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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1346438
審判番号 不服2017-18466  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-12 
確定日 2018-12-11 
事件の表示 特願2014-149242「画像表示装置及び画像表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 8日出願公開、特開2016- 24380、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成26年7月22日
拒絶査定: 平成29年9月6日(送達日:同年同月12日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年12月12日
手続補正: 平成29年12月12日


第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-19に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-63784号公報
2.特開2009-157127号公報
3.米国特許出願公開第2008/0049042号明細書
4.再公表特許第2008/090845号
5.特開2008-152244号公報
6.再公表特許第2006/018926号


第3 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年12月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
複数の画素がマトリクス状に設けられた画像表示部と、
赤、緑、青の3色とこの3色のうち2色以上の合成色からなる第1の色域に対応する入力画像信号に応じて前記画像表示部の各画素が有する副画素の出力を決定する処理部と
を備え、
前記複数の画素は、第1画素及び第2画素を含み、
前記第1画素は、白色の副画素と、前記第1の色域に対応する赤の副画素、緑の副画素及び青の副画素と、を有し、
前記第2画素は、白色の副画素と、第2の色域に対応するシアンの副画素、マゼンタの副画素及びイエローの副画素と、を有し、
前記第2の色域は、シアン、マゼンタ、イエローの3色とこの3色のうち2色以上の合成色からなり、
前記第1画素と前記第2画素とが隣接し、
前記処理部は、前記第2画素に対応する入力画像信号の成分のうち白色に変換可能な白色成分を前記白色の副画素に割り当て、前記白色成分を除いた当該入力画像信号の成分のうちシアン、マゼンタ及びイエローで再現可能な第2色域成分を前記シアンの副画素、前記マゼンタの副画素及び前記イエローの副画素の少なくとも1つに割り当て、前記白色成分及び前記第2色域成分を除いた当該入力画像信号の成分を色域外成分とし、前記第1画素に対応する入力画像信号の成分と前記色域外成分とを合わせた合算成分を前記第1画素が有する副画素に割り当てる
画像表示装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記合算成分のうち前記色域外成分により上昇する前記第1画素の輝度に対応する輝度調整成分を前記合算成分から減じて前記第1画素が有する副画素の出力を決定し、前記輝度調整成分を前記第2画素が有する副画素に割り当てる
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記処理部は、入力画像信号の成分のうち白色に変換可能な成分がある場合に前記白色の副画素を点灯させるように前記第1画素の出力を決定する
請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記処理部は、第1画素及び第2画素の各々が有する白色の副画素のうち出力がより小さい一方の副画素の出力に応じて他方の副画素の出力を決定する
請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記第1画素における前記白色の副画素の配置と前記第2画素における前記白色の副画素の配置とは同一の配置である
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記第1画素が有する副画素の各々の色及び位置関係による前記第1画素の色相環と、前記第2画素が有する副画素の各々の色及び位置関係による前記第2画素の色相環とは、色相の回転方向が同一である
請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記第1画素における副画素の配置と前記第2画素における副画素の配置は、各画素における副画素同士の輝度の高低関係が同一である
請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項8】
第1の色域が、赤、緑、青の3色とこの3色のうち2色以上の合成色からなり、第2の色域が、シアン、マゼンタ、イエローの3色とこの3色のうち2色以上の合成色からなり、複数の画素がマトリクス状に設けられ、前記複数の画素が第1画素及び第2画素を含み、前記第1画素が、白色の副画素と、前記第1の色域に対応する赤の副画素、緑の副画素及び青の副画素と、を有し、前記第2画素が、白色の副画素と、前記第2の色域に対応するシアンの副画素、マゼンタの副画素及びイエローの副画素と、を有し、前記第1画素と前記第2画素とが隣接する画像表示部の各画素が有する副画素の出力を、前記第1の色域に対応する入力画像信号に応じて決定する画像表示方法であって、
前記第2画素に対応する入力画像信号の成分のうち白色に変換可能な白色成分を前記白色の副画素に割り当て、前記白色成分を除いた当該入力画像信号の成分のうちシアン、マゼンタ及びイエローで再現可能な第2色域成分を前記シアンの副画素、前記マゼンタの副画素及び前記イエローの副画素の少なくとも1つに割り当て、前記白色成分及び前記第2色域成分を除いた当該入力画像信号の成分を色域外成分とし、前記第1画素に対応する入力画像信号の成分と前記色域外成分とを合わせた合算成分を前記第1画素が有する副画素に割り当てる画像表示方法。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0036】
図2Bに、本発明の一実施形態による4原色以上のディスプレイシステムの略図を示す。このシステムは、光源212と、液晶(LC)素子(セル)のアレイ214、例えば当技術分野で周知の薄膜トランジスタ(TFT)アクティブマトリックス技術を用いるLCアレイとを含む。この装置は、LCアレイセルを、例えば当技術分野で周知のアクティブマトリックスアドレッシングによって駆動する電子回路220と、nが3より大きいとして、LCアレイと並べられたn原色フィルタアレイ216とをさらに含む。本発明の諸実施形態によるLCD装置の諸実施形態では、表示されるイメージの各フルカラーピクセルは、相異なる原色にそれぞれ対応する4つ以上のサブピクセルによって再現され、例えば、各ピクセルは、対応する4つ以上のサブピクセルの組を駆動することによって再現される。サブピクセルごとに、LCアレイ214内の対応するセルが存在する。後方照明源212は、カラーイメージを生成するのに必要な光を供給する。各サブピクセルの透過率は、対応するピクセルに対するイメージデータ入力に基づいて、対応するアレイ214のLCセルに印加される電圧によって制御される。n原色コントローラ218は、入力データを、例えばRGBまたはYCCフォーマットとして受け取り、データを所望のサイズおよび解像度に最適にスケーリングし、各ピクセルに対する入力データに基づいて、相異なるドライバに送達される信号の大きさを調節する。後方照明源212によって供給される白色光の強度は、LCアレイの素子によって空間変調され、サブピクセルに対するイメージデータに従って各サブピクセルの照明が選択的に制御される。選択的に減衰された各サブピクセルの光は、カラーフィルタアレイ216の対応するカラーフィルタを通過し、それによって所望のカラーサブピクセルの組合せが生成される。人間の視覚系は、相異なるカラーサブピクセルを通じてフィルタされた光を空間的に統合し、カラーイメージを知覚する。」

「【0061】
様々な応用例、特にビデオとコンピュータグラフィックスが混合された応用例では、いかなる解像度の損失も回避することが好ましい。前述の2つの行として構成された6個のサブピクセルを有するピクセルでは、相異なるサブピクセルカラーの特別な構成を実施してディスプレイ解像度を改善することができる。そのような構成の一例を図12Aに示す。この構成では、各ピクセル内のサブピクセルが、3つのサブピクセルをそれぞれ含む2つの行として構成される。行Aは「純色の」RGBピクセルを含み、行Bは「明るい」CMYピクセルを含む。CMYピクセルの組合せは、彩度の低いRGB色、例えばC、M、およびYの色度値によって定義される三角形の色域に含まれる色も生成することができる。この構造を縦列方向に解析すると、各垂直サブピクセル対は、R+C、G+M、またはB+Yとして個々に白色(中性)色度を再現することができる。このことは、各原色サブピクセルを相補的な原色サブピクセルと垂直方向に隣接して配置するようにサブピクセルを構成することによって達成される。したがって、この方法を使用して、グラフィックス応用例での水平白黒解像度を3倍に向上させることができる。」

「【0063】
上述の6原色構成により、本発明による6原色ディスプレイの少なくとも3つの動作モードが可能となる。図13Aに、そのような6原色ディスプレイの色度平面上の色域を略図で示す。全色域は、6原色をつなぐ点線で表される。RGB原色の色域は、破線の三角形で表され、CMY原色の色域は、実線の三角形の範囲に及ぶ。図13A中の影を付けた六角形の領域は、CMY原色集合とRGB原色集合の論理積を取った色域を表す。このディスプレイの第1動作モードは高解像度の「限定色域」モードであり、とりわけグラフィックス応用例に適している。このモードでは、解像度は、対応する3原色ディスプレイの解像度(例えば、SXGAディスプレイでは1280×1024ピクセル、XGAディスプレイでは1024×768など)と同一にすることができる。このタイプの構成に対する色の組合せは、RGB3原色(副構造)とCMY3原色のどちらでも生成することができ、それによってディスプレイの色域が、CMY色域とRGB色域の論理積、例えば図13A中の影の付いた六角形によって定義される。この動作モードでは、色が3サブピクセルレベルで処理され、例えば、3原色ディスプレイを駆動するのに適したデータが、ピクセルに割り当てられた原色の組、例えばRGBやCMYの如何に関わらず、各ピクセルに送達される。RGBピクセルとCMYピクセルの差は、入力データを、サブピクセルを駆動するのに使用する係数に変換するマトリックスにある。より細密なデータフローも可能であり、それを下記で提示する。」

「【0067】
図13Aを参照すると、入力データがCMYの三角形の外側にあるがRGBの三角形内にある場合、特定の応用例に応じて、データをいくつかの異なる方式で処理することができる。一実施形態では、データがRGBサブピクセル構成要素だけで表され、CMY構成要素がゼロ照明に設定される。別の実施形態では、入力データがRGB構成要素によって表され、CMY構成要素が、所望の色に最も近い色の組合せを表す。本発明のこの実施形態では、「最も近い」色の組合せを輝度または色度によって定義することができ、あるいは単に任意の負のサブピクセル値をゼロに設定することによって定義することもできる。別の実施形態では、CMY構成要素は、所望の色に可能な限り最も近い色の組合せを表し、所望の色とCMY表現との差がRGB構成要素によって補正される。上記で論じた3つの異なる実施形態は、主に純色を提示する方法が異なっている。第1の実施形態では、純色が、表色の観点から正確に再現されるが、輝度レベルが比較的低い。第2の実施形態では、輝度レベルが最大となるが、彩度が低下する。第3の実施形態では、彩度と輝度レベルが、第1と第2の実施形態の最大レベルと最小レベルの間の範囲内にある。上記の分析でCMYとRGBへの参照を入れ換えることにより、入力データが図13AのRGBの三角形の外側にあるがCMYの三角形内にある状況にも同じ分析が当てはまることを理解されたい。」

【図2】

【図12】

【図13】


上記の記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「薄膜トランジスタ(TFT)アクティブマトリックス技術を用いるLCアレイと、n原色フィルタアレイ216とを含み、表示されるイメージの各フルカラーピクセルは、相異なる原色にそれぞれ対応する4つ以上のサブピクセルによって再現され、n原色コントローラ218は、入力データを、RGBフォーマットとして受け取り、各ピクセルに対する入力データに基づいて、相異なるドライバに送達される信号の大きさを調節し、サブピクセルに対するイメージデータに従って各サブピクセルの照明が選択的に制御されるディスプレイシステムであって、(【0036】参照。)
各ピクセル内のサブピクセルが、3つのサブピクセルをそれぞれ含む2つの行として構成され、行AはRGBピクセルを含み、行BはCMYピクセルを含み、CMYピクセルの組合せは、C、M、およびYの色度値によって定義される三角形の色域に含まれる色も生成することができ、(【0061】参照。)
CMY構成要素は、所望の色に可能な限り最も近い色の組合せを表し、所望の色とCMY表現との差がRGB構成要素によって補正される(【0067】参照。)
ディスプレイシステム。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

「【0021】
図1(2)は、入力信号がRGBW4種であり表示装置は、RGWとGBWの2種の画素が交互に並ぶ場合を示す。画素1はRGWは表示可能であるがBは表示不可(図中の×印)、画素2はRは表示不可(図中の×印)であるがGBWは表示可能、となっている。残る画素も同様であり、隣接する2画素を組み合わせることでRGBW4種が表示可能となる。」

「【0033】
以下の手順の説明では、簡単のため、RGBWのいずれかの色に限定して説明する。またパネル画素構成記憶手段108との接続関係は明示していないが、適宜に接続しているとする。例えば1ライン上に隣接する画素I,J,Kの、ある色の信号値(色信号)をXi,Xj,Xkであるとする。上記の色は、表示装置の画素位置Jにおいて表示不可であり、画素位置IKにおいて表示可能であるとする。本発明は、該色信号Xjを、隣接画素IKを用いて代替するための信号変換を行う。つまり、ある画素において、第一の色信号を表示するとき表示装置の画素構成である第二の色信号では、そのまま表示できない場合、つまり表示不可の場合に信号変換する必要がある。」

「【0059】
置き換え先の色信号としては、同一画素における他の色信号とすることもできる。しかし、置き換え先をWとするならば、無彩色であることから、置き換えによる色の変化を抑えることができる。あるいは輝度成分の置き換えを目的として、若干の色の変化を許容することで、本発明は、表示不可な色信号を、同一画素位置にあるGサブ画素の信号に置き換えることもできる。あるいは、表示不可な色信号を、同一画素位置にある複数の色種類の色信号の組み合わせに置き換えることも出来る。以下の説明は、Wサブ画素への置き換えの例を示す。」

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。

「[0126]FIG. 5 is a block diagram of a signal modifier according to an embodiment of the present invention, which may be integrated in the signal controller 600 shown in FIG. 1 or implemented as a stand-alone device.
[0127]Referring to FIG. 5 , a signal modifier according to this embodiment includes a magnitude comparator 601 , a decomposer 602 , a scaler 603 , and a signal extractor 604 .
[0128]The magnitude comparator 601 compares the magnitudes (or grays) of image signals in a set of three three-color input signals, which include a red signal R, a green signal, and a blue signal B, and classifies each signal into the highest one (Mx), the middle one (Md), and the lowest one (Mn).
[0129]The decomposer 602 decomposes the set of the three-color input signals from the magnitude comparator 60 into a set of six six-color signal components.
[0130]The scaler 603 compares the six-color signal components from the decomposer 602 and determines the highest one among the six components. Thereafter, the scaler 603 calculates a scaling factor given by the ratio of the highest one (Mx) of the three input signals to the highest six-color component and calculates increments for the six-color components by multiplying the scaling factor to the six-color components.
[0131]The signal extractor 604 extracts six six-color output signals representing red, green, blue, cyan, magenta, and yellow colors based on the calculated increments from the scaler 603 .
[0132]Now, arrangements of six-color subpixels on the panel assembly according to embodiments of the present invention will be described in detail with reference to FIGS. 6-16 .
[0133]Hereinafter, a subpixel is referred to as red, green, blue, cyan, magenta, and yellow subpixel depending on the color represented by the subpixel and the red, green, blue, cyan, magenta, and yellow subpixels are denoted by reference characters R, G, B, C, M, and Y, respectively, which also denote the image signals for the colors.」

(当審訳)
「[0126]図5は、本発明の一実施形態による信号変更器のブロック図であり、図1に示した信号制御部600に組み込まれるか、またはスタンドアロンデバイスとしてインプリメントされることができる。
[0127]図5を参照すると、この実施形態の信号変更器は、マグニチュードコンパレータ601、分解器602、スケーラ603、および信号抽出器604を備えている。
[0128]マグニチュードコンパレータ601は、3色の入力信号、赤色信号R、緑色信号、および、青色信号Bを含む画像信号の大きさ(または階調)を比較し、各信号のうち最高(Mx)、中心(Md)および最低(Mn)に分類する。
[0129]分解器602は、マグニチュードコンパレータ60からの3色の入力信号の組を分解して6 色信号成分のセットに変換する。
[0130]スケーラ603は、分解器602からの6色信号成分を比較し、6の成分の中で最も高いものを決定する。その後、スケーラ603は、最高6色成分への3個の入力信号のうち最も高いもの(Mx)の割合によって与えられたスケーリング係数を計算し、スケーリング係数を6色の色成分に乗算することにより、6色成分の増加分を算出する。
[0131]信号抽出器604は、スケーラ603からの計算された増加分に基づいて赤、緑、青、シアン、マゼンタ、及びイエロー色を表現できる6色出力信号を抽出する。
[0132]以下、本発明の実施形態に係るパネルアセンブリ上の6色のサブ画素配列は図6-16を参照して詳細に説明する。
[0133]以下では、サブ画素は、サブ画素によって表される色に応じて、赤色、緑色、青色、シアン、マゼンタ、およびイエローサブピクセルと呼ばれ、赤色、緑色、青色、シアン、マゼンタ、およびイエローのサブピクセルは、参照文字R、G、B、C、M、およびYで示され、それぞれの色の画像信号を示している。」

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。

「【0061】
以下、本実施形態の多原色表示装置100を説明する。表5に、本実施形態の多原色表示装置100において無彩色を表示するときのサブセットの最大輝度Ys(%)、各サブ画素の輝度比、階調値、画素の最大輝度Yp、サブセット間の輝度差ΔYs(%)、サブセットの色度座標(x,y)、および、サブセット間の色度差Δu’v’を示す。本実施形態の多原色表示装置100の調整部400は、サブセット間の輝度差ΔYsの割合を小さくするように無彩色表示時のサブ画素の輝度を調整している。なお、参考のために、表5には、表4に示した比較例2の多原色表示装置の値を示している。」

5.引用文献5について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、次の事項が記載されている。

「【0072】
(実施例4)
本発明の第4の実施例のカラーフィルタ配列を図9に示す。本実施例では、RGBYMCの6色の他に、カラーフィルタのない透明な表示セルWを含んでいる。このカラーフィルタ配列は、奇数行目ではBGRWがこの順で周期的に繰り返され、偶数行目ではYMCWがこの順で周期的に繰り返されている。
【0073】
大画素表示モードではRGBWCMYWの8つの表示セルの組を表示単位とし、小画素表示モードでは、YB、MG、CR、WWをそれぞれ表示単位としている。
【0074】
Wの表示セルは、複屈折による色の変調によってY→R→M→B→C→Gの6色を順次表示する。これを表示単位に加え、4種類の表示単位で小画素表示モードが行われる。」

6.引用文献6について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、次の事項が記載されている。

「【0031】
本発明の実施形態において、ストライプ配列以外の形態としてはマトリクス配列が挙げられる。マトリクス配列の場合も、Y値の最も高い色のサブピクセルを画素の中央領域に配置すればよい。例えば、6色のサブピクセルを用いた2×3配列においては、上下3列の中央にある2つのサブピクセルのいずれかにYを配置すればよく、図10に示されるようにRGBMYCの6色のサブピクセルを用いる場合には、Y値の最も高いYと次いで高いGを上下3列の中央にそれぞれ配置する形態が挙げられる。これにより、実質的にY値の高い色のサブピクセルが画素の中央領域に配置されることになり、本発明の作用効果を発揮することが可能となる。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明の「ディスプレイシステム」は、「薄膜トランジスタ(TFT)アクティブマトリックス技術を用いるLCアレイと、n原色フィルタアレイ216とを含」む構成を有するものであって、上記「薄膜トランジスタ(TFT)アクティブマトリックス技術を用いるLCアレイ」が、マトリクス状に設けられた複数の画素を形成するものであることは明らかである。したがって、引用発明の上記構成は、本願発明1の「複数の画素がマトリクス状に設けられた画像表示部」に相当するといえる。
また、引用発明が「RGBフォーマットとして受け取」る「入力データ」は、本願発明1の「赤、緑、青の3色とこの3色のうち2色以上の合成色からなる第1の色域に対応する入力画像信号」に相当するものであるから、引用発明の「入力データを、RGBフォーマットとして受け取り、各ピクセルに対する入力データに基づいて、相異なるドライバに送達される信号の大きさを調節し、サブピクセルに対するイメージデータに従って各サブピクセルの照明が選択的に制御される」ようにする「n原色コントローラ218」は、本願発明1の「赤、緑、青の3色とこの3色のうち2色以上の合成色からなる第1の色域に対応する入力画像信号に応じて前記画像表示部の各画素が有する副画素の出力を決定する処理部」に相当する。
また、引用発明において「各ピクセル内のサブピクセルが、3つのサブピクセルをそれぞれ含む2つの行として構成され、行AはRGBピクセルを含み、行BはCMYピクセルを含」むことと、本願発明1において「前記複数の画素は、第1画素及び第2画素を含」むこととは、共に「前記複数の画素は、第1領域及び第2領域を含」む点で共通するといえる。(ここで、引用発明の「RGBピクセルを含」む「行A」は「第1領域」に対応し、引用発明の「CMYピクセルを含」む「行B」は「第2領域」に対応する。)
さらに、引用発明において「行A」が「RGBピクセルを含」むことと、本願発明1において「前記第1画素は、白色の副画素と、前記第1の色域に対応する赤の副画素、緑の副画素及び青の副画素と、を有」することとは、共に「前記第1領域は、前記第1の色域に対応する赤の副画素、緑の副画素及び青の副画素と、を有」する点で共通し、また引用発明において「行B」が「CMYピクセルを含」むことと、本願発明1において「前記第2画素は、白色の副画素と、第2の色域に対応するシアンの副画素、マゼンタの副画素及びイエローの副画素と、を有し、前記第2の色域は、シアン、マゼンタ、イエローの3色とこの3色のうち2色以上の合成色からな」ることとは、共に「前記第2領域は、第2の色域に対応するシアンの副画素、マゼンタの副画素及びイエローの副画素と、を有し、前記第2の色域は、シアン、マゼンタ、イエローの3色とこの3色のうち2色以上の合成色からな」る点で共通するといえる。
次に、引用発明の「行A」及び「行B」は、「各ピクセル内のサブピクセルが、3つのサブピクセルをそれぞれ含む2つの行として構成され」る2つの行であるから、隣接して設けられていることは明らかであり、このことと、本願発明1において「前記第1画素と前記第2画素とが隣接」していることとは、共に「前記第1領域と前記第2領域とが隣接」している点で共通するといえる。
また、引用発明の「ディスプレイシステム」は、本願発明1の「画像表示装置」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「複数の画素がマトリクス状に設けられた画像表示部と、
赤、緑、青の3色とこの3色のうち2色以上の合成色からなる第1の色域に対応する入力画像信号に応じて前記画像表示部の各画素が有する副画素の出力を決定する処理部と
を備え、
前記複数の画素は、第1領域及び第2領域を含み、
前記第1領域は、前記第1の色域に対応する赤の副画素、緑の副画素及び青の副画素、を有し、
前記第2領域は、第2の色域に対応するシアンの副画素、マゼンタの副画素及びイエローの副画素、を有し、
前記第2の色域は、シアン、マゼンタ、イエローの3色とこの3色のうち2色以上の合成色からなり、
前記第1領域と前記第2領域とが隣接する、
画像表示装置。」

(相違点)
相違点1:本願発明1においては、「複数の画素は、第1画素及び第2画素を含」むのに対し、引用発明の「行A」及び「行B」は、ピクセル内の領域を指すものであって、それぞれが画素を形成するものではない点。

相違点2:本願発明1の第1画素及び第2画素が、それぞれ「白色の副画素」を備えるのに対し、引用発明の「行A」及び「行B」は、白色のサブピクセルを有さない点。

相違点3:本願発明1においては「前記処理部は、前記第2画素に対応する入力画像信号の成分のうち白色に変換可能な白色成分を前記白色の副画素に割り当て、前記白色成分を除いた当該入力画像信号の成分のうちシアン、マゼンタ及びイエローで再現可能な第2色域成分を前記シアンの副画素、前記マゼンタの副画素及び前記イエローの副画素の少なくとも1つに割り当て、前記白色成分及び前記第2色域成分を除いた当該入力画像信号の成分を色域外成分とし、前記第1画素に対応する入力画像信号の成分と前記色域外成分とを合わせた合算成分を前記第1画素が有する副画素に割り当てる」のに対し、引用発明においてはそのような割り当て処理は行われていない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑みて、まず上記相違点3について検討する。
上記「第4」2.の引用文献2において、
「【0021】
・・・入力信号がRGBW4種であり表示装置は、RGWとGBWの2種の画素が交互に並ぶ場合を示す。・・・隣接する2画素を組み合わせることでRGBW4種が表示可能となる。」
と記載されているように、単に白色の副画素を設けることや、隣接する画素の間で割り当て処理を行うことは、本願出願日前において周知技術であったといえる。
しかしながら、上記相違点3に係る、まず第2画素に関し白色成分を割り当て、次に第2色域成分を割り当て、これらを除いた成分を色域外成分とし、第1画素に割り当てる、という具体的な割り当て処理は上記引用文献2ないし6に記載されておらず、また自明でもない。
したがって、上記相違点1、2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7も、本願発明1の上記相違点3に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明8について
本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の上記相違点3に係る構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-8は「前記処理部は、前記第2画素に対応する入力画像信号の成分のうち白色に変換可能な白色成分を前記白色の副画素に割り当て、前記白色成分を除いた当該入力画像信号の成分のうちシアン、マゼンタ及びイエローで再現可能な第2色域成分を前記シアンの副画素、前記マゼンタの副画素及び前記イエローの副画素の少なくとも1つに割り当て、前記白色成分及び前記第2色域成分を除いた当該入力画像信号の成分を色域外成分とし、前記第1画素に対応する入力画像信号の成分と前記色域外成分とを合わせた合算成分を前記第1画素が有する副画素に割り当てる」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2014-149242(P2014-149242)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 櫻井 健太
中塚 直樹
発明の名称 画像表示装置及び画像表示方法  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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