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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1346531 |
審判番号 | 不服2017-14555 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-02 |
確定日 | 2018-12-11 |
事件の表示 | 特願2016-553638「ワイヤレスドッキングのためのワイヤレス帯域幅の効率的な使用のためのリモートレンダリング」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日国際公開、WO2015/100026、平成29年 4月 6日国内公表、特表2017-509984、請求項の数(26)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)12月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年12月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月22日に手続補正がされ、平成28年11月25日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年5月25日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年10月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年7月25日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年10月31日に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年5月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-30に係る発明は、以下の引用文献A,Bに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.国際公開第2013/103736号 B.国際公開第2013/158625号 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 本願請求項1-26に係る発明は、以下の引用文献1,2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特表2013-514044号公報(当審において新たに引用した文献) 2.国際公開第2013/103736号(拒絶査定時の引用文献A) 第4 本願発明 本願請求項1-26に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明26」という。)は、平成30年10月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-26に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 ワイヤレスネットワークにおけるシンクデバイスによって表示されるべきコンテンツのソースデバイスによって実施される方法であって、 ソースデバイスにおいて、コンテンツがリモートに位置付けられたシンクデバイス上に表示されるための1つまたは複数のレンダリング命令を識別することと、 前記レンダリング命令に少なくとも部分的に基づいて、前記コンテンツの少なくとも一部の表示をレンダリングするための前記シンクデバイスによる実行のためにワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスに前記1つまたは複数のレンダリング命令を送信することと、 前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信すること、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える、と を備え、前記1つまたは複数のレンダリング命令を前記識別することは、前記受信されたデータに少なくとも部分的に基づいて、更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令を識別することをさらに備え、前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令は、前記シンクデバイスによる更なるレンダリングのために、前記シンクデバイスに送信される、方法。 【請求項2】 前記受信されたデータの少なくとも一部は、前記シンクデバイスにおけるユーザ入力に対応する、 請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記ソースデバイス上でアプリケーションを実行することをさらに備え、前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に前記アプリケーションのユーザインターフェースの少なくとも一部をレンダリングするように構成される、 請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記受信されたデータの少なくとも一部は、前記シンクデバイスにおける前記アプリケーションのためのユーザ入力に対応する、 請求項3に記載の方法。 【請求項5】 前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に前記ソースデバイスのユーザインターフェースの少なくとも一部をレンダリングするように構成される、 請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記受信されたデータの少なくとも一部は、前記ソースデバイスの前記ユーザインターフェースに従って前記シンクデバイスにおけるユーザ入力に対応する、 請求項5に記載の方法。 【請求項7】 前記コンテンツにおいて少なくとも1つのグラフィックスリソースを識別することと、 前記少なくとも1つのグラフィックスリソースを圧縮することと、 前記圧縮された少なくとも1つのグラフィックスリソースを前記シンクデバイスに送信すること、前記1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に表示される前記コンテンツ中に前記少なくとも1つのグラフィックスリソースを含めるように構成される、と をさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 前記コンテンツにおいて少なくとも1つのビデオストリームを識別することと、 前記少なくとも1つのビデオストリームを圧縮することと、 前記圧縮された少なくとも1つのビデオストリームを前記シンクデバイスに送信すること、前記1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に表示される前記コンテンツ中に前記少なくとも1つのビデオストリームを含めるように構成される、と をさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項9】 ワイヤレスネットワークにおけるシンクデバイスによるコンテンツの表示を可能にするように構成される装置であって、 ソースデバイスにおいて、コンテンツがリモートに位置付けられたシンクデバイス上に表示されるための1つまたは複数のレンダリング命令を識別するための手段と、 前記レンダリング命令に少なくとも部分的に基づいて、前記コンテンツの少なくとも一部の表示をレンダリングするための前記シンクデバイスによる実行のためにワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスに前記1つまたは複数のレンダリング命令を送信するための手段と、 前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信するための手段、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える、と を備え、前記1つまたは複数のレンダリング命令を前記識別するための手段は、前記受信されたデータに少なくとも部分的に基づいて、更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令を識別するための手段をさらに備え、前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令は、前記シンクデバイスによる更なるレンダリングのために、前記シンクデバイスに送信される、装置。 【請求項10】 前記受信されたデータの少なくとも一部は、前記シンクデバイスにおけるユーザ入力に対応する、 請求項9に記載の装置。 【請求項11】 前記ソースデバイス上でアプリケーションを実行するための手段をさらに備え、前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に前記アプリケーションのユーザインターフェースの少なくとも一部をレンダリングするように構成される、 請求項9に記載の装置。 【請求項12】 前記受信されたデータの少なくとも一部は、前記シンクデバイスにおける前記アプリケーションのためのユーザ入力に対応する、 請求項11に記載の装置。 【請求項13】 前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に前記ソースデバイスのユーザインターフェースの少なくとも一部をレンダリングするように構成される、 請求項9に記載の装置。 【請求項14】 前記受信されたデータの少なくとも一部は、前記ソースデバイスの前記ユーザインターフェースに従って前記シンクデバイスにおけるユーザ入力に対応する、 請求項13に記載の装置。 【請求項15】 前記コンテンツにおいて少なくとも1つのグラフィックスリソースを識別するための手段と、 前記少なくとも1つのグラフィックスリソースを圧縮するための手段と、 前記圧縮された少なくとも1つのグラフィックスリソースを前記シンクデバイスに送信するための手段、前記1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に表示される前記コンテンツ中に前記少なくとも1つのグラフィックスリソースを含めるように構成される、と をさらに備える、請求項9に記載の装置。 【請求項16】 前記コンテンツにおいて少なくとも1つのビデオストリームを識別するための手段と、 前記少なくとも1つのビデオストリームを圧縮するための手段と、 前記圧縮された少なくとも1つのビデオストリームを前記シンクデバイスに送信するための手段、前記1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に表示される前記コンテンツ中に前記少なくとも1つのビデオストリームを含めるように構成される、と をさらに備える、請求項9に記載の装置。 【請求項17】 ワイヤレスネットワークにおけるリモートに位置付けられたシンクデバイスによるコンテンツの表示のためのソースデバイスであって、 プロセッサと、 前記プロセッサと電子通信しているメモリと、 前記メモリに記憶されている命令と を備え、前記命令は、 前記ソースデバイスにおいて、コンテンツが前記リモートに位置付けられたシンクデバイス上に表示されるための1つまたは複数のレンダリング命令を識別することと、 前記レンダリング命令に少なくとも部分的に基づいて、前記コンテンツの少なくとも一部の表示をレンダリングするための前記シンクデバイスによる実行のためにワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスに前記1つまたは複数のレンダリング命令を送信することと、 前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信すること、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える、と を行うように前記プロセッサによって実行可能であり、前記1つまたは複数のレンダリング命令を前記識別することは、前記受信されたデータに少なくとも部分的に基づいて、更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令を識別することをさらに備え、前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令は、前記シンクデバイスによる更なるレンダリングのために、前記シンクデバイスに送信される、ソースデバイス。 【請求項18】 前記受信されたデータの少なくとも一部は、前記シンクデバイスにおけるユーザ入力に対応する、 請求項17に記載のソースデバイス。 【請求項19】 前記命令は、 前記ソースデバイス上でアプリケーションを実行するように前記プロセッサによって実行可能であり、前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に前記アプリケーションのユーザインターフェースの少なくとも一部をレンダリングするように構成される、 請求項17に記載のソースデバイス。 【請求項20】 前記受信されたデータの少なくとも一部は、前記シンクデバイスにおける前記アプリケーションのためのユーザ入力に対応する、請求項19に記載のソースデバイス。 【請求項21】 前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に前記ソースデバイスのユーザインターフェースの少なくとも一部をレンダリングするように構成される、 請求項17に記載のソースデバイス。 【請求項22】 前記受信されたデータの少なくとも一部は、前記ソースデバイスの前記ユーザインターフェースに従って前記シンクデバイスにおけるユーザ入力に対応する、 請求項21に記載のソースデバイス。 【請求項23】 前記命令は、 前記コンテンツにおいて少なくとも1つのグラフィックスリソースを識別することと、 前記少なくとも1つのグラフィックスリソースを圧縮することと、 前記圧縮された少なくとも1つのグラフィックスリソースを前記シンクデバイスに送信すること、前記1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に表示される前記コンテンツ中に前記少なくとも1つのグラフィックスリソースを含めるように構成される、と を行うように前記プロセッサによって実行可能である、請求項17に記載のソースデバイス。 【請求項24】 前記命令は、 前記コンテンツにおいて少なくとも1つのビデオストリームを識別することと、 前記少なくとも1つのビデオストリームを圧縮することと、 前記圧縮された少なくとも1つのビデオストリームを前記シンクデバイスに送信すること、前記1つまたは複数のレンダリング命令のうちの少なくとも1つは、実行時に表示される前記コンテンツ中に前記少なくとも1つのビデオストリームを含めるように構成される、と を行うように前記プロセッサによって実行可能である、請求項17に記載のソースデバイス。 【請求項25】 ワイヤレスネットワークにおけるソースデバイスのコンテンツの表示のためにリモートに位置付けられたシンクデバイスによって実施される方法であって、 ソースデバイスから直接のワイヤレスピアツーピア接続を介して、表示されるべきコンテンツのための1つまたは複数のレンダリング命令を受信することと、 前記レンダリング命令に少なくとも部分的に基づいて、前記コンテンツの少なくとも一部の表示をレンダリングするために前記1つまたは複数のレンダリング命令を実行することと、 前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記ソースデバイスにデータを送信すること、ここにおいて、前記送信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える、と を備え、前記データは、前記ソースデバイスによって更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令を識別するために使用され、前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令は、前記シンクデバイスによる更なるレンダリングのために、前記シンクデバイスで受信される、方法。 【請求項26】 前記シンクデバイスにおいてユーザ入力を受信することをさらに備え、前記ソースデバイスに送信された前記データのうちの少なくとも一部は、前記受信されたユーザ入力に対応する、 請求項25に記載の方法。」 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 平成30年7月25日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付与したものである。 ア 段落【0020】-【0021】 「【0020】 本開示では、ビデオディスプレイシステムのホストデバイスによるデコンポーズドマルチストリーム(DMS)の生成と、ビデオディスプレイシステムのクライアントデバイスによるDMSの表示とを改善することができる技法について説明する。DMSは、それ自体が、可視エリアの別個の領域、または場合によっては可視エリア内の重なる領域に対応し得る、コンテンツの2つ以上の異なるストリームを含む、ディスプレイのためのデータのストリームを指す。ホストデバイスは、コンテンツの2つ以上の異なるストリームを備えるDMSを生成し得、クライアントデバイスは、ホストデバイスからDMSを受信し、DMS中に含まれるコンテンツの2つ以上の異なるビデオストリームを含むビデオをディスプレイスクリーン上にレンダリングすることができる。ホストデバイスは、スクリーンの異なるエリア中でDMSの異なるストリームをレンダリングし得、場合によっては、異なるDMSストリームの異なるエリアが重なることがある。 【0021】 いくつかのビデオディスプレイシステムは、DMSストリームとは対照的に、シグナルコンポーズドストリーム(SCS)と呼ばれる、ビデオコンテンツのストリームを生成する。SCSは、ホストデバイス中でスクリーンショットとして見なされ得る1つの単一ビデオストリームを備える。本質的に、SCSの場合、ホストデバイスは、クライアントデバイスにそのディスプレイバッファのコンテンツ全体を送る。これらのいわゆる「スクリーンショット」は、場合によってはコンテンツの異なるウィンドウを含むことができるが、SCS中のコンテンツの異なるウィンドウは、別個のストリームでなく、スクリーンショットの一部にすぎない。ホストデバイスが、2つの別個のウィンドウ(フルモーションビデオのウィンドウと、比較的静的(static)なコンテンツの別のウィンドウ)を表示する場合、SCSは、一般に、フルモーションビデオに対応するフレームレートでスクリーンショットを送る。SCS技法は、フルモーションビデオとともに比較的静的なコンテンツを送る非常に非効率的な方法とすることができる。」 イ 段落【0024】-【0036】 「【0024】 図1は、本開示の技法を実装するために使用され得る例示的なビデオディスプレイシステムを示すブロック図である。図1のシステムは、ホストデバイス10とクライアントデバイス20とを含む。例示的な例では、ホストデバイス10は、ラップトップまたはスマートフォンを備え得、クライアントデバイス20は、ホストデバイス上にレンダリングされるコンテンツと同じコンテンツをレンダリングするために使用される別個の外部ディスプレイデバイスを備え得る。ホストデバイス10とクライアントデバイス20とは、短距離高速ワイヤレスプロトコルを介してデータを通信し得る。ただし、この例は例にすぎない。ホストデバイス10とクライアントデバイス20とは、代替的に、DMS技法を介してデータを通信する任意の2つのコンピュータデバイスを備え得る。ホストデバイス10とクライアントデバイス20との間の通信リンクは、典型的には短距離ワイヤレスリンクである。しかしながら、他の例では、ホストデバイス10とクライアントデバイス20との間のリンクは、任意のワイヤードまたはワイヤレスプロトコルに準拠し得、ルータ、スイッチまたは他のネットワーキングデバイスなどの中間デバイスを含み得る。 【0025】 ホストデバイス10は、異なるコンテンツ(たとえば、コンテンツ1 12A、コンテンツ2 12B、およびコンテンツN 12N)にアクセスし得る。コンテンツ12は、ディスプレイバッファを介してホストデバイスにアクセス可能であり得るが、コンテンツをレンダリングする1つまたは複数の特定のアプリケーションから別々にアクセス可能であり得る。一例として、コンテンツ12Aは、ビデオ再生アプリケーションからのコンテンツを備え得、コンテンツ12Bは、電子メールアプリケーションまたはワードプロセシングアプリケーションからのコンテンツを備え得る。 【0026】 ホストデバイス10は、デコンポーズドマルチストリーム(DMS)を生成するDMS生成器を含み、DMSは、ディスプレイウィンドウの第1のエリア中の第1のコンテンツと、ディスプレイウィンドウの第2のエリア中の第2のコンテンツとを定義し、第1のコンテンツはDMS中の第1のフレームレートを定義し、第2のディスプレイコンテンツはDMS中の第2のフレームレートを定義し、第1のフレームレートは第2のフレームレートとは異なる。たとえば、コンテンツ12Aがビデオ再生アプリケーションからのコンテンツを備え、コンテンツ12Bが電子メールアプリケーションまたはワードプロセシングアプリケーションからのコンテンツを備える場合、コンテンツ12Aは、コンテンツ12Bのために使用されるフレームレートよりも高いフレームレートを有するDMSの第1のストリームに符号化され得る。 【0027】 図2は、DMSの異なるビデオストリームに対応するディスプレイコンテンツの2つの別個のエリアを含むディスプレイスクリーンの概念図である。図2に示すように、可視エリア202は、第1のレンダリングエリア204と第2のレンダリングエリア206とを含む。さらに、この例では、第1のレンダリングエリア204と第2のレンダリングエリア206とは、両方とも重なるエリア205を含む。DMSは、第1のレンダリングエリア204および第2のレンダリングエリア206のコンテンツを通信するための2つの別個のストリームを含み得る。DMSは、追加のストリーム、すなわち、2つのストリームよりも多いストリームをも含み得る。 【0028】 第1のレンダリングエリア204は、フルモーションビデオシーケンスを備え得、DMSで30フレーム毎秒などで符号化され得る。第2のレンダリングエリア206は、電子メールアプリケーションまたはワードプロセシングアプリケーションなどのより静的なアプリケーションに関連するウィンドウを備え得る。第2のレンダリングエリア206は、代替または追加として、背景データ、(第1のレンダリングエリア204中のコンテンツに対する制御などの)グラフィックユーザインターフェース要素を含み得る。 【0029】 再び図1を参照すると、ホストデバイス10は、ホストデバイス10からクライアントデバイス20にDMSを通信するマルチメディアトランスポートユニット16を含む。この場合も、DMSは、(第1のレンダリングエリア204および第2のレンダリングエリア206などの)異なるレンダリングエリアに関連する2つ以上の異なるストリームを含む。クライアントデバイス20は、同様に、ホストデバイス10からDMSを受信するためのマルチメディアトランスポートユニット22を含む。ホストデバイス10からクライアントデバイス20にDMSを通信する際、通信は、DMSを形成する際に定義されるフレームレートでストリームを送り得る。すなわち、DMSは、第1のコンテンツが第1のフレームレートで送られ、第2のコンテンツが第2のフレームレートで送られ、第1のフレームレートが第2のフレームレートとは異なるように、ホストデバイス10からクライアントデバイス20に送られ得る。 【0030】 トランスポートユニット16および22は、互いにワイヤレス通信することが可能なワイヤレスユニットを備え得る。トランスポートユニット16および22は、ワイヤレス通信のために使用される任意のワイヤレス周波数を介して通信され得、短距離または長距離ワイヤレス規格、セルフォン規格、wi-fi(登録商標)、超広帯域通信、ホワイトスペース通信などを含む、そのような通信のための多種多様なワイヤレス技法または規格のいずれかを使用し得る。ホワイトスペースまたは認可テレビジョンTV帯域が通信のために使用される場合、トランスポートユニット16は、周波数が使用のために利用可能であることを保証するために、感知機能を含み得る(またはグローバルポジショニングなどの他の技法を使用し得る)。 【0031】 クライアントデバイスにおいて、ディスプレイユニット26上にDMSの異なるストリームをレンダリングするために、DMSレンダリングユニット24が呼び出され得る。以下でより詳細に説明するように、DMSレンダリングユニット24は、DMS中のコンテンツの異なるストリームに対して、異なるバッファリング技法および異なるレイテンシルールを利用し得る。たとえば、フルモーションビデオは、ビデオが途切れることなく表示されるようにするためにより多くのバッファリングを必要とし得るが、電子メールなどの他のアプリケーションに関連するストリームと比較して、フルモーションビデオをレンダリングするより前により多くのレイテンシまたは遅延(delay)を許容し得る。電子メールアプリケーションまたは他のアプリケーションは、(より遅いフレームレートを使用するので)フルモーションビデオのために必要とされるバッファリングのレベルを必要としないことがあるが、ディスプレイスクリーンへの変更におけるレイテンシまたは遅延を許容し得ない。これらまたは他の理由で、DMSリーダーユニット24は、第2のコンテンツとは別様に第1のコンテンツをバッファし得、ディスプレイユニット26による第1のコンテンツの表示のためと第2のコンテンツの表示のためとに異なるレイテンシルールを適用し得る。 【0032】 本開示によれば、ホストデバイス10のDMS生成器14は、DMS中の第1のレンダリングエリア204に関連する第1のフレームレートを動的に調整し、DMS中の第2のレンダリングエリア206に関連する第2のフレームレートを動的に調整し得る。第1のフレームレートと第2のフレームレートの一方または両方へのこれらの動的調整は、第1のコンテンツと第2のコンテンツとに基づき得る。以下でより詳細に説明するように、DMS生成器14は、アプリケーションから第1のコンテンツをインターセプト(intercept)するが、ホストデバイス10中のディスプレイバッファから第2のコンテンツを単にキャプチャし得る。そうする際に、DMS生成器14はまた、ディスプレイバッファから第2のコンテンツをキャプチャすることに関連するキャプチャレートを制御し得る(動的に増加または低減し得る)。DMS生成器14は、DMS中のストリームのうちの1つまたは複数を符号化するための符号器を随意に含み得、その場合には、DMSレンダリングユニット24は、相互復号器を含むことになる。 【0033】 上述のように、第1のレンダリングエリア204および第2のレンダリングエリア206は、(重なる領域とも呼ばれる)重なるエリア205を含み得る。DMSのデータ整理と復号の簡略化とを可能にするために、DMS生成器14は、いくつかの例では、第1のコンテンツまたは第2のコンテンツのどちらが重なるエリア中で上にあるかを識別する情報(たとえば、シンタックス情報)をDMS中に生成し得る。このシンタックス情報は、DMSレンダリングユニット24が、第1のコンテンツまたは第2のコンテンツのどちらが重なるエリア205中で上にあるかを確認することを可能にすることができるz順序付け情報(z-ordering information)または座標を備え得る。この場合、DMS14は、重なるエリア205中で第1のコンテンツまたは第2のコンテンツのいずれかのデータを低減するかまたはなくし得、低減されるかまたはなくされるデータは、重なるエリア中で他のデータの下にある。 【0034】 場合によっては、DMS生成器14は、たとえば、特定のアプリケーションからコンテンツをインターセプトすることが不可能であるか実際的でない場合、ディスプレイバッファから直接、第1のコンテンツおよび第2のコンテンツを含むSCSを生成する能力を含むことがある。この場合、DMS生成器は、アプリケーションから第1のコンテンツまたは第2のコンテンツをインターセプトすることが不可能であると判断し得、アプリケーションから第1のコンテンツまたは第2のコンテンツをインターセプトすることが不可能であると判断することに応答して、ホストデバイス10においてディスプレイバッファから直接、第1のコンテンツおよび第2のコンテンツを含むSCSを生成し得る。DMSを定義するためにユーザ入力も使用され得る。たとえば、DMS生成器14は、ユーザ入力に応答して第1のコンテンツまたは第2のコンテンツのうちの1つのみを含むようにDMSを調整するように構成され得る。 【0035】 さらに、DMS生成器14は、ホストデバイス10とクライアントデバイス20との間で利用可能な帯域幅を判断し得る。利用可能な帯域幅は、所与の時間に利用可能であるデータ転送レートを定義し得る。DMS生成器14は、いくつかの例では、利用可能な帯域幅に基づいて第1のフレームレートと第2のフレームレートの一方または両方を調整し得る。追加または代替として、DMS生成器14は、利用可能な帯域幅に基づいて第1のコンテンツと第2のコンテンツの一方または両方を動的に符号化し得る。DMS生成器14はまた、通信されているコンテンツのタイプに基づいて第1のコンテンツおよび第2のコンテンツの一方または両方を動的に符号化し得る。多くの場合、本明細書で説明するように、ディスプレイバッファからキャプチャされるコンテンツを符号化することが望ましいことがある。アプリケーションからインターセプトされるコンテンツは、すでに符号化されていることがある。場合によっては、アプリケーションからインターセプトされるコンテンツをトランスコードすること(すなわち、復号し、次いで、異なる符号化フォーマットで再符号化すること)ができる。 【0036】 概して、「シグナルコンポーズドストリーム」(SCS)という句は、本明細書では、ディスプレイバッファ全体が圧縮形態または非圧縮形態のいずれかでエンドツーエンドに(たとえば、ホストデバイス10からクライアントデバイス20に)送信される技法を指すために使用されている。SCSの場合、部分的な表示更新も、圧縮形態または非圧縮形態でエンドツーエンドに送信され得る。対照的に、「デコンポーズドマルチストリーム」(DMS)という句は、ディスプレイバッファからのディスプレイコンテンツの残部に加えて、アプリケーション(たとえば、メディアプレーヤアプリケーション)から直接のプリ圧縮コンテンツ(たとえば、ビデオ)の両方をパスする技法を指す。現在、DMS技法のために、「VESA Net2Display」および「USB-IF Display」を含むいくつかの標準化仕様が開発中である。SCS方法をサポートする仕様は、VESA Net2Display、USB-IF Display、および他の商用VNCシステムを含み得る。」 ウ 段落【0046】 「【0046】 ワイヤレスタッチスクリーン実装形態の場合、クライアントデバイス20におけるタッチイベントのキャプチャは、すべての受信されたDMSストリームのレンダリングロケーションにわたる、ディスプレイスクリーン全体上で達成され得る。クライアントデバイス20によって、全ディスプレイエリアと一致する追加の仮想ウィンドウ面がレンダリングされ得る。この仮想ウィンドウ面は、受信され、レンダリングされる実際のディスプレイストリームのいずれかを隠さないように、ユーザに透過的なウィンドウであり得る。(標準演算システムインターフェースを使用する)タッチスクリーンキャプチャは、クライアントデバイス20においてこの仮想面上で実行され得、ホストデバイスディスプレイスクリーンサイズに適宜にスケーリングされ得る。」 エ 段落【0063】 「【0063】 図6は、DMSを生成するための技法を示す別の流れ図である。他のデバイスによって同様の技法が適用され得るが、図6についても、ホストデバイス300の観点から説明する。図6に示すように、ホストデバイス300のDMS生成器308は、メディアプレーヤユニット312からの第1のコンテンツにアクセスし(601)、ディスプレイバッファ306からの第2のコンテンツにアクセスする(602)。DMS生成器308は、異なるフレームレートで第1のコンテンツと第2のコンテンツとを含むDMSを生成する(603)。さらに、DMS生成器308は、クライアントデバイスに、どのように第1のコンテンツと第2のコンテンツとを再構成するのかを命令するシンタックス情報(たとえば、メタデータ)を備え得る、DMS情報を生成する(604)。たとえば、第1のコンテンツと第2のコンテンツとの間で重なり合う場合、DMS情報は、重なるエリアのz座標情報を備え得る。この場合、重なるエリア中で他のストリームの下にある、DMS内のストリームは、何かが他のストリームによってオーバーレイされるそのエリア中のデータの量を低減するために、ヌルデータまたはブラックデータとして符号化され得る。次いで、ホストデバイス300は、マルチメディアトランスポートユニット310およびトランスポートインターフェース316などを介して、クライアントデバイスにDMSおよびDMS情報を通信する(605)。」 オ 段落【0068】-【0069】 「【0068】 図10は、クライアントデバイスにおいてDMSを処理するための技法を示す流れ図である。他のデバイスによって同様の技法が適用され得るが、図10についても、クライアントデバイス400の観点から説明する。図10に示すように、DMSレンダリングユニット406は、DMSを受信し(1001)、また、DMSに関連するメタデータあるいは他のサイドまたはシンタックス情報を備え得るDMS情報を受信する(1002)。 【0069】 DMSおよびDMS情報は、ホストデバイスから通信され、トランスポートインターフェース412およびマルチメディアトランスポートユニット408を介してクライアントデバイス400において受信され得る。マルチメディアトランスポートユニット408は、DMSレンダリングユニット406にDMSおよびDMS情報を転送する。DMSレンダリングユニット406は、DMSに基づいて第1のコンテンツを生成し(1003)、DMSに基づいて第2のコンテンツを生成する(1004)。DMSレンダリングユニット406は、クライアントディスプレイシステム404に、異なるフレームレートでDMS情報に基づいて第1のコンテンツと第2のコンテンツとを表示させる(1005)。異なるフレームレートはDMS自体によって定義され得る。DMS情報は、第1のストリームと第2のストリームの対話を定義する情報を備え得る。たとえば、DMS情報は、DMSストリーム内の第1のコンテンツと第2のコンテンツのどちらが他方のコンテンツの上にオーバーレイされるかについて定義するZ座標(すなわち、奥行き)情報を備え得る。Z座標(すなわち、奥行き)情報は、あらゆる重なるエリアについて、どちらのコンテンツが上(on top)にあり、どちらのコンテンツが下(underneath)にあるかを定義するために、異なるストリームの相対奥行きを定義し得る。重なるエリア中で他のコンテンツの下にあるコンテンツは、スループットを改善するために、DMSストリーム中でヌル化(nulled)または黒化され得る。データは、他のデータの下にあるので、いずれにせよ視界から遮断されるので、DMSストリーム中のそのようなデータをヌル化または黒化することはクライアントデバイス400におけるユーザによって観測されないことになる。」 したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ビデオディスプレイシステムのホストデバイスによるデコンポーズドマルチストリーム(DMS)の生成と、ビデオディスプレイシステムのクライアントデバイスによるDMSの表示とを改善することができる技法であって、 DMSは、可視エリアの別個の領域、または場合によっては可視エリア内の重なる領域に対応するコンテンツの2つ以上の異なるストリームを含む、ディスプレイのためのデータのストリームであり、 ホストデバイスは、コンテンツの2つ以上の異なるストリームを備えるDMSを生成し得、クライアントデバイスは、ホストデバイスからDMSを受信し、DMS中に含まれるコンテンツの2つ以上の異なるビデオストリームを含むビデオをディスプレイスクリーン上にレンダリングすることができ、 ホストデバイスは、ラップトップまたはスマートフォンを備え、クライアントデバイスは、ホストデバイス上にレンダリングされるコンテンツと同じコンテンツをレンダリングするために使用される別個の外部ディスプレイデバイスを備え、 ホストデバイスは、デコンポーズドマルチストリーム(DMS)を生成するDMS生成器を含み、DMSは、ディスプレイウィンドウの第1のエリア中の第1のコンテンツと、ディスプレイウィンドウの第2のエリア中の第2のコンテンツとを定義し、第1のコンテンツはDMS中の第1のフレームレートを定義し、第2のディスプレイコンテンツはDMS中の第2のフレームレートを定義し、第1のフレームレートは第2のフレームレートとは異なり、 可視エリア202は、第1のレンダリングエリア204と第2のレンダリングエリア206とを含み、第1のレンダリングエリア204と第2のレンダリングエリア206とは、両方とも重なるエリア205を含み、DMSは、第1のレンダリングエリア204および第2のレンダリングエリア206のコンテンツを通信するための2つの別個のストリームを含み、 第1のレンダリングエリア204は、フルモーションビデオシーケンスを備え、DMSで30フレーム毎秒などで符号化され、第2のレンダリングエリア206は、電子メールアプリケーションまたはワードプロセシングアプリケーションなどのより静的なアプリケーションに関連するウィンドウを備え、代替または追加として、背景データ、第1のレンダリングエリア204中のコンテンツに対する制御などのグラフィックユーザインターフェース要素を含み、 ホストデバイスは、ホストデバイスからクライアントデバイスにDMSを通信するマルチメディアトランスポートユニット16を含み、 クライアントデバイスは、同様に、ホストデバイス10からDMSを受信するためのマルチメディアトランスポートユニット22を含み、 トランスポートユニット16および22は、互いにワイヤレス通信することが可能なワイヤレスユニットを備え、トランスポートユニット16および22は、ワイヤレス通信のために使用される任意のワイヤレス周波数を介して通信され得、短距離または長距離ワイヤレス規格、セルフォン規格、wi-fi(登録商標)、超広帯域通信、ホワイトスペース通信などを含む、そのような通信のための多種多様なワイヤレス技法または規格のいずれかを使用し、 クライアントデバイスにおいて、ディスプレイユニット26上にDMSの異なるストリームをレンダリングするために、DMSレンダリングユニット24が呼び出され、 ホストデバイスのDMS生成器は、DMS中の第1のレンダリングエリア204に関連する第1のフレームレートを動的に調整し、DMS中の第2のレンダリングエリア206に関連する第2のフレームレートを動的に調整し、 DMS生成器は、DMS中のストリームのうちの1つまたは複数を符号化するための符号器を随意に含み、その場合には、DMSレンダリングユニット24は、相互復号器を含むことになり、 第1のレンダリングエリア204および第2のレンダリングエリア206は、(重なる領域とも呼ばれる)重なるエリア205を含み、DMSのデータ整理と復号の簡略化とを可能にするために、DMS生成器は、第1のコンテンツまたは第2のコンテンツのどちらが重なるエリア中で上にあるかを識別する情報(たとえば、シンタックス情報)をDMS中に生成し、 DMSという句は、ディスプレイバッファからのディスプレイコンテンツの残部に加えて、アプリケーション(たとえば、メディアプレーヤアプリケーション)から直接のプリ圧縮コンテンツ(たとえば、ビデオ)の両方をパスする技法を指し、 ワイヤレスタッチスクリーン実装形態の場合、クライアントデバイスにおけるタッチイベントのキャプチャは、すべての受信されたDMSストリームのレンダリングロケーションにわたる、ディスプレイスクリーン全体上で達成され、クライアントデバイスによって、全ディスプレイエリアと一致する追加の仮想ウィンドウ面がレンダリングされ、この仮想ウィンドウ面は、受信され、レンダリングされる実際のディスプレイストリームのいずれかを隠さないように、ユーザに透過的なウィンドウであり、タッチスクリーンキャプチャは、クライアントデバイスにおいてこの仮想面上で実行され、ホストデバイスディスプレイスクリーンサイズに適宜にスケーリングされ、 DMSを生成するために、 ホストデバイスのDMS生成器は、メディアプレーヤユニット312からの第1のコンテンツにアクセスし(601)、ディスプレイバッファ306からの第2のコンテンツにアクセスし(602)、DMS生成器は、異なるフレームレートで第1のコンテンツと第2のコンテンツとを含むDMSを生成し(603)、さらに、DMS生成器は、クライアントデバイスに、どのように第1のコンテンツと第2のコンテンツとを再構成するのかを命令するシンタックス情報(たとえば、メタデータ)を備えるDMS情報を生成し(604)、 DMSレンダリングユニット406は、DMSを受信し(1001)、また、DMSに関連するメタデータあるいは他のサイドまたはシンタックス情報を備えるDMS情報を受信し(1002)、 クライアントデバイスにおいてDMSを処理するために、 DMSおよびDMS情報は、ホストデバイスから通信され、トランスポートインターフェース412およびマルチメディアトランスポートユニット408を介してクライアントデバイスにおいて受信され、マルチメディアトランスポートユニット408は、DMSレンダリングユニット406にDMSおよびDMS情報を転送し、DMSレンダリングユニット406は、DMSに基づいて第1のコンテンツを生成し(1003)、DMSに基づいて第2のコンテンツを生成する(1004)、DMSレンダリングユニット406は、クライアントディスプレイシステム404に、異なるフレームレートでDMS情報に基づいて第1のコンテンツと第2のコンテンツとを表示させ(1005)、異なるフレームレートはDMS自体によって定義され、DMS情報は、DMSストリーム内の第1のコンテンツと第2のコンテンツのどちらが他方のコンテンツの上にオーバーレイされるかについて定義するZ座標(すなわち、奥行き)情報を備え、重なるエリア中で他のコンテンツの下にあるコンテンツは、スループットを改善するために、DMSストリーム中でヌル化(nulled)または黒化されるが、他のデータの下にあるので、クライアントデバイスにおけるユーザによって観測されない、 方法。」 2.引用文献2について 平成30年7月25日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2の段落【0047】の記載からみて、当該引用文献2には、ソースデバイスとシンクデバイスが、Wi-FiダイレクトやWi-Fiディスプレイ規格にしたがって直接通信を行うことが記載されていると認められる。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明は、「ビデオディスプレイシステムのホストデバイスによるデコンポーズドマルチストリーム(DMS)の生成と、ビデオディスプレイシステムのクライアントデバイスによるDMSの表示とを改善することができる技法」であって、「DMSは、可視エリアの別個の領域、または場合によっては可視エリア内の重なる領域に対応するコンテンツの2つ以上の異なるストリームを含む、ディスプレイのためのデータのストリームであ」り、「ホストデバイスは、ホストデバイスからクライアントデバイスにDMSを通信するマルチメディアトランスポートユニット16を含み、クライアントデバイスは、同様に、ホストデバイスからDMSを受信するためのマルチメディアトランスポートユニット22を含み、トランスポートユニット16および22は、互いにワイヤレス通信することが可能なワイヤレスユニットを備え、トランスポートユニット16および22は、ワイヤレス通信のために使用される任意のワイヤレス周波数を介して通信され、短距離または長距離ワイヤレス規格、セルフォン規格、wi-fi(登録商標)、超広帯域通信、ホワイトスペース通信などを含む、そのような通信のための多種多様なワイヤレス技法または規格のいずれかを使用し得、クライアントデバイスにおいて、ディスプレイユニット26上にDMSの異なるストリームをレンダリングする」から、ホストデバイスからコンテンツのDMSをワイヤレス通信により送信し、クライアントデバイスでは受信したDMSの表示を行うものといえる。 そうすると、引用発明における、「コンテンツのDMS」を「送信」する「ホストデバイス」、及び、「受信したDMSの表示を行う」「クライアントデバイス」は、それぞれ本願発明1の「ソースデバイス」、「シンクデバイス」に相当する。 イ 引用発明では、「ホストデバイスは、デコンポーズドマルチストリーム(DMS)を生成するDMS生成器を含み、DMSは、ディスプレイウィンドウの第1のエリア中の第1のコンテンツと、ディスプレイウィンドウの第2のエリア中の第2のコンテンツとを定義し」、「DMS生成器は、クライアントデバイスに、どのように第1のコンテンツと第2のコンテンツとを再構成するのかを命令するシンタックス情報(たとえば、メタデータ)を備えるDMS情報を生成し(604)」ており、この「どのように第1のコンテンツと第2のコンテンツとを再構成するのかを命令するシンタックス情報」は、本願発明1の「コンテンツがリモートに位置付けられたシンクデバイス上に表示されるための1つまたは複数のレンダリング命令」に相当する。 また、引用発明において、第1のコンテンツまたは第2のコンテンツのどちらが重なるエリア中で上にあるかが識別されることは明らかであり、このことは、本願発明1の「レンダリング命令を識別すること」に相当する。 そうすると、引用発明のホストデバイスでは、第1のコンテンツまたは第2のコンテンツのどちらが重なるエリア中で上にあるかが識別され、クライアントデバイスにおいて、どのようにコンテンツを再構成するのかを命令するシンタックス情報を備えるDMS情報を生成するといえ、このことは、本願発明1の「ソースデバイスにおいて、コンテンツがリモートに位置付けられたシンクデバイス上に表示されるための1つまたは複数のレンダリング命令を識別すること」に相当する。 ウ 引用発明では、「DMSおよびDMS情報は、ホストデバイスから通信され」、「クライアントデバイスにおいて受信され」、「DMSレンダリングユニット406は、クライアントディスプレイシステム404に、異なるフレームレートでDMS情報に基づいて第1のコンテンツと第2のコンテンツとを表示させ(1005)」、上記アで述べたとおり、ホストデバイスからコンテンツのDMSをワイヤレス通信により送信しているから、本願発明1の「前記レンダリング命令に少なくとも部分的に基づいて、前記コンテンツの少なくとも一部の表示をレンダリングするための前記シンクデバイスによる実行のためにワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスに前記1つまたは複数のレンダリング命令を送信すること」とは、「前記レンダリング命令に少なくとも部分的に基づいて、前記コンテンツの少なくとも一部の表示をレンダリングするための前記シンクデバイスによる実行のためにワイヤレス通信を介して前記シンクデバイスに前記1つまたは複数のレンダリング命令を送信すること」で共通するといえる。 したがって、本願発明1と引用発明とは、 「ワイヤレスネットワークにおけるシンクデバイスによって表示されるべきコンテンツのソースデバイスによって実施される方法であって、 ソースデバイスにおいて、コンテンツがリモートに位置付けられたシンクデバイス上に表示されるための1つまたは複数のレンダリング命令を識別することと、 前記レンダリング命令に少なくとも部分的に基づいて、前記コンテンツの少なくとも一部の表示をレンダリングするための前記シンクデバイスによる実行のためにワイヤレス通信を介して前記シンクデバイスに前記1つまたは複数のレンダリング命令を送信することと、 を備える、方法。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 一致点の「ワイヤレス通信」に関して、本願発明1では、「ワイヤレス通信」が「ワイヤレスピアツーピア接続」であるのに対して、引用発明では、「ワイヤレスピアツーピア接続」であることは特定されていない点。 (相違点2) 本願発明1は、「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信すること、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」のに対し、引用発明はそのような特定はされていない点。 (相違点3) 本願発明1は、「前記1つまたは複数のレンダリング命令を前記識別することは、前記受信されたデータに少なくとも部分的に基づいて、更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令を識別することをさらに備え、前記更新されたまたは新しい1つまたは複数のレンダリング命令は、前記シンクデバイスによる更なるレンダリングのために、前記シンクデバイスに送信される」のに対し、引用発明はそのような特定はされていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。相違点2に係る本願発明1の、「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信する」ことについて、引用発明は、クライアントデバイスにおいてタッチスクリーンキャプチャが実行されること、タッチスクリーンキャプチャがホストデバイスディスプレイスクリーンサイズに適宜にスケーリングされることが特定されているのにとどまり、タッチスクリーンキャプチャをどこでどのように用いるかについては一切特定されておらず、引用発明の内容を総合的に判断しても、クライアントデバイスからホストデバイスにおいてデータを受信することは記載ないし示唆はされていない。また、そのようにすることは、上記引用文献2にも記載されておらず、単なる設計的事項であるともいえない。 ましてや、引用発明において、クライアントデバイスにおけるタッチスクリーンキャプチャをホストデバイスで利用できるようにする目的でクライアントデバイスからホストデバイスにおいてデータを受信することを想定したとしても、さらに該データを、本願発明1の、「前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」ものとすることまでが容易に想到し得るといえる理由は見当たらない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-8について 本願発明2-8も、本願発明1と同様に、「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信すること、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」という構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明9-16について 本願発明9-16も、本願発明1の相違点2及び3に係る構成に対応する、「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信するための手段、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」という構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明17-24について 本願発明17-24も、本願発明1の相違点2及び3に係る構成に対応する、「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信すること、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」という構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5.本願発明25,26について 本願発明25,26も、本願発明1の相違点2及び3に係る構成に対応する、「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記ソースデバイスにデータを送信すること、ここにおいて、前記送信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」という構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定についての判断 平成30年10月31日付けの補正により、本願発明1-8は「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信すること、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」という技術的事項を有するものとなり、本願発明9-16は「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信するための手段、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」という技術的事項を有するものとなり、本願発明17-24は「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記シンクデバイスから前記ソースデバイスにおいてデータを受信すること、ここにおいて、前記受信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」という技術的事項を有するものとなり、本願発明25,26は「前記ワイヤレスピアツーピア接続を介して前記ソースデバイスにデータを送信すること、ここにおいて、前記送信されたデータは、前記ソースデバイス上でアプリケーションを起動するための命令と前記ソースデバイス上で実行しているアプリケーションを制御するための命令とのうちの少なくとも1つを備える」という技術的事項を有するものとなった。 これらの技術的事項は、原査定における引用文献A,Bには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-26は、当業者であっても、原査定における引用文献A,Bに基づいて、容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-11-28 |
出願番号 | 特願2016-553638(P2016-553638) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小林 義晴 |
特許庁審判長 |
千葉 輝久 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 菊地 陽一 |
発明の名称 | ワイヤレスドッキングのためのワイヤレス帯域幅の効率的な使用のためのリモートレンダリング |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 福原 淑弘 |