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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1346297
審判番号 不服2017-9266  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-26 
確定日 2018-11-14 
事件の表示 特願2013-512755「モジュール分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 8日国際公開、WO2011/150916、平成25年 9月 9日国内公表、特表2013-534837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2011年(平成23年)5月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年5月31日 ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月8日付けで拒絶理由が通知され、同年6月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月12日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成28年5月16日に意見書及び誤訳訂正書が提出され、同年9月12日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成29年2月13日に意見書が提出されたが、同年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされ、その後、同年11月29日に上申書が提出されたものである。


第2 平成29年6月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成29年6月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。


[理由]

1 本件補正について

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に係る発明について、平成27年6月29日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「 【請求項1】
生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを分析するための少なくとも1つの分析機構を備え、該分析機構が、生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを測定する少なくとも1つのセンサの測定データを検出するために少なくとも1つのデータ入力部と、分析結果を出力する少なくとも1つの出力機構とを有している装置において、
前記分析機構が制御ユニットとプログラムメモリとを有し、該プログラムメモリが複数のプログラムモジュールを記憶しており、該複数のプログラムモジュールが、外部から予め設定可能な制御命令に依存して、選択的に作動可能であり、または、部分的に作動可能であり、または、すべてを互いに組み合わせて作動可能であり、作動したプログラムモジュールが選択した分析結果のためのデータを提供すること、
前記センサと前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること、
表示機構が設けられ、該表示機構と前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること、
前記分析機構が、測定技術を用いずに検出したデータを入力するためのインターフェースを有していること、
操作者への提案として機器の自動編成を実行可能であること、
を特徴とする装置。」

を、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮)を目的として、

「 【請求項1】
生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを分析するための少なくとも1つの分析機構を備え、該分析機構が、生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを測定する少なくとも1つのセンサの測定データを検出するために少なくとも1つのデータ入力部と、分析結果を出力する少なくとも1つの出力機構とを有している装置において、
前記分析機構が制御ユニットとプログラムメモリとを有し、該プログラムメモリが複数のプログラムモジュールを記憶しており、該複数のプログラムモジュールが、外部から予め設定可能な制御命令に依存して、選択的に作動可能であり、または、部分的に作動可能であり、または、すべてを互いに組み合わせて作動可能であり、作動したプログラムモジュールが選択した分析結果のためのデータを提供すること、
前記センサと前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること、
表示機構が設けられ、該表示機構と前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること、
前記分析機構が、測定技術を用いずに検出したデータを入力するためのインターフェースを有していること、
測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにした分析パラメータを互いに組み合わせる分析モジュールが設けられていること、
操作者への提案として機器の自動編成を実行可能であること、
を特徴とする装置。」

と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示す。)

2 独立特許要件についての検討

(1)そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。

(2)特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)について

ア 本件補正により、請求項1に「測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにした分析パラメータを互いに組み合わせる分析モジュールが設けられていること」という発明特定事項(以下「本件発明特定事項1」という。)が追加された。

そこで、「測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにした分析パラメータを互いに組み合わせる分析モジュール」が、本願の発明の詳細な説明に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かを、以下に、検討する。

(ア)本願の発明の詳細な説明の記載事項

本願の発明の詳細な説明には、本件発明特定事項1に関連すると思われる記載としては、請求項1と同様の記載である段落【0004】を除くと、以下の記載があるのみである。

「 【0010】
包括的な編成を可能にするため、前記少なくとも1つのセンサは少なくとも1つの測定パラメータを次のグループから選択し、すなわち体重、インピーダンス、身長、血圧、EKG、脈拍数、血液成分、パルスオキシメータ、体温、呼吸パラメータ、聴診パラメータおよび/またはエネルギー消費量から選択して、測定技術を用いて検出する。
・・・
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面には、本発明の実施形態が図示されている。
【図1】本発明による装置の基本構成を説明するためのブロック図である。
【図2】分析結果の表示例を示す図である。
【図3】第1の特定段階の詳細な分析結果の1表示例を示す図である。
【図4】第2の特定段階の詳細な分析結果の1表示例を示す図である。
【図5】分析の生データの1表示例を示す図である。
【図6】分析の生データの詳細図である。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による装置は、患者の次のようなパラメータを少なくとも1つ測定または検知するための少なくとも1つの測定器または少なくとも1つのセンサを有している。患者のパラメータとは体重、インピーダンス、身長、血圧、EKG(心電図)、脈拍数、血液値、パルスオキシメータ、体温、呼吸パラメータ、聴診パラメータおよび/またはエネルギー消費量である。測定パラメータは、一般的には、医学検査の範囲内で収集される患者の任意の肉体的な量に関わるものである。測定パラメータは分析機構にダイレクトに供給され、或いは、たとえばラボインフォメーションシステムのような外部データ源を使用して分析機構に供給される。
【0014】
上記測定パラメータに加えて、患者IDを介して、または、検査前の問診によって得られる入力パラメータを使用してよい。これはたとえば患者の性別および/または年齢および/または人種である。
【0015】
測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにして分析パラメータを求める。これはたとえば分析機構内で実行される数式を使用して行うことができる。数式は分析パラメータに対して割り当てた値を求める。数式は公知の技術水準から得ることができ、或いは、臨床研究を介して得ることができる。分析パラメータの判定は参照値を使用して行う。これらの参照値は科学関係の刊行物で公開されている規格範囲のものであり、或いは、一連の測定を介して求められた規格範囲のものである。1つの参照値に対するこのような表現の一例は位相角である。
【0016】
分析モジュールを使用すると、種々の分析パラメータを互いに組み合わせることが可能である。分析モジュールは、実際に存在する問題に対する値を提供するために用いる。実際に存在する問題とは、たとえば患者のエネルギーステータスである。
【0017】
装置の操作者によって行われる選択に依存して、その都度の検査状況にとって重要である分析モジュールの組み合わせを行う。
【0018】
分析パラメータの計算とこれに対応した分析モジュールの提供とにより結果を導出するために入力パラメータと測定パラメータとを適宜リンクさせる点を、図1に示した。
・・・
【0020】
図2は一人の患者例に対する器具のディスプレイ表示を示したものである。分析に関しては、選択したモジュールの概要が示されている。
【0021】
図3は分析の一例の第1の特定段階をディスプレイ表示として示したものである。ビジュアル化することで、選定したパラメータが許容範囲内であるかどうかが簡単にわかる。
【0022】
図4は分析のための第2の特定段階をビジュアル化して、グラフによる分析を拡大したものである。
【0023】
図5は分析の生データモジュールの概要を示したものである。
【0024】
図6は更なる説明のために分析の生データモジュールの1つの特定段階を示したものである。」

そして、図1ないし6は以下のとおりである。

【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


(イ)判断

本願の発明の詳細な説明の、「包括的な編成を可能にするため、前記少なくとも1つのセンサは少なくとも1つの測定パラメータを次のグループから選択し、すなわち体重、インピーダンス、身長、血圧、EKG、脈拍数、血液成分、パルスオキシメータ、体温、呼吸パラメータ、聴診パラメータおよび/またはエネルギー消費量から選択して、測定技術を用いて検出する。」(段落【0010】、下線は当審において付加した。以下、本願の発明の詳細な説明の記載を引用する記載において同様。)、「本発明による装置は、患者の次のようなパラメータを少なくとも1つ測定または検知するための少なくとも1つの測定器または少なくとも1つのセンサを有している。患者のパラメータとは体重、インピーダンス、身長、血圧、EKG(心電図)、脈拍数、血液値、パルスオキシメータ、体温、呼吸パラメータ、聴診パラメータおよび/またはエネルギー消費量である。測定パラメータは、一般的には、医学検査の範囲内で収集される患者の任意の肉体的な量に関わるものである。」(段落【0013】)との記載から、「測定パラメータ」は、「測定器又はセンサにより測定技術を用いて検出される体重、インピーダンスなどの患者の肉体的な量」を表すことが理解できる。

本願の発明の詳細な説明の、「上記測定パラメータに加えて、患者IDを介して、または、検査前の問診によって得られる入力パラメータを使用してよい。これはたとえば患者の性別および/または年齢および/または人種である。」(段落【0014】)との記載から、「入力パラメータ」は、「患者の性別、年齢、人種などの情報」を表すことが理解できる。

本願の発明の詳細な説明には、「測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにして分析パラメータを求める。これはたとえば分析機構内で実行される数式を使用して行うことができる。数式は分析パラメータに対して割り当てた値を求める。数式は公知の技術水準から得ることができ、或いは、臨床研究を介して得ることができる。」(段落【0015】)との記載がある。
また、図2及び3には、「BMI」、「FM%」等の項目と、それに対応した数値が示されている。
そして、体重、インピーダンス、身長及び性別等のデータから数式を用いて体脂肪率を算出することや、体重及び身長等のデータから数式を用いてBMIを算出することが、本願優先日当時の技術常識であることを考慮すると、「測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにして」「求める」「分析パラメータ」は、「測定パラメータ及び/又は入力パラメータから、数式を使用して算出した値」を表すことが理解できる。

次に、分析モジュールについて検討する。

発明の詳細な説明には、「分析モジュールを使用すると、種々の分析パラメータを互いに組み合わせることが可能である。分析モジュールは、実際に存在する問題に対する値を提供するために用いる。」(段落【0016】)と記載されていることから、「分析モジュール」は、「種々の分析パラメータを互いに組み合わせ」て、「実際に存在する問題に対する値を提供する」ものと解されるが、実際に存在する問題に対する値を提供するために、どのような分析パラメータをどのように組み合わせるのかを、具体的に説明する記載はない。「実際に存在する問題」の例として挙げられた「患者のエネルギーステータス」(段落【0016】)という項目を見ても、どのような分析パラメータをどのように組み合わせれば、「患者のエネルギーステータス」に対する値を得ることができるのかを、想起することはできない。

段落【0017】の「装置の操作者によって行われる選択に依存して、その都度の検査状況にとって重要である分析モジュールの組み合わせを行う。」、段落【0018】の「分析パラメータの計算とこれに対応した分析モジュールの提供とにより結果を導出するために入力パラメータと測定パラメータとを適宜リンクさせる点を、図1に示した。」、及び図1の記載も、実際に存在する問題に対する値を提供するために、どのような分析パラメータをどのように組み合わせるのかを、説明するものではない。

【図面の簡単な説明】によれば、図2ないし4は、分析結果の表示例を示す図である。発明の詳細な説明には、図2ないし4に関して、「図2は一人の患者例に対する器具のディスプレイ表示を示したものである。分析に関しては、選択したモジュールの概要が示されている。」(段落【0020】)、「図3は分析の一例の第1の特定段階をディスプレイ表示として示したものである。ビジュアル化することで、選定したパラメータが許容範囲内であるかどうかが簡単にわかる。」(段落【0021】)、「図4は分析のための第2の特定段階をビジュアル化して、グラフによる分析を拡大したものである。」(段落【0022】)との記載があるのみである。
そして、図2ないし4には、「検査結果:機能 リハビリテーション」という標題、分析パラメータに相当すると解される「FMI」、「FFMI」等の数値、並びに、「肥満症」、「筋肉量 高」、「慢性エネルギー不足」及び「筋肉量 少」の4項目が4つの象限に割り当てられたグラフなどが記載されている。
段落【0016】の「分析モジュールは、実際に存在する問題に対する値を提供するために用いる。実際に存在する問題とは、たとえば患者のエネルギーステータスである。」との記載から、図2ないし4に記載されたグラフ中の「慢性エネルギー不足」は、分析モジュールが提供した値を示すためのものと解されるが、段落【0020】ないし【0022】、及び図2ないし4の記載を見ても、どのような分析パラメータをどのように組み合わせれば、「慢性エネルギー不足」に対する値を得ることができるのかを、想起することはできない。

また、【図面の簡単な説明】によれば、図5及び6は、分析の生データの表示例を示す図である。発明の詳細な説明には、図5及び6に関して、「図5は分析の生データモジュールの概要を示したものである。」(段落【0023】)、「図6は更なる説明のために分析の生データモジュールの1つの特定段階を示したものである。」(段落【0024】)との記載があるのみである。
そして、図5及び6には、「検査結果:生データモジュール」という標題、測定パラメータに相当すると解される「Z_(re)」等の数値などが記載されている。
これら図5及び6に関する記載は、生データに関するものであり、分析モジュールを説明するものではない。

そうすると、当業者といえども、本願の発明の詳細な説明の記載から、本願補正発明の「分析モジュール」が、どのような分析パラメータをどのように組み合わせるものであるのかを、把握することはできない。
したがって、本願補正発明の本件発明特定事項1について、本願の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められない。

(ウ)請求人の主張について

請求人は、平成29年11月29日提出の上申書において、「『分析モジュール』に関しては、明細書[0016]に、『分析モジュールを使用すると、種々の分析パラメータを互いに組み合わせることが可能である。分析モジュールは、実際に存在する問題に対する値を提供するために用いる。実際に存在する問題とは、たとえば患者のエネルギーステータスである。』との記載があり、『分析モジュール』によって互いに組み合わされる『分析パラメータ』に関しては、明細書[0015]に、『測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにして分析パラメータを求める。これはたとえば分析機構内で実行される数式を使用して行うことができる。数式は分析パラメータに対して割り当てた値を求める。数式は公知の技術水準から得ることができ、或いは、臨床研究を介して得ることができる。』との記載があり、『分析モジュール』と『測定パラメータおよび/または入力パラメータ』との関係は図1に記載があり、『分析モジュール』の概要および具体例は図2ないし図6に記載があり、これらの記載から、当業者であれば本発明の『分析モジュール』に関して実施することができるものと考えます。また、これらの記載から、請求項1に記載の『分析モジュール』がいかなる事項までを含むのかも明確であると考えます。」と主張している。

しかしながら、発明の詳細な説明の段落【0015】及び【0016】、並びに図1の記載を見ても、どのような分析パラメータをどのように組み合わせるのかを把握することができないことは、上記(イ)で示したとおりである。
また、「『分析モジュール』の概要および具体例は図2ないし図6に記載があり、これらの記載から、当業者であれば本発明の『分析モジュール』に関して実施することができるものと考えます。」と主張しているが、当該主張は「分析モジュール」の具体的内容を説明するものではなく、図2ないし図6の記載を見ても、どのような分析パラメータをどのように組み合わせるのかを把握することができないことは、上記(イ)で示したとおりである。

したがって、請求人の主張を考慮しても、本願補正発明の「分析モジュール」が、どのような分析パラメータをどのように組み合わせるものであるのかを、把握することはできない。

イ また、請求項1は、下記第3の2の原査定の(実施可能要件)違反の拒絶理由の根拠となっている、「操作者への提案として機器の自動編成を実行可能であること」という発明特定事項(以下「本件発明特定事項2」という。)を含んでいる。

そこで、「操作者への提案として機器の自動編成を実行可能であること」が、本願の発明の詳細な説明に、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かを、以下に、検討する。

(ア)本願の発明の詳細な説明の記載事項

本願の発明の詳細な説明には、本件発明特定事項2に関連すると思われる記載としては、請求項1と同様の記載である段落【0004】を除くと、以下の記載があるのみである。

「 【0003】
本発明の課題は、冒頭で述べて種類の装置において、予め設定可能な質問に関して分析結果が提供されるように構成することである。
・・・
【0005】
このように、本発明による装置は、その都度必要なハードウェアモジュールまたはソフトウェアモジュールが作動可能であり、且つ互いにリンク可能であるように、モジュール構造を有している。本発明による装置は、身体組成物を分析する(Body Composition Analyzer)ための機器の基本構造を有していてよい。他の可能な使用例はたとえば計量装置または長さ測定装置である。
・・・
【0017】
装置の操作者によって行われる選択に依存して、その都度の検査状況にとって重要である分析モジュールの組み合わせを行う。
・・・
【0019】
使用する個々の器具の接続はたとえば無線ネットワークを介して行うことができ、特にUSB無線アダプタを介して行うことができる。異なる無線ネットワーク間の切換えが可能である。同様に、好ましくはイーサネットを介してネット化されている複数のワークステーションの接続が可能である。
・・・
【0025】
本発明による装置では、その都度使用されるセンサまたは測定器は、データ区間を介して付設の分析ユニットに接続されている。データ区間は無線または有線で実現することができる。その都度必要な機能性を簡単に構成できるようにするため、分析ユニットも表示ユニットも機能的にモジュール状に構成されている。
・・・
【0033】
分析機構の他の実施形態によれば、検出した測定パラメータに依存して機器の自動編成を行うことが考えられる。自動編成は完全自動で行うことができ、或いは、操作者への編成の提案として行うことができる。この場合、測定値の事前チェックの範囲内で、測定して検出される状況に依存してどのようなモジュールが実際の適用例に対し合目的であるかを調べる。
【0034】
他の実施形態によれば、必要な分析時間を最短にするため、編成の際に選定したモジュールに依存して、実際に作動するモジュールにとって必要な測定値のみを特定し選択することが考えられる。
【0035】
1実施形態によれば、1つのパラメータモジュールのパラメータであって必要な入力値および測定値のために存在する前記パラメータをプリンタ(1)はアダプタ(2)を使用して算出することができる。同様に、プリンタ(1)のプリントアウトで表示されるモジュールを、アダプタ(2)を介して、事前に機器内に編成したモジュール選択によって確定することが考えられる。
【0036】
1つのプログラムモジュールは、典型的には、予め特定した数量のパラメータによって定義される。この場合パラメータとは測定値であり、或いは、患者の健康状態に関する情報を提供する計算値である。種々のパラメータを、選択により組み合わせて利用者特有のモジュールを自在に形成させることができる。」

(イ)判断

本願の発明の詳細な説明のうち、本件発明特定事項2に直接関係する記載は、段落【0033】の「分析機構の他の実施形態によれば、検出した測定パラメータに依存して機器の自動編成を行うことが考えられる。自動編成は完全自動で行うことができ、或いは、操作者への編成の提案として行うことができる。この場合、測定値の事前チェックの範囲内で、測定して検出される状況に依存してどのようなモジュールが実際の適用例に対し合目的であるかを調べる。」のみである。

この段落【0033】の記載において、「この場合、測定値の事前チェックの範囲内で、測定して検出される状況に依存してどのようなモジュールが実際の適用例に対し合目的であるかを調べる。」は、その前の「検出した測定パラメータに依存して機器の自動編成を行うこと」における「検出した測定パラメータに依存して」の内容について説明する記載であると認められることから、「機器の自動編成」は、「測定値の事前チェックの範囲内で、測定して検出される状況に依存してどのようなモジュールが実際の適用例に対し合目的であるかを調べる」ことにより行うものであるといえる。このことから、「機器の自動編成」は、「測定パラメータ」の「測定値の事前チェックの範囲内で、測定して検出される状況に依存して」、どのような「機器」が「実際の適用例に対し合目的であるかを調べる」ことにより、使用すべき「機器」を選択することにより行うものであると解される。
しかしながら、「測定値の事前チェック」は、すでに測定した結果を用いて測定前に行うものであると認められる一方、「測定して検出される状況」は、実際に測定を行っている最中の測定値に関するものであると認められることから、「測定値の事前チェックの範囲内で、測定して検出される状況に依存して」とは、どのような内容を意味するのかが不明である。

そこで、発明の詳細な説明のその他の記載を見ると、段落【0003】に「予め設定可能な質問に関して分析結果が提供されるように構成すること」と記載されているが、この記載が「測定値の事前チェック」や「測定して検出される状況」に関係するとは認められない。
段落【0005】、【0019】及び【0025】には、機器の接続に関する記載があるが、機器をどのようにして選択するかに言及するものではない。
段落【0017】には、「装置の操作者によって行われる選択に依存して、その都度の検査状況にとって重要である分析モジュールの組み合わせを行う。」と記載されているが、機器の選択を自動で行うことに関係するものとは認められない。
段落【0034】には、「他の実施形態によれば、必要な分析時間を最短にするため、編成の際に選定したモジュールに依存して、実際に作動するモジュールにとって必要な測定値のみを特定し選択することが考えられる。」と記載されているが、編成の後に関する記載であって、どのようにして機器を編成するかを説明するものではない。
段落【0035】には、「プリンタ(1)のプリントアウトで表示されるモジュールを、アダプタ(2)を介して、事前に機器内に編成したモジュール選択によって確定することが考えられる。」と記載されているが、どのようにして機器を編成するかを説明するものではない。
段落【0036】には、「種々のパラメータを、選択により組み合わせて利用者特有のモジュールを自在に形成させることができる。」と記載されているが、この記載もどのようにして機器を編成するかを説明するものではない。

そうすると、当業者といえども、本願の発明の詳細な説明の記載から、本願補正発明の「機器の自動編成」が、どのように実行されるものであるのかを、把握することはできない。
したがって、本願補正発明の本件発明特定事項2について、本願の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められない。

(ウ)請求人の主張について

請求人は、審判請求書において、「『機器の編成』とは、実際の適用例に応じて、必要な機能モジュールを選択、起動することであり、『機器の自動編成』とは、制御ユニットが実際の適用課題に応じて必要な機能モジュールを自動的に選択し、起動することです。制御ユニットによって自動的に編成された機能モジュールを操作者または利用者が受け入れれば、編成した機能モジュールを起動しますが、操作者はこの提案を拒絶することも可能で、その場合には利用者が修正を行うことができます。すなわち、機能モジュールの編成は自動で行われ、その修正のみを手動で行うものです。制御ユニットは、『測定技術を用いずに検出したデータ』(請求項1)または『検査前の問診によって得られる入力パラメータ』(たとえば操作者もしくは患者の性別、年齢、人種;段落[0014]を参照)に基づいて、操作者の健康状態、栄養状態を知るうえで何を測定するのが合目的であるかを統計学的に考慮して機能モジュールを『プログラムモジュール』として自動的に編成し、この『プログラムモジュール』を実行するために必要な機器を自動的に編成して操作者に提案します。もし操作者が提案されたこの『プログラムモジュール』を修正したければ、すなわちたとえば血圧、体温、脈拍数のような測定パラメータから成る提案されたプログラムモジュール以外の他の測定パラメータを組み入れたければ、これを手動で組み入れて新たなプログラムモジュールを編成することができます。」と主張している。

しかしながら、本願の明細書又は図面には、請求人が主張する「制御ユニットは、『測定技術を用いずに検出したデータ』(請求項1)または『検査前の問診によって得られる入力パラメータ』(たとえば操作者もしくは患者の性別、年齢、人種;段落[0014]を参照)に基づいて、操作者の健康状態、栄養状態を知るうえで何を測定するのが合目的であるかを統計学的に考慮して機能モジュールを『プログラムモジュール』として自動的に編成し、この『プログラムモジュール』を実行するために必要な機器を自動的に編成して操作者に提案」することは明記されていない。
そして、「機器の自動編成」に関する段落【0033】の「測定値の事前チェックの範囲内で、測定して検出される状況に依存してどのようなモジュールが実際の適用例に対し合目的であるかを調べる」という記載が、請求人が主張する「『測定技術を用いずに検出したデータ』(請求項1)または『検査前の問診によって得られる入力パラメータ』(たとえば操作者もしくは患者の性別、年齢、人種;段落[0014]を参照)に基づいて、操作者の健康状態、栄養状態を知るうえで何を測定するのが合目的であるかを統計学的に考慮」することを意味するものとは解されない。
また、段落【0003】の「予め設定可能な質問に関して分析結果が提供されるように構成すること」という記載から、「機器の自動編成」が、請求人が主張する「制御ユニットは、『測定技術を用いずに検出したデータ』(請求項1)または『検査前の問診によって得られる入力パラメータ』(たとえば操作者もしくは患者の性別、年齢、人種;段落[0014]を参照)に基づいて、操作者の健康状態、栄養状態を知るうえで何を測定するのが合目的であるかを統計学的に考慮して機能モジュールを『プログラムモジュール』として自動的に編成」することであると直ちに想起することはできない。

したがって、請求人の上記主張は採用することができない。

ウ 以上のとおり、本件発明特定事項1及び本件発明特定事項2について、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものではないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)特許法第29条第2項の規定(進歩性)について

ア 引用文献の記載事項

(ア)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2003-168178号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。

(引1-ア)「【0026】
【実施例】以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【0027】図1は本発明の一実施例における監視制御システムの構成を表わしたものである。この監視制御システム201は、携帯電話機本体202と、その外部メモリスロット203に着脱自在に装着する外部記憶媒体204と、携帯電話機本体202の外部スロット205に着脱自在に装着する有線監視ユニット206と、携帯電話機本体202内の特定小電力無線部207に接続されたアンテナ208と通信する無線監視ユニット209と、携帯電話機本体202内の無線部211に接続されたアンテナ212と基地局213を介して通信する監視センタ214から構成されている。
【0028】ここで、携帯電話機本体202は、CPU(中央処理装置)221を配置した制御部222を備えている。この制御部222は、例えば携帯電話機用のネットワークに対応した回線周波数を発生させる無線部211と接続され、たとえば携帯電話機用のネットワークに向けた信号に変調したり反対に信号の復調を行う変復調部223や、制御部222の制御を実現するための制御プログラムやデータを格納した主記憶メモリ224、携帯電話機としての機能以外の機能を実現するための拡張プログラムを記憶させる拡張プログラム(アプリケーションプログラム)メモリ225、特定小電力無線部207および外部インタフェース(I/F)制御部226と接続されている。また、有線監視ユニット206は差込カード部分231と、これに接続された分配器232と、この分配器232に接続された第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)(Nは2以上の整数)とによって構成されている。ただし、監視センサ233を1つだけ携帯電話機本体202に接続する場合、分配器232は不要である。この場合にはその監視センサ233の出力側の図示しないケーブルを差込カード部分231に直接接続すればよい。監視センサ233の種類によっては、差込カード部分231に内蔵することも可能である。
【0029】拡張プログラムメモリ225は外部メモリスロット203に装着された外部記憶媒体204に格納されたプログラムをインストールするインストール先のメモリであるが、装置によっては外部記憶媒体204自体に拡張プログラムメモリ225としての役割を果たさせることもできる。ただし、この場合には携帯電話機本体202を特定の監視制御システムの一部として機能させる際に必ず外部記憶媒体204をこれに装着しておく必要がある。本実施例の携帯電話機本体202は、外部記憶媒体204によって拡張プログラムの内容を変更したり追加することができる。したがって、これに対応させて第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)における数値Nの数あるいは第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)の種類を適宜変更することで、同一の携帯電話機本体202を使用しながら異なった内容の監視制御システムを実現することができる。」

(引1-イ)【図1】




(引1-ウ)「【0032】図2は、本実施例の携帯電話機に対して必要な装置を取り付ける状態を表わしたものである。本実施例の携帯電話機本体202は、その上面上部に各種情報を表示するためのディスプレイ241が配置されており、その下には操作キーやファンクションキーからなる操作部242が配置されている。図で右側部には外部メモリスロット203が配置されており、下端部には外部スロット205が配置されている。
【0033】携帯電話機本体の外部メモリスロット203には、実現する監視制御システムに個別に対応した外部記憶媒体204が、そのシステムのインストール時に装着されるようになっている。本実施例では人体の各部位の監視を行う監視制御システム(以下、医療監視制御システムという。)を実現するものとする。そこで、使用する外部記憶媒体204には医療監視制御に必要な拡張プログラムとしての制御プログラムが格納されている。携帯電話機本体202内部の前記したCPU221(図1)は、外部記憶媒体204に格納されている拡張プログラムに従った医療監視制御システムを実現するようになっている。
【0034】なお、本実施例では医療監視制御システムを実現するので、無線監視ユニット209は使用されない。無線監視ユニット209はたとえばダムや川の各測定点での水位を観測する監視制御システムで使用する。
【0035】携帯電話機本体202の外部スロット205には、有線監視ユニット206の差込カード部分231が装着されている。本実施例では医療監視制御システムを実現するので、第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)は、たとえば体温計、脈拍計、血圧計、心電図作成用電極等によって構成されている。第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)のそれぞれの検出出力は差込カード部分231から携帯電話機本体202に直接取り込まれて図1に示した主記憶メモリ224あるいは制御部222内の図示しない作業用メモリ領域に格納された後にCPU221が処理を行う。」

(引1-エ)【図2】




(引1-オ)「【0036】図3は、本実施例の医療監視制御システムを実現するための拡張プログラムのインストール作業の流れを表わしたものである。まず、この医療監視制御システムの管理者は、操作部242を操作して携帯電話機本体202を拡張プログラムインストールモードに設定する(ステップS301:Y)。これ以外の場合には(N)、通常の携帯電話機としての他のモードが実行されることになる。これについての説明は省略する。
【0037】拡張プログラムインストールモードでは、CPU221(図1)がインストールする対象としての拡張プログラムを検索する(ステップS302)。この結果として拡張プログラムが存在した場合には(ステップS303:Y)、その拡張プログラムすべてを図2に示したディスプレイ241に表示する(ステップS304)。そして、管理者による拡張プログラムの選択を待機する状態となる(ステップS305)。
【0038】図4は、拡張プログラムを選択する状態での携帯電話機本体のディスプレイの表示内容を表わしたものである。ディスプレイ241には、外部記憶媒体204(図2)に格納されている全プログラムが表示される。この例では5つの監視プログラムが表示されているが、ただ1つの場合も存在する。管理者はたとえば図2に示す操作部242の「F6」キー(4方向キー)を操作することでカーソル251を上下に移動させて所望の拡張プログラムを指定し、更に所定のキーを押下することでその拡張プログラムのインストールを実行させることができる。
・・・
【0040】これに対して管理者が前記した操作によって拡張プログラムの中からインストールするプログラムを選択した場合には(ステップS305:Y)、外部記憶媒体204に格納された該当する拡張プログラムを携帯電話機本体202にインストールする処理が実行されることになる(ステップS307)。」

(引1-カ)「【0052】次に本実施例の医療監視制御システムの運用を具体的に説明する。本実施例では図8に示した第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)をそれぞれの患者にセットする形でシステムを運用する。第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)は、たとえば体温計、脈拍計、血圧計、心電図作成用電極等から構成されている。患者はある程度監視内容について自己管理できるようになっており、監視結果が思わしくない場合には病院内の担当部署に通知が行くようになっている。
【0053】図11はこの医療監視制御システムの制御の流れの概要を表わしたものである。この医療監視制御システムでは図1に示した携帯電話機本体202の電源が投入されると、CPU221が初期画面として監視制御の設定の要否を確認する画面をディスプレイ241に表示する(ステップS331)。ここで監視制御の設定とは、この実施例では患者あるいはシステムの管理者がシステムの運用上で必要な設定や変更(以下、特に断らない限り、設定という。)を行うことをいう。
【0054】図12は、監視制御の設定の要否を確認する画面表示の一例を示したものである。図2に示したディスプレイ241には要否を問うウィンドウ351が表示される。ここには、設定の要否が“YES”と“NO”で表示されている。
【0055】監視制御の設定の要否を確認する画面がディスプレイ241に表示された状態で、患者あるいはシステムの管理者(以下、オペレータと称する。)は、設定を行うものとする場合に、操作部242(図2)から肯定“YES”を示す操作入力を行う(ステップS332:Y)。この場合には次に説明するセンサパラメータ設定モードが実行される(ステップS333)。そしてパラメータの設定が終了した後に状態監視モードが実行されることになる(ステップS334)。
【0056】これに対して、監視制御の設定を行わない場合には操作部242から否定“NO”を示す操作入力を行う(ステップS332:N、ステップS335:Y)。この場合には、受信待機モードが実行される(ステップS336)。ここで受信待機モードとは、一般の携帯電話機の機能としての受信を待ち受ける処理をいう。
【0057】図13は、ステップS333で説明したセンサパラメータ設定モードの具体的な内容を表わしたものである。センサパラメータ設定モードでは、まず処理のためのパラメータnを初期的に“1”に設定する(ステップS361)。そして、第nのパラメータ設定画面がディスプレイ241に表示される。ここではパラメータnが“1”なので、第1のパラメータ設定画面が表示されることになる。
【0058】図14は、第1のパラメータ設定画面が表示された状態を表わしたものである。ディスプレイ241に表示された第1のパラメータ設定画面では、その上部に「第1のセンサ」というように監視センサ233を特定する表示が行われ、監視センサ233_(1)?233_(N)のうちのどれについてのパラメータの設定を行うかが分かるようになっている。この表示の下には、監視を行う時間の開始や終了時間の設定や監視の時間間隔、規定値、パラメータ設定完了の有無の各入力項目が表示されている。ここで「規定値」とは、アラームを発生させるための境界値であり、これを越えたり下回った場合にアラームが発生されるようになっている。また、「設定完了?」とは、すべてのパラメータの設定が終了したか否かを入力する項目であり、オペレータは「肯定(Y)」あるいは「否定(N)」のいずれかを選択して入力するようになっている。
【0059】オペレータは図2に示した操作部242のファンクションキーとしての「F6」の上下方向を選択する箇所を押すことで、図示しないカーソルを項目に沿って順に上下方向に移動させる。そして所望の設定項目の選択(たとえば表示色の反転)が行われたときに、該当する数値をテンキー等のキーから入力するようになっている。
【0060】第1のパラメータに対してディスプレイ241に表示されたすべてのパラメータの設定が完了したら、オペレータは「パラメータ設定完了」の2つの項目のうちのいずれかを選択する。「肯定(Y)」が選択された場合には、現在のパラメータの設定が終了したものとして(ステップS363:Y)、その第1のパラメータの内容を制御部222内の図示しないランダム・アクセス・メモリの所定の領域に登録する(ステップS364)。そして、次のステップS365に進む。」

(引1-キ)「【0066】図17は、この実施例における状態監視モードの処理の概要を表わしたものであり、これは図11のステップS334に対応するものである。このモードでは、まず処理のためのパラメータnを初期的に“1”に設定する(ステップS391)。そして、第1の監視センサ233_(1)について現在の時刻と比較してその検出範囲の時間帯であるかどうかのチェックが行われる(ステップS392)。たとえば患者が就寝中は第1の監視センサ233_(1)を外しているような場合、検出範囲の時間帯となっていないので(N)、これを用いた監視は行わない。そこでこのような場合には、直ちにステップS393に進んでパラメータnを“1”だけ加算し、これが監視センサ233_(1)?233_(N)の総数“N_(t)”を超過しているかどうかの判別が行われる(ステップS394)。
【0067】総数“N_(t)”が2以上の場合には、まだ残りの監視センサ233_(2)?233_(N)が存在する。そこでこの場合には(N)、ステップS392に戻って第2の監視センサ233_(2)についての検出時間範囲内であるかどうかのチェックが行われることになる。
【0068】この第2の監視センサ233_(2)について現在の時間が検出時間範囲であるとすると(ステップS392:Y)、CPU221は予め設定した時間間隔の測定時間に達したかどうかをチェックする(ステップS395)。測定時間に到達していない場合には(N)、前と同様にステップS393に進んで、次の第3の監視センサ233_(3)についての処理が開始することになる。
【0069】これに対して、第2の監視センサ233_(2)について測定時間に到達していた場合には(ステップS395:Y)、これを用いた測定値の取り込みが行われる(ステップS396)。そして得られた値が規定値に対して異常方向に超過しているかどうかのチェックが行われる(ステップS397)。超過していた場合には(Y)、図15で説明したアラーム通知先にアラームを通知すると共に、データ送付先の電子メールのアドレスにそのデータを通知する(ステップS398)。アラーム通知先は患者本人の携帯電話機であってもよいし、看護婦の電話先等の緊急時に対応できる場所(監視センタ214)であってもよい。アラーム通知先は複数であってもよい。データ送付先は病院のデータ管理を行う場所であってもよいし、本人の図示しないパーソナルコンピュータに対応した電子メールのアドレスであってもよい。同様にデータ送付先は複数であってもよい。
【0070】ステップS397で測定値が異常を示していないような場合には(N)、データ送付先の電子メールのアドレスにそのデータが通知され、アラームは発生しない(ステップS399)。ステップS398およびステップS399の処理の後はステップS393に処理が進んで、次の監視センサ233の監視のための処理が行われることになる。
【0071】なお、このようにして第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)について処理が一巡したら(ステップS394:Y)、処理は再びステップS391に戻される(リターン)。そして、第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)についての処理が時分割で繰り返し行われることになる。
【0072】ところで患者によっては状態が急変し、第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)のうちの複数についてほぼ同じ時間帯にアラームが発生する場合がある。このような場合には、アラームの形態を異ならせることで同一患者であっても異常の種類を判別することができる。また、発信した電子メールを解析することでも可能である。また、病院のナースセンタ等の監視部署(監視センタ214)では、複数の患者の発信したアラームが時間的に競合する場合もある。このような場合には、発信した携帯電話機の着信番号通知でどの電話機がアラームを出力したかを特定することが可能である。
【0073】以上説明した実施例では病院における監視制御システムとしての医療監視制御システムを例に挙げて説明したが、本発明を各種の監視制御システムに適用することができることは当然である。たとえば、同じ医療の分野であっても在宅医療患者を扱うシステムに対しても本発明を適用することができる。」

(引1-ク)「【0077】
【発明の効果】以上説明したように請求項1?請求項7記載の発明によれば、比較的大量に生産される可能性のある携帯通信端末を使用して各種の監視を行うので、これらの監視を安価にできるだけでなく、携行したり、各所に配置する場合にも搬送が簡単である。また、もともと通信機能を備えているので、異常が発生した場合等に監視したデータや処理結果を簡単に送信することができるという利点がある。また、拡張プログラムを携帯通信端末にインストールして所望の監視制御を行わせるので、ハードウェアとしての携帯通信端末を共通化することができるので、特殊な監視制御であってもそのような制御プログラムを作成するだけで監視制御が可能になる。また、同様に現在採用している監視制御であってもその変更が簡単である。」

(イ)引用文献1に記載された発明の認定

a (引1-オ)には、実施例の医療監視制御システムでは、拡張プログラムインストールモードにおいて、選択した拡張プログラムのインストールを行う旨の記載があるが、(引1-ア)段落【0029】に「拡張プログラムメモリ225は外部メモリスロット203に装着された外部記憶媒体204に格納されたプログラムをインストールするインストール先のメモリであるが、装置によっては外部記憶媒体204自体に拡張プログラムメモリ225としての役割を果たさせることもできる。。ただし、この場合には携帯電話機本体202を特定の監視制御システムの一部として機能させる際に必ず外部記憶媒体204をこれに装着しておく必要がある。」と記載されていることから、「外部記憶媒体204」を外部メモリスロット203に装着したまま「拡張プログラムメモリ225」として使用し、選択した「拡張プログラム」をインストールせずに実行する態様も記載されているものと認められる。

b よって、(引1-ア)ないし(引1-ク)の記載から、引用文献1には、

「 携帯電話機本体202と、その外部メモリスロット203に着脱自在に装着する外部記憶媒体204と、携帯電話機本体202の外部スロット205に着脱自在に装着する有線監視ユニット206と、携帯電話機本体202内の無線部211に接続されたアンテナ212と基地局213を介して通信する監視センタ214から構成されている、人体の各部位の監視を行う医療監視制御システム201であって、
携帯電話機本体202は、その上面上部に各種情報を表示するためのディスプレイ241が配置され、その下には操作キーやファンクションキーからなる操作部242が配置されており、右側部には外部メモリスロット203が配置されており、下端部には外部スロット205が配置されており、
外部記憶媒体204には、医療監視制御に必要な拡張プログラムとしての制御プログラムが格納されており、
有線監視ユニット206は、差込カード部分231と、これに接続された分配器232と、この分配器232に接続された第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)(Nは2以上の整数)とによって構成されており、第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)は、たとえば体温計、脈拍計、血圧計、心電図作成用電極等によって構成され、
携帯電話機本体202を医療監視制御システム201の一部として機能させる際には外部記憶媒体204を外部メモリスロット203に装着しておき、
外部スロット205には、有線監視ユニット206の差込カード部分231が装着されており、
また、携帯電話機本体202は、CPU(中央処理装置)221を配置した制御部222を備え、CPU221は、外部記憶媒体204に格納されている拡張プログラムに従った医療監視制御システムを実現するようになっており、
拡張プログラムを選択する状態では、ディスプレイ241には、外部記憶媒体204に格納されている全プログラムが表示され、操作部242の「F6」キー(4方向キー)を操作することでカーソル251を上下に移動させて所望の拡張プログラムを指定し、
センサパラメータ設定モードでは、第nのパラメータ設定画面がディスプレイ241に表示され、パラメータ設定画面では、その上部に監視センサ233を特定する表示が行われ、この表示の下には、監視を行う時間の開始や終了時間の設定や監視の時間間隔、規定値、パラメータ設定完了の有無の各入力項目が表示され、操作部242のファンクションキーとしての「F6」の上下方向を選択する箇所を押すことでカーソルを項目に沿って順に上下方向に移動させ、所望の設定項目の選択が行われたときに、該当する数値をテンキー等のキーから入力するようになっており、ここで、「規定値」とはアラームを発生させるための境界値であり、
状態監視モードでは、測定値の取り込みが行われ、得られた値が規定値に対して異常方向に超過しているかどうかのチェックが行われ、超過していた場合には、アラーム通知先にアラームを通知すると共に、データ送付先の電子メールのアドレスにそのデータを通知し、測定値が異常を示していないような場合には、データ送付先の電子メールのアドレスにそのデータが通知され、アラームは発生しないようになっており、第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)のうちの複数についてほぼ同じ時間帯にアラームが発生する場合には、アラームの形態を異ならせることで同一患者であっても異常の種類を判別することができるようになっている、
医療監視制御システム201。」

の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

(ウ)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平10-334161号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。

(引3-ア)「【0013】
【発明の実施の形態】図1はこの発明に係る在宅医療システムの実施形態を示し、1は利用者の血圧、心泊数、及び心電図等を測定し、利用者の体温や体重の入力、及び医療機関側からの問診事項に対する回答の入力等を行う医療端末機であり、2は利用者側通信手段である。この医療端末機1及び利用者側通信手段2で医療装置8を構成しており、各利用者の家庭に設置されるものである。3は医療機関側通信手段であり、両通信手段2,3の間は例えばCATVによる通信回線4で接続されている。尚、図示はしていないが、両通信手段2,3は電話回線域は無線通信によって互いに通信できるようにしても良いことは勿論である。5はディスプレー装置付きの医療機関側のホストコンピュータであり、プリンター装置6、外部記憶装置7等の附属機器9がそれぞれ付設されている。
【0014】図2は医療装置8の斜視図を示し、図面によれば利用者側通信手段2の上面にセットされた医療端末機1の上面側には、血圧測定用の腕帯10が収納部11にセットされている。12はその上部を覆うカバーであり、一側部を医療端末機1の一側に蝶着させている。13はスピーカー、14は例えば液晶ディスプレー装置から成る表示手段、15は(はい)と意思表示する操作ボタン、16は(いいえ)と意思表示する操作ボタン、17は(選択)用の操作ボタンである。そして、手前側には心電図を測定する一対の測定電極18、18が導線19を介して着脱可能に接続されている。

(引3-イ)「【0019】利用者側通信手段2から医療端末機1を外したか否か(S1)で、操作を行うためのスタートメニューが異なる。すなわち、外した状態で(S1)電源スイッチ(図示せず)を入れるか、あるいは電源スイッチを入れた後に医療端末機1を外すと、液晶ディスプレー装置が点灯し「何かボタンを押してください」と画面表示されるので、いずれか操作ボタン15,16,17を押すと(S2)、スタートメニュー1(図6参照)が表示される(S3)。そこで、この表示に従って、種々の生体情報(血圧脈拍、心電図、問診、体温、体重、検尿試験結果)の測定や入力などを行う。なお、スタートメニュー1には年月日、時刻及び登録番号、本人の名前などが表示される。」

(引3-ウ)「【0024】(問診)次に、この実施形態に係るシステムを用いて問診を行う場合について説明する。
【0025】ホストコンピュータ5と医療端末機1にそれぞれ、必要最低限の問診事項が入っており、問診事項に通し番号が付いている。医療機関側では医師が、利用者に対して行ないたい問診事項の番号をホストコンピュータ5に入力すると、この入力された番号はホストコンピュータに記憶される。入力が終了するとホストコンピュータ5は医療機関側通信手段3を介して利用者側の医療装置8へ入力された問診事項の番号を送信する。医療装置8は受け取った問診事項番号の問診を利用者に対して行ない、結果を利用者側通信手段2を介してホストコンピュータ5へ送り返す。医療装置8が受け取った問診事項番号は該医療装置8の記憶手段33に記憶されているのでホストコンピュータ5から送信するのは1回だけで良い。利用者に対しての問診事項を変更したい場合は、ホストコンピュータに記憶されている問診事項番号を変更するだけでよい。ホストコンピュータ5は変更した問診事項番号を利用者の医療装置8へ医療機関側通信手段3を介して送信する。問診事項は利用者毎に指定できるので、利用者の病気、症状毎に有効な問診が可能である。この操作は次のようになされる。
(1)スタートメニュー1の1の項目を選択すると、医療端末機1から「問診を始めますか?」と説明手段31の表示手段14とスピーカー13による画面表示及び又は音声で利用者に聞いてくる。
(2)利用者は入力手段27の(はい)(いいえ)の操作ボタン15、16のいずれかで答える。(いいえ)の場合は問診をしない。(はい)の場合は問診を始める。
(3)問診は表示手段14の画面に表示される質問に利用者が入力手段27の(はい)(いいえ)(選択)の操作ボタン15,16,17の操作で答える形で進められる。(例)「胸が苦しいですか?」(はい)(いいえ)(ときどき)、「体がだるいですか?」(はい)(いいえ)(ときどき)、というようにである。
(4)質問事項が終了すると、医療端末機1から「これでよろしいですか?」と画面表示と音声で聞いてくる。(いいえ)の操作ボタン16を押せば、「やりなおしますか?」と画面表示を音声で聞いてくる。(はい)の操作ボタン15を押すと、問診生体情報を保存せず(1)へ戻る。(はい)の操作ボタン15を押せば問診生体情報を記憶手段33へ保存し終了する。」

(引3-エ)「【0026】(血圧・脈拍の測定(図7参照))
(1)スタートメニュー1の2の項目を選択すると、医療端末機1から「血圧脈拍を測定しますか?」と説明手段31の表示手段14による画面表示とスピーカー13による音声で利用者に聞いてくる。利用者は入力手段27の(はい)(いいえ)の操作ボタン15、16のいずれかで答える。(いいえ)の場合は測定をせず、次の心電図測定項目に行く。(はい)の場合は次へ進む。
(2)医療端末機1から「準備はできましたか?」と上述したように画面表示と音声で聞いてくる。
(3)続いて医療端末機1から「腕帯を付けてください」と画面表示と音声で利用者に指示してくる。
(4)利用者はカバー12を開いて医療端末機1に備えつけられた測定手段35の腕帯10を腕に巻き付ける。
(5)測定の準備が整ったら(はい)の操作ボタン15を押す。
(6)すると、腕帯10にポンプ32より自動的に空気が送り込まれ、かつ排気されて血圧及び脈拍の測定が例えばオシロメトリック法で開始される。ここで測定を中止したい場合は入力手段27の(はい)(いいえ)(選択)の操作ボタン15、16、17の何れかを押せばすぐに測定を中止し、(1)に戻る。
(7)測定結果は次のように表示手段14の画面上に表示される。
測定結果
最高血圧=123mmHg
最低血圧=89mmHg
脈拍=60/分
(8)このようにして血圧と脈拍の測定が終了する。
(9)続いて医療端末機1から「これでよろしいですか?」と画面表示と音声で聞いてくる。(いいえ)の操作ボタン16を押せば、「やりなおしますか?」と画面表示と音声で聞いてくる。(はい)の操作ボタン15を押せば、生体情報を保存せず(1)へ戻る。入力手段27の(はい)の操作ボタン15を押せば測定した生体情報を記憶手段33に保存し操作は終了する。
【0027】尚、以上の血圧測定は最大加圧値160mmHgで測定を開始するが、この範囲を超えた血圧であることを検出すると、音声によりその旨の案内をして、最大加圧値240mmHgで測定を開始するようになっている。また、血圧脈拍の測定時に腕帯10を加圧してゆくが、ポンプ32の故障などで必要以上に加圧を始めたりした場合のために、医療装置は図示してないがハード的なセーフティ回路のほかにソフトでもセーフティ回路をもっている。
【0028】(心電図の測定(図8参照))
(1)スタートメニュー1の3の項目を選択すると、医療端末機1から「心電図を測定しますか?]と説明手段31の表示手段14による両面表示とスピーカー13による音声で利用者に聞いてくる。音声でのアナウンスは利用者が入力手段27の(はい)の操作ボタン15で答えるまで5秒間隔で繰返し行う。利用者は入力手段27の(はい)(いいえ)の操作ボタン15,16のどちらかを押すことで答える。(いいえ)の場合は測定をせず、次の体温測定値入力項目に行く。(はい)の場合に次へ進む。
(2)医療端末機1から「準備はできましたか?」と画面表示と音声で聞いてくる。
(3)続いて「電極を体に付けてください」と画面表示と音声で利用者に指示してくる。
(4)利用者は医療端末機1から出ている測定手段35の測定電極18,18を両腕に付ける。
(5)測定の準備が整ったら入力手段27の(はい)の操作ボタン15を押す。
(6)心電図測定が開始される。測定を中止したい場合は入力手段27の(はい)(いいえ)(選択)の操作ボタン15,16,17の何れかを押せばすぐに測定を中止し、(1)に戻る。
(7)測定中の利用者の心電図波形はリアルタイムに表示手段14上の画面に表示される。
(8)医療端末機1は、測定を開始し、自動ゲイン調整が終了した後1分後に自動的に測定を終了する。
(9)医療端末機1から「これでよろしいですか?」と画面表示と音声で聞いてくる。入力手段27の(いいえ)の操作ボタン16を押せば、「やりなおしますか?」と画面表示と音声で聞いてくる。(はい)の操作ボタン15を押せば、測定した生体情報を記憶手段33へ保存せず(1)へ戻る。入力手段27の(はい)の操作ボタン15を押せば測定した生体情報をメモリー33へ保存し終了する。」

(引3-オ)「【0031】(検尿試験結果の入力(図9乃至図15参照))腎臓は、血液によって全身の組織から選ばれてきた身体の中の不純物を余分な水分とともに尿とする。腎臓でつくられた尿は、尿管を通って膀胱に入り、ある程度の量がたまると尿道を経て体外に排泄される。ところが腎臓をはじめ身体の何処かに異常があると不用物が排泄されなかったり、排泄されてはならないものが尿に混じってきたりする。このような身体の異常を探るために尿の中の成分や性質を調べる検尿試験は、非常に重要な検査である。
【0032】患者は、あらかじめ検尿試験紙を尿に浸すことで(図10)、検尿試験紙の色を変化させ、あるいは発色させ、これらの色を色調チェック表の色と比較(図11)することで、尿に含まれる蛋白や糖を測定しておく。
【0033】[検尿試験紙測定原理]蛋白の場合は、pH指示薬(テトラプロムフェノールブルー(TBPB))が蛋白と複合体を形成し、色が変わるのを利用する。色調チェック方法は図12に従って行う。
【0034】糖の場合は、ブドウ糖がグルコースオキシダーゼの働きで酸化され、過酸化水素をつくり、この過酸化水素が、ペルオキシダーゼの働きでオルトトリジンを酸化させて赤色に発色させることを利用する。この赤色の呈色度が尿中ブドウ糖濃度と比例する。なお、用いる色原体(オルトトリジンなど)によって発色が異なる場合もある。色調チェック方法は図13に従って行う。
【0035】色調チェック方法は、一般市販品の色調チェック表(図11)を使用する。すなわち、検尿試験紙の呈色度を、色調チェック表に基づき、各6段階(蛋白はABCDEF、糖はGHIJKL)のうちどの段階(ランク)の色に相当するのかを目視により選択して行う。
【0036】測定が終了し検尿試験結果が得られたら、医療端末機1の操作を行う(図9)。
(1)すなわち、スタートメニュー1の6の項目を選択すると、医療端末機1から「検尿試験の結果を入力しますか?」と画面表示と音声で利用者に聞いてくる。
(2)利用者は(はい)(いいえ)(選択)の操作ボタンいずれかの操作ボタン15,16,17を押して答えていただきます。(はい)の操作ボタン15を押した場合は検尿試験データの記録を始める。(いいえ)の操作ボタン16を押した場合は検尿試験データを記録しないで最終画面が表示される。(選択)の操作ボタン17を押した場合は前回入力されたデータと同じ値がそのまま記録され保存されます。
(3)(はい)の操作ボタン15を押すと検尿試験実施時の注意事項が液晶画面に表示される(図14)。
(4)更に、液晶画面に尿蛋白ランクのABCDEF、尿糖ランクのGHIJKLが表示される(図15)。(はい)(いいえ)の操作ボタン15,16を操作して検尿試験結果のデータを入力する。
【0037】尿蛋白の判定データを入力する場合は、まず(はい)の操作ボタン15を押す。1回押す毎に表示されています尿蛋白欄のランクAから順に色帯(反転部分)が移動する。Fまで行くとまた最初のAから移動が始まる。尿蛋白測定結果データに合致する色の適切なランクの位置で、色帯を止める。
【0038】尿糖の測定結果データを入力する場合は、(いいえ)の操作ボタン16を押す。1回押す毎に表示されています尿糖欄のランクGから順に色帯が右に移動し、Lまで行くと、また最初のGから始まる。尿糖測定結果データに合致する色の適切なランクの位置で色帯を止る。
(5)入力できたら、(選択)の操作ボタン17を押し、入力完了とする。
(6)すると医療端末機1から「これでよろしいですか?」と画面表示と音声で聞いてくる。(はい)の操作ボタン15を押すと検尿試験結果データを保存する。
(7)そして終了画面を表示する。なお、(6)で(いいえ)の操作ボタン16を押すと検尿試験結果データを入力しないで(1)へ戻る。」

(引3-カ)【図2】




(エ)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2002-56099号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。

(引4-ア)「【0101】次に、図1、図2および図14?図16を参照し、一実施形態の動作例を説明する。図14?図16は、一実施形態による健康管理システムの動作例を示すフローチャートである。例えば、高血圧のユーザが健康管理システムを利用しようとし、インターネット端末11の操作を開始する(ステップS1)。そして、健康管理センタBのサーバ22のURLを入力し、インターネット端末11とサーバ22との間の回線を接続する(ステップS2,ステップS3)。
【0102】サーバ22は、健康管理システムにおけるサービス提供の初期のウェブページの画面として、内部の記憶部から、健康管理システムの選択画面を抽出し、インターネット端末11へ送信する(ステップS4,ステップS5)。インターネット端末11は、図16(当審注:図の記載内容から見て、「図16」は「図17」の誤記と認める。以下同様。)に示す、サーバ22から送られてきた選択画面を、表示画面に表示する。
【0103】この選択画面には、クリックされることにより、健康管理を行うプログラムを起動するケアーサービスを選択するケアーサービスボタン31,生活習慣病の原因や治療方法などの情報を、健康情報DB25から検索するプログラムを起動する生活習慣病ボタン32,食事や睡眠時間などの生活習慣が示されるプログラムが起動される生活情報ボタン33,各病気に適した食品を検索するプログラムを起動する健康食品情報ボタン34,同病のユーザがお互いの治療情報などを交換するプログラムを起動する井戸端会議ボタン35,健康情報DB25から生活習慣病の専門情報を検索し、インターネット端末11へ送信するプログラムを起動する専門情報ボタン36が設けられている。
【0104】そして、ユーザは、例えば、表示画面におけるケアーサービスの文字が書かれたケアーサービスボタン31にカーソルKを移動させ、マウスでケアーサービスボタン31をクリックすることにより選択する(ステップS7)。この選択情報がサーバ22に送信され、サーバ22は、この選択情報により健康管理を行うプログラムを起動し、内部の記憶部から、何れの病気の健康管理を行うかを選択する選択画面を抽出し、インターネット端末11へ送信する。
【0105】そして、インターネット端末11は、図18に示す選択画面を表示画面に表示する。表示画面のA領域に図16に示す初期の選択画面が表示され、表示画面のB領域にケアーサービスの対象となる病気の種類を選択するボタンが表示される。このB領域の選択画面には、クリックされることにより、高血圧の健康管理を行うプログラムを起動する高血圧ボタン41,高脂血症の健康管理を行うプログラムを起動する高脂血症ボタン42,糖尿病の健康管理を行うプログラムを起動する糖尿病ボタン43,喘息・COPDの健康管理を行うプログラムを起動する喘息ボタン44が設けられている。
【0106】また、トップの文字が書かれたトップボタン40をクリックすると、図16の初期の選択画面の表示に戻る。これにより、ユーザは、表示画面における高血圧の文字が書かれた高血圧ボタン41にカーソルKを移動させ、マウスで高血圧ボタン41をクリックすることにより選択する(ステップS8)。
【0107】この選択情報がサーバ22に送信され、サーバ22は、この選択情報により高血圧の健康管理を行うプログラムを起動し、内部の記憶部から、高血圧の健康管理サービスを受けるユーザ確認のため、ユーザの認証確認の認証画面を抽出し、この認証画面をインターネット端末11へ送信する。
・・・
【0114】これにより、インターネット端末11は、表示画面に図20に示すケアサービス選択画面を表示する(ステップS15)。このケアサービス選択画面は、図20に示す構成をしており、A領域に図16に示す初期の選択画面が表示され、D領域にユーザの管理サービスを選択する管理日誌の選択画面が表示される。
【0115】ここで、D領域の選択画面には、クリックされることにより、ユーザの健康チェックを行うプログラムを起動する健康チェックボタン61,ユーザのデータA,データB,データCの記載内容を閲覧するプログラムを起動する個人カルテボタン62,ユーザが医療機関Hの医師などに病状の相談を行うプログラムを起動する相談ボタン63,ユーザのデータB及びデータCの中の検査項目において管理項目の現在の管理目標を確認するプログラムを起動する管理目標ボタン64が設けられている。
【0116】そして、ユーザは、図20の表示画面における健康チェックの文字が書かれた健康チェックボタン61にカーソルKを移動させ、マウスで健康チェックボタン61をクリックすることにより、健康チェックのサービスを選択する(ステップS16)。ここで、ユーザが、健康チェックボタン61をクリックすることにより、インターネット端末11からサーバ22へ、健康チェックを開始することを通知する制御信号が送信される。これにより、サーバ22は、ユーザの健康チェックを行うプログラム、すなわち、図12に示した健康度分析と、図13に示した健康管理目標演算表示の継続的な判断の処理を開始する。
【0117】これにより、サーバ22は、ユーザの健康チェックを行うプログラム、すなわち、図12に示した健康度分析と、図13に示した健康管理目標演算表示の継続的な判断の処理を開始する。そして、サーバ22は、内部の記憶部から、図21に示すバイタル値等投入画面を抽出し、インターネット端末11へ送信する。
【0118】インターネット端末11において、このバイタル値等投入画面は、図21に示す構成をしており、A領域に図16に示す初期の選択画面が表示され、E領域にユーザのデータBの各測定値等を入力する入力部が表示される(ステップS17)。このとき、図2に示すユーザ側のシステムにおいて、インターネット端末11が、バイタルセンサ制御部1から、このバイタルセンサ制御部1に接続されたバイタルセンサのデータを取り込み、各測定データの入力部へ入力する構成としてもよい。
【0119】このE領域の入力部には、高血圧の健康管理を希望するユーザの管理目標である血圧の数値が表示される表示領域71,ユーザがデータBのバイタル値等を入力した日付を入力する日付入力部72,入力した時間が朝・昼・夜・就寝前のいずれかであるかを選択する選択ボタン73,バイタル値を入力した時間を入力する時間入力部74,発作があったか否か・発作があった場合に発作のレベルを入力する発作入力確認ボタン75,ユーザの血圧の測定データを入力する血圧データ入力部76,現在投薬を行っているか否かを入力する投薬確認ボタン77,ユーザの体温の測定データを入力する体温入力部78,体調の自覚症状等を入力するコメント入力部79が設けられている。
【0120】ユーザは、各入力部に対して、バイタルセンサ制御部1に接続されたバイタルセンサの測定結果のデータの誤入力をした場合、キャンセルボタン54をクリックし、入力した測定結果のデータを消去して、データの入力を再度行う。ユーザは、E領域の表示領域71,日付入力部72,選択ボタン73,時間入力部74,発作入力確認ボタン75,血圧データ入力部76,投薬確認ボタン77,体温入力部78,コメント入力部79に各々必要なデータの入力を行う。
【0121】そして、ユーザは、入力したデータに訂正が無ければ、OKボタン80にカーソルKを移動させ、OKボタン80をクリックし、必須管理項目の測定データ等の入力を終了する(ステップS18)。このとき、バイタルセンサ制御部1は接続されている各バイタルセンサからの必須管理項目の測定データをインターネット端末11に送信し、インターネット端末11はこの測定データを表示画面に表示させる。ユーザは、上記各バイタルセンサの測定データをプリンタなどにより印示し、この印字結果を見て必須管理項目の測定データ等の入力を行う。
【0122】ここで、高血圧における日々の管理データの必須管理項目としては、例えば、血圧及び体温のデータが測定され、血圧が管理目標とされている(他に体脂肪率,体重,運動量が用いられることもある)。また、例えば、高脂血症における日々の管理データの必須項目としては体脂肪率,体重,運動量等が用いられ、糖尿病における日々の管理データの必須項目としては血圧,体脂肪率,体重,運動量等が用いられ、喘息患者/COPDの日々の管理データの必須項目としてはピークフロー値,喘息/COPD日誌,酸素飽和度,体重等が用いられる。各ユーザのインターネット端末11に接続されたバイタルセンサ制御部には、上記検査項目の測定に必要なバイタルセンサが接続されている。」

(引4-イ)【図18】




(引4-ウ)【図20】




(引4-エ)【図21】




イ 本願補正発明と引用発明1との対比

(ア)引用発明1において、「体温計、脈拍計、血圧計、心電図作成用電極等によって構成され」る「第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)」が測定する「体温」、「脈拍」及び「血圧」などは、本願補正発明の「生物の少なくとも1つの生物学的パラメータ」に相当する。

(イ)引用発明1において、「測定値の取り込みが行われ、得られた値が規定値に対して異常方向に超過しているかどうかのチェックが行われ」る際の「得られた値」が、「体温」、「脈拍」及び「血圧」などを意味することは明らかであるから、引用発明1において、「得られた値が規定値に対して異常方向に超過しているかどうかのチェック」を行うことは、本願補正発明の「生物学的パラメータを分析する」ことに相当する。

(ウ)引用発明1は、「CPU221」が「拡張プログラムに従った医療監視制御システムを実現」し、「状態監視モードでは、測定値の取り込みが行われ、得られた値が規定値に対して異常方向に超過しているかどうかのチェック」を行うものであるから、引用発明1の、「CPU221」を配置した「制御部222」は、本願補正発明の「少なくとも1つの分析機構」における、「生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを分析する」機能を備えている。

(エ)引用発明1の「体温計、脈拍計、血圧計、心電図作成用電極等によって構成され」る「第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)」は、本願補正発明の「生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを測定する少なくとも1つのセンサ」に相当する。

(オ)引用発明1の「外部スロット205」は、「差込カード部分231と、これに接続された分配器232と、この分配器232に接続された第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)(Nは2以上の整数)とによって構成され」る「有線監視ユニット206の差込カード部分231が装着され」るものであるから、本願補正発明の「センサの測定データを検出するため」の「少なくとも1つのデータ入力部」に相当する。

(カ)引用発明1は、「状態監視モードでは、測定値の取り込みが行われ、得られた値が規定値に対して異常方向に超過しているかどうかのチェックが行われ、超過していた場合には、アラーム通知先にアラームを通知する」ものであるから、引用発明1の「制御部222」が、「得られた値が規定値に対して異常方向に超過しているかどうかのチェック」の結果を出力するための機構を備えていることは明らかである。
そうすると、引用発明1の「制御部222」は、本願補正発明の「分析機構」における、「分析結果を出力する少なくとも1つの出力機構・・・を有している」という構成を備えているといえる。

(キ)引用発明1の「医療監視制御システム201」は、本願補正発明の「装置」に相当する。

(ク)引用発明1の「CPU221」は、本願補正発明の「制御ユニット」に相当する。

(ケ)引用発明1の「外部記憶媒体204」は、本願補正発明の「プログラムメモリ」に相当する。

(コ)引用発明1の「拡張プログラム」は、本願補正発明の「プログラムモジュール」に相当する。

(サ)引用発明1は、「拡張プログラムを選択する状態では、ディスプレイ241には、外部記憶媒体204に格納されている全プログラムが表示され、操作部242の『F6』キー(4方向キー)を操作することでカーソル251を上下に移動させて所望の拡張プログラムを指定」するものであるから、引用発明1の「外部記憶媒体204」が「複数」の「拡張プログラム」を「格納」していることは明らかである。
そうすると、引用発明1の「外部記憶媒体204」は、本願補正発明の「プログラムメモリが複数のプログラムモジュールを記憶して」いるという構成を備えたものである。

(シ)引用発明1は、「拡張プログラムを選択する状態では、ディスプレイ241には、外部記憶媒体204に格納されている全プログラムが表示され、操作部242の『F6』キー(4方向キー)を操作することでカーソル251を上下に移動させて所望の拡張プログラムを指定」するものであるから、複数の拡張プログラムは、操作部242の「F6」キー(4方向キー)を操作することで指定され、選択的に作動するものである。
そして、引用発明1の状態監視モードでは、制御部222に配置されたCPU221が、指定された拡張プログラムに従って、当該拡張プログラムが監視対象とする監視センサの測定値を取り込み、得られた値が規定値に対して異常方向に超過しているかどうかのチェックを行うことは、明らかである。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明の「該複数のプログラムモジュールが、外部から予め設定可能な制御命令に依存して、選択的に作動可能であり、または、部分的に作動可能であり、または、すべてを互いに組み合わせて作動可能であり、作動したプログラムモジュールが選択した分析結果のためのデータを提供すること」という構成を備えたものである。

(ス)引用発明1の「操作キーやファンクションキーからなる操作部242」は、本願補正発明の「インターフェース」に相当する。

(セ)引用発明1において、「制御部222」、「外部スロット205」及び「操作キーやファンクションキーからなる操作部242」は、それぞれ携帯電話機本体202の一部を構成するものであり、「外部記憶媒体204」は、「携帯電話機本体202を医療監視制御システム201の一部として機能させる際には」、「携帯電話機本体202」の「外部メモリスロット203に装着してお」くものであるから、「CPU221を配置した制御部222」、「外部スロット205」、「外部記憶媒体204」及び「操作キーやファンクションキーからなる操作部242」をまとめて1つの機構として捉えることができる。
また、本願補正発明の生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを分析するための分析機構は、データ入力部、出力機構、制御ユニット、プログラムメモリ及びインターフェースを有しているものである。
ここで、上記(ウ)及び(カ)に示したとおり、引用発明1の「制御部22」が、本願補正発明の「分析機構」における、「生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを分析する」機能と、「分析結果を出力する少なくとも1つの出力機構・・・を有している」という構成とを備えたものであることは、上記(ウ)及び(カ)に示したとおりであり、引用発明1の「外部スロット205」、「CPU221」、「外部記憶媒体204」及び「操作キーやファンクションキーからなる操作部242」が、それぞれ本願補正発明の「データ入力部」、「制御ユニット」、「プログラムメモリ」及び「インターフェース」に相当することは、上記(オ)、(ク)、(ケ)及び(ス)に示したとおりである。
そうすると、引用発明において、「CPU221を配置した制御部222」、「外部スロット205」、「外部記憶媒体204」及び「操作キーやファンクションキーからなる操作部242」を1つにまとめたもの、言い換えれば、外部記憶媒体204を外部メモリスロット203に装着した携帯電話機本体202からディスプレイ241を除いた部分は、本願補正発明の「分析機構」が有する機能及び構成を備えたものである。
したがって、引用発明1において、外部記憶媒体204を外部メモリスロット203に装着した携帯電話機本体202からディスプレイ241を除いた部分は、本願補正発明の「生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを分析するための少なくとも1つの分析機構」に相当するといえる。

(ソ)本願補正発明における「データ区間」が意味する内容は必ずしも明確ではないことから、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌するに、段落【0025】に「本発明による装置では、その都度使用されるセンサまたは測定器は、データ区間を介して付設の分析ユニットに接続されている。データ区間は無線または有線で実現することができる。」との記載があることから、「データ区間」とは、「データ伝送媒体」を意味するものと解するのが相当である。
そうすると、引用発明1において、「携帯電話機本体202の外部スロット205に」「有線監視ユニット206の差込カード部分231が装着されており」、「差込カード部分231」「に接続された分配器232」に「第1?第Nの監視センサ233_(1)?233_(N)」が「接続され」ていることは、本願補正発明において、「前記センサと前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること」に相当する。

(タ)引用発明1の「ディスプレイ241」は、本願補正発明の「表示機構」に相当する。
そして、引用発明1において、「ディスプレイ241」が「制御部222」と配線等(本願補正発明の「データ区間」に相当。)により接続されていることは明らかであるから、引用発明1は、本願補正発明の「該表示機構と前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること」という構成を備えたものである。

(チ)上記(ア)ないし(タ)を踏まえると、本願補正発明と引用発明1とは、

「 生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを分析するための少なくとも1つの分析機構を備え、該分析機構が、生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを測定する少なくとも1つのセンサの測定データを検出するために少なくとも1つのデータ入力部と、分析結果を出力する少なくとも1つの出力機構とを有している装置において、
前記分析機構が制御ユニットとプログラムメモリとを有し、該プログラムメモリが複数のプログラムモジュールを記憶しており、該複数のプログラムモジュールが、外部から予め設定可能な制御命令に依存して、選択的に作動可能であり、または、部分的に作動可能であり、または、すべてを互いに組み合わせて作動可能であり、作動したプログラムモジュールが選択した分析結果のためのデータを提供すること、
前記センサと前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること、
表示機構が設けられ、該表示機構と前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること、
前記分析機構が、インターフェースを有していること、
を特徴とする装置。」

の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
インターフェースが、本願補正発明においては、「測定技術を用いずに検出したデータを入力するための」ものであるのに対し、引用発明1においては、そのような特定がされていない点。

(相違点2)
本願補正発明においては、「測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにした分析パラメータを互いに組み合わせる分析モジュールが設けられている」のに対し、引用発明1においては、そのような特定がされていない点。

(相違点3)
本願補正発明においては、「操作者への提案として機器の自動編成を実行可能である」のに対し、引用発明1においては、そのような特定がされていない点。

エ 判断

上記各相違点について検討する。

(ア)相違点1について

(引3-ア)、(引3-エ)及び(引3-カ)によれば、引用文献3には、
「利用者の血圧、心泊数、及び心電図等を測定し、医療機関側からの問診事項に対する回答の入力等を行う医療端末機1、及び利用者側通信手段2で構成した医療装置8が、各利用者の家庭に設置される在宅医療システム」が記載されている。
そして、(引3-ウ)には、「胸が苦しいですか?」、「体がだるいですか?」といった問診の回答を、利用者が医療端末機の入力手段を用いて入力することが記載されている。ここで、これらの問診の回答は、利用者の感覚に基づくものであるから、測定技術を用いずに検出したデータであるといえる。
また、(引3-オ)には、色調チェック表に基づいて利用者が目視により判定した検尿試験結果のデータを、利用者が医療端末機の入力手段を用いて入力することが記載されている。ここで、検尿試験結果のデータは、利用者が目視により判定したものであるから、測定技術を用いずに検出したデータであるといえる。
そうすると、引用文献3には、「利用者の血圧、心泊数、及び心電図等を測定し、医療機関側からの問診事項に対する回答の入力等を行う医療端末機1、及び利用者側通信手段2で構成した医療装置8が、各利用者の家庭に設置される在宅医療システムにおいて、各利用者の家庭に設置される医療装置8の医療端末機1に、測定技術を用いずに検出したデータを入力すること」(以下「引用文献3記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

引用発明1と引用文献3記載の技術的事項は、患者などの利用者が在宅など医療機関から離れた状態で、その健康状態を監視することができる医療監視制御システムとして共通する技術分野に関するものであり、引用発明1においても、引用文献3記載の技術的事項における「測定技術を用いずに検出したデータを入力すること」が有意義であることは明らかであるから、引用発明1において引用文献3記載の技術的事項を採用することには、十分な動機付けがあるといえる。
したがって、引用発明1において、引用文献3記載の技術的事項に基づいて、操作部242から測定技術を用いずに検出したデータを入力するようにして上記相違点1に係る本願補正発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

(イ)相違点2について

体重・身長・インピーダンスなどの測定データ(本願補正発明の「測定パラメータ」に相当。)及び年齢・性別などのデータ(本願補正発明の「入力パラメータ」に相当。)から、体組成や肥満度などの評価値(本願補正発明の「分析パラメータ」に相当。)を算出して提示したり、血液に関連する複数の測定データ(本願補正発明の「測定パラメータ」に相当。)から、血液に対する総合評価(本願補正発明の「分析パラメータ」に相当。)を行って提示するように、医療・健康管理において、測定データ等から求めた評価値(本願補正発明の「測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにした分析パラメータ」に相当。)を提示することは、文献を挙げるまでもなく本願優先日当時において周知な事項である。
さらに、多種の検査を行う健康診断等において、複数種の評価値から総合的な健康状態を表す総合評価値を求めて提示することも、普通に行われていることである。
そして、複数の監視センサを有する医療監視制御システムである引用発明1において、各監視センサの測定値から把握される利用者の健康状態を利用者に対して提示することが有意義であることは明らかである。
そうすると、引用発明1において、上記周知な事項に基づいて、各監視センサの測定値から測定項目に応じた複数種の評価値を求め、それらから総合的な健康状態を表す総合評価値を求めて利用者に対して提示する機能を追加することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
ここで、各監視センサの測定値から測定項目に応じた複数種の評価値を求め、それらから総合的な健康状態を表す総合評価値を求めて利用者に対して提示することは、上記相違点2に係る本願補正発明の測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにした分析パラメータを互いに組み合わせることに相当するといえる。
したがって、引用発明1において、上記周知な事項に基づいて、各監視センサの測定値から測定項目に応じた複数種の評価値を求め、それらから総合的な健康状態を表す総合評価値を求めて利用者に対して提示する機能、すなわち、本願の発明の詳細な説明でいう「実際に存在する問題に対する値を提供する」という機能を追加することにより、結果的に上記相違点2に係る本願補正発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

(ウ)相違点3について

(引4-ア)ないし(引4-エ)によれば、引用文献4には、「表示画面にケアーサービスの対象となる病気の種類を選択するボタンが表示され、マウスで病名を表すボタンをクリックすることにより選択すると、サーバは選択された病名に対応する健康管理を行うプログラムを起動し、表示画面にケアサービス選択画面を表示し、マウスで健康チェックボタンをクリックすることにより健康チェックのサービスを選択すると、サーバはユーザの健康チェックを行うプログラムの処理を開始し、バイタル値等投入画面を表示し、ユーザのデータの各測定値等を入力する入力部が表示され、ここで、入力部に表示される各測定値の項目は、選択された病名に対応した日々の管理データの必須管理項目である、健康管理システム。」が記載されている。
言い換えると、引用文献4には、「健康管理システムにおいて、複数の病気のそれぞれに対応した複数の健康チェックプログラムが用意されており、病名を選択することで、サーバはその病気に対応した健康チェックプログラムが起動し、その病気に対応した測定項目を表示し、ユーザにその測定項目の測定と測定値のデータ入力を促すこと。」(以下「引用文献4記載の技術的事項」という。)が記載されている。

引用発明1と引用文献4記載の技術的事項は、患者などの利用者が在宅など医療機関から離れた状態で、その健康状態を監視することができる医療監視制御システムとして共通する技術分野に関するものである。そして、引用発明1において、患者などの利用者が在宅で使用する場合に、複数の監視センサを常に身につけておくことは、通常の生活に支障を来す可能性が高いと想定されることから、引用発明1においても、引用文献4記載の技術的事項のように、CPU221が実行する拡張プログラムに対応する測定項目を表示し、在宅の利用者にその測定項目の測定と測定値のデータ入力を促すようにすることには、十分な動機付けがあるといえる。
したがって、引用発明1において、引用文献4記載の技術的事項に基づいて、CPU221が実行する拡張プログラムに対応する測定項目を表示し、在宅の利用者にその測定項目の測定と測定値のデータ入力を促すようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

ここで、引用文献4記載の技術的事項において、「サーバはその病気に対応した健康チェックプログラムが起動し、その病気に対応した測定項目を表示し、その測定項目の測定とデータ入力を促すこと」は、サーバが健康チェックプログラムを実行するために必要な測定項目を自動的に選択し、ユーザにその測定項目の測定を行うために必要な測定器を用いた測定と測定値のデータ入力を促すことにほかならないから、「サーバが、健康チェックプログラムを実行するために必要な測定器を自動的に選択し、それを起動することをユーザへ提案すること」といえる。
そして、「サーバが、健康チェックプログラムを実行するために必要な測定器を自動的に選択」することは、「測定器の自動編成を実行」することといえ、その自動的に選択した測定器を「起動することをユーザへ提案すること」は、「ユーザへの提案として測定器の自動編成を実行」することといえる。
そうすると、引用文献4記載の技術的事項は、上記相違点3に係る本願補正発明の構成を備えているといえる。

したがって、引用発明1において、引用文献4記載の技術的事項に基づいて、CPU221が実行する拡張プログラムに対応する測定項目を表示し、在宅の利用者にその測定項目の測定と測定値のデータ入力を促すようにすることにより、結果的に上記相違点3に係る本願補正発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

(エ)本願補正発明の奏する作用効果

本願補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1、3及び4の記載事項、並びに本願優先日当時において周知な事項から当業者が予測し得る程度のものである。

(オ)まとめ

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明1、引用文献3及び引用文献4記載の技術的事項、並びに本願優先日当時において周知な事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび

以上のとおり、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成29年6月26日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年6月29日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記第2[理由]1の記載参照。)。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

(理由1) (略)

(理由2) (実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(理由3) (進歩性)この出願の請求項1-3に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明並びに引用文献3及び4に記載された事項に基づいて、請求項4-7に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2003-168178号公報
引用文献2:特開平05-007560号公報
引用文献3:特開平10-334161号公報
引用文献4:特開2002-056099号公報

3 (理由2)特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)について

本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本願補正発明の本件発明特定事項2に相当する「操作者への提案として機器の自動編成を実行可能であること」を、発明特定事項として含むものである。
そうすると、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明が本件発明特定事項2を含むことにより、前記第2[理由]2(2)に記載したとおり、当業者が本願補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないことから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

4 (理由3)特許法第29条第2項の規定(進歩性)について

(1)引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、3及び4、並びにそれらの記載事項は、前記第2[理由]2(3)イに記載したとおりである。

(2)対比・判断

本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本願補正発明から、「測定パラメータおよび/または入力パラメータをベースにした分析パラメータを互いに組み合わせる分析モジュールが設けられていること」という発明特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明1、引用文献3及び引用文献4記載の技術的事項、並びに本願優先日当時において周知な事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明(当審注:引用発明1との間に上記相違点2は存在しない。)も、引用発明1、引用文献3及び引用文献4記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるである。

5 上申書における請求人の主張について

請求人は、平成29年11月29日提出の上申書において、特許請求の範囲の請求項1の記載を
「【請求項1】
生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを分析するための少なくとも1つの分析機構を備え、該分析機構が、生物の少なくとも1つの生物学的パラメータを測定する少なくとも1つのセンサの測定データを検出するために少なくとも1つのデータ入力部と、分析結果を出力する少なくとも1つの出力機構とを有している装置において、
前記分析機構が制御ユニットとプログラムメモリとを有し、該プログラムメモリが複数のプログラムモジュールを記憶しており、該複数のプログラムモジュールが、外部から予め設定可能な制御命令に依存して、選択的に作動可能であり、または、部分的に作動可能であり、または、すべてを互いに組み合わせて作動可能であり、作動したプログラムモジュールが選択した分析結果のためのデータを提供すること、
前記センサと前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること、
表示機構が設けられ、該表示機構と前記分析機構とがデータ区間を介して互いに接続されていること、
前記分析機構が、測定技術を用いずに検出したデータを入力するためのインターフェースを有していること、
編成の際に選定された前記プログラムモジュールに依存して、実際に選定した前記プログラムモジュールに対し必要である測定値のみを特定し、分析し、その際種々の測定パラメータおよび/または入力パラメータを互いに組み合わせる分析モジュールが設けられていること、
を特徴とする装置。」
(以下「補正案」という。)と補正することにより、拒絶の理由は解消する旨主張している。

しかしながら、上記補正案の下線部における「種々の測定パラメータおよび/または入力パラメータを互いに組み合わせる分析モジュール」は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。すなわち、発明の詳細な説明の段落【0016】に記載されているように(前記第2[理由]2(2)ア(ア)参照)、分析モジュールが互いに組み合わせるのは、分析パラメータであって、測定パラメータおよび/または入力パラメータではない。
また、上記補正案の下線部の記載は、分析モジュールが、編成の際に選定された前記プログラムモジュールに依存して、実際に選定した前記プログラムモジュールに対し必要である測定値のみを特定し、分析することを特定するものと解される。これに関連して、発明の詳細な説明の段落【0034】に「他の実施形態によれば、必要な分析時間を最短にするため、編成の際に選定したモジュールに依存して、実際に作動するモジュールにとって必要な測定値のみを特定し選択することが考えられる。」と記載されてはいるが、「必要な測定値のみを特定し選択すること」を、分析モジュールが行うことまでは記載されていない。
そうすると、上記補正案は、そもそも、発明の詳細な説明の記載に基づいたものであるとは認められず、いわゆる新規事項の追加又はサポート要件違反に該当するものであって、特許を受けることができないものである。
さらに、上記補正案における「編成」は、何の編成を意味するのかが不明である。仮に、「機器の自動編成」を意味するものであるとすると、実施可能要件に適合しないことは、上記第2[理由]2(2)イで述べたとおりであるから、上記補正案は、明確性又は実施可能要件にも適合しないものであって、特許を受けることができないものである。
したがって、請求人の上記補正案は採用できない。


第4 むすび

以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものではなく、また、特許法第29条第2項の規定により、本願発明は、特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-06-14 
結審通知日 2018-06-19 
審決日 2018-07-02 
出願番号 特願2013-512755(P2013-512755)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 536- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 裕司  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
東松 修太郎
発明の名称 モジュール分析装置  
代理人 藤田 アキラ  
代理人 今井 秀樹  

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