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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60G
管理番号 1346498
審判番号 不服2017-17470  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-27 
確定日 2018-11-22 
事件の表示 特願2013-155341号「作業用多軸車両」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 5日出願公開、特開2015- 24739号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月26日に出願されたものであって、平成29年5月26日付けで拒絶理由が通知され、同年7月31日に意見書が提出され、同年8月25日付けで拒絶査定がされ、同年11月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「車体の前側及び後側のいずれか一方に車輪を回転自在に支持する1つの車軸が設けられ、前記車体の前側及び後側のいずれか他方に車輪を回転自在に支持する2以上の車軸が設けられた作業用多軸車両であって、
車輪を回転自在に支持する前記1つの車軸は、前記車体に対してリジット方式にて取付けられ、車輪を回転自在に支持する前記2以上の車軸は、前記車体に対して該車軸を揺動自在に支持する車軸懸架方式のサスペンション機構を有する
ことを特徴とする作業用多軸車両。」

第3 原査定の概要
この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2011-241035号公報
引用文献2.実願昭60-165471号(実開昭62-72803号)
のマイクロフィルム
引用文献3.特開平10-36079号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2004-114901号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.特開2009-208959号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。以下同様。
(1)「【0023】
図1は本発明の一実施形態に係るジブ収納装置を装備したホイールクレーンの全体構成を示し、1は1軸の前輪2及び2軸の後輪3,4を有する下部走行体であって、この下部走行体1の前端部及び後端部にはそれぞれアウトリガ5,6が設けられているとともに、下部走行体1上には上部旋回体11が旋回可能に設けられている。」

(2))【0050】
1 下部走行体(車体)
・・・」

2 引用文献1に記載された発明
上記1の各記載事項及び【図1】の記載より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「1軸の前輪2及び2軸の後輪3,4を有する車体である下部走行体1を備えたホイールクレーン。」

3 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「[従来の技術]
ホイールクレーンにおいては、走行時の4輪の接地性を確保するため、前軸揺動-後軸固定又は前軸固定-後軸揺動としてある。」(明細書第1ページ下から2行?第2ページ第2行)

4 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳述する。図1及び図2は建設機械の一例として走行姿勢状態のトラッククレーンを示し、台車1にクレーン部5が載置されており、該クレーン部5は旋回体6とブームアタッチメント7とからなっている。また、台車1の機体と車輪4との間にはサスペンションシリンダ16が介装され、該サスペンションシリンダ16のヘッド部Hを台車1の機体側に取り付けるとともに、ロッド部Rを車輪4側に装着して、走行時の安定性と快適な乗り心地を確保している。同図に示した走行姿勢では、各車輪4が接地してオンタイヤ状態となっている。
【0009】図3はサスペンション系の油圧回路を示し、油圧ポンプ17から吐出された圧力油は切替弁18及び逆止弁19a?19dを経て回路内へ補給され、一旦複数の蓄圧器20a?20dに蓄えられる。この蓄圧器20a?20dを油圧源として、該蓄圧器20a?20dと左右のサスペンションシリンダ16a?16hのヘッド側とを油路21a?21dにて接続する。この油路21a?21dには夫々逆止弁付絞り弁22a?22dと開閉弁23a?23dを介装する。一方、各サスペンションシリンダ16a?16hのロッド側とタンク24とを油路25a,25bにて接続し、タンク24側に開閉弁26を介装する。」

5 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0014】
【発明の実施の形態】
第1の実施の形態
図1に、本願発明を適用した4軸のクレーン車の油圧サスペンション装置の油圧回路を示す。なお、油圧サスペンション装置としては、油圧サスペンション装置の操作手段、各車輪の車高を検出する車高検出手段、当該車高検出手段の検出値に基き切換バルブに切換信号を出力するコントローラその他の電気制御手段も必要であるが、本願発明においては、上記電気制御手段の構成は公知のもので良いため、それらの図示及びその説明を省略する。」

(2)「【0016】
図2は、第1軸の右側油圧シリンダ20及び左側油圧シリンダ21を車両1と第1軸のアクスルビーム2間に配置した状態を車両1の後方より前方に向かう矢視により示している。右側油圧シリンダ20のシリンダ側端部は車両1から右側方に張出したサポート3に軸着され、ロッド側端部はアクスルビーム2の右側連結部4に軸着されている。左側油圧シリンダ21も同様に車両1の左側とアクスルビーム左側間で軸着されている。
【0017】
なお、5、6、7、8はアクスルビーム2と車両1間に配置されたトルクロッドであって、アクスルビーム2を車両1に対して、上下方向のみ移動可能に拘束するものである。」

6 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、ラフテレンクレーン等の、ホイール式走行体を備えたホイールクレーンに関する。」

(2)「【0011】
各々の前側車軸32,33は図示しない懸架装置により前部フレーム6に対して懸架されている。各前側車軸はその車軸と前部フレームとをトルクロッドで連結し、例えば油圧シリンダーを用いた緩衝装置により個々の車軸(アクスル)の動きを緩衝するようになっている。後述する後側車軸62,63についても同様の方式で懸架可能である。」

(3)「【0021】
また、各々の後側車軸62,63は図示しない懸架装置により後部フレーム7に対して懸架されている。懸架装置としては例えば油圧サスペンション装置を使用する。油圧サスペンション装置を使用する場合、後側車軸のサスペンション油圧シリンダのヘッド側(上側)シリンダ室同士を連通するようにすると、少なくともその2軸についてはイコライジング機能を奏し、車輪の路面への追従性が向上する。また、左右のサスペンション油圧シリンダのヘッド側シリンダ室とロッド側シリンダ室を連通するようにすれば、特に車両の旋回時のステアリング操作の安定性が良好になる。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「前輪2」及び「後輪3、4」は、前者の「車輪」に相当し、同様に、「車体である下部走行体1」は「車体」に相当する。

(2)後者の「ホイールクレーン」は「1軸の前輪2及び2軸の後輪3,4を有する」ものであり、作業用の車両であることは明らかであるから、前者の「作業用多軸車両」に相当する。

(3)後者の「前輪2」及び「後輪3,4」は、それぞれ「1軸」及び「2軸」を構成する車軸に対し回転自在に支持されるものであることは明らかである。

(4)上記(1)?(3)を踏まえると、後者の「1軸の前輪2及び2軸の後輪3,4を有する車体である下部走行体1を備えたホイールクレーン」は、前者の「車体の前側及び後側のいずれか一方に車輪を回転自在に支持する1つの車軸が設けられ、前記車体の前側及び後側のいずれか他方に車輪を回転自在に支持する2以上の車軸が設けられた作業用多軸車両」に相当するといえる。

(5)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「車体の前側及び後側のいずれか一方に車輪を回転自在に支持する1つの車軸が設けられ、前記車体の前側及び後側のいずれか他方に車輪を回転自在に支持する2以上の車軸が設けられた作業用多軸車両。」

〔相違点〕
本願発明が、「車輪を回転自在に支持する前記1つの車軸は、前記車体に対してリジット方式にて取付けられ、車輪を回転自在に支持する前記2以上の車軸は、前記車体に対して該車軸を揺動自在に支持する車軸懸架方式のサスペンション機構を有する」のに対し、引用発明は、「1軸」、「2軸」を構成する車軸の車体に対する具体的な支持構造が明らかでない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、上記「第4 3」で示したように、ホイールクレーン(作業用車両)において、走行時の4輪の接地性を確保するため、前軸(前側の車軸)揺動-後軸(後側の車軸)固定又は前軸固定-後軸揺動とすることが記載されている。
引用発明においても、走行時の接地性の確保が望ましいのは自明な課題といえ、「前輪2」と「後輪3,4」を支持する「1軸」と「2軸」の車軸に対して、引用文献2に記載された技術的事項を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。その際、「後輪3,4」は互いに近接されて配置されるものであるから、例えば不整路等において「後輪3,4」間で接地、不接地の状態が生じやすくなるのは構造上自明のことであり、上記採用にあたっては、そのような状態が生じにくくするよう「後輪3,4」を支持する「2軸」の車軸を揺動する側とすることは、接地性の確保という課題から当然考慮すべきことである。
また、引用文献2には、揺動をどのように行っているのかの明記はないが、作業用多軸車両において、車軸の揺動を車軸懸架方式のサスペンション機構により行うことは、引用文献3?5に示されるように周知技術であり(上記「第4 4?6」参照。)、上記採用にあたり、揺動の具体的手段を車軸懸架方式のサスペンション機構とすることは、当業者であれば適宜なし得た程度のことである。

したがって、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術を採用して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の奏する作用効果について検討しても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものといえる。

よって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-18 
結審通知日 2018-09-25 
審決日 2018-10-10 
出願番号 特願2013-155341(P2013-155341)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉田 和博  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 氏原 康宏
一ノ瀬 覚
発明の名称 作業用多軸車両  
代理人 特許業務法人 エビス国際特許事務所  

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