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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R |
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管理番号 | 1346553 |
審判番号 | 不服2017-17800 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-30 |
確定日 | 2018-12-18 |
事件の表示 | 特願2014-56769号「頭部保護エアバッグ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月8日出願公開、特開2015-178319号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月19日の出願であって、平成29年3月23日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1-3に係る発明は以下の引用文献1-2に基いて、請求項4に係る発明は以下の引用文献1-3に基いて、請求項5-6に係る発明は以下の引用文献1-4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献一覧 1.特開2008-279944号公報 2.特開2005-104170号公報 3.特開2002-53005号公報 4.特開2002-362290号公報 第3 本願発明 本願の請求項1-6に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年11月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 膨張用ガスの流入時、折り畳まれて収納された車両の窓の車内側の上縁側から展開膨張するエアバッグと、 展開膨張時の前記エアバッグの展開方向を案内する断面略L字形の本体案内部を有した案内部材と、 を備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、 前記案内部材が、前記本体案内部から突設されて、車体側の取付部位に締結される締結部材を挿通させる取付孔を有して、前記取付部位に締結される前記締結部材により、前記取付部位に取り付けられる取付片部、を備え、 該取付片部が、前記本体案内部から突設される首部と、該首部の先端における前記取付孔を備えた先端部と、を備え、 前記エアバッグが、展開膨張完了時の上縁側に、前記案内部材に連結される連結片を備え、 該連結片が、前記取付片部を貫通させる貫通孔を備えて、 前記エアバッグの展開膨張時に、前記連結片が、前記貫通孔に貫通される前記取付片部の前記首部に係止され、さらに、前記連結片の前記貫通孔周縁が、前記本体案内部における前記首部の元部側であって前記首部より幅広とした前記首部の周縁部位に、係止される構成として、 前記案内部材の前記取付片部が、前記エアバッグの前記連結片を介在させることなく、前記締結部材により、車体側の前記取付部位に取り付けられる構成としていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。 【請求項2】 前記案内部材が、前後両側に、前記取付片部を配設させ、 前記エアバッグが、二つの前記取付片部に対してそれぞれ係止させる二つの前記連結片を備えて、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。 【請求項3】 前後両側の一方の前記取付片部が、前記本体案内部の前後方向の端部から、前記本体案内部から離れるように突設される端側取付片部として、構成され、 該端側取付片部に係止される前記連結片が、端側連結片として、前記エアバッグにおける膨張用ガスを流入させて膨らむ膨張本体部から、前後方向に離れるように突設されていることを特徴とする請求項2に記載の頭部保護エアバッグ装置。 【請求項4】 折り畳まれた前記エアバッグが、破断可能として貼着される折り崩れ防止用のテープ材により、複数個所で巻き付けられるとともに、 前記取付片部に係止された前記連結片における前記貫通孔の周縁が、前記テープ材により、前記案内部材側に止められて、 前記エアバッグと前記案内部材との組付体が、車両に搭載される構成としていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグ装置。 【請求項5】 折り畳まれた前記エアバッグが、前記エアバッグの展開膨張方向に開口して略前後方向に沿う半割り筒状の合成樹脂製のケースに収納された状態で、前記案内部材と組み付けられて、車両に搭載される構成とし、 前記ケースが、前記取付片部に係止される前記連結片を挿通させる挿通孔を備え、 前記挿通孔を挿通し、かつ、前記取付片部に係止される前記連結片における前記貫通孔の周縁が、前記挿通孔近傍の前記案内部材の車外側の面に、折り曲げられて、前記テープ材により、前記案内部材側に止められていることを特徴とする請求項4に記載の頭部保護エアバッグ装置。 【請求項6】 車体側に固定されて、前記エアバッグに膨張用ガスを供給するガス供給部、を備えて構成され、 前記エアバッグが、 膨張用ガスを流入させる流入口部を備えるとともに、 車体側に固定された前記ガス供給部に接続される前記流入口部と、車体側に取り付けられた前記案内部材の前記取付片部に係止される前記連結片と、によって、展開膨張時の車体側に対する移動を規制されるように、保持される構成としていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグ装置。」 第4 引用文献の記載事項等 1.引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 (1a)「【0004】 本発明は、上記事実を考慮して、エアバッグ袋体の展開時におけるジャンプ台に対する相対回転を抑制して、該エアバッグ袋体の展開方向を安定させることを目的とする。 ・・・ 【0017】 以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係る頭部保護エアバッグ装置10は、エアバッグ袋体12と、ジャンプ台14と、回転抑制手段の一例たる張出し部材16とを有して構成されている。 【0018】 エアバッグ袋体12は、例えばAピラー18、Bピラー20及びCピラー22間にわたり、ルーフサイドレール24に沿って折り畳み状態で配設され、例えば後端部にはインフレータ30が接続されている。具体的には、エアバッグ袋体12の上縁には、取付け片26が、任意の間隔で形成されている。これらの取付け片26がルーフサイドレール24のルーフサイドレールインナ28にボルト36及びウエルドナット38(図2参照)で締結固定されることにより、エアバッグ袋体12がボディー側に固定されている。なお、図2におけるボルト36及びウエルドナット38は、ジャンプ台14をルーフサイドレールインナ28に締結固定するために用いられているが、ジャンプ台14以外の部位においては、ボルト36及びウエルドナット38は、取付け片26をルーフサイドレールインナ28に締結固定するために用いられている。 【0019】 図2において、エアバッグ袋体12は、車外側に向かってロール折りで折り畳まれた本体部12Aと、蛇腹折りで折り畳まれ展開状態において本体部12Aの車両上方に位置する折返し部12Bとを有し、図1に示されるように、インフレータ30からの膨張用のガスの供給を受けてカーテン状に展開可能に構成されている。エアバッグ袋体12の折返し部12Bは、上方縁部12Cから車幅方向内側に延び第1折れ部12Dで車幅方向外側に折り返されて断面略U字状に形成され、続いて第2折れ部12Eで再び車幅方向内側に折り返されて本体部12Aに連なっている。折返し部12Bのうち例えば第1折れ部12Dより本体部12A側の部分と、該本体部12Aとは、通常時は図示しない被覆材により覆われている。即ち、上方縁部12Cから第1折れ部12Dまでの部位が、被覆材の外部に露出した状態となっており、該上方縁部12Cが張出し部材16の上面16Aに固定されている。 ・・・ 【0023】 図2において、ジャンプ台14は、例えばBピラー20(図1参照)の車室内側部に配設されるピラーガーニッシュ40の上端40Aの車両上方に配設され、エアバッグ袋体12の展開時に該エアバッグ袋体12の展開方向を車室内側方向に規制可能なガイド壁14Aを有している。図2に示されるように、ガイド壁14Aは、例えばピラーガーニッシュ40の上端40Aよりも車内側でルーフヘッドライニング42の裏面に近接する位置まで延設されている。 【0024】 またジャンプ台14には、ルーフサイドレール24のルーフサイドレールインナ28に沿う形状の縦壁部14Bが設けられており、図3に示されるように、該縦壁部14Bにおける例えば車両前側端部及び車両後側端部には、車両上方に突出した取付け部14Cが夫々形成されており、該取付け部14Cには、夫々貫通孔14Dが形成されている。ジャンプ台14をルーフサイドレールインナ28に締結固定するためのボルト36は、該貫通孔14Dに差し込まれるようになっている(図2参照)。 ・・・ 【0027】 具体的には、張出し部材16は、例えば合成樹脂の成形品であり、ジャンプ台14のガイド壁14Aに嵌め込まれた嵌込み部16Bから、エアバッグ袋体12を挟んでジャンプ台14のガイド壁14Aと対向した状態で車室内側方向に張り出している。また張出し部材16は、エアバッグ袋体12の中心より車室内側方向において、ロール折りされた本体部12Aを有するエアバッグ袋体12の断面形状に対応して、車室内側方向に張り出すに従って車両下方へ湾曲して終端している。張出し部材16の車幅方向内側端部と、ジャンプ台14のガイド壁14Aとの間には、例えば折畳み時のエアバッグ袋体12の直径よりも大きな間隙44が確保されている。これは、張出し部材16がエアバッグ袋体12の車室内側への展開を妨げないようにするためである。 ・・・ 【0029】 張出し部材16は、エアバッグ袋体12の折返し部12Bの上方縁部12Cが、例えば縫製により固定されると共に、該折返し部12B内に挟み込まれている。具体的には、張出し部材16の車幅方向内側の端縁16Dは、例えば第1折れ部12D付近まで差し込まれており、逆に言えば、該第1折れ部12Dは、エアバッグ袋体12を張出し部材16の端縁16D付近で折り返すことで形成されている。 ・・・ 【0031】 図2に示されるように、エアバッグ袋体12は、ルーフヘッドライニング42の端末部42Aによって覆われている。即ち、ルーフヘッドライニング42の車幅方向の端末部42Aは、一般部(図示せず)から車両下方側へ屈曲垂下されており、該ルーフヘッドライニング42の端末部42Aの外側に、長尺状に折り畳まれたエアバッグ袋体12が格納されている。またルーフヘッドライニング42及びピラーガーニッシュ40の組付後の状態では、該ルーフヘッドライニング42の端末部42Aの端縁にピラーガーニッシュ40の上端40Aが車室46側から重ねられた状態で配置されている。 ・・・ 【0036】 このとき、頭部保護エアバッグ装置10では、エアバッグ袋体12における折返し部12Bの上方縁部12Cが張出し部材16に固定されており、かつ折返し部12B内に張出し部材16が挟み込まれているので、エアバッグ袋体12の展開時に、該エアバッグ袋体12がその長手方向を中心軸としてジャンプ台14に対して相対的に回転することが抑制される。 ・・・ 【0043】 更に、図6に示されるように、ジャンプ台14の縦壁部14Bに、張出し部材16の寸法に対応した貫通孔14Gを設け、張出し部材16を該貫通孔14Gに差込み固定する構成としてもよい。この例では、張出し部材16の車幅方向外側の端縁16Jにおける例えば裏面16G側に、爪部16Hが設けられており、該爪部16Hがジャンプ台14の貫通孔14Gに差し込まれて係止されることで、張出し部材16がジャンプ台14に固定されるようになっている。このため、貫通孔14Gの長さ寸法は、張出し部材16の車幅方向外側の端縁16Jの車両前後方向寸法よりもわずかに大きく設定されている。また貫通孔14Gの高さ寸法は、爪部16Hの位置における張出し部材16の厚さよりもわずかに小さく設定されている。即ち、張出し部材16をジャンプ台14に固定する際には、該張出し部材16の爪部16Hを該ジャンプ台14の貫通孔14Gに差し込んで係合させるだけで、車両前後方向における位置決めを容易に行うことができる。」 (1b)引用文献1には以下の図が示されている。 (2)引用文献1に記載された発明 (2-1)摘記事項(1a)及び摘記事項(1b)の図から以下の事項が認定できる。 ア.頭部保護エアバッグ装置10は、エアバッグ袋体12と、ジャンプ台14と、回転抑制手段の一例たる張出し部材16とを有すること(段落【0017】、図1-2,6)。 イ.エアバッグ袋体12は、ルーフサイドレール24に沿って折り畳まれて格納され、膨張用のガスの供給を受けて展開可能であること(段落【0018】,【0019】,【0031】、図1-2)。 ウ.ジャンプ台14は、断面略L字形のガイド壁14Aと縦壁部14Bとを備え、ガイド壁14Aによりエアバッグ袋体12の展開時に該エアバッグ袋体12の展開方向を車室内側方向に規制可能とすること(段落【0023】-【0024】、図2,6)。 エ.ジャンプ台14は、縦壁部14Bに車両上方に突出した取付け部14Cを設け、前記取付け部14Cに貫通孔14Dを形成し、前記貫通孔14Dに差し込んだボルト36でルーフサイドレールインナ28に締結固定されること(段落【0018】,【0024】、図2,6)。 オ.張出し部材16は、合成樹脂の成形品であり、エアバッグ袋体12の折返し部12Bの上方縁部12Cに固定されると共に、該折返し部12B内に挟み込まれているので、エアバッグ袋体12の展開時に、ジャンプ台14に対して該エアバッグ袋体12が相対的に回転することを抑制すること(段落【0027】,【0029】,【0036】、図2)。 カ.張出し部材16は、張出し部材16の爪部をジャンプ台14の縦壁部14Bに設けられた貫通孔14Gに差し込んで係止することで、ジャンプ台14に固定されること(段落【0043】、図6)。 (2-2)したがって、これらを整理すると、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「頭部保護エアバッグ装置10は、エアバッグ袋体12と、ジャンプ台14と、回転抑制手段の一例たる張出し部材16とを有し、 前記エアバッグ袋体12は、ルーフサイドレール24に沿って折り畳まれて格納され、膨張用のガスの供給を受けて展開可能であり、 前記ジャンプ台14は、断面略L字形のガイド壁14Aと縦壁部14Bとを備え、前記ガイド壁14Aにより前記エアバッグ袋体12の展開時に前記エアバッグ袋体12の展開方向を車室内側方向に規制可能とし、 前記ジャンプ台14は、前記縦壁部14Bに車両上方に突出した取付け部14Cを設け、前記取付け部14Cに貫通孔14Dを形成し、前記貫通孔14Dに差し込んだボルト36でルーフサイドレールインナ28に締結固定され、 前記張出し部材16は、合成樹脂の成形品であり、前記エアバッグ袋体12の折返し部12Bの上方縁部12Cに固定されると共に、前記折返し部12B内に挟み込まれているので、前記エアバッグ袋体12の展開時に、前記ジャンプ台14に対して前記エアバッグ袋体12が相対的に回転することを抑制するものであって、前記張出し部材16の爪部を前記ジャンプ台14の前記縦壁部14Bに設けられた貫通孔14Gに差し込んで係止することで、前記ジャンプ台14に固定される、 頭部保護エアバッグ装置10。」 2.引用文献2について (1)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の記載がある。 (2a)「【0017】 本発明は、上記従来の課題を解消すべくなされたものであり、その具体的な目的は、構造が簡単であり、車体の所定位置に嵩張らずにコンパクトに収容することができるとともに、車体への装着が容易であり、膨張展開するときに乗員を安定して的確に緩衝しながら支持できる膨張展開形態を得ることを可能にしたサイドエアバッグ装置を提供することにある。 ・・・ 【0027】 エアバッグの収容固定時においては、前記ベース部材のエアバッグ設置空間内にエアバッグを嵩張らずコンパクトな折り畳み形態をもって確実に収容固定することができるようになる。折畳み波形や折畳み高さが一定化し、前記車体窓枠に容易に且つ正確に取り付けることができるようになる。乗員の側方空間が小さな部位であってコンパクトなエアバッグを設置する場合でも、室内の前後及び上下の広い範囲にわたってエアバッグの膨出面を充分に得ることができる。 【0028】 エアバッグを収納固定するための格別な収納固定手段を設けることなく、前記ベース部材の収容部内にエアバッグを収容固定することができるため、サイドエアバッグ装置を小型化及び薄型化できるようになり、前記カバー部材の車室内側への突出量を小さく抑えることができる。狭小な居住空間を有する乗員の側方空間にサイドエアバッグ装置を装着する場合でも、限られた乗員の側方空間を有効に使うことができるようになり、経済性にも優れたものとなる。 ・・・ 【0031】 以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。 図1は本発明の代表的な実施形態であるサイドエアバッグ装置におけるエアバッグのフル膨張時の展開状態を模式的に示す車室内側からみた正面図、図2は同エアバッグの膨張前の状態を模式的に示す正面図である。 【0032】 これらの図において、符号1は車体前後方向に長いエアバッグを示している。図示例によるエアバッグ1は、膨張用ガスを発生するインフレータ2に接続されるガス導入口3を有する筒状の長縁部4と、前方座席側に膨張展開する膨張部5と、後部座席側に膨張展開する膨張部6と、各膨張部5,6間の長手方向に連続して形成される非膨張部7と、前記長縁部4の上端縁に設けられた都合6個の車体取付用の取付片部8,…,8とを有している。 ・・・ 【0039】 図3は本発明の代表的な実施形態であるサイドエアバッグ装置10を模式的に示している。同図において、本実施形態によるサイドエアバッグ装置10は、ルーフサイドレール部R及びフロントピラー部PFを構成する車体窓枠の長手方向に沿って取り付けられるベース部材20と、同ベース部材20に取り付けられるカバー部材であるルーフサイドトリム30と、同ルーフサイドトリム30の裏面に固着一体化される肉薄のプレート部材40とを備えている。 ・・・ 【0048】 前記ベース部材20の取付部22は、図4及び図5に示すように、前記ベース部材20の裏面から一体に突出成形されている。図示例では、前記取付部22は、上下に平行に突設された一対の略横L字状のクリップ取付座23と、同クリップ取付座23の前面中央部から前方へ突出するクリップ取付部24と、同クリップ取付部24に装着されるクリップ25とを有している。 【0049】 このクリップ25は、図4に示すように、金属バネ板材を略Ω状に曲成され、その左右脚部の中央部分に凹字状の切込みを入れて形成されている。その切り込み部分をく字状に形成するとともに、左右外方に屈曲させることにより係着片を構成している。このクリップ25は、その左右脚部を前記クリップ取付座23とクリップ取付部24とに弾着して取り付けられている。クリップ25の係着片は、ルーフサイドレール部Rに形成された角穴に嵌着固定されている。なお、前記ベース部材20の取付部22の構成は、図示例に限定されるものではなく、例えばボルト、ナットなどの各種の固着手段を使用することができる。 【0050】 エアバッグ1の取付片部8には、図5に示すように前記クリップ取付座23に引っ掛け固定される矩形状の係止孔8aが上下に貫通して形成されている。折り畳まれたエアバッグ1の取付片部8を前記エアバッグ収納部21の通孔21cに通してエアバッグ収納面の裏面側へ引き出すことができる。エアバッグ1の取付片部8における係止孔8aを前記クリップ取付座23に引っ掛け固定することができ、前記エアバッグ収納部21内にエアバッグ1を収納固定することができる。」 (2b)引用文献2には以下の図が示されている。 (2)引用文献2に記載された技術的事項 (2-1)摘記事項(2a)及び摘記事項(2b)の図から以下の事項が認定できる。 ア.サイドエアバッグ装置10は、エアバッグ1とベース部材20を備えること(段落【0031】,【0039】、図1-4,6-7)。 イ.ベース部材20の取付部22は、断面略L字形の部分の裏面から一体に突出成形され、上下に平行に突設された一対の略横L字状のクリップ取付座23と、同クリップ取付座23の前面中央部から前方へ突出するクリップ取付部24と、同クリップ取付部24に装着されるクリップ25とを有すること(段落【0048】、図4,6-7)。 ウ.クリップ25は、その左右脚部をクリップ取付座23とクリップ取付部24とに弾着して取り付け、係着片をルーフサイドレール部Rに形成された角穴に嵌着固定すること(段落【0049】、図1-8)。 エ.エアバッグ1の上端縁に設けられた車体取付用の取付片部8に矩形状の係止孔8aを貫通して形成し、その係止孔8aをクリップ取付座23に引っ掛け固定することで、エアバッグ1を収納固定すること(段落【0032】,【0050】、図1-8)。 オ.ベース部材20の取付部22の構成は、ボルト、ナットなどの各種の固着手段を使用することができること(段落【0049】)。 (2-2)したがって、これらを整理すると、上記引用文献2には次の技術的事項が記載されていると認められる。 「サイドエアバッグ装置10において、エアバッグ1とベース部材20を備え、 前記ベース部材20の取付部22は、断面略L字形の部分の裏面から一体に突出成形され、上下に平行に突設された一対の略横L字状のクリップ取付座23と、同クリップ取付座23の前面中央部から前方へ突出するクリップ取付部24と、同クリップ取付部24に装着されるクリップ25とを有し、 前記クリップ25は、その左右脚部を前記クリップ取付座23と前記クリップ取付部24とに弾着して取り付け、係着片をルーフサイドレール部Rに形成された角穴に嵌着固定し、 前記エアバッグ1の上端縁に設けられた車体取付用の取付片部8に矩形状の係止孔8aを貫通して形成し、前記係止孔8aを前記クリップ取付座23に引っ掛け固定することで、前記エアバッグ1を固定する。」(以下、「事項A」という。)及び 「サイドエアバッグ装置10において、 ベース部材20の取付部22の構成として、ボルト、ナットなどの各種の固着手段を使用することもできる。」(以下、「事項B」という。) 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア.引用発明における「ルーフサイドレール24」が窓の車内側の上縁側にあることは明らかであるから、引用発明における「ルーフサイドレール24に沿って折り畳まれて格納され、膨張用のガスの供給を受けて展開可能」である「エアバッグ袋体12」は、本願発明1の「膨張用ガスの流入時、折り畳まれて収納された車両の窓の車内側の上縁側から展開膨張するエアバッグ」に相当するものといえる。 イ.引用発明における「断面略L字形のガイド壁14Aと縦壁部14B」は、本願発明1の「断面略L字形の本体案内部」に相当する。 ウ.引用発明における「断面略L字形のガイド壁14Aと縦壁部14Bとを備え、該ガイド壁14Aによりエアバッグ袋体12の展開時に該エアバッグ袋体12の展開方向を車室内側方向に規制可能」とする「ジャンプ台14」は、上記「ア」,「イ」をも踏まえると、本願発明1の「展開膨張時の前記エアバッグの展開方向を案内する断面略L字形の本体案内部を有した案内部材」に相当するものといえる。 エ.引用発明における「貫通孔14D」、「ルーフサイドレールインナ28」、「ボルト36」は、それぞれ本願発明1における「取付孔」、「車体側の取付部位」、「締結部材」に相当する。したがって、引用発明における「ジャンプ台14」の「縦壁部14Bに車両上方に突出した取付け部14Cを設け、該取付け部14Cに貫通孔14Dを形成し、前記貫通孔14Dに差し込んだボルト36でルーフサイドレールインナ28に締結固定される」という構成と、本願発明における「案内部材」の「前記本体案内部から突設されて、車体側の取付部位に締結される締結部材を挿通させる取付孔を有して、前記取付部位に締結される前記締結部材により、前記取付部位に取り付けられる取付片部、を備え」という構成とは、上記「イ」,「ウ」をも踏まえると、「前記本体案内部から突設されて、車体側の取付部位に締結される締結部材を挿通させる取付孔を有して、前記取付部位に締結される前記締結部材により、前記取付部位に取り付けられる取付部、を備え」という構成の限度で共通するものといえる。 オ.引用発明における「前記張出し部材16は、合成樹脂の成形品であり、前記エアバッグ袋体12の折返し部12Bの上方縁部12Cに固定されると共に、前記折返し部12B内に挟み込まれているので、前記エアバッグ袋体12の展開時に、前記ジャンプ台14に対して前記エアバッグ袋体12が相対的に回転することを抑制するものであって、前記張出し部材16の爪部を前記ジャンプ台14の前記縦壁部14Bに設けられた貫通孔14Gに差し込んで係止することで、前記ジャンプ台14に固定される」という構成において「張出し部材16」は「エアバッグ袋体12の折返し部12Bの上方縁部12Cに固定され」ることで「エアバッグ袋体12」に備えられること、かつ「張出し部材16の爪部をジャンプ台14の縦壁部14Bに設けられた貫通孔14Gに差し込んで係止することで、ジャンプ台14に固定される」ことで「ジャンプ台14」に連結されることから、引用発明における該構成と、本願発明1における「前記エアバッグが、展開膨張完了時の上縁側に、前記案内部材に連結される連結片を備え」という構成とは、上記「ア」,「イ」,「ウ」をも踏まえると、「前記エアバッグが、展開膨張完了時の上縁側に、前記案内部材に連結される連結部を備え」という構成の限度で共通するものといえる。 カ.引用発明における「ジャンプ台14」の「取付け部14C」は、「該取付け部14Cに貫通孔14Dを形成し、前記貫通孔14Dにボルト36を差し込んで締結固定することで、ルーフサイドレールインナ28に締結固定」する際に「張出し部材16」を介在させないことは明らかであり、かかる「ジャンプ台14」の「取付け部14C」と、本願発明1の「前記エアバッグの前記連結片を介在させることなく、前記締結部材により、車体側の前記取付部位に取り付けられる構成」としている「前記案内部材の前記取付片部」とは、上記「エ」,「オ」をも踏まえると、「前記エアバッグの前記連結部を介在させることなく、前記締結部材により、車体側の前記取付部位に取り付けられる構成」としている「前記案内部材の前記取付部」の限度で共通するものといえる。 キ.引用発明における「頭部保護エアバッグ装置10」は、本願発明1における「頭部保護エアバッグ装置」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「膨張用ガスの流入時、折り畳まれて収納された車両の窓の車内側の上縁側から展開膨張するエアバッグと、 展開膨張時の前記エアバッグの展開方向を案内する断面略L字形の本体案内部を有した案内部材と、 を備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、 前記案内部材が、前記本体案内部から突設されて、車体側の取付部位に締結される締結部材を挿通させる取付孔を有して、前記取付部位に締結される前記締結部材により、前記取付部位に取り付けられる取付部、を備え、 前記エアバッグが、展開膨張完了時の上縁側に、前記案内部材に連結される連結部を備え、 前記案内部材の前記取付部が、前記エアバッグの前記連結部を介在させることなく、前記締結部材により、車体側の前記取付部位に取り付けられる構成としている、頭部保護エアバッグ装置。」 (相違点)本願発明1において「取付部」は「取付片部」であって「該取付片部が、前記本体案内部から突設される首部と、該首部の先端における前記取付孔を備えた先端部と、を備え」、また「連結部」は「連結片」であって「該連結片が、前記取付片部を貫通させる貫通孔を備え」るものであり、「前記エアバッグの展開膨張時に、前記連結片が、前記貫通孔に貫通される前記取付片部の前記首部に係止され、さらに、前記連結片の前記貫通孔周縁が、前記本体案内部における前記首部の元部側であって前記首部より幅広とした前記首部の周縁部位に、係止される構成として」いるものであるのに対し、引用発明において「取付部」は「取付け部14C」であって「取付孔」を有し、また「連結部」は「回転抑制手段の一例たる張出し部材16」であって「合成樹脂の成形品であり、エアバッグの折返し部12Bの上方縁部12Cに固定されると共に、該折返し部12B内に挟み込まれているので、エアバッグの展開時に、案内部材に対して前記エアバッグが相対的に回転することを抑制するものであって、張出し部材16の爪部を案内部材の本体案内部に設けられた貫通孔14Gに差し込んで係止することで、案内部材に固定される」ものである点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 原査定の判断は「引用文献1、2は、共に、取付片部と連結片とにおいて、一方の貫通孔に他方が他方が貫通されて係止される点で機能が共通するから、引用文献1の取付片部と連結片との係止において、引用文献2の事項を適用することは、当業者が容易になし得たことである。」(合議体注:下線部の「他方が他方が」とあるのは「他方が」の誤記と認める。)というものであるので、以下検討する。 引用文献2には、上記「第4 2.(2)(2-2)」で述べたように事項A及び事項Bが記載されている。 ここで引用発明の課題は、「エアバッグ袋体の展開時におけるジャンプ台に対する相対回転を抑制して、該エアバッグ袋体の展開方向を安定させること」と認められる(上記摘記事項(1a)段落【0004】)。そして引用発明における「連結部」としての「張出し部材16」は該課題を解決するための「回転抑制手段の一例」であって「合成樹脂の成形品であり、エアバッグ袋体12の折返し部12Bの上方縁部12Cに固定されると共に、該折返し部12B内に挟み込まれているので、エアバッグ袋体12の展開時に、ジャンプ台14に対して該エアバッグ袋体12が相対的に回転することを抑制する」ものである。 一方、上記事項Aは、エアバッグ1を嵩張らずにコンパクトに収容固定するという課題に基づくものと認められる(上記摘記事項(2a)段落【0017】,【0027】-【0028】)。 してみると、引用発明における課題を解決するための「回転抑制手段の一例」である「連結部」としての「張出し部材16」に対し、引用発明における課題と異なる課題に基く上記事項Aにおける「取付片部8」の構成をあえて適用することの動機付けが存在しない。 仮に動機付けが存在するとして、引用発明に事項Aを適用し、「取付け部14C」に代えて又は加えて本体案内部の裏面から突設される「クリップ取付座23」、「クリップ取付部24」及び「クリップ25」を備える「取付部22」(取付部)を設けるとともに、「張出し部材16」又はその「爪部」に代えて「クリップ取付座23」に引っ掛け固定する「係止孔8a」(貫通孔)を形成した「取付片部8」(連結部)を設けたとしても、その「取付部22」は本願発明1の「取付片部」ように「前記本体案内部から突設されて、車体側の取付部位に締結される締結部材を挿通させる取付孔を有して、前記取付部位に締結される前記締結部材により、前記取付部位に取り付けられる」とともに「前記本体案内部から突設される首部と、該首部の先端における前記取付孔を備えた先端部と、を備え」、さらに「連結片の前記貫通孔周縁が、前記本体案内部における前記首部の元部側であって前記首部より幅広とした前記首部の周縁部位に、係止される」という構成に至るものではない。 また引用発明に上記事項Aを適用する際に上記事項Bを勘案し、「取付部22」における固着手段としてボルト、ナットなどの各種の固着手段を採用した形態に設計変更したとしても、その具体的な構成を特定することができないことから、上記相違点に係る本願発明1の構成に至るものではない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても拒絶査定において引用された引用文献1-2に基いて容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2-6について 本願発明2-3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明1と同じ理由により当業者であっても拒絶査定において引用された引用文献1-2に基いて容易に発明できたものとはいえない。 本願発明4も、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明1と同じ理由により当業者であっても拒絶査定において引用された引用文献1-3に基いて容易に発明できたものとはいえない。 本願発明5-6も、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明1と同じ理由により当業者であっても拒絶査定において引用された引用文献1-4に基いて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-12-03 |
出願番号 | 特願2014-56769(P2014-56769) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 敏史 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
和田 雄二 中村 泰二郎 |
発明の名称 | 頭部保護エアバッグ装置 |
代理人 | 安藤 敏之 |
代理人 | 上田 千織 |
代理人 | 飯田 昭夫 |
代理人 | 江間 路子 |