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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A45C
管理番号 1346254
審判番号 不服2018-12951  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-28 
確定日 2018-12-05 
事件の表示 特願2018-89996「宝飾箱」拒絶査定不服審判事件〔未公開、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年5月8日に出願されたものであって、平成30年5月14日に早期審査に関する事情説明書が提出され、同年6月18日付けで拒絶理由が通知され、同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月22日付けで拒絶査定がされ、それに対して同年9月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日に早期審理に関する事情説明書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年8月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし3に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-211922号公報
2.特開2002-245844号公報
3.特開2009-266672号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成30年7月27日提出の手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)。

「 【請求項1】
下箱体と、
前記下箱体に支持されて、青色蛍光性を有するダイヤモンドと、
前記下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記下箱体に合わさって前記ダイヤモンドを隠し、開き位置で前記ダイヤモンドを露出する上箱体と、
前記下箱体または前記上箱体に支持されて、前記上箱体が前記開き位置に達した後に徐々に光量を増加させながら前記ダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源と、
を備えることを特徴とする宝飾箱。
【請求項2】
請求項1に記載の宝飾箱において、前記下箱体に嵌め込まれて、表面に布材を有する緩衝材を備え、前記光源は、前記紫外線を含む透明な光線を放出することを特徴とする宝飾箱。
【請求項3】
請求項2に記載の宝飾箱において、前記光源は、照射域全域で前記下箱体および前記上箱体によって遮られる指向性を有することを特徴とする宝飾箱。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の理由に引用された上記引用文献1には、「宝石箱」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)引用文献1の記載事項
ア.「【請求項1】ケース本体と、このケース本体の縁部に連結され、該ケース本体に対して一定角度開く上蓋と、前記ケース本体あるいは上蓋の少なくともいずれか一方に配置され、上蓋の開閉に応じてケース本体の内側面に対して紫外線を照射する紫外線照射手段とを具備することを特徴とする宝石箱。」

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、宝石箱、特に紫外線照射により特殊な蛍光を発して所定の表示をするダイヤモンドを適宜配置した装飾品を収納する宝石箱に関する。」

ウ.「【0013】図中の付番1は宝石箱を示す。この宝石箱1は、ケース本体2と、このケース本体2の縁部と連結部材3を介して連結する上蓋4と、上蓋4の内側に設置された紫外線ランプ(紫外線照射手段)5とを備えている。前記上蓋4は、ケース本体2に対して約70度程度まで開くように設定されている。前記紫外線ランプ5には、上蓋4の内側に設置されたスイッチ6及び電源7が電気的に接続されている。ここで、上蓋4を開いたときスイッチ6がONとなって紫外線ランプ5が点灯し、上蓋4を閉じたときスイッチ6がOFFとなって紫外線ランプ5が消灯するようになっている。前記紫外線ランプ5、スイッチ6及び電源7により紫外線照射機構が構成され、これら紫外線ランプ,スイッチ6,電源7の回路図は、図3に示す通りである。但し、図3において、付番8は抵抗、付番9はトランスを示す。
【0014】前記ケース本体2の内側には、上部に溝10を有した宝飾品用支持部材11が収納されている。この支持部材11の溝部分には、例えば指輪12が固定されている。この指輪12は、図2に示すように、紫外線15の照射により蛍光例えば青白色な光を発する多数のダイヤモンド13からなる第1の群と、紫外線の照射により蛍光を発しない多数のダイヤモンド14からなる第2の群を、固定金具15に適宜配置した構成となっている。
【0015】こうした構成の宝石箱によれば、上蓋4に紫外線ランプ5とスイッチ6と電源7を備えた紫外線照射機構を具備した構成になっているため、上蓋4を開いた時、スイッチ6が“ON”して紫外線ランプ5が点灯し、ケース本体2の内側,特にこのケース本体2に収納された指輪12に紫外線15を照射することができる。そして、紫外線15を照射された第1の群を構成するダイヤモンド13からは青白色な光が発せられる一方、第2の群を構成するダイヤモンド14からは蛍光が発せられないので、例えば、図2に示すような月日の表示「1 1」(1月1日を意味する)が鮮明に表示される。」

エ.上記ア.、ウ.及び図1の記載から、上蓋4は、ケース本体2に連結部材3を介して開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記ケース本体2に合わさってダイヤモンド13を隠し、開き位置で前記ダイヤモンド13を露出するものであることが明らかである。

オ.上記ウ.及び図1の記載から、紫外線ランプ5は、ダイヤモンド13に向かって紫外線を照射するものであることが明らかである。

カ.上記ウ.及び図1の記載から、ケース本体2に対して上蓋4が離れてスイッチ6がONとなったときに、紫外線ランプ5がダイヤモンド13に向かって紫外線を照射することが明らかである。

(2)引用発明
上記(1)及び図面からみて、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ケース本体2と、
前記ケース本体2に収納された宝飾品用支持部材11に固定されて、蛍光例えば青白色な光を発する多数のダイヤモンド13と、
前記ケース本体2に連結部材3を介して開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記ケース本体2に合わさって前記ダイヤモンド13を隠し、開き位置で前記ダイヤモンド13を露出する上蓋4と、
前記上蓋4の内側に設置されて、前記ケース本体2に対して前記上蓋4が離れてスイッチ6がONとなったときに、前記ダイヤモンド13に向かって紫外線を照射する紫外線ランプ5と、
を備える宝石箱1。」

2.引用文献2について
原査定の理由に引用された上記引用文献2には、「浴室の演出照明装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0004】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、浴室の斜視構成図であり、浴室1内に設置された浴槽2の側壁面には、2個の水中照明3,3が設けられており、この水中照明3は、図2に示すように、浴槽2内の水中に没する側壁面部位に設けられた透光窓3a,3aを通してLEDの光を浴槽2の水中内に照射することができ、浴槽2内の水中をLEDからの光で良好に演出照明できるように構成したものであり、例えば、青の光を発する青色のLEDと、赤色の光を発する赤色のLEDと、緑色の光を発する緑色のLEDで水中照明3は構成されている。」

イ.「【0010】また、浴室1内で身体を洗う際等には、リモコン8の標準スイッチ10がONされ、この標準スイッチ10がONされると、水中照明3が消灯され、制御ボックス6を介して第1室内照明4,4が暗い状態から徐々に明るさを増して100%の全灯状態となり、第1室内照明4,4が全灯状態となった時に、第2室内照明5が点灯され、浴室1内を明るく照らすことができるものとなる。
【0011】なお、この状態で、リモコン8の調光用のダウンスイッチ14が操作されると、第1室内照明4,4は操作に伴って明るさを低下させてゆくが、第1室内照明4,4が全灯状態から少しでも明るさを低下させた時には、第2室内照明5が制御ボックス6を介し自動的に消灯されて、浴室1内を薄暗く落ち着いた環境にすることができるものである。また逆に、調光用アップスイッチ13が操作されると、第1室内照明4,4は徐々に明るさを増してゆき、第1室内照明4,4が100%の全灯状態に達した時に、自動的に第2室内照明5が点灯されて、浴室1内を明るく照明することができるものである。また、浴室1から外に出て、洗面室の電源スイッチ9をOFFした時には、第2室内照明5、第1室内照明4,4及び水中照明3は消灯されるものである。
【0012】このように本例では、水中照明3を作動させる時に、リモコン8のクールスイッチ11またはウォームスイッチ12を操作するだけで、第1室内照明4の明るさを低下させ、また第2室内照明5を消灯させることができ、煩わしい操作を行なうことなく自動的に浴室1内が暗くされて、良好な演出効果が得られるものである。さらに調光用のアップスイッチ13またはダウンスイッチ14を操作することで、第1室内照明4の明るさの増減に連動させて第2室内照明5を消灯または点灯させることができ、煩わしい操作をすることなく浴室の室内照明を良好に制御できるものである。」

3.引用文献3について
原査定の理由に引用された上記引用文献3には、「照明装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
本発明は、室内の壁面を照らす壁面照明やショーウインドウに飾られる被写体を照らすショーウインドウ照明や屋外のビル等の壁面を照らす屋外照明に使用される照明ユニットの一部に紫外線ランプを搭載し、被写体をその照明により演出する照明装置に関するものである。」

イ.「【0006】
本課題を解決するために請求項1記載の本発明は、紫外線(BLA)を放射する紫外線ランプ(紫外線ランプ11、例えば、LED・EEFL・蛍光管、電球)および可視光線(COO・CYY)であって有彩色(オレンジ色、黄色、例えば青、緑、紫、赤、ピンク、蛍光灯色等)を放射する可視光線ランプ(可視光線ランプ12・13のいずれか一つであってもよい、その他可視光線ランプには例えば、LED・EEFL・蛍光管、電球)を一つのユニットに収容するとともに、被写体(5・6、例えばおもちゃ・壁面・衣服・鞄等)を照射するように構成された照明ユニット(照明ユニット10)と、当該照明ユニット(照明ユニット10)に接続され前記紫外線ランプおよび前記可視光線ランプの照度を制御する制御部(制御部40)とを備えた照明装置(照明装置1)であって、前記制御部は、各ランプ(紫外線ランプ11及び可視光線ランプ12・13、可視光線ランプはいずれか一つであってもよい)の照度を時間に伴い制御するパターンが記憶されたパターンデータ(パターンデータ25)と、当該パターンデータ(パターンデータ25)に基づいて各ランプ(紫外線ランプ11及び可視光線ランプ12・13、可視光線ランプはいずれか一つであってもよい)の照度を制御する制御コントローラ(制御コントローラ20)と、を設け、前記パターンデータ(パターンデータ25)は、前記各ランプ(紫外線ランプ11及び可視光線ランプ12・13、可視光線ランプはいずれか一つであってもよい)の照度を暗い照度から明るい照度へ徐々に移行させるフェードイン手段(フェードイン手段26)と、前記各ランプ(紫外線ランプ11及び可視光線ランプ12・13、可視光線ランプはいずれか一つであってもよい)の照度を明るい照度から暗い照度へ徐々に移行させるフェードアウト手段(フェードアウト手段27)と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
以上の構成により、照明装置は紫外線ランプや可視光線ランプを時々刻々と被写体に与える光の照度を変化させることができるので、紫外線ランプの放射により被写体が発光し白く鮮やかに見えたり、鮮やかな白が今度は徐々に薄れ、可視光線ランプの光りの色が現れて来たりと、被写体に与える色の演出を様々に楽しむことができる。
可視光線ランプは、いずれか一つであっても本実施形態を実現できるが、複数である場合には多色の色を放射することができるので、多彩な演出ができなおよい。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「ケース本体2」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「下箱体」に相当し、以下同様に、「収納された宝飾品用支持部材11に固定されて」は「支持されて」に、「紫外線15の照射により蛍光例えば青白色な光を発する」は「青色蛍光性を有する」に、「多数のダイヤモンド13」あるいは「ダイヤモンド13」は「ダイヤモンド」に、「前記上蓋4の内側に設置され」ることは「前記下箱体または前記上箱体に支持され」ることに、「紫外線ランプ5」は「光源」に、「宝石箱1」は「宝飾箱」にそれぞれ相当する。
また、引用発明における「連結部材3を介して」連結されることと、本願発明1における「ヒンジで」連結されることとは、「連結部材を介して」連結されることという限りにおいて一致する。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「下箱体と、
前記下箱体に支持されて、青色蛍光性を有するダイヤモンドと、
前記下箱体に連結部材を介して開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記下箱体に合わさって前記ダイヤモンドを隠し、開き位置で前記ダイヤモンドを露出する上箱体と、
前記下箱体または前記上箱体に支持されて、前記ダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源と、
を備える宝飾箱。」

[相違点1]
「連結部材を介して」連結されることに関して、
本願発明1においては、「ヒンジで」連結されることであるのに対し、
引用発明においては、連結部材3を介して連結されることである点。

[相違点2]
「ダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源」に関して、
本願発明1においては、「前記上箱体が前記開き位置に達した後に徐々に光量を増加させながら」照射するものであるのに対し、
引用発明においては、紫外線ランプ5がケース本体2に対して上蓋4が離れてスイッチ6がONとなったときに照射するものである点。

まず、事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献2には、標準スイッチ10又は調光用アップスイッチ13が操作されると、第1室内照明4,4は徐々に明るさを増していくことが記載されており、また、引用文献3には、壁面やショーウィンドウに飾られる被写体を照らすための紫外線ランプ11及び可視光線ランプ12・13の照度を暗い照度から明るい照度へ徐々に移行させることが記載されている。
引用文献2や引用文献3の記載事項から、「徐々に光量を増加させながら対象物を照射する光源」が本願出願前周知の技術であるといえたとしても、引用発明は、ダイヤモンドに紫外線を照射して蛍光を発するようにするものであり、引用文献2に記載される浴室の照明や引用文献3に記載される壁面やショーウィンドウに飾られる被写体を照らす照明とは、照明の用途や作用が異なるものであるから、引用発明に、かかる周知の技術を適用する動機づけは見あたらない。
また、引用発明は、ケース本体2に対して上蓋4が離れてスイッチ6がONとなったときに紫外線を照射するものであり、換言すれば上蓋4が開き始めたときに紫外線を照射するものであるが、仮に、引用発明に、「徐々に光量を増加させながら対象物を照射する光源」という技術を適用できたとしても、「上箱体が前記開き位置に達した後に徐々に光量を増加させ」ることは、何れの文献にも記載がなく、当業者といえども、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項である「前記上箱体が前記開き位置に達した後に徐々に光量を増加させながらダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源」という事項を導き出すことはできない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る発明特定事項を備えることにより、「上箱体が閉じ位置から開放されると、ダイヤモンドは露出していく。可視光(自然光や電灯の光)の下でダイヤモンドは透明な輝きを放つ。上箱体が開き位置に達した後、光源からダイヤモンドに紫外線は照射される。紫外線の光量が増加するにつれて、ダイヤモンドは徐々に透明から青色に変色していく。こうして上箱体の開放動作に応じて光の演出効果は作り出される。この演出効果で宝飾箱の観察者に他にはない感動を引き起こすことができる。」(段落【0009】)という格別な効果を奏するものである。
したがって、本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

2.本願発明2及び3について
本願発明2及び3も、本願発明1の「前記上箱体が前記開き位置に達した後に徐々に光量を増加させながらダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源」と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし3に係る発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-20 
出願番号 特願2018-89996(P2018-89996)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A45C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大内 康裕長清 吉範  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
佐々木 芳枝
登録日 2018-12-14 
登録番号 特許第6450881号(P6450881)
発明の名称 宝飾箱  
代理人 特許業務法人落合特許事務所  

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