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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47J
管理番号 1346614
審判番号 不服2018-1420  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-02 
確定日 2018-12-18 
事件の表示 特願2013-108614号「炊飯器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月8日出願公開、特開2014-226343号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月23日の出願であって、平成29年3月3日付けで拒絶理由が通知され、平成29年4月17日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年7月11日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成29年8月1日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年11月6日付けで平成29年8月1日の手続補正が決定をもって却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対して平成30年2月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年11月6日付けの補正却下の決定及び原査定の概要
1.平成29年11月6日付けの補正却下の決定の概要
平成29年8月1日の請求項1及び2についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
しかし、当該補正後の請求項1及び2に係る発明は、引用例1及び2に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、当該補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により決定をもって却下する。

<引用例一覧>
1.特開2004-41569号公報
2.特開平11-186740号公報

2.原査定(平成29年11月6日付け拒絶査定)の概要
本願請求項1及び2に係る発明は、上記引用例1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成30年2月2日提出の手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
本体と、
前記本体の内部に着脱自在に収納された鍋と、
前記本体の上方を開閉自在に覆う蓋体と、
を備え、
前記蓋体には、
操作部及び表示部を構成する操作基板と、
前記操作基板を抱持する基板カバーと、
前記蓋体の上面に位置し一部透明の操作パネルと、
外蓋と、を備え、
前記外蓋は、前記蓋体の上面外周を形成するリング状とするとともに、
リング状につながる前記外蓋の斜面である内周端面は、前記操作パネルの外周縁近傍の斜面である外周面と隙間がないように当接しており、
前記操作パネルの外周縁は、上方の前記外蓋の内周縁位置より外側に位置する炊飯器。
【請求項2】
前記操作パネルの外周縁を、前記外蓋の内周縁と前記基板カバーとの間に挟持し、前記外蓋と前記基板カバーとを複数のねじで固着した請求項1に記載の炊飯器。」

第4 引用例
1.引用例1(特開2004-41569号公報)
原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された引用例1には、「調理器の防水構造」に関して図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様)。

(1)引用例1の記載
1a)「【0016】
【発明の実施形態】
以下、添付図面に基づいてこの発明の実施形態を説明する。図1に示した炊飯ジャーは、器具外郭としてのジャー本体1と、これに対しヒンジ軸2(図2参照)により開閉自在に取付けられた蓋3を有する。ジャー本体1の前端部に蓋3の前縁と同じ高さに立ち上がった操作部4が設けられる。
【0017】
蓋3は、図2、図3に示すように、蓋部材5、蓋パネル6、基板カバー7、蓋リング8、蒸気穴セット9等を主要な構成部材としている。
【0018】
上記の基板カバー7は浅い皿形をなし(図4参照)、その内部に表示用の基板10が取付けられ、さらに、その基板10上に液晶ホルダー11を介して液晶12が搭載される。また、その液晶12に対応した表示窓13が蓋パネル6に設けられる。さらに、液晶ホルダー11の両側に、所要数のスイッチ21が設けられ(図10参照)、そのスイッチ21に対応した設定キー14が蓋パネル6に設けられる(図3参照)。蓋パネル6は、蓋部材5の開放部15の内側から嵌合され、基板10を搭載した基板カバー7が蓋パネル6下面の所定位置に押し当てられる。そして、共通のビス16を基板ホルダー7の取付け足17、蓋パネル6の取付け足18に挿通し、蓋部材5内面のボス部20に締結固定される(図5参照)。」

1b)「【0026】
なお、蓋3の内部に蓄積される熱を逃がすため、図12に示すように、蓋3の蓋部材5と蓋パネル6との嵌合部分に、蓋3の内外を通じるすき間42を全周にわたり設けた構成を採った場合、そのすき間42から蓋3の内部に浸入する水を阻止するため、すき間42に臨んだ蓋パネル6の周囲に集水溝43を設けることが望ましい。集水溝43の排水口はヒンジ軸2の近傍に設けられる。」

1c)上記1a)段落【0016】及び図1の記載から、蓋3は、ジャー本体1の上方を開閉自在に覆うものであることが分かる。



1d)上記1a)段落【0018】及び図10の記載から、基板10には、スイッチ21及び液晶12が設けられていることが分かる。



1e)上記1a)段落【0018】及び図4の記載から、基板カバー7は、その内部に基板10が取付けられていることが分かる。



1f)上記1a)段落【0018】並びに図1及び図4の記載から、蓋3の上面には、表示窓13を有する蓋パネル6が設けられていることが分かる。

1g)図1及び図3の記載から、蓋部材5は、蓋3の上面外周を形成する略円環形状であることが分かる。



1h)上記1b)及び図12の記載から、蓋部材5と蓋パネル6とは、前記蓋3の内外を通じるすき間42を全周にわたり設けるように嵌合していることが分かる。



1i)図12の記載から、蓋パネル6の外周縁は、上方の蓋部材5の内周縁位置より外側に位置することが分かる。

(2)引用発明
上記(1)からみて、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ジャー本体1と、前記ジャー本体1の上方を開閉自在に覆う蓋3と、を備え、前記蓋3には、スイッチ21及び液晶12を設けた基板10と、前記基板10が内部に取付けられた基板カバー7と、前記蓋3の上面に位置し表示窓13を有する蓋パネル6と、蓋部材5と、を備え、前記蓋部材5は、前記蓋3の上面外周を形成する略円環形状とするとともに、前記蓋部材5と前記蓋パネル6とは、前記蓋3の内外を通じるすき間42を全周にわたり設けるように嵌合しており、前記蓋パネル6の外周縁は、前記蓋部材5の内周縁位置より外側に位置する炊飯ジャー。」

2.引用例2(特開平11-186740号公報)
原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された引用例2には、「パネルの取付け構造および画像形成装置」に関して図面とともに次の事項が記載されている。

(1)引用例2の記載
2a)「【0014】図2は、パネルカバー25を含むプリンタ21の要部を示す上面図である。図2において、このパネルカバー25は、トップカバー23に設けられた開口28を閉じるように位置されており、所望の態様で動作させるためのボタンスイッチ26や所定の作動状態を表示するための各種の表示ランプ27が設けられる操作部としての基板16(図2には現れない)を覆っている。また、パネルカバー25における表示ランプ27の側方には、各ランプの機能を説明するための印刷20がそれぞれ施されている。」



2b)「【0019】また、図7に示すように、パネルカバー25の後縁には、斜め下方向に屈曲する後側端部34が形成されるとともに、その前縁には、略垂直下方向に屈曲する前側端部35が形成されている。前側端部35には、トップカバー23の開口28の前縁に当接する前側段部36が形成されている。一方、横フレーム18には、パネルカバー25の後側端部34と、4つの表示ランプ27を受け入れるための凹所33のうち、最も後側に位置する凹所33との間に向かって突出する後側突出部37が形成されている。この後側突出部37は、後側端部34との間、およびその凹所33との間に、それぞれ少し間隔を隔てている。また、横フレーム18における前側端部35の内側の位置には、前側突出部38が形成されている。そして、この後側突出部37と前側突出部38とで、本体フレーム22に対するパネルカバー25の前後方向移動を一定範囲で許容しつつ、本体フレーム22によって支持されるパネルカバー25の高さを規制している。この高さ規制によって、トップカバー23が本体フレーム22を覆ったときに、トップカバー23とパネルカバー25との外面が面一となるように形成する。」



2c)「【0022】すなわち、図7に示すように、トップカバー23の開口28の後縁は、パネルカバー25の後側端部34に沿った傾斜状に形成されており、一方、トップカバー23の開口28の前縁には、パネルカバー25の前側端部35の前端段部36に係合する開口前側段部45が形成されている。そして、トップカバー23が、仮想線で示す状態から実線で示す状態となって本体フレーム22を覆ったときには、パネルカバー25の後側端部34は、トップカバー23の開口28の後縁に沿って良好に導かれる一方、パネルカバー25の前端段部36に、開口前側段部45が係合することによって、パネルカバー25の前後方向の移動が規制される。このとき規制されるパネルカバー25の前後方向の位置は、パネルカバー25の後側端部34とトップカバー23の開口28の後縁との間、およびパネルカバー25の前側端部35とトップカバー23の開口28の前縁との間に、等間隔の隙間が形成されるような位置にしておく。」

(2)引用例2技術
上記(1)からみて、引用例2には以下の技術(以下、「引用例2技術」という。)が記載されている。

「プリンタ21のパネルカバー25は、トップカバー23に設けられた開口28を閉じるように位置されており、所望の態様で動作させるためのボタンスイッチ26や所定の作動状態を表示するための各種の表示ランプ27が設けられる操作部としての基板16を覆うものであって、前記パネルカバー25の前縁には、略垂直下方向に屈曲する前側端部35が形成されており、前記前側端部35には、トップカバー23の開口28の前縁に当接する前端段部36が形成されており、前記トップカバー23の開口28の前縁には、前記パネルカバー25の前記前側端部35の前記前端段部36に係合する開口前側段部45が形成されており、前記パネルカバー25の前記前端段部36に、前記開口前側段部45が係合することによって、前記パネルカバー25の前後方向の移動を規制する技術。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「ジャー本体1」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「本体」に相当し、以下同様に、「蓋3」は「蓋体」に、「スイッチ21及び液晶12を設けた」、「基板10」は「操作部及び表示部を構成する」、「操作基板」に、「基板10が内部に取付けられた」、「基板カバー7」は、「操作基板を抱持する」、「基板カバー」に、「蓋3の上面に位置し表示窓13を有する」、「蓋パネル6」は、「蓋体の上面に位置し一部透明の」、「操作パネル」に、「蓋部材5」は「外蓋」に、「蓋3の上面外周を形成する略円環形状」は「蓋体の上面外周を形成するリング状」に、「蓋パネル6の外周縁は、上方の蓋部材5の内周縁位置より外側に位置する」は「操作パネルの外周縁は、上方の外蓋の内周縁位置より外側に位置する」に、「炊飯ジャー」は「炊飯器」にそれぞれ相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「本体と、前記本体の上方を開閉自在に覆う蓋体と、を備え、前記蓋体には、操作部及び表示部を構成する操作基板と、前記操作基板を抱持する基板カバーと、前記蓋体の上面に位置し一部透明の操作パネルと、外蓋と、を備え、前記外蓋は、前記蓋体の上面外周を形成するリング状とするとともに、前記操作パネルの外周縁は、上方の前記外蓋の内周縁位置より外側に位置する炊飯器。」

[相違点1]
本願発明1においては、「本体の内部に着脱自在に収納された鍋」を備えるのに対して、引用発明においては、ジャー本体1の内部に着脱自在に収納された鍋を備えるか不明である点。

[相違点2]
本願発明1においては、「リング状につながる外蓋の斜面である内周端面は、操作パネルの外周縁近傍の斜面である外周面と隙間がないように当接」しているのに対して、引用発明においては、「蓋部材5と蓋パネル6とは、蓋3の内外を通じるすき間42を全周にわたり設けるように嵌合」している点。

以下、事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。

[相違点2について]
引用例2技術は、「プリンタ21のパネルカバー25は、トップカバー23に設けられた開口28を閉じるように位置されており、所望の態様で動作させるためのボタンスイッチ26や所定の作動状態を表示するための各種の表示ランプ27が設けられる操作部としての基板16を覆うものであって、前記パネルカバー25の前縁には、略垂直下方向に屈曲する前側端部35が形成されており、前記前側端部35には、トップカバー23の開口28の前縁に当接する前端段部36が形成されており、前記トップカバー23の開口28の前縁には、前記パネルカバー25の前記前側端部35の前記前端段部36に係合する開口前側段部45が形成されており、前記パネルカバー25の前記前端段部36に、前記開口前側段部45が係合することによって、前記パネルカバー25の前後方向の移動を規制する技術」であって、パネルカバー25の前端段部36とトップカバー23の開口前側段部45とを係合することが示されている。
しかし、引用発明において、「蓋部材5と蓋パネル6とは、蓋3の内外を通じるすき間42を全周にわたり設けるように嵌合して」いるのは、上記第4 1.(1)1b)における引用例1の記載によれば、「蓋3の内部に蓄積される熱を逃がすため」であるから、引用発明において「蓋部材5」と「蓋パネル6」とを隙間がないように当接(すなわち係合)する動機付けがなく、引用発明に引用例2技術を適用するのは困難である。
また、引用例2技術は、パネルカバー25の前端段部36とトップカバー23の開口前側段部45とを係合するものであるが、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項である「リング状につながる外蓋の斜面である内周端面は、操作パネルの外周縁近傍の斜面である外周面と隙間がないように当接」することを開示または示唆するものではないから、引用発明に引用例2技術を適用して、引用発明における「蓋部材5」の内周縁を「蓋パネル6」に係合したとしても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできない。

したがって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明及び引用例2技術に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

2.本願発明2について
本願の特許請求の範囲における請求項2は、請求項1の記載を他の記載と置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2は本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2は、本願発明1と同様の理由により引用発明及び引用例2技術に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

第6 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1及び2に係る発明について、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかし、平成30年2月2日提出の手続補正書により補正された請求項1及び2に係る発明は、「リング状につながる外蓋の斜面である内周端面は、操作パネルの外周縁近傍の斜面である外周面と隙間がないように当接」することを発明特定事項として含むものであるから、上記第5で判断したとおり、請求項1及び2に係る発明は、引用発明及び引用例2技術に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が引用発明及び引用例2技術に基いて容易に発明し得たとすることはできない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-03 
出願番号 特願2013-108614(P2013-108614)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 松下 聡
井上 哲男
発明の名称 炊飯器  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  

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