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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G02F
審判 全部無効 2項進歩性  G02F
管理番号 1346448
審判番号 無効2016-800024  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-02-17 
確定日 2018-12-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第4815995号発明「光配向用偏光光照射装置」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4815995号(以下「本件特許」という。)は,平成17年10月24日に特許出願され,平成23年9月9日に願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件発明」という。)について特許権の設定登録がなされた。
そして,平成28年2月17日付けで本件の特許無効審判の請求がなされたものであり,それ以後の手続の概要は,次のとおりである。

平成28年 2月17日付け 審判請求書
平成28年 3月16日付け 手続補正書(審判請求書の補正)
平成28年 5月23日付け 審判事件答弁書
平成28年10月 3日付け 上申書(請求人)
平成29年 1月 6日付け 審理事項通知書
平成29年 3月 2日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成29年 3月 2日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成29年 3月14日付け 審理事項メモ
平成29年 3月16日 第1回口頭審理

第2 当事者の主張
(以下において,証拠は略記して,例えば「甲第1号証」を「甲1」のように表記する。)

1 請求人の主張
(1)請求人は,審判請求書において,「特許第4815995号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めた。

(2)請求人が主張する無効理由は,次のとおりである。
ア 無効理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件発明は,本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。したがって,その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

イ 無効理由2(特許法第29条第2項)
本件発明は,本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明に基づいて,本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって,その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

ウ 無効理由3(特許法第29条第2項)
本件発明は,本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲2に記載された発明に,甲3,甲4,甲7及び甲8に記載された技術事項及び従来周知の技術事項又は甲3,甲4,甲7及び甲8に記載された技術事項を組み合わせることにより,本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。したがって,その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(3)証拠
請求人が提出した証拠は,以下のとおりである。
甲1:特開2004-163881号公報
甲2:特開2002-350858号公報
甲3:特開2004-9595号公報
甲4:光技術情報誌「ライトエッジ」No.23(ウシオ電機株式会社,2001年11月発行)第36?65頁
甲5:特開2008-164729号公報
甲6:特開2013-37158号公報
甲7:特開2004-144884号公報
甲8:米国特許出願公開第2003/0043461号明細書
甲9:東京地方裁判所平成27年(ワ)第28608号特許権侵害差止等請求事件の平成28年1月22日付け被請求人提出の準備書面(1)

甲1?甲9の成立について,当事者間に争いはない(第1回口頭審理調書 陳述の要領 被請求人2)。

2 被請求人の主張
(1)被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めた。

(2)被請求人は,無効理由1ないし3に対して,概略,次のとおり主張している。
ア 無効理由1に対して
甲1には,本件発明における多段に配置された光照射部は示されていない。

イ 無効理由2に対して
(ア)甲1の,単一の構造体として構成された偏光子90において,その構成素子である複数の偏光子セグメント91を列ごとに分けて独立した構造体にしようとする発想は,甲1の記載からは生じない。
(イ)甲1の,図15に示された光源配置も,全体が合わさって単一の線状の光源を構成するものであり,甲1の記載から,光源配列を1列目と2列目に分けようとする発想は生じることはあり得ない。

ウ 無効理由3に対して
(ア)甲2に記載された発明において,「光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置」する,という本件発明の構成を実現しようとする動機付けは存在しない。
(イ)甲2に開示された発明に,技術分野も技術的課題も異なる甲3を組み合わせることは,容易ではない。
(ウ)甲4は,液晶カラーフィルタ露光用の照明系の構成において,偏光素子を配置するだけで偏光光照射用の照明系に応用できると,述べたものではない。
(エ)甲5及び甲6は,本件特許の出願後に開示されたものであるから,公知文献として考慮されるべきものではない。
(オ)甲2に加えて,甲3,甲4,甲7及び甲8を考慮しても,本件発明に想到することは,困難である。

(3)証拠
被請求人は,何ら証拠を提出していない。

第3 当審の判断
1 本件発明
本件発明は,願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「連続または間歇的に直線状に搬送される光配向膜に対し,光配向膜の搬送方向に沿って光照射部が多段に配置され,多段に配置された各光照射部から上記光配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置であって,
上記多段に配置された各光照射部は,
光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に伸びる線状の光源と,
上記線状の光源の伸びる方向に沿って複数のワイヤーグリッド偏光素子が並べられ,該並べられたワイヤーグリッド偏光素子の間に境界部が生じている偏光素子ユニットを有しており,
各段に配置された各光照射部は,各段の光照射部の上記偏光素子の間の境界部が,他の段の光照射部の偏光素子の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互い重ならないように,光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置されている
ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。」

2 無効理由1について
(1)甲1の記載事項
ア 甲1には,以下の記載がある。(下線は当審が付した。以下同様。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,光照射エネルギーを使った,基材材料の加工をするための装置並びに方法に関する。特に,巻き取り型基材(web-fed substrate)として供された液晶ディスプレイ用コンペンセーションフィルムの位置調整装置ならびに方法に関する。

「【0053】
【実施例】
この記述は,本発明に関する装置の部分を形成し,あるいは,より直接的に組み入れられている要素を特に示している。理解されるのは,限定的に示され,又は記述されていないこれら要素は,当業者既知の様々な形を取り得るかもしれない。
(加工システム)
図1を参照すると,本発明の参照された具体例に関する加工装置10を示しており,透明基材のソースロール12が加工され,図1の左から右へと動きながらウェブ16として搬送され,最終型グッズロール14を供する。参照された具体例の中で,最終型グッズロール14は,ウェブ16が多重化層に組み上げられ,図2に示す部材であるところの,液晶ディスプレイ用コンペンセーションフィルムである。これら材料は,直状光重合媒体(linear photo-polymerization media; LPP)及び液層ポリマー媒体(liquid crystal polymer media; LCP)である。
【0054】
図1及び図2を参照すると,透明基材層18は,ソースロール12上に供される。参照具体例の中で,透明基材層18はトリアセチルセルロースでできている。LPP1層22は,LPP1層アプリケーションステーション30において付加される。第一放射ステーション20aは,LPP1層22を処理し,好ましい角度を持つ光学的配向を得るため,ポリマーをクロスリンクすることにより所望の分子改変を供する。その後,LCP1層24は,LCP1層アプリケーションステーション32において,処理されたLPP1層22に貼り付けられる。第一硬化ステーション40aは,LPP1層22上面にあるLCP1層24を硬化する。次に,LPP2層26は,LPP2層アプリケーションステーション34において適用される。同様に,LPP2層26は,第二放射ステーション20bにおいて処理され,ウェブ16平面上において,分子改変を供されたLPP1層22に対し直交的に配向され,供される。最後にLCP2層28は,LCP2層アプリケーションステーション36において適用され,第二硬化ステーション40bにおいて硬化される。製造されたコンペンセーションフィルムは,最終型グッズロール14に巻き取られる。」

「【0056】
参照具体例において,ウェブ16は比較的広く,1mを超える幅を持つ。LPP1層22及びLPP2層26の処理のために,放射ステーション20a及び20bは,直状の偏光UV-B放射(280ないし320 nm)を供する。曝露量は,およそ10ないし15 mJ/cm_(2)である。ウェブ16の幅の中央部における「ホットスポット」を避けるだめ,及びウェブ16の側方にも十分な曝露エネルギーを供するため,±30%以内の単一な曝露が必要とされる。LPP1層22及びLPP2層26に適当な処理を行うために最も重要なことは,ウェブ16上のいかなるポイントでも1度以内である高度に一貫した偏光方向を持つ偏光された光を供することである。」

「【0060】
・・・
(放射装置)
図4を参照すると,改変物を含み,紫外光をウェブ16上の放射領域に供するため内部に放射ステーション20a及び20bを含んだ放射装置60を示している。放射装置60は,ウェブ16全幅にわたって放射源を生成し照射するフード組立部70,及び,光解離性を調節し,所望の投射角に光を照射し,かつ放射源を偏光する光調節組立部74から構成される。フード組立部70の内部では,光源64が放射源を,望ましい波長および出力レベルにて,提供する。・・・(中略)・・・
【0061】
・・・(中略)・・・最後に,偏光子90は,続いて述べられるように,曝露放射における偏光に必要な量を提供する。
【0062】
光源64は,例えば,Nordson Corporation社製(Amherst, OH)のような中圧水銀長アークランプが可能である。
【0063】
図4は,放射装置60の特性の一つを示す。・・・
【0064】
図5を参照すると,放射装置の分解した正面図を示している。」

「【0074】
・・・
(偏光子90の特性)
図16aないし図16dに戻って参照されたい。偏光子90における偏光主軸126の単一性を保持する優位性が理解できる。偏光子90がこのような特性を持つと,投射光は,供された偏光軸を影響されることなく,様々な角度範囲を持つことができる。
【0075】
一般側において,偏光子90は,減弱された解離性角度をもつ光を使い,かつ,ウェブ16近傍に配する時,最も良好に機能する。図14a及び14bを参照すると,それぞれ,参照例における偏光子90に関する平面図及び分解図が示されている。偏光子セグメント91は,典型的に,参照例において,3平方インチであり,図示されるように一緒に傾けられたワイヤーグリッド偏光子である。偏光子90は,いくつかの偏光子セグメントを用い,ウェブ16の動作方向に対する特定の角度で好ましく配されている。この角度的オフセットは,個々の偏光子セグメント91間にある境界線による起こりうる縞効果を代償している。グリッドフレーム96及びカバーフレーム94は,偏光子セグメント91を固定するため用いられ,マスク92の間に挟まれている。」

「【0080】
・・・
(光源64に関する代替例)
参照例において,光源64は,中圧水銀アークランプである。この装置は,電源入力を持ち,400ワット/インチを超えるランプ長と好ましい長寿命を持っている。この手法は,比較的長い有用な寿命(1000時間)を持つ単一の電球を用いる利点を供するし,装置の故障を最小限にとどめることができる。
【0081】
光源64の代替的なものとして,典型的に10ないし15kWの入力を持つ水銀短アークランプを含む。しかしながら,水銀短アークランプは,中圧アークランプに比べ,より高価であり,典型的に有用な寿命が短い。図15を参照すると,多重化された光源,164a,164b,164c,164d,164e,及び164fなる改変物が示されている。ウェブ16の幅を覆うために,これら光源164a,164b,164c,164d,164e,及び164fは,グループ化され,認知できるだけのギャップや境界を除くよう交互に配置されている。・・・」

「【図面の簡単な説明】
【図1】液晶コンペンセーションフィルムに関する多重化層ウェブの加工用のシステムを示した図示的な構成図である。
・・・
【図4】本発明に関する放射装置の斜視図である。
【図5】部材の一つの特徴を示した放射装置の分解した正面図である。
・・・
【図14a】ワイヤーグリッド偏光子アレイを示した平面図である。
【図14b】参照具体例において,ワイヤーグリッド偏光子アレイがどのように組み立てられているかを示した透視図である。
【図15】光源としてのランプアレイを用い重複パターンを示した代替的な光源に関する上方図である。」

図1,4,5,14a,14b及び15は以下のものである。
「【図1】(審決注:図の向きを右に90°回転した。)


【図4】


【図5】


【図14a】


【図14b】


【図15】



イ 甲1発明
(ア)上記【0001】によれば,「光照射エネルギーを使った,基材材料の加工をするための装置」が記載され,上記【0053】によれば,前記装置の実施例として加工装置10が記載されていると認められる。
上記【0053】及び【0054】によれば,加工装置10において,透明基材層18が図1の左から右へと動きながらウェブ16として搬送される。

(イ)上記【0054】によれば,透明基材層18にLPP1層22が付加され,第一放射ステーション20aは,LPP1層22を処理し,好ましい角度を持つ光学的配向を得るため,ポリマーをクロスリンクすることにより所望の分子改変を供する。

(ウ)上記【0056】によれば,放射ステーション20aは,LPP1層22の処理のために,偏光UV-B放射を供する。

(エ)上記【0060】?【0061】によれば,加工装置10は,紫外光をウェブ16上の放射領域に供するため内部に放射ステーション20a及び20bを含んだ放射装置60を備えており,放射装置60は,ウェブ16全幅にわたって放射源を生成し照射するフード組立部70,及び,光解離性を調節し,所望の投射角に光を照射し,かつ放射源を偏光する光調節組立部74から構成され,フード組立部70の内部では,光源64が放射源を,望ましい波長および出力レベルにて,提供する。そして,光調節組立部74は,偏光子90を備えている。

(オ)上記【0075】及び図14aによれば,偏光子90は,複数の偏光子セグメントが並べられたものであり,偏光子セグメント91は,一緒に傾けられたワイヤーグリッド偏光子であってよく,偏光子90は,ウェブ16の動作方向に対する特定の角度で好ましく配されており,この角度的オフセットは,個々の偏光子セグメント91間にある境界線による起こりうる縞効果を代償している。

(カ)上記【0081】,図15によれば,光源64は,多重化された光源,164a,164b,164c,164d,164e,及び164fであってよく,ウェブ16の幅を覆うために,これら光源164a,164b,164c,164d,164e,及び164fは,グループ化され,認知できるだけのギャップや境界を除くよう交互に配置されている。

(キ)以上のことから,甲1には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「光照射エネルギーを使った,基材材料の加工をするための加工装置10であって,
透明基材層18が,図1の左から右へと動きながらウェブ16として搬送され,
紫外光をウェブ16上の放射領域に供するため内部に第一放射ステーション20aを含んだ放射装置60を備えており,
第一放射ステーション20aは,透明基材層18に付加されたLPP1層22の処理のために偏光UV-B放射を供し,好ましい角度を持つ光学的配向を得るため,ポリマーをクロスリンクすることにより所望の分子改変を供し,
放射装置60は,ウェブ16全幅にわたって放射源を生成し照射するフード組立部70,及び,光解離性を調節し,所望の投射角に光を照射し,かつ放射源を偏光する光調節組立部74から構成され,
フード組立部70の内部では,光源64が放射源を,望ましい波長および出力レベルにて,提供し,
光調節組立部74は,偏光子90を備え,偏光子90は,複数の偏光子セグメント91が並べられたものであり,偏光子セグメント91は,一緒に傾けられたワイヤーグリッド偏光子であってよく,偏光子90は,ウェブ16の動作方向に対する特定の角度で好ましく配されており,この角度的オフセットは,個々の偏光子セグメント91間にある境界線による起こりうる縞効果を代償し,
光源64は,多重化された光源,164a,164b,164c,164d,164e,及び164fであってよく,ウェブ16の幅を覆うために,これら光源164a,164b,164c,164d,164e,及び164fは,グループ化され,認知できるだけのギャップや境界を除くよう交互に配置されている,
加工装置10。」

(2)本件発明と甲1発明の対比
ア 甲1発明における透明基材層18に付加された「LPP1層22」は,第一放射ステーション20aにおいて,偏光UV-B放射により処理されて光学的配向が行われる。
したがって,甲1発明における「LPP1層22」は,本件発明における「光配向膜」に相当する。

イ 甲1発明において,「透明基材層18」は,「図1の左から右へと動きながらウェブ16として搬送され」るから,透明基材層18に付加されたLPP1層22は,透明基材層18とともに「連続または間歇的に直線状に搬送される」といえる。また,甲1発明における「第一放射ステーション20a」は,LPP1層22の搬送方向に沿って配置されているといえる。

ウ 甲1発明における「第一放射ステーション20a」は,LPP1層22の処理のために偏光UV-B放射を供するから,光配向膜に偏光光を照射する光照射部である点で,本件発明における「光照射部」と共通する。

エ 甲1発明の「加工装置10」は,第一放射ステーション20aから,LPP1層22に,偏光UV-B放射を照射して光配向を行うから,本件発明の「光配向を行う偏光光照射装置」及び「光配向用偏光光照射装置」と,「光照射部から上記光配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置」である点で共通する。

オ 上記アないしエから,本件発明と甲1発明は「連続または間歇的に直線状に搬送される光配向膜に対し,光配向膜の搬送方向に沿って光照射部が配置され,光照射部から上記光配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置」である点で共通する。

カ 甲1発明において,「光源64」は,「多重化された光源,164a,164b,164c,164d,164e,及び164fであってよく,ウェブ16の幅を覆うために,これら光源164a,164b,164c,164d,164e,及び164fは,グループ化され,認知できるだけのギャップや境界を除くよう交互に配置されている」から,「光源64」は,全体として,ウェブ16の幅方向すなわちウェブ16の搬送方向に対して直交する方向に伸びる光源といえる。

キ 甲1発明において,「偏光子90」は,複数の偏光子セグメント91が並べられたものであり,「偏光子セグメント91」は,一緒に傾けられたワイヤーグリッド偏光子であってよい。ここで,「偏光子90」は,ウェブ16の幅を覆う光源64からの光を偏光としてウェブ16に照射する機能を有しているから,複数の偏光子セグメント91は,光源64が延びる方向に沿って並べられているといえる。

ク 甲1発明における「偏光子90」及び「ワイヤーグリッド偏光子91」は,それぞれ本件発明における「偏光素子ユニット」及び「ワイヤーグリッド偏光素子」に相当する。

ケ 上記カないしクから,甲1発明における「第一放射ステーション20a」と,本件発明における「光照射部」は,「光源の伸びる方向に沿って複数のワイヤーグリッド偏光素子が並べられ」ている「偏光子ユニット」を有している点で共通する。

コ 以上のことから,本件発明と甲1発明は次の点で一致する。
[一致点]
「連続または間歇的に直線状に搬送される光配向膜に対し,光配向膜の搬送方向に沿って光照射部が配置され,光照射部から上記光配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置であって,
光照射部は,
光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に伸びる光源と,
上記光源の伸びる方向に沿って複数のワイヤーグリッド偏光素子が並べられている偏光素子ユニットを有して
いる
ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。」

サ 一方,両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明においては,光照射部が「多段に」配置され,「多段に配置された各」光照射部から偏光光を照射し,
「多段に配置された各」光照射部が,光源と偏光素子ユニットを有しており,
前記光源は,「線状の光源」であり,
「並べられたワイヤーグリッド偏光素子の間に境界部が生じて」おり,
「各段に配置された各光照射部は,各段の光照射部の上記偏光素子の間の境界部が,他の段の光照射部の偏光素子の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互い重ならないように,光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置されて」いるのに対し,
甲1発明においては,かかる事項を発明特定事項として有していない点。

(3)判断
相違点1が実質的な相違点であるか検討する。

ア 本件発明における「光照射部」,「線状の光源」及び「偏光素子ユニット」について
(ア)相違点1に係る本件発明の構成において,光照射部は多段に配置され,多段に配置された各光照射部が,線状の光源と偏光素子ユニットを有している。
すなわち,相違点1に係る本件発明の構成においては,光照射部の各々は,「線状の光源」と「偏光素子ユニット」を有するものであり,そのような「光照射部」が多段に配置されている。
(イ)また,本件発明において,「線状の光源」は「光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に伸びる」ものであり,本件発明の偏光光照射装置は,そのような「線状の光源」を有している「各光照射部」から「光配向膜に偏光光を照射して光配向を行う」のであるから,「各光照射部」が有している「線状の光源」からの出射光は,光配向膜に対して,その搬送方向に直交する方向(換言すると光配向膜の幅方向)の全体にわたって照射される必要があることは明らかである。
さらに,本件発明が解決しようとする課題が,偏光素子間の境界部に起因して配向膜に対する照度分布が悪化するという問題を解決すること(本件明細書の段落【0010】)であることからも,各光照射部の線状の光源からの出射光が,配向膜の幅方向の全体にわたって照射されることが前提になっていると解される。
したがって,本件発明において,「線状の光源」は,光配向膜の幅方向の全体にわたって光を照射できるものであると解される。

イ 甲1発明における「放射装置60」,「多重化された光源」及び「偏光子90」について
(ア)一方,甲1発明において,放射装置60の光源64は,「多重化された光源,164a,164b,164c,164d,164e,及び164fであってよく,ウェブ16の幅を覆うために,これら光源164a,164b,164c,164d,164e,及び164fは,グループ化され,認知できるだけのギャップや境界を除くよう交互に配置されている」ものである。
ここで,多重化された光源164a,164b,164c,164d,164e,及び164fは,「グループ化され,認知できるだけのギャップや境界を除くよう交互に配置されている」のであるから,これら多重化された光源は,全体が一つの「線状の光源」として機能するよう構成されていると解される。
(イ)なお,甲1の図15において,3個の光源164a,164c及び164e(以下「第1列の光源」という。)並びに3個の光源164b,164d及び164f(以下「第2列の光源」という。)は,それぞれ直線上に配置されていることが認められるので,甲1発明におけるこれら第1列の光源と第2列の光源のそれぞれが,本件発明における「線状の光源」に相当するといえるか以下検討する。
甲1には,上記2つの列のうち片方の列の光源からの出射光でウェブ16の幅の全体にわたって照射できることは記載されていない。むしろ,甲1発明においては,光源164aないし164f,すなわち2つの列の光源のすべては,上記のとおり「グループ化され,認知できるだけのギャップや境界を除くよう交互に配置されている」ことから,2つの列のうちの片方の列だけでは,ギャップや境界が存在することとなり,ウェブ16の幅方向の全体にわたって光を照射することはできないと解される。
一方,本件発明における「線状の光源」は,上記ア(イ)のとおり,光配向膜の幅方向の全体にわたって光を照射できるものであると解されるものである。
したがって,甲1発明における上記の第1列の光源と第2列の光源のそれぞれが,本件発明における「線状の光源」に相当するということはできない。
(ウ)また,甲1発明において,放射装置60の偏光子90は,「複数の偏光子セグメント91が並べられたものであり,偏光子セグメント91は,一緒に傾けられたワイヤーグリッド偏光子であってよく,偏光子90は,ウェブ16の動作方向に対する特定の角度で好ましく配されており,この角度的オフセットは,個々の偏光子セグメント91間にある境界線による起こりうる縞効果を代償し」ているものである。
したがって,甲1発明において,複数の偏光子セグメント91は,全体として一体の偏光子90を構成するものと解される。
(エ)上記のとおり,甲1発明における「多重化された光源」は,全体が一つの「線状の光源」として機能するよう構成されていると解されるものであり,甲1発明における複数の偏光子セグメント91は,全体として一体の偏光子90を構成するものと解されるものである。
してみると,甲1発明において,多重化された光源164aないし164f及び偏光子90を備えた「放射装置60」は,全体として一つの「光照射部」を構成していると解すべきものである。そして,甲1発明において,放射装置60は,多段に配置されてはいない。
よって,甲1発明において,線状の光源と偏光素子ユニットを有する「光照射部」は一段のみであると認められ,光照射部が「多段に」配置されているということはできない。

以上のことから,相違点1は,実質的な相違点であると認められる。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は,甲1の記載について,次の旨主張する。
a 光源164a乃至164fが,図15の紙面上下方向に対して2列構成の光源を構成するようになっている(参考図2を参照)。1列目の光源はウェブ16の動作方向に対して直交する方向に長手方向を有する棒状の光源164a,164c及び164eを有し,2列目の光源はウェブ16の動作方向に対して直交する方向に長手方向を有する棒状の光源164b,164d及び164fを有」することは,本件特許発明の『光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に伸びる線状の光源』を有することに相当する。(審判請求19頁1?2行及び23頁6?11行)
b 偏光子90は,図14aの紙面上下方向に対して4段構成の偏光子セグメント91を有している(参考図1を参照)。(審判請求書17頁下から2?1行)
c 引用発明1として,放射装置60(第一放射ステーション20a)に,光源164a乃至164f及び偏光子90を用いた構成を導き出すことができる。この場合,偏光子90を構成する偏光子セグメント91と光源164a乃至164fの配置は,参考図1,2の記載に基づくと,以下の参考図3で示される配置となる。(審判請求書19頁下から1行?20頁4行)
d 甲1において,図4を参考にすれば,図14a及び図15から,参考図3を導くことができる。(第1回口頭審理調書 陳述の要領 請求人6)
e 本件特許発明の構成Bと上記引用発明1の構成を対比すると,引用発明1の「光源164a乃至164fが2列及び偏光子セグメント91が4段で配置され」た構成については,光源と少なくとも1段の偏光子セグメントが構成Bの1段分の「光照射部」に該当するので,引用発明1の「光源164a乃至164fが2列及び偏光子セグメント91が4段で配置され」た構成は,構成要件Bにいう「光照射部が多段に配置され」た構成に相当する。(審判請求書20頁下から6?1行)
f 請求人が示す参考図1?3は次のものである。




しかしながら,上記(3)イ(ア)及び(イ)のとおり,甲1発明において,多重化された光源164a,164b,164c,164d,164e,及び164fは,全体が一つの光源として機能するよう構成されていると解されるものであり,これらを2列の「線状の光源」に相当するということはできない。
また,上記(3)イ(ウ)のとおり,甲1発明において,複数の偏光子セグメント91は,全体として一体の偏光子90を構成するものと解されるのであり,当該「偏光子90」について,ウェブ16の搬送方向に複数段の偏光子が配置されているとみなすことはできない。
さらに,請求人が示す参考図3は,甲1の図14a及び図15を重ねて作図したものと推認されるが,これら2つの図面を単に重ねることに合理性は見出せない。すなわち,図14aは,偏光子90の全体を示していると認められるのに対し,図15においては,図の両端が破断線と解される波線で記載されていることから,図15は必ずしも光源64の全体を示すものとはいえない。すなわち,これら2つの図面の縮尺は同程度であるとはいえず,これら2つの図を重ねることによって作図された参考図3は,甲1発明における光源164aないし164fと偏光子セグメント91の位置関係を正しく表現しているものとはいえない。図4を参照しても,図14aと図15の縮尺が同程度であることが裏付けられるとも認められない。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。

(5)無効理由1についての小括
以上のとおりであるから,本件発明は甲1発明と同一とはいえない。
したがって,無効理由1は,理由がない。

3 無効理由2について
(1)相違点1について
相違点1に係る本件発明の構成が,当業者が容易に想到し得るものといえるか検討する。

ア 光照射部の分割について
請求人は,甲1発明における放射装置60の光源164aないし164f及び偏光子セグメント91について,次の主張をする。
「『2列の光源164a乃至164f及び4段の偏光子セグメント91からなる構成』は,光源と少なくとも複数段の偏光子セグメントを含んだ構成による多段の光照射手段を構成しているので,例えば,このような多段の光照射手段を,『1列目の光源164a,164c及び164e並びに2段目の偏光子セグメント91からなる構成』と『2列目の光源164b,164d及び164f並びに3段目の偏光子セグメント91からなる構成』に分け,各々が1個のまとまった放射装置を構成するようにして『2段の放射装置』を構成することは単なる設計的な事項に過ぎない。」(審判請求書31頁5?12行)

そこで,甲1発明において,光照射手段を,「1列目の光源164a,164c及び164e並びに2段目の偏光子セグメント91からなる構成」と「2列目の光源164b,164d及び164f並びに3段目の偏光子セグメント91からなる構成」に分け,各々が1個のまとまった放射装置を構成するようにして「2段の放射装置」を構成することが,当業者が容易に想到し得ることといえるか,検討する。

上記2(3)のとおり,甲1発明における「第一放射ステーション20aを含んだ放射装置60」は,全体として一つの光照射部を構成していると解すべきものである。
そして,このように全体として一つの光照射部を構成している「第一放射ステーション20aを含んだ放射装置60」を多段の光照射部に分割するよう変更することについて,甲1には記載も示唆も見当たらない。
むしろ,「第一放射ステーション20aを含んだ放射装置60」を多段の光照射部に分割すると,多重化された光源についての「グループ化され,認知できるだけのギャップや境界を除くよう交互に配置されている。」との事項,及び偏光子90についての「角度的オフセットは,個々の偏光子セグメント91間にある境界線による起こりうる縞効果を代償している。」との事項を維持できなくなることが想定されるから,そのような分割をすることには阻害事由がある。
したがって,甲1発明において,光照射手段を,「1列目の光源164a,164c及び164e並びに2段目の偏光子セグメント91からなる構成」と「2列目の光源164b,164d及び164f並びに3段目の偏光子セグメント91からなる構成」に分け,各々が1個のまとまった放射装置を構成するようにして「2段の放射装置」を構成することは,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

イ 光照射部の追加について
甲1には,放射装置60に関して次の記載があるので,さらに検討する。

「【0065】
放射ステーション20aあるいは20bは,一つ以上の放射装置60を含むかもしれない。シリーズでいくつかの放射装置60を使うことにより,付加的な曝露量容量を供することができ,効果的により広い範囲の曝露領域に供することにより,加工装置10による工程の加速が可能となる。」

上記記載から,甲1において,曝露量を増大させるために,複数の放射装置60を配置することが教示されているといえる。したがって,当該教示に基づいて,甲1発明において,曝露量を増大させるという観点から複数の放射装置60を配置することは,当業者が容易に想到し得ることといえる。
しかしながら,甲1の上記記載は,複数の放射装置60を配置することを教示するものの,その複数の放射装置60は,曝露量を増大させるという目的からすると,ウェブ16の幅方向に沿って配置されてもよいと解されるのであり,甲1の上記記載は,必ずしも,複数の放射装置60の配置の方向をウェブ16の搬送方向に沿う方向とすることまでを教示しているとはいえない。
さらに,仮に,甲1の上記記載が,複数の放射装置60の配置の方向をウェブ16の搬送方向に沿う方向とすることを教示しているとすれば,照射ステーション20aを多段に配置することが示唆されていることになるが,各段の偏光素子の間の境界部が,他の段の光照射部の偏光素子の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互い重ならないようにすることまで示唆されているとはいえない。
甲1発明において,すでに「偏光子90は,ウェブ16の動作方向に対する特定の角度で好ましく配されており,この角度的オフセットは,個々の偏光子セグメント91間にある境界線による起こりうる縞効果を代償し」ているのであるから,照射ステーション20aを多段に配置した場合に,各段における偏光子セグメント間にある「境界部」はそもそも存在しないし,いずれにせよ他の段の偏光子セグメント間にある「境界部」と光配向膜の搬送方向に対して互い重ならないようにすることは,その必要性が無く,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ 以上のことから,上記相違点1に係る本件発明の構成は,甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(2)請求人の主張について
請求人は,「2列の光源164a乃至164f及び4段の偏光子セグメント91からなる構成」は,光源と少なくとも複数段の偏光子セグメントを含んだ構成による多段の光照射手段を構成しているので,例えば,このような多段の光照射手段を,「1列目の光源164a,164c及び164e並びに2段目の偏光子セグメント91からなる構成」と「2列目の光源164b,164d及び164f並びに3段目の偏光子セグメント91からなる構成」に分け,各々が1個のまとまった放射装置を構成するようにして「2段の放射装置」を構成することは単なる設計的な事項に過ぎない,と主張する。(審判請求書31頁5?12行)
しかしながら,甲1発明において,全体として一つの光照射部を構成している「第一放射ステーション20aを含んだ放射装置60」を多段の光照射部に分割するよう変更することについて,甲1には記載も示唆も見当たらず,むしろ,そのような分割をすることには阻害事由があることは,上記(1)アのとおりである。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。

(4)無効理由2についての小括
以上のとおりであるから,本件発明は,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,無効理由2は,理由がない。

4 無効理由3について
(1)甲2の記載事項
ア 甲2には,以下の記載がある。
「【請求項1】 基板の配向を行うための光配向装置であって,
光束を絞り照度を上げた多連化した照射ヘッドと,
基板を搭載し,移動可能な基板ステージとを備え,
前記多連化した照射ヘッドから前記基板へ向けて照射し,各々の照射ヘッドの出力を調整し,照度の均一性を確保した後に,前記基板を搭載した前記基板ステージを移動して前記基板の配向を行うことを特徴とする光配向装置。
【請求項2】 複数の前記多連化した照射ヘッドを対向して配置したことを特徴とする請求項1に記載の光配向装置。
【請求項3】 多連化した照射ヘッドは各々照度の調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光配向装置。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,照射ヘッドの多数配列による高速大画面露光を可能とする光配向装置,または微細画素の分割配向を可能とする光配向装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のラビングによる接触式配向に代わり,光反応型あるいは光分解型の高分子膜に直線偏光紫外線を照射することにより,液晶分子の配向を制御する非接触式光配向手法が検討されている。
【0003】その材料はポリイミド系,ポリビニールシンナメイト系,アゾ色素系等,未だ開発レベルであるが,これら一連の材料の配向性能は材料自身のもつ特性や塗布乾燥条件・塗布膜厚あるいは,照射する紫外線の性質(波長,直線偏光度,直進平行度)や照射エネルギー,照射角度,照射時の基板温度等に影響されることが解ってきている。このうち,照射する紫外線の性質(波長,直線偏光度,直進平行度)は使用する紫外光源,偏光子,コリメータ及びカットフィルター等の構成部品で決定されるものである。また,照射エネルギー,角度,及び基板温度は,実際の露光時に唯一設定できる条件となるが,配向特性へ大きく影響を与える因子であり,装置化する場合の重要な要素となってくる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,例えば,強い照射エネルギーが必要な場合には,放射される偏光紫外線を集光させた光束を必要とするため,その露光領域は狭くなり,配向可能な対象品は小さな基板に限られてしまう。また,大型基板を露光する場合には,反射ミラー等を使って拡大光を作り露光面積を広げる構造が考えられているが,照度の低下により配向時間が数十分?数時間必要となるため,実用的ではない。
【0005】また,配向膜面への照射角度はプレチルト角の任意の制御を可能とし,画素毎に異なったプレチルトを与える,所謂マルチドメイン配向(分割配向)が可能とされているが,精密な角度,位置制御及び分割用マスクによるマスクと基板との間のギャップのバラツキ,マスクや基板の温度変化などの影響が大きく,実用上は困難を極めているのが現状である。さらに,マスクと基板とのギャップ測定に際して,基板の表面の汚れ等がギャップ測定に影響を与え正確な測定が難しくなっている。
【0006】本発明は,上記の事情に鑑みなされたものであり,大きな基板であっても照射露光を行う際には,照度のバラツキを解消し,効率的な照射露光を可能にし,配向膜表面の照射角度での照度変化を解消する光配向装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために,請求項1に記載の発明は,基板の配向を行うための光配向装置であって,光束を絞り照度を上げた多連化した照射ヘッドと,基板を搭載し,移動可能な基板ステージと,を備え,前記多連化した照射ヘッドから前記基板へ向けて照射し,各々の照射ヘッドの出力を調整し,照度の均一性を確保した後に,前記基板を搭載した前記基板ステージを移動して前記基板の配向を行うことを特徴とする。」

「【0019】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】(例1)図1(1)と(2)及び図2(1)と(2)は,それぞれ,照射ヘッドが基板へ照射露光を行う状態を示している。本来,一つの照射ヘッド1は,図1(1)に示すように,照射範囲内に入る範囲の基板2を照射露光を行う。この場合には,照射ヘッド1の照射範囲内に基板2が入っているため,照射ヘッド1を移動することなく基板2に対して照射露光を行うことが可能である。
【0021】図1(2)には,一つの照射ヘッドの照射範囲を超える大きな基板3を照射する状態が示されている。この場合,複数の照射ヘッド1を多連化する。具体的には,大きな基板3の上方に照射ヘッド1を複数個大きな基板3の一辺の長さに対応するだけ並べる。これは,各照射ヘッド1が大きな基板3を照射したときに大きな基板3の一辺を漏れることなく照射できるようにするためである。本実施の形態では,図1(2)に示すように,5個の照射ヘッド1が並べられている。
【0022】つぎに,多連化した照射ヘッド10から大きな基板3へ向けて照射する。照射したときの照度のバラツキが図2(1)に示されている。各照射ヘッド1の照度L1,L2,L3,L4及びL5は各々L1,L1’,L1”,L1”’及びL1””となっており,大きな基板3の照射される部分毎に照度はバラバラになっており,照度のバラツキは大である。そのため,各々の照射ヘッド1の出力を調整し,配向性に重要な照度の均一性を保つ必要がある。必要な照度幅としては,図2(1)に示すように,一つの照射ヘッド1で一つの基板2を照射した場合の照度幅(L1)になる。そこで,各照射ヘッド1の照度調節機構により,照度を調節し照度の均一性を図る。
【0023】その結果が,図2(2)に示されており,照度のバラツキが解消されている。具体的には,各照射ヘッド1の照度L1,L2,L3,L4及びL5が全て等しくなり,必要な照度幅になっている。そして,このように照度の均一性を図った後に,大きな基板3を搭載した基板ステージ(不図示)を所定の速度で移動(図1の矢印方向)して大きな基板3をスキャニングさせることにより,大きな基板3の全領域を照射露光することができる。また,連結する照射ヘッド1の数を増やすことで(多連化した照射ヘッド10の大型化で)配向される基板の大型化を図ることが可能になる。
【0024】(例2)図3では,図1及び図2に示した多数の照射ヘッド1を連結した状態(多連化した照射ヘッド10)で多段に配置する構成を採っている。図3に示すように,基板4の一辺を照射範囲内に入るように,5つの照射ヘッド1を基板4の一辺に沿って並べて配置してある(多連結して配置してある)。そして,この多連結した照射ヘッド10に対向して複数の多連結した照射ヘッドが配置してある(多段化して配置してある)。本実施の形態では,多連化した照射ヘッド10を三段配置してあるが,三段に限定されるものではなく必要であれば何段でも配置可能である。また,例2においても,例1と同様に,各照射ヘッド1は配向性に重要な照度の均一性を保つために照度調整機構が設けられており,基板4を照射する際には照度の均一性が保たれている。
【0025】図3に示すように,基板4を所定の速度で移動し(図3の矢印方向),三段に配置された多連化した照射ヘッド10が照射しているところを通過する。また,基板4の配向される速度は照射された光のエネルギー(積算光量)に依存し,その配向性能は光のエネルギー(積算光量)が過不足なく照射されることが必要である。本実施の形態では多連化した照射ヘッドを三段に配置してあるため,三回基板4を照射することになるため,光のエネルギー(積算光量)を過不足なくを照射することが可能になる。その結果,基板4のスキャニング速度を上げることが可能になり,基板への照射露光の生産性を向上させることが可能になる。」

「【0029】つぎに,本発明の光配向装置の動作について説明する。マスク30の下方に基板32を配置するために駆動部36のX水平駆動部36a,Y水平駆動部36b,Z垂直駆動部36c及びψ回転駆動部36dを適宜駆動して,基板ステージ37上にある基板32をマスク30に接近させ,マスク30と基板32との間を所定のギャップ幅にする。そして,照射ヘッド31より紫外線を基板32の配向膜表面に照射し照射露光を行う。このとき,照射ヘッド31は回転中心軸である基板32に対しての垂直方向から0゜から55゜まで可変可能になっている。このように,回転中心軸を基板の配向膜表面に設定していることで,任意の角度での照度変化を解消することができる。」

「【0033】つぎに,マスク30を載せたマスクホルダー34はユニット搬送部38により,走行レール39上を移動し,露光ステーションへ移る。露光ステーションでは,マスク30の上方に照射ヘッド30が配置されている。照射ヘッド31は,図5に示すように,紫外線源であるUV光源31a,偏光子31b,コリメーター31c,カットフィルター31d及び照射時の温度上昇による誤差を解消するためマスク30をクーリング(空冷)を行う温調ユニット31eを備えている。」

図1ないし3,図5は,次のものである。
「【図1】


【図2】


【図3】


【図5】



イ 甲2発明
(ア)上記【請求項1】から,甲2には,
「基板の配向を行うための光配向装置であって,
光束を絞り照度を上げた多連化した照射ヘッドと,
基板を搭載し,移動可能な基板ステージとを備え,
前記多連化した照射ヘッドから前記基板へ向けて照射し,各々の照射ヘッドの出力を調整し,照度の均一性を確保した後に,前記基板を搭載した前記基板ステージを移動して前記基板の配向を行うことを特徴とする光配向装置。」
が記載されていると認められる。

(イ)上記【0004】及び【0006】から,上記(ア)における「基板の配向」は,基板の配向膜表面に偏光紫外線を照射することによって行うものであると認められる。
また,上記(ア)の「前記多連化した照射ヘッドから前記基板へ向けて照射」されるのは,上記の「偏光紫外線」であると解される。

(ウ)上記【0021】から,
上記(ア)における「多連化」とは,具体的には,照射ヘッドを複数個大きな基板の一辺の長さに対応するだけ並べることをいうものと解される。

(エ)上記【0024】に,
多連結した照射ヘッドを多段化して配置することが記載されている。

(オ)上記【0025】に,
基板の移動について,基板を所定の速度で図3の矢印方向に移動させることが記載されている。

(カ)上記(ア)ないし(オ)から,甲2には,次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「基板の配向膜表面に偏光紫外線を照射して基板の配向を行うための光配向装置であって,
光束を絞り照度を上げ照射ヘッドを複数個大きな基板の一辺の長さに対応するだけ並べた多連化した照射ヘッドを多段化して配置し,
基板を搭載し,移動可能な基板ステージとを備え,
前記多連化した照射ヘッドから前記基板へ向けて偏光紫外線を照射し,各々の照射ヘッドの出力を調整し,照度の均一性を確保した後に,前記基板を搭載した前記基板ステージを移動して基板を所定の速度で図3の矢印方向に移動させ前記基板の配向を行うことを特徴とする光配向装置。」

(2)本件発明と甲2発明の対比
ア 甲2発明における「基板の配向膜」は,偏光紫外線が照射されて配向が行われると解されるから,本件発明における「光配向膜」に相当する。

イ 甲2発明において,「基板を所定の速度で図3の矢印方向に移動させ前記基板の配向を行う」から,基板の配向膜は,「連続または間歇的に直線状に搬送される」といえる。

ウ 甲2発明における「多連化した照射ヘッド」は,偏光光を照射する点で,本件発明における「光照射部」と共通する。そして,甲2発明における「多連化した照射ヘッドを多段化して配置し」,「前記多連化した照射ヘッドから前記基板へ向けて偏光紫外線を照射し」及び「前記基板の配向を行う」という事項は,本件発明における「光配向膜の搬送方向に沿って光照射部が多段に配置され,多段に配置された各光照射部から上記光配向膜に偏光光を照射して光配向を行う」という事項に相当する。

エ 甲2発明の「光配向装置」は,本件発明の「光配向を行う偏光光照射装置」及び「光配向用偏光光照射装置」と,「光照射部から上記光配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置」である点で共通する。

オ そうすると,本件発明と甲2発明は次の点で一致する。
[一致点]
「連続または間歇的に直線状に搬送される光配向膜に対し,
光配向膜の搬送方向に沿って光照射部が多段に配置され,
多段に配置された各光照射部から上記光配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置である,
光配向用偏光光照射装置。」

カ 一方,両者は次の点で相違する。
[相違点2]
多段に配置された各光照射部について,本件発明においては,
「光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に伸びる線状の光源と,
上記線状の光源の伸びる方向に沿って複数のワイヤーグリッド偏光素子が並べられ,該並べられたワイヤーグリッド偏光素子の間に境界部が生じている偏光素子ユニットを有しており」,及び
「各段の光照射部の上記偏光素子の間の境界部が,他の段の光照射部の偏光素子の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互い重ならないように,光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置されている」
との事項が特定されているのに対して,甲2発明においては,かかる事項を発明特定事項として有していない点。

(3)判断
相違点2に係る本件発明の構成が,当業者が容易に想到し得るものといえるか検討する。

ア 甲2発明は,甲2の【0004】及び【0006】の記載から明らかなとおり,大型基板を効率的に露光するために,照射ヘッドを基板の幅方向に並べて配置する場合において,並べられた各々の照射ヘッドからの照射光の基板上における照度に,図2(1)に示すようなバラツキを生じることを,その発明の解決課題とする発明である。
そして,上記課題を解決するため,各々の照射ヘッドの出力を調整することを課題解決手段とするものであり,これにより,照度の均一性を確保した大型基板の露光が可能となる(【0008】,【0012】,【0043】,【0045】)というものと認められる。

イ 甲2の図3には,図1(2)に示すように基板幅方向に多連化された照射ヘッド1の列を,基板搬送方向に多段に配置した構成が示されているが,図3に示された配置では,搬送方向に前後する列の照射ヘッドは,前後に整列した配置となっており,ずらされていないが,この構成について,
「【0024】…例2においても,例1と同様に,各照射ヘッド1は配向性に重要な照度の均一性を保つために照度調整機構が設けられており,基板4を照射する際には照度の均一性が保たれている。」として,照度の均一性が保たれると記載されている。

ウ これらの記載から明らかなとおり,甲2発明においては,照度の均一性は確保されているのであり,偏光素子間の境界部が発生することにより,照度分布が悪化する,という課題は認識されていない。また,甲2に接した当業者が当該課題を想定するともいえない。
したがって,甲2発明において,照度の均一性を確保するために,その他の技術を付加又は置換して,各段の照射ヘッドや偏光素子の位置をずらして,上記相違点2に係る本件発明の構成のうち,少なくとも「各段の光照射部の上記偏光素子の間の境界部が,他の段の光照射部の偏光素子の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互い重ならないように,光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置」とすることを動機付けるものがあるとはいえない。
その他の証拠を見ても,次のとおり,上記動機となるものは見出せない。

エ 甲3(特開2004-9595号公報)について
甲3には次の記載がある。
「【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係る露光装置は,いわゆるフラッドベッドタイプの露光装置とされており,図1に示すように,シート状の感光材料150を表面に吸着して保持する平板状のステージ152を備えている。
・・・
【0020】
スキャナ162は,図2及び図3(B)に示すように,m行n列(例えば,3行5列)の略マトリックス状に配列された複数(例えば,14個)の露光ヘッド166を備えている。・・・
【0021】
・・・なお,m行目のn列目に配列された個々の露光ヘッドによる露光エリアを示す場合は,露光エリア168_(mn)と表記する。
【0022】
また,図3(A)及び(B)に示すように,帯状の露光済み領域170びそれぞれが,隣接する露光済み領域170と部分的に重なるように,ライン状に配列された各行の露光ヘッドの各々は,配列方向に所定間隔(露光エリアの長辺の自然数倍,本実施の形態では2倍)ずらして配置されている。このため,1行目の露光エリア168_(11)と露光エリア168_(12)との間の露光できない部分は,2行目の露光エリア168_(21)と3行目の露光エリア168_(31)とにより露光することができる。」

「【0071】
上記の露光装置は,例えば,プリント配線基板(PWB;Printed Wiring Board)の製造工程におけるドライ・フィルム・レジスト(DFR;Dry Film Resist)の露光,液晶表示装置(LCD)の製造工程におけるカラーフィルタの形成,TFTの製造工程におけるDFRの露光,プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)の製造工程におけるDFRの露光等の用途に好適に用いることができる。


図1ないし3は,次のものである。
「【図1】(審決注:図の向きを右に90°回転した。)


【図2】(審決注:図の向きを右に90°回転した。)


【図3】



上記記載から,甲3には,
液晶表示装置(LCD)用カラーフィルタ形成のための露光装置等において,
m行n列の露光ヘッドうち,ライン状に配列された各行の露光ヘッド166の各々が,1行目の露光エリア168_(11)と露光エリア168_(12)との間の露光できない部分が2行目の露光エリア168_(21)と3行目の露光エリア168_(31)とにより露光されるように,配列方向にずらして配置するという技術事項が記載されていると認められる。
しかしながら,上記技術事項は,1行目の露光ヘッドによっては露光できない部分を2行目の露光ヘッドによって露光するというものであり,そもそも露光できない部分が想定されない甲2発明において,各段の照射ヘッドの位置をずらすことを動機付けるものとはいえない。

オ 甲4(光技術情報誌「ライトエッジ」No.23(ウシオ電機株式会社,2001年11月発行)第36?65頁)について
甲4は,露光装置の要素技術について記載するもので,次の記載がある。
「4.2.1 露光照明系とは
露光照明系とは,露光装置において,マスク(原画)を通じてワーク上のレジストに必要な光を照射するためのものである。露光照明系には,レジストや加工パターンの精度に適した,明るく均一な光が求められる。露光方式には,大別して以下の3方式があり,照明系もそれに対応したものが必要とされる。」(45頁左欄)

「4.2.4 主な照明系の種類と特徴
代表的な照明系とその特徴を説明する。
(1)TAB投影露光用照明系
・・・中略・・・
(2)リジッド基板分割投影露光用照明系
・・・中略・・・
(3)液晶カラーフィルタ露光用照明系
ランプは,電力3.5?10kWのものを1?2灯使用している。露光面は,最大750mm×650mmである。視角は約2°?3°,中心光線平行度は0.4°程度である。インテグレータは,最大で約φ300mmのものを使用している。また,大電力ランプ使用の場合は,非露光待機時にランプ電力を低くしている。
(4)その他の照明系
露光用とは異なるが,その応用例として,液晶光配向用途に用いられる偏光紫外線照射装置用の照明系がある。この照明系は,偏光光を照射するために,インテグレータ部にブリュスタ角を利用した偏光素子を配置しているのが特徴である。この構造により,偏光光を大面積に均一に一括照射できる。・・・」(49頁右欄)

しかしながら,上記記載は,各種露光装置における照明系についての一般的な記載にすぎず,甲2発明において,各段の照射ヘッドの位置をずらすことを動機付けるものとはいえない。

カ 甲5(特開2008-164729号公報),甲6(特開2013-37158号公報)について
甲5及び甲6は,本件特許の出願後に頒布された刊行物であるので,本件発明に対する先行技術文献としての適格性を欠く。

キ 甲7(特開2004-144884号公報)について
甲7には,次の記載がある。
「【0025】
【発明の実施の形態】
図3は,本発明の第1の実施例に係る光配向用偏光光照射装置の概略構成を示す図である。
本発明の第1の実施例に係る光配向用偏光光照射装置30は,放電容器にキセノンと塩素の混合ガスを封入した,棒状の誘電体エキシマ放電ランプ31と,該ランプ31から放射される紫外光を反射する,断面が楕円形の樋状集光鏡32と,該ランプ31の発光長と同じかやや長い一辺を持つ長方形状のワイヤ・グリッド偏光子100を備えている。・・・
【0026】
そして,上記ランプ31は,308nm付近の単一波長の紫外線を放射するが,該紫外線は直接,または樋状集光鏡32によって反射され,ワイヤ・グリッド偏光子100に入射し,該偏光子100によって偏光光とされる。」

「【図3】(審決注:図の向きを右に90°回転した。)


上記記載から,甲7には,ワイヤ・グリッド偏光子を備えた光配向用偏光光照射装置が記載されていると認められる。
しかしながら,甲7において,甲2発明における各段の照射ヘッドの位置をずらすことを動機付ける記載は認められない。

ク 甲8(米国特許出願公開第2003/0043461号明細書)
甲8には,次の記載がある。
「[0046] The size of the system 100 shown in FIGS. 1A-1B may be scaled up to produce a larger polarized light exposure for exposing larger webs. For example, a scaled-up photo-alignment system 200 is shown in FIG. 2. The system 200 is the same as the system 100, except that the light source 102, lens 108, and pile-of-plates polarizer 110 have been extended in one dimension. More specifically, the system 200 includes an extended light source 202, which is as wide as the original light source 102 plus an extension 204. 」
(訳:[0046] 図1A-1Bに示されたシステム100の大きさは,より大きなウェブに対する露光をするため,より大きな偏光照射を確保できるように,スケールアップすることができる。例えば,スケールアップされた光配向システム200が図2に示されている。光配向システム200は,光源102,レンズ108,パイル型偏光子110が一方向に伸長されていることを除き,システム100と同じである。より具体的には,システム200は,伸長された光源202を含んでおり,この伸長された光源202は,元の光源102の幅に対して伸長部分204が加わったものと同じである。)

図2は,次のものである。
「FIG.2



上記記載から,甲8には,照射領域を拡大するために,照射領域を拡大する方向に光源を伸長させた光配向システムが記載されていると認められるが,甲2発明において,各段の照射ヘッドの位置をずらすことを動機付ける記載は認められない。

ケ 以上のことから,上記相違点2に係る本件発明の構成は,当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。


(4)請求人の主張について
請求人は,次の主張をする。
甲2の図2(2)においても「照度幅」に相当する分だけ各照射ヘッド1の境界部における照度は不均一である。多連化した照射ヘッドを用いる構成では,物理的に,各照射ヘッドに含まれる光源が照射ヘッドの外装ケースで仕切られた構成となってしまうため,必然的に,照射ヘッド間に照度の不均一性が生じてしまう。このため,多連化した照射ヘッドを用いた構成が,常に「照度の不均一性」という技術的課題を包含するものであることは当業者にとって自明である。したがって,たとえ,甲2に「照度の均一性」という用語が存在するとしても,それは,不均一性を多少抑制できたという程度のものに過ぎず,依然として,甲2は「照度の不均一性」という技術的課題を包含している。(平成29年3月2日付け口頭審理陳述要領書20?22頁(イ))
この点,甲2の図2(2)において,照度が完全に均一になっていることが示されているとはいえないが,甲2には
「【0022】・・・そのため,各々の照射ヘッド1の出力を調整し,配向性に重要な照度の均一性を保つ必要がある。必要な照度幅としては,図2(1)に示すように,一つの照射ヘッド1で一つの基板2を照射した場合の照度幅(L1)になる。そこで,各照射ヘッド1の照度調節機構により,照度を調節し照度の均一性を図る。
【0023】その結果が,図2(2)に示されており,照度のバラツキが解消されている。具体的には,各照射ヘッド1の照度L1,L2,L3,L4及びL5が全て等しくなり,必要な照度幅になっている。」
と記載されている。
すなわち,甲2において,各照射ヘッドの照度を調整するのは,配向性に重要な照度の均一性を保つためであり,その照度の均一性については,「必要な照度幅としては図2(1)に示すように,一つの照射ヘッド1で一つの基板2を照射した場合の照度幅(L1)になる。」とされている。
したがって,甲2発明の課題は,照度のバラツキを「必要な照度幅」内に収めることであって,照度を完全に均一にすることを課題としているとはいえない。
よって,請求人の上記主張は採用できない。

(5)無効理由3についての小括
以上のとおりであるから,本件発明は,甲2発明に,甲3,甲4,甲7及び甲8に記載された技術事項及び従来周知の技術事項又は甲3,甲4,甲7及び甲8に記載された技術事項を組み合わせることにより,本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,無効理由3は,理由がない。

第4 まとめ
以上のとおり,請求人が主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては,本件発明に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担とする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-08 
結審通知日 2017-06-12 
審決日 2017-06-27 
出願番号 特願2005-308117(P2005-308117)
審決分類 P 1 113・ 113- Y (G02F)
P 1 113・ 121- Y (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森江 健蔵  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 近藤 幸浩
河原 英雄
登録日 2011-09-09 
登録番号 特許第4815995号(P4815995)
発明の名称 光配向用偏光光照射装置  
代理人 相良 由里子  
代理人 ▲高▼野 芳徳  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 溝田 宗司  
代理人 谷口 信行  
代理人 大塚 文昭  
代理人 松野 仁彦  
代理人 白坂 一  
代理人 岸 慶憲  
代理人 松尾 和子  
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