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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E04H
管理番号 1346256
審判番号 不服2018-1664  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-06 
確定日 2018-12-04 
事件の表示 特願2013-187451「建物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月23日出願公開、特開2015- 55051、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月10日の出願であって、平成29年2月2日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年3月14日付けで手続補正がされ、平成29年8月16日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年10月19日付けで手続補正がされ、平成29年12月19日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年2月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年4月18日に前置報告がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 本願請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1、2、4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願請求項4に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
引用文献1.特開2001-3582号公報
引用文献2.特開平5-247997号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2001-349069号公報
引用文献4.特開2012-7406号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は、「躯体としての外壁」を、「前記壁柱以外の躯体としての壁」と限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、 当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「躯体」という用語の意味が、「建築物の,建具,造作,仕上げ,設備など除いた部分,主として強度を受け持つ.」(建築大辞典 第2版 彰国社 1993年発行)であることから、出願当初明細書の段落【0022】の記載を参酌して、図1、図3をみると、第2方向には、「壁柱18」以外の躯体としての壁を備えないことが看て取れるので、当該補正は、新規事項を追加するものではない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成30年2月6日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
対向配置され第1方向へ延設された躯体としての外壁と、
前記外壁と接合され、前記外壁とボックスカルバート状の躯体を形成するスラブと、
前記ボックスカルバート状の躯体内部における前記第1方向の中央部に設けられて前記スラブを支持し、前記第1方向と交差する第2方向が強軸とされた壁柱と、
前記壁柱の前記第2方向の一方の端部から前記スラブの一方の端部まで、及び、前記壁柱の前記第2方向の他方の端部から前記スラブの他方の端部まで、前記外壁に沿って設けられ、前記躯体内部を区画する境壁と、
を有し、前記壁柱は前記第1方向の厚さが前記境壁の厚さより厚く形成され、柱梁架構を備えず、前記第2方向に前記第2方向の水平荷重を負担する袖壁及び前記壁柱以外の躯体としての壁を備えない建物。
【請求項2】
前記壁柱は、前記第1方向の厚さが、前記外壁及び前記スラブの厚さより厚くされている請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記壁柱と前記境壁で区画される矩形状のスペースに水回り機器が納められ、
前記スペースの前記第2方向の幅は、浴室の前記第2方向の幅と同じとされている請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記境壁には、入居者が移動可能な開口部が形成されている請求項1?3のいずれか1項に記載の建物。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審決で付した。以下同様。)。
(1) 「【0024】 この実施の形態2に係る集合住宅も、図2及び図4に示すように、パネル組立住宅のような壁式構造の建物1であり、第1の住戸30と第2の住戸40を左右に並べて配置している。第1の住戸30及び第2の住戸40は平面正方形の居住空間31、41と、その居住空間31、41の横に隣接させて配置した平面矩形の設備空間30A、40Aとをそれぞれ備えている。」

(2)図2は次のものである。


上記(1)を踏まえると、図2から、以下のことが看取できる。
「対向配置され第1方向(図面上下方向)へ延設された躯体としての外壁と、
外壁に沿って設けられ、躯体内部を区画する境壁を、を有し、
第2方向(図面左右方向)にも外壁を備え、柱梁架構を備えない建物。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「パネル組立住宅のような壁式構造の建物であって、
対向配置され第1方向へ延設された躯体としての外壁と、
前記外壁に沿って設けられ、前記躯体内部を区画する境壁を有し、
第2方向にも外壁を備え、柱梁架構を備えない建物。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、以下のことが記載されている。

(1) 「【0009】上記壁式ラーメン架構は、その居住空間の内部に配設されていた従来の桁行方向耐力壁を廊下等の床スラブ4、ベランダ等の床スラブ5の外側に配設して、床スラブ4、及び床スラブ5の内、外側に桁行方向耐力壁1,1を建て込み支持した構成となり、少なくとも桁行方向耐力壁1の各壁柱1aと壁梁1b、張間方向耐力壁2の壁梁が一体に接合されたラーメン架構となり、さらに、前記のように耐力壁が効果的に組み込まれて優れた架構耐力を有し、図示のように壁柱や壁梁などが現出されていない広い居住空間Sが形成され、居住者の好みに対応して間仕切壁が自在に組み替えられるプランニングの自在性を有し、さらに、高層化される。また、ホテルや事務所等への変更が自在になつている。張間方向耐力壁2には必要に応じて開口が形成され、廊下やベランダ等が居住空間として、あるいは事務室等にも適用できるなど用途が多様化される。」

(2)図1は次のものである。


上記(1)を踏まえると、平面視機構図である図1(A)から、以下のことが看取できる。
「対向配置され第1方向(X方向)へ延設された躯体としての帳間方向耐力壁2と、
躯体内部に設けられて壁梁1bを支持し、前記第1方向と交差する第2方向(Xb方向)が強軸とされた壁柱1aと、
外壁に沿って設けられ、躯体内部を区画する帳間方向耐力壁2と、
を有し、前記壁柱1aは前記第1方向の厚さが前記梁間方向耐力壁2の厚さより厚く形成された建物。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、以下のことが記載されている。

(1) 「【0013】 図1において、本発明の共同住宅は1住宅に居住ユニットA1aと居住ユニットB1bの2つの居住ユニットを有する例であり、各居住ユニットの境壁2dに貫通して出入り口3dを設け、出入り口3dにはドア4dを設けて1住宅を1戸としている状態の例である。それぞれの居住ユニットには玄関A8a、玄関B8b、厨房A9a、厨房B9b、バスA10a、バスB10b、トイレA11a、トイレB11bがあり、それぞれの居住ユニットが単独で生活機能を有しているため理想的な2世帯住宅である。なお前記出入り口の閉鎖用パネルであるA閉鎖パネル5aとB閉鎖パネル5bはこの状態の時にはバルコニー13側に設けられた収納庫12に収納されている。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、以下のことが記載されている。

(1) 「 【0015】 以下、本発明に係る住戸ユニットの実施形態について、図1から図4を参照して説明する。本実施形態の住戸ユニット1は、図1に示すように、各種共用空間を有する共用部R0と、上記共用空間の1つである住戸前廊下12に玄関部Eを介して各別に出入り可能に接続されると共に、互いに隣接して配設された3つの住戸(第1の住戸R1、第2の住戸R2及び第3の住戸R3)と、が集合した3住戸1ユニットタイプの住戸ユニットである。
【0016】 この住戸ユニット1は、正面F側が南側、背面B側が北側に面するように建てられたマンション等の集合住宅の一部を構成するユニットとして機能している。つまり、本実施形態の住戸ユニット1が複数組み合わさって集合住宅が構成される。また、この住戸ユニット1を含む集合住宅は、複数の柱部2、梁部3及び壁体4で構成されたラーメン構造或いは耐震壁併用ラーメン構造により建築されている。」

(2)「【0027】 このように構成された住戸ユニット1によれば、ラーメン構造或いは耐震壁併用ラーメン構造であるため、例えば15階を越えるような構造建築にも十分対応可能な剛性(建築強度)を確保することができる。
【0028】 また、扁平柱20を備え、該扁平柱20に柱部としての機能と、壁体としての機能と、を兼用させることができるので、柱部2間に壁体4を形成する場合とは異なり室内への出っ張りを抑制しながらユニット全体の剛性強化を図ることができる。特に、扁平柱20を利用することで室内への出っ張りを抑制できるので、居住空間が広く、収納等にも影響を与え難い間取りに設計し易く、快適な居住性を確保し易い。また、高い剛性を有する扁平柱20を利用して隣接し合う住戸R1、R2、R3を互いに結合させているので、住戸ユニット1全体の剛性バランスを任意に調整し易く、全体の剛性を高めると同時に耐震性を向上させ易い。なお本実施形態の扁平柱20は桁行方向L1に長いので、該桁行方向L1の耐震性をより顕著に向上させることが可能である。」

(3)図1は次のものである。


上記(1)、(2)を踏まえると、図1から、以下のことが看取できる。

「扁平柱20の端部から外壁に沿って設けられ躯体内部を区画する壁部4を有し、前記扁平柱20は前記第1方向(図面上下方向)の厚さが前記壁部4の厚さより厚く形成されている建物。」

5 その他の文献について
前置報告書において引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である特公平6-33623公報(以下、「引用文献5」という。)の第2頁第3欄第33-48行には、以下のことが記載されている。

(1) 「第1図において、互いに平行な相対向する一対の壁体(1)(1)を、第2図以下で示すような型枠コンクリートブロック(2)(2)…で構築し、これら壁体(1)(1)間に架設されるスラブ(3)(3)…を、両壁体(1)(1)のブロック(2)(2)…内へ打設されるコンクリートと一体打ちして両者を相互に一体連結し、これによって、壁体(1)(1)と直角な方向に対しては両壁体(1)(1)とコンクリートスラブ(3)とからなる剛節架構構造によって、その方向の水平荷重を支持するものである。(4)は、壁体(1)(1)の上端間に取付けた屋根材であって、これはPCコンクリート等でもよい。
上記の如く、上記壁体(1)と直角な方向に対しては耐力壁で水平荷重を支持する必要がないから、これと同じ方向即ち開口方向に対してはカーテンウォール等の非耐力壁(5)を用いることができる。」

(2)図1は次のものである。

上記(1)を踏まえると、図1から、以下のことが看取できる。

「対向配置され第1方向へ延設された躯体としての壁体1と、
前記壁体1と接合され、前記壁体1とボックスカルバート状の躯体を形成するコンクリートスラブ3と、
を備え、柱梁架構を備えず、第1方向(壁体(1)と平行な方向)と直交する第2方向(壁体(1)と直角な方向)に壁を備えない建物。」

更に、当審で発見した、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-70671号公報(以下、「引用文献6」という。)には、以下のことが記載されている。

(1) 「【0032】 まず、本実施例に係る建物構造の構成を説明する。本実施例の建物構造は、図1に示すように、平板中に中空部を持ち壁及び柱として機能する壁柱6と、同じく平板中に中空部を持ち床スラブ及び梁として機能する床梁7とを主体として、梁間方向には壁構造、桁行方向にはラーメン構造として基礎8の上に構築されている。
【0033】 図2に示すように、壁柱6は、コンクリートからなる平板中に第1の円筒状中空部9の複数個がそれぞれ所定間隔をおいて当該第1の円筒状中空部9の長手方向が直立方向となるように並設されている。壁柱6は、並設された複数個の第1の円筒状中空部9の両側に複数個の鉄筋10が適宜間隔で配列されて鉄筋コンクリート構造となっている。複数個の前記第1の円筒状中空部9の各間隔部の部分により、平板形成材、即ち鉄筋コンクリート材による適宜幅の通し部11が形成されている。該通し部11により、壁柱6に直立方向の剛性が付与される。
【0034】 図2及び図4に示すように、前記床梁7は、コンクリートからなる平板中に第2の円筒状中空部12の複数個がそれぞれ所定間隔をおいて当該第2の円筒状中空部12の長手方向が桁行方向となるように並設されている。床梁7は、並設された複数個の第2の円筒状中空部12の上下に複数個の鉄筋10が適宜間隔で配列されて鉄筋コンクリート構造となっている。複数個の前記第2の円筒状中空部12の各間隔部の部分により、平板形成材、即ち鉄筋コンクリート材による適宜幅の通し部13が形成されている。該通し部13により、床梁7に桁行方向の剛性が付与される。
【0035】 前記壁柱6及び床梁7における筒状中空部9,12は、上記のように円筒状に限らず、図6の(b)に示すように、一辺が波型をした変形四角形等の断面形状を含む角筒状に形成してもよい。また、前記壁柱6及び床梁7における筒状中空部9,12は、連続した筒状体に限らず、適宜に分割された構成としてもよい。中空部を連続式又は分割式の何れの構成とした場合であっても、通し部11又は13については、連続した構成とする。
【0036】 本実施例の建物構造は、図2及び図3に示す前記壁柱6と前記床梁7との梁間方向と同方向の交差部Cが剛接合されて、桁行方向にラーメン構造として構成されるものであるが、図5に示すように、該交差部Cの部分は、中空ではなく、密実に形成することで、剛接合の強度が高められる。さらに、図7に、図5の変形例として示すように、前記壁柱6側の前記密実の部分は、前記床梁7の厚さを所要量超えた範囲に及ぶように形成し、前記床梁7側の前記密実の部分は、前記壁柱6の厚さを所要量超えた範囲に及ぶように形成し、この所要量超えた範囲の部分に補強鉄筋(図示せず)を入れることで、前記壁柱6と前記床梁7との剛接合の強度を一層高めることが可能となる。
【0037】 上述のように、建物構造は、鉄筋コンクリート構造の平板中に、長手方向が直立方向の複数個の第1の円筒状中空部9を持つ壁柱6と、鉄筋コンクリート構造の平板中に、長手方向が桁行方向の複数個の第2の円筒状中空部12を持つ床梁7とを主体として構成されている。該建物構造は、コンクリートの現場打設により構築される。該コンクリートの打設は、下階床梁7→下階壁柱6→上階床梁7→上階壁柱6の順で行われる。
【0038】 前記下階床梁7のコンクリート打設は、まず格子状に鉄筋を配筋し、その上に第2の円筒状中空部12となる複数個のボール紙製の中空円筒を長手方向が桁行方向となるように並べる。各中空円筒は、所要長さで両端は閉塞されている。これらの中空円筒の上に再度、格子状に鉄筋を配筋して複数個の中空円筒を格子状の鉄筋でサンドイッチするように組み立てる。この格子状の鉄筋と複数個の中空円筒との組み立て体に箱型の型枠を組み付けて、コンクリートを打設する。
【0039】 このとき、両端が閉塞された複数個の中空円筒は、埋め殺しにされる。前記床梁用の箱型の型枠は、四隅にそれぞれ足が付いており、前記下階床梁7のコンクリートが打上がった後、横方向に引出してクレーンで上階に吊り上げられて、上階床梁7のコンクリート打設のときに再使用される。
【0040】次いで、下階壁柱6のコンクリート打設が行われる。前記下階床梁7のコンクリートが打上がったとき、該下階床梁7の所定位置に下階壁柱6用の縦筋が出ている。この縦筋に継手等により下階壁柱6用の2列の格子状の鉄筋を上方に伸ばし、該2列の格子状の鉄筋の間に、第1の円筒状中空部9となる複数個のボール紙製の中空円筒を長手方向が直立方向となるように並べる。このようにして、前記と同様に、複数個の中空円筒を格子状の鉄筋でサンドイッチするように組み立てる。この格子状の鉄筋と複数個の中空円筒との組み立て体に縦型枠を組み付けて、コンクリートを打設し、下階壁柱6を構築する。以下、上階床梁7→上階壁柱6の順で構築を実行する。
【0041】 次に、上述のように構成された建物構造の作用を説明する。壁柱6は、コンクリートの平板中に第1の円筒状中空部9の複数個を形成することで、使用するコンクリートの量が同量であれば、第1の円筒状中空部9の複数個が形成された分だけ厚みが増す。一般に、コンクリート平板の曲げ剛性は、厚みの3乗に比例して増加する。したがって、壁柱6は、厚みが増すことで、直立方向の剛性及び耐力が高くなる。また、壁柱6は、平板中に鉄筋コンクリート材からなる直立方向の通し部11を持つことで、直立方向の剛性がさらに上がり、柱型がなくても柱としての機能が得られる。
【0042】 床梁7は、コンクリートの平板中に第2の円筒状中空部12の複数個を形成することで、上記と同様に、厚みが増して桁行方向の剛性及び耐力が高くなる。また、床梁7は、平板中に鉄筋コンクリート材からなる桁行方向の通し部13を持つことで、桁行方向の剛性がさらに上がり、梁型がなくても梁としての機能が得られる。
【0043】 このように、壁柱6は直立方向の剛性が高く、床梁7は桁行方向の剛性が高く、該壁柱6と該床梁7との交差部Cは、密実に形成されて剛接合の強度が高められている。そして、該壁柱及び床梁を含む架構は、桁行方向にラーメン構造となっているので、平面的に桁行方向を長辺とした長方形のいわゆる板状マンション等に適した構造が得られる。
【0044】 上述したように、本実施例に係る建物構造においては、壁として機能する壁柱6及び床として機能する床梁7は、厚みを厚く形成でき、また壁柱6及び床梁7におけるコンクリートの平板中には第1の円筒状中空部9又は第2の円筒状中空部12が存在することで、遮音性が非常に優れた住宅を提供することができる。建物構造内には、柱型や梁型が出ないことから、室内空間を最大限有効に使用することができ、また有効な採光面積を大きくすることができる。さらに、建物構造には、柱型や梁型がないことから、配筋作業や型枠作業を大幅に省力化することができ、これにより、工期短縮やコストダウンを図ることができる。」

(2)図1は次のものである。

上記(1)を踏まえると、図1から、以下のことが看取できる。

「対向配置され第1方向(梁間方向)へ延設された躯体としての壁柱6と、
前記壁柱6と接合され、前記壁柱6とボックスカルバート状の躯体を形成する床梁7と、
を備え、柱梁架構を備えず、第1方向と直交する第2方向(桁行方向)に壁を備えない建物。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し相違する。

(一致点)
「対向配置され第1方向へ延設された躯体としての外壁を有し、柱梁架構を備えない建物。」

(相違点1)
本願発明1は、「スラブ」が、前記外壁と接合され、前記外壁とボックスカルバート状の躯体を形成するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

(相違点2)
本願発明1は、「ボックスカルバート状の躯体内部における前記第1方向の中央部に設けられて前記スラブを支持し、前記第1方向と交差する第2方向が強軸とされた壁柱」を備え、「壁柱は前記第1方向の厚さが前記境壁の厚さよりも厚く形成され」ているのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

(相違点3)
本願発明1は、境壁が、「壁柱の前記第2方向の一方の端部から前記スラブの一方の端部まで、及び、前記壁柱の前記第2方向の他方の端部から前記スラブの他方の端部まで、前記外壁に沿って設けられ、躯体内部を区画する」のに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

(相違点4)
本願発明1は、「前記第2方向に前記第2方向の水平荷重を負担する袖壁及び前記壁柱以外の躯体としての壁を備えない」のに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、技術常識を参酌すれば、引用発明においても、建物が、外壁とスラブから構成されているとは認められるものの、「パネル組立住宅のような壁式構造」であることから、「外壁とボックスカルバート状の躯体を形成」しているとは認められない。
また、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用文献2ないし4に記載されておらず、引用発明に、引用文献2ないし4に記載された技術事項を適用したとしても、本願発明の相違点1に係る構成を含むものとはならない。

上記相違点2について検討すると、相違点2に係る本願発明1の、「ボックスカルバート状の躯体内部における前記第1方向の中央部に設けられて前記スラブを支持し、前記第1方向と交差する第2方向が強軸とされた壁柱」を備え、「前記壁柱は前記第1方向の厚さが前記境壁の厚さより厚く形成され」たという構成は、引用文献2ないし4に記載されていない。
引用文献2や引用文献4に記載されているように、壁柱が境壁の厚さよりも厚く形成されること自体は周知であったとしても、これらは、「ボックスカルバート状の躯体内部」に設けられるものではない。また、引用文献3には、「各居住ユニットの境壁2dに貫通して出入り口3dを設け」ることは記載されているが、相違点2に係る本願発明1の上記構成は記載されていない。
よって、引用発明に、引用文献2ないし4に記載された技術事項を適用したとしても、本願発明の相違点2に係る構成を含むものとはならない。

上記相違点3について検討すると、相違点3に係る本願発明1の、境壁が、「壁柱の前記第2方向の一方の端部から前記スラブの一方の端部まで、及び、前記壁柱の前記第2方向の他方の端部から前記スラブの他方の端部まで、前記外壁に沿って設けられ」るという構成は、引用文献2ないし4に記載されておらず、引用発明に、引用文献2ないし4に記載された技術事項を適用したとしても、本願発明の相違点3に係る構成を含むものとはならない。

上記相違点4について検討すると、「壁式構造」という用語の意味は、「壁体や床板などのように平面状の構造要素の組合せによって構成される構造.」(建築大辞典 第2版 彰国社 1993年発行)であり、壁体が構造要素の一部であると認められるところ、引用発明において、「パネル組立住宅のような壁式構造」を形成するに際し、第2方向の壁を備えないように変更して、相違点4に係る本願発明1の、「前記第2方向に前記第2方向の水平荷重を負担する袖壁及び前記壁柱以外の躯体としての壁を備えない」との構成とすることは、当業者でも容易に想到できない。
また、上記相違点4に係る本願発明1の構成は、引用文献2ないし4に記載されておらず、引用発明に、引用文献2ないし4に記載された技術事項を適用したとしても、本願発明の相違点4に係る構成を含むものとはならない。

よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1を引用するものであって、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるといえる。
よって、本願発明2ないし4は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 引用文献5及び6に記載された発明を引用発明とする検討
仮に、引用文献5や引用文献6に記載のような、「対向配置され第1方向へ延設された躯体としての外壁と、前記外壁と接合され、前記外壁とボックスカルバート状の躯体を形成するスラブとを有し、柱梁架構を備えず、前記第2方向に躯体としての壁を備えない建物。」を、「引用発明」と認定したとしても、「ボックスカルバート状の躯体内部における前記第1方向の中央部に設けられて前記スラブを支持し、前記第1方向と交差する第2方向が強軸とされた壁柱」の構成は、引用文献1ないし4に記載されていないから、本願発明1ないし4は、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし4は上記相違点1ないし4に係る構成を有するものとなっており、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された発明(技術的事項)に基づいて、また、引用文献1ないし6に記載された発明(技術的事項)に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由(進歩性)を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-19 
出願番号 特願2013-187451(P2013-187451)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E04H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 前川 慎喜
富士 春奈
発明の名称 建物  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  
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