• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
管理番号 1346239
審判番号 不服2017-11004  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-25 
確定日 2018-11-16 
事件の表示 特願2014- 87753「コンパクト」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日出願公開、特開2015-207176〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 9月28日付け:拒絶理由通知書
同年12月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 3月30日付け:拒絶査定
同年 7月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月15日 :手続補正書(請求の理由)の提出
平成30年 5月25日付け:平成29年7月25日にされた
手続補正についての補正却下の決定、
拒絶理由通知書(最後)
同年 8月 3日 :意見書、手続補正書の提出

第2 平成30年8月3日にされた手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成30年8月3日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成28年12月19日にされた手続補正により補正された請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)を、以下の請求項1(以下、「補正後の請求項1」という。)とする補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所である。)

(補正前の請求項1)
「【請求項1】
カメラと、映像を正像とする電子回路と、映像を映すディスプレイと照明用のライトを設け、顔の正像が映るようにすると共に、画像ディスプレイと共に化粧品を設けたことを特徴とするコンパクト。」

(補正後の請求項1)
「【請求項1】
カメラと、映像を正像とする電子回路と、映像を映すディスプレイと照明用のライトを設け、顔の正像が映るようにすると共に、画像ディスプレイと共に化粧品を設けたことを特徴とするコンパクトにおいて、前記カメラの走査方向と前記ディスプレイのスキャン方向とを逆方向にすることにより前記正像を映す方法と、
前記カメラの走査方向と前記ディスプレイのスキャン方向とを同方向にし、この逆転像を電子回路に入れて左右逆行処理し、前記正像を映す方法とスキャン方向を逆にして電子回路により正像とする方法という3つの方法によるコンパクト。」

2 補正の適否
(1)本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「カメラと、映像を正像とする電子回路と、映像を映すディスプレイと照明用のライトを設け、顔の正像が映るようにすると共に、画像ディスプレイと共に化粧品を設けたことを特徴とするコンパクト」に、「前記カメラの走査方向と前記ディスプレイのスキャン方向とを逆方向にすることにより前記正像を映す方法と、前記カメラの走査方向と前記ディスプレイのスキャン方向とを同方向にし、この逆転像を電子回路に入れて左右逆行処理し、前記正像を映す方法とスキャン方向を逆にして電子回路により正像とする方法という3つの方法による」という事項(以下、「当該3つの方法」という。)を付加したものである。
また、本件補正と同日に提出された意見書において、「上記の補正は、出願当初の明細書の段落「0011」「0012」「0013」「0014」及び、図4、図5、図6に記載された事項であり」との説明がなされている。

(2)以下、「当該3つの方法」が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されたものであるか検討する。
当初明細書等には、以下の記載がある。

(ア)「【0007】
図1は公知の鏡20で、被写体30は逆像31として映り、右手40が左手41として映る。顔10は鏡の11になり、左右逆向きに映っている。
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図2は本発明の実施例1を示す図である。(A)は被写体、(B)はディスプレイに映った正像を示す図である。図(A)において、10は像を見る人の顔、30は像を見る人の左肩、40は像を見る人の右手である。
【0008】
図2(B)において、21は鏡に相当するディスプレイ、12は見る人のディスプレイ21に映った正像である。12は見る人の正像、42は見る人の右手40が左に映ったものである。32は左肩30が右に映ったものである。21は見る人の正像を表示するディスプレイである。
【0009】
該ディスプレイ21としては、例えば液晶表示器(LCD)が用いられる。この表示器21としては、LCDに限るものではなく、その他の種類の表示器、例えばブラウン管や有機EL,プラズマディスプレイ等でもよい。
【0010】
近くで見るもので、特に4K(走査線情報が4000個あるもの)や8Kのディスプレイの用途として最適の発明である。5は被写体を撮影するカメラで、例えばレンズとCCD(チャージ・カップルド・デバイス)と電子回路で構成されている。図3,図4の実施例1では必要ないが、6は該カメラ5で撮影した画像データに対して必要な場合には左右逆転の画像処理を行う電子回路である。
【0011】
このような実際の像を見るために、実施例1の動作の概要を図3で説明すれば、以下の通りである。先ず、カメラ5で被写体10をレンズ31を通してCCD32上に撮像する。この像は図で左方向33にスキャンされる。34Aはカメラ5の電子回路である。この信号をディスプレイ21に伝え映像として見せる。
【0012】
この場合、ディスプレイ21のスキャン方向36は右方向であり、カメラCCDのスキャン方向と逆である。これを立体的に説明したのが図4である。このように、カメラとディスプレイのスキャン方向を一方から見て逆にすると左右正像になる。」

(イ)「【0013】
図5は本発明の実施例2であって、ディスプレイ21のスキャン方向36とカメラのスキャン方向34を被写体10から見て同一方向にしたものである。この場合は、左右逆転像となるので、この逆転像は、電子回路6に入って左右逆転処理され、信号線35を経てディスプレイ21に送られ、図2の(B)に示すような逆転正像が得られる。つまり図1の、(A)に示す逆転した右手の像41は、図2の42に示すように逆転された右手の像として左側ディスプレイ21上に表示することができる。」

(ウ)「【0014】
図6は本発明の実施例3を示す図である。この場合、ディスプレイの走査方向を逆37とする方法で、電子回路6でそれを行う。」

(3)上記(1)の意見書の説明によれば、当該3つの方法に記載された「前記カメラの走査方向と前記ディスプレイのスキャン方向とを逆方向にすることにより前記正像を映す方法」(以下、「第1の方法」という。)、「前記カメラの走査方向と前記ディスプレイのスキャン方向とを同方向にし、この逆転像を電子回路に入れて左右逆行処理し、前記正像を映す方法」(以下、「第2の方法」という。)及び「スキャン方向を逆にして電子回路により正像とする方法」(以下、「第3の方法」という。)は、それぞれ当初明細書等に記載の実施例1(上記(2)(ア))、実施例2(上記(2)(イ))及び実施例3(上記(2)(ウ))に対応するものと認められる。
しかしながら、第1の方法ないし第3の方法の各方法が、実施例1、実施例2及び実施例3として当初明細書等の段落0007?0014及び図4、図5、図6にそれぞれ個別に記載されているのみであり、第1の方法と第2の方法と第3の方法という3つの方法をコンパクトにおいて行うことについては、当初明細書等に記載されていない。

(4)さらに、第1の方法と第2の方法と第3の方法をコンパクトに設けた構成を上記実施例1ないし実施例3の構成に基づき検討する。
当該3つの方法のうち、少なくとも、上記実施例1に対応する「前記カメラの走査方向と前記ディスプレイのスキャン方向とを逆方向にすることにより前記正像を映す方法」と、上記実施例2に対応する「前記カメラの走査方向と前記ディスプレイのスキャン方向とを同方向にし、この逆転像を電子回路に入れて左右逆行処理し、前記正像を映す方法」とをコンパクトにおいて行うためには、実施例1の「カメラとディスプレイのスキャン方向を一方から見て逆にする」(段落0012)構成と、実施例2の「ディスプレイ21のスキャン方向36とカメラのスキャン方向34を被写体10から見て同一方向にした」(段落0013)構成とをコンパクトに設けることになるが、当該カメラとディスプレイの各スキャン方向の関係が相違する両構成を設けることは、当初明細書等から想定されうる範囲を超えるものである。

(5)したがって、本件補正は、新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年8月3日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年12月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)において「補正前の請求項1」として記載したとおりのものである。

2 拒絶の理由
平成30年5月25日付けの当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-158481号公報(以下、「引用文献1」という。)及び特開平9-262134号公報(以下、「引用文献2」という。)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献について
(3-1)引用文献1について
(3-1-1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由で引用した引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。(下線は強調のため当審で付与した。)

「【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、消費電力を抑えながらも、化粧結果の客観的な評価を行って利用者に示すことができる電子鏡等を提供する。」

「【0024】
本実施形態の電子鏡10は、カメラ20、CPU40、LCD50を含む。カメラ20は撮像手段に、CPU40は制御手段に、LCD50は表示手段に対応する。また、電子鏡10は、本実施形態のようにメモリーブロック30、入力装置70を含んでいてもよい。メモリーブロック30は記憶手段に、入力装置70は指示入力手段に対応する。」

「【0041】
本実施形態の電子鏡10は、電池駆動であるが、部屋の特定の場所に設置されるのに適した形状である。ここで、外出先で化粧直しを行う場合等を考慮すると、例えばコンパクトケースに組み込まれた電池駆動の電子鏡が便利である。図2(B)は、電子鏡10Aの外観図である。電子鏡10Aは、電池で動作し、ヒンジ51を備えることでLCD50を内側に折りたたんで持ち運ぶことができる。なお、図2(A)と同じ要素には同じ符号を付しており、その他の要素の説明は省略する。」

「【0050】
また、図4(A)?図4(B)は、本実施形態の左右反転機能について説明する図である。電子鏡10は、通常の鏡と同じように使用できることを目的として、原画像に対して左右が反転している画像をLCD50に表示する。図4(A)は、左右が反転した画像であって(左右反転機能はオン状態)、利用者は通常の鏡と同じように化粧等を行うことができる。
【0051】
一方、図4(B)は、左右が反転していない画像であって(左右反転機能はオフ状態)、利用者は自分が他人からどのように見られるかを他人の視点で確認することができる。CPU40は、図4(A)の表示と図4(B)の表示との切り換えを、画像処理の1つとして実行してもよい。」

(3-1-2)引用文献1に記載の技術的事項
上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(ア)段落0024には、カメラ、CPU、LCDを含む電子鏡が記載されている。

(イ)段落0041には、外出先で化粧直しを行う場合等を考慮して、電子鏡をコンパクトケースに組み込むことが記載されている。

(ウ)段落0050、0051には、CPUが、原画像に対して左右が反転している画像をLCDに表示することで利用者は通常の鏡と同じように化粧等を行うことができるようにすることと、左右が反転していない画像をLCDに表示することで利用者は自分が他人からどのように見られるかを他人の視点で確認することができるようにすることとの、表示の切り換えを実行すること、が記載されている。

(エ)段落0008には、電子鏡は、化粧結果の客観的な評価を行って利用者に示すことができるものであることが記載されている。

(3-1-3)引用発明
以上より、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
外出先で化粧直しを行う場合等を考慮して、カメラ、CPU、LCDを含む電子鏡が組み込まれたコンパクトケースであって、
前記CPUは、原画像に対して左右が反転している画像をLCDに表示することで利用者は通常の鏡と同じように化粧等を行うことができるようにすることと、左右が反転していない画像をLCDに表示することで利用者は自分が他人からどのように見られるかを他人の視点で確認することができるようにすることとの、表示の切り換えを実行するものであり、
前記電子鏡は、化粧結果の客観的な評価を行って利用者に示すことができるものである、
コンパクトケース。

(3-2)引用文献2について
(3-2-1)引用文献2の記載事項
当審拒絶理由で引用した引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。(下線は強調のため当審で付与した。)

「【0002】
【従来の技術】従来より女性は小型の手鏡やコンパクト或はそれらを入れる容器(小型バック)等を携帯している。手鏡には丸型、角型といった各種形状のものがある。コンパクトは通常は、ファンデーションや化粧用パフ或はアイシャドーや頬紅等を入れる容器本体と同容器本体を開閉する蓋とから構成されている。通常、この蓋の内側には鏡が取付けられている。また、近年は図5に示す様に口紅Aに被せる円筒状の蓋Bの外周に鏡Cを取付けたものもある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】手鏡を携帯していても、また、鏡付の化粧用具や容器等を携帯していても、夜とか暗い所(例えば車の中等)では鏡に顔が映らないため、鏡を見ながら化粧直しをしたり、身だしなみを正したりすることができなかった。
【0004】本発明の目的は暗い場所ででも鏡に顔がはっきりと映り、化粧直しや身だしなみを綺麗に整えることができる照明付携帯用具を提供することにある。」

「【0010】
【発明の実施の形態2】本発明の照明付携帯用具の第2の実施の形態を図2に基づいて説明する。図2に示すものは携帯用具2がコンパクトの場合であり、ファンデーション16を入れる容器本体17と、同容器本体17を開閉する蓋5とから構成され、蓋5の内側に鏡1が取付けられている。図2(b)に示す様にライト13は蓋5の内側上方であって鏡1より上と、鏡1の両側方とに設けられている。このライト13はスイッチ4を手動でON、OFF操作すると点灯、消灯する様になっている。蓋5の内部には図2(b)に示す様にバッテリー19をセット可能なバッテリーケース20を出し入れ自在としてあり、そのバッテリーケース20を蓋5内に押込むとバッテリー19が所定位置にセットされて、電極21に接触して導通可能になるようにしてある。図2(b)ではスイッチ4をONにするとバッテリー19の+極→スイッチ4→ライト13→バッテリー19の-極の閉回路が構成されてライト13が点灯し、スイッチ4をOFFにするとその閉回路が解除されてライト13が消灯するようにしてある。
【0011】
【発明の実施の形態3】本発明の照明付携帯用具の第3の実施の形態を図3に基づいて説明する。図3に示すものも携帯用具2がコンパクトの場合であり、アイシャドー19を入れる容器本体17と同容器本体17を開閉する蓋5とから構成され、蓋5の内側に鏡1が取付けられている。蓋5の内側上方であって鏡1より上には図3(b)に示す様にライト13が取付けられ、蓋5の下部にスイッチ4が取付けられている。このスイッチ4は蓋5が開くとON、閉じるとOFFとなるようにしてある。蓋5の内部には図3(b)に示す様にバッテリー19を収容可能な収容部20が形成されており、その収容部20内にバッテリー19を収容して裏蓋22を閉じるとバッテリー19が収容部20内にセットされて、電極21に接触して導通可能になるようにしてある。図3(b)では蓋5を開くとスイッチ4がONとなって、バッテリー19の+極→スイッチ4→ライト13→バッテリー19の-極の閉回路が構成されてライト13が点灯し、蓋5を閉じとその閉回路が解除されてライト13が消灯するようにしてある。」

(3-2-2)引用文献2に記載された技術
以上より、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。

「ファンデーションを入れる容器本体と、同容器本体を開閉する蓋とから構成され、蓋の内側に鏡が取付けられているコンパクトにおいて、又は、アイシャドーを入れる容器本体と、同容器本体を開閉する蓋とから構成され、蓋の内側に鏡が取付けられているコンパクトにおいて、
少なくとも蓋の内側上方であって鏡より上にライトが設けられ、暗い場所ででも鏡に顔がはっきりと映り、化粧直しや身だしなみを綺麗に整えることができる
コンパクト。」

4 引用発明との対比
(4-1)本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「LCD」は、本願発明の「映像を映すディスプレイ」に相当する。

(イ)引用発明の「CPU」は、「左右が反転していない画像をLCDに表示することで利用者は自分が他人からどのように見られるかを他人の視点で確認することができるようにすること」に係る処理を行うものであるから、「映像を正像とする電子回路」に相当し、また、「顔の正像が映るようにする」ものであるといえる。

(ウ)本願発明の「コンパクト」は、本願の段落0017及び図9に記載のように、コンパクトケース10Aのような筐体を当然に備えるものと解され、引用発明の「コンパクトケース」は、当該コンパクトケース10Aのような筐体に一致するものといえるから、本願発明の「コンパクト」と、引用発明の「電子鏡が組み込まれたコンパクトケース」とは、「コンパクトケースを備えた装置」である点で一致する。

(4-2)一致点、相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「カメラと、映像を正像とする電子回路と、映像を映すディスプレイを設け、顔の正像が映るようにした、コンパクトケースを備えた装置。」

(相違点1)
コンパクトケースを備えた装置が、本願発明では、「画像ディスプレイと共に化粧品を設けた」「コンパクト」であるのに対し、引用発明では、「外出先で化粧直しを行う場合等を考慮して、」「電子鏡が組み込まれたコンパクトケース」である点。

(相違点2)
コンパクトケースを備えた装置が、本願発明では、「照明用のライトを設け」ているのに対し、引用発明では、照明用のライトを設けていない点。

5 判断
上記各相違点について、以下に検討する。

(5-1)相違点1について
引用文献2に記載された技術における「ファンデーション」及び「アイシャドー」は、本願発明の「化粧品」に相当する。
引用発明の「電子鏡が組み込まれたコンパクトケース」は、「外出先で化粧直しを行う場合等を考慮し」たものであり、かつ、「前記電子鏡は、化粧結果の客観的な評価を行って利用者に示すことができるものである」ことから、当該「電子鏡が組み込まれたコンパクトケース」が化粧時に使用されるものであることは、明らかである。
そして、引用文献2に記載された、容器本体にファンデーション又はアイシャドーを入れるコンパクトは、化粧直しなどにおいて用いられるものであるから、引用発明の「電子鏡が組み込まれたコンパクトケース」において、引用文献2に記載された、容器本体にファンデーション又はアイシャドーを入れる構成を採用して、「コンパクトケースを備えた装置」を「画像ディスプレイと共に化粧品を設けた」「コンパクト」とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。

(5-2)相違点2について
上記「(5-1)相違点1について」において示したとおり、引用発明の「電子鏡が組み込まれたコンパクトケース」が化粧時に使用されるものであることは、明らかな事項である。そして、化粧時において化粧を綺麗に整えることは、化粧本来の目的であって、当該目的は、引用文献2に記載された技術とも共通するものであるから、引用発明の「電子鏡が組み込まれたコンパクトケース」おいて、「暗い場所ででも鏡に顔がはっきりと映り、化粧直しや身だしなみを綺麗に整えることができる」ようにするために、照明用のライトを設けることは、引用文献2に記載された技術に基づき、当業者が容易に想到しうるものである。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-08-27 
結審通知日 2018-09-04 
審決日 2018-09-21 
出願番号 特願2014-87753(P2014-87753)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06T)
P 1 8・ 561- WZ (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 久博  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 樫本 剛
鳥居 稔
発明の名称 コンパクト  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ