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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60H
管理番号 1346689
審判番号 不服2017-14634  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-03 
確定日 2018-11-29 
事件の表示 特願2013-31046号「車両用ダクトおよび車両用ダクトの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年9月4日出願公開、特開2014-159239号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月20日の出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年12月26日付け:拒絶理由の通知
平成29年 3月 1日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 6月29日付け:拒絶査定
平成29年10月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年10月3日にされた手続補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年10月3日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記筒形ダクト部は、前記ハット形ダクト部の端部に一体的に形成され、前記ハット形ダクト部の開放部側へ突出するように延び、先端部には、別のダクトとの嵌合部を構成する開口を有する、」の記載を、本件補正後の「前記ハット形ダクト部は、前記筒形ダクト部の端部に当該筒形ダクトを一部延長する形で形成され、これらハット形ダクト部と筒形ダクト部により一連の空気通路が構成され、前記筒形ダクト部は、前記ハット形ダクト部の開放部側へ突出するように延び、先端部には、別のダクトとの嵌合部を構成する開口を有する、」と変更する補正(以下、「補正事項」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
(1)補正の目的要件
上記補正事項は、請求項1におけるハット形ダクト部の構成について「前記ハット形ダクト部は、前記筒形ダクト部の端部に当該筒形ダクトを一部延長する形で形成され、これらハット形ダクト部と筒形ダクト部により一連の空気通路が構成され、」という発明特定事項(以下、「発明特定事項1」という。)で限定を加えると共に、筒型ダクト部の構成について「前記筒形ダクト部は、前記ハット形ダクト部の端部に一体的に形成され、」という発明特定事項(以下、「発明特定事項2」という。)を削除するものである。
ここで、発明特定事項1による限定は構成要件の特定にあたり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
しかし、発明特定事項2の削除は、特許請求の範囲の減縮とは認められない。
もっとも、発明特定事項1は発明特定事項2を限定した構成として捉えることも考えられるが、発明特定事項2は、筒形ダクト部とハット形ダクト部が一体的に形成されていることを内容とする構成であるのに対し、発明特定事項1は、ハット形ダクト部が筒形ダクトを一部延長する形で形成されることを内容とするものであり、ハット形ダクト部と筒形ダクト部が一体的に形成されることを特定しているとはいえない(すなわち、本件補正前の「一体的に」とは、平成29年3月1日の手続補正書により補正されて特定された事項であるが、同日の意見書の記載からは補正の根拠が不明である。そこで、本件明細書の段落【0017】,【0018】,【0043】,【0056】の記載を参酌すると、「一体的に」とは、中空成形体の壁部から一体的に切り出すことを意味するものと認められるが、補正後の「一部延長する」の記載は、一体的な延長のみならず別部材よる延長も含む表現である。)。
よって、発明特定事項2の削除を特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とすることはできないし、これを請求項の削除、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明とすることができないことは明らかであるから、特許法第17条の2第5項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではない。
以上のとおり、上記補正事項は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)独立特許要件
仮に、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、補正の目的要件を満たすものであったとしても、以下のとおり本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、特許出願の際、独立して特許を受けることができたものではない。

ア.本件補正発明
本件補正発明は、以下のとおりのものである。

「車両を構成する構成部品に取り付けられ、エアコンユニットから車室内部の所定の位置に空気を導入する空気通路の一部を形成する車両用ダクトであって、
一側が開放した断面ハット形に形成され、開放部が延び方向に亘って前記構成部品に塞がれることで第1空気通路を形成するハット形ダクト部と、
エアコンユニットに対して該ハット形ダクト部より上流側で、連結部を構成するように筒形に形成され、前記第1空気通路に連通する第2空気通路を前記構成部品によらず単独で形成する筒形ダクト部と、
を有し、
前記ハット形ダクト部は、前記筒形ダクト部の端部に当該筒形ダクトを一部延長する形で形成され、これらハット形ダクト部と筒形ダクト部により一連の空気通路が構成され、前記筒形ダクト部は、前記ハット形ダクト部の開放部側へ突出するように延び、先端部には、別のダクトとの嵌合部を構成する開口を有する、ことを特徴とする車両用ダクト。」

イ.引用文献の記載
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-274157号公報(平成14年9月25日公開。以下、「引用例1」という。)には、図面(図1?5)と共に、次の記載がある。

あ.「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。まず、本発明の第1の実施の形態について、図1?図5を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両(自動車)の車室後部を概略的に示す側面説明図である。この図に示すように、本実施の形態に係る例えば所謂ワン(1)ボックス・タイプとされた自動車Mでは、その車室内に複数の座席シートS1?S3が配設され、そのうちの少なくとも後2列のシートS2,S3は車室後部に位置している。
上記自動車Mでは、車室後部(例えば、最後列のシートS3の側方)に、車室後部専用の空気調和機Ac(所謂、エアコン)が設置され、この空気調和機Acから主として後部座席S2,S3側に空調風を供給するための通風ダクトとして、ピラーダクトDpとルーフダクトDr1とが配設されている。上記ピラーダクトDpは、車体後端の側部において略上下方向に延びるリヤピラーPbに沿って延設され、ルーフダクトDr1は、車両Mのルーフ部Rに沿って延設されるものである。」(段落【0019】?【0020】)

い.「本実施の形態では、上記ルーフダクトDr1は、単独のダクト完成品を別途に製作しておき、これを車両ルーフ部Rに配設するのではなく、車室の天井部を覆うルーフトリム1に対して、その上側(ルーフパネルP側)に断面形状が略ハット状(若しくは幅広の略コ字状)のダクト形成部材10を配設し、これを組み付けて一体化することにより形成されている。図2は、このダクト形成部材10が一体化されたルーフトリム1を概略的に示す平面説明図である。また、図3,図4及び図5は、各々図2におけるY3‐Y3線,Y4‐Y4線およびY5‐Y5線にそれぞれ沿った断面におけるルーフダクト構造を示す断面説明図である。
これらの図に示すように、上記ダクト形成部材10は、略ハット状(若しくは幅広の略コ字状)の断面形状を有し、その開口側をルーフトリム1に向けて組み付けられ、周縁フランジ部10fをルーフトリム1の上面に固着(例えば接着)することにより、該ルーフトリム1の上面側(車体ルーフ部Rに取り付けた状態におけるルーフパネルP側)に固定される。尚、上記ダクト形成部材10及びルーフトリム1は、共に例えば合成樹脂を材料に用いた射出成形によって製作されている。また、ルーフパネルPの下面側で上記ダクト形成部材10との間には、ルーフパネルPを補強するために、例えば鋼板製の補強部材(レインフォースメント)T1,T2が配設されている。
以上のように、ダクト形成部材10をルーフトリム1に組み付けて接着固定することにより、ルーフトリム1とダクト形成部材10とで閉断面状の空調風通路が形成される。すなわち、ルーフダクトDr1の製作とそのルーフトリム1への組付とを1つの工程で兼用して行なうことができる。従って、単独のダクト完成品としてのルーフダクトを別工程で製作しておき、これをルーフトリムに組み付ける場合に比べて、ルーフダクトDr1の形成工程を簡略化して、ルーフダクトDr1の製作および組付コストを低減することができる。」(段落【0023】?【0025】)

う.「尚、上記ランプ用開口部3の左右側部に位置する前側のグリル用開口部5は、ダクト形成部材10の上記延長部12で覆われることになる。また、ダクト形成部材10の基端側には、上述のピラーダクトDpに接続される接続部10aが形成されている。」(段落【0029】)

上記あ.?う.及び図1?5の記載から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「空気調和機Acから主として後部座席S2,S3側に空調風を供給するための通風ダクトとしてのルーフダクトDr1であって、略ハット状(若しくは幅広の略コ字状)の断面形状を有するダクト形成部材10の開口側をルーフトリム1に向けて組み付けて一体化することにより空調風通路が形成されており、ダクト形成部材10の基端側には、ピラーダクトDpに接続される接続部10aが形成されているルーフダクトDr1。」

(イ)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平8-268041号公報(平成8年10月15日公開。以下、「引用例2」という。)には、図面(図1?4)と共に、次の記載がある。

あ.「<実施例1>本例は図1乃至図4に示されている。図1において、1は自動車の内装品としてのインストルメントパネルであり、該インストルメントパネル1に車内に空調用エアを送るための空調用ダクト3,5が軟質発泡体7,9を介して接続されている。上記インストルメントパネル1及びダクト3,5は同じ樹脂材によって射出成形されている。なお、これらの成形方法としてはブロー成形や真空成形等を採用することもでき、本発明はその成形方法を問うものではない。また、この例では、上記発泡体7,9の成形材料の種類は問わない。」(段落【0050】)

い.「上記上面用のダクト3は、空調ユニットに接続される中央の筒部3aと、インストルメントパネル1の上面のエア吹出口11,13の全部を覆うように横長に広がったラッパ状の出口部3bとを備えてなる。そして、このダクト3の出口部3bには外側へ張り出したフランジ3cが形成されている。また、上記上面用の発泡体7は、板状のものであって、上記上面のエア吹出口11,13に対応する同形の孔17,19を備えている。」(段落【0052】)

ウ.引用発明との対比
本件補正発明と引用発明を対比すると、各文言の意味、機能又は作用等から見て、引用発明の「ルーフトリム1」、「空気調和機Ac」及び「ピラーダクトDp」は、それぞれ本件補正発明の「車両を構成する構成部品」、「エアコンユニット」及び「別のダクト」に相当する。
そして、引用発明の「ルーフダクトDr1」は、ルーフトリム1に取り付けられ、「空気調和機Acから主として後部座席S2,S3側に空調風を供給するための通風ダクト」として構成されたものであるから、本件補正発明の「車両を構成する構成部品に取り付けられ、エアコンユニットから車室内部の所定の位置に空気を導入する空気通路の一部を形成する車両用ダクト」に相当する。
また、引用発明の「ダクト形成部材10」は、「略ハット状(若しくは幅広の略コ字状)の断面形状を有する」ので、本件補正発明の「ハット形ダクト部」に相当する。そして、引用発明の「略ハット状(若しくは幅広の略コ字状)の断面形状を有するダクト形成部材10の開口側をルーフトリム1に向けて組み付けて一体化することにより空調風通路が形成されて」いることは、「開口側」が延び方向に亘って「ルーフトリム1」に塞がれることで、「空調風通路」を形成しているから、本件補正発明の「一側が開放した断面ハット形に形成され、開放部が延び方向に亘って前記構成部品に塞がれることで第1空気通路を形成するハット形ダクト部」を備えることに相当する。
また、引用例1の図2を参照すれば、引用発明の「接続部10a」は、「ルーフトリム1」(車両を構成する構成部品)の存在しない部分に設けられているから、「構成部品によらず単独で形成する筒形ダクト部」として構成されているものと認められ、当該「接続部10a」は「空調風通路」に連通する空気通路を構成するものである。
よって、引用発明の「接続部10a」は、本件補正発明の「エアコンユニットに対して該ハット形ダクト部より上流側で、連結部を構成するように筒形に形成され、前記第1空気通路に連通する第2空気通路を前記構成部品によらず単独で形成する筒形ダクト部」に相当する。
そして、当該引用発明の「接続部10a」は、空気調和機Ac(エアコンユニット)に対して「ダクト形成部材10(ハット形ダクト部)より上流側(すなわち、空気調和機Acのある側)で、(ピラーダクトDp(別のダクト)との)連結部を構成するように筒形に形成され」るものであり、当該連結は通常嵌合によるものと認められるから、当該接続部10aの「先端部」は、「ピラーダクトDp(別のダクト)との嵌合部を構成する開口を有する」ものと認められる。

してみれば、本件補正発明と引用発明は次の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
「車両を構成する構成部品に取り付けられ、エアコンユニットから車室内部の所定の位置に空気を導入する空気通路の一部を形成する車両用ダクトであって、一側が開放した断面ハット形に形成され、開放部が延び方向に亘って前記構成部品に塞がれることで第1空気通路を形成するハット形ダクト部と、エアコンユニットに対して該ハット形ダクト部より上流側で、連結部を構成するように筒形に形成され、前記第1空気通路に連通する第2空気通路を前記構成部品によらず単独で形成する筒形ダクト部と、を有し、前記筒形ダクト部は、先端部には、別のダクトとの嵌合部を構成する開口を有する車両用ダクト。」

【相違点】
1.本件補正発明は、ハット形ダクト部は、筒形ダクト部の端部に当該筒形ダクトを一部延長する形で形成され、これらハット形ダクト部と筒形ダクト部により一連の空気通路が構成されているのに対し、引用発明は、その旨明確でない点。
2.本件補正発明は、筒形ダクト部が、ハット形ダクト部の開放部側へ突出するように延びているのに対し、引用発明は、その旨明確でない点。

エ.判断
以下、相違点について検討する。
相違点1について:
引用発明のダクト形成部材10と接続部10aは相互に接続されることにより、ピラーダクトDpを介した空気調和機Acからの空調風を車室内に供給するものであるから、当該ダクト形成部材10と接続部10aにより一連の空気通路が構成されていることは明らかである。
そして、当該空気通路を構成するに際して、例えば、引用例2(上記2.(2)イ.(イ)参照。)に記載されているように周知のブロー成形等の手段(以下、「周知の手段」という。)を用いて、接続部10aの端部にダクト形成部材10を一部延長する形で形成することは当業者が容易になし得ることと認められる。
よって、引用発明及び周知の手段に基づき、相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易に想到できたことである。

相違点2について:
引用発明の接続部10aの、ピラーダクトDpを介した空気調和機Acからの空調風をダクト形成部材10へ供給するという作用に照らせば、接続部10aの突出方向はダクト形成部材10とピラーダクトDpの位置関係により決定される設計的事項にすぎない。
そして、引用例1の図2に記載に照らせば、接続部10aのダクト形成部材10の開放部側にはルーフトリム1が存在せず、接続部10aがダクト形成部材10の開放部側へ突出するように延びる構成の採用に阻害要因は認められない。
よって、引用発明に、相違点2に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易に想到できたことである。

オ.効果について
本件補正発明の効果は、本願明細書の記載を見ても、当業者にとって格別予想外の効果であるとはいえず、引用発明及び周知の手段から予測しうる程度のものと認められる。

以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知の手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができたものではない。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、上記補正事項は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、本件補正は、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法第17条の2第5項第2号の目的の補正であるとしても、本件補正発明は、引用発明及び周知の手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができたものではないから、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成29年10月3日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成29年3月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「車両を構成する構成部品に取り付けられ、エアコンユニットから車室内部の所定の位置に空気を導入する空気通路の一部を形成する車両用ダクトであって、
一側が開放した断面ハット形に形成され、開放部が延び方向に亘って前記構成部品に塞がれることで第1空気通路を形成するハット形ダクト部と、
エアコンユニットに対して該ハット形ダクト部より上流側で、連結部を構成するように筒形に形成され、前記第1空気通路に連通する第2空気通路を前記構成部品によらず単独で形成する筒形ダクト部と、
を有し、
前記筒形ダクト部は、前記ハット形ダクト部の端部に一体的に形成され、前記ハット形ダクト部の開放部側へ突出するように延び、先端部には、別のダクトとの嵌合部を構成する開口を有する、
ことを特徴とする車両用ダクト。」

2.引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び2の記載事項は、上記第2の[理由]2.(2)イ.に記載したとおりである。

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、上記第2の[理由]2.(2)ウ.に記載したような関係を有するから、本願発明と引用発明は、次の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
「車両を構成する構成部品に取り付けられ、エアコンユニットから車室内部の所定の位置に空気を導入する空気通路の一部を形成する車両用ダクトであって、一側が開放した断面ハット形に形成され、開放部が延び方向に亘って前記構成部品に塞がれることで第1空気通路を形成するハット形ダクト部と、エアコンユニットに対して該ハット形ダクト部より上流側で、連結部を構成するように筒形に形成され、前記第1空気通路に連通する第2空気通路を前記構成部品によらず単独で形成する筒形ダクト部と、を有し、前記筒形ダクト部は、先端部には、別のダクトとの嵌合部を構成する開口を有する車両用ダクト。」

【相違点】
3.本願発明は、筒形ダクト部が、ハット形ダクト部の端部に一体的に形成されているのに対し、引用発明は、その旨明確でない点。
4.本願発明は、筒形ダクト部が、ハット形ダクト部の開放部側へ突出するように延びているのに対し、引用発明は、その旨明確でない点。

4.判断
以下、相違点について検討する。
相違点3について:
引用発明のダクト形成部材10と接続部10aは相互に接続されることにより、ピラーダクトDpを介した空気調和機Acからの空調風を車室内に供給するものであるから、製造の容易性等を考慮すれば、両者を一体的に形成することの動機付けはあるといえる。
そして、ダクトを一体的に形成するための具体的手段としてのブロー成形等による一体成形は、例えば、引用例2(上記2.(2)参照。)に記載されているように周知の手段(以下、「周知の手段」という。)にすぎないから、当該周知の手段に基づき、ダクト形成部材10と接続部10aを一体的に形成することは当業者にとって困難なことではない。
よって、引用発明及び周知の手段に基づき、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは当業者が容易に想到できたことである。

相違点4について:
本願発明と引用発明の相違点4は本件補正発明と引用発明の相違点2と同じであるから、上記第2の[理由]2.(2)エ.で相違点2について検討したのと同様に、引用発明に、相違点4に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって容易である。

そして、本願発明の効果は、本願明細書の記載を見ても、当業者にとって格別予想外の効果であるとはいえず、引用発明及び周知の手段から予測しうる程度のものと認められる。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知の手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶されるべきものである。

したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-27 
結審通知日 2018-10-03 
審決日 2018-10-16 
出願番号 特願2013-31046(P2013-31046)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之横溝 顕範  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 藤原 直欣
井上 哲男
発明の名称 車両用ダクトおよび車両用ダクトの製造方法  
代理人 浅野 典子  

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