無水酢酸からなる群から選択される。 (中略) 【請求項8】 前記A_(3)は下記構造式で示される、請求項1に記載の液晶配向共重合体: 【化6】 ここで、S_(5)はスペーサであって、-O-、またはC_(1)?C_(10)のアルキル鎖の末端にエーテル基または-OCO-NH-基が導入された2価官能基であり、nは0または1であり、 Z_(1)は、熱硬化を誘導するエポキシ、オキセタン、イソシアネート、イソチオシアネート、ヒドロキシ、およびアミン基からなる群から選択された基である。 (中略) 【請求項10】 前記A_(4)は下記構造式で示される、請求項1に記載の液晶配向共重合体: 【化8】 ここで、S_(6)はスペーサであって、-O-、またはC_(1)?C_(4)のアルキル鎖の末端にエーテル基が導入された2価官能基であり、 Z_(2)は、架橋を誘導する官能基であって、カルボン酸、テトラヒドロピラン、無水酸、およびイミダゾールからなる群から選択される。」 (イ)「【0045】 この時、ラジカル開始剤としては、(株)和光ケミカルが販売するジアゾ系の熱分解性開始剤を用いるか紫外線を利用することができ、好ましくは2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V65)やアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等を用いる。用いる溶媒としては、単量体をよく溶解させられる溶媒を用い、具体的には、DMF(Dimethylformamide)、DMAc(N,N-Dimethylacetamide)、トルエン、ベンゼン、THF(Tetrahydrofuran)、およびCCl4からなる群から選択され、好ましくはDMFである。」 (ウ)「【0073】 実施例1 1.重合体1の製造 【化15】 (p:q:r:s=1:1:0.2:0.02) 前記製造例1で製造した単量体1[2-メタクリル酸-4-(3-(4-メトキシ-フェニル)-アクリロイルアミノ)-フェニルエステル]1.97g、前記製造例3で製造した単量体3[4-[6-(2-メチル-アクリロイルオキシ)-ヘキシルオキシ]-安息香酸4’-シアノ-ビフェニル-4-アイルエステル]2.82g、グリシジルメタクリレート0.17g、テトラヒドロピラニルメタクリレート0.04gを22mLのDMFに溶かした。この溶液を窒素下で60℃に加熱した後、そこに0.15gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V65)をDMF3mLに溶かして添加することによって反応を開始した。6時間反応させた後、常温に冷まして1Lのエタノールに反応溶液をゆっくり加えて沈殿させた。このように得た白い固体1g当たり約7mLのDMFに溶かして60℃に加熱した後、そこに1g当たり約8mLのエタノールをゆっくり加えて再度沈殿させ、これを乾燥して重合体1(3.75g)を得た。 【0074】 2.液晶配向剤の製造 前記1で製造した重合体1(100mg)を5mLのシクロペンタノン(CP)溶媒に溶解させ、0.45μmの細孔サイズを有するフィルタに通過させて浮遊物を除去した。 【0075】 3.液晶セルの製造 前記2で製造された液晶配向剤をITO基板上に4,500rpmの速度で25秒間スピンコーティングして800Å厚さに塗布した。液晶配向剤が塗布された基板は、150℃で10分間熱を加えて溶媒を蒸発させた。配向膜が塗布された基板は、高圧水銀ランプをによって、偏光紫外線を20mW/cm^(2)の強さで10秒(200mJ)、50秒(1J)、250秒(5J)の間露光した。配向膜が塗布された基板は、露光後の熱処理を100℃で15分、140℃で15分、180℃で15分間合わせて45分施した。露光と熱処理が完了した基板は、両面接着テープを用いて60mmの間隔を有する複屈折制御(Electrically Controlled Briefringence, ECB)型の液晶セルを製造した。製造した複屈折制御型の液晶セルに毛細管を用い、横電界(In-Plane Switching, IPS)方式の液晶を注入して複屈折制御型の液晶セルを作った。製造された液晶セルは100℃で2分間熱処理を行った。」 (エ)「【0079】 実施例3 1.重合体3の製造 【化17】 (p:q:s=1:1:0.1) 前記製造例1で製造した単量体1[2-メタクリル酸-4-(3-(4-メトキシ-フェニル)-アクリロイルアミノ)-フェニルエステル]2.02g、前記製造例4で製造した単量体4[4-[6-(2-メチル-アクリロイルオキシ)-ヘキシルオキシ]-安息香酸4’-オキシラニルメトキシ-ビフェニル-4-アイルエステル]2.89g、およびテトラヒドロピラニルメタクリレート0.09gを用いたことを除いては、前記実施例1の重合体1の製造方法と同一方法によって重合体3(4.1g)を得た。 【0080】 2.液晶配向剤の製造 前記実施例1の重合体1の代わりに重合体3(99mg)、2-フェニルイミダゾール(0.1mg)を用いたことを除いては、前記実施例1の2と同一方法によって液晶配向剤を製造した。 【0081】 3.液晶セルの製造 前記2で製造した液晶配向剤を用いて前記実施例1の3と同一方法によって液晶セルを製造した。」 イ 甲第1号証の記載事項(イ)の「DMF(Dimethylformamide)」との記載に基づけば、記載事項(ウ)における「DMF」は「ジメチルホルムアミド」であるといえる。したがって、甲第1号証の記載事項(ウ)に基づけば、甲第1号証には実施例1として以下の発明が記載されている。 「2-メタクリル酸-4-(3-(4-メトキシ-フェニル)-アクリロイルアミノ)-フェニルエステル1.97g、4-[6-(2-メチル-アクリロイルオキシ)-ヘキシルオキシ]-安息香酸4’-シアノ-ビフェニル-4-アイルエステル2.82g、グリシジルメタクリレート0.17g、テトラヒドロピラニルメタクリレート0.04gを22mLのジメチルホルムアミドに溶かし、この溶液を窒素下で60℃に加熱した後、そこに0.15gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)をジメチルホルムアミド3mLに溶かして添加することによって反応を開始し、6時間反応させた後、常温に冷まして1Lのエタノールに反応溶液をゆっくり加えて沈殿させて、得た白い固体を1g当たり約7mLのジメチルホルムアミドに溶かして60℃に加熱した後、そこに1g当たり約8mLのエタノールをゆっくり加えて再度沈殿させ、これを乾燥して、以下の【化15】式で表される重合体1(3.75g)を製造し、 製造した重合体1(99mg)及び2-フェニルイミダゾール(0.1mg)を5mLのシクロペンタノン溶媒に溶解させ、0.45μmの細孔サイズを有するフィルタに通過させて浮遊物を除去して製造した、液晶配向剤であって、 液晶セルの製造に用いられる液晶配向剤。 【化15】 (p:q:r:s=1:1:0.2:0.02)」(以下、「甲1実施例1発明」という。) 」 ウ 甲第1号証の記載事項(イ)?(エ)に基づけば、甲第1号証には、実施例3として以下の発明が記載されている。 「2-メタクリル酸-4-(3-(4-メトキシ-フェニル)-アクリロイルアミノ)-フェニルエステル2.02g、4-[6-(2-メチル-アクリロイルオキシ)-ヘキシルオキシ]-安息香酸4’-オキシラニルメトキシ-ビフェニル-4-アイルエステル2.89g、およびテトラヒドロピラニルメタクリレート0.09gを22mLのジメチルホルムアミドに溶かし、この溶液を窒素下で60℃に加熱した後、そこに0.15gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)をジメチルホルムアミド3mLに溶かして添加することによって反応を開始し、6時間反応させた後、常温に冷まして1Lのエタノールに反応溶液をゆっくり加えて沈殿させて、得た白い固体を1g当たり約7mLのジメチルホルムアミドに溶かして60℃に加熱した後、そこに1g当たり約8mLのエタノールをゆっくり加えて再度沈殿させ、これを乾燥して、以下の【化17】式で表される重合体3(4.1g)を製造し、 製造した重合体3(99mg)、2-フェニルイミダゾール(0.1mg)を用い、5mLのシクロペンタノン溶媒に溶解させ、0.45μmの細孔サイズを有するフィルタに通過させて浮遊物を除去して製造した、液晶配向剤であって、 液晶セルの製造に用いられる液晶配向剤。 【化17】 (p:q:s=1:1:0.1)」(以下、「甲1実施例3発明」という。) (2)甲第2号証 ア 本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開2011-252099号公報)には、以下の記載事項がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 [A]ピペリジン構造、フェノール構造及びアニリン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリオルガノシロキサン化合物 を含有する液晶配向剤。 (中略) 【請求項3】 [A]ポリオルガノシロキサン化合物が、 下記式(1)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及び加水分解物の縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する部分と、 下記式(A-1)、式(A-2)及び式(A-3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する部分と を有している請求項1又は請求項2に記載の液晶配向剤。 【化4】 (式(1)中、X^(a)はエポキシ基を有する1価の有機基である。Y^(a)は水酸基、炭素数1?10のアルコキシ基、炭素数1?20のアルキル基又は炭素数6?20のアリール基である。) 【化5】 【化6】 【化7】 (式(A-1)中、R^(1)?R^(5)及びX^(1)?X^(5)は上記式(A-1’)と同義である。 式(A-2)中、R^(6)は上記式(A-2’)と同義である。 式(A-3)中、R^(7)及びR^(8)は上記式(A-3’)と同義である。 式(A-1)?(A-3)中、Yは単結合、炭素数1?16のアルカンジイル基である。但し、上記アルカンジイル基は構造中に酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、又はこれらを2種以上組み合わせた基を有していてもよい。Zはカルボキシル基又は水酸基である。) (中略) 【請求項6】 [A]ポリオルガノシロキサン化合物が、液晶配向能を有する構造を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。 【請求項7】 上記液晶配向能を有する構造が、ステロイド骨格を有する炭素数17?51の有機基、炭素数2?20のアルキル基、炭素数1?20のフルオロアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数2?20のアルキル基を有するアルコキシアリール基、炭素数1?20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基、炭素数1?20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基及び炭素数1?20のフルオロアルコキシ基を有するフルオロアルコキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する請求項6に記載の液晶配向剤。 【請求項8】 上記液晶配向能を有する構造が、下記式(B-1)で表される請求項6又は請求項7に記載の液晶配向剤。 【化10】 (式(B-1)中、mは0?4の整数である。)」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶配向膜の形成材料として好適な液晶配向剤、この液晶配向剤から形成される液晶配向膜、液晶配向膜の形成方法及びこの液晶配向膜を備える液晶表示素子に関する。 (中略) 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足する液晶配向膜、この液晶配向膜の形成方法、液晶配向膜の形成材料として好適な保存安定性に優れ、かつ光配向法を採用し液晶配向膜を形成可能な液晶配向剤及び液晶配向膜を備える液晶表示素子の提供である。」 (ウ)「【0193】 有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m-クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒が挙げられる。」 (エ)「【0254】 [官能性シラン化合物] 上記官能性シラン化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上する目的で使用できる。 【0255】 官能性シラン化合物としては、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等のほか、特開昭63-291922号公報に記載されている、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等が挙げられる。 【0256】 官能性シラン化合物の含有割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物と任意に含有される他の重合体との合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。」 (オ)「【0290】 <エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成> [合成例1] 撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(EPS-1)を粘稠な透明液体として得た。 【0291】 (EPS-1)について、^(1)H-NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。(EPS-1)のMwは2,200であり、エポキシ当量は186g/モルであった。」 (カ)「【0292】 <化合物(A-1-1)の合成> [合成例2] 下記スキームに従い、化合物(A-1-1)を合成した。 【0293】 【化29】 【0294】 500mLのナス型フラスコに、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン23.6g、コハク酸無水物15.0g、ピリジン200mLを仕込み、80℃で9時間攪拌し反応を行った。反応終了後、室温で1日静置し結晶を析出させ、溶媒を除去し、化合物(A-1-1)の白色結晶を37.1g得た。」 (キ)「【0301】 [合成例5] 下記スキームに従い、化合物(b-3)を合成した。 【0302】 【化32】 【0303】 1Lのナス型フラスコに4-ヒドロキシ安息香酸メチル82g、炭酸カリウム166g及びN,N-ジメチルアセトアミド400mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、4,4,4-トリフルオロ-1-ヨードブタン95gを加え室温で5時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、水で再沈殿を行った。次に、この沈殿に水酸化ナトリウム32g及び水400mLを加えて4時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、塩酸で中和し、生じた沈殿をエタノールで再結晶することにより化合物(b-3’)の白色結晶を80g得た。化合物(b-3’)のうちの46.4gを反応容器にとり、これに塩化チオニル200mL及びN,N-ジメチルホルムアミド0.2mLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、塩化メチレンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。次に、上記とは別の2L三口フラスコに4-ヒドロキシ桂皮酸36g、炭酸カリウム55g、テトラブチルアンモニウム2.4g、テトラヒドロフラン200mL及び水400mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記の化合物(b-3’)と塩化チオニルとの反応物を含有するテトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールで再結晶することにより、化合物(b-3)の白色結晶を39g得た。」 (ク)「【0307】 [合成例7] 下記スキームに従い、化合物(b-5)を合成した。 【0308】 【化34】 【0309】 還流管、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、化合物(b-5’)31g、酢酸パラジウム0.23g、トリ(o-トリル)ホスフィン1.2g、トリエチルアミン56mL、アクリル酸8.2mL及びN,N-ジメチルアセトアミド200mLを仕込んで120℃において3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応液をろ過して得られたろ液に酢酸エチルを1L加えて得た有機層につき、希塩酸で2回及び水で3回、順次に分液洗浄を行った。その後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮、乾固した後、酢酸エチル及びテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶することにより、化合物(b-5)の結晶を15g得た。」 (ケ)「【0321】 <[A]ポリオルガノシロキサン化合物の合成> [合成例12] 200mLの三口フラスコに、(EPS-1)を10.0g、メチルイソブチルケトン69.5g、化合物(A-1-1)を2.77g(ポリオルガノシロキサンEPS-1の有するエポキシ基に対して20モル%に相当)、ステアリン酸を4.60g(ポリオルガノシロキサン(EPS-1)の有するエポキシ基に対して30モル%に相当)及びテトラブチルアンモニウムブロミドを1.00g仕込み、100℃で8時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、溶液を水で5回洗浄した後、溶媒を留去することにより[A]ポリオルガノシロキサン化合物(S-1)を白色粉末として15.8g得た。 【0322】 [合成例13?合成例33] 配合する化合物の種類と配合量を、それぞれ表1に示す通りとし、合成例12と同様に操作して、[A]ポリオルガノシロキサン化合物(S-2)?(S-22)を合成した。なお、表1における化合物の使用割合は、(EPS-1)の有するエポキシ基に対するモル%である。また、ポリオルガノシロキサン(S-1)?(S-22)のMwについてもあわせて表1に示す。 (中略) 【0327】 【表1】 」 (コ)「【0328】 <[B]重合体(ポリアミック酸)の合成> [合成例34] テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)、ジアミンとして2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル212g(1.0モル)をNMP4,050gに溶解させ、40℃で3時間反応させて、固形分濃度10%、溶液粘度170mPa・sのポリアミック酸溶液(PA-1)を得た。」 (サ)「【0336】 <液晶配向剤の調製> [実施例1] ポリオルガノシロキサン(S-1)100質量部と、ポリアミック酸(PA-1)を含有する溶液の、ポリアミック酸(PA-1)に換算して1,000質量部に相当する量とを合わせ、これにNMP及びエチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテルを加え、溶媒組成がNMP:エチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテル=50:50(質量比)、固形分濃度が3.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(AF-1)を調製し、実施例1とした。 【0337】 [実施例2?39及び比較例1?7] 配合する化合物の種類と使用量を、それぞれ後述する表2に示す通りとし、実施例1と同様に操作して、液晶配向剤(AF-2)?(AF-39)及び(CAF-1)?(CAF-7)を調製し、これらを実施例2?39、比較例1?7とした。 (中略) 【0341】 【表2】 」 (シ)「【0344】 [実施例52] 液晶配向剤(AF-13)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いでこの塗膜表面に、Hg-Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/m^(2)を、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を1対(2枚)作成した。上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク社、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板をその偏光方向が互いに直交し、且つ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより垂直配向型の液晶表示素子を製造し、これを実施例52とした。 【0345】 [実施例53?78、比較例10?13] 液晶配向剤(AF-13)?(AF-39)及び(CAF-4)?(CAF-7)を用い、実施例52と同様に操作して、液晶表示素子を製造し、これを実施例53?78、比較例10?13とした。 (中略) 【0350】 【表3】 」 イ 甲第2号証の記載事項(ウ)の「N-メチル-2-ピロリドン(NMP)」との記載に基づけば、記載事項(コ)及び(ケ)における「NMP」は「N-メチル-2-ピロリドン」であるといえる。したがって、甲第2号証の記載事項(カ)、(ク)?(シ)に基づけば、甲第2号証には、実施例13として液晶配向剤AF-13を調整したこと、及び液晶配向剤AF-13を液晶表示素子の製造に用いたことが記載されているといえる。したがって、甲第2号証には、実施例13として以下の発明が記載されている。 「2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを反応させて、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(EPS-1)を得て、 化合物(A-1-1) を合成し、 化合物(b-5) を合成し、 (EPS-1)を10.0g、メチルイソブチルケトン69.5g、化合物(A-1-1)をポリオルガノシロキサンEPS-1の有するエポキシ基に対して20モル%に相当する量、化合物(b-5)をポリオルガノシロキサン(EPS-1)の有するエポキシ基に対して30モル%に相当する量及びテトラブチルアンモニウムブロミドを1.00g仕込み、反応を行い、[A]ポリオルガノシロキサン化合物(S-11)を得て、 テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)、ジアミンとして2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル212g(1.0モル)をN-メチル-2-ピロリドン4,050gに溶解させ、反応させて、ポリアミック酸溶液(PA-1)を得て、 ポリオルガノシロキサン(S-11)100質量部と、ポリアミック酸(PA-1)を含有する溶液の、ポリアミック酸(PA-1)に換算して2,000質量部に相当する量とを合わせ、これにN-メチル-2-ピロリドン及びエチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテルを加え、溶媒組成がN-メチル-2-ピロリドン:エチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテル=50:50(質量比)、固形分濃度が3.0質量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより調整した、液晶配向剤(AF-13)であって、 液晶表示素子の製造に用いられる液晶配向剤(AF-13)。」(以下、「甲2実施例13発明」という。) ウ 甲第2号証の記載事項(ウ)、(オ)?(キ)、(ケ)?(シ)に基づけば、甲第2号証には、実施例16として液晶配向剤AF-16を調整したこと、及び液晶配向剤AF-16を液晶表示素子の製造に用いたことが記載されているといえる。したがって、甲第2号証には、実施例16として以下の発明が記載されている。 「2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを反応させて、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(EPS-1)を得て、 化合物(A-1-1) を合成し、 化合物(b-3) を合成し、 (EPS-1)を10.0g、メチルイソブチルケトン69.5g、化合物(A-1-1)をポリオルガノシロキサンEPS-1の有するエポキシ基に対して20モル%に相当する量、化合物(b-3)をポリオルガノシロキサン(EPS-1)の有するエポキシ基に対して30モル%に相当する量及びテトラブチルアンモニウムブロミドを1.00g仕込み、反応を行い、[A]ポリオルガノシロキサン化合物(S-14)を得て、 テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)、ジアミンとして2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル212g(1.0モル)をN-メチル-2-ピロリドン4,050gに溶解させ、反応させて、ポリアミック酸溶液(PA-1)を得て、 ポリオルガノシロキサン(S-14)100質量部と、ポリアミック酸(PA-1)を含有する溶液の、ポリアミック酸(PA-1)に換算して2,000質量部に相当する量とを合わせ、これにN-メチル-2-ピロリドン及びエチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテルを加え、溶媒組成がN-メチル-2-ピロリドン:エチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテル=50:50(質量比)、固形分濃度が3.0質量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより調整した、液晶配向剤(AF-16)であって、 液晶表示素子の製造に用いられる液晶配向剤(AF-16)。」(以下、「甲2実施例16発明」という。) (3)甲第3号証 ア 本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開2012-37868号公報)には、以下の記載事項がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 [A]光配向性基を有するポリオルガノシロキサンを含有する位相差フィルム用液晶配向剤。 【請求項2】 上記光配向性基が、桂皮酸構造を有する基である請求項1に記載の位相差フィルム用液晶配向剤。 【請求項3】 上記桂皮酸構造を有する基が、下記式(1)で表される化合物に由来する基及び式(2)で表される化合物に由来する基からなる群より選択される少なくとも1種である請求項2に記載の位相差フィルム用液晶配向剤。 【化1】 (式(1)中、R^(1)はフェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基又はシクロヘキシレン基である。このフェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基又はシクロヘキシレン基の水素原子の一部又は全部は、炭素数1?10のアルキル基、フッ素原子を有していてもよい炭素数1?10のアルコキシ基、フッ素原子又はシアノ基で置換されていてもよい。R^(2)は単結合、炭素数1?3のアルカンジイル基、酸素原子、硫黄原子、-CH=CH-、-NH-、-COO-又は-OCO-である。aは0?3の整数である。但し、aが2以上の場合、それぞれのR^(1)及びR^(2)は同一であっても異なっていてもよい。R^(3)はフッ素原子又はシアノ基である。bは0?4の整数である。 式(2)中、R^(4)はフェニレン基又はシクロヘキシレン基である。このフェニレン基又はシクロヘキシレン基の水素原子の一部又は全部は、炭素数1?10の鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1?10の鎖状若しくは環状のアルコキシ基、フッ素原子又はシアノ基で置換されていてもよい。R^(5)は単結合、炭素数1?3のアルカンジイル基、酸素原子、硫黄原子又は-NH-である。cは1?3の整数である。但し、cが2以上の場合、R^(4)及びR^(5)はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R^(6)はフッ素原子又はシアノ基である。dは0?4の整数である。R^(7)は酸素原子、-COO-*又は-OCO-*である。但し、*を付した結合手がR^(8)と結合する。R^(8)は2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基又は2価の縮合環式基である。R^(9)は単結合、-OCO-(CH_(2))_(f)-*又は-O(CH_(2))_(g)-*である。但し、*を付した結合手がカルボキシル基と結合する。f及びgはそれぞれ1?10の整数である。eは0?3の整数である。但し、eが2以上の場合、R^(7)及びR^(8)はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。) 【請求項4】 [A]光配向性基を有するポリオルガノシロキサンが、 エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種と、 上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種との反応生成物である請求項3に記載の位相差フィルム用液晶配向剤。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、位相差フィルム用液晶配向剤、位相差フィルム用液晶配向膜、位相差フィルム及びその製造方法に関する。 (中略) 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、少量の放射線照射によっても光配向が可能であって、かつ照射中及び照射後の加熱工程が不要な位相差フィルム用液晶配向膜を形成可能な液晶配向剤、この位相差フィルム用液晶配向膜を備え、液晶配向性及び熱安定性に優れる位相差フィルム及びその製造方法を提供することである。」 (ウ)「【0090】 <[B]他の重合体> 当該液晶配向剤は、好適成分として[B]他の重合体を含有できる。[B]他の重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、エチレン性不飽和化合物重合体、光配向性基を有さないポリオルガノシロキサンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これら[B]他の重合体を含有する場合、当該液晶配向剤から形成される位相差フィルム用液晶配向膜においては、その表層付近にポリオルガノシロキサンが偏在することが明らかとなっている。この為、他の重合体の含有量を増やすことにより当該液晶配向剤中におけるポリオルガノシロキサンの含有量を減らしても、ポリオルガノシロキサンは配向膜表面に偏在するので、十分な液晶配向性が得られる。従って、本発明では製造コストの高いポリオルガノシロキサンの当該液晶配向剤中における含有量を減らすことが可能となり、結果として当該液晶配向剤の製造コストを低下できる。」 (エ)「【0269】 <位相差フィルム用液晶配向剤の調製> [実施例1] [B]他の重合体として合成例11で得たポリアミック酸(PA-1)を含有する溶液を、これに含有されるポリアミック酸(PA-1)に換算して1,000質量部に相当する量をとり、ここに合成例7で得た[A]光配向性ポリオルガノシロキサン(S-1)100質量部を加え、さらにNMP及びエチレングリコールモノブチルエーテル(EGMB)を混合し、溶媒組成がNMP:EGMB=50:50(質量比)、固形分濃度が4.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、位相差フィルム用液晶配向剤(A-1)を調製した。 【0270】 [実施例2?6] 下記表1に示す種類及び量の[A]光配向性ポリオルガノシロキサン、[B]他の重合体、[C]エステル構造含有化合物及び溶媒を加え、実施例1と同様に操作して、位相差フィルム用液晶配向剤(A-2)?(A-6)(それぞれ固形分濃度は4.0質量%)を調製した。 【0271】 [実施例7] [B]他の重合体として合成例14で得たポリ(メタ)アクリレートの共重合体(MA-1)を含有する溶液を、これに含有されるポリ(メタ)アクリレートの共重合体(MA-1)に換算して1,000質量部に相当する量をとり、ここに合成例8で得た[A]光配向性ポリオルガノシロキサン(S-2)100質量部を加え、さらに硬化触媒としてスルホニウム塩(サンエイドSI-60L、三新化学工業社)を50質量部加え、酢酸ブチル及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル(DEGME)を混合し、溶媒組成が酢酸ブチル:DEGME=90:10(質量比)、固形分濃度が4.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、位相差フィルム用液晶配向剤(A-7)を調製した。 【0272】 [実施例8?10] 下記表1に示す種類及び量の[A]光配向性ポリオルガノシロキサン及び溶媒を加え、ここに硬化触媒としてアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)(アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル社)を50質量部加えたこと以外は実施例7と同様に操作して、位相差フィルム用液晶配向剤(A-8)?(A-10)(それぞれ固形分濃度は4.0質量%)を調製した。 【0273】 [実施例11] [A]光配向性ポリオルガノシロキサン(S-2)1,000質量部、[F]化合物としてアクリロイル基を有するシルセスキオキサン(ACSQ;AC-SQ TA-100、東亜合成社製)50質量部、さらに硬化触媒としてスルホニウム塩(三新化学工業社、サンエイドSI-60L)を50質量部加え、溶媒としてEGMB及びDEGMEを混合し、溶媒組成がEGMB:DEGME=90:10(質量比)、固形分濃度が4.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、位相差フィルム用液晶配向剤(A-11)を調製した。 【0274】 【表1】 」 イ 甲第3号証の記載事項(ア)に基づけば、甲第3号証には、以下の発明が記載されていると認められる。 「[A]桂皮酸構造を有する光配向性基を有するポリオルガノシロキサンを含有する位相差フィルム用液晶配向剤であって、 上記桂皮酸構造を有する基が、下記式(1)で表される化合物に由来する基及び式(2)で表される化合物に由来する基からなる群より選択される少なくとも1種であり、 【化1】 (式(1)中、R^(1)はフェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基又はシクロヘキシレン基である。このフェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基又はシクロヘキシレン基の水素原子の一部又は全部は、炭素数1?10のアルキル基、フッ素原子を有していてもよい炭素数1?10のアルコキシ基、フッ素原子又はシアノ基で置換されていてもよい。R^(2)は単結合、炭素数1?3のアルカンジイル基、酸素原子、硫黄原子、-CH=CH-、-NH-、-COO-又は-OCO-である。aは0?3の整数である。但し、aが2以上の場合、それぞれのR^(1)及びR^(2)は同一であっても異なっていてもよい。R^(3)はフッ素原子又はシアノ基である。bは0?4の整数である。 式(2)中、R^(4)はフェニレン基又はシクロヘキシレン基である。このフェニレン基又はシクロヘキシレン基の水素原子の一部又は全部は、炭素数1?10の鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1?10の鎖状若しくは環状のアルコキシ基、フッ素原子又はシアノ基で置換されていてもよい。R^(5)は単結合、炭素数1?3のアルカンジイル基、酸素原子、硫黄原子又は-NH-である。cは1?3の整数である。但し、cが2以上の場合、R^(4)及びR^(5)はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R^(6)はフッ素原子又はシアノ基である。dは0?4の整数である。R^(7)は酸素原子、-COO-*又は-OCO-*である。但し、*を付した結合手がR^(8)と結合する。R^(8)は2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基又は2価の縮合環式基である。R^(9)は単結合、-OCO-(CH_(2))_(f)-*又は-O(CH_(2))_(g)-*である。但し、*を付した結合手がカルボキシル基と結合する。f及びgはそれぞれ1?10の整数である。eは0?3の整数である。但し、eが2以上の場合、R^(7)及びR^(8)はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。) [A]光配向性基を有するポリオルガノシロキサンが、 エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及びその加水分解物の縮合物からなる群より選択される少なくとも1種と、 上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種との反応生成物である位相差フィルム用液晶配向剤。」(以下、「甲3発明」という。) (4)甲第4号証 本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開2005-290209号公報)には、以下の記載事項がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、硬化用組成物に関する。より詳しくは、金属、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)等のプラスチック等の各種基材に対するコーティング材や印刷インキ等に使用することができる硬化用組成物に関する。 (中略) 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、金属、ガラス、プラスチック等の各種基材に対する密着性に優れ、かつ、硬化塗膜表面がタックフリーであるとともに、可撓性及び耐溶剤性を発揮することができる硬化用組成物を提供することを目的とするものである。 【0011】 本発明者等は、未処理のPET等のプラスチック素材等に好適な硬化用組成物について種々検討したところ、共重合体と多官能単量体とを必須成分とすることにより、硬化特性等に優れるものとでき、また、共重合体がアクリルアミドやN-ビニルピロリドン(NVP)等より構成されるアミド基含有単量体単位と、アミノ基含有単量体単位とを必須とすることにより、アミド基含有単量体単位に起因して硬化塗膜の各種基材に対する密着性を発現し、アミノ基含有単量体単位に起因して硬化塗膜の表面硬化性が向上し、タックフリーとできることを見いだし、更に、これらの相乗的な作用により、可撓性や耐溶剤性等の硬化物物性についても向上させることができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、従来の技術においては、共重合体と多官能単量体とを必須成分として形成される硬化用組成物を、例えばPET、PC等のプラスチック素材のコーティングに使用した先行技術はなく、上述のような組成とすることにより、金属、ガラス、PETやPC等のプラスチック等の各種基材等に対する密着性、可撓性、耐溶剤性及びタックフリー性等のコーティング(塗膜)等に対する要求性能を満たすことが可能であり、この点において従来の技術に対して有利な効果を奏するものであることも見いだし、本発明に到達したものである。」 イ 「【0080】 合成例1 <重合体(I-1)の合成> (共重合反応) 撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入管及び滴下ロートを備えた容器に、N-ビニルピロリドン30部、溶媒として2-ブタノール100部を仕込み、撹拌しながら内温が95℃になるまで加熱した。その後、10分間容器内を窒素ガス置換した。 一方、滴下ロートを2つ用意し、その1つの滴下ロートに、2-エチルヘキシルアクリレート43.5部、グリシジルメタクリレート24部を仕込んだ後(混合液1とする)、滴下ロート内を3分間窒素ガス置換した。また他の1つの滴下ロートに、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名:パーブチルO)0.98部、溶媒として2-ブタノール20部を仕込んだ後(混合液2とする)、滴下ロート内を3分間窒素ガス置換した。 容器内及び滴下ロート内の窒素ガス置換終了後、容器内の温度を95℃近辺に維持し、撹拌を継続しながら、混合液1及び2を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、内温が97?100℃となるように加熱撹拌を続け、この温度で更に3時間反応を熟成させて、無色透明の均一溶液を得た。 熟成終了後、各モノマーの転化率を算出したところ、N-ビニルピロリドンの転化率は100%、2-エチルヘキシルアクリレートの転化率は100%、グリシジルメタクリレートの転化率は100%であった。この結果より、得られた共重合体の組成は、N-ビニルピロリドン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート=40/35/25(モル比)となった。 【0081】 (エポキシ基と二級アミンとの反応) 上記反応液にジエタノールアミン10.65部を仕込み、内温が60℃となるように加熱撹拌しながら2時間反応を行った。ジエタノールアミンの転化率を算出したところ100%であった。この結果より、得られた重合体(I-1)の組成は、N-ビニルピロリドン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート/グリシジルメタクリレートのジエタノールアミン付加物=40/35/10/15(モル比)となった。このときの重合体(I-1)の重量平均分子量は5800であった。 最後に、得られた重合体(I-1)溶液50部を多量のn-ヘキサン中に投入して沈殿させ、沈殿物を充分乾燥させて、固体状の重合体(I-1)を得た。」 (5)甲第5号証 本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第5号証(特開2005-2346号公報)には、以下の記載事項がある。 「【0385】 実施例1 (1)下記、[化276]の単位構造で示されるポリイミドの合成: 【0386】 【化276】 滴下ロート、攪拌装置を付けた1Lの三つ口フラスコに、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-(2-ナフチル)インドール11.1gとジオキサン500mlを取り、0℃攪拌下トリエチルアミン7.71mlを加えた。ここに3,5-ジニトロベンゾイルクロリド11.5gのジオキサン溶液を0℃で滴下し、室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液を1Lの水に加えて得られた結晶をろ集した。これを酢酸エチルで2回再結晶して、N-(2-(3,5-ジニトロベンゾイル)オキシエチル)-2-ナフチルインドールを6.10g得た。この化合物はこれ以上精製せずニトロ基の還元を行った。この化合物の融点は178.1?179.7℃であった。 【0387】 滴下ロート、攪拌装置を付けた300mlの三つ口フラスコに、N-(2-(3,5-ジニトロベンゾイル)オキシエチル)-2-ナフチルインドール8.22gとジオキサン150mlを取り、室温攪拌下、塩化第1スズ(2水和物)30.2gを加えた。ここに濃塩酸30.2gを10℃で滴下し、滴下後室温で3時間攪拌した。反応終了後、2N水酸化ナトリウム水溶液を中性になるまで滴下し、反応液をセライトでろ過した。ろ液を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を水で3回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、減圧濃縮して黄色固体を得た。これを酢酸エチルで2回再結晶して、N-(2-(3,5-ジアミノベンゾイル)オキシエチル)-2-ナフチルインドールを6.42g得た。 【0388】 2)重合反応 100mlの三ツ口フラスコに、N-(2-(3,5-ジアミノベンゾイル)オキシエチル)-2-ナフチルインドール3.514g、NMP31.0gを入れて、窒素気流下室温で攪拌溶解した。次いで反応液を10℃に保ち、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物1.961g投入し、室温で6時間反応を行い、15.0wt%のポリマー溶液を得た。この時の粘度は118mP・sであり重量平均分子量(Mw)は93100であった。 【0389】 3)偏光照射による液晶表示素子用液晶配向膜の形成; 2)で得られたポリアミック酸溶液を、NMP/ブチルセロソルブ=1/1溶媒で5.0wt%に希釈し、これを0.1μmのフィルターでろ過し、液晶配向剤溶液とした。続いて一対のITOガラス基板上に回転塗布法(スピンナー法)で塗布した。塗布後230℃で60分間焼成し、膜厚約740オングストロームの薄膜を形成した。薄膜表面に超高圧水銀ランプより、365nm付近の波長の、直線偏光紫外線を2.0J/cm2照射して配向処理を行った。 【0390】 4)液晶表示素子作成、配向性評価 3)で得た基板を、紫外線の偏光方向が平行になるようにシール剤を使用して貼り合わせ、液晶層の厚さが5μmになるように柱状スペーサもしくはビーズを挟み貼り合わせた液晶表示素子を作製し、液晶組成物(LA)を注入し、封止剤で封止を行った。作製した液晶表示素子を110℃で30分アニール処理を行った後、液晶の配向を確認したところ配向不良も観察されず、良好であった。 【0391】 【化277】 【0392】 実施例2 実施例1のポリイミドのかわりに実施例1のポリイミドおよびカルバゾール側鎖を有する[化278]に示されるポリイミドとの混合比率が3:7の高分子化合物を液晶配向膜として使用する以外は実施例1と同様にして、薄膜を作製し、その評価を行った。得られた薄膜の配向性および液晶性分子の配向性を偏光顕微鏡で観察したところ良好であった。実施例2の配向膜はいわゆる配向膜表面と内部で配向膜の組成比率が変化する傾斜配向膜とよばれる。膜表面に配向機能を有する配向膜および/もしくは液晶と密着性の良い配向膜成分の濃度を向上させるとともに内部には基板との密着性の良い成分濃度を挙げることができる。 【0393】 【化278】 」 4 判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 理由1(サポート要件:特許法第36条第6項第1号) (ア)本件特許発明2、3、5、6,8?10が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0007】の記載に基づけば、液晶配向性及び基板との密着性が良好な液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤を提供することにあるといえる。 (イ)一方、本件特許明細書の段落【0125】?【0158】には、実施例1、2、4?8として、繰り返し単位(b)が、テトラヒドロフラン環又はピロリドン環のいずれかを有する場合に、アクリルフィルムとの密着性が良好または優良であることが示されている。 (ウ)本件訂正後の、本件特許発明2、3、5、6,8?10は、いずれも、繰り返し単位(b)がテトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有するものであり、ポリ(メタ)アクリレート基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤となった。また、本件特許発明7、11は、繰り返し単位(b)がテトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有するものであり、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、又はポリカーボネートからなる合成樹脂基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤となった。そして、テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有する繰り返し単位(b)と特定の基板との組みあわせにより、本件特許発明2、3、5?11が液晶配向性及び基板との密着性が良好な液晶配向膜を形成することができるという課題を解決できることは明らかである。 (エ)したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 イ 理由2(新規性:特許法第29条第1項第3号) (ア)本件訂正によって、当該取消理由の対象とされた請求項である本件訂正前の請求項1、4、5は削除された。したがって、当該取消理由は解消した。 (イ)なお、本件特許発明2と甲1実施例1発明とを対比すると、甲1実施例発明1の「重合体1」は、「2-メタクリル酸-4-(3-(4-メトキシ-フェニル)-アクリロイルアミノ)-フェニルエステル」由来の繰り返し単位を有するものであり、その化学構造からみて、甲1実施例発明1の「重合体1」は「光配向性基を有する繰り返し単位(a)」を有するといえる。そうすると、甲1実施例発明1の「重合体1」は、本件特許発明2の「重合体成分として、光配向性基を有する繰り返し単位(a)を有する重合体[A]」に相当するといえる。また、甲1実施例1発明の「液晶配向剤」と本件特許発明2の「ポリ(メタ)アクリレート基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤」とは、「液晶配向剤」である点で共通する。 以上より、本件特許発明2と甲1実施例1発明とは、 「重合体成分として、光配向性基を有する繰り返し単位(a)を有する重合体[A]を含有する、液晶配向剤。」である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本件特許発明2は、テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有する繰り返し単位(b)、並びにオキセタニル基及びオキシラニル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する繰り返し単位(c)を有する重合体[B] を含有するのに対し、甲1実施例1発明は、重合体[B]を含有しない点。 [相違点2]本件特許発明2は、液晶配向剤の用途が、ポリ(メタ)アクリレート基板への液晶配向膜形成用であるのに対し、甲1実施例1発明は、液晶セルの製造に用いられるとするものの、どのような基板に用いるものであるかを特定していない点。 事案に鑑みて[相違点1]について検討すると、上記[相違点1]は実質的に相違するものであるから、[相違点2]について検討するまでもなく、本件特許発明2と甲1実施例1発明とが同一の発明であるということはできない。また、本件特許発明2と、甲1実施例3発明、甲2実施例13発明、甲2実施例16発明、甲3発明のいずれかとを対比した場合も同様である。 したがって、本件特許は、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 ウ 理由3(進歩性:特許法第29条第2項) (ア)本件訂正によって、本件特許発明2、3、5?11は、当該取消理由の対象とされていない、訂正前の請求項2に記載された構成を具備するものとなった。したがって、当該取消理由は解消した。 (イ)なお、本件特許発明2と甲1実施例1発明とを対比すると、両者は、前記イ(イ)に記載した[相違点1]及び[相違点2]で相違する。 そして、[相違点1]について検討すると、甲第1号証?甲第5号証には、液晶配向剤において、光配向性基を有する繰り返し単位を有する重合体の他に、本件特許発明2における繰り返し単位(b)と繰り返し単位(c)を有する重合体を含有することについて、記載も示唆もしていない。そうすると、甲1実施例1発明に、本件特許発明2における繰り返し単位(b)と繰り返し単位(c)を有する重合体を含有させ、本件特許発明2の上記[相違点1]に係る構成とすることは、当業者であっても、容易に想到し得たということはできない。また、甲1実施例3発明、甲2実施例13発明、甲2実施例16発明、甲3発明のいずれかを、主引用発明とした場合も同様のことがいえる。 したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定を満たすものである。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア 特許異議申立人は、本件補正前の請求項2及び3に係る発明について、甲第3号証及び甲第4号証記載の発明に基づいて容易に発明し得たもの、又は、甲第3号証及び甲第5号証記載の発明に基づいて容易に発明し得たものと主張している。 イ 本件特許発明2と甲3発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違している。 [相違点]本件特許発明2は、「テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有する繰り返し単位(b)、並びにオキセタニル基及びオキシラニル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する繰り返し単位(c)を有する重合体[B]」を含有するのに対し、甲3発明は、上記重合体[B]を含有しない点。 ウ 甲3発明及び甲第4号証の組みあわせ 甲第3号証の記載事項(イ)には、他の重合体を含有できることが記載されている。そして、他の重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、エチレン性不飽和化合物重合体、光配向性基を有さないポリオルガノシロキサンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられている。 一方、甲第4号証には、記載事項イに基づけば、硬化用組成物について、共重合体と多官能単量体とを必須成分とすること、共重合体がアクリルアミドやN-ビニルピロリドン(NVP)等より構成されるアミド基含有単量体単位と、アミノ基含有単量体単位とを必須とすることが開示されているものの、液晶配向剤において、光配向性基を有する繰り返し単位を有する重合体の他に、本件特許発明2における繰り返し単位(b)と繰り返し単位(c)を有する重合体を含有させることについて、記載も示唆もしていない。 そうすると、甲3発明に、他の重合体を含有させることが容易になし得たとしても、さらにその重合体を本件特許発明2における繰り返し単位(b)と繰り返し単位(c)を有するものとすることは、当業者であっても、容易に想到し得たということはできない。 甲第3号証の記載事項(エ)における実施例に基づいても同様である。 エ 甲3発明及び甲第5号証の組みあわせ また、甲第5号証には、実施例2として、光配向性基を有する重合体とカルバゾール側鎖を有する高分子化合物を液晶配向膜として使用することが開示されているものの、光配向性基を有する繰り返し単位を有する重合体の他に、本件特許発明2における繰り返し単位(b)と繰り返し単位(c)を有する重合体を含有させることについて、記載も示唆もしていない。 そうすると、甲3発明に、甲第5号証を組みあわせたとしても、本件特許発明2の構成とすることはできない。 オ なお、本件特許発明7と甲3発明とを対比した場合も、本件特許発明2と甲3発明とを対比した場合と同じ相違点を有することとなる。したがって、本件特許発明7についても、容易に想到し得たということはできない。また、本件特許発明2又は本件特許発明7を引用する本件特許発明3、5、6、8?11についても同様である。 カ むすび 以上のとおりであるから、上記特許異議申立人の主張は、理由がない。 5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載された取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明2、3、5?11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明2、3、5?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項1、4は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1、4に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】 重合体成分として、光配向性基を有する繰り返し単位(a)を有する重合体[A]と、テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有する繰り返し単位(b)、並びにオキセタニル基及びオキシラニル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する繰り返し単位(c)を有する重合体[B]と、を含有する、ポリ(メタ)アクリレート基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤。 【請求項3】 前記重合体[B]はアルコキシシリル基を有する、請求項2に記載の液晶配向剤。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 前記重合体[A]及び前記重合体[B]は、ポリオルガノシロキサン及び(メタ)アクリル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項2又は3に記載の液晶配向剤。 【請求項6】 (メタ)アクリロキシ基、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニル基、イソシアネート基、アミノ基及びチオール基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するシラン化合物[D]を更に含有する、請求項2、3及び5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。 【請求項7】 トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、又はポリカーボネートからなる合成樹脂基板への液晶配向膜形成用の液晶配向剤であって、 重合体成分として、光配向性基を有する繰り返し単位(a)を有する重合体[A]と、テトラヒドロフラン環及びγ-ブチロラクタム環の少なくとも一種を側鎖に有する繰り返し単位(b)、並びにオキセタニル基及びオキシラニル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する繰り返し単位(c)を有する重合体[B]と、を含有し、 (メタ)アクリレート化合物[E]を更に含有する、液晶配向剤。 【請求項8】 位相差フィルムの製造用である、請求項2、3、5及び6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。 【請求項9】 請求項2、3、5、6及び8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、 前記塗膜に光照射する工程と、 前記光照射した後の塗膜上に重合性液晶を塗布して硬化させる工程と、を含む位相差フィルムの製造方法。 【請求項10】 請求項2、3、5、6及び8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する位相差フィルム。 【請求項11】 請求項7に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する位相差フィルム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-09-13 |
出願番号 | 特願2014-33853(P2014-33853) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(G02B)
P 1 651・ 121- YAA (G02B) P 1 651・ 113- YAA (G02B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 植野 孝郎 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
樋口 信宏 宮澤 浩 |
登録日 | 2017-06-30 |
登録番号 | 特許第6164117号(P6164117) |
権利者 | JSR株式会社 |
発明の名称 | 液晶配向剤、位相差フィルム及び位相差フィルムの製造方法 |
代理人 | 山田 強 |
代理人 | 山田 強 |
代理人 | 廣田 美穂 |
代理人 | 日野 京子 |
代理人 | 廣田 美穂 |
代理人 | 日野 京子 |