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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1346681 |
審判番号 | 不服2017-8716 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-14 |
確定日 | 2018-11-29 |
事件の表示 | 特願2016- 59301「プログラム、コンピュータ装置、プログラム実行方法、及び、システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開、特開2017-174144〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年3月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年10月 3日付け:拒絶理由通知書 平成29年 2月 6日 :意見書の提出 平成29年 3月 3日付け:拒絶査定 平成29年 6月14日 :審判請求書、手続補正書の提出 平成30年 1月30日付け:拒絶理由通知書 平成30年 4月 9日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 7月 2日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 平成30年 8月31日 :意見書、手続補正書の提出 第2 平成30年8月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年8月31日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「ユーザの操作部への接触位置をもとに情報出力が可能なコンピュータ装置において実行されるプログラムであって、 コンピュータ装置を、 ユーザによる操作部の接触位置のいずれかを基準点として設定する基準点設定手段、 接触位置が移動した場合に、所定の期間が経過する前の接触位置を第一点と定義し、所定の期間が経過した後の接触位置を第二点と定義した際、又は、接触位置が移動した場合に、所定の距離を移動する前の接触位置を第一点と定義し、所定の距離を移動した後の接触位置を第二点と定義した際における、第一点に対する第二点の方向を特定する方向特定手段、 第一点が基準点である第一の所定の期間又は第一点が基準点である第一の所定の距離において方向特定手段により特定された方向を第一方向と定義し、第二点が現在の接触位置である第二の所定の期間又は第二点が現在の接触位置である第二の所定の距離において方向特定手段により特定された方向を第二方向と定義したときに、第一方向と第二方向とを比較して方向が変化したか否かを判定する方向変化判定手段、 方向が変化したと判定された場合に、現在の接触位置を第二点としたときの第一点を基準点として更新する基準点更新手段、 方向特定手段により特定された方向に応じた情報を出力する情報出力手段 として機能させ、 基準点更新手段により基準点が更新された場合は、更新された基準点をもとに、方向特定手段、方向変化判定手段、基準点更新手段、及び情報出力手段が実行され、 情報出力手段が、方向特定手段により特定された方向に基づいて、操作可能な方向に応じた情報を出力し、 操作可能な方向が、基準点を中心として均等又は不均等な角度で分割された各範囲のうち、一以上の範囲を除く複数の範囲にそれぞれ対応付けられた方向であり、 前記一以上の範囲には、操作可能な方向が対応付けられていない、プログラム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成30年4月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「ユーザの操作部への接触位置をもとに情報出力が可能なコンピュータ装置において実行されるプログラムであって、 コンピュータ装置を、 ユーザによる操作部の接触位置のいずれかを基準点として設定する基準点設定手段、 接触位置が移動した場合に、所定の期間が経過する前の接触位置を第一点と定義し、所定の期間が経過した後の接触位置を第二点と定義した際、又は、接触位置が移動した場合に、所定の距離を移動する前の接触位置を第一点と定義し、所定の距離を移動した後の接触位置を第二点と定義した際における、第一点に対する第二点の方向を特定する方向特定手段、 第一点が基準点である第一の所定の期間又は第一点が基準点である第一の所定の距離において方向特定手段により特定された方向を第一方向と定義し、第二点が現在の接触位置である第二の所定の期間又は第二点が現在の接触位置である第二の所定の距離において方向特定手段により特定された方向を第二方向と定義したときに、第一方向と第二方向とを比較して方向が変化したか否かを判定する方向変化判定手段、 方向が変化したと判定された場合に、現在の接触位置を第二点としたときの第一点を基準点として更新する基準点更新手段、 方向特定手段により特定された方向に応じた情報を出力する情報出力手段 として機能させ、 基準点更新手段により基準点が更新された場合は、更新された基準点をもとに、方向特定手段、方向変化判定手段、基準点更新手段、及び情報出力手段が実行され、 情報出力手段が、方向特定手段により特定された方向に基づいて、操作可能な方向に応じた情報を出力することを特徴とするプログラム。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「情報出力手段」について、「操作可能な方向が、基準点を中心として均等又は不均等な角度で分割された各範囲のうち、一以上の範囲を除く複数の範囲にそれぞれ対応付けられた方向であり、前記一以上の範囲には、操作可能な方向が対応付けられていない」という限定を付加するものであって、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)平成30年7月2日付けの当審が通知した拒絶の理由で引用された特開2013-127683号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 a 段落0040?0076の記載 「【0040】 1.構成 まず、図1を用いて本実施形態における端末装置10の構成について説明する。端末装置10は、例えば、携帯電話、スマートフォン、携帯端末装置、ゲーム装置、携帯型ゲーム装置、画像生成装置などである。 ・・・(中略)・・・ 【0042】 入力部160は、プレーヤが操作データを入力するためのものであり、その機能は、タッチパネル、タッチパネル型ディスプレイ、マウス、トラックボールなどにより実現できる。つまり、入力部160は、2次元の指示位置座標(x,y)を検出可能な検出部162を備えている。例えば、入力部160は、接触検出領域(タッチパネル)における、2次元の接触位置座標(x,y)を検出可能な検出部162を備えている。 ・・・(中略)・・・ 【0044】 特に、本実施形態では、図2(A)(B)に示す表示画面(ディスプレイ)12や図3に示す表示画面1210が、液晶ディスプレイと、プレーヤ(操作者、ユーザ)の接触位置を検出するためのタッチパネルとが積層されたタッチパネル型ディスプレイとなっている。 ・・・(中略)・・・ 【0048】 情報記憶媒体180(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部100は、情報記憶媒体180に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体180には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)を記憶することができる。 ・・・(中略)・・・ 【0053】 処理部100(プロセッサ)は、入力部160からの入力データやプログラムなどに基づいて、ゲーム処理、画像生成処理、或いは音生成処理などの処理を行う。 ・・・(中略)・・・ 【0054】 特に、本実施形態の処理部100は、オブジェクト空間設定部110と、取得部111と、基準点変更処理部112と、入力方向判定部113と、移動制御部114と、ゲーム処理部115と、表示制御部116と、画像生成部120と、通信制御部121、音処理部130とを含む。なお、これらの一部を省略する構成としてもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0065】 入力方向判定部113は、基準点と指示位置により入力方向を判定し、基準点変更処理部112は、基準点と第1のタイミング又はそれ以前の指示位置により得られる第1の方向と、第1のタイミングの指示位置と第1のタイミングより後の第2のタイミングの指示位置により得られる第2の方向のなす角度、又は複数のタイミングにおける指示位置を結ぶ結線の方向のなす角度に基づき基準点を変更するか否か判断して、基準点を変更する処理を行う。 【0066】 移動制御部114は、入力方向に基づき、移動制御を行う。 【0067】 基準点変更処理部112は、過去の指示位置に基づき変更後の基準点の位置を決定してもよい。 【0068】 表示制御部116は、オブジェクトの表示制御を行い、移動制御部114は、入力方向に基づき、表示されるオブジェクトの移動制御を行ってもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0073】 移動制御部114は、接触位置の情報に基づき対象オブジェクトを変更し、入力方向に基づき変更後の対象オブジェクトの移動制御を行ってもよい。移動制御部114は、オブジェクト(キャラクタオブジェクト、移動体オブジェクト等)の移動演算を行う。即ち、この移動制御部114は、入力部160によりプレーヤが入力した入力データ又はプログラム(移動アルゴリズム)や各種データ(モーションデータ)などに基づいて、移動体オブジェクトをオブジェクト空間内で移動させ、又は、移動体オブジェクトの動作(モーション、アニメーション)を制御するための処理を行う。 ・・・(中略)・・・ 【0075】 本実施形態の移動制御部114は、入力方向判定部113において判定された入力方向に基づいて、オブジェクトを移動させる処理を行う。つまり、入力方向判定部113において判定された入力方向に対応する方向を移動方向とし、当該移動方向にオブジェクトを移動させる処理を行う。例えば、入力方向が右である場合には、画面の右方向(x軸プラス方向)にオブジェクトを移動させる処理を行う。また、入力方向が下方向である場合には、画面の下方向(y軸マイナス方向)にオブジェクトを移動させ、また、入力方向が左方向である場合には、画面の左方向(x軸マイナス方向)にオブジェクトを移動させ、また、入力方向が上方向である場合には、画面の上方向(y軸プラス方向)にオブジェクトを移動させる。 【0076】 なお、移動制御部114は、3次元のオブジェクト空間において入力方向に基づいてオブジェクトを移動させる処理を行ってもよい。例えば、予め、入力方向毎に移動方向を対応づけ、入力方向に対応する移動方向にオブジェクトを移動させる。」 b 段落0104?0126の記載 「【0104】 2.本実施形態の処理の手法 2-1.端末の例 本実施形態では、端末装置10を用いて、オブジェクト空間(ゲーム空間)に存在するオブジェクトを移動させるゲーム処理に関するものである。例えば、端末装置10は、図2(A)(B)に示すような携帯電話(スマートフォン)とすることができる。プレーヤは、表示領域でもある接触検出領域を備えたディスプレイ(タッチパネル型ディスプレイ)12に指を接触させて入力方向を指示することができる。 ・・・(中略)・・・ 【0109】 2-2.タッチパネルによるジョイスティックを模した入力操作の例 ここでは、指示位置に基づいて入力方向を判定する例を、タッチパネルの接触位置を指示位置とする場合(2次元的に指示位置を与える場合)を例にとり説明する。 【0110】 図4は、タッチパネルによるジョイスティックを模した入力操作について説明するための図である。 【0111】 ジョイスティックを模した入力操作は、ジョイスティックを倒した方向とその倒し具合とを、それぞれ入力方向および入力量として処理する。そして、プレーヤがジョイスティックのレバーをある方向にある量だけ倒してその位置で保持している場合、その位置情報が継続的に出力されて入力方向および入力量として処理する。 【0112】 タッチパネルでジョイスティックを模した操作を実現する場合、タッチパネルの接触位置から、ジョイスティックの入力値(入力方向および入力量)に相当するXY2軸のベクトル値(表示画面をX軸とY軸の2次元平面とした場合)を得ることになる。このベクトル値の方向がジョイスティックを倒している方向であり、このベクトル値の長さがジョイスティックの倒し具合となる。 【0113】 例えば図4(A)に示すように、タッチパネル(ここでは表示部)への時刻(フレーム)t0、・・tn、tn+1、tn+2のタッチ位置がP0、・・Pn、Pn+1、Pn+2であった場合、時刻tnにおける入力ベクトルVnは、基準点KPを始点とし、時刻tnにおける接触位置Pnを終点とするベクトルとしてもよい。 【0114】 ここで基準点KPは、予め与えられている点(例えば表示部上の所定の位置を基準点として設定しておく場合)でもよいし、接触位置により決定される点でもよい。ここでは、時刻(フレーム)t0におけるタッチ位置(タッチパネルがタッチされていない状態において、最初にタッチされた位置)を基準点として設定する場合について説明する。 【0115】 係る場合、時刻(フレーム)tn、tn+1、tn+2における入力ベクトル(入力方向の一例)は、それぞれVn、Vn+1、Vn+2となる。 【0116】 入力ベクトルをもちいて、表示部に表示されるオブジェクト(例えばアイコンでもよいし、ゲーム画像におけるオブジェクトでもよい)の移動制御を行うようにしてもよい。 【0117】 例えば、時刻(フレーム)tnにおいて取得した入力ベクトル(入力方向の一例)を、時刻tn+1においてオブジェクトに作用させるようにしてもよい。 【0118】 2-3.本実施の形態の手法 図9(A)?(C)、図26は、本実施の形態の入力判定手法について説明するための図である。 【0119】 図9(A)は、第1のタイミング(tn)における基準点KP1と接触位置Pn、第2のタイミング(tn+1)における基準点KP1と接触位置Pn+1の位置関係を示している。例えば接触していない状態から接触している状態に変化する場合に接触した点を基準点KP1として設定してもよい。また表示部の所定の位置やデフォルト位置を基準点KP1として設定してもよい。 【0120】 本実施の形態では、例えば基準点KP1と第1のタイミング(tn)の接触位置(指示位置の一例、ここではPn)により得られる第1の方向(入力方向)(Vn)と、第1のタイミング(tn)の接触位置(ここではPn)と第1のタイミング(tn)より後の第2のタイミング(tn+1)の接触位置(Pn+1)により得られる第2の方向(IVn)のなす角度θ(図9(B)参照)に基づき基準点を変更するか否か判断して、基準点を変更してもよい。 【0121】 また図26に示すように基準点KP1と第1のタイミング(tn)以前の時刻tn-1の接触位置(指示位置の一例、Pn?1)により得られる第1の方向(入力方向)(Vn-1)と、第1のタイミング(tn)接触位置(ここではPn)と第1のタイミング(tn)より後の第2のタイミング(tn+1)の接触位置(Pn+1)により得られる第2の方向(IVn)のなす角度θに基づき基準点を変更するか否か判断してもよい。 【0122】 また基準点KP1を時刻t0における接触点P0であるとすると、複数のタイミング(ここではt0、tn、tn+1)における接触位置(P0、Pn、Pn+1)を結ぶ結線(Vn、IVn)の方向のなす角度θ(図9(B参照)に基づき基準点を変更するか否か判断して、基準点を変更してもよい。 【0123】 基準点の変更位置は、第1のタイミング(tn)の接触位置Pnに基づき決定してもよい。例えば第1のタイミングtnにおける接触位置Pnに変更する場合には、時刻tn+1における基準点はPnとなる。 【0124】 図9(B)は、基準点変更条件について説明するための図である。 【0125】 基準点KP1と第1のタイミング(tn)又はそれ以前の接触位置(指示位置の一例、ここではPn)により得られる第1の方向(入力方向)(Vn)と、第1のタイミング(tn)又はそれ以前の接触位置(ここではPn)と第1のタイミング(tn)より後の第2のタイミング(tn+1)の接触位置(Pn+1)により得られる第2の方向(IVn)のなす角度θが基準点変更条件を満たしている場合に基準点を変更してもよい。例えばα<θ<β又はθはα以上、β以下(例えばα=50°、β=210°)の場合に基準点変更条件を満たすと判断してもよい。 【0126】 基準点が変更になるタイミングは、第2のタイミング(tn+1)でもよい。このようにすると、第2のタイミング(tn+1)における入力ベクトルV’n+1は、図9(C)に示すように、変更後の基準点KP2(Pn)を始点とし、第2のタイミング(tn+1)の接触位置(Pn+1)を終点とするベクトルIVnとなる。」 c 段落0188?0189の記載 「【0188】 4-2. オンラインゲームの処理例2 また、本実施形態では、クライアント・サーバ方式のオンラインゲームに適用してもよい。つまり、サーバ20が、端末10で行う一部の処理(例えば、処理部100の少なくとも1つの処理)を行うようにしてもよい。図21に示すように、サーバ20が、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して複数の端末10A?10Cと接続され、サーバ20が、端末10から入力情報を受信する。そして、サーバ20が、受信した第1、第2、第3の入力情報に基づいて画像を生成し、生成した画像を端末10に送信してもよい。 【0189】 また、サーバ20は各端末から受信した各端末のタッチパネルに対する接触位置(指示位置の一例)に基づいて、各端末の入力判定処理を行うようにしてもよい。」 (イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 (a)端末装置10の「入力部160は、プレーヤが操作データを入力するためのものであり、その機能は」、「プレーヤ(操作者、ユーザ)の接触位置を検出するためのタッチパネル」などにより実現され、「入力部160は、接触検出領域(タッチパネル)における、2次元の接触位置座標(x,y)を検出可能な検出部162を備えて」おり、また、「情報記憶媒体180は、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)を記憶」しており、「処理部100は、情報記憶媒体180に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う」ものであって、「入力部160からの入力データやプログラムなどに基づいて、ゲーム処理、画像生成処理、或いは音生成処理などの処理を行う」ものであり、処理部100に含まれる「表示制御部116は、オブジェクトの表示制御を行い、移動制御部114は、入力方向に基づき、表示されるオブジェクトの移動制御を行」うことが記載されている。 このことから、引用文献1には、「プレーヤ(操作者、ユーザ)のタッチパネルへの接触位置をもとに情報出力が可能な端末装置において実行されるプログラム」が記載されているといえる。 (b)「情報記憶媒体180には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)を記憶する」こと、「処理部100は、オブジェクト空間設定部110と、取得部111と、基準点変更処理部112と、入力方向判定部113と、移動制御部114と、ゲーム処理部115と、表示制御部116と、画像生成部120と、通信制御部121、音処理部130とを含む」こと、「入力方向判定部113は、基準点と指示位置により入力方向を判定し、基準点変更処理部112は、基準点と第1のタイミング又はそれ以前の指示位置により得られる第1の方向と、第1のタイミングの指示位置と第1のタイミングより後の第2のタイミングの指示位置により得られる第2の方向のなす角度、又は複数のタイミングにおける指示位置を結ぶ結線の方向のなす角度に基づき基準点を変更するか否か判断して、基準点を変更する処理を行う」こと、「移動制御部114は、入力方向判定部113において判定された入力方向に基づいて、オブジェクトを移動させる処理を行う。つまり、入力方向判定部113において判定された入力方向に対応する方向を移動方向とし、当該移動方向にオブジェクトを移動させる処理を行う」ことが記載されている。 このことから、引用文献1には、「情報記憶媒体180に格納されるプログラム」は、「端末装置10」を、「基準点と指示位置により入力方向を判定する入力方向判定部113」、「基準点と第1のタイミング又はそれ以前の指示位置により得られる第1の方向と、第1のタイミングの指示位置と第1のタイミングより後の第2のタイミングの指示位置により得られる第2の方向のなす角度、又は複数のタイミングにおける指示位置を結ぶ結線の方向のなす角度に基づき基準点を変更するか否か判断して、基準点を変更する処理を行う基準点変更処理部112」、「入力方向判定部113において判定された入力方向に対応する方向を移動方向とし、当該移動方向にオブジェクトを移動させる処理を行う移動制御部114」として機能させることが記載されているといえる。 (c)「基準点KPは、予め与えられている点(例えば表示部上の所定の位置を基準点として設定しておく場合)でもよいし、接触位置により決定される点でもよい。ここでは、時刻(フレーム)t0におけるタッチ位置(タッチパネルがタッチされていない状態において、最初にタッチされた位置)を基準点として設定する」ことが記載されている。 このことから、引用文献1には、「情報記憶媒体180に格納されるプログラム」は、「端末装置10」を、「プレーヤ(操作者、ユーザ)によるタッチパネルの接触位置のいずれかを基準点として設定する」手段として機能させることが記載されているといえる。 (d)「基準点KP1を時刻t0における接触点P0であるとすると、複数のタイミング(ここではt0、tn、tn+1)における接触位置(P0、Pn、Pn+1)を結ぶ結線(Vn、IVn)の方向のなす角度θ(図9(B参照)に基づき基準点を変更するか否か判断して、基準点を変更してもよい」、「基準点KP1と第1のタイミング(tn)又はそれ以前の接触位置(指示位置の一例、ここではPn)により得られる第1の方向(入力方向)(Vn)と、第1のタイミング(tn)又はそれ以前の接触位置(ここではPn)と第1のタイミング(tn)より後の第2のタイミング(tn+1)の接触位置(Pn+1)により得られる第2の方向(IVn)のなす角度θが基準点変更条件を満たしている場合に基準点を変更してもよい」、「第1のタイミングtnにおける接触位置Pnに変更する場合には、時刻tn+1における基準点はPnとなる」と記載されている。 このことから、引用文献1には、「接触位置がP0(KP1)からPnに移動した場合に、所定の期間が経過する前t0の接触位置P0を始点と定義し、所定の期間が経過した後tnの接触位置Pnを終点と定義した際、始点P0に対する終点Pnの方向Vn」及び「接触位置がPnからPn+1に移動した場合に、所定の期間が経過する前tnの接触位置Pnを始点と定義し、所定の期間が経過した後tn+1の接触位置Pn+1を終点と定義した際、始点Pnに対する終点Pn+1の方向IVn」を特定する処理が記載されているといえ、更に、「始点が基準点KP1である所定の期間t0?tnにおいて特定された方向Vnを第1の方向と定義し、終点が現在tn+1の接触位置Pn+1である所定の期間tn?tn+1において特定された方向IVnを第2の方向と定義した時に、第1の方向Vnと第2の方向IVnとを比較して、第1の方向Vnと第2の方向IVnのなる角θが所定の条件(基準点変更条件)を満たすか否かを判定し、所定の条件を満たす角度と判定された場合に、現在の接触位置Pn+1を終点としたときの始点Pnを基準点として変更する」処理が記載されているといえる。 (e)上記(b)と(d)の記載事項より、「接触位置がP0(KP1)からPnに移動した場合に、所定の期間が経過する前t0の接触位置P0を始点と定義し、所定の期間が経過した後tnの接触位置Pnを終点と定義した際、始点P0に対する終点Pnの方向Vn」及び「接触位置がPnからPn+1に移動した場合に、所定の期間が経過する前tnの接触位置Pnを始点と定義し、所定の期間が経過した後tn+1の接触位置Pn+1を終点と定義した際、始点Pnに対する終点Pn+1の方向IVn」を特定する処理は、端末装置10が「入力方向判定部113」として機能させたときに実行する処理であると認められる。 同様に、「始点が基準点KP1である所定の期間t0?tnにおいて特定された方向Vnを第1の方向と定義し、終点が現在tn+1の接触位置Pn+1である所定の期間tn?tn+1において特定された方向IVnを第2の方向と定義した時に、第1の方向Vnと第2の方向IVnとを比較して、第1の方向Vnと第2の方向IVnのなる角θが所定の条件(基準点変更条件)を満たすか否かを判定し、所定の条件を満たす角度と判定された場合に、現在の接触位置Pn+1を終点としたときの始点Pnを基準点として変更する」処理は、端末装置10が「基準点変更処理部112」として機能させたときに実行する処理であると認められる。 そうしてみると、引用文献1には、「情報記憶媒体180に格納されるプログラム」は、「端末装置10」を、「接触位置がP0(KP1)からPnに移動した場合に、所定の期間が経過する前t0の接触位置P0を始点と定義し、所定の期間が経過した後tnの接触位置Pnを終点と定義した際、始点P0に対する終点Pnの方向Vn」及び「接触位置がPnからPn+1に移動した場合に、所定の期間が経過する前tnの接触位置Pnを始点と定義し、所定の期間が経過した後tn+1の接触位置Pn+1を終点と定義した際、始点Pnに対する終点Pn+1の方向IVn」を特定する「入力方向判定部113」、「始点が基準点KP1である所定の期間t0?tnにおいて入力方向判定部113により特定された方向Vnを第1の方向と定義し、終点が現在tn+1の接触位置Pn+1である所定の期間tn?tn+1において入力方向判定部113により特定された方向IVnを第2の方向と定義した時に、第1の方向Vnと第2の方向IVnとを比較して、第1の方向Vnと第2の方向IVnのなる角θが所定の条件(基準点変更条件)を満たすか否かを判定し、所定の条件を満たす角度と判定された場合に、現在の接触位置Pn+1を終点としたときの始点Pnを基準点として変更する」「基準点変更処理部112」、として機能させることが記載されているといえる。 (f)「第2のタイミング(tn+1)における入力ベクトルV’n+1は、図9(C)に示すように、変更後の基準点KP2(Pn)を始点とし、第2のタイミング(tn+1)の接触位置(Pn+1)を終点とするベクトルIVnとなる。」と記載されており、基準点を変更した場合、変更後の基準点KP2(Pn)をもとに、各部の処理が実行されるものと認められる。 このことから、引用文献1には、「基準点変更処理部112」により基準点がPnに変更された場合は、変更された基準点KP2(Pn)をもとに、「入力方向判定部113」、「基準点変更処理部112」、及び「移動制御部114」が実行されることが記載されていると認められる。 (ウ)上記(a)?(f)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〈引用発明〉 「プレーヤ(操作者、ユーザ)のタッチパネルへの接触位置をもとに情報出力が可能な端末装置において実行されるプログラムであって、 端末装置10を、 プレーヤ(操作者、ユーザ)によるタッチパネルの接触位置のいずれかを基準点として設定する手段、 接触位置がP0(KP1)からPnに移動した場合に、所定の期間が経過する前t0の接触位置P0を始点と定義し、所定の期間が経過した後tnの接触位置Pnを終点と定義した際、始点P0に対する終点Pnの方向Vn、及び、接触位置がPnからPn+1に移動した場合に、所定の期間が経過する前tnの接触位置Pnを始点と定義し、所定の期間が経過した後tn+1の接触位置Pn+1を終点と定義した際、始点Pnに対する終点Pn+1の方向IVnを特定する入力方向判定部113、 始点が基準点KP1である所定の期間t0?tnにおいて入力方向判定部113により特定された方向Vnを第1の方向と定義し、終点が現在tn+1の接触位置Pn+1である所定の期間tn?tn+1において入力方向判定部113により特定された方向IVnを第2の方向と定義した時に、第1の方向Vnと第2の方向IVnとを比較して、第1の方向Vnと第2の方向IVnのなる角θが所定の条件(基準点変更条件)を満たすか否かを判定し、所定の条件を満たす角度と判定された場合に、現在の接触位置Pn+1を終点としたときの始点Pnを基準点として変更する基準点変更処理部112、 入力方向判定部113において判定された入力方向に対応する方向を移動方向とし、当該移動方向にオブジェクトを移動させる処理を行う移動制御部114、 として機能させ、 基準点変更処理部112により基準点がPnに変更された場合は、変更された基準点KP2(Pn)をもとに、入力方向判定部113、基準点変更処理部112、及び移動制御部114が実行される プログラム」 イ 引用文献2 (ア)同じく平成30年7月2日付けの当審が通知した拒絶理由で引用された特開2012-133481号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「【0074】 2-2.方向判定領域の設定処理 本実施形態では、接触検出領域(タッチパネル)検出された接触位置(タッチ位置)を指示位置として取得し、取得された指示位置に基づいて入力方向を判定するための方向判定領域を設定する処理を行う。 【0075】 例えば、図5に示すように、判定領域Aは接触検出領域(タッチパネルディスプレイ)12にある領域であり、本実施形態の判定領域Aは接触検出領域の全領域としている。なお、判定領域Aは、接触検出領域の一部の領域としてもよいし、四角形、三角形、六角形等の多角形に限らず、円形でもよいし不定形な形としてもよい。 【0076】 そして、図5に示すように、本実施形態では、基準位置Bに基づいて、複数の方向判定領域C1?C4を設定する。例えば、判定領域Aを、基準位置(基準点)Bを基準に複数の領域に分割し、分割された各領域を方向判定領域C1?C4として設定する。具体的には、基準位置Bを中心に90度の角度で判定領域Aを分割して、各方向判定領域C1?C4を設定する。例えば、図5に示すように、x軸の45度から135度までの範囲θ1の領域を方向判定領域C1とし、基準位置Bを基準にx軸の-45度から45度までの範囲θ2の領域を方向判定領域C2とし、x軸の225度から315度までの範囲θ3の領域を方向判定領域C3と、x軸の135度から225度までの範囲θ4の領域を方向判定領域C4として、判定領域Aを四分割する。 【0077】 なお、本実施形態では、誤判定を防止するために、基準位置Bを中心とする半径rの円の領域を遊び領域Dとして設定している。」 (イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 (a)「接触検出領域(タッチパネル)検出された接触位置(タッチ位置)を指示位置として取得し、取得された指示位置に基づいて入力方向を判定するための方向判定領域を設定する処理であって、基準位置Bに基づいて、複数の方向判定領域C1?C4を設定し、例えば、判定領域Aを、基準位置(基準点)Bを基準に複数の領域に分割し、分割された各領域を方向判定領域C1?C4として設定し、具体的には、基準位置Bを中心に90度の角度で判定領域Aを分割して、各方向判定領域C1?C4を設定し、例えば、x軸の45度から135度までの範囲θ1の領域を方向判定領域C1とし、基準位置Bを基準にx軸の-45度から45度までの範囲θ2の領域を方向判定領域C2とし、x軸の225度から315度までの範囲θ3の領域を方向判定領域C3と、x軸の135度から225度までの範囲θ4の領域を方向判定領域C4として、判定領域Aを四分割すること」 (b)「誤判定を防止するために、基準位置Bを中心とする半径rの円の領域を遊び領域として設定すること」 ウ 周知技術 例えば、特開2013-206377号公報の段落【0023】に記載されるように、本願出願時におけるタッチパネル等の操作可能領域を設定する際の周知技術として、以下ようなものがある。 「このようなメニュー画面に対するスライドパッド21の操作形態としては、図6に示すように、斜線部分を除いた領域内において画面の中央部から外側方向へ向く基準方向が記憶部33(図1参照)に予め記憶されている。基準方向は、XY座標中心Oから半径方向に伸びる仮想線LがX軸に対して反時計方向に回転したときの回転角度θで示される。本実施例では、基準方向が34°?85°の範囲A1内では「AUDIO」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が96°?146°の範囲A2内では「INTERNET」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が157°?205°の範囲A3内では「NAVI」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が224°?265°の範囲A4内では「PHONE」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が275°?324°の範囲A5内では「CONCIERGE」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が335°?23°の範囲A6内では「TEMP」のメニュー項目の選択が可能になっている。」 (なお、「ニュー項目」との誤記を「メニュー項目」に修正している。) (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「プレーヤ(操作者、ユーザ)」は、本件補正発明の「ユーザ」に相当する。引用発明の「タッチパネル」は、プレーヤが操作データを入力するための入力部であるから、本件補正発明の「操作部」に相当する。また、引用発明の「端末装置」は、プログラムに基づいて種々の処理を行う処理部を有していることから、本件補正発明の「コンピュータ装置」に相当する。 (イ)引用発明の「プレーヤ(操作者、ユーザ)によるタッチパネルの接触位置のいずれかを基準点として設定する手段」は、本件補正発明の「ユーザによる操作部の接触位置のいずれかを基準点として設定する基準点設定手段」に相当する。 (ウ)引用発明の「入力方向判定部113」における「接触位置がP0(KP1)からPnに移動した場合に、所定の期間が経過する前t0の接触位置P0を始点と定義し、所定の期間が経過した後tnの接触位置Pnを終点と定義した際、始点P0に対する終点Pnの方向Vn、及び、接触位置がPnからPn+1に移動した場合に、所定の期間が経過する前tnの接触位置Pnを始点と定義し、所定の期間が経過した後tn+1の接触位置Pn+1を終点と定義した際、始点Pnに対する終点Pn+1の方向IVnを特定する」ことは、本件補正発明の「方向特定手段」における「接触位置が移動した場合に、所定の期間が経過する前の接触位置を第一点と定義し、所定の期間が経過した後の接触位置を第二点と定義した際における、第一点に対する第二点の方向を特定する」ことに相当する。 このことから、本件補正発明の「方向特定手段」と引用発明の「入力方向判定部113」とは、「接触位置が移動した場合に、所定の期間が経過する前の接触位置を第一点と定義し、所定の期間が経過した後の接触位置を第二点と定義した際における、第一点に対する第二点の方向を特定する方向の特定手段」で共通するといえる。 (エ)引用発明の「基準点変更処理部112」における「第1の方向Vnと第2の方向IVnのなる角θが所定の条件(基準点変更条件)を満たすか否か」を判定することは、「方向が変化したか否か」を判定することであり、引用発明の「基準点変更処理部112」における「始点が基準点KP1である所定の期間t0?tnにおいて入力方向判定部113により特定された方向Vnを第1の方向と定義し、終点が現在tn+1の接触位置Pn+1である所定の期間tn?tn+1において入力方向判定部113により特定された方向IVnを第2の方向と定義した時に、第1の方向Vnと第2の方向IVnとを比較して、第1の方向Vnと第2の方向IVnのなる角θが所定の条件(基準点変更条件)を満たすか否かを判定」することは、本件補正発明の「方向変化判定手段」における「第一点が基準点である第一の所定の期間において特定された方向を第一方向と定義し、第二点が現在の接触位置である第二の所定の期間において特定された方向を第二方向と定義したときに、第一方向と第二方向とを比較して方向が変化したか否かを判定する」ことに相当する。 このことから、本件補正発明の「方向変化判定手段」と引用発明の「基準点変更処理部112」とは、「第一点が基準点である第一の所定の期間において特定された方向を第一方向と定義し、第二点が現在の接触位置である第二の所定の期間において特定された方向を第二方向と定義したときに、第一方向と第二方向とを比較して方向が変化したか否かを判定する方向変化の判定手段」で共通するといえる。 (オ)引用発明の「基準点変更処理部112」における「所定の条件を満たす角度と判定された場合に、現在の接触位置Pn+1を終点としたときの始点Pnを基準点として変更する」ことは、本件補正発明の「基準点更新手段」における「方向が変化したと判定された場合に、現在の接触位置を第二点としたときの第一点を基準点として更新する」ことに相当する。 このことから、本件補正発明の「基準点更新手段」と引用発明の「基準点変更処理部112」とは、「方向が変化したと判定された場合に、現在の接触位置を第二点としたときの第一点を基準点として更新する基準点の更新手段」で共通するといえる。 (カ)引用発明の「入力方向判定部113において判定された入力方向に対応する方向を移動方向とし、当該移動方向にオブジェクトを移動させる処理を行う移動制御部114」は、「移動方向にオブジェクトを移動させる処理」が「特定された方向に応じた情報を出力する」ことといえるから、本件補正発明の「方向特定手段により特定された方向に応じた情報を出力する情報出力手段」に相当する。 (キ)引用発明の「基準点変更処理部112により基準点がPnに変更された場合は、変更された基準点KP2(Pn)をもとに、入力方向判定部113、基準点変更処理部112、及び移動制御部114が実行される」ことと、本件補正発明の「基準点更新手段により基準点が更新された場合は、更新された基準点をもとに、方向特定手段、方向変化判定手段、基準点更新手段、及び情報出力手段が実行され」ることとは、「基準点を更新する手段により基準点が更新された場合は、更新された基準点をもとに、方向の特定手段、方向変化の判定手段、基準点の更新手段、及び情報出力手段が実行され」る点で共通するといえる。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 〈一致点〉 「ユーザの操作部への接触位置をもとに情報出力が可能なコンピュータ装置において実行されるプログラムであって、 コンピュータ装置を、 ユーザによる操作部の接触位置のいずれかを基準点として設定する基準点設定手段、 接触位置が移動した場合に、所定の期間が経過する前の接触位置を第一点と定義し、所定の期間が経過した後の接触位置を第二点と定義した際における、第一点に対する第二点の方向を特定する方向の特定手段、 第一点が基準点である第一の所定の期間において方向特定手段により特定された方向を第一方向と定義し、第二点が現在の接触位置である第二の所定の期間において方向特定手段により特定された方向を第二方向と定義したときに、第一方向と第二方向とを比較して方向が変化したか否かを判定する方向変化の判定手段、 方向が変化したと判定された場合に、現在の接触位置を第二点としたときの第一点を基準点として更新する基準点の更新手段、 方向特定手段により特定された方向に応じた情報を出力する情報出力手段 として機能させ、 基準点更新手段により基準点が更新された場合は、更新された基準点をもとに、方向特定手段、方向変化判定手段、基準点更新手段、及び情報出力手段が実行される、プログラム。」 〈相違点1〉 本件補正発明の方向の特定手段が、「接触位置が移動した場合に、所定の距離を移動する前の接触位置を第一点と定義し、所定の距離を移動した後の接触位置を第二点と定義した際」においても、方向を特定するものであるとともに、方向変化の判定手段が、「第一点が基準点である第一の所定の距離」において特定された第一の方向と、「第二点が現在の接触位置である第二の所定の距離」において特定された第二の方向とを比較して方向が変化したか否かを判定するのに対し、引用発明では、「所定の期間」を移動する場合のみで、「所定の距離」を移動する場合について特定されていない点。 〈相違点2〉 本件補正発明では、「情報出力手段が、方向特定手段により特定された方向に基づいて、操作可能な方向に応じた情報を出力し」ているのに対し、引用発明では、このような構成が特定されていない点。 〈相違点3〉 本件補正発明では、「操作可能な方向が、基準点を中心として均等又は不均等な角度で分割された各範囲のうち、一以上の範囲を除く複数の範囲にそれぞれ対応付けられた方向であり、前記一以上の範囲には、操作可能な方向が対応付けられていない」のに対し、引用発明では、このような構成が特定されていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用文献2には、ユーザの操作部への接触位置をもとに情報出力が可能な端末装置(コンピュータ装置)において実行されるプログラムにおいて、誤判定を防止するために、基準位置Bを中心とする半径rの円の領域を遊び領域として設定することが記載されており(段落【0077】)、該記載に基づけば、引用発明において、誤判定を防止するために、「所定の距離」を移動した後に方向を特定するよう構成することは,当業者であれば容易になし得たものである。 イ 相違点2について 引用文献2の段落【0074】?【0076】には、「2-2.方向判定領域の設定処理」について記載があり、特に、段落【0075】には、「基準位置Bに基づいて、複数の方向判定領域C1?C4を設定する。例えば、判定領域Aを、基準位置(基準点)Bを基準に複数の領域に分割し、分割された各領域を方向判定領域C1?C4として設定する。具体的には、基準位置Bを中心に90度の角度で判定領域Aを分割して、各方向判定領域C1?C4を設定する。例えば、図5に示すように、x軸の45度から135度までの範囲θ1の領域を方向判定領域C1とし、基準位置Bを基準にx軸の-45度から45度までの範囲θ2の領域を方向判定領域C2とし、x軸の225度から315度までの範囲θ3の領域を方向判定領域C3と、x軸の135度から225度までの範囲θ4の領域を方向判定領域C4として、判定領域Aを四分割する。」との記載があり、該記載に基づけば、操作可能な方向が想定し得る、例えば、ゲーム装置のプログラムである、引用発明において、「情報出力手段が、方向の特定手段により特定された方向に基づいて、操作可能な方向に応じた情報を出力する」よう構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。 ウ 相違点3について 例えば、特開2013-206377号の段落【0023】には、「このようなメニュー画面に対するスライドパッド21の操作形態としては、図6に示すように、斜線部分を除いた領域内において画面の中央部から外側方向へ向く基準方向が記憶部33(図1参照)に予め記憶されている。基準方向は、XY座標中心Oから半径方向に伸びる仮想線LがX軸に対して反時計方向に回転したときの回転角度θで示される。本実施例では、基準方向が34°?85°の範囲A1内では「AUDIO」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が96°?146°の範囲A2内では「INTERNET」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が157°?205°の範囲A3内では「NAVI」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が224°?265°の範囲A4内では「PHONE」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が275°?324°の範囲A5内では「CONCIERGE」のメニュー項目の選択が可能であり、基準方向が335°?23°の範囲A6内では「TEMP」のメニュー項目の選択が可能になっている。」と記載されるように、タッチパネル等の操作可能領域を設定する際に、「操作可能な方向が、基準点を中心として均等又は不均等な角度で分割された各範囲のうち、一以上の範囲を除く複数の範囲(斜線部分を除いた領域:34°?85°の範囲、96°?146°の範囲、157°?205°の範囲、224°?265°の範囲、275°?324°の範囲、335°?23°の範囲)にそれぞれ対応付けられた方向であり、前記一以上の範囲(斜線部分の領域:23°?34°の範囲、85°?96°の範囲、146°?157°の範囲、205°?224°の範囲、265°?275°の範囲、324°?335°の範囲)には、操作可能な方向が対応付けられていない」とする構成は、本願出願時において周知技術であり、また、上述したように、引用発明は、例えば、ゲームの内容等により操作可能な方向が適宜想定し得るものであるから、上記周知技術を引用発明に適用して、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に成し得たものと認められる。 エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年8月31日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年4月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 当審が通知した拒絶の理由 平成30年7月2日付けの当審が通知した拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし6に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2013-127683号公報 引用文献2:特開2012-133481号公報 3 引用文献 当審が通知した拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「情報出力手段」に係る「操作可能な方向が、基準点を中心として均等又は不均等な角度で分割された各範囲のうち、一以上の範囲を除く複数の範囲にそれぞれ対応付けられた方向であり、前記一以上の範囲には、操作可能な方向が対応付けられていない」という限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-09-25 |
結審通知日 | 2018-10-02 |
審決日 | 2018-10-15 |
出願番号 | 特願2016-59301(P2016-59301) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梅岡 信幸、山崎 慎一 |
特許庁審判長 |
千葉 輝久 |
特許庁審判官 |
▲吉▼田 耕一 松田 岳士 |
発明の名称 | プログラム、コンピュータ装置、プログラム実行方法、及び、システム |
代理人 | 特許業務法人ライトハウス国際特許事務所 |