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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1346669
審判番号 不服2017-8029  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-05 
確定日 2018-11-27 
事件の表示 特願2014-513509「静電チャックの窒化アルミ誘電体の修復方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日国際公開、WO2012/166256、平成26年 9月 4日国内公表、特表2014-522572〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年(2012年)4月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2011年6月2日 米国,以下,左の日を「本願優先日」という。)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 4月16日 審査請求・手続補正
平成28年 4月15日 拒絶理由通知
平成28年10月20日 意見書・手続補正
平成29年 2月 2日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 6月 5日 審判請求

第2 本願発明
本願の請求項12に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成28年10月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項12】
修復された静電チャックであって,
1つ又はそれ以上の電極と,それを覆って配置される1つ又はそれ以上の第1誘電体層とを有するチャック本体であって,前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層が第1の材料を含むチャック本体と,
前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層を覆って配置され,前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層から離れる方向に延びる複数のメサを含む上面を有し,前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層とは別個の層である第2誘電体層であって,前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層とは異なる材料を含み,酸化イットリウム又は酸化アルミニウムを含む第2誘電体層と,
を備える,静電チャック。」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,本願発明は,本願優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1 特開2008-028052号公報
引用文献2 特開2006-351949号公報
引用文献3 特開2007-201068号公報

第4 引用文献及び引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,静電吸着電極の補修方法に関し,詳細には,例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)等の製造過程において,ガラス基板等の基板を吸着保持する為に使用される静電吸着電極の補修方法に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,上記実情に鑑みてなされたものであり,静電吸着電極の破損部位の補修を簡易かつ適切に行なうことができる補修方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため,本発明の第1の観点は,基材の表面を覆う被膜が形成され,該被膜は,電極層と,該電極層より下層の第1の絶縁層と,前記電極層より上層の第2の絶縁層と,を含むように構成されており,前記電極層に電圧を印加することにより基板を吸着保持する静電吸着電極の補修方法であって,
不良部位とその周囲の被膜を切削して除去する切削工程と,
前記切削により除去された部分に新しい補修被膜を形成する被膜再生工程と,
を含む,静電吸着電極の補修方法を提供する。
【0009】
上記第1の観点において,前記補修被膜を絶縁材料により形成してもよく,あるいは,絶縁材料と導電性材料とを積層して形成してもよい。これらの場合,前記絶縁材料として,前記第1の絶縁層および前記第2の絶縁層を構成する材料と異なる材質を用いることもできる。
また,前記切削工程では,前記被膜を切削して凹部を形成し,前記被膜再生工程では,前記凹部における前記補修被膜の形成を溶射により行なうことが好ましい。この場合,前記切削工程では,前記電極層を切削しないように前記凹部を形成するか,あるいは,全体としてテーパー状をなすように前記凹部を形成することが好ましい。
また,静電吸着電極は,フラットパネルディスプレイの製造に用いられる静電吸着電極であることが好ましく,この場合,ガラス基板を吸着保持するものであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の補修方法によれば,静電吸着電極の被膜に破損が生じた場合,破損の程度に応じて簡易な方法で部分補修を行なうことができる。よって,静電吸着電極全体を交換する必要がなく,メンテナンスに伴うコストを低減できる。大型のFPD基板を吸着保持する静電吸着電極においては,全体交換によらず,部分補修を可能とすることによって節減できるコストも大きくなるため,特に有利である。」
ウ 「【0013】
静電チャック40は,平面視矩形をなしており,アルミニウムなどの導電性材料からなる基材41を有している。この基材41の上面には,下から順に,第1の絶縁層42,電極43および第2の絶縁層44が積層されている。この静電チャック40は,第1の絶縁層42と第2の絶縁層44との間の電極43に,直流電源26から給電線27を介して直流電圧を印加することにより,例えばクーロン力によって基板Gを静電吸着する。静電チャック40の上面(第2の絶縁層44の上面)には,基板Gを吸着保持する基板保持面50が形成されている(図2?図8参照)。
【0014】
前記絶縁板3およびサセプタ基材4a,さらには静電チャック40には,これらを貫通するガス通路9が形成されている。このガス通路9を介して伝熱ガス,例えばHeガスなどが被処理体である基板Gの裏面に供給される。
すなわち,ガス通路9に供給された伝熱ガスは,サセプタ基材4aと静電チャック40の基材41との境界に形成されたガス溜り9aを介して一旦水平方向に拡散した後,静電チャック40内に形成されたガス供給連通穴9bを通り,静電チャック40の表面から基板Gの裏側に噴出する。このようにして,サセプタ4の冷熱が基板Gに伝達され,基板Gが所定の温度に維持される。」
エ 「【0039】
なお,上記第1実施形態および第2実施形態において,静電チャック40の基板保持面50(第2の絶縁層44の表面)に,基板Gの下面を支持するために多数の凸部(小突起)53が形成されている場合には,図5に示すように,新たに形成された補修被膜61(あるいは補修被膜65)における凸部54の高さh_(1)は,第2の絶縁層44の表面に元から形成されていた凸部53の高さh_(0)よりも低く形成することが好ましい。これは,補修により新たに形成された凸部54の高さh_(1)が,周辺の補修されていない領域に形成された凸部53の高さh_(0)よりも高いと,基板Gの下面の支持高さが不均一になって,エッチングむらなどの処理内容の不均一を引き起こす可能性があるためである。」
オ 「【0040】
<第3実施形態>
図6(a)は,静電チャック40における破損の別の例に関するものであり,第2の絶縁層44の表面付近の広い範囲(同図中,符号Dで示す部位)に複数の浅いクラック102が発生した状態を示している。このような場合には,図6(b)に示すように,第2の絶縁層44の表面から全体的に切削を行い,クラック102が形成された第2の絶縁層44の表面層を所定の厚さで除去する。
【0041】
次に,図6(c)に示すように,第2の絶縁層44の表面層が除去された後の表面に対して溶射装置202を用いて溶射を行い,第2の絶縁層44の表面に新しく補修被膜66を形成することにより補修が完了する。この際の溶射材料としては,第2の絶縁層44と同様の材質の絶縁材料例えばアルミナ(Al_(2)O_(3))などのセラミックスを用いることが好ましい。また,溶射材料として,第2の絶縁層44とは異なる種類の絶縁材料例えばジルコニア(ZrO_(2)),2マグネシアシリカ(M_(2)S;2MgO・SiO_(2)),フッ化イットリウム(YF_(3))等を用いることも可能である。
【0042】
本実施形態においても,第2の絶縁層44の表面層の切削による除去と溶射による補修被膜の形成という簡易な方法によって,静電チャック40の部分補修が可能になるので,静電チャック40の全体を交換する必要がなくなり,メンテナンスコストを大幅に低減できる。」
カ 図6(c)には,電極43及び第2の絶縁層44が積層され,さらに第2の絶縁層44の表面に補修被膜66が形成されその上面が基板保持面50とされた静電チャック,が記載されていると認められる。
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「補修が完了した静電チャックであって,電極及び第2の絶縁層が積層され,さらに第2の絶縁層の表面に補修被膜が形成されその上面が基板保持面とされた静電チャック。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,フラットパネルディスプレイ(FPD)製造用のガラス基板などの基板を載置する基板載置台およびその製造方法,さらには,この基板載置台を使用して基板に対してドライエッチング等の処理を施す基板処理装置に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように,従来技術では,基板載置台の載置面に凸部を形成することが提案されているが,凸部自体が原因となるエッチングむらの発生や,凸部と凸部以外の面の高低差に起因する堆積物の生成の問題に対しては,改良の余地が残されている。すなわち,従来技術では,凸部の形状についてエッチングむらを考慮した検討や,凸部と凸部以外の表面の形状についての検討はほとんどなされていない。
【0011】
また,サセプタに静電吸着電極としての機能を持たせる場合,被処理基板とサセプタとの間に伝熱媒体ガスを導入することが行なわれる。この際に,伝熱効率を高めるためには,サセプタと被処理基板との間に密閉空間を形成することが好ましい。そのため,上記特許文献4では,サセプタの周縁部に台部を設けることも提案されているが,台部の形状や台部を含むサセプタ表面の加工方法の詳細については示されていない。
【0012】
本発明は,上記実情に鑑みてなされたものであり,第1に,基板載置台に形成された凸部自体に起因するエッチングむらなどの処理むらを防止できる基板載置台およびその製造方法を提供することを課題としている。第2に,基板載置台の表面に付着物が蓄積することによって生じる処理むらや基板汚染を防止することを課題としている。第3に,伝熱媒体ガスによる伝熱効率を改善することが可能な基板載置台およびその製造方法を提供することも課題としている。」
ウ 「【0054】
次に,誘電性材料膜5上に台部6や凸部7を形成する方法について,図5および図6を参照しながら説明する。本実施形態では,凸部7の頂面7aは粗面とし,凸部7以外の部分である誘電性材料膜5の基準面5aや台部6の頂面6aを平滑面とするため,以下のような製造方法を採用した。
(中略)
【0057】
次に,図6(c)に示すように,複数の円形開口を有する開口板102を誘電性材料膜5上にセットする(ステップS13)。マスク部材である開口板102には,複数の凸部7のサイズと配置に対応するように貫通孔が穿設されている。このような開口板102としては,例えば板厚0.3?0.5mm程度の金属板,具体的にはステンレス板を使用することができる。この開口板102をセットした状態で,ブラスト処理を行い,開口板102の開口内に露出した誘電性材料膜5の平滑表面を粗面化する(ステップS14)。この粗面化は次工程の溶射の際にアンカー効果を持たせ,溶射形成される凸部7を誘電性材料膜5と堅固に接合させるために行う。」
エ 「【0068】
次に,図9,図10を参照しながら,他の実施形態について説明する。本実施形態のサセプタ40は,静電チャック機能を有しており,図10に拡大して示すように,基材4a上に,第1の誘電性材料膜51と,金属などの導電性材料からなり,静電電極層として機能する導電層52と,第2の誘電性材料膜53と,をこの順に積層してサセプタ40を構成したものである。第2の誘電性材料膜53の表面には,複数の凸部7と台部6が基準面53aに対して突出形成されている。そして,図示しない直流電源から導電層52に直流電圧を印加することにより,例えばクーロン力によって基板Gを静電吸着できるように構成されている。なお,第1の誘電性材料膜51,導電層52,第2の誘電性材料膜53を形成する方法は問わないが,すべて溶射によって形成してもよい。
【0069】
また,基材4a,第1の誘電性材料膜51,導電層52,第2の誘電性材料膜53を貫通して,第2の誘電性材料膜53の基準面53aに吹出口を有する複数の伝熱媒体流路41が形成されている。これによって,基板Gの裏側の凸部7どうしの間の空間に伝熱媒体たとえばヘリウムガスを充満させて基板Gを一様に冷却することができ,基板Gの温度を一様にすることができるので,エッチング等のプラズマ処理も基板全面にわたって一様に行なわれる。また,周縁部に形成された台部6によって,伝熱ガスがサセプタ以外の領域に拡散することを抑制し,伝熱効率を高めることができる。
【0070】
第1実施形態におけるサセプタ4と同様に,本実施形態のサセプタ40においても,凸部7の頂面7aは粗面であり,表面粗さRyは8μm以上であり,9μm以上15μm以下であることが好ましい。
また,サセプタ40の上面における凸部以外の部分である台部6の頂面6aと第2の誘電性材料膜53の基準面53aは,ともに平滑面である。具体的には,台部6の頂面6aと第2の誘電性材料膜53の基準面53aの表面粗さRaはそれぞれ1.5μm以下であり,0以上1.5μm以下が好ましい。
【0071】
第1の誘電性材料膜51と第2の誘電性材料膜53は,上記誘電性材料膜5と同様,誘電性材料からなっていればその材料は問わず,また高絶縁材料のみならず電荷の移動を許容する程度の導電性を有するものを含み,耐久性および耐食性の観点からセラミックス材料で構成することが好ましい。セラミックス材料は特に限定されるものではなく,典型的にはAl_(2)O_(3),Zr_(2)O_(3),Si_(3)N_(4)等の絶縁材料を挙げることができるが,SiCのようにある程度導電性を有するものであってもよい。なお,第1の誘電性材料膜51と第2の誘電性材料膜53は同じ材質であっても異なっていてもよい。また,基材4aと第1の誘電性材料膜51との熱膨張率の差による熱応力を緩和する目的で,基材4aと第1の誘電性材料膜51との間にこれらの中間の熱膨張率を持つ材質からなる1層以上の中間層を設けることもできる。
【0072】
凸部7および台部6の機能と製造方法は,第1実施形態と同様である。本実施形態では,静電チャックにより基板Gを静電吸着するとともに,伝熱媒体によって温度調節しながら,基板Gの処理,例えばエッチング処理を高精度に実施できる。なお,このような構造をとらなくても,図1に示すサセプタ4の基材4aを静電チャックの静電電極とすることにより静電チャックとして機能させることができる。」
(2)引用技術的事項2
前記(1)より,引用文献2には次の技術的事項(以下,「引用技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。
「伝熱媒体ガスによる伝熱効率を改善するために,静電チャック機能を有するサセプタの誘電性材料膜の表面に複数の凸部と台部を突出形成し,これによって,基板の裏側の凸部どうしの間の空間に伝熱媒体を充満させて基板を一様に冷却すること。」
3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,1×10^(-2)Torr以下の圧力下,100℃以上の温度で,シリコンウエハを静電力によって吸着する静電チャックに関するものである。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,このような複数の凸部(ピンとも呼ばれる。)の上面により形成される面にSiウエハを吸着する静電チャックは,Siウエハに付着するパーティクルを減らすことはできるが,Siウエハとの接触面積が減ることで,静電チャックからの加熱が不均一になりやすいという問題点があった。特に,1×10^(-2)Torr以下の減圧下で使用する静電チャックにおいては,Siウエハと静電チャックの接触部となる凸部からの熱の伝達が主となるため深刻な問題となっていた。
そこで,Siウエハと吸着面の間にガスを流しながら吸着加熱し,静電チャックからの熱の伝達量を増やすことで,Siウエハの均一な加熱を達成しようとすることが試みられている。
【0006】
しかし,この様な加熱方法においては,凸部底面の状態(すなわち,凹部の底部平面の表面粗さ)がSiウエハの均一な加熱に影響を与えることがわかってきた。
【0007】
すなわち,本発明の目的は,1×10^(-2)Torr以下の圧力下,100℃以上の温度で,シリコンウエハを静電力によって吸着する静電チャックにおいて,被吸着物であるSiウエハの均一加熱性を高めることができる静電チャックを提供することを目的とする。」
ウ 「【0009】
また本発明の目的は,前記基板が窒化アルミニウム,窒化珪素,炭化珪素,窒化ホウ素,アルミナから選ばれるいずれか1種の材料からなることを特徴とする静電チャックによっても達成される。」
エ 「【0011】
半導体デバイスの製造に使用される静電チャックは,その処理環境に耐えることができる材質でなければならない。例えば,CVD処理やエッチング処理は,高温,腐食性ガス雰囲気で行われるために,このような用途に用いる静電チャックには,耐熱性や耐食性に優れる材料であるセラミックスが用いられる。
なお,静電チャックは,必ずしもそれ全体がこのようなセラミックスで構成されている必要はなく,腐食性ガス雰囲気にさらされる部分以外は,例えば,金属で構成されていてもよい。
【0012】
静電チャックには,Siウエハを加熱するために,ヒータ等の加熱する機構が設けることができる。または静電チャックの裏面からランプ等で静電チャックを加熱することにより,Siウエハを加熱してもよい。このため,熱伝導率の高いセラミックスが用いられる。
これらのことから,セラミックスの材料として,窒化アルミニウム,窒化珪素,炭化珪素,窒化ホウ素,アルミナが好ましい。
【0013】
静電チャックの作製方法としては,一般的に,(1)セラミックス原料粉末中に電極を埋設し,一体焼成により作製する方法,(2)金属等からなる基材の表面にセラミックスを溶射して作製する方法,のいずれかが用いられる。
そして静電チャックにヒータを内蔵させるには,前記(1)の方法では静電吸着力を生じさせるための電極と一緒にヒータ用電極を埋設すればよく,前記(2)の方法では金属等の基材中にヒータ(必要に応じて絶縁処理が必要なことは言うまでもない)を埋め込んでおけばよい。なお,前記(2)の方法では,金属等の基材に冷却ラインを設けることで,Siウエハの温度上昇を抑え,またSiウエハを一定温度に保持することが容易となる。
【0014】
Siウエハを静電チャックに吸着させると,その吸着面でパーティクルが発生するため,吸着面のSiウエハに対する接触面積は小さくすることが好ましい。そのために静電チャックの吸着面に凸部(ピンとも言う。)を設ける。ここで,「凸部」とは,Siウエハの裏面にガスを流して吸着する静電チャックでは外周や突き上げピン穴の周囲にリブが形成されるが,このリブも含む。」
(2)引用技術的事項3
前記(1)より,引用文献3には次の技術的事項(以下,「引用技術的事項3」という。)が記載されていると認められる。
「静電チャックには耐熱性や耐食性に優れる材料であるセラミックスが用いられ,被吸着物であるSiウエハの均一加熱性を高めるために,熱伝導率の高いセラミックスの材料として,窒化アルミニウム,窒化珪素,炭化珪素,窒化ホウ素,アルミナが好ましいこと。」

第5 対比及び判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「補修が完了した静電チャック」は,下記相違点1及び2を除いて,本願発明の「修復された静電チャック」に相当する。
イ 引用発明の「電極及び第2の絶縁層が積層され」たものは,本願発明の「1つ又はそれ以上の電極と,それを覆って配置される1つ又はそれ以上の第1誘電体層とを有するチャック本体」を満たす。
ウ 引用発明における「さらに第2の絶縁層の表面に補修被膜が形成されその上面が基板保持面とされた」の「補修被膜」は,本願発明の「前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層を覆って配置され,上面を有し,前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層とは別個の層である第2誘電体層」を満たす。
エ すると,本願発明と引用発明とは,下記(2)の点で一致し,下記(3)の点で相違する。
(2)一致点
「修復された静電チャックであって,
1つ又はそれ以上の電極と,それを覆って配置される1つ又はそれ以上の第1誘電体層とを有するチャック本体と,
前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層を覆って配置され,上面を有し,前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層とは別個の層である第2誘電体層と,
を備える,静電チャック。」
(3)相違点
ア 相違点1
本願発明では「前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層が第1の材料を含むチャック本体と,前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層とは異なる材料を含み,酸化イットリウム又は酸化アルミニウムを含む第2誘電体層」であるのに対し,引用発明ではこの特定がない点。
イ 相違点2
本願発明では第2誘電体層が「前記1つ又はそれ以上の第1誘電体層から離れる方向に延びる複数のメサを含む」上面を有するのに対し,引用発明ではこの特定がない点。
2 相違点についての判断
ア 相違点1について
引用文献1には,補修被膜を形成するための溶射材料として,第2の絶縁層と同様の材質のアルミナなどのセラミックスを用いることや,第2の絶縁層とは異なる種類の絶縁材料例えばジルコニア,2マグネシアシリカ,フッ化イットリウムを用いることが記載されており(前記第4の1(1)オ【0041】),第2の絶縁層との関係で適宜の溶射材料を選択すべきことが示唆されている。
一方,引用文献1には静電チャックにガス通路を形成し,伝熱ガスを被処理体である基板の裏面に供給し基板を所定の温度に維持することが記載されており(前記第4の1(1)ウ),均一な温度維持が課題として示されているから,均一加熱性を高めるために引用技術的事項3に示される熱伝導率の高いセラミックスの材料として窒化アルミニウムやアルミナ(酸化アルミニウム)を選択して引用発明の第2の絶縁層及び補修被膜の材料とすることは,当業者が容易になし得ることである。
その際に,引用文献1には第2の絶縁層とは異なる種類の絶縁材料を補修被膜の材料に用いることが記載されていること,補修するために適当な特性の材料を選択することは当業者が適宜設計できることであることから,補修被膜の材料に第2の絶縁層の絶縁材料とは異なる材料を選択することも,当業者が容易になし得る設計事項である。
そして,本願明細書を精査しても,相違点1に係る材料を選択したこと自体に格別の効果は認められない。
イ 相違点2について
前記アのとおり,引用文献1(前記第4の1(1)ウ)には伝熱ガスによる均一な温度維持が課題として示されているから,伝熱媒体ガスによる伝熱効率を改善するために,引用技術的事項2に示される複数の凸部を引用発明の補修被膜の上面の基板保持面に採用することは,当業者が容易になし得ることである。
そして,引用文献1には補修被膜に凸部を設けることが記載されている(前記第4の1(1)エ)から,引用発明に相違点2に係る構成を採用することについて,示唆されているといえる。
ウ 効果について
静電チャックを修復することにより,新品の静電チャックよりも費用がかからず,実質的に同等の機能を有するという効果(本願明細書【0025】)は,引用文献1の記載(前記第4の1(1)イ【0010】)から当業者が予測できるものである。
3 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第6 結言
以上のとおり,本願の請求項12に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-06-29 
結審通知日 2018-07-02 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2014-513509(P2014-513509)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 儀同 孝信  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 梶尾 誠哉
深沢 正志
発明の名称 静電チャックの窒化アルミ誘電体の修復方法  
代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 上杉 浩  
代理人 須田 洋之  
代理人 近藤 直樹  
代理人 西島 孝喜  
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