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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1346325 |
審判番号 | 不服2017-15019 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-10 |
確定日 | 2018-12-10 |
事件の表示 | 特願2015- 15188「イメージセンサー構造」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開,特開2016- 72592,請求項の数(10)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年1月29日の出願(パリ条約による優先権主張2014年10月1日,アメリカ合衆国)であって,平成28年4月28日付けで拒絶理由通知がなされ,同年8月4日に意見書と手続補正書が提出され,平成29年1月27日付けで拒絶理由通知がなされ,同年4月10日に意見書と手続補正書が提出され,同年6月1日付けで拒絶理由通知がなされ,同年7月14日に意見書と手続補正書が提出され,同年8月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされた。 これに対し,平成29年10月10日に拒絶査定不服審判の請求がされ,当審において平成30年9月7日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)がなされ,同年10月2日に意見書と手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願請求項1?10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明10」という。)は,平成30年10月2日に手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1?10は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 基板と, 前記基板に形成される複数の光電変換ユニットと, 前記基板と前記光電変換ユニット上に形成され,第一屈折率を有する赤色フィルターパターン,第二屈折率を有する緑色フィルターパターン,および,第三屈折率を有する青色フィルターパターンを有する複数のカラーフィルターパターンと, を有し, 前記複数のカラーフィルターパターンは,それぞれ,少なくとも一種の顔料と化合物の混合物を含み,前記化合物は,ひとつ以上の分散剤,アクリル樹脂,または,感受性ポリマーにより構成され, 前記複数のカラーフィルターパターンの各混合物は,前記混合物の組成と,前記顔料と前記化合物の割合に基づいた屈折率を有し, 少なくともひとつの前記カラーフィルターパターンは,前記混合物とは別に特定屈折率を有する成分を含んで,前記緑色フィルターパターンの前記第二屈折率が,前記赤色フィルターパターンの前記第一屈折率と前記青色フィルターパターンの前記第三屈折率より高いことを特徴とするイメージセンサー構造。 【請求項2】 前記成分は,硫黄含有ポリマー,モノシラン含有のポリマー,芳香族ポリエステル,ポリイミド,酸化チタン含有のポリマー,または,それらの組み合わせを含み,前記特定屈折率は1.5より高いことを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサー構造。 【請求項3】 前記成分は,フルオロアクリルポリマー,フルオロアクリルコポリマー,または,それらの組み合わせを含み,前記特定屈折率は1.5より低いことを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサー構造。 【請求項4】 前記成分は,前記赤色フィルターパターン,前記緑色フィルターパターン,または,前記青色フィルターパターンの重量に基づいて,1-20wt%を有することを特徴とする請求項1,2と3のひとつに記載のイメージセンサー構造。 【請求項5】 前記青色フィルターパターンは,前記成分と前記混合物を含み,且つ,前記特定屈折率は,前記混合物の前記屈折率より低いことを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサー構造。 【請求項6】 前記緑色フィルターパターンは,前記成分と前記混合物を含み,且つ,前記特定屈折率は,前記混合物の前記屈折率より高く,前記青色フィルターパターンは,前記成分と前記混合物を含み,且つ,前記特定屈折率は,前記混合物の前記屈折率より低いことを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサー構造。 【請求項7】 前記緑色フィルターパターンは,前記成分と前記混合物を含み,且つ,前記特定屈折率は,前記混合物の前記屈折率より高く,前記赤色フィルターパターンは,前記成分と前記混合物を含み,且つ,前記特定屈折率は,前記混合物の前記屈折率より高く,前記青色フィルターパターンは,前記成分と前記混合物を含み,且つ,前記特定屈折率は,前記混合物の前記屈折率より低いことを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサー構造。 【請求項8】 前記緑色フィルターパターンは,前記成分と前記混合物を含み,且つ,前記特定屈折率は,前記混合物の前記屈折率より高いことを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサー構造。 【請求項9】 前記緑色フィルターパターンは,前記成分と前記混合物を含み,且つ,前記特定屈折率は,前記混合物の前記屈折率より高く,前記赤色フィルターパターンは,前記成分と前記混合物を含み,且つ,前記特定屈折率は,前記混合物の前記屈折率より高いことを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサー構造。 【請求項10】 前記赤色フィルターパターンの前記第一屈折率は1.5?1.8,前記緑色フィルターパターンの前記第二屈折率は1.6?1.9,前記青色フィルターパターンの前記第三屈折率は1.3?1.8であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8と9のひとつに記載のイメージセンサー構造。」 第3 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について (ア)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2013-165216号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0009】 本発明は,上記の問題に鑑み,コストアップを招くことなく,各カラーフィルタを透過した光のクロストークを抑制することができるとともに,受光効率を向上させることができる撮像素子を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の撮像素子は,光の照射を受けてその光を電荷に変換する複数の光電変換素子と,その各光電変換素子に対してそれぞれ設けられる赤フィルタ,緑フィルタおよび青フィルタを有するカラーフィルタ層とを備えた撮像素子であって,赤フィルタ,緑フィルタおよび青フィルタよりも低い屈折率を有する隔壁が赤フィルタの周囲のみに設けられていることを特徴とする。」 「【0024】 以下,図面を参照して本発明の撮像素子の一実施形態について詳細に説明する。図1は,本実施形態の撮像素子の概略構成を示す断面図である。 【0025】 本実施形態の撮像素子20は,図1に示すように,光の照射を受けて電荷を発生するフォトダイオード(光電変換素子)26R,26G,26Bを備えた半導体基板22と,半導体基板22上に形成されたデバイス保護膜23と,赤フィルタ21R,緑フィルタ21Gおよび青フィルタ21Bと赤フィルタ21Rの周囲に形成された隔壁26とを有するカラーフィルタ層24と,赤フィルタ21R,緑フィルタ21Gおよび青フィルタ21Bのそれぞれに対応して設けられた多数のレンズからなるマイクロレンズアレイ25とを備えている。」 「【0031】 着色,硬化されて形成された赤フィルタ21R,緑フィルタ21Gおよび青フィルタ21Bの屈折率は,1.55?1.85程度である。したがって,隔壁26を形成する低屈折材料の屈折率としては,屈折率n≦1.5とすることが望ましい。これによりカラーフィルタとの屈折率差を設けることができ,光の反射に効果的な隔壁とすることができる。隔壁26の屈折率nとしては,より好ましくは1.45以下であり,カラーフィルタとの屈折率差をより大きくとる観点から,最も好ましくは1.4以下である。」 「【0034】 また,赤フィルタ21R,緑フィルタ21G,青フィルタ21Bは,着色組成物により形成されるものであり,好ましくは熱硬化性組成物を用いることが望ましい。 【0035】 たとえば,光硬化性組成物を用いるようにした場合,光開始剤,モノマーなどの感光性硬化成分にアルカリ可溶の樹脂を含有させる必要があり,全固形分中に占める着色剤の含有量が相対的に低下してしまうことになり,結果として膜厚が厚くなるデメリットがある。また,光硬化性成分を有するため,その組成分の厚みがカラーフィルタの膜厚に影響し,薄膜化を実現するのが困難である。その結果,色シェーディングを悪化させたり,混色が発生しやすくなったりする問題がある。 【0036】 これに対し,着色組成物として熱硬化性組成物を用いた場合には,光硬化性成分の使用を軽減または除去することができる。光硬化性成分を少なくしたり,あるいは除いたりすることで着色剤の濃度を高めることができる。したがって,透過分光を維持しながら薄膜化されたパターンを形成することができる。」 「【0040】 通常,光に対する屈折率は,材料の都合上,赤フィルタ21Rが,他の色のフィルタよりも高くなる。このため,光の導波効果により,緑フィルタ21Gおよび青フィルタ21Bから赤フィルタ21Rへの光の入射によるクロストークの影響が非常に大きいことを発見した。そして,緑フィルタ21Gと青フィルタ21Bとの間のクロストークの影響は比較的少ないことから,本実施形態においては赤フィルタ21Rの周囲のみに隔壁26を設けるようにしている。これにより隔壁26を設けることによる光損失は,赤フィルタ21Rの画素のみとなり,撮像素子全体の受光効率の向上を図ることができる。また,隔壁26の欠陥を少なくすることができ,コストの削減も図ることができる。」 「【0043】 図3から図5に示すシミュレーション結果から,赤フィルタ,緑フィルタおよび青フィルタの光入射効率という観点からいうと,全てのフィルタの境界に隔壁26を設けた方が良いことがわかるが(図5),本実施形態のように赤フィルタ21Rの周囲のみに隔壁26を設けた場合(図3)においても,隔壁を全く設けない場合のシミュレーション結果(図4)と比較すると,緑フィルタ21Gの光入射効率は十分改善していることがわかる。また,隔壁を全く設けない場合における赤フィルタ21Rの混色についても改善していることがわかる。 【0044】 したがって,光入射効率だけでなく,隔壁26を設けることによる光損失や隔壁26の欠陥も考慮すると,本実施形態のように赤フィルタ21Rの周囲のみに隔壁26を設けることが好ましいことがわかる。 【0045】 なお,赤フィルタ21Rの周囲のみに隔壁26を設けた場合,図3に示すシミュレーション結果から分かるように,青フィルタ21Bの光入射効率の改善が少ない。これは,一般的には,赤フィルタと青フィルタと緑フィルタの屈折率が,図6に示すような関係となっており,すなわち500nm?650nmの領域で, 赤フィルタの屈折率>緑フィルタの屈折率>青フィルタの屈折率 という関係となっており,青から緑,青から赤に光が結合しやすい状態になっているからである。」 図6には,400nm?500nmの領域で,緑フィルタの屈折率が他のフィルタの屈折率より大きいことが記載されている。 (イ)引用文献1に記載された発明 したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「光の照射を受けて電荷を発生するフォトダイオード(光電変換素子)26R,26G,26Bを備えた半導体基板22と, 半導体基板22上に形成された,赤フィルタ21R,緑フィルタ21Gおよび青フィルタ21Bと, 赤フィルタ21Rの周囲に形成された隔壁26と, を備え, 前記赤フィルタ21R,前記緑フィルタ21Gおよび前記青フィルタ21Bの屈折率は1.55?1.85程度であり,一般的には,500nm?650nmの領域で, 赤フィルタの屈折率>緑フィルタの屈折率>青フィルタの屈折率 という関係にあり, 前記赤フィルタ21R,前記緑フィルタ21G,前記青フィルタ21Bは,着色組成物により形成され, 赤フィルタ,緑フィルタおよび青フィルタよりも低い屈折率を有する隔壁が赤フィルタの周囲のみに設けられていることで,各カラーフィルタを透過した光のクロストークを抑制することができるとともに,受光効率を向上させることができる撮像素子。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2014-142628号公報)には,1.85以上の高屈折率の光学フィルターを得るために,硫黄含有ポリマー,モノシラン含有のポリマー,芳香族ポリエステル,ポリイミド,酸化チタン含有のポリマー,または,それらの組み合わせを硬化性樹脂組成物に含むことが段落【0016】?【0155】に記載され,1.4以下の低屈折率の光学フィルターを得るために,パーフルオロアルキル基を含有するアクリレート又はメタクリレートを含有する重合体及び共重合体を硬化性樹脂組成物に含むことがことが段落【0017】,【0337】?【0343】に記載されている。 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2013-115335号公報)には,R(赤)のカラーフィルタ,G(緑)のカラーフィルタ,,およびB(青)のカラーフィルタの屈折率が,波長500nmにおいて1.54ないし2.00であることが,段落【0041】に記載されている。 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2013-228705号公報)には,カラーフィルタ基板の材料となる感光性樹脂組成物が,顔料,顔料分散剤,アクリル系のポリマー等を含むことが,段落【0111】?【0147】に記載されている。 5 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2009-111225号公報)には,カラーフィルタを形成する熱硬化性組成物が,着色剤,熱硬化性化合物,バインダーおよび分散剤等を含み,着色剤には顔料が用いられ,バインダーにはアクリル系樹脂を用いることが,段落【0107】?【0147】に記載されている。 6 引用文献6について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開昭63-191105号公報)には,カラーフィルターの着色樹脂層を形成する樹脂が,アクリル系樹脂および顔料を含むことがことが,第3頁左下欄第8行?第4頁右下欄第2行に記載されている。 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 引用発明の「半導体基板22」は,本願発明1の「基板」に相当する。 引用発明の「光の照射を受けて電荷を発生するフォトダイオード(光電変換素子)26R,26G,26B」は,半導体基板22に備えられたものであるから,本願発明1の「前記基板に形成される複数の光電変換ユニット」に相当する。 引用発明の「赤フィルタ21R」,「緑フィルタ21G」,「青フィルタ21B」は,フォトダイオード(光電変換素子)26R,26G,26Bを備えた半導体基板22上に形成され,それぞれ所定の屈折率を有するものである。そうすると,引用発明の「半導体基板22上に形成された,赤フィルタ21R,緑フィルタ21Gおよび青フィルタ21B」は,本願発明1の「前記基板と前記光電変換ユニット上に形成され,第一屈折率を有する赤色フィルターパターン,第二屈折率を有する緑色フィルターパターン,および,第三屈折率を有する青色フィルターパターンを有する複数のカラーフィルターパターン」に相当する。 引用発明の「撮像素子」は,イメージセンサーとして機能する構造を有するものであるから,本願発明1の「イメージセンサー構造」に対応する。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「基板と, 前記基板に形成される複数の光電変換ユニットと, 前記基板と前記光電変換ユニット上に形成され,第一屈折率を有する赤色フィルターパターン,第二屈折率を有する緑色フィルターパターン,および,第三屈折率を有する青色フィルターパターンを有する複数のカラーフィルターパターンと, を有するイメージセンサー構造。」 (相違点) (相違点1)本願発明1は,「前記複数のカラーフィルターパターンは,それぞれ,少なくとも一種の顔料と化合物の混合物を含み,前記化合物は,ひとつ以上の分散剤,アクリル樹脂,または,感受性ポリマーにより構成」されているのに対し,引用発明はそのような構成を備えているか定かではない点。 (相違点2)本願発明1は,「前記複数のカラーフィルターパターンの各混合物は,前記混合物の組成と,前記顔料と前記化合物の割合に基づいた屈折率を有し」ているのに対し,引用発明の赤フィルタ21R,緑フィルタ21Gおよび青フィルタ21Bそれぞれの屈折率はどのような組成物の割合に基づいているか定かではない点。 (相違点3)本願発明1は,「少なくともひとつの前記カラーフィルターパターンは,前記混合物とは別に特定屈折率を有する成分を含んで,前記緑色フィルターパターンの前記第二屈折率が,前記赤色フィルターパターンの前記第一屈折率と前記青色フィルターパターンの前記第三屈折率より高い」という構成を備えているのに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み,上記相違点3について検討する。 カラーフィルターの屈折率は,透過する光の波長によって異なるものであるところ,本願発明1では,フィルターパターン間の屈折率の関係については特定されているものの,特定された屈折率の関係となる光の波長については特定されていない。 これに対して,引用文献1には,図6における一般的な屈折率の関係として,波長が500nm?650nmの領域に特定され,その際のフィルタ間の屈折率の関係を, 赤フィルタの屈折率>緑フィルタの屈折率>青フィルタの屈折率 であることが,段落【0045】に明記されている。また,同図6からは,波長が400nm?500nmの領域において,緑フィルタの屈折率が他のフィルタの屈折率より大きいことも読み取ることができる。 そこで,最初に,本願発明1と引用発明におけるフィルターを通る光の波長と屈折率について検討し,次に,引用文献1の第6図に特定された屈折率の事項に基づく容易想到性について検討する。 光学材料の屈折率について波長が特定されていない場合,波長589.3nmの光(ナトリウムのD線)について示すことが慣習になっているものと認められるところ,このことは,引用文献1において波長589.3nmを含む領域を「一般的な屈折率」として特定していることとも整合している。 そうすると,本願発明1で特定された各フィルターパターン間の屈折率の関係は,波長589.3nmの光についてのものであり,また,本願発明1と対比すべき引用発明における各フィルタ間の屈折率の関係も,波長589.3nmの光における屈折率の関係とすべきである。 次に,引用発明において,波長589.3nmを含む領域での各フィルターの屈折率の関係は, 赤フィルタの屈折率>緑フィルタの屈折率>青フィルタの屈折率 であり,この光の波長の領域において,緑フィルタの屈折率を,他のフィルタの屈折率より大きくすることは,引用文献1には記載も示唆もされていない。また,カラーフィルターにおいて,波長589.3nmを含む領域で緑フィルタの屈折率を他のフィルタの屈折率より大きくすることは,引用文献2ないし6にも記載も示唆もされていない。これらのことから,引用発明において,緑フィルタの屈折率を,他のフィルタの屈折率より大きくしなければならない動機付けを見いだすことはできない。 また,本願発明1は,相違点3の構成を備えることにより,「SNR(signal-to-noise ratio),または,量子効率(QE)を改善」できるという顕著な効果を奏するものと認められる。 したがって,上記相違点1および2について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,引用文献1ないし6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2?10について 本願発明2?10は,本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献1ないし6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は,請求項1?10について,上記引用文献1?6に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかしながら,平成30年10月2日に手続補正で補正された請求項1?10は,それぞれ「少なくともひとつの前記カラーフィルターパターンは,前記混合物とは別に特定屈折率を有する成分を含んで,前記緑色フィルターパターンの前記第二屈折率が,前記赤色フィルターパターンの前記第一屈折率と前記青色フィルターパターンの前記第三屈折率より高い」という事項を有するものとなっており,上記第4の1のとおり,本願発明1?10は,当業者であっても上記引用発明及び上記引用文献1?6に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明できたものであるとはいえない。したがって,原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 当審では,請求項1には,「複数のカラーフィルターパターンは,それぞれ,少なくとも一種の顔料と化合物の混合物を含み」及び「少なくともひとつの前記カラーフィルターパターンは,特定屈折率を有する成分を含んで」と記載されているが,この記載では,該「特定屈折率を有する成分」が,「混合物」に含まれる成分であるのか,「混合物」に含まれない別の成分であるのか不明であり,請求項1を引用する請求項2?4,10の記載も同様に不明であるとする,特許法第36条第6項第2号の明確性要件違反の拒絶理由を通知した。 これに対して,平成30年10月2日に手続補正で請求項1は,「少なくともひとつの前記カラーフィルターパターンは,前記混合物とは別に特定屈折率を有する成分を含んで」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明1?10は,当業者が引用発明及び引用文献1?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-11-28 |
出願番号 | 特願2015-15188(P2015-15188) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 今井 聖和、田邊 顕人 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
梶尾 誠哉 飯田 清司 |
発明の名称 | イメージセンサー構造 |
代理人 | 磯野 富彦 |