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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1346731
審判番号 不服2017-12454  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-23 
確定日 2018-12-25 
事件の表示 特願2012-265007「偏光フィルム及び偏光板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月12日出願公開、特開2014-109740、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2012年12月4日を出願日とする出願であって、平成28年10月20日付けで拒絶理由が通知され、同年12月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年5月22日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、平成29年8月23日付けで本件拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において平成30年6月19日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月31日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

本件出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。」)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献等一覧)
引用文献A:特開2011-232016号公報
引用文献B:特開2011-164553号公報
引用文献C:特開2011-13684号公報
引用文献D:特開2003-177245号公報
引用文献E:特開2012-215821号公報
引用文献F:特開平6-99150号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本件出願の請求項1,3?6に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された下記引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献等一覧)
引用文献1:特開2011-232016号公報(拒絶査定時の引用文献A)
引用文献2:特開2011-164553号公報(拒絶査定時の引用文献B)
引用文献3:特開2011-13684号公報(拒絶査定時の引用文献C)
引用文献4:特開2003-177245号公報(拒絶査定時の引用文献D)
引用文献5:特開2012-215821号公報(拒絶査定時の引用文献E)
引用文献6:特開平6-99150号公報(拒絶査定時の引用文献F)
引用文献7:特開2008-94949号公報
引用文献8:特開2012-123040号公報
引用文献9:特開2005-99548号公報
引用文献10:特開2012-22250号公報

第4 本件発明
本件出願の請求項1?5に係る発明は、平成30年7月31日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本件出願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明5」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
厚さが1?60μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、染色処理、架橋処理、及び洗浄処理をこの順に施して偏光フィルムを製造する方法であって、
該洗浄処理の後、フィルムに200?1500N/mの張力を付与しつつ、フィルムをその片面に設けた第一のロールに抱かせながら該第一のロールとは反対側のフィルム面にエアーを吹き付け、次いでエアーを吹き付けた面を第二のロールに抱かせながら該第二のロールとは反対側のフィルム面にエアーを吹き付けて水切りを行い、エアーにより除去された水をそれぞれエアー吹き付け位置近傍に設けられた第一のチャンバー及び第二のチャンバーにより回収する水切り処理を施し、
該チャンバーの吸引口先端からフィルム表面までの距離が2mm以下となるように配置され、
前記エアーは、ノズルからフィルムに吹き付けられ、該ノズルは、その吹き出し口先端を通る中心線がフィルム表面に対して30?80°の角度をなし、かつその吹き出し口先端からフィルム表面までの距離が1.5mm以下となるように配置され、
前記エアーは、2?20m^(3)/分の風量で吹き付けられることを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
【請求項2】
チャンバーは、その吸引口先端からフィルム表面までの距離が0.3mm以上となるように配置される請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項3】
水切り処理の後、乾燥処理を施す請求項1又は2に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項4】
水切り処理及び乾燥処理は、水切り処理の前に設けられたニップロールと、乾燥処理の内部又は乾燥処理の後に設けられたニップロールにより、フィルムに200?800N/mの張力をかけながら行う請求項3に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法によって製造された偏光フィルムに、紫外線硬化型の接着剤を用いて保護フィルムを貼合することを特徴とする偏光板の製造方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由で引用され、本件出願前に頒布された刊行物である特開2011-232016号公報(引用文献1、原査定の拒絶の理由における引用文献A)には、次の記載がある。

(1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄処理されて乾燥炉に搬送される長尺状シートに対して水切処理を行うように構成された長尺状シート水切処理装置であって、
水切処理されるべき長尺状シートを張架するように構成された回転体と、
前記回転体に張架された長尺状シートの部分に対して斜めからエアを吹き付けるように構成されたエア吐出装置と、
前記回転体との間に長尺状シートが通過可能な間隙を設けて配置され、かつ、エアの吹き付け位置を挟んで前記エア吐出装置に対向するように配置された開口部を有する排気チャンバと、
を備えた長尺状シート水切処理装置。
【請求項2】
前記回転体は、搬送される長尺状シートと連れ回りするように構成された請求項1に記載の長尺状シート水切処理装置。
【請求項3】
前記排気チャンバは、前記開口部を介して内部に導入されたエアを、内部にて旋回させるように構成された曲面状の内周面を有する請求項1または2に記載の長尺状シート水切処理装置。」

(2) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗浄部を通過して乾燥炉に搬送される長尺状シートに対して水切処理を行うように構成された長尺状シート水切処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルム等の長尺状シートを搬送しつつ、順次的に、洗浄処理および乾燥処理を行うシステムにおいては、洗浄処理を行った長尺状シートを乾燥炉に搬送する前に、水切処理を行っておくことが好ましい。その理由は、乾燥炉の前段にて長尺状シートの水切処理を済ませておくことで、乾燥炉における設定温度を低くして省電力化が図れたり、乾燥炉の炉長を短くすることでシステムの省スペース化が図れたりするからである。
【0003】
例えば、従来技術の中には、光学フィルムの処理システムにおいて、乾燥炉の前段において、水切ニップロール、接触式スクレーパ、および一対のエアナイフといった水切機構を用いて水切処理を行う構成を採用するものがある・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
・・・略・・・光学フィルムの搬送速度を上げたときに、十分な水切効果が得られないことがあり、また、以下のような不具合が発生することがあった。
【0006】
まず、水切ニップロールまたは接触式スクレーパを用いる場合には、搬送速度の上昇につれて水切ニップロールと光学フィルムとの間、またはスクレーパと光学フィルムとの間を通り抜ける水分の量が増加してしまう。これを防止するために、水切ニップロールのニップ圧や光学フィルムに対するスクレーパの接触圧を高めると、摩擦によって光学フィルムに接触キズがついたり、光学フィルムに蛇行等の搬送不良が発生したりすることがあった。
【0007】
一方、一対のエアナイフを用いる場合、搬送速度の上昇につれて吐き出すエアの圧力を高める必要が生じるが、高圧エアを吹き付けた結果、搬送される光学フィルムがばたつき、その結果、光学フィルムの蛇行が生じたり、光学フィルムにシワが発生したりする等の不具合が生じる虞があった。
【0008】
この発明の目的は、長尺状シートの搬送速度を高めた場合であっても、長尺状シートの蛇行の発生や長尺状シートのシワやキズ等の発生を抑制しつつ、長尺状シートに対して適切な水切処理を行うことが可能な長尺シート水切処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る長尺状シート水切処理装置は、洗浄処理されて乾燥炉に搬送される長尺状シートに対して水切処理を行うように構成される。長尺状シートの例としては、ポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルム等の光学フィルムが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0010】
この長尺状シート水切処理装置は、回転体、エア吐出装置、および排気チャンバを備える。回転体は、水切処理されるべき長尺状シートを張架するように構成される。回転体の例としては、長尺状シートの搬送に伴って連れ回るように構成されたガイドロールが挙げられる。
【0011】
エア吐出装置は、回転体に張架された長尺状シートの部分に対して斜めからエアを吹き付けるように構成される。エア吐出装置の例としては、エアナイフ等の高圧エアを吐き出し可能な装置が挙げられる。
【0012】
排気チャンバは、回転体との間に長尺状シートが通過可能な間隙を設けて配置される。また、排気チャンバは、エアの吹き付け位置を挟んでエア吐出装置に対向するように配置された開口部を有する。
【0013】
なお、上述の回転体、エア吐出装置、および排気チャンバは、原則として、長尺状シートの両面の水切処理を行うためにそれぞれ2つ設けることが好ましい。ただし、エアナイフに供給する高圧エアの供給ラインにヒータ等を追加すれば、上述の回転体、エア吐出装置、および排気チャンバがそれぞれ1つしかない場合であっても、長尺状シートの両面の水切処理をある程度行うことが可能となる。
【0014】
この構成においては、長尺状シートにおける回転体に張架された部分、つまり回転体によって安定的に保持された部分に対して、エア吐出装置がエアを吹き付ける。このため、長尺状シートの高速搬送化に伴ってエア吐出装置からのエア吹き付け量を増加させても、長尺状シートがばたつくことがなく、その結果、長尺状シートが蛇行搬送されたり、長尺状シートにシワが発生したりする不具合が起こりにくい。さらに、長尺状シートの搬送に伴って回転体の周面も移動するため、長尺状シートと回転体の周面との間の摩擦がほとんどなく、その結果、摩擦に起因する汚損が長尺状シートに発生しにくい。
【0015】
また、エア吐出装置から吐き出されたエアが、長尺状シートに当たった後にそのまま排気チャンバの開口部に導かれるため、エア吐出装置から吐き出されたエアが、長尺状シートに付着した水分とともに円滑に排気チャンバ内に回収される。このため、エア吐出装置から大量にエアを吐き出した場合であっても、長尺状シート水切処理装置の配置する処理室(例えば、クリーンルーム)の雰囲気に影響が出にくい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、長尺状シートの搬送速度を高めた場合であっても、長尺状シートの蛇行の発生や長尺状シートのシワやキズ等の発生を抑制しつつ、長尺状シートに対して適切な水切処理を行うことが可能になる。」

(3) 「【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る延伸システムの概略を示す図である。
【図2】延伸システムの水切部に配置される水切処理装置の概略を示す図である。
・・・略・・・
【図5】第1の水切処理ユニットおよび第2の水切処理ユニットの動作を示す図である。
【図6】エアナイフのエア吹き付け角度の一例を示す図である。」

(4) 「【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の一形態としての光学フィルム用の延伸システムの一例を示している。延伸システム10は、洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24を備える。延伸システム10における水切部22以外の部分は公知の構成を適用可能であるためここではその説明を省略する。
【0019】
この実施形態では、光学フィルム11としてポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルムを用いる。延伸システム10において、光学フィルム11は、洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24をこの順に通過した後、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム110等の保護フィルムが貼り付けられ回収される。この延伸システム10では、30m/minまたはそれ以上の搬送速度で光学フィルム11が搬送される。この発明は、そのような搬送速度であっても、適切に光学フィルム11に対する水切処理を行う水切部22の構成に特徴を有するものであり、以下具体的にその特徴を説明する。
【0020】
図2は、水切部22の概略を示す図である。この実施形態では、水切部22に水切処理装置30が配置される。水切処理装置30は、第1の水切処理ユニット34、第2の水切処理ユニット36、およびこれらの第1、第2の水切処理ユニット34、36を内部にて支持するハウジング32を備える。
【0021】
第1の水切処理ユニット34は、ガイドロール342、エアナイフ344、および排気チャンバ346を備える。ガイドロール342は、十分な抱き角度(例えば、90度以上)をもって光学フィルム11を張架するように構成される。
・・・略・・・
【0023】
エアナイフ344は、ガイドロール342に張架された光学フィルム11に対してエアを吹き付けるように構成される。排気チャンバ346は、エアナイフ344からのエアを回収して排気するように構成される。排気チャンバ346は、ガイドロール342との間に光学フィルム11が通過可能な間隙を設けて配置される。また、排気チャンバ346は、エアの吹き付け位置を挟んでエアナイフ344に対向するように配置された開口部347を有する。
【0024】
第2の水切処理ユニット36は、ガイドロール362、エアナイフ364、および排気チャンバ366を備える。ガイドロール362、エアナイフ364、および排気チャンバ366の基本的構成は、ガイドロール342、エアナイフ344、および排気チャンバ346と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0025】
上述の水切処理装置30において、ガイドロール342およびガイドロール362に十分な抱き角度をもって光学フィルム11を支持させるためには、水洗部20から乾燥炉24までの光学フィルム11の搬送経路の設定が重要である。例えば、この実施形態のように、第1の水切処理ユニット34と第2に水切処理ユニット36(当合議体注:「第2に水切処理ユニット36」は、「第2の水切処理ユニット36」の誤記である。)とを上下方向に離して配置することにより、水切処理装置30内において光学フィルム11をS字状に搬送させ易くなり、その結果、光学フィルム11のそれぞれの面が十分な抱き角度をもってガイドロール342およびガイドロール362に支持され易くなる。
・・・略・・・
【0029】
水切処理装置30は、3系統のエア排気ラインおよびトラップボックス42を介して排気ブロワ80に接続されている。3系統のエア排気ラインはそれぞれ、排気チャンバ346、排気チャンバ366、およびハウジング32の排気口326にそれぞれ接続されている。排気チャンバ346は、図3(B)に示すように、長さ方向の両端に接続された排気ダクト348を介してエア排気ライン341に接続される。一方で、排気チャンバ366は、長さ方向の両端に接続された排気ダクト368を介してエア排気ライン361に接続される。
【0030】
トラップボックス42は、各エア排気ラインを通過してきた水滴を回収するように構成される。
・・・略・・・
【0034】
エアナイフ344、364から吐き出されるエアは、図5(A)に示すように、光学フィルム11におけるガイドロール342、362に支持された部分に、斜めから吹き付けられる。このエアは、エア吹き付け位置100を挟んでエアナイフ344、364のエア吹出口に対向するように配置された排気チャンバ346、366の開口部347、367を通って、排気チャンバ346、366内へと案内される。
【0035】
ここで、排気チャンバ346、366は、開口部347、367を介して内部に導入されたエアを、内部にて旋回させるように構成された曲面状の内周面を有している。また、排気チャンバ346、366内のエアは、両側に接続された排気ダクト348、368を介して強制排気される。このため、排気チャンバ346、366内へ案内されたエアは、図5(B)に示すように、排気ダクト348、368を介して螺旋を描くように円滑に排出される。
【0036】
このように、排気ブロワ80の吸引能力だけでなく、エアナイフ344、364の吹き付け力を利用してエアの強制排気を行うことにより、エアナイフ344、364から吐き出されたエアや光学フィルム11からの水分をより効率的に排出することが可能になる。そして、光学フィルム11の表裏面に付着した水分は、トラップボックス42にて一旦回収された後に、エアオペレート弁82の開放に伴って工場の廃液貯蔵部に収集される。
【0037】
第1の水切処理ユニット34において、光学フィルム11の搬送経路の下流側からエアナイフ344がエアを吹き付けて、上流側にて排気チャンバ346がエアを回収することが好ましい。このような構成を採用することにより、エアによって飛ばされた水滴が光学フィルム11に再付着しにくくなる。また、第2の水切処理ユニット36においてもエアナイフ364および排気チャンバ366を同様に配置することが好ましい。
【0038】
上述の構成において、エアナイフ344、364へのエア供給圧が0.05MPaのときであって、図6に示す吹き付け角度200が70度で、かつ、吹き付け角度300が40度の場合に、最も安定した水切効果を得ることができた。なお、ここで吹き付け角度とは、エア吹き付け位置におけるガイドロール342、362の接線と、エアナイフ344、364のエア吹き出し方向との角度を意味する。ただし、エア供給圧やエア吹き付け角度は、これに限定されるものではなく任意に設定することが可能である。この実施形態では、吹き付け角度が10?80度程度であればある程度の水切効果を得ることができる一方で、吹き付け角度が0度または90度に近づくほど水切効果がなくなることが確認されている。
【0039】
エアナイフ344、364から吐き出される高圧エアの量は、高圧エア供給ライン340、360上の各種弁や、エアナイフ344、364の先端の開口量を制御することによって自由に変更可能である。
【0040】
エアナイフ344、364によって光学フィルム11から効果的に水分を除去するためには、エアナイフ344、364の吐き出し量、光学フィルムへの吹き付け角度、エアナイフ344、364の先端と光学フィルム11の間隙の均一性、エアナイフ344、364の吐き出し部開口のフィルム幅方向の均一性の設定が重要であると言える。
【0041】
以上の構成によれば、搬送される光学フィルム11に対して、非接触の状態で水切処理を実施するため、光学フィルム11の搬送速度を速めた場合でも、光学フィルム11にキズが発生する心配がない。
【0042】
また、ガイドロール342、362に対向した位置でエアナイフ344、364が高圧エアを吐出するため、光学シート11のばたつきによるシワ、蛇行の発生の心配がない。
【0043】
さらに、エアナイフ344、364の直近に排気チャンバ346、366を設け、強制排気することにより、光学フィルム11に付着した水分およびエアナイフ344、364が吐き出した高圧エアを効率的に回収できる。その結果、十分に温湿度を調整されたクリーンルーム内にて水切処理装置30を使用しても、周囲への影響が発生しにくい。また、水分とエアはトラップボックス42により分離されるため、個別に回収可能である。
・・・略・・・
【0048】
上述の実施形態では、水切処理装置30を延伸システム10に適用する例を説明したが、この発明の技術的思想は、偏光板製造システムに限らず、あらゆる長尺状のシートに対する水切処理を行うシステムに適用可能である。」

(5) 「【符号の説明】
【0050】
10-延伸システム
22-水切部
30-水切処理装置
32-ハウジング
34-第1の水切処理ユニット
36-第2の水切処理ユニット
342、362-ガイドロール
344、364-エアナイフ
346、366-排気チャンバ」

(6) 「【図1】



(7) 「【図2】



(8) 「【図5】



(9) 「【図6】



2 引用発明
(1) 引用文献1の段落【0018】及び【0019】(上記1(4)参照。)の記載によれば、図1に図示された引用文献1における「本発明の実施の一形態としての光学フィルム用の延伸システムの一例」は、「洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24を備える」「光学フィルム用の延伸システム」において、「光学フィルム11としてポリビニルアルコール(PVA)からなる偏光フィルムを用い」たものである。

(2) 引用文献1の段落【0019】の記載によれば、引用文献1における「本発明の実施の一形態としての光学フィルム用の延伸システムの一例」により、「光学フィルム11は、洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24をこの順に通過した後」、「保護フィルムが貼り付けられ回収される」ことが理解できる。

(3) 引用文献1の段落【0038】(上記1(4)参照)の記載及び図6に基づけば、「図6に示す吹き付け角度200」及び「吹き付け角度300」は、それぞれ「第2の水切処理ユニット36」及び「第1の水切処理ユニット34」における「吹き付け角度」であることが理解できる。

(4) 上記1(1)?(9)及び上記(1)?(3)より、引用文献1には、図1に図示された引用文献1における「本発明の実施の一形態としての光学フィルム用の延伸システムの一例」を用いて、「光学フィルム11」を「洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24をこの順に通過」させた「後」、「光学フィルム11」に「保護フィルム」を「貼り付けて回収する」方法として、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。

「洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24を備える光学フィルム11用の延伸システムにおいて、光学フィルム11としてポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルムを用いて、
光学フィルム11を洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24をこの順に通過させた後、光学フィルム11に保護フィルムを貼り付けて回収する方法であって、
光学フィルム11に対する水切処理を行う水切部22に水切処理装置30を配置し、
水切処理装置30は、第1の水切処理ユニット34、第2の水切処理ユニット36を備え、
第1の水切処理ユニット34は、ガイドロール342、エアナイフ344、および排気チャンバ346を備え、ガイドロール342は、十分な抱き角度(例えば、90度以上)をもって光学フィルム11を張架するように構成され、
エアナイフ344は、ガイドロール342に張架された光学フィルム11に対してエアを吹き付けるように構成され、
排気チャンバ346は、エアナイフ344からのエアを回収して排気するように構成され、排気チャンバ346は、ガイドロール342との間に光学フィルム11が通過可能な間隙を設けて配置され、排気チャンバ346は、エアの吹き付け位置を挟んでエアナイフ344に対向するように配置された開口部347を有し、
第2の水切処理ユニット36は、ガイドロール362、エアナイフ364、および排気チャンバ366を備え、ガイドロール362、エアナイフ364、および排気チャンバ366の基本的構成は、ガイドロール342、エアナイフ344、および排気チャンバ346と同様であり、
第1の水切処理ユニット34と第2の水切処理ユニット36とを上下方向に離して配置することにより、水切処理装置30内において光学フィルム11をS字状に搬送させ、光学フィルム11のそれぞれの面が十分な抱き角度をもってガイドロール342およびガイドロール362に支持され、
エアナイフ344、364から吐き出されるエアは、光学フィルム11におけるガイドロール342、362に支持された部分に、斜めから吹き付けられ、このエアは、エア吹き付け位置100を挟んでエアナイフ344、364のエア吹出口に対向するように配置された排気チャンバ346、366の開口部347、367を通って、排気チャンバ346、366内へと案内され、
第2の水切処理ユニット36における吹き付け角度200が70度で、かつ、第1の水切処理ユニット34における吹き付け角度300が40度であり、ここで吹き付け角度とは、エア吹き付け位置におけるガイドロール342、362の接線と、エアナイフ344、364のエア吹き出し方向との角度を意味し、
エアナイフ344、364から吐き出される高圧エアの量は、エアナイフ344、364の先端の開口量を制御することによって自由に変更可能であり、
エアナイフ344、364の直近に排気チャンバ346、366を設け、強制排気することにより、光学フィルム11に付着した水分およびエアナイフ344、364が吐き出した高圧エアを効率的に回収する、
上記方法。」

第6 対比・判断
1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
ア 「偏光フィルムの製造方法」について
(ア) 引用発明は、「洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24を備える光学フィルム11用の延伸システムにおいて、光学フィルム11としてポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルムを用いて、光学フィルム11を洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24をこの順に通過させた後、光学フィルム11に保護フィルムを貼り付けて回収する方法」であって、「水切部22」は、「光学フィルム11に対する水切処理を行う」ものである。
そうすると、引用発明は、「光学フィルム11」に対し、「洗浄」処理、「膨潤」処理、「染色」処理、「水洗」処理、「水切処理」及び「乾燥」処理をこの順に施すものということができる。

(イ) 引用発明の「ポリビニールアルコール(PVA)」は、「ポリビニールアルコール系樹脂」を意味することは技術常識である。また、引用発明の「洗浄部12、膨潤部14、染色部16、延伸部18、水洗部20、水切部22、および乾燥炉24をこの順に通過」する「光学フィルム11」は、「ポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルム」の原反フィルムである「ポリビニルアルコール系樹脂」「フィルム」であることは技術常識から明らかなことである。
また、引用発明は「光学フィルム11に保護フィルムを貼り付けて回収する方法」、すなわち「ポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルム」「に保護フィルムを貼り付けて回収する方法」であるから、引用発明は、「ポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルム」を製造する方法ということができる。

(ウ) 上記(ア)と(イ)より、引用発明は、「ポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルム」の原反フィルムである「ポリビニルアルコール系樹脂」「フィルム」に対し、「染色」処理、「水洗」処理、「水切処理」をこの順に施して、「ポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルム」を製造する方法であるということができる。
技術的にみて、引用発明の「染色」処理、「水洗」処理及び「水切処理」は、それぞれ本件発明の「染色処理」、「洗浄処理」及び「水切り処理」に相当する。
技術的にみて、引用発明の「ポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルム」は、本件発明1の「偏光フィルム」に相当し、引用発明の「ポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルム」の原反フィルムである「ポリビニルアルコール系樹脂」「フィルム」は、本件発明1の「ポリビニルアルコール系樹脂フィルム」に相当する。
そうすると、引用発明は、本件発明1と、「ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、染色処理及び洗浄処理をこの順に施して偏光フィルムを製造する方法」である点において共通する。

イ 「水切り処理」について
(ア) 引用発明の「水切処理装置30」は、「第1の水切処理ユニット34と第2の水切処理ユニット36とを上下方向に離して配置することにより、水切処理装置30内において光学フィルム11をS字状に搬送させ、光学フィルム11のそれぞれの面が十分な抱き角度をもってガイドロール342およびガイドロール362に支持され」、「エアナイフ344、364から吐き出されるエアは、光学フィルム11におけるガイドロール342、362に支持された部分に、斜めから吹き付けられ」るものである。
そうすると、引用発明は、「第1の水切処理ユニット34」において、「光学フィルム11」をその片面に設けた「ガイドロール342」に「十分な抱き角度をもって」抱かせながら該「ガイドロール342」とは反対側の「光学フィルム11」面に「エア」を「吹き付け」、次いで「第2の水切処理ユニット36」において、「エア」を「吹き付け」た「光学フィルム11」面を「ガイドロール362」に「十分な抱き角度をもって」抱かせながら該「ガイドロール362」とは反対側の「光学フィルム11」面に「エア」を「吹き付け」て「水切」を行っているということができる(このことは、引用文献1の各水切処理ユニットの動作を示す【図5】(A)及び各エアナイフのエア吹き付け角度を一例を示す【図6】からも確認できる事項である。)。
引用発明の「ガイドロール342」及び「ガイドロール362」は、それぞれ本件発明1の「第一のロール」及び「第二のロール」に相当する。
引用発明の「エアナイフ344、364から吐き出される」「エア」及び「高圧エア」は、本件発明1の「エアー」に相当する。
そうすると、上記ア(ウ)より、引用発明は、本件発明1と、「フィルムをその片面に設けた第一のロールに抱かせながら該第一のロールとは反対側のフィルム面にエアーを吹き付け、次いでエアーを吹き付けた面を第二のロールに抱かせながら該第二のロールとは反対側のフィルム面にエアーを吹き付けて水切りを行」っている点において共通する。

(イ) 引用発明の「水切処理装置30」は、「エアナイフ344、364から吐き出されるエアは、光学フィルム11におけるガイドロール342、362に支持された部分に、斜めから吹き付けられ、このエアは、エア吹き付け位置100を挟んでエアナイフ344、364のエア吹出口に対向するように配置された排気チャンバ346、366の開口部347、367を通って、排気チャンバ346、366内へと案内され」、「エアナイフ344、364の直近に排気チャンバ346、366を設け、強制排気することにより、光学フィルム11に付着した水分およびエアナイフ344、364が吐き出した高圧エアを効率的に回収する」ものである。
ここで、この「排気チャンバ346、366」により「回収」される「光学フィルム11に付着した水分」は、「エア」の「吹き付け」による「水切処理」によって「光学フィルム11」から除去された「水分」である。
また、「エアナイフ344、364の直近に」「排気チャンバ346、366」が「設け」られているから、「排気チャンバ346、366」がそれぞれの「エア吹き付け位置100」近傍に設けられている。
そうすると、引用発明は、「エア」により除去された「水分」を、それぞれの「エア吹き付け位置100」近傍に設けられた「排気チャンバ346、366」により「回収する」「水切処理」を施しているということができる。
引用発明の「排気チャンバ346」及び「366」は、それぞれ本件発明1の「第一の排気チャンバー」及び「第二の排気チャンバー」に相当する。
引用発明の「エア吹き付け位置100」は、本件発明1の「エアー吹き付け位置」に相当する。
引用発明1の「水分」は、本件発明1の「水」に相当する。
そうすると、上記(ア)より、引用発明は、本件発明1と、「エアーにより除去された水をそれぞれエアー吹き付け位置近傍に設けられた第一のチャンバー及び第二のチャンバーにより回収する水切り処理を施し」ている点において共通する。

(ウ) 上記ア(ウ)より、引用発明は、「ポリビニールアルコール(PVA)からなる偏光フィルム」の原反フィルムである「ポリビニルアルコール系樹脂」「フィルム」(本件発明1の「ポリビニルアルコール系樹脂フィルム」)に対し、「水洗」処理(本件発明1の「洗浄処理」)の後に、「水切処理」(本件発明1の「水切り処理」)を施すものである。
そうすると、上記(ア)と(イ)より、引用発明は、本件発明1と、「該洗浄処理の後」、「フィルムをその片面に設けた第一のロールに抱かせながら該第一のロールとは反対側のフィルム面にエアーを吹き付け、次いでエアーを吹き付けた面を第二のロールに抱かせながら該第二のロールとは反対側のフィルム面にエアーを吹き付けて水切りを行い」、「エアーにより除去された水をそれぞれエアー吹き付け位置近傍に設けられた第一のチャンバー及び第二のチャンバーにより回収する水切り処理を施し」ている点において共通する。

(エ) 引用発明においては、「エア」が「エアナイフ344、364から吐き出され」、「光学フィルム11に」「吹き付けられ」る。引用発明においては、「エアナイフ344、364の先端の開口量を制御することによって」、「エアナイフ344、364から吐き出される高圧エアの量は」、「自由に変更可能であ」る。
そうすると、「高圧エアー」(本件発明1の「エア」)は、(「開口量」が「制御」される)「開口」を備えた「エアナイフ344、364」の「先端」「から吐き出され」て、「光学フィルム11に」「吹き付けられ」る。

(オ) 引用発明においては、「第2の水切処理ユニット36における吹き付け角度200が70度で、かつ、第1の水切処理ユニット34における吹き付け角度300が40度であり」、「吹き付け角度」は、「エア吹き付け位置におけるガイドロール342、362の接線と、エアナイフ344、364のエア吹き出し方向との角度」である。
ここで、「エア吹き付け位置におけるガイドロール342、362の接線」と「エアナイフ344、364のエア吹き出し方向」との角度は、「エア吹き付け位置における」「光学フィルム11」表面と、「エアナイフ344、364」の「先端」の「高圧エア」を「吐き出」す「開口」(上記(ク)参照)の先端を通る中心線との角度と言い換えることができる。
そうすると、引用発明においては、「エアナイフ344、364」の「先端」は、「エアナイフ344、364」の「先端」の「高圧エア」を「吐き出」す「開口」先端を通る中心線が、「光学フィルム11」表面に対して、それぞれ「40度」、「70度」の角度をなしているということができる。

(カ) 引用発明の「高圧エア」を「吐き出」す「開口」を備えた「エアナイフ344、364」の「先端」は、本件発明1の「ノズル」に相当する。
また、引用発明の「高圧エア」を「吐き出」す「開口」は、本件発明1の「吹き出し口」に相当する。
そうすると、上記ア(ウ)と、上記(イ)、(エ)及び(オ)より、引用発明は、本件発明1の「前記エアは、ノズルからフィルムに吹き付けられ」、「該ノズルは、その吹き出し口先端を通る中心線が、フィルム表面に対して30?80°の角度をなす」との要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
上記(1)の対比結果を踏まえると、本件発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
「ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、染色処理及び洗浄処理をこの順に施して偏光フィルムを製造する方法であって、
該洗浄処理の後、フィルムをその片面に設けた第一のロールに抱かせながら該第一のロールとは反対側のフィルム面にエアーを吹き付け、次いでエアーを吹き付けた面を第二のロールに抱かせながら該第二のロールとは反対側のフィルム面にエアーを吹き付けて水切りを行い、エアーにより除去された水をそれぞれエアー吹き付け位置近傍に設けられた第一のチャンバー及び第二のチャンバーにより回収する水切り処理を施し、
前記エアーは、ノズルからフィルムに吹き付けられ、該ノズルは、その吹き出し口先端を通る中心線がフィルム表面に対して30?80°の角度をなす、
偏光フィルムの製造方法。」

イ 相違点
上記(1)の対比結果を踏まえると、本件発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さは1?60μmであるのに対して、
引用発明の「光学フィルム11」の厚さが不明である点。

(相違点2)
本件発明1は、染色処理、架橋処理、及び洗浄処理をこの順に施しているのに対して、
引用発明は、染色処理と洗浄処理の間に架橋処理を含んでいるかどうか不明である点。

(相違点3)
本件発明1の水切り処理は、フィルムに200?1500N/mの張力を付与しつつ行うのに対して、
引用発明の水切処理のときに光学フィルム11に付与される張力の値が不明である点。

(相違点4)
本件発明1は、「該チャンバーの吸引口先端からフィルム表面までの距離が2mm以下となるように配置され」、「該ノズルは」、「その吹き出し口先端からフィルム表面までの距離が1.5mm以下となるように配置され」、「前記エアーは、2?20m^(3)/分の風量で吹き付けられる」のに対して、
引用発明は、当該2つの距離に相当する距離がともに不明であり、エアナイフ344、364から吐き出される高圧エアの量も不明である点。

(3) 判断
事案に鑑み、相違点3及び相違点4をまとめて検討する。
ア 引用文献1の【背景技術】(段落【0002】?【0004】)及び【発明が解決しようとする課題】(段落【0005】?【0008】)等の記載からみて、引用発明が解決しようとする課題は、従来技術においては、「一対のエアナイフを用いる場合、搬送速度の上昇につれて吐き出すエアの圧力を高める必要が生じるが、高圧エアを吹き付けた結果、搬送される光学フィルムがばたつき、その結果、光学フィルムの蛇行が生じたり、光学フィルムにシワが発生したりする等の不具合が生じる虞があった」(段落【0007】)という問題があるところ、「長尺状シートの搬送速度を高めた場合であっても、長尺状シートの蛇行の発生や長尺状シートのシワやキズ等の発生を抑制しつつ、長尺状シートに対して適切な水切処理を行うことが可能な長尺シート水切処理装置を提供すること」(段落【0008】)である。
そして、引用文献1には、エアナイフ、排気チャンバの配置位置、エアナイフからのエアの吐き出し量に関し、「長尺状シートにおける回転体に張架された部分、つまり回転体によって安定的に保持された部分に対して、エア吐出装置がエアを吹き付ける。このため、長尺状シートの高速搬送化に伴ってエア吐出装置からのエア吹き付け量を増加させても、長尺状シートがばたつくことがなく、その結果、長尺状シートが蛇行搬送されたり、長尺状シートにシワが発生したりする不具合が起こりにくい。」(段落【0014】)、「エア吐出装置から吐き出されたエアが、長尺状シートに当たった後にそのまま排気チャンバの開口部に導かれるため、エア吐出装置から吐き出されたエアが、長尺状シートに付着した水分とともに円滑に排気チャンバ内に回収される。このため、エア吐出装置から大量にエアを吐き出した場合であっても、長尺状シート水切処理装置の配置する処理室(例えば、クリーンルーム)の雰囲気に影響が出にくい。」(段落【0015】)、「エアナイフ344は、ガイドロール342に張架された光学フィルム11に対してエアを吹き付けるように構成される。排気チャンバ346は、エアナイフ344からのエアを回収して排気するように構成される。排気チャンバ346は、ガイドロール342との間に光学フィルム11が通過可能な間隙を設けて配置される。また、排気チャンバ346は、エアの吹き付け位置を挟んでエアナイフ344に対向するように配置された開口部347を有する。」(段落【0023】)、「エアナイフ344、364によって光学フィルム11から効果的に水分を除去するためには、エアナイフ344、364の吐き出し量、光学フィルムへの吹き付け角度、エアナイフ344、364の先端と光学フィルム11の間隙の均一性、エアナイフ344、364の吐き出し部開口のフィルム幅方向の均一性の設定が重要であると言える。」(段落【0040】)、「ガイドロール342、362に対向した位置でエアナイフ344、364が高圧エアを吐出するため、光学シート11のばたつきによるシワ、蛇行の発生の心配がない。」(段落【0042】)、「エアナイフ344、364の直近に排気チャンバ346、366を設け、強制排気することにより、光学フィルム11に付着した水分およびエアナイフ344、364が吐き出した高圧エアを効率的に回収できる。その結果、十分に温湿度を調整されたクリーンルーム内にて水切処理装置30を使用しても、周囲への影響が発生しにくい。」(段落【0043】)、「エアナイフ344、363の角度、配置、および対向するガイドロール342、362の配置の自由度が高いため、既設の運転中の生産ラインにも容易に水切処理装置30を搭載することが可能である。」(段落【0044】)との記載がある。
しかしながら、引用文献1には、水切り処理を光学フィルム11に200?1500N/mの張力を付与しつつ行うこと、エアナイフ(344、364)先端の開口から光学フィルム11表面までの距離を1.5mm以下となるように配置すること、排気チャンバ(346、366)の開口部(347、367)から光学フィルム11表面までの距離を2mm以下となるように配置すること、及び、エアナイフ(344、364)からのエア吐き出し量を2?20m^(3)/分の風量とすることについては、いずれも記載も示唆もされていない。
したがって、引用文献1には、引用発明の構成を上記相違点3及び相違点4に係る構成とすることが記載も示唆もされていない。

イ そして、当審拒絶理由通知において、偏光フィルムの搬送時にシワができたり、破断することがないように張力が調整・制御されることや張力の一般的な範囲を示すために引用された特開2011-164553号公報(引用文献2、拒絶査定時の引用文献B)、特開2011-13684号公報(引用文献3、同引用文献C)、特開2003-177245号公報(引用文献4、同引用文献D)及び特開2012-22250号公報(引用文献10)、吸引部とシート状物との距離が、吸引部とシート状物との接触や吸引効果を考慮して、0.5?10mm、好ましくは1?5mmの範囲に設定されること、あるいは噴射部とシート状物との距離が、衝突効果を最大にするために、0.5?10mm、あるいは1?5mmの範囲に設定されることを示すために引用された特開平6-99150号公報(引用文献6、同引用文献F)、ポリマーフィルム表面とエアナイフとの間隙を、水切り能や接触を考慮して、10μm?10cm、好ましくは100μm?5cm、さらに好ましくは500μm?1cmに設定されることを示すために引用された特開2008-94949号公報(引用文献7)、偏光フィルムの原反フィルムとして、厚み60μmあるいは40μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルムが周知のものであることを示すために引用された特開2012-123040号公報(引用文献8)及び特開2005-99548号公報(引用文献9)、偏光フィルムに紫外線硬化性接着剤を用いて保護フィルムを貼合し、偏光板を作製することが一般的に行われていることを示すために引用された特開2012-215821号公報(引用文献5、同引用文献E)のいずれにも、水切り処理において、フィルムに200?1500N/mの張力を付与し、チャンバーの吸引口先端からフィルム表面までの距離を2mm以下、ノズルの吹き出し口先端からフィルム表面までの距離を1.5mm以下となるように配置し、エアーを2?20m^(3)/分の風量で吹き付ける構成とすることは記載も示唆もされていない。
また、偏光フィルムの原反フィルムとして厚み60μmあるいは40μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルムを用いることや、染色処理と洗浄処理の間に架橋処理を行うことが周知技術であったとしても、これらの構成が導き出されるものでもない。

ウ そうしてみると、引用文献2?10に記載された事項や、上記の周知技術を考慮したとしても、引用発明において、上記相違点3及び相違点4に係本件発明1の構成とすることが、当業者に容易になし得たということはできない。

エ 以上のとおりであるから、相違点1、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が、引用発明、引用文献2?10に記載された技術及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本件発明2?5について
上記1(3)のとおり、本件発明1が、引用発明、引用文献2?10に記載された技術及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本件発明2?5も同様に、当業者が、引用発明、引用文献2?10に記載された技術及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
1 原査定の拒絶の理由において主引用例として引用された引用例Aは、当審拒絶理由において引用された引用文献1と同じある。また、原査定の拒絶の理由において副引用例として引用された引用例B?Fは、当審拒絶理由において引用された引用文献2?6と同じである。

2 そうすると、上記「第6 1(3)」で述べた理由と同じ理由により、 本件発明1?5は、引用発明、引用文献B?Fに記載された技術及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 以上のとおりであるから、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本件出願を拒絶することはできない。
他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-10 
出願番号 特願2012-265007(P2012-265007)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 南 宏輔廣田 健介菅原 奈津子  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
関根 洋之
発明の名称 偏光フィルム及び偏光板の製造方法  
代理人 中山 亨  
代理人 坂元 徹  
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