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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1346710
審判番号 不服2018-5296  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-18 
確定日 2018-11-29 
事件の表示 特願2016-254579「データ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月15日出願公開、特開2017-105198〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願出願」という。)は,平成25年2月4日に出願した特願2013-019342号(以下,「原出願」という。)の一部を新たな特許出願として平成27年3月30日に出願された特願2015-067949号(以下「子出願」という。)の一部を,さらに新たな特許出願として平成28年12月28日に出願された特願2016-254579号であって,平成29年10月13日付けで拒絶の理由が通知され,同年12月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成30年1月11日付けで,平成29年10月13日付けの拒絶理由通知により通知された理由(以下,「原査定の理由」という。)による拒絶査定がなされ,その謄本は同年1月23日に請求人に送達された。
これに対し,同年4月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 当審の判断
1 平成30年4月18日付け手続補正書について
平成30年4月18日付け手続補正書による補正の内容は,特許請求の範囲の請求項5のみを補正するものであることからすれば,当該手続補正書が却下されたとしても,却下されなかったとしても,請求項1に係る発明の内容に変動はない。
してみると,請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであれば,当該手続補正書が却下されたとしても,却下されなかったとしても,本件審判の請求が成り立たないとする結論を左右しないことになるから,当該手続補正書についての特許法第17条の2第3項から第6項についての適合性を差し措いて,まずは請求項1に係る発明が特許を受けることができるか否かについて判断するものとする。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成30年4月18日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載から,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「プレビュー画像としてページ単位のオブジェクトを順に並べて表示部に表示させるデータ処理装置であって,
前記表示部上で前記オブジェクトに対する所定のピンチ操作を受け付けるタッチセンサと,
前記タッチセンサが1つの前記オブジェクトに対するピンチアウト操作を受け付けた場合に,操作対象となったオブジェクトの印刷設定が両面印刷であるかどうかを判断する第1判断部と,
前記第1判断部によって前記操作対象となったオブジェクトの印刷設定が両面印刷であると判断されれば,当該オブジェクトの印刷設定を両面印刷から片面印刷に変更する第1変更部を備える,データ処理装置。」

3 引用文献に記載された発明
原査定の拒絶理由で引用された,本願の出願(特許法44条2項の規定により,本願は親出願の出願時に出願したものとみなす。)より前である2012年4月19日に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2012/0096378号明細書(以下「引用文献」という。)には,次の事項が記載されている。(なお,括弧内の訳文は,当審が作製した。また,当審が訳文における引用箇所に下線を付した。)
ア「[0040] For example, the image processing apparatus Q is an MFP (Multi Function Peripheral). The image processing apparatus Q includes a processor 801 , an ASIC (Application Specific Integrated Circuit) 802 , a memory 803 , an HDD (Hard Disk Drive) 804 , a touch panel display 805 having the functions of a display unit and an operation input unit, an arithmetic I/O unit 810 , a sheet storage unit 601 , and a printing unit P. The touch panel display stores the details of a setting operation in, for example, the HDD 804 based on an input operation of a user and allows the printing unit P to perform printing based on the set details.」
([0040] 例えば,画像処理装置QはMFP(複合機)である。Qは,プロセッサ801と,ASIC(特定用途向け集積回路)802と,メモリ803と,HDD(Hard Disk Drive)804と,表示部及び操作入力部の機能を有するタッチパネルディスプレイ805,入出力部810,記憶部601,印刷部Pを備えている。タッチパネルディスプレイは,例えば,ユーザの入力操作に基づいて,ハードディスクドライブ804の設定動作の詳細を記憶し,印刷部Pを設定された内容に基づいて印刷を実行する。)

イ「[0044] In the image processing system according to the exemplary embodiment, a user can operate a printer driver operating on the client terminal 7 in order to give a printing instruction to the image processing apparatus Q via the LAN. Based on an input operation on the touch panel display 805 of the image processing apparatus Q, printing setting and printing can also be performed in the single image processing apparatus Q.」
([0044] 本実施形態に係る画像処理システムは,ユーザがクライアント端末7上で動作するプリンタドライバを操作することによりLANを介して画像処理装置Qに印刷を指示することができる。また,画像処理装置Qのタッチパネルディスプレイ805の入力操作に基づいて,画像処理装置Q単体で印刷設定および印刷を実行することができる。)

ウ 「[0074] Based on the input operation of the user on the touch panel display 805, the processor 801 receives the printing setting of the printing which is based on the acquired image data (ACT 102).」
([0074] タッチパネルディスプレイ805のユーザの入力操作に基づいて,プロセッサ801は,取得した画像データに基づく印刷の印刷設定を受け付ける(ACT 102)。)

エ 「[0113] For example, when the user operates the touch panel display 805 to simultaneously select two objects O2 and O3 to be displayed and to move and draw both of the objects to be mutually moved so that the movement destination of one of the two objects to be displayed becomes the other object to be moved, as shown in FIG.17, the processor 801 displays a double-side allocation image being in a state where one object to be moved can be allocated to the front surface of a single sheet and the other object to be moved can be allocated to the rear surface of the single sheet(FIG.18).
[0114] In this way, the processor 801 displays the double-side allocation image being in the state where the objects to be displayed, which correspond to the page images on both surfaces of a single sheet.
[0115] Next, an operation of returning two page images P2 and P3 set to be allocated to both surfaces to the original one-side allocation state will be described.
[0116] When the exclusion object determination unit selects two points inside the region corresponding to the double-side allocation image and determines the two points are separated from each other in a separation direction, the list display control unit 101 displays the objects to be displayed, which correspond to the page images allocated as the double-side allocation image, as mutually independent objects to be displayed.
[0117] FIG. 19 is a diagram illustrating a form in which two objects to be displayed, which can be allocated to one double-side allocation image selected by a user, are separated from each other in the drawn state.」
([0113] 例えば,ユーザがタッチパネルディスプレイ805で表示されている2個のオブジェクトO2とO3とを同時に選択し,これらのオブジェクトの両者を動かして近づけ,一方のオブジェクトの移動先が他方のオブジェクトとなるように相互に移動操作すると,FIG.17に示すように,プロセッサ801が,一方のオブジェクトを単一シートの表面に配置するとともに他方のオブジェクトを前記単一シートの裏面に配置した状態となった両面割り当て画像を表示する(FIG.18)。
[0114] このようにして,プロセッサ801は,両面割り当て画像により,これらのオブジェクトが図示されるように1枚のシートの両面のページ画像となった状態を表示する。
[0115] 次に,両面に割り当てられたページ画像P2,P3を元々の片側割り当て状態とする動作について説明する。
[0116] 除外対象判定部が,前記両面割り当て画像に対応する領域内の2点が選択されて2点が離間方向に互いに分離されたと判定した場合,リスト表示制御部101が表示させるこれらのオブジェクトを両面割付画像として割り当てられたページ画像として図示されるように互いに独立したオブジェクトとして表示する。
[0117] 図19は,ユーザによって選択された,1枚の両面割付画像を割り当てた2個のオブジェクトが,引っ張られた状態で互いに分離されている様子を示した図である。)

オ FIG.17 と[0113]から,ユーザは,表示されている2個のオブジェクトO2とO3とを同時に選択し,これらのオブジェクトの両者を近づけるように動かすピンチイン操作を行うことができることが看取できる。また,[0116]の「前記両面割り当て画像に対応する領域内の2点が選択されて2点が離間方向に互いに分離された」と記載されるところの「選択」と「分離」を行う主体はユーザとしか解しようがないので, FIG.19と[0115]-[0117] も踏まえると,ユーザは,タッチパネルディスプレイ805上で両面割り当て画像に対応する領域内の2点を選択し,該2点を分離するように動かすピンチアウト操作を行うことができると認められる。

カ 引用文献の[0115]の「the original one-side allocation state」という記載やFig.17,Fig.18から,引用文献の[0113]やFig.17に記載の前記「2個のオブジェクトO2とO3」は片側割り当て状態であったものである。
上記ア乃至カから,引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「画像処理装置Qであって,
表示部及び操作入力部の機能を有するタッチパネルディスプレイ805と,
前記タッチパネルディスプレイ805のユーザの入力操作に基づいて,取得した画像データに基づく印刷の印刷設定を受け付けるプロセッサ801と,を備え,
ユーザが前記タッチパネルディスプレイ805で表示されている片側割り当て状態の2個のオブジェクトO2とO3を同時に選択し,これらのオブジェクトの両者を近づけるように動かすピンチイン操作をすると,片側割り当て状態から,一方のオブジェクトが単一シートの表面に配置されるとともに他方のオブジェクトが前記単一シートの裏面に配置された両面割り当て状態となって両面割り当て画像が表示され,
ユーザが前記両面割り当て画像に対応する領域内の2点を選択し,該2点を分離するように動かすピンチアウト操作がされたと判定した場合に,両面割り当て画像P2,P3を片側割り当て状態とし,互いに独立したオブジェクトとして表示するものである,画像処理装置Q。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「「オブジェクト」及び「両面割り当て画像」」は,Fig.17,Fig.18に「B (PAGE 2)」,「C (PAGE 3)」と例示されるように,タッチパネルディスプレイ805にページ単位で表示されて,ピンチイン操作とピンチアウト操作の対象となる画像なので,本願発明における「「プレビュー画像」として表示される「ページ単位のオブジェクト」」に相当する。

イ 引用発明における「タッチパネルディスプレイ805」は,前記「オブジェクト」や前記「両面割り当て画像」を表示し,これらに対するピンチイン操作とピンチアウト操作を受け付けるので,本願発明における「表示部及びタッチセンサ」に相当する。

ウ 引用発明におけるプロセッサ801はタッチパネルディスプレイ805のユーザの入力操作に基づいて,取得した画像データに基づく印刷の印刷設定を受け付ける。そして,引用発明は,ユーザが前記タッチパネルディスプレイ805で表示されている片側割り当て状態の2個のオブジェクトO2とO3を同時に選択し,これらのオブジェクトの両者を近づけるように動かすピンチイン操作をすると,一方のオブジェクトが単一シートの表面に配置されるとともに他方のオブジェクトが前記単一シートの裏面に配置された両面割り当て状態となり,ユーザが両面割り当て画像に対応する領域内の2点を選択し,該2点を分離するように動かすピンチアウト操作がされたと判定した場合に,両面割り当て画像P2,P3を片側割り当て状態とする。したがって,引用発明において「タッチパネルディスプレイ805上でユーザがピンチイン操作して両面割り当て状態となる場合に,プロセッサ801が受け付ける印刷設定」及び「タッチパネルディスプレイ805上でユーザがピンチアウト操作して片側割り当て状態となる場合に,プロセッサ801が受け付ける印刷設定」は,それぞれ本願発明における「「両面印刷」の「印刷設定」」及び「「片面印刷」の「印刷設定」」に相当する。

エ 引用発明における「画像処理装置Q」は,前記プロセッサ801と前記タッチパネルディスプレイ805を備えているので,本願発明における「データ処理装置」に相当する。

オ 本願発明と引用発明とは,
「プレビュー画像としてページ単位のオブジェクトを順に並べて表示部に表示させるデータ処理装置であって,
前記表示部上で前記オブジェクトに対する所定のピンチイン操作とピンチアウト操作を受け付けるタッチセンサと,
前記タッチセンサが1つの前記オブジェクトに対するピンチアウト操作を受け付けた場合に,当該オブジェクトの印刷設定を両面印刷から片面印刷に変更する,データ処理装置。」
で一致し,以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明は,「タッチセンサが1つの前記オブジェクトに対するピンチアウト操作を受け付けた場合に操作対象となったオブジェクトの印刷設定が両面印刷であるかどうかを判断する第1判断部と,前記第1判断部によって前記操作対象となったオブジェクトの印刷設定が両面印刷であると判断されれば,当該オブジェクトの印刷設定を両面印刷から片面印刷に変更する第1変更部を備える」のに対し,引用発明は,タッチパネルディスプレイ805が両面割り当て画像に対するピンチアウト操作を受け付けた場合に,プロセッサ801が印刷設定を両面割り当て状態から片側割り当て状態に変更する前の段階で「第1判断部によって前記操作対象となったオブジェクトの印刷設定が両面印刷であると判断」するかどうか不明である点。

5 判断
上記相違点について,以下検討する。
上記「2 引用文献に記載された発明」に示したように,引用発明は,「ユーザが前記タッチパネルディスプレイ805で表示されている片側割り当て状態の2個のオブジェクトO2とO3を同時に選択し,これらのオブジェクトの両者を近づけるように動かすピンチイン操作をする」ことで,「片側割り当て状態から,一方のオブジェクトが単一シートの表面に配置されるとともに他方のオブジェクトが前記単一シートの裏面に配置された両面割り当て状態と」し,「ユーザが前記両面割り当て画像に対応する領域内の2点を選択し,該2点を分離するように動かすピンチアウト操作」がされたと判定した場合に,「両面割り当て画像P2,P3を片側割り当て状態」とし,プロセッサ801は前記タッチパネルディスプレイ805のユーザの入力操作に基づいて,取得した画像データに基づく印刷の印刷設定を受け付けるものである。
つまり,引用発明において,ユーザのピンチイン操作に応答して「片側割り当て状態から,一方のオブジェクトが単一シートの表面に配置されるとともに他方のオブジェクトが前記単一シートの裏面に配置された両面割り当て状態と」し,プロセッサ801がこのユーザのピンチイン操作に基づく印刷設定を受け付けるには,ユーザによりピンチイン操作されたオブジェクトが「片側割り当て状態」である必要があり,ピンチアウト操作がされたと判定した場合に,「両面割り当て画像P2,P3を片側割り当て状態」とし,プロセッサ801がこのユーザのピンチアウト操作に基づく印刷設定を受け付けるには,ユーザによりピンチアウト操作された画像が「両面割り当て状態」である必要があることは,当業者には明らかである。
そして,ユーザの指示操作に対して,その指示を受け付けるために必要となる条件を判断して処理を進めることは,データ処理を行う装置一般の周知技術にすぎず,引用発明において,実行可能な指示のみを受け付けるという自明の課題に対処するため,上記周知技術を適用して,ピンチイン操作に対して「片側割り当て状態から,一方のオブジェクトが単一シートの表面に配置されるとともに他方のオブジェクトが前記単一シートの裏面に配置された両面割り当て状態と」し,プロセッサ801がこのピンチイン操作に基づく印刷設定を受け付ける前,及びピンチアウト操作に対して「両面割り当て画像P2,P3を片側割り当て状態」とし,プロセッサ801がこのピンチアウト操作に基づく印刷設定を受け付ける前の段階で,ピンチイン操作やピンチアウト操作といったユーザの指示操作を受け付けるために必要となる「ユーザが操作した対象が「片側割り当て状態」であるか「両面割り当て状態」であるかという条件を判断して処理を進め,相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

また,本願発明の発明特定事項全体によって奏される作用効果も,引用文献及び上記周知技術から,当業者が予測しうる程度のものである。

よって,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-01 
結審通知日 2018-10-02 
審決日 2018-10-16 
出願番号 特願2016-254579(P2016-254579)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
吉村 尚
発明の名称 データ処理装置  
代理人 大村 和史  

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