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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08J |
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管理番号 | 1345903 |
異議申立番号 | 異議2018-700766 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-09-21 |
確定日 | 2018-11-22 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6299653号発明「植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、および包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6299653号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 主な手続の経緯等 特許第6299653号(設定登録時の請求項の数は4。以下「本件特許」という。)は,平成23年2月14日にされた特許出願(特願2011-28784号)の一部を新たに特許出願したものに係るものであって,平成30年3月9日にその特許権が設定登録された。 そして,本件特許に係る特許掲載公報は平成30年3月28日に発行されたところ,特許異議申立人一條淳(以下,単に「異議申立人」という。)は,平成30年9月21日,請求項1?4に係る特許に対して特許異議の申立てをした。 2 本件発明 本件特許の請求項1?4に係る発明は,願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という場合がある。)。 「【請求項1】 ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって, サトウキビ由来エチレンと石油由来α-オレフィンとを,メタロセン触媒の存在下において気相重合法にて得られたサトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂5?90重量%と,石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂10?95重量%とを混合した単層構成のフィルムをヒートシール性フィルムとし, 該α-オレフィンが,ブテン-1またはヘキセン-1またはこれらの混合物であって,前記サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は,密度が0.910?0.925g/cm^(3),メルトフローレートが0.5?4.0g/10分の物性を有することを特徴とする包装材用シーラントフィルム。 【請求項2】 前記ポリエチレン系樹脂は,放射性炭素年代測定^(14)Cの測定値から算定するバイオマス度を有するエチレン-α-オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の包装材用シーラントフィルム。 【請求項3】 請求項1または2に記載の包装材用シーラントフィルムを,基材フィルムと積層させたことを特徴とする包装材用積層フィルム。 【請求項4】 請求項3に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。」 3 取消理由の概要 異議申立人の主張は,概略,次のとおりである。 (1) 本件発明1?4は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である(本決定の便宜上,以下「取消理由1」という。)。すなわち,本件発明1?4は,甲1に記載された発明を主たる引用発明,甲2?3に記載された発明を従たる引用発明としたとき,この主たる引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) そして,上記取消理由1には理由があるから,本件の請求項1?4に係る発明についての特許は,法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。 (3) また,証拠方法として書証を申出,以下の文書(甲1?5)を提出する。 ・甲1: 特許第3003996号公報 ・甲2: 「コンバーテック」,株式会社加工技術研究会,2009年8月,No.437,63?67頁 ・甲3: 特表2010-511634号公報 4 当合議体の判断 当合議体は,以下述べるように,取消理由1には理由はないと判断する。 (1) 本件発明1について ア 甲1に記載された発明 甲1には,特に請求項1,請求項4,【0006】?【0008】,【0013】,【0017】?【0019】,【0026】及び【0027】などの記載からみて,次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「基層とヒートシール層とからなる積層フィルムのための当該ヒートシール層を構成するヒートシールフィルムであって, 該ヒートシールフィルムはエチレン・α-オレフィン共重合体とエチレン重合体を含有する樹脂組成物から形成され, 該樹脂組成物のMFRが5?25/10分,密度が0.87?0.932g/cm^(3),Q値が2?10,ME(3g)が1.2?2.3,MTが1.0以上であり,MEとMTの関係が ME≧[0.2×MT+1]/g を満たし, 前記エチレン・α-オレフィン共重合体がメタロセン触媒を用いて製造され,且つそのMFRが2?30g/10分,密度が0.935g/cm^(3)以下であり, 前記エチレン重合体が0.1?20g/10分のMFR及び0.915?0.930g/cm^(3)の密度を有する高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)であり, 前記樹脂組成物が50?99重量%のエチレン・α-オレフィン共重合体及び1?50重量%のエチレン重合体を含有するヒートシールフィルム。」 イ 一致点及び相違点 本件発明1と甲1発明とを対比すると,甲1発明の「ヒートシールフィルム」は本件発明1の「包装材用シーラントフィルム」,ないしは,ポリエチレン系樹脂からなる単層構成のフィルムとされる「ヒートシール性フィルム」に相当する。 また,甲1発明の「エチレン・α-オレフィン共重合体」及び「エチレン重合体」のモノマー成分は,本件特許の出願時の技術常識からみて,いずれも石油由来のものであるといえる。 また,甲1発明の「エチレン・α-オレフィン共重合体」はメタロセン触媒を用いて製造されたものであるから,エチレンとα-オレフィンとをメタロセン触媒の存在下において得られた直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であるという点で,本件発明1の「サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」に対応するものである。さらに,甲1発明の「エチレン重合体」は,石油由来の低密度ポリエチレン系樹脂であるという点で,本件発明1の「石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」に対応するものである。 そうすると,本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は,それぞれ次のとおりである。 ・ 一致点 「ポリエチレン系樹脂からなるフィルムであって,エチレンと石油由来α-オレフィンとをメタロセン触媒の存在下において得られた直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と,石油由来の低密度ポリエチレン系樹脂とを混合した単層構成のフィルムをヒートシール性フィルムとする包装材用シーラントフィルム。」である点 ・ 相違点1 エチレンとα-オレフィンとをメタロセン触媒の存在下において得られた直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂について,本件発明1は上記エチレンが「サトウキビ由来エチレン」であり,上記α-オレフィンが「ブテン-1またはヘキセン-1またはこれらの混合物」であり,重合方法として「気相重合法」を用いて得られた「サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」であるのに対し,甲1発明はそのような特定を有しない点。 ・ 相違点2 エチレンとα-オレフィンとをメタロセン触媒の存在下において得られた直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の物性について,本件発明1は「密度が0.910?0.925g/cm^(3),メルトフローレートが0.5?4.0g/10分」であるのに対し,甲1発明は「MFRが2?30g/10分,密度が0.935g/cm^(3)以下」である点。 ・ 相違点3 石油由来の低密度ポリエチレン系樹脂について,本件発明1は「直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」であるのに対し,甲1発明は「高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)」である点。 ・ 相違点4 ヒートシール性フィルムを構成する樹脂であるエチレンとα-オレフィンとをメタロセン触媒の存在下において得られた直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と,石油由来の低密度ポリエチレン系樹脂との混合割合について,本件発明1はそれぞれ「5?90重量%」及び「10?95重量%」であるのに対し,甲1発明はそれぞれ「50?99重量%」及び「1?50重量%」である点。 ウ 相違点についての検討 事案に鑑み,まず上記相違点3について検討する。 甲1発明の「高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)」は,高圧法によって重合された低密度ポリエチレンであるから,その構造は直鎖状ではなく,分岐状のものである。 ところで,甲1の記載によれば(特に【0001】?【0005】参照),甲1発明は,加工性に優れているものの,低温ヒートシール性,ヒートシール強度及びホットタック性に劣る高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)について,これを,LDPEの上記欠点を改良することができる性能を有するエチレンとα-オレフィンとの共重合体(線状低密度ポリエチレン)とブレンドして得られるヒートシールフィルムにおけるさらなる改良技術に係るものであり,上記ヒートシールフィルム(樹脂組成物)の物性を「MFRが5?25/10分,密度が0.87?0.932g/cm^(3),Q値が2?10,ME(3g)が1.2?2.3,MTが1.0以上であり,MEとMTの関係が ME≧[0.2×MT+1]/g」を満たすようにすることで,加工性が改良され、低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性が従来の成形材料に比べて著しく優れている積層フィルムを提供するとの課題を解決するものであるといえる。 すなわち,甲1発明(ヒートシールフィルム)は,これを構成する樹脂として,LDPEが配合されてなることをその前提とするものである。 さすれば,甲1発明の「高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)」について,これをLDPE以外のポリエチレン系樹脂,例えば「直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」を採用しようとする動機をそもそも見いだすことができない。 よって,甲1発明において,相違点3に係る構成が想到容易であるとはいえない。 エ 小括 以上のとおりであるから,相違点1,2及び4について検討するまでもなく,本件発明1は甲1発明から想到容易であるということはできない。 (2) 本件発明2?4について 請求項2?4の記載は,請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。そして,本件発明1が甲1発明から想到容易であるということはできないのは上記(1)で検討のとおりであるから,本件発明2?4についても同様の理由により,想到容易であるということはできない。 (3) まとめ 以上のとおり,異議申立人が主張する取消理由1には理由がない。 5 むすび したがって,異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠によっては,特許異議の申立てに係る特許を取り消すことはできない。また,他に本件特許が法113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-11-14 |
出願番号 | 特願2015-77248(P2015-77248) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C08J)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐藤 玲奈、平井 裕彰 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
渕野 留香 須藤 康洋 |
登録日 | 2018-03-09 |
登録番号 | 特許第6299653号(P6299653) |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | 植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、および包装袋 |
代理人 | 結田 純次 |
代理人 | 竹林 則幸 |