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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1346672
審判番号 不服2017-14171  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-25 
確定日 2018-11-26 
事件の表示 特願2016- 56247号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月16日出願公開、特開2016-105950号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年9月20日に出願された特願2011-204156号の一部を平成28年3月18日に新たな特許出願としたものであって、平成28年7月29日に手続補正書が提出され、同年11月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年1月18日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対して、平成30年5月25日付けで当審において拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年7月27日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Jは本願発明を分説するため当審で付与した。)。

(本願発明)
「【請求項1】
A 遊技機に対する異常状態を報知する報知音と、遊技の進行による演出音とを出力する複数の音声出力手段と、
B 演出表示手段と、
C 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な第1音量調整手段と、
D 前記音声出力手段と前記演出表示手段とを演出の進行にもとづいて制御する演出制御手段と、
E 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な前記第1音量調整手段とは異なる第2音量調整手段と、を備える遊技機において、
F 前記第1音量調整手段と前記第2音量調整手段のうち、少なくとも、前記第1音量調整手段は、遊技者が操作することができない調整手段とされ、
G 前記演出制御手段は、
G1 前記第1音量調整手段で調整される音量で演出音の音量を設定する演出音音量設定制御手段と、
G2 所定の条件が成立しているときに、遊技者が操作可能な前記第2音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した演出音の音量を変更する演出音音量変更制御手段と、
G3 異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量とは異なる音量に設定する報知音音量設定制御手段と、
G4 前記異常報知期間が発生した際に前記音声出力手段から出力されていた演出音の音量を消音に変更設定し、前記演出音の音量が消音に変更設定され前記報知音が出力される前記異常報知期間が所定時間経過し終了した際に消音に変更設定されていた演出音の音量を復旧設定するとともに、前記異常報知期間に亘って消音に変更設定される演出音を前記異常報知期間の間も停止することなく進行を継続する演出音進行継続制御手段と、
G5 前記演出音及び前記報知音を前記音声出力手段から出力する制御を実行する音出力実行制御手段と、を備え、
H 前記報知音音量設定制御手段は、
H1 前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段で調整される音量に応じて演出音の音量を小さく設定している状態又は前記演出音音量変更制御手段が前記第2音量調整手段の操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した演出音の音量を小さく変更している状態であっても、前記異常報知期間において、当該演出音の音量と比べて大きい音量に前記報知音の音量に設定し、
I 前記音出力実行制御手段は、
I1 前記異常報知期間において、報知音による音量と演出音による音量とを合成して出力するものの、当該演出音の音量値を消音するように変更設定することで当該報知音を前記音声出力手段から出力可能とする
J ことを特徴とする遊技機。」

3 拒絶の理由
当審拒絶理由のうちの理由1は、平成29年9月25日に提出された手続補正書により補正がされた請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2記載の事項及び引用文献3記載の事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2004-215805号公報
引用文献2:特開2009-34354号公報
引用文献3:特開2007-89649号公報

4 引用文献に記載された事項
(1)引用文献1
これに対して、当審拒絶理由に引用文献1として引用され、本願の出願前に頒布された特開2004-215805号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア「【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、遊技場に設置されるとともに、遊技の演出等のために音を発する機能を備えた遊技機に関する。」

イ「【0010】
(請求項1)
(特徴点)
請求項1記載の発明は、次の点を特徴とする。
すなわち、請求項1記載の発明は、遊技機(1)の筐体(2)内部に設けられ、当該遊技機(1)が発する音の遊技場側の設定値を設定するために手動で操作される第1の手動操作手段(10)と、前記筐体(2)の表面に露出して設けられ、当該遊技機(1)が発する音の遊技者側の設定値を設定するために手動で操作される第2の手動操作手段(5A, 5B)と、当該遊技機(1)が発する音量を調整するための音量調整手段(65)とを備え、前記音量調整手段(65)は、前記第1の手動操作手段(10)によって設定された遊技場側の設定値に基づくとともに、可変範囲をもって音の大きさを設定し、更に、前記第2の手動操作手段(5A, 5B)によって設定された遊技者側の設定値に基づいて、前記可変範囲内において音の大きさを設定することを特徴とする。
・・・
【0012】
(作用)
本発明によれば、遊技者には操作できない第1の手動操作手段(10)を操作することにより、遊技場側は、その意向に基づいて遊技場側の設定値を適宜設定することができる。そして、遊技者は、第2の手動操作手段(5A, 5B)を操作することにより、音量を適宜調節することができる。
ここで、第2の手動操作手段(5A, 5B)の操作で設定できる音の大きさは、前述の可変範囲内に限られるので、遊技者に音量を調節させても、音量が遊技場側の意向から外れることがなく、音量調整に関し、遊技場側の意向が損なわれないようになる。」

ウ「【0018】
図1には、本実施形態に係る遊技機であるスロットマシン1が示されている。
・・・
【0020】
なお、スロットマシン1の筐体2内部には、当該スロットマシン1が発する音の遊技場側の設定値SP1を設定するために、手動で操作される第1の手動操作手段であるのロータリーDIPデジタルコードスイッチ10(以下、「ロータリースイッチ10」と略す。)が設けられている。このロータリースイッチ10は、10段階程度の音量レベル設定が行えるスイッチであり、前面パネル20の裏面における回転リール30よりも上方の高さレベルに取り付けられている。
【0021】
・・・
また、図柄表示窓20A の右方には、液晶ディスプレイ25が設けられ、また、図柄表示窓20A の上方には、スロットマシン1に複数備えられている演出用の光源26のうちの一つである演出用ランプ26A が設置されている。
また、前面パネル20の下部には、払出口27が設けられている。この払出口27の下方には、受け皿28が設けられ、払出口27の図中右方には、演出音を発するスピーカ29が設けられている。
【0022】
ここで、スロットマシン1には、遊技者が通常の遊技を行う遊技動作モードと、遊技者に音量を調整させる音量調整モードとの二つの動作モードが、通常の動作モードとして設定され、スロットマシン1は、通常、遊技動作モード及び音量調整モードのいずれかで運転されるようになっている。
このため、スロットマシン1には、当該スロットマシン1の動作を制御するための制御装置6が内蔵されている。
なお、図柄表示窓20A の下方に設けられている出目表11には、遊技動作モードから音量調整モードへ移行するモード移行操作についての操作説明が記載されている。モード移行操作としては、例えば、回転リール30がすべて停止している遊技待機状態において、ストップスイッチ5A?5Cのうち、いずれか二つ以上を押圧する操作が採用できる。
・・・
【0024】
このような制御装置6には、図2に示すように、CPU61の他に、リールユニット3の回転リール30を駆動する図示しないモータを制御するモータ制御部71と、液晶ディスプレイ25を制御するLCD制御部72と、演出等のためにスロットマシン1が発する音を生成する音源73と、演出用に設置された光源26の点滅制御を行う光源制御部74とが設けられている。
・・・
【0027】
・・・
LCD制御部72は、液晶ディスプレイ25に表示させる動画及び静止を複数種類記憶しており、CPU61の指令に対応した動画及び静止画を適宜液晶ディスプレイ25に表示させる機能を有するものである。
【0028】
音源73は、音色が異なる複数種類の音と、これらの音を利用した複数種類の楽曲とを記憶しており、CPU61の指令に対応した音及び楽曲を適宜出力する機能を有するものである。
また、音源73は、同時に、音色、音程及び音量の異なる複数種類の音を出力する機能も有している。この機能により、スピーカ29からは、音楽と警報音とを同時に出力可能となっている。なお、音源73から出力される音声信号は、増幅器75で電力信号に増幅されて、スピーカ29を駆動するようになっている。
光源制御部74は、光源26に電力を供給する電源の機能と、光源26への電力を入り切りするスイッチング機能を備えたものである。
【0029】
CPU61は、モータ制御部71、LCD制御部72、音源73及び光源制御部74に指令を与えるマスター制御装置であり、遊技者の操作により、遊技動作制御モード及び音量調整処理モードのモード切り替えを行う機能を備えている。
これに対し、モータ制御部71、LCD制御部72、音源73及び光源制御部74は、CPU61の指令に基づいて動作するスレーブ装置である。
【0030】
そして、CPU61には、ROMに記憶された制御用プログラムがセットアップされることにより、図2に示すように、音源73を制御する音源制御部62と、スロットマシン1の遊技動作を全体的に制御する遊技制御部63と、遊技動作制御モード及び音量調整処理モードの一方から他方への切り替え処理を行うモード切替部64と、スロットマシン1が発する音量を調整するための音量調整手段としての音量調整部65とが設けられている。
・・・
【0034】
また、遊技制御部63は、遊技の進行状況に適合した演出を行うために、LCD制御部72、音源73及び光源制御部74を制御するようになっている。
すなわち、遊技の状況に適した視覚的演出が得られるように、遊技制御部63は、LCD制御部72及び光源制御部74の制御を行うものとなっている。
より具体的に言えば、遊技の状況に応じて光源26を点滅又は点灯させるとともに、当該遊技の状況にふさわしい動画及び静止画が液晶ディスプレイ25に表示されるように、遊技制御部63がLCD制御部72及び光源制御部74を制御するようになっている。
【0035】
さらに、遊技の状況に適した聴覚的演出が得られるように、遊技制御部63は、音源制御部62を介して音源73の制御を行うものとなっている。換言すれば、遊技の状況にふさわしい音声及び楽曲がスロットマシン1から発せられるように、遊技制御部63が音源73を制御するようになっている。
・・・
【0036】
モード切替部64は、遊技者が行った所定のモード移行操作をトリガーとして、モードの切り替え処理を行うものとなっている。
例えば、モード切替部64は、回転リール30がすべて停止している遊技待機状態において、ストップスイッチ5A?5Cのうち、いずれか二つ以上を遊技者が押圧すると、操作遊技動作制御モードから音量調整処理モードへの切り替え処理を行うものとなっている。
そして、モード切替部64は、音量調整処理モードにおいて、ストップスイッチ5C、換言すれば、ENDスイッチ5Cを遊技者が押圧すると、音量調整処理モードから操作遊技動作制御モードへの切り替え処理を行うものとなっている。
また、スロットマシン1に新たにメダルが投入される、あるいは、ベットスイッチ21が操作されることでも、音量調整処理モードから操作遊技動作制御モードへ戻るようになっている。
【0037】
音量調整部65は、音量調整処理モードにおいて、ロータリースイッチ10によって設定された遊技場側の設定値SP1に基づくとともに可変範囲をもって音の大きさを設定し、更に、ストップスイッチ5A,5Bによって設定された遊技者側の設定値SP2に基づいて、前述の可変範囲内において音の大きさを設定するものである。
【0038】
より具体的に説明すれば、音量調整部65は、スロットマシン1に対して遊技場側及び遊技者側の双方が音量調整を未だ行っていない状態、すなわち、工場出荷時の状態では、ロータリースイッチ10にセットされている設定値SP1を読みにいき、この設定値SP1を音の大きさとするように設定されている。
また、音量調整部65は、遊技場側は音量を調整したが、遊技者側が音量を未だ調整していない場合は、遊技場側が音量調整により設定した遊技場側の設定値SP1を音の大きさとするように設定されている。
さらに、音量調整部65は、音量調整処理モードに移行すると、遊技場側の設定値SP1に基づいて設定された可変範囲を示す音量調整画面を液晶ディスプレイ25に表示させ、この状態で、ストップスイッチ5A,5B、換言すれば、UPスイッチ5A及びDOWNスイッチ5Bを遊技者に操作させて、音量の調整を行うものとなっている。」

エ「【0063】
・・・なお、すべての音の音量を可変とするのではなく。(当審注:この「。」(句点)は「、」(読点)の明らかな誤記である)特定の音のみの音量を可変としてもよい。例えば、演出音のみを可変とし、音声ガイダンスの音量は変更不可としてもよい。」

そして、上記記載事項ア?エを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?jは、本願発明のA?Jに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用文献1における引用箇所を示す。)。

(引用発明)
「a 遊技機(【0001】、【0018】)であって、音楽と警報音とを同時に出力可能なスピーカ29が設けられ(【0021】、【0028】)、

b 遊技の状況にふさわしい動画及び静止画が表示される液晶ディスプレイ25が設けられ(【0021】、【0034】)、

c 遊技機の筐体2内部に、遊技機が発する音の大きさを設定する設定値SP1を設定するために、手動で操作される第1の手動操作手段であるロータリースイッチ10が設けられ(【0010】、【0020】、【0038】)、

d 遊技機に内蔵される制御装置6(【0022】)には、遊技制御部63が設けられるCPU61(【0030】)の他に、液晶ディスプレイ25を制御するLCD制御部72と、演出等のために遊技機が発する音を生成する音源73とが設けられ(【0024】)、
音源73から出力される音声信号は、増幅器75で電力信号に増幅されて、スピーカ29を駆動し(【0028】)、
LCD制御部72は、液晶ディスプレイ25に表示させる動画及び静止を複数種類記憶し、CPU61の指令に対応した動画及び静止画を適宜液晶ディスプレイ25に表示させ(【0027】)、
遊技の状況にふさわしい動画及び静止画が液晶ディスプレイ25に表示されるように、遊技制御部63はLCD制御部72を制御し(【0034】)、
遊技の状況にふさわしい音声及び楽曲が遊技機から発せられるように、遊技制御部63は音源73を制御し(【0035】)、

e 遊技機の筐体2の表面に露出して設けられ、遊技機が発する音の遊技者側の設定値を設定するために手動で操作される第2の手動操作手段(5A、5B)を備え(【0010】)、

f 第1の手動操作手段は、遊技機の筐体2内部に設けられ、遊技者には操作できず(【0010】、【0012】、【0020】)、

g、g1 CPU61には、音量調整部65が設けられ(【0030】)、
音量調整部65は、遊技場側は音量を調整したが、遊技者側が音量を未だ調整していない場合は、ロータリースイッチ10によって設定された遊技場側の設定値SP1を音の大きさとするように設定され(【0037】、【0038】)、

g、g2 CPU61には、遊技動作制御モード及び音量調整処理モードの一方から他方への切り替え処理を行うモード切替部64が設けられ(【0030】)、
モード切替部64は、回転リール30がすべて停止している遊技待機状態において、ストップスイッチ5A?5Cのうち、いずれか二つ以上を遊技者が押圧すると、操作遊技動作制御モードから音量調整処理モードへの切り替え処理を行い(【0036】)、
CPU61に設けられた音量調整部65(【0030】)は、音量調整処理モードにおいて、ロータリースイッチ10によって設定された遊技場側の設定値SP1に基づくとともに可変範囲をもって音の大きさを設定し、更に、ストップスイッチ5A,5Bによって設定された遊技者側の設定値SP2に基づいて、可変範囲内において音の大きさを設定するものであり(【0037】)、

g、g5 遊技機に内蔵される制御装置6(【0022】)には、音源73に指令を与えるマスター制御装置であるCPU61と(【0029】)、音を生成する音源73とが設けられ(【0024】)、
音源73は、CPU61の指令に対応した音及び楽曲を適宜出力する機能を有し、同時に、音色、音程及び音量の異なる複数種類の音を出力する機能も有し、この機能により、スピーカ29からは、音楽と警報音とを同時に出力可能となっている(【0028】)、

j 遊技機(【0001】、【0018】)。」

(2)引用文献2
同じく、当審拒絶理由に引用文献2として引用され、本願の出願前に頒布された特開2009-34354号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア「【0001】
本発明は、スロットマシン、パチンコ遊技機などの遊技用価値を用いて遊技を行う遊技機に関し、特に遊技の進行状況に応じた効果音を出力する遊技機に関する。」
・・・
【0010】
上記目的を達成するため、本発明にかかる遊技機は、
遊技用価値(メダル)を用いて遊技を行うとともに、遊技の進行状況に応じた効果音を出力する効果音出力手段(スピーカ7L、7R、7U)を備える遊技機(スロットマシン1)であって、
遊技の進行状況に応じて効果音を生成し、前記効果音出力手段から出力させる効果音出力制御手段(サウンド処理部127)と、
所定の操作手段の操作により前記効果音出力手段から出力される効果音の音量のレベルを設定する音量設定手段(ボリューム調整レバー96)と、
前記遊技機における遊技の進行でエラーが発生したことを検出するエラー検出手段(ステップS107、S108等)とを備え、
前記効果音出力制御手段は、前記エラー検出手段によりエラーの発生が検出されたときに、前記効果音出力手段から所定のエラー音(エラー音)を出力させるエラー音出力制御手段(ステップS618)を含み、
前記エラー音出力制御手段は、前記音量設定手段により設定されている音量のレベルに関わらずに、音量のレベルを前記遊技機において設定可能な最大レベルとして前記エラー音を出力させる(ステップS618:ボリューム調整レバー96の調整に関わらずに、電子ボリューム127aのボリューム設定を最大レベルに設定する)
ことを特徴とする。」

イ「【0059】
スロットマシン1の下部前面側と、上部前面側の左右とには、それぞれ演出手段としてのスピーカ7U、7L、7Rが設けられている。スピーカ7U、7L、7Rは、後述するビッグボーナス、レギュラーボーナスという遊技者に有利な遊技状態において、固有の効果音(楽曲)を継続して出力する。また、スタートレバー11や停止ボタン12L、12C、12Rの操作時、或いは入賞時において所定の効果音を出力する。さらにはエラーの発生時、前面扉の解放時、設定値の変更時、並びに賭け数及びクレジットの精算時おける警報音の出力を行うと共に、遊技状態に応じた様々な演出音の出力を行う。
・・・
【0061】
図2は、このスロットマシン1の制御回路の構成を示す図である。図示するように、このスロットマシン1の制御回路は、電源基板100、遊技制御基板101、演出制御基板102、リール中継基板103、リールランプ中継基板104、外部出力基板105、及び演出中継基板106に大きく分けて構成される。

ウ「【0075】
演出制御基板102は、スロットマシン1における演出の実行を制御するサブ側の制御基板であり、CPU121、RAM122、ROM123及びI/Oポート124を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部120を搭載している。また、乱数発生回路125及びサンプリング回路126、並びにサウンド処理部(SDP)127を搭載しており、CPU121は、サンプリング回路126により乱数発生回路125がカウントしている値を取得することにより、遊技制御基板101と同様のハードウェア乱数機能を形成している。割り込み処理によるソフトウェア乱数機能も有している。
・・・
【0077】
サウンド処理部127は、CPU121からの指示に従ってROM123に格納されている各種音声再生用データを読み出し、後述するボーナス中楽曲等の演出音や各種警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させる。サウンド処理部127は、電子ボリューム127aを備えており、電子ボリューム127aによるレベルの設定に応じたボリュームで再生した音声をスピーカ7L、7R、7Uから出力させる。
【0078】
サウンド処理部127には、前面扉を開放状態として操作可能となるボリューム調整レバー96が接続されており、電子ボリューム127aに設定されるレベルは、基本的にはボリューム調整レバー96により設定されているレベルとなる。もっとも、エラーの発生時、前面扉の解放時、設定値の変更時、並びに賭け数及びクレジットの精算時おける警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させる場合には、電子ボリューム127aに設定されるレベルは、ボリューム調整レバー96に調整されているレベルに関わらずに最大レベルとなる。
【0079】
演出制御基板102には、スピーカ7L、7R、7U及びボリューム調整レバー96の他に、遊技効果ランプ75A?75M、液晶表示器4、蛍光灯6、ウェイトランプ61、ボーナス告知ランプ66が接続されている。また、リールランプ中継基板104を介してリールランプ3LPが接続されている。また、演出制御基板102の制御部120は、これら各部をそれぞれ制御して、演出を行っている。

エ「【0258】
図22、図23は、演出制御基板102のCPU121が実行する処理を示すフローチャートである。
・・・
【0268】
受信したコマンドの種類がステップS110で送信されたエラーコマンド、或いは各種エラーが発生したときに送信されたエラーコマンドであった場合には、RAM122にボーナス中フラグが設定されているかどうかを判定する(ステップS616)。ボーナス中フラグが設定されていれば、ボーナス中楽曲が再生されているので、その再生を停止させて(ステップS617)、ステップS618の処理に進む。ボーナス中フラグが設定されていなければ、そのままステップS618の処理に進む。
【0269】
ステップS618では、ボリューム調整レバー96の調整に関わらずに、電子ボリューム127aのボリューム設定を最大レベルに設定する。そして、サウンド処理部127にエラー音の再生開始を指示する。サウンド処理部127は、この指示に基づいてエラー音の再生を開始させ、以後、後述するステップS619で再生が停止されるまでエラー音を継続して再生する。設定変更音または精算音の再生中である場合には、これらとエラー音の両方が並行して再生され、スピーカ7L、7R、7Uから出力されるものとなる。そして、ステップS601の処理に戻る。
・・・
【0283】
以上説明したように、この実施の形態にかかるスロットマシン1では、演出制御基板102に搭載されたサウンド処理部127によりボーナス中信号などの遊技の進行状況に応じた演出音とエラー音、設定変更音、精算音などの警報音とが再生され、スピーカ7L、7R、7Uから出力されるものとなっている。ここで、スピーカ7L、7R、7Uから出力される音声のボリュームのレベルは、最終的には電子ボリューム127aによって設定されるものとなるが、電子ボリューム127aにより設定されるボリュームのレベルは、ボリューム調整レバー96によって調整される。」

オ「【0335】
上記の実施の形態では、遊技の進行状況に応じた演出としてスピーカ7L、7R、7Uから出力される音声は、ボーナス中楽曲だけとしていたが、これに限るものではなく、遊技の進行状況が所定の状況にある複数ゲームの間だけ継続して、楽曲などの所定の音声を再生して、スピーカ7L、7R、7Uから出力させるものとすることができる。例えば、内部抽選においてビッグボーナスまたはレギュラーボーナスとチェリーに重複して当選する場合と、チェリーに単独で当選する場合とがあるものとしたときには、チェリーの入賞後に所定ゲーム数(例えば、3ゲーム)を消化するまで継続して連続演出楽曲を再生して、スピーカ7L、7R、7Uから出力させるものとしてもよい。
【0336】
このような連続演出中楽曲の再生中に精算ボタン16が操作されたとき、或いはエラーが発生したときも、ボーナス中楽曲の場合と同様に連続演出中楽曲の再生を停止させるものとすればよい。なお、この間は、リプレイ当選確率を通常の遊技状態よりも高くするRTに遊技状態を制御するものとして、連続演出楽曲の再生が停止される所定ゲーム数を消化するまでビッグボーナスまたはレギュラーボーナスに入賞しにくくなるようにしてもよい。
【0337】
上記の実施の形態では、ボーナス中楽曲の再生中に精算ボタン16が操作されたとき、或いはエラーが発生したときに、ボーナス中楽曲の再生を停止していた。もっとも、ボーナス中楽曲のような遊技の進行状況に応じた演出のための音声を再生する再生装置と、エラー音、設定変更音、エラー音などの警報音を再生する再生装置が別系統で設けられている場合には、ボーナス中楽曲の再生中に精算ボタン16が操作されたとき、或いはエラーが発生したときでもボーナス中楽曲の再生を継続するものの、再生されるボーナス中楽曲のレベルを低下させるものとしてもよい。演出のための音声を再生する再生装置がミュート機能を備えるのであれば、ボーナス中楽曲の再生中に精算ボタン16が操作されたとき、或いはエラーが発生したときには、ボーナス中楽曲をミュートするものとしてもよい。これによっても、遊技が中断されているのにボーナス中楽曲が大音量でスピーカ7L、7R、7Uから出力されて続けて、周囲の遊技者に迷惑をかけてしまうということがなくなる。
・・・
【0341】
なお、精算音、設定変更音、エラー音といった警報音を、各々の警報音を再生/出力させる事象の終了した後にも継続して再生/出力させる処理を行うものとしているが、各々の警報音の再生/出力を継続する期間(特に時間)は、当該警報音を再生/出力させる事象の終了したときからの期間で定めるものとしても、当該警報音を再生/出力させる事象の開始したとき(或いは当該事象が現に発生しているときの特定時点(例えば、設定変更音ならば設定スイッチ91が最初に操作されたタイミング、精算音ならば所定数までメダルが払い出されたタイミング))からの期間で定めるものとしてもよい。後者の場合は、警報音を再生/出力させる事象の開始したとき(或いは当該事象が現に発生しているときの特定時点)からの定められた期間を経過するまでか、当該事象が終了するまでかの遅い方まで、警報音を継続して出力させるものとすることができる。」


(ア)引用文献2の上記ウの【0077】、同エの【0258】、【0268】、【0269】、及び同オの【0337】の各記載から、
「ボーナス中楽曲のような遊技の進行状況に応じた演出のための音声を再生する再生装置と、設定変更音、エラー音などの警報音を再生する再生装置は別系統で設け(【0337】)、
演出制御基板102のCPU121が実行する処理では(【0258】)、
ボーナス中楽曲の再生中にエラーが発生したときでもボーナス中楽曲の再生を継続するものの、再生されるボーナス中楽曲のレベルを低下させるか、演出のための音声を再生する再生装置がミュート機能を備えるのであれば、楽曲をミュートし(【0337】)、
ボーナス中楽曲等の演出音や各種警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させ(【0077】)、」
との事項(以下、「認定事項1」という。)を導くことができる

(イ)さらに、同引用文献2の上記オの【0335】及び【0336】の記載と、上記認定事項1とを合わせて、
「g4、I、I1
ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のような遊技の進行状況に応じた演出のための音声を再生する再生装置と、エラー音、設定変更音などの警報音を再生する再生装置は別系統で設け(【0337】)、
演出制御基板102のCPU121が実行する処理では(【0258】)、
ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生中にエラーが発生したときでもボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生を継続するものの、再生されるボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のレベルを低下させるか、演出のための音声を再生する再生装置がミュート機能を備えるのであれば、楽曲をミュートし(【0335】、【0336】、【0337】)、
ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の演出音や各種警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させ(【0077】)」
との事項(以下、「認定事項2」という。)を導くことができる。

そして、上記記載事項ア?オ、及びウ?オに基づく認定事項2を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載の事項」という。)が記載されていると認められる(段落冒頭の記号は、本願発明の分説と対応させて当審で付した。)。

(引用文献2記載の事項)
「a 遊技機の下部前面側と、上部前面側の左右とにはそれぞれ、エラーの発生時、前面扉の解放時、設定値の変更時における警報音の出力を行うと共に、遊技状態に応じた様々な演出音の出力を行う、演出手段としてのスピーカ7U、7L、7Rが設けられ(【0010】、【0059】)、

c 遊技機はサウンド処理部127を備え(【0010】)、
サウンド処理部127はボーナス中楽曲等の演出音や各種警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させ(【0077】)、サウンド処理部127は、電子ボリューム127aを備えて電子ボリューム127aによるレベルの設定に応じたボリュームで再生した音声をスピーカ7L、7R、7Uから出力させ(【0077】)、

d 遊技機の制御回路を構成し(【0061】)、スピーカ7L、7R、7U及びボリューム調整レバー96の他に液晶表示器4が接続される演出制御基板102であって、演出制御基板102の制御部120が、これら各部をそれぞれ制御して演出を行っている、演出制御基板102を備え(【0079】)、

f サウンド処理部127には、前面扉を開放状態として操作可能となるボリューム調整レバー96が接続され、サウンド処理部127が備える電子ボリューム127a(【0077】)に設定されるレベルは、基本的にはボリューム調整レバー96により設定されているレベルとなり(【0078】)、

g 演出制御基板102は(【0075】)、

g1 サウンド処理部127を搭載し(【0283】)、該サウンド処理部127が備える電子ボリューム127aによるレベルの設定に応じたボリュームで再生した音声をスピーカ7L、7R、7Uから出力させ(【0077】)、

g3 サウンド処理部127には、ボリューム調整レバー96が接続され(【0078】)、
警報音を再生/出力させる事象の開始したときからの定められた期間を経過するまで(【0341】)警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させる場合には、電子ボリューム127aに設定されるレベルは、ボリューム調整レバー96に調整されているレベルに関わらずに最大レベルとなり(【0078】)、

g4、I、I1
ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のような遊技の進行状況に応じた演出のための音声を再生する再生装置と、エラー音、設定変更音などの警報音を再生する再生装置は別系統で設け(【0337】)、
演出制御基板102のCPU121が実行する処理では(【0258】)、
ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生中にエラーが発生したときでもボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生を継続するものの、再生されるボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のレベルを低下させるか、演出のための音声を再生する再生装置がミュート機能を備えるのであれば、楽曲をミュートし(【0335】、【0336】、【0337】)、ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の演出音や各種警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させる(【0077】)、(認定事項2)

j 遊技機(【0001】)。」

5 対比
本願発明と引用発明とを、分説に従い対比する(対比の見出しとしての(a)?(j)は、引用発明の分説構成と対応させた。)。

(a)引用発明の構成aにおける「音楽」は本願発明の構成Aにおける「演出音」に相当する。そして「遊技機」において「音楽」が「遊技の進行による」ものであることは技術常識であることから、引用発明の構成aにおける「音楽」が本願発明の構成Aにおける「遊技の進行による演出音」に相当することは明らかである。
また、引用発明の構成aにおける「警報音」は本願発明の構成Aにおける「報知音」に相当する。そして「遊技機」において「警報音」が「遊技機に対する異常状態を報知する」ものであることは技術常識であることから、引用発明の構成aにおける「警報音」が本願発明の構成Aにおける「遊技機に対する異常状態を報知する報知音」に相当することは明らかである。
そして、引用発明の構成aにおける「スピーカ29」は、本願発明の構成Aにおける「音声出力手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成aの「音楽と警報音とを同時に出力可能なスピーカ29」は、本願発明の構成Aの「遊技機に対する異常状態を報知する報知音と、遊技の進行による演出音とを出力する複数の音声出力手段」と、「遊技機に対する異常状態を報知する報知音と、遊技の進行による演出音とを出力する音声出力手段」との点で共通するものということができる。

(b)引用発明の構成bの「液晶ディスプレイ25」は、同構成bによれば「遊技の状況にふさわしい動画及び静止画」(演出)が表示されるものであることから、本願発明の構成Bの「演出表示手段」に相当する。
してみると、引用発明における構成bは、本願発明における構成Bに相当する構成を備えているといえる。

(c)引用発明の構成cの「遊技機が発する音」が同構成aの「スピーカ29」(音声出力手段)から出力する音であることは明らかであるから、引用発明の構成cの「遊技機が発する音の大きさを設定する設定値SP1を設定」することは本願発明の構成Cの「音声出力手段から出力する音量を調整」することに相当する。
そして、引用発明の構成cの「第1の手動操作手段」、「ロータリースイッチ10」はいずれも本願発明の構成Cの「第1音量調整手段」に相当するとともに、引用発明の構成cの「手動で操作される第1の手動操作手段であるロータリースイッチ10」は本願発明の構成Cの「調整可能な第1音量調整手段」に相当する。
してみると、引用発明における構成cは、本願発明における構成Cに相当する構成を備えているといえる。

(d)引用発明の構成dの「スピーカ29」、「液晶ディスプレイ25」がそれぞれ本願発明の「音声出力手段」、「演出表示手段」に相当することは上記説示のとおりである。
そして、引用発明の構成dにおいては、「遊技制御部63は音源73を制御し」て「演出等のために遊技機が発する音を生成する音源73」「から出力される音声信号」が「増幅器75で電力信号に増幅されて、スピーカ29を駆動」しているのだから、当該「遊技制御部63が設けられるCPU61」および「音源73」が設けられている「制御装置6」は、本願発明の構成Dにおける「音声出力手段」「を演出の進行にもとづいて制御する演出制御手段」に相当するものということができる。
また、引用発明の構成dにおいては、「遊技の状況にふさわしい動画及び静止画が液晶ディスプレイ25に表示されるように、遊技制御部63はLCD制御部72を制御し」て「LCD制御部72は、液晶ディスプレイ25に表示させる動画及び静止を複数種類記憶し、CPU61の指令に対応した動画及び静止画を適宜液晶ディスプレイ25に表示させ」ているのだから、当該「遊技制御部63が設けられるCPU61」および「LCD制御部72」が設けられている「制御装置6」は、本願発明の構成Dにおける「演出表示手段」「を演出の進行にもとづいて制御する演出制御手段」に相当するものということができる。
してみると、引用発明における構成dは、本願発明における構成Dに相当する構成を備えているといえる。

(e)引用発明の構成eの「遊技機が発する音」が同構成aの「スピーカ29」(音声出力手段)から出力する音であることは明らかであるから、引用発明の構成eの「遊技機が発する音の遊技者側の設定値を設定する」ことは本願発明の構成Eの「音声出力手段から出力する音量を調整」することに相当する。
そして、引用発明の構成eの「第2の手動操作手段(5A、5B)」は、本願発明の構成Eの「第2音量調整手段」に相当するとともに、同構成eの「第2の手動操作手段(5A、5B)」は、同構成cの「第1の手動操作手段」(第1音量調整手段)とは別のものなのだから、引用発明の構成eの「設定値を設定するために手動で操作される第2の手動操作手段(5A、5B)」は、本願発明の構成Eの「音量を調整可能な前記第1音量調整手段とは異なる第2音量調整手段」に相当する。
してみると、引用発明における構成eは、本願発明における構成Eに相当する構成を備えているといえる。

(f)引用発明の構成fの「遊技機の筐体2内部に設けられ、遊技者には操作でき」ない「第1の手動操作手段」は、本願発明の「第1音量調整手段」であって、「遊技者が操作することができない調整手段」に相当する。
してみると、引用発明における構成fは、本願発明における構成Fに相当する構成を備えているといえる。

(g)(g1)
引用発明の構成g、g1の「ロータリースイッチ10によって設定された遊技場側の設定値SP1を音の大きさとするように設定」すること、「音量調整部65」は、それぞれ本願発明の構成G1の「第1音量調整手段で調整される音量で演出音の音量を設定する」こと、「演出音音量設定制御手段」に相当する。
ここで、上記(d)によれば、引用発明における「制御装置6」は本願発明の「演出制御手段」に相当する一方、引用発明の構成dによれば「制御装置6」には「遊技制御部63が設けられるCPU61」が設けられているのだから、引用発明の「CPU61」もまた本願発明の「演出制御手段」を構成するものということができる。
そうすると、引用発明の構成g、g1の「CPU61には」「音量調整部65が設けられ」ることは、本願発明の構成G、G1の「演出制御手段は」「第1音量調整手段で調整される音量で演出音の音量を設定する演出音音量設定制御手段と」「を備え」ることに相当する。
してみると、引用発明における構成g、g1は、本願発明における構成G、G1に相当する構成を備えているといえる。

(g)(g2)
ア 引用発明の構成g、g2の「回転リール30がすべて停止している遊技待機状態において」は、本願発明の構成G2の「所定の条件が成立しているとき」に相当する。

イ 引用発明の構成g、g2の「ストップスイッチ5A,5Bによって設定された遊技者側の設定値SP2に基づいて、可変範囲内において音の大きさを設定する」ことは、本願発明の構成G2の「遊技者が操作可能な前記第2音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて」「演出音の音量を変更する」ことに相当する。

ウ また、引用発明の構成g、g2の「ストップスイッチ5A,5Bによって設定された遊技者側の設定値SP2に基づいて、可変範囲内において音の大きさを設定する」ことは、その前提として、「音量調整部65」(演出音音量設定制御手段)が「ロータリースイッチ10によって設定された遊技場側の設定値SP1に基づく」「音の大きさ」(演出音音量設定制御手段が設定した演出音の音量)を設定しているのだから、引用発明の構成g、g2の「ストップスイッチ5A,5Bによって設定された遊技者側の設定値SP2に基づいて、可変範囲内において音の大きさを設定する」ことが、「遊技者が操作可能な前記第2音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した演出音の音量を変更する」ことに相当するのは明らかである。そして、引用発明の構成g、g2の「音量調整部65」は本願発明の構成G2の「演出音音量変更制御手段」にも相当する。

エ また、引用発明の構成g、g2の「CPU61に」「音量調整部65」を設けることは、本願発明の構成G、G2の「演出制御手段は」「演出音音量変更制御手段と」「を備える」ことに相当する。

オ してみると、引用発明における構成g、g2は、本願発明における構成G、G2に相当する構成を備えているといえる。

(g)(g5) 引用発明の構成g、g5における「音源73」は、「同時に、音色、音程及び音量の異なる複数種類の音を出力する機能も有し、この機能により、スピーカ29からは、音楽と警報音とを同時に出力可能となっている」のだから、音楽(演出音)及び警報音(報知音)をスピーカ29(音声出力手段)から出力する制御を実行しているものということができ、本願発明の構成G5の「前記演出音及び前記報知音を前記音声出力手段から出力する制御を実行する音出力実行制御手段」に相当するものということができる。
また、引用発明の構成g、g5における「CPU61」は、「音源73に指令を与えるマスター制御装置である」のだから、これもまた本願発明の構成G5の「音出力実行制御手段」に相当するものということができる。
そして、引用発明の構成g、g5の「制御装置6には」「CPU61と」「音源73とが設けられ」ることは、本願発明の構成G、G5の「演出制御手段は」「音出力実行制御手段と、を備え」ることに相当する。
してみると、引用発明における構成g、g5は、本願発明における構成G、G5に相当する構成を備えているといえる。

(j)引用発明の遊技機は、本願発明の遊技機に相当する。
引用発明における構成jは、本願発明における構成Jに相当する構成を備えるものである。

そうすると、上記(a)?(j)によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「A′遊技機に対する異常状態を報知する報知音と、遊技の進行による演出音とを出力する音声出力手段と、
B 演出表示手段と、
C 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な第1音量調整手段と、
D 前記音声出力手段と前記演出表示手段とを演出の進行にもとづいて制御する演出制御手段と、
E 前記音声出力手段から出力する音量を調整可能な前記第1音量調整手段とは異なる第2音量調整手段と、を備える遊技機において、
F 前記第1音量調整手段と前記第2音量調整手段のうち、少なくとも、前記第1音量調整手段は、遊技者が操作することができない調整手段とされ、
G 前記演出制御手段は、
G1 前記第1音量調整手段で調整される音量で演出音の音量を設定する演出音音量設定制御手段と、
G2 所定の条件が成立しているときに、遊技者が操作可能な前記第2音量調整手段が操作されたことにより該操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した演出音の音量を変更する演出音音量変更制御手段と、
G5 前記演出音及び前記報知音を前記音声出力手段から出力する制御を実行する音出力実行制御手段と、を備える、
J 遊技機。」

(相違点1)(構成A)
構成Aの「音声出力手段」について、本願発明の「音声出力手段」は、「複数の音声出力手段」であるのに対し、引用発明のスピーカ29(音声出力手段)は、複数であるか不明である点。

(相違点2)(構成G、G3、H、H1)
構成G、G3、H、H1に関して、本願発明は、
「G 前記演出制御手段は、」
「G3 異常状態に基づく異常報知期間において前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量とは異なる音量に設定する報知音音量設定制御手段」
「を備え、」
「H 前記報知音音量設定制御手段は、
H1 前記演出音音量設定制御手段が前記第1音量調整手段で調整される音量に応じて演出音の音量を小さく設定している状態又は前記演出音音量変更制御手段が前記第2音量調整手段の操作に応じて前記演出音音量設定制御手段が設定した演出音の音量を小さく変更している状態であっても、前記異常報知期間において、当該演出音の音量と比べて大きい音量に前記報知音の音量に設定」
するのに対し、引用発明は、係る構成を有しない点。

(相違点3)(構成G、G4)
構成G、G4に関し、本願発明は、
「G 前記演出制御手段は、」
「G4 前記異常報知期間が発生した際に前記音声出力手段から出力されていた演出音の音量を消音に変更設定し、前記演出音の音量が消音に変更設定され前記報知音が出力される前記異常報知期間が所定時間経過し終了した際に消音に変更設定されていた演出音の音量を復旧設定するとともに、前記異常報知期間に亘って消音に変更設定される演出音を前記異常報知期間の間も停止することなく進行を継続する演出音進行継続制御手段と、」
「を備え」
るのに対し、引用発明は、係る構成を有しない点。

(相違点4)(構成I、I1)
構成I、I1に関して、本願発明は、
「I 前記音出力実行制御手段は、
I1 前記異常報知期間において、報知音による音量と演出音による音量とを合成して出力するものの、当該演出音の音量値を消音するように変更設定することで当該報知音を前記音声出力手段から出力可能とする」
のに対し、引用発明は、係る構成を有しない点。

6 判断
上記相違点について検討する。

(相違点1について)(構成A)
引用文献2記載の事項のとおり、引用文献2には、
「a 遊技機の下部前面側と、上部前面側の左右とにはそれぞれ、エラーの発生時、前面扉の解放時、設定値の変更時における警報音の出力を行うと共に、遊技状態に応じた様々な演出音の出力を行う、演出手段としてのスピーカ7U、7L、7Rが設けられた、
j 遊技機。」
が記載されている。
引用文献2記載の事項の構成aの「エラーの発生時、前面扉の解放時、設定値の変更時における警報音」、「遊技状態に応じた様々な演出音」、「スピーカ7U、7L、7R」はそれぞれ本願発明の構成aの「遊技機に対する異常状態を報知する報知音」、「遊技の進行による演出音」、「複数の音声出力手段」に相当する。
そうすると、引用文献2記載の事項から、
「a 遊技機に対する異常状態を報知する報知音と、遊技の進行による演出音とを出力する複数の音声出力手段」を備えた「遊技機」は、本願出願前において既に公知であったということができる。
そして、引用発明と引用文献2記載の事項とはいずれも、報知音と演出音とを出力する音声出力手段を備えた遊技機である点で共通するのだから、引用発明に対し引用文献2記載の事項を適用し、「音声出力手段」を「複数の音声出力手段」とし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することである。

(相違点2について)(構成G、G3、H、H1)
引用文献2記載の事項によれば、引用文献2には、
「a 遊技機の下部前面側と、上部前面側の左右とにはそれぞれ、エラーの発生時、前面扉の解放時、設定値の変更時(いずれも遊技機に対する異常状態に相当)における警報音(報知音)の出力を行うと共に、遊技状態に応じた様々な演出音(遊技の進行による演出音)の出力を行う、演出手段としてのスピーカ7U、7L、7R(複数の音声出力手段)が設けられ、

c 遊技機はサウンド処理部127(第1音量調整手段)を備え、
サウンド処理部127(第1音量調整手段)はボーナス中楽曲等の演出音や各種警報音を再生してスピーカ7L、7R、7U(複数の音声出力手段)から出力させ、サウンド処理部127は、電子ボリューム127aを備えて電子ボリューム127aによるレベル(音量)の設定に応じた(調整可能な)ボリュームで再生した音声をスピーカ7L、7R、7Uから出力させ、

f サウンド処理部127(第1音量調整手段であり、演出音音量設定制御手段にも相当)には、前面扉を開放状態として操作可能となるボリューム調整レバー96(遊技者が操作することができない調整手段に相当するとともに、当該レバーもまた第1音量調整手段に相当する)が接続され、サウンド処理部127が備える電子ボリューム127aに設定されるレベルは、基本的にはボリューム調整レバー96により設定されているレベルとなり、

g 演出制御基板102(演出制御手段)は、

g1 サウンド処理部127を搭載し、サウンド処理部127が備える電子ボリューム127aによるレベルの設定に応じたボリュームで再生した音声をスピーカ7L、7R、7Uから出力させ、

g3 サウンド処理部127には、ボリューム調整レバー96が接続され、
警報音を再生/出力させる事象の開始したときからの定められた期間を経過するまで(異常状態に基づく期間)警報音(遊技機に対する異常状態を報知するための報知音)を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させる場合には、電子ボリューム127aに設定されるレベル(異常状態を報知するための報知音の音量)は、ボリューム調整レバー96に調整されているレベル(演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量)に関わらずに最大レベルとなる、
j 遊技機。」
が記載されている。(丸括弧内の用語は、本願発明の対応する構成を示す。)

ア ここで、まず本願発明の構成G3の
「前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量とは異なる音量に設定する」
との事項について、本願の発明の詳細な説明を参照する。すると、本願の明細書【0609】には、
「具体的には、演出音に対しては、上述した、音量調整ボリューム4140aのつまみ部が回動操作されて調節された基板ボリュームがサブボリューム値として設定され、報知音に対しては、音量調整ボリューム4140aのつまみ部の回動操作に基づく音量調整に全く依存されず最大音量がサブボリューム値として設定されるようになっている。」
と記載されている一方、同【0579】には
「・・・音量調整ボリューム4140aのつまみ部が回動操作されることにより抵抗値が可変し、つまみ部の回転位置における抵抗値により分圧された電圧を、アナログ値からデジタル値に変換して、値0?値1023までの1024段階の値に変換している。本実施形態では、1024段階の値を7つに分割して基板ボリューム0?6として管理している。基板ボリューム0では消音、基板ボリューム6では最大音量に設定されており、・・・基板ボリューム0?6に設定された音量となるように・・・本体枠3に設けたスピーカ821及び扉枠5に設けたスピーカ130,222,262から音楽や効果音が流れるようになっている。」
と記載され、さらに同【0579】において
「なお、本実施形態では、音楽や効果音のほかに、パチンコ遊技機1の不具合の発生やパチンコ遊技機1に対する不正行為をホールの店員等に報知するための報知音や、・・・告知音も本体枠3に設けたスピーカ821及び扉枠5に設けたスピーカ130,222,262から流れるが、報知音や告知音は、つまみ部の回動操作に基づく音量調整に全く依存されずに流れる仕組みとなっており、消音から最大音量までの音量をプログラムにより液晶及び音制御部4160(後述する音源内蔵VDP4160a)を制御して調整することができるようになっている。・・・これにより、例えば、ホールの店員等が音量調整ボリューム4140aのつまみ部を回動操作して音量を小さく設定した場合であっても、本体枠3に設けたスピーカ821及び扉枠5に設けたスピーカ130,222,262から流れる音楽や効果音等の演出音が小さくなるものの、パチンコ遊技機1に不具合が発生しているときや遊技者が不正行為を行っているときには大音量(本実施形態では、最大音量)に設定した報知音を流すことができる。したがって、演出音の音量を小さくしても、報知音によりホールの店員等が不具合の発生や遊技者の不正行為を気付き難くなることを防止することができる。」
と記載されている。

そうすると、本願の発明の詳細な説明を総じてみると、音量調整ボリューム4140aのつまみ部が回動操作されることにより設定される音量(本願発明の、演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量)は、基板ボリューム0(消音)から基板ボリューム6(最大音量)の範囲であることが記載される一方、報知音(本願発明の、遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量)は、つまみ部の回動操作に基づく音量調整に全く依存されないものの、消音から最大音量までの音量に調整することができ、大音量(最大音量)にすることも記載されているということができる。
(ちなみに、本願発明の構成G3の「前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量とは異なる音量に設定する」(下線部は平成30年7月27日提出の手続補正書によってなされた補正箇所)については、同日提出の意見書において、「異常状態の発生によって報知音が出力される際は、・・・演出音の音量とは異なる音量(本実施例では最大音量)で、報知音が出力されることを明確に特定した」と説明されている。)

しかし、本願の発明の詳細な説明において、報知音の「最大音量」が、本願発明の「報知音の音量」に対応するものとしてみても、その「最大音量」は、音量調整ボリューム4140aのつまみ部を回動操作することによって設定することができる音量(演出音音量設定制御手段で設定されて出力できる音量)のひとつであり、報知音の「最大音量」は、演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量と必ず異なるというものではない。

そうすると、本願発明の構成G3の
「前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量とは異なる音量に設定する」
とは、演出音音量設定制御手段で設定され出力される音量に全く依存されずに、遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量とは異なる音量に設定することができるのであれば、少なくとも本願発明の
「前記遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を前記演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量とは異なる音量に設定する」
に当てはまるものと解するのが相当である。

イ 上記理解に基づいて、本願発明の構成G3と、引用文献2記載の事項を改めて対比する。
引用文献2記載の事項の構成g3の「電子ボリューム127aに設定されるレベル」(異常状態を報知するための報知音の音量)が「ボリューム調整レバー96に調整されているレベルに関わらずに最大レベルとなる」ことは、報知音の音量が、演出音音量設定制御手段で設定され出力される音量に全く依存されずに設定されることに当たる。
また、引用文献2記載の事項の構成g3の「電子ボリューム127aに設定されるレベル」(異常状態を報知するための報知音の音量)を「最大レベルと」することで、ボリューム調整レバー96に調整されているレベル(演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量)とは異なる音量に設定できることは明らかである。
さらに、一般に「警報音を再生/出力させる事象」が発生した場合、ただちに「異常報知」をすることが技術常識であることからすると、引用文献2記載の事項における「警報音を再生/出力させる事象の開始したときからの定められた期間を経過するまで」(異常状態に基づく期間)が、「異常状態に基づく異常報知期間」であることは明らかであるといえる。

してみると、引用文献2記載の事項から、
G 演出制御手段が、
G3 異常状態に基づく異常報知期間において遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量を演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量とは異なる音量に設定する報知音音量設定制御手段と、
を備えた
J 遊技機
は、本願出願前に公知であったということができる。

そして、引用発明と引用文献2記載の事項とは、いずれも、音声出力手段から出力する音量を調整可能な第1音量調整手段および演出音音量設定制御手段を有する遊技機である点で共通する。
さらに、引用文献1においては、その【0063】に、「なお、全ての音の音量を可変とするのではなく、特定の音のみの音量を可変としてもよい。例えば、演出音のみを可変とし、音声ガイダンスの音量は変更不可としてもよい。」と記載されており、当該記載から、引用文献1には演出音のみを可変とすることが示唆されていたということができる。
してみると、引用発明に対し、引用文献2記載の事項の上記技術を適用し、本願発明の構成G3の構成とすることは、当業者が容易に想到することというべきである。

そして、引用文献2記載の事項の構成g3によれば、エラー音のボリュームに設定されるレベル(遊技機に対する異常状態を報知するための報知音の音量)は、ボリューム調整レバー96に調整されているレベルに関わらずに最大レベルとされるのだから、引用発明に対し引用文献2記載の事項の上記構成を適用した結果、第1音量調整手段で調整される音量に応じて演出音の音量を小さく設定している状態又は第2音量調整手段の操作に応じて演出音の音量を小さく変更している状態であっても、報知音の音量は、異常報知期間において、当該演出音の音量と比べて大きい音量に設定されることとなるのは明らかである。
してみると、引用発明1に対して引用文献2記載の事項を適用した結果として、本願の構成H、H1を備えることとなるのは明らかである。

(相違点3について)(構成G、G4)
引用文献2記載の事項によれば、引用文献2には、
「g 演出制御基板102(演出制御手段)は、
g1 サウンド処理部127を搭載し、
g3 サウンド処理部127には、ボリューム調整レバー96が接続され、
警報音を再生/出力させる事象の開始したときからの定められた期間を経過するまで(異常状態に基づく報知期間)警報音(遊技機に対する異常状態を報知するための報知音)を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させる場合には、電子ボリューム127aに設定されるレベル(異常状態を報知するための報知音の音量)は、ボリューム調整レバー96に調整されているレベル(演出音音量設定制御手段で設定されて出力している音量)に関わらずに最大レベルとなり、
g4、I、I1 ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のような遊技の進行状況に応じた演出のための音声を再生する再生装置と、エラー音、設定変更音などの警報音を再生する再生装置は別系統で設け、
演出制御基板102のCPU121(演出音抑制制御手段及び演出音進行継続制御手段に相当)が実行する処理では、
ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生中にエラーが発生したとき(遊技機に対する異常状態が発生した場合)でもボーナス中楽曲または連続演出中楽曲(演出音)の再生を継続するものの、再生されるボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のレベル(音量)を低下させるか、演出のための音声を再生する再生装置がミュート機能を備えるのであれば、楽曲をミュート(消音)し、ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の演出音や各種警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させる、
j 遊技機。」
が記載されている。
引用文献2記載の事項では、エラー(遊技機に対する異常状態)が発生したときは、ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲(演出音)の再生を継続するものの、再生されるボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のレベル(音量)を低下またはミュート(消音)させるのだから、「ミュート」(消音)にされた演出音は、エラー発生の期間(報知音が出力される異常報知期間)の間も停止することなく進行を継続する制御がなされていることは明らかである。
そうすると、引用文献2記載の事項から、
G 演出制御手段が、
G4′ 前記異常報知期間が発生した際に前記音声出力手段から出力されていた演出音の音量を消音に変更設定し、
前記異常報知期間に亘って消音に変更設定される演出音を報知音が出力される前記異常報知期間の間も停止することなく進行を継続する演出音進行継続制御手段と、
を備えた
J 遊技機
が、本願出願前において公知であったことは明らかである。
引用発明と引用文献2記載の事項はともに、報知音および演出音を出力する遊技機である点で共通することから、引用発明の報知音および演出音の出力に対して引用文献2記載の事項の上記構成g4、I、I1を適用することは、当業者が容易に想到することである。

そして、引用文献2記載の事項の構成g3によれば、エラー音といった警報音(報知音)は、警報音を再生/出力させる事象の開始したときからの定められた期間を経過するまで(異常状態に基づく異常報知期間)再生されスピーカ7L、7R、7Uから出力されるのだから、警報音を再生/出力させる事象の開始したときからの定められた期間を経過すれば警報音(報知音)が終了することとなるのは当然であって、その際に、消音に変更設定されていた演出音の音量を復旧設定する制御をすることとなるのは明らかなことである。
してみると、引用発明に対し引用文献2記載の事項を適用し、
「前記演出音の音量が消音に変更設定され前記報知音が出力される前記異常報知期間が所定時間経過し終了した際に消音に変更設定されていた演出音の音量を復旧設定する」ことは、当業者にとってみれば当然の設定である。

ちなみに、演出音の音量が消音に変更設定され報知音が出力される異常報知が終了した際に消音に変更設定されていた演出音の音量を復旧させることは、特開2009-5735号公報の図18にもみられる技術である。

(相違点4について)(構成I、I1)
引用文献2記載の事項によれば、引用文献2には、
「g4、I、I1 ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のような遊技の進行状況に応じた演出のための音声を再生する再生装置と、エラー音、設定変更音などの警報音(報知音)を再生する再生装置は別系統で設け、
演出制御基板102のCPU121が実行する処理では、ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生中にエラーが発生したとき(遊技機に対する異常状態が発生した場合)でもボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生を継続するものの、再生されるボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のレベル(音量)を低下させるか、演出のための音声を再生する再生装置がミュート機能(演出音抑制制御手段)を備える場合、楽曲をミュート(消音するように変更設定)し、ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の演出音や各種警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させる、
j 遊技機。」
が記載されている。

ア 引用文献2記載の事項のg4、I、I1の「ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のような遊技の進行状況に応じた演出のための音声を再生する再生装置」と、別系統の「エラー音、設定変更音などの警報音を再生する再生装置」は、いずれも本願発明の構成Iの「音出力実行制御手段」に相当する。
また、引用文献2記載の事項のg4、I、I1における「演出制御基板102のCPU121」も、本願発明の構成Iの「音出力実行制御手段」に相当する。

イ 次に、引用文献2記載の事項の構成g4、I、I1が、本願発明のように、異常報知期間において、報知音による音量と演出音による音量とを合成して出力するもののであるか否かについて検討してみる。

引用文献2記載の事項のg4、I、I1の「ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の演出音や各種警報音」は、いずれも同じスピーカ群である「スピーカ7L、7R、7U」から出力されており、さらに、引用文献2記載の事項のg4、I、I1の「ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生中にエラーが発生したとき」(遊技機に対する異常状態が発生した場合)に、再生されるボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のレベル(音量)を低下させる場合をみれば、「報知音」と「レベルが低下された演出音」が合わせて同じ「スピーカ7L、7R、7U」から出力されていることは明らかであって、当該状態は「報知音による音量と演出音による音量とを合成して出力」している状態であるといえる。
次に、引用文献2記載の事項のg4、I、I1の「演出のための音声を再生する再生装置」について、「レベル」の「低下」と、「ミュート」が選択的に記載されていることをふまえると、「ミュート」(消音)が、「レベルの低下」をさらに低下させた態様であることは明らかであって、エラー(異常状態)が発生した場合の、「ミュート」(消音)時についても、報知音による音量と(ミュートされた)演出音による音量とが合成して出力することとなるのは明らかである。
してみれば、引用文献2記載の事項の構成g4、I、I1が、異常報知期間において、報知音による音量と演出音による音量とを合成して出力するものであることは明らかである。

ウ 次に、本願発明の構成I1の「当該演出音の音量値を消音するように変更設定することで当該報知音を前記音声出力手段から出力可能」との事項について、発明の詳細な説明をみてみる。すると、本願明細書【0609】には、
「ここで、演出音が本体枠3に設けたスピーカ821及び扉枠5に設けたスピーカ130,222,262から流れている場合に、パチンコ遊技機1の不具合の発生やパチンコ遊技機1に対する不正行為をホールの店員等に報知するため報知音を流す制御について簡単に説明すると、まず演出音が組み込まれているトラックのサブボリューム値を強制的に消音に設定し、・・・合成した演出音の音量と報知音の音量とを、実際に、本体枠3に設けたスピーカ821及び扉枠5に設けたスピーカ130,222,262から流れる音量となるマスターボリューム値まで増幅し、この増幅した演出音及び報知音をシリアル化してオーディオデータとしてオーディオデータ送信IC4160cに出力する。つまり、実際に、本体枠3に設けたスピーカ821及び扉枠5に設けたスピーカ130,222,262から流れる音は、最大音量の報知音だけが流れることとなる。」
と記載されている。そうすると、本願発明の構成I1の「当該演出音の音量値を消音するように変更設定することで当該報知音を前記音声出力手段から出力可能」とは、「当該演出音の音量値を消音するように変更設定」しなければ「報知音を前記音声出力手段から出力」が可能とならないなどと解するべきではなく、「当該演出音の音量値を消音するように変更設定」して「報知音を前記音声出力手段から出力」ができればよいと解するのが相当である。

上記理解に基づいて引用文献2記載の事項のg4、I、I1をみると、それは「楽曲をミュート(消音するように変更設定)」して、「警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力」(報知音を前記音声出力手段から出力)させる」ことができるものであるのだから、本願発明の構成H1の「当該演出音の音量値を消音するように変更設定することで当該報知音を前記音声出力手段から出力可能」に相当する構成を有するものといえる。

エ してみると、引用発明に対し引用文献2記載の事項を適用し、
「I 前記音出力実行制御手段は、
I1 前記異常報知期間において、報知音による音量と演出音による音量とを合成して出力するものの、当該演出音の音量値を消音するように変更設定することで当該報知音を前記音声出力手段から出力可能と」することは、当業者が容易に想到することである。

したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献2記載の事項に基づいて容易に想到することができたものである。

7 請求人の主張及び本願発明が奏する効果について

ア 審判請求人は、平成30年7月27日提出の意見書において、引用文献2に開示された技術構成は、段落[0201]に記載されているように「遊技の行われていないスロットマシンから大音量で楽曲が再生出力されているとその付近に設置された他のスロットマシンなどで遊技を行っている遊技者に迷惑がかかってしまうこと」を防ぐことが目的・課題となっていることから、少なくとも、警報音として精算音が再生/出力されるのは、遊技者が遊技を中断(終了)させる際に行われる精算操作(精算処理)に基づいて精算音が再生/出力されるのであり、上記精算処理が終了したことに基づいて上記精算音の再生/出力が終了したとしても、そもそも精算処理後の遊技機の状態は、遊技が行われていない状態であることが技術常識であることを考えると、精算音の再生/出力が終了した際に再びボーナス中楽曲を復旧するようなことをしないことは明らかである旨を主張している。

しかし、引用発明2記載の事項における構成g4、I、I1では、
ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のような遊技の進行状況に応じた演出のための音声を再生する再生装置と、エラー音、設定変更音などの警報音を再生する再生装置は別系統で設け、
演出制御基板102のCPU121が実行する処理では、
ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生中にエラーが発生したときでもボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の再生を継続するものの、再生されるボーナス中楽曲または連続演出中楽曲のレベルを低下させるか、演出のための音声を再生する再生装置がミュート機能を備える場合、楽曲をミュートし、ボーナス中楽曲または連続演出中楽曲の演出音や各種警報音を再生してスピーカ7L、7R、7Uから出力させ
るものであり、警報音(報知音)は、エラー音、設定変更音などなのだから、引用文献2における警報音は精算音であるとして述べられた上記主張は採用することができない。
そして、引用発明と引用文献2記載の事項はともに、報知音および演出音を出力する遊技機である点で共通することから、引用発明の報知音および演出音の出力に対して引用文献2記載の事項の上記構成g4、I、I1を適用することは、当業者が容易に想到することである。
そして、引用文献2記載の事項の構成g3によれば、エラー音といった警報音(報知音)は、警報音を再生/出力させる事象の開始したときからの定められた期間を経過するまで(異常状態に基づく異常報知期間)再生されスピーカ7L、7R、7Uから出力されるのだから、警報音を再生/出力させる事象の開始したときからの定められた期間を経過すれば警報音(報知音)が終了することとなるのは当然であって、その際に、消音に変更設定されていた演出音の音量を復旧設定する制御をすることとなるのもまた明らかなことである。
してみると、引用発明に対し引用文献2記載の事項を適用し、
「前記演出音の音量が消音に変更設定され前記報知音が出力される前記異常報知期間が所定時間経過し終了した際に消音に変更設定されていた演出音の音量を復旧設定する」ことは、当業者にとってみれば当然の設定である。

イ また、本願発明が奏する作用効果は、当業者が引用発明及び引用文献2記載の事項から予測し得るものであって、格別のものということはできない。

8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-28 
結審通知日 2018-10-01 
審決日 2018-10-15 
出願番号 特願2016-56247(P2016-56247)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 俊彦  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 櫻井 茂樹
石井 哲
発明の名称 遊技機  

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