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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L |
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管理番号 | 1345893 |
異議申立番号 | 異議2018-700754 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-09-18 |
確定日 | 2018-11-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6298243号発明「電子機器用熱伝導性積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6298243号の請求項1、5に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第6298243号(以下「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成25年3月28日(優先権主張 平成24年3月30日 日本国)に特許出願され、平成30年3月2日にその特許権の設定登録がされ(平成30年3月20日特許掲載公報発行)、その後、請求項1、5に係る特許について、平成30年9月18日に特許異議申立人岡本敏夫(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 本件特許の請求項1、5に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 25%圧縮強度が50?190kPaであり、厚さが0.05?1.0mmであり、さらに見掛け密度が0.1?1.5g/cm^(3)である発泡体シートの少なくとも一方の面に、熱伝導率が200W/m・K以上である熱伝導性シートを有し、前記発泡体シートはエラストマー樹脂から構成され、厚さが0.08?1.50mmである電子機器用熱伝導性積層体。 【請求項5】 前記熱伝導性シートが、銅、アルミニウム、及びグラファイトから選ばれる1種であるシートである請求項1?4のいずれかに記載の電子機器用熱伝導性積層体。」 3.申立理由の概要 以下、「甲第1号証」等を「甲1」等といい、「甲第1号証に記載された発明」等を「甲1発明」等といい、「甲第1号証に記載された事項」等を「甲1記載事項」等という。 申立人は、証拠として、特許異議申立書に添付して以下の甲1及び甲2を提出し、本件発明1、5は、甲1発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、本件発明1、5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである旨主張している。 また、本件発明1、5は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1、5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである旨主張している。 (証拠一覧) 甲1:特開2003-175563号公報 甲2:社団法人日本機械学会、「伝熱工学資料改訂第4版」、改訂第4版2刷、社団法人日本機械学会、昭和62年8月20日発行、314-315頁 4.甲1、甲2の記載事項 (1)甲1 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、導電性シート状弾性体およびその製造方法に関し、更に詳細には、導電性を有して電子機器や精密機器等のガスケットまたはパッキン等といったシール材として好適に使用され、所定の形状保持性を有する極めて薄い導電性シート状弾性体と、該導電性シート状弾性体の製造方法に関する。」 「【0012】 【発明の目的】本発明は、前述した従来の技術に内在している前記欠点に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、製造時に掛かるテンション等による形状欠陥を防止し得るキャリアフィルムを用いて極力薄い金属薄膜をシート状弾性基体に積層することにより、該シート状弾性基体の形状保持性を向上させ得ると共に、良好なシール性やクッション性等を有する肉薄の導電性シート状弾性体と、該導電性シート状弾性体の製造方法を提供することを目的とする。」 「【0017】前記シート状弾性基体12としては、シール材としての使用を考慮し、防塵および光漏れ等の機能を長期間に亘って維持し得る、すなわち材質的にヘタリおよび発生ガスが少なく、かつクッション性や柔軟性、曲面への追従性等を有する合成樹脂の発泡体やエラストマー等を使用することができる。またその材質としては、例えばポリウレタンやNBR(アクリロニトリルブタジエン共重合体)、SBR(スチレンブタジエン共重合体)、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)、EPM(エチレンプロピレン共重合体)、シリコン樹脂、ポリオレフィン類等が好適に採用される。」 「【0018】また、前記シート状弾性基体12における25%圧縮時の硬度が、0.35MPa以下またはASKER A型硬度計による測定で20°以下に設定される。前記シート状弾性基体12の硬度が前述の値を超える場合には、シール材としての使用が困難となる。具体的には実際に使用機器に組み込まれて使用される際に、シールすべき筐体等に過大な負荷が常時掛かってしまい、その結果該筐体に歪み、割れまたはカケ等の物理的な欠陥を生じさせる畏れがある。このような物性的な点から、前記シート状弾性基体12としては、殊にメカニカルフロス法により製造される低硬度のポリウレタン発泡体が好適である。」 「【0054】・積層体準備工程S2 ○3(当審注:数字3の○囲みを表す。以下同様。)別工程において、70℃の条件で一対の温熱ロール31,31を使用し、厚さ0.012mmまたは0.050mmの金属薄膜 (アルミニウム箔)14と、厚さキャリアフィルム (0.05mmPETフィルム)16とから積層体を得て供給ロール32aにセットする。 【0055】・成形工程S3 ○4前記弾性基体原料Mに対して、ミキサ等による混合・剪断を実施した後、ロール機構32上に29.4?98.1N(3?10kgf)(テンションをかける対象物が1000mm幅の場合)程度のテンションをかけられた状態で前記供給ロール32aから連続的に供給されている前記積層体の金属薄膜14上に吐出ノズル34を介して、前記シート状弾性基体12の完成時密度が0.3g/cm^(3)となるように供給し、製品厚制御手段36に設定により、製品完成時の導電性シート状弾性体10の厚さが0.5mmとなるようにする。 ○5前記ロール機構32により、前記金属薄膜14上の弾性基体原料Mは、トンネル式加熱炉38内で条件150℃?200℃、1?3分間の加熱が実施され、反応および硬化が進行することで該金属薄膜14と一体的に積層したシート状弾性基体12からなる導電性シート状弾性体10を得る。」 「【0058】 【表1】 」 上記記載事項(特に、【0054】?【0055】及び【表1】の実施例1、2)から、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。 「25%圧縮時の硬度が、0.35MPa以下であり、厚さが0.488mmまたは0.45mmであり、完成時密度が0.3g/cm^(3) であるシート状弾性基体12の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔14が一体に積層され、前記シート状弾性基体12としてエラストマーを使用し、製品完成時の厚さが0.5mmである導電性シート状弾性体10。」 (2)甲2 甲2(特に、314頁「3.純金属の物性値」のアルミニウムAlの行のうち「熱伝導率 λ W/(m・K)」の列)には、以下の事項が記載されている。 「アルミニウム箔の熱伝導率は200W/m・K以上である。」 5.判断 (1)本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点> 本件発明1の発泡体シートは、25%圧縮強度が50?190kPaであるのに対して、甲1発明のシート状弾性基体12は、25%圧縮時の硬度が0.35MPa以下である点。 ア 特許法第29条第1項第3号 相違点を検討する。 甲1発明のシート状弾性基体12の25%圧縮強度には、下限値が限定されておらず、上限値の0.35MPa(300kPA)も、本件発明1の発泡体シートの上限である190kPaを超えるものである。 したがって、相違点は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、甲1発明ではない。 イ 特許法第29条第2項 相違点を検討する。 甲1発明は、「製造時に掛かるテンション等による形状欠陥を防止し得るキャリアフィルムを用いて極力薄い金属薄膜をシート状弾性基体に積層することにより、該シート状弾性基体の形状保持性を向上させ得ると共に、良好なシール性やクッション性等を有する肉薄の導電性シート状弾性体と、該導電性シート状弾性体の製造方法を提供すること」を課題とする(甲1【0012】)。 甲1の【0018】には、「また、前記シート状弾性基体12における25%圧縮時の硬度が、0.35MPa以下またはASKER A型硬度計による測定で20°以下に設定される。前記シート状弾性基体12の硬度が前述の値を超える場合には、シール材としての使用が困難となる。具体的には実際に使用機器に組み込まれて使用される際に、シールすべき筐体等に過大な負荷が常時掛かってしまい、その結果該筐体に歪み、割れまたはカケ等の物理的な欠陥を生じさせる畏れがある。」とあり、甲1発明はガスケットやパッキンに使用するために「良好なシール性やクッション性等を有する」点を課題とするから、甲1発明において、シート状弾性基体12の25%圧縮強度の範囲を50?190kPaとする動機付けがない。よって、甲1発明について、相違点に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 また、甲2には、シート状弾性基体12の25%圧縮強度を50?190kPaとすることについて、記載されていないし、その点を示唆する記載もない。 そして、本件発明1は、相違点に係る構成を有することにより、「電子機器の内部に好適に使用することができる薄さと柔軟性とを有し、かつ熱伝導性に優れる電子機器用熱伝導性積層体を提供することができる」(本件特許明細書【0007】)という作用効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)ア及びイと同様の理由により、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明1、5は、特許法第29条第1項第3号に該当するものでなく、また、本件発明1、5は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1、5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではない。 6.むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1、5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-10-30 |
出願番号 | 特願2013-70418(P2013-70418) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(H01L)
P 1 652・ 113- Y (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
蓮井 雅之 佐々木 正章 |
登録日 | 2018-03-02 |
登録番号 | 特許第6298243号(P6298243) |
権利者 | 積水化学工業株式会社 |
発明の名称 | 電子機器用熱伝導性積層体 |
代理人 | 虎山 滋郎 |
代理人 | 田口 昌浩 |