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審決分類 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H04N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
管理番号 1346773
異議申立番号 異議2017-700857  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-08 
確定日 2018-10-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6089468号発明「シート搬送装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6089468号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6089468号の請求項1、4、5、9ないし11に係る特許を維持する。 特許第6089468号の請求項2、3、6ないし8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第6089468号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成24年7月6日に出願したものであって、平成29年2月17日付けでその特許権の設定登録(特許公報発行日 平成29年3月8日)がされた。
これに対して、平成29年9月8日に特許異議申立人椎名彊より請求項1?8に対して特許異議の申立てがされたものであり、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成29年11月 1日 取消理由通知
平成29年12月26日 意見書提出及び訂正請求(特許権者)
平成30年 1月19日 訂正拒絶理由通知
平成30年 4月16日 取消理由<決定の予告>通知
平成30年 6月14日 意見書提出及び訂正請求(特許権者)

なお、平成30年8月3日付けで、特許異議申立人に対して、訂正請求があった旨の通知をしたが、通知の発送の日から30日以内に特許異議申立人からの意見書の提出はなかった。

2 訂正の適否について
2.1 平成29年12月26日付けの訂正請求について
平成29年12月26日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

2.2 平成30年6月14日付けの訂正請求について
平成30年6月14日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?11について訂正することを求めるというものである。

2.3 訂正事項
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「を備える、シート搬送装置。」とあるのを、
「、
前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部と、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、
前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、
前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、
前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え、
前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える、シート搬送装置。」に訂正する。(下線は、訂正箇所である。以下同様。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1?3のいずれか一項に記載のシート搬送装置。」とあるのを、
「請求項1に記載のシート搬送装置。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1?4のいずれか一項に記載のシート搬送装置。」とあるのを、
「請求項1または4に記載のシート搬送装置。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項1を引用する請求項6を引用するものについて独立形式に改め、
「シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部と、
前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部と、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、
前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、
前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、
前記太陽ギヤよりも下方に位置し、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え、
前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える、シート搬送装置。」と記載し、新たに請求項9とする。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6を引用するものについて、
「前記保持部は、前記駆動フレームにねじ止めされている、請求項9に記載のシート搬送装置。」と記載し、新たに請求項10とする。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項8のうち、請求項1を引用する請求項5を引用する請求項6を引用するもの、または、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を引用するものについて、
「前記ギヤには、前記駆動源が発生する駆動力が減速されて入力される、請求項9または10に記載のシート搬送装置。」と記載し、新たに請求項11とする。

2.4 訂正の適否の判断
2.4.1 一群の請求項について
訂正前の請求項1?8について、請求項2?8は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?8に対応する訂正後の請求項1?11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2.4.2 訂正の目的について
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項7を独立請求項にする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項1?3のいずれか一項を引用する請求項4について、訂正前の請求項1?3のいずれか一項を引用する請求項4を引用する請求項6を引用する請求項7とあったもののうち、訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6を引用する請求項7を、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項7を独立請求項にした訂正後の請求項1を引用する請求項4とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項1?4のいずれか一項を引用する請求項5について、訂正前の請求項1?4のいずれか一項を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7とあったもののうち、訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7、または、訂正前の請求項1を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7を、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項7を独立請求項にした訂正後の請求項1、または、訂正後の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項6を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(7)訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項7を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(8)訂正事項8
訂正事項8は、訂正前の請求項8を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(9)訂正事項9
訂正事項9は、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項8を独立請求項にする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(10)訂正事項10
訂正事項10は、訂正前の請求項1?3のいずれか一項を引用する請求項4を引用する請求項6を引用する請求項8とあったもののうち、訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6を引用する請求項8を、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項8を独立請求項にした訂正後の請求項9を引用する(訂正前の請求項4に対応する)請求項10とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(11)訂正事項11
訂正事項11は、訂正前の請求項1?4のいずれか一項を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項8とあったもののうち、訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項8、または、請求項1を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項8を、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項8を独立請求項にした訂正後の請求項9、または、訂正後の請求項9を引用する(訂正前の請求項4に対応する)請求項10、を引用する(訂正前の請求項5に対応する)請求項11とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

2.4.3 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項7を独立請求項にする訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項を準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2、3、6、7、8
訂正事項2、3、6、7、8は、請求項2、3、6、7、8を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項を準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(3)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6を引用する請求項7を、訂正後の請求項4にする訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項を準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(4)訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項1を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7、または、訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項7を、訂正後の請求項5にする訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項を準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(5)訂正事項9
訂正事項9は、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項8を、訂正後の請求項9にする訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項を準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(6)訂正事項10
訂正事項10は、訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6を引用する請求項8を、訂正後の請求項9を引用する請求項10にする訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項を準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(7)訂正事項11
訂正事項11は、訂正前の請求項1を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項8、または、訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6を引用する請求項8を、訂正後の請求項9または10を引用する請求項11にする訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項を準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

2.4.4 独立特許要件について
訂正前の請求項1?8は、本件特許異議申立において特許異議の申立てがされている請求項であるから、訂正事項1?11については、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に基づき、独立特許要件は課されない。

2.5 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的としており、かつ、同条第4項、及び第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。

したがって、訂正後の請求項〔1?11〕についての訂正を認める。

3 特許異議の申立てについて
3.1 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された本件特許請求の範囲の請求項1?11に係る発明(以下、項番にしたがい「本件訂正発明1」?「本件訂正発明11」といい、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお、説明のために、本件訂正発明1、9については、(A)?(L)の記号を当審において付与した。以下、構成A?構成Lと称することにする。
また、本件訂正発明1、9において、同一の構成については、同じ記号を付与している。)

【請求項1】
(A)シートを搬送するように構成された搬送部と、
(B)上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
(C)前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
(D)前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
(E)前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部と、
(F)前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部と、
(G)前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、
(H)前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、
(I)前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、
(J)前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え、
(K)前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える、
(L)シート搬送装置。
【請求項2】 (削除)
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
前記保持部は、前記駆動フレームにねじ止めされている、請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記ギヤには、前記駆動源が発生する駆動力が減速されて入力される、請求項1または4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】 (削除)
【請求項7】 (削除)
【請求項8】 (削除)
【請求項9】
(A)シートを搬送するように構成された搬送部と、
(B)上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
(C)前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
(D)前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
(E)前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部と、
(F)前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部と、
(G)前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、
(H)前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、
(I)前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、
(J’)前記太陽ギヤよりも下方に位置し、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え、
(K’)前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える、
(L)シート搬送装置。
【請求項10】
前記保持部は、前記駆動フレームにねじ止めされている、請求項9に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記ギヤには、前記駆動源が発生する駆動力が減速されて入力される、請求項9または10に記載のシート搬送装置。

3.2 取消理由の概要
3.2.1 平成29年11月1日付け取消理由の概要
訂正前の請求項1?8に係る特許発明に対して平成29年7月28日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。

(1)訂正前の請求項1?6に係る特許発明は、甲第1号証(特開平9-222759号公報)、甲第2号証(特開平10-337929号公報)、甲第3号証(特開2005-350226号公報)、甲第4号証(特開2007-264518号公報)のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)訂正前の請求項1?6に係る特許発明は、甲第1号証?甲第4号証、、甲第6号証(特開平11-29234号公報)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)訂正前の請求項2に係る特許発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

3.2.2 平成30年4月16日付け取消理由<決定の予告>の概要
平成29年12月26日付けで訂正請求がされた後に、平成30年2月14日付けで通知した取消理由<決定の予告>の概要は次のとおりである。

(1)訂正後の請求項1?14について訂正を認めない。
(2)訂正前の請求項1?6に係る特許発明は、甲第1号証?甲第4号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)訂正前の請求項1?6に係る特許発明は、甲第1号証?甲第4号証、甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(4)訂正前の請求項2に係る特許発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

3.3 特許異議申立人が、新規性進歩性欠如に基づく申立理由の証拠として提示した甲第1号証?甲第7号証について

3.3.1 甲第1号証(特開平9-222759号公報)
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、「画像形成装置における駆動系ユニット装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0010】積層された状態で給紙ユニット5におけるフイダー部ケース5a内にセットされた用紙Pの先端側はフイダー部ケース5a内の付勢ばね10a付き支持板10にて給紙ローラ11に向かって押圧され、上記駆動系ユニット6から動力伝達されて回転する給紙ローラ11と分離パッド12とによって1枚ずつ分離される。分離された用紙Pは、上下一対のレジストローラ13,14にてプロセスユニット3に給送され、このプロセスユニット3で表面にトナーにより画像を形成された用紙Pは、定着ユニット4の加熱ローラ15と押圧ローラ16とにて画像を固定された後、排紙トレイ8に排出される。

【0014】図3は前記各ユニットに対する歯車列による駆動機構を示し、この駆動機構の一部は後述するように駆動系ユニット6として、プリンタの本体ケース1の前方からみて左側にまとめて配置されている。即ち、駆動系ユニット6に固定された正逆回転可能な駆動モータ32のピニオンギヤ32aの回転力は、2段ギヤ60(60a,60b)と2段ギヤ61(61a,61b)とを介してギヤ62、2段ギヤ63(63a,63b)に伝達され、次いで給紙ユニット5における給紙ローラ11を駆動するギヤ11aに伝達される。前記ギヤ63の回転力は伝動ギヤ80を介して、レジストローラ13のギヤ13aに伝達される。

【0020】次に、図7?図12を参照しながら、駆動系ユニット6の構成について詳述する。図7は、駆動系ユニット6を収納部33に嵌合した状態を示し、駆動系ユニット6における合成樹脂製のフレーム600は、図9に示すように、駆動モータ32が装着される側(動力伝達上流側部位)の基板部600aの広幅面と伝達下流側部位の基板部600bの広幅面との間に段差部600cを備え、伝達上流側部位)の基板部600aでの複数本のギヤ軸601,602,603(図9には、代表するギヤ軸601を示す)はその自由端側が駆動モータ32の取り付け方向に突出し、伝達下流側部位の基板部600bでの複数本のギヤ軸604,605,606,607,608は、その各自由端が前記と逆方向(メインカバー体1b方向)に突出するように一体成形されている。
【0021】また、基板部600a及び600bの周囲には、それぞれ周囲側板部600dを一体的に突設させて、フレーム600は箱型状に形成されている。そして、各ギヤ軸に対応するギヤを嵌挿した後、各ギヤ軸601?608の自由端が嵌まる孔を有する支持金属板72,73を、基板部600a及び600bの広幅面と対峙させ、周囲側板部600dに弾性的に突設した複数個所の係止爪74、75等にて係止するのである(図9、図10及び図12参照)。
【0022】なお、ギヤ62,68は遊転歯車であり、軸62a(68a)と一体的にギヤ61b,67aの外周に沿って適宜距離だけ回動可能となるように、基板部600a,600bには長溝部76,76を、支持金属板72,73には長溝部77,77をそれぞれ備える。また、伝達上流側部位に対する支持金属板72には、駆動モータ32を固定する。
【0023】この構成により、本体ケース1はメインフレーム1aとメインカバー体1bとが一体化されたものであるから、従来のように、メインカバー体1bをメインフレーム1aに装着する手間が不要であると共に、合成樹脂製のフレーム600に予め一体形成されたギヤ軸601?608に所定のギヤ列を構成する各ギヤ60?69を装着した後、支持金属板72,73にて各ギヤ軸の自由端を支持させた駆動系ユニット6を、前記メインフレーム1aに装着するのであるから、駆動系ユニット6を予め組み立てることにより、画像形成装置の組立性が向上し、またメインテナンスの際にも、駆動系ユニット6だけの着脱作業で済むから作業性が向上するという効果を奏する。
【0024】そして、基板部600a,600bから突出するギヤ軸の自由端を支持金属板72,73にて支持するから、ギヤ軸自体を合成樹脂製としても、ギヤ軸の撓みを少なくでき、駆動系ユニット6の剛性を向上させることができるのである。又、支持金属板72,73が一側開放状の箱型のフレーム600の蓋の兼用となり、外からの塵等の侵入も防止することができる。

【図1】


【図2】


【図3】


【図9】


(2)甲第1号証に記載された発明
上記甲第1号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して甲第1号証に記載された発明を認定する。

ア 段落0010の記載によれば、甲第1号証には、用紙Pが、給紙ローラ11、上下一対のレジストローラ13,14等によって、給送及び排出される構成が記載されている。
したがって、甲第1号証には、「用紙を給送及び排出する装置」についての記載があり、当該「用紙を給送及び排出する装置」は、「用紙を給送及び排出するように構成されたローラ」を備えている。

イ 段落0020の記載によれば、甲第1号証の「用紙を給送及び排出する装置」は、駆動系ユニット6におけるフレーム600を備えるものであり、図9の記載によれば、駆動系ユニット6におけるフレーム600は、画像形成装置の上下方向(図9の紙面の鉛直方向)に延びているといえる。
したがって、甲第1号証の「用紙を給送及び排出する装置」は、「上下方向に延びている駆動系ユニットにおけるフレーム」を備えている。

ウ 段落0020の記載によれば、甲第1号証のフレーム600の基板部600a、600bからギヤ軸601?608が突出している構成が記載されている。
また、図9の記載によれば、ギヤ軸は、フレーム600の基板部と直交していることが見て取れる。
したがって、甲第1号証の「用紙を給送及び排出する装置」は、「駆動系ユニットにおけるフレームの基板部から直交するように突出しているギヤ軸」を備えている。

エ 段落0023の記載によれば、甲第1号証には、所定のギヤ列を構成する各ギヤ60?69をギヤ軸601?608に装着することが記載されている。
また、段落0014の記載によれば、駆動モータ32の回転力は、各ギヤ60?63に伝達され、次いで、給紙ローラ11やレジストローラ13,14のギヤに伝達されることが記載されている。
したがって、甲第1号証の「用紙を給送及び排出する装置」は、「ギヤ軸に装着され、駆動モータの回転力を給紙ローラやレジストローラに伝達するギヤ」を備えている。

オ 段落0021、0023の記載によれば、甲第1号証には、各ギヤ軸601?608の自由端が嵌まる孔を有する支持金属板72、73が記載されている。
また、図9の記載によれば、支持金属板72、73は、各ギヤ軸と直交していること、図10の記載によれば、ギヤ軸608の自由端は、支持金属板73の孔から挿通していることが見て取れる。
したがって、甲第1号証の「用紙を給送及び排出する装置」は、「各ギヤ軸と直交し、各ギヤ軸の自由端が挿通されて、嵌まる孔を有する支持金属板」を備えている。

カ 段落0022、0023、図3の記載によれば、甲第1号証の「用紙を給送及び排出する装置」は、ギヤ軸601に装着されたギヤ61、ギヤ61の外周に沿って回動可能となる遊転歯車であるギヤ62、ギヤ62に当接しているギヤ63を備えている。

キ まとめ
以上より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、説明のために、(1a)?(1g)の記号を当審において付与した。以下、構成1a?構成1gと称することにする。

「甲1発明」
(1a)用紙を給送及び排出するように構成されたローラと、
(1b)上下方向に延びている駆動系ユニットにおけるフレームと、
(1c)駆動系ユニットにおけるフレームの基板部から直交するように突出しているギヤ軸と、
(1d)ギヤ軸に装着され、駆動モータの回転力を給紙ローラやレジストローラに伝達するギヤと、
(1e)各ギヤ軸と直交し、各ギヤ軸の自由端が挿通されて、嵌まる孔を有する支持金属板と、
(1f)ギヤ軸に装着されたギヤ61、ギヤ61の外周に沿って回動可能となる遊転歯車であるギヤ62、ギヤ62に当接しているギヤ63を備える、
(1g)用紙を給送及び排出する装置。

3.3.2 甲第2号証(特開平10-337929号公報)
(1)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、「画像形成装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0019】一方、像担持体12とともに給紙コロ21を回転して給紙カセット18内の記録媒体22を送り出し、レジストローラ対23に突き当てて止める。そして、像担持体12上の画像にタイミングを合わせてそのレジストローラ対23を回転し、記録媒体22を像担持体12の図中右側に送り込む。
【0020】そうして、転写装置15で転写して像担持体12上の画像を記録媒体22に転写する。画像転写後の記録媒体22は、定着装置17に入れてそこで転写画像を定着し、排紙ローラ24で送り出して装置本体10上の排紙スタック部25上にスタックする。
【0021】また、画像転写後の像担持体12は、クリーニング装置16位置でその表面に残った残留トナーを除去する。その後、たとえば不図示の除電装置で除電して次の画像形成に備える。
【0022】さて、このレーザプリンタでは、装置本体10の本体ケース11内に、手前側と奥側とに前後に対向して一対の板状の側板フレームを備える。それら一対の側板フレームは、各々樹脂材料を用いて一体成形でつくる。そして、それらの間で、上述した像担持体12・帯電装置13・現像装置14・転写装置15・クリーニング装置16・定着装置17・光書込み装置18・給紙ローラ21・レジストローラ対23などを支持してなる。
【0023】図2中符号30で示すものが、その奥側の側板フレームである。側板フレーム30の外側には、駆動系支持フレーム31を取り付ける。駆動系支持フレーム31は、摩擦係数の低い熱可塑性樹脂材料を用いて一体成形でつくり、片面を開放した箱形状で、その中には複数のギヤ支持軸32を立ててなる。
【0024】ギヤ支持軸32は、ギヤ33の中心孔33aに挿入してそれぞれギヤ33を回転自在に支持する。ギヤ33も、摩擦係数の低い熱可塑性樹脂材料を用いて一体成形でつくる。そして、図3に示すように、それらのギヤ支持軸32の先端を側板フレーム30の嵌合孔30aに緩みなくはめ付け、その側板フレーム30と駆動系支持フレーム31とでギヤ33のスラスト方向の動きを規制するかたちで駆動系支持フレーム31を側板フレーム30に取り付ける。そして、図1に示すとおり、ギヤ33で構成するギヤ列Gを、装置本体10の側板フレーム30に沿って設ける。
【0025】また、側板フレーム30には、メインモータ35を取り付けた取付板36を、複数のねじ37を用いてねじ止めする。これにより、メインモータ35の駆動力をギヤ列Gを介して減速して伝達し、上述した像担持体12・帯電装置13・現像装置14・転写装置15・クリーニング装置16・定着装置17・光書込み装置18・給紙ローラ21・レジストローラ対23などを駆動する。

【図1】


【図2】


【図3】


(2)甲第2号証に記載された発明
上記甲第2号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して甲第2号証に記載された発明を認定する。

ア 段落0019、0020、0022の記載によれば、甲第2号証には、給紙ローラ(給紙コロ)21、レジストローラ対23、排紙ローラ24によって、記録媒体22が、送り出される構成が記載されている。
したがって、甲第2号証には、「記録媒体を送り出す装置」についての記載があり、当該「記録媒体を送り出す装置」は、「記録媒体を送り出すように構成されたローラ」を備えている。

イ 段落0022、0023、図2の記載によれば、甲第2号証には、本体ケース11内に、手前側と奥側とに前後に対向して一対の板状の側板フレームを備え、側板フレームの間で、給紙ローラ21、レジストローラ対23を支持し、奥側の側板フレーム30の外側に駆動系支持フレーム31を取り付ける構成が記載されている。
ここで、奥側の側板フレーム30の外側に駆動系支持フレーム31を取り付けるということは、図1、図2の記載を併せて考えるに、駆動系支持フレーム31は、上下方向(図2の駆動系支持フレーム31の縦方向)に延びているといえる。
したがって、甲第2号証の「記録媒体を送り出す装置」は、「上下方向に延びている駆動系支持フレーム」を備えている。

ウ 段落0023の記載によれば、甲第2号証の駆動系支持フレーム31に複数のギヤ支持軸32を立ててなる構成が記載されている。
また、図2、図3の記載によれば、甲第2号証の駆動系支持フレーム31は、ギヤ支持軸32と直交していることが見て取れる。
したがって、甲第2号証の「記録媒体を送り出す装置」は、「駆動系支持フレームと直交し、駆動系支持フレームから立ててなる複数のギヤ支持軸」を備えている。

エ 段落0024、0025の記載によれば、甲第2号証には、ギヤ支持軸32が、ギヤ33を回転自在に支持し、メインモータ35の駆動力をギヤ33で構成するギヤ列Gを介して伝達し、給紙ローラ21やレジストローラ対23などを駆動していることが記載されている。
したがって、甲第2号証の「記録媒体を送り出す装置」は、「ギヤ支持軸に回転自在に支持され、メインモータの駆動力を給紙ローラやレジストローラ対に伝達するギヤ」を備えている。

オ 段落0024の記載によれば、甲第2号証には、各ギヤ支持軸32の先端を側板フレーム30の嵌合孔30aに緩みなくはめ付けることが記載されている。
そして、図3の記載もみるに、ギヤ支持軸32の先端は、側板フレーム30を挿通しているといえる。
また、図2、図3の記載によれば、甲第2号証の側板フレーム30は、ギヤ支持軸32と直交していることが見て取れる。
したがって、甲第2号証の「記録媒体を送り出す装置」は、「ギヤ支持軸と直交し、各ギヤ支持軸の先端が挿通されて、嵌合孔に緩みなくはめ付けるようにした側板フレーム」を備えている。

カ まとめ
以上より、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお、説明のために、(2a)?(2f)の記号を当審において付与した。以下、構成2a?構成2fと称することにする。

「甲2発明」
(2a)記録媒体を送り出すように構成されたローラと、
(2b)上下方向に延びている駆動系支持フレームと、
(2c)駆動系支持フレームと直交し、駆動系支持フレームから立ててなる複数のギヤ支持軸と、
(2d)ギヤ支持軸に回転自在に支持され、メインモータの駆動力を給紙ローラやレジストローラ対に伝達するギヤと、
(2e)ギヤ支持軸と直交し、各ギヤ支持軸の先端が挿通されて、嵌合孔に緩みなくはめ付けるようにした側板フレームとを備える、
(2f)記録媒体を送り出す装置。

3.3.3 甲第3号証(特開2005-350226号公報)
(1)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、「画像形成装置のギヤ機構」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0015】
図1は本発明に係るギヤ機構Aを採用した画像形成装置の要部の概略斜視図、図2は図1のギヤ機構AについてのII矢視図、図3は図2のIII矢視方向から見た場合のギヤ機構Aの概略側面図、図4はギヤ機構Aの要部の断面図、図5は図4の一部を拡大した断面図である。
【0016】
図1において、10は略コ字形に形成された板金製のシャーシで、このシャーシ10に、印画用紙に送り力を付与するためのフィードローラ21及びピンチローラ22や、カセットから印画用紙を繰り出すためのピックアップローラ25などのほか、印画用紙に印画を行うのに必要な印画要素などが装備されている。印画要素には、インクリボンカートリッジ(不図示)のインクリボンの色を印画用紙に転写するためのサーマルヘッド23やその作動機構24、図に現れていないプラテンローラなどが含まれる。
【0017】
ギヤ機構Aは、シャーシ10の片側の側板部12の外側に組み付けられている。図例のギヤ機構Aは、複数のギヤを互いに噛み合わせて集合させたギヤ列を備えていて、図2にその一部を概略的に示したように、フィードローラ21の端部を回転自在に支持しているフィードローラ軸受31を有して上記側板部12の外面に重なり状に固定された樹脂製のプレート(樹脂製プレート)30に支軸32を外向きに片持ち状に突出させてあり、しかも、その支軸32に、ギヤ機構Aのギヤ列に含まれる中間ギヤ33が、その軸孔を嵌合して回転自在に取り付けられている。図2には樹脂製プレート30に突出された1つの支軸32だけを示してあるけれども、この樹脂製プレート30には複数箇所に支軸が突出されていて、それらの支軸に上記ギヤ列を形成するギヤが回転自在に取り付けられている。
【0018】
また、図1のように、ギヤ機構AはモータMが取り付けられた板金製のプレート(板金製プレート)40を備えていて、この板金製プレート40が、上記樹脂製プレート30の適所から突出されたボス部34を利用してビス止めされている。そして、この板金製プレート40と樹脂製プレート30との間の形成されるスペースS1に上記ギヤ列が収容されている。図3に示したギヤ34は上記モータMの回転軸に固着された出力ギヤを例示していて、このギヤ34も上記スペースS1に収容されてギヤ列の始端ギヤを形成している。さらに、図2及び図3に示したギヤ35は中間ギヤ32に噛み合っている他のギヤを示し、図2に示したギヤ36は、フィードローラ軸受31を通して上記スペースS1内に突出されたフィードローラ支軸に固着されているギヤを例示してあり、このギヤ36は上記ギヤ列の終端ギヤを形成している。そして、フィードローラ21やサーマルヘッド23、ピックアップローラ25などの可動部材には、モータMの動力がギヤ機構Aのギヤ列を介して伝達されるようになっている。
【0019】
このように構成された画像形成装置によると、図1に示したピックアップローラ25の作用によってカセットから繰り出された印画用紙が、ピンチローラ22によってフィードローラ21に押し付けられてそのフィードローラ21による送り力を受ける。そして、図示していないプラテンローラに達した印画用紙に、図示していないインクリボンの色がサーマルヘッド23の作用によって転写される。この印画工程では、フィードローラ21の回転方向の切り替わりによって印画用紙が順方向及び逆方向に繰り返し双方向移動され、インクリボンに形成されたイェロー、マゼンタ、シアンといった色区画を活用して印画紙に高品位印画が行なわれる。
【0020】
ここで、図3に示したように、中間ギヤ33には、モータMの回転軸に固着されたギヤ34が噛み合ってそのギヤ34の回転が伝達され、しかも、中間ギヤ33の回転がそれに噛み合った他のギヤ35に伝達されるようになっているので、中間ギヤ33を支えている支軸32には、ギヤ34や他のギヤ35との噛合い回転によって一方向に向く曲げ力が付加される。図3にはギヤ34,35や中間ギヤ33の回転方向を矢印R1,R2,R3で示し、支軸32に付加される曲げ力とその曲げ力の方向を矢印Fで示してある。しかも、曲げ力Fが付加される支軸32は、樹脂製プレート30と共に一体成形された樹脂製であり、しかも、樹脂製プレート30から片持ち状に突出されているために曲げ力Fが加わることによって撓むおそれがあり、その支軸32が撓み変形を起こすと、中間ギヤ33が回転むらを生じてフィードローラ21による印画用紙の送り状態が不安定になり、印画品質が低下するという事態に陥る。
【0021】
そこで、この実施形態では次に説明する対策を講じている。すなわち、図1、図4又は図5のように、板金製プレート40に円形の支持孔部42を形成し、その支持孔部42に、円錐形の先細り部37として形成した支軸32の先端部を嵌合支持させている。また、上記支持孔部42の形成箇所を、板金製プレート40に切り出した弾性を有する片持ち状の支持片43の先端部に定めることにより、その支持片43の弾性によって支軸32を軸線方向に弾圧させている。さらに、支持片43の基部43aからの突出方向を、支軸32に付加される上記曲げ力Fの方向に一致、又は、曲げ力Fの方向に沿わせている。
【0022】
このような対策を講じておくと、樹脂製プレート30から片持ち状に突出された支軸32が、円錐形の先細り部37として形成されている先端部においても板金製プレート40の支持孔部42に嵌合支持されるので、支軸32に曲げ力が付加してもその支軸32が容易に撓み変形することがない。また、支持片43がその弾性によって支軸32を軸線方向に弾圧しているので、支軸32が軸方向でがたつくという事態が起こらない。さらに、支軸32に付加される曲げ力Fの方向に、片持ち状の支持片43の基部43aからの突出方向が一致又は沿っていることにより、支軸32に付加される曲げ力Fが片持ち状の支持片43を引張る方向(図5の矢印P)に作用する。そのため、支軸32に作用する曲げ力の影響で支持片43にねじったり屈曲させたりする方向の力が加わることがなくなり、その結果、支持片43によって支軸32の先端部がぐらつきなく定位置に位置決めされるようになる。以上説明した作用が相乗することにより、中間ギヤ33の回転安定性が向上し、中間ギヤ33に回転むらが生じにくくなってフィードローラ21による印画用紙の送り状態の安定性が向上し、ひいては印画品質が向上するようになる。

【図1】


【図2】


(2)甲第3号証に記載された発明
上記甲第3号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して甲第3号証に記載された発明を認定する。

ア 段落0016の記載によれば、甲第3号証には、印画用紙に送り力を付与するフィードローラ21が記載されている。
したがって、甲第3号証には、「印画用紙に送り力を付与する装置」についての記載があり、当該「印画用紙に送り力を付与する装置」は、「印画用紙に送り力を付与するフィードローラ」を備えている。

イ 段落0017の記載によれば、甲第3号証には、側板部12の外面に重なり状に固定された樹脂製プレート30についての記載があり、図1の記載からみて、樹脂製プレート30は、上下方向(図1の樹脂製プレート30の縦方向)に延びているといえる。
したがって、甲第3号証の「印画用紙に送り力を付与する装置」は、「上下方向に延びている樹脂製プレート」を備えている。

ウ 段落0017の記載によれば、甲第3号証には、樹脂製プレート30に支軸32を片持ち状に突出させる構成が記載されている。
また、図1の記載によれば、甲第3号証の樹脂製プレート30は、支軸32と直交していることが見て取れる。
したがって、甲第3号証の「印画用紙に送り力を付与する装置」は、「樹脂製プレートと直交し、樹脂製プレートから片持ち状に突出させる支軸」を備えている。

エ 段落0017、0018の記載によれば、甲3号証のギヤ機構Aのギヤ列に含まれる中間ギヤ33は、支軸32に回転自在に取り付けられ、モータMの回転軸に固着された出力ギヤ34は、ギヤ列の始端ギヤを形成し、フィードローラ支軸に固着されているギヤ36は、ギヤ列の終端ギヤを形成し、モータMの動力がギヤ機構Aのギヤ列を介してフィードローラ21に伝達されている。
したがって、甲第3号証の「印画用紙に送り力を付与する装置」は、「支軸に回転自在に取り付けられ、ギヤ列によって、モータMの動力をフィードローラに伝達する中間ギヤ」を備えている。

オ 段落0021の記載によれば、甲第3号証には、支軸32の先端部を板金製プレート40に形成された円形の支持孔部に嵌合支持させることが記載されている。
また、図1、図2の記載によれば、甲第3号証の板金製プレート40は、支軸32と直交していること、支軸の先端部が挿通されていることが見て取れる。
したがって、甲第3号証の「印画用紙に送り力を付与する装置」は、「支軸と直交し、支軸の先端部が挿通されて、円形の支持孔部に嵌合支持させるようにした板金製プレート」を備えている。

オ まとめ
以上より、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。なお、説明のために、(3a)?(3f)の記号を当審において付与した。以下、構成3a?構成3fと称することにする。

「甲3発明」
(3a)印画用紙に送り力を付与するフィードローラと、
(3b)上下方向に延びている樹脂製プレートと、
(3c)樹脂製プレートと直交し、樹脂製プレートから片持ち状に突出させる支軸と、
(3d)支軸に回転自在に取り付けられ、ギヤ列によって、モータMの動力をフィードローラに伝達する中間ギヤと、
(3e)支軸と直交し、支軸の先端部が挿通されて、円形の支持孔部に嵌合支持させるようにした板金製プレートとを備える、
(3f)印画用紙に送り力を付与する装置。

3.3.4 甲第4号証(特開2007-264518号公報)
(1)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、「画像形成装置の動力伝達機構」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0015】
転写ローラ9はバイアス印加されており、感光体ドラム5と対合され且つ矢示方向(感光体ドラム5とウイズ方向)に回転駆動されながら記録紙をニップ搬送し、この間感光体ドラム5の表面のトナー像が記録紙に転写される。感光体ドラム5の表面に残ったトナーは、残留トナー除去装置10で除去・回収される。トナー像が転写された記録紙は、定着器11に導入され、永久画像として定着された後、切替ゲート4aを押し上げ、排出ローラ対4bを経て排出トレイ4c上に排出される。この一連の記録紙の給送は、給紙カセット2aからの繰出し直後に略垂直(鉛直)に立ち上がり、排出ローラ対4bでは給紙カセット2aからの繰出し方向とは略180度の方向にUターンするような主給送パスPに沿ってなされる。このようなレイアウト構成により、装置全体のコンパクト化が図られる。

【0019】
次に、図3及び図4を参照してドラムユニット50に対する動力伝達機構を詳細に説明する。装置本体1の背面側には、背面側機体の一部としての駆動部取付基板1b,1cが設置され、該駆動部取付基板1bには、装着されるドラムユニット50のドラム軸心に平行にスタッド16が加締め等により植設され、このスタッド16にドラム駆動用伝達ギヤ17が軸回転可能に支持されている。ドラム駆動用伝達ギヤ17は二段ギヤとされ、基部側の入力ギヤ17aには、駆動部取付基板1bに固設されたモータ18の出力ギヤ18aに連繋するアイドラギヤ18bに噛合し、モータ18からドラム駆動用伝達ギヤ17への駆動伝達系が形成されている。このアイドラギヤ18bは、駆動部取付基板1b,1c間に架設された図示しないスタッドに軸回転可能に支持されるが、1個に限らず設計上複数個によって構成されることもある。また、駆動部取付基板1b,1c間には、図示を省略しているが、他のプロセス部駆動用の駆動伝達系も同様に配設される。ドラム駆動用伝達ギヤ17は、駆動部取付基板1cに取付けられた樹脂製ギヤケース17bにより、後記する被駆動伝達ギヤ52bとの噛合部分を除いて覆われている。スタッド16の先端部16aはこの樹脂製ギヤケース17bより突出している。
【0020】
駆動部取付基板1bには、他方の駆動部取付基板1cを貫き、スタッド16に平行な導電性位置決めピン19が加締め等により植設されている。上記ドラムユニット50は、前記プロセス部として少なくとも感光体ドラム5を備え、ユニットフレーム51内に感光体ドラム5が軸回転可能に支持されている。ユニットフレーム51の側部には張出部51aが延設され、この張出部51aにスタッド16の先端部16と略同径の係合孔51bが開設されている。

【0022】
上記構成において、ドラムユニット50は、図1の白抜矢示方向に沿って装置本体1内に挿入され、更に、図3の白抜矢示のように押入れられて、装置本体1の所定位置に装着保持される。この時、フランジ部材52の軸孔52aに、位置決めピン19が嵌挿され、被駆動伝達ギヤ52bがドラム駆動用伝達ギヤ17に噛合する。また、スタッド16の先端部16aがユニットフレーム51の係合孔51bに係入受容される。更に、一対の接触端子52cの先側屈曲部分が、位置決めピン19の先側に形成された小径括れ部19aに填り込むように弾性摺接する。
【0023】
上記ドラムユニット50の装置本体1内への挿入は、装置本体1内に形成された不図示のガイド部材に沿ってなされ、メンテンナンス扉1aを閉めると共に、位置決めピン19によって位置決めされた状態で装置本体1内の所定の位置に装着保持される。また、被駆動伝達ギヤ52bとドラム駆動用伝達ギヤ17との噛合によって、モータ18から感光体ドラム5への回転駆動伝達系が確立する。従って、モータ18の回転駆動力により感光体ドラム5は位置決めピン19の軸心回りに回転する。
【0024】
更に、スタッド16の先端部16aがユニットフレーム51の係合孔51bに係入受容されることによって、スタッド16が駆動部取付基板1bと位置決め保持されたユニットフレーム51とにより、所謂両持ち支持状態とされる。従って、スタッド16は、感光体ドラム5の回転に伴う負荷トルクを受けても先側が振れることなく、位置決めピン19との平行状態が維持され、被駆動伝達ギヤ52bとドラム駆動用伝達ギヤ17との噛合を含んで確立された感光体ドラム5の回転駆動伝達系が安定的に維持される。これによって、形成される画像にジッタ等が生じる懸念がなくなる。尚、被駆動伝達ギヤ52bおよびドラム駆動用伝達ギヤ17を斜歯ギヤとすることが望ましく、これによりその噛合状態が安定すると共に噛合がスムースになされる。

【図3】


【図4】


(2)甲第4号証に記載された発明
上記甲第4号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して甲第4号証に記載された発明を認定する。

ア 段落0015の記載によれば、甲第4号証には、転写ローラ9が感光体ドラム5と対合され記録紙をニップ搬送することが記載されていることから、転写ローラ9とともに、感光体ドラム5も記録紙を搬送するものといえる。
したがって、甲第4号証には、「記録紙を搬送する装置」についての記載があり、当該「記録紙を搬送する装置」は、「記録紙を搬送する感光体ドラム」を備えている。

イ 段落0019の記載によれば、甲第4号証には、装置本体の背面側に設置された駆動部取付基板1bについての記載があり、図3の記載からみて、駆動部取付基板1bは、上下方向(図3の紙面の鉛直方向)に延びているといえる。
したがって、甲第4号証の「記録紙を搬送する装置」は、「上下方向に延びている駆動部取付基板」を備えている。

ウ 段落0019の記載によれば、甲第4号証には、駆動部取付基板1bにスタッド16を植設させる構成が記載されている。
また、図3の記載によれば、甲第4号証の駆動部取付基板1bは、スタッド16と直交していることが見て取れる。
したがって、甲第4号証の「記録紙を搬送する装置」は、「駆動部取付基板と直交し、駆動部取付基板に植設されているスタッド」を備えている。

エ 段落0019の記載によれば、甲第4号証のドラム駆動用伝達ギヤ17は、スタッド16に軸回転可能に支持されている。
また、段落0023の記載によれば、ドラムユニット50の被駆動伝達ギヤ52bとドラム駆動用伝達ギヤ17との噛合によって、モータ18から感光体ドラム5への回転駆動伝達系が確立し、モータ18の回転駆動力により感光体ドラム5は位置決めピン19の軸心回りに回転するものである。
したがって、甲第4号証の「記録紙を搬送する装置」は、「スタッドに軸回転可能に支持され、モータの回転駆動力を感光体ドラムに伝達するドラム駆動用伝達ギヤ」を備えている。

オ 段落0019の記載によれば、甲第4号証には、スタッド16の先端部が樹脂製ギヤケース17bより突出していることが記載されている。
また、図3、図4の記載によれば、甲第4号証の樹脂製ギヤケース17bは、スタッド16と直交していることが見て取れる。
したがって、甲第4号証の「記録紙を搬送する装置」は、「スタッドと直交し、スタッドの先端部を突出させるようにした樹脂製ギヤケース」を備えている。

カ 段落0019、0020、0024の記載によれば、甲第4号証には、樹脂製ギヤケース17bより突出しているスタッド16の先端部がユニットフレーム51の張出部51aの係合孔51bに係入受容されることにより、スタッド16が駆動部取付基板1bと位置決め保持されたユニットフレーム51が記載され、図3の記載によれば、甲第4号証のユニットフレーム51の張出部51aは、駆動部取付基板1bと対向していることが見て取れる。
したがって、甲第4号証の「記録紙を搬送する装置」は、「樹脂製ギヤケースを介して駆動部取付基板と対向し、スタッドの先端部を位置決め保持するユニットフレームの張出部」を備えている。

キ まとめ
以上より、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。なお、説明のために、(4a)?(4g)の記号を当審において付与した。以下、構成4a?構成4gと称することにする。

「甲4発明」
(4a)記録紙を搬送する感光体ドラムと、
(4b)上下方向に延びている駆動部取付基板と、
(4c)駆動部取付基板と直交し、駆動部取付基板に植設されているスタッドと、
(4d)スタッドに軸回転可能に支持され、モータの回転駆動力を感光体ドラムに伝達するドラム駆動用伝達ギヤと、
(4e)スタッドと直交し、スタッドの先端部を突出させるようにした樹脂製ギヤケースと、
(4f)樹脂製ギヤケースを介して駆動部取付基板と対向し、スタッドの先端部を位置決め保持するユニットフレームの張出部を備える
(4g)記録紙を搬送する装置。

3.3.5 甲第5号証(特開2002-182540号公報)
(1)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、「画像形成装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0015】ところで、図1に示すように、本体側板11上には駆動部が設けられており、本体側板11には複数の穴12a2と係止穴13及び長角穴14がそれぞれ形成されている。そして、本体側板11とは別に設けられた軸保持板15aには本体側板11上に形成された前記複数の穴12a2に対応する複数のカシメ軸16aが結合され、これらのカシメ軸16aは複数のギヤ18aを支持するためのギヤ軸を兼ねている。更に、軸保持板15aの下方には、本体側板11下方の曲げ部の位置に形成された前記長角穴14を隠すように曲げ部が設けられている。
【0016】又、本体側板11と軸保持板15aの間にはギヤ離脱板19が配されており、該ギヤ離脱板19の軸保持板15a上の複数のカシメ軸16aに対応する位置には複数の穴12aが形成され、左右には本体側板11の係止穴13に係止するための係止爪部20が一体に形成されている。
【0017】駆動部の組み立てに際しては、先ず、ギヤ離脱板19の外側(図1の軸保持板15a側を外側とし、本体側板11側を内側とする)から軸保持板15aの複数のカシメ軸16aを複数の穴12aに通して位置決めしながらギヤ離脱板19を軸保持板15aに嵌め込むようにして密着させる。
【0018】次に、ギヤ離脱板19の内側から複数のギヤ18aを軸保持板15a上の複数のカシメ軸16aに保持させるように挿入する。
【0019】而して、軸保持板15aとギヤ離脱板19及び複数のギヤ18aが一体化されてユニットとして構成されると、軸保持板15aの複数のカシメ軸16aを本体側板11の複数の穴12a2に通して位置決めしながら本体側板11と前記一体ユニットを接近させ、本体側板11の係止穴13にギヤ離脱板19の係止爪部20を挿入してスナップフィット結合させた後、軸保持板15aと本体側板11を複数のビス17aにて締結する。このとき、軸保持板15a下方の曲げ部は、本体側板11下方の曲げ部の長角穴14部を隠すようにして固定される。
【0020】このように構成された駆動部を解体するに当たっては、本体側板11と軸保持板15aを締結している複数のビス17aを外す。
【0021】そして、軸保持板15aを外側にして、複数のギヤ18aから軸保持板15a上の複数のカシメ軸16aを引き抜くように軸保持板15aを外すと軸保持板15aと本体側板11は分離するが、ギヤ離脱板19は本体側板11上の係止穴13とギヤ離脱板19上の係止爪部20とのスナップフィット結合により本体側板11から分離しない。これによってそれまでカシメ軸16aで保持されていた複数のギヤ18aはギヤ離脱板19の下方へ抜け落ちる。
【0022】又、それまで本体側板11の下方曲げ部の長角穴14部を隠すようにして固定されていた軸保持板15aの下方曲げ部が無くなったため、複数のギヤ18aは長角穴14部の下方へ落ちてゆき、ギヤ離脱板19を本体側板11から分離させることができる。
【0023】以上により、本体駆動部を組立性向上や再資源化のために組立、解体、分別及び再利用する場合、Eリングによって抜け止めされたカシメ軸上のギヤ等の組立と解体に多大な手間を要していたが、本実施の形態によれば組立性が向上し、カシメ軸16aが立設された軸保持板15aを外すのみでギヤ18aとの分別が行われるため、解体作業も容易化し、高い組立性を確保しつつコストダウンを図ることができる。

(2)甲第5号証に記載された技術
上記甲第5号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第5号証には、次の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。

「甲5技術」
軸保持板に結合されているギヤ軸を、解体の際にギヤを下方へ抜け落ちるようにすることにより解体作業を容易化するためのギヤ離脱板の穴に通して、ギヤをギヤ軸に保持させるように挿入し、本体側板の穴に通して位置決めする技術。

3.3.6 甲第6号証(特開平11-29234号公報)
(1)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、「封筒自動分離給送装置」(発明の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

【0023】アイドラ・ギヤ57(図8参照)は、スタッド69C(図11参照)によって回転可能に支持されたハブ69Bを有する。スタッド69Cは、これによって支持するために左側壁35上のボス69D(図10参照)中に止められ、整列板43(図11参照)に取り付けられている。

【図10】


【図11】


(2)甲第6号証に記載された技術
上記甲第6号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して甲第6号証に記載された技術を認定する。

段落0023の記載によれば、スタッド69Cは、左側壁35上のボス69D中に止められ、整列板43に取り付けられている。
そして、図10、図11の記載からみて、左側壁35上のボス69Dによって支持されているスタッド69Cの先端は、整列板43を介して、ナット状の部材(異議申立書の「軸支部」)により保持され、左側壁35とナット状の部材は、対向しているといえる。

以上より、甲第6号証には、次の技術(以下、「甲6技術」という。)が記載されていると認められる。

「甲6技術」
整列板を介して左側壁と対向し、スタッドの先端を保持するナット状の部材を有する技術。

3.3.7 甲第7号証(実公平4-19550号公報)
(1)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、「転写材の先端位置調整装置」(考案の名称)に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、説明のために、下線を当審において付与した。

一方、調整板19の側面には、調整板19自在を移動させるためのラツク部22が一体的に形成されている。このラツク部22に噛合う調整用歯車23が設けられている。調整用歯車23は、軸部の上部に歯車23を回転させるための頭部24を有し、軸部の下部が固定板11に形成された円孔に挿通されて回転自在に設けられる。この調整用歯車23は、上記固定板11にビス25にて固定された歯車保持部材26にて、歯車23の両面が挟み込まれるように保持されており、その位置に位置付けられる。また、図中、ワイヤ10の一端は固定板11に形成された折り返し片27に固定されている。しかも、調整用歯車23はその頭部24がガラス支持体13に形成された開孔28と対応して設けられており、調整作業を容易にしている。(3頁6欄9?24行)

従つて、調整用歯車23は、歯車保持部材26の下保持部26_(-1)にて押上げられるため、上保持部26_(-2)にストツパー29を介して圧接される。これにより、調整用歯車23の回転が規制、つまり固定され、その状態が維持されることになる。よつて、調整板19並びに検知板18は、移動が規制され振動等にて移動することはない。(4頁8欄7?13行)

(2)甲第7号証に記載された技術
上記甲第7号証の記載事項及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、甲第7号証には、次の技術(以下、「甲7技術」という。)が記載されていると認められる。

「甲7技術」
軸部の下部が固定板に形成された円孔に挿通されて回転自在に設けられている調整用歯車であり、調整用歯車は、歯車保持部材の下保持部にて押し上げられ、上保持部に圧接される技術。

3.4 判断
3.4.1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)特許法第29条第1項第3号、同条第2項について
上記3.2で記載したように、平成29年11月1日付け取消理由及び平成30年4月16日付け取消理由<決定の予告>において、訂正前の請求項1?6に係る特許発明は、甲1発明?甲4発明のいずれかの発明である、又は、甲1発明?甲4発明、甲6技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとの通知をした。
そして、平成30年4月16日付け取消理由<決定の予告>に対して、本件訂正請求がされ、上記3.1に示したように、本件特許の特許請求の範囲は、請求項2、3、6?8については削除され、訂正後の請求項1、4、5、9、10、11となった。
そこで、以下では、本件訂正発明1、4、5、9、10、11について、甲1発明?甲4発明との対比による新規性の判断を行い、甲6技術及び他の甲号証に記載された技術も考慮した容易性の判断を行う。

ア 本件訂正発明1について
(ア)甲1発明との対比、判断
a 対比
(a)本件訂正発明1の構成Aと、甲1発明の構成1aとの対比
甲1発明の「用紙」、「給送及び排出する」、「ローラ」は、それぞれ、本件訂正発明1の「シート」、「搬送する」、「搬送部」に相当する。
したがって、甲1発明の構成1aと本件訂正発明1の構成Aは、一致する。

(b)本件訂正発明1の構成Bと、甲1発明の構成1bとの対比
甲1発明の「駆動系ユニットにおけるフレーム」は、本件訂正発明1の「駆動フレーム」に相当する。
したがって、甲1発明の構成1bと本件訂正発明1の構成Bは、一致する。

(c)本件訂正発明1の構成Cと、甲1発明の構成1cとの対比
甲1発明の「駆動系ユニットにおけるフレームの基板部から直交するように突出しているギヤ軸」において、「ギヤ軸」は、「駆動系ユニットにおけるフレームの基板部から直交する」ことから、駆動系ユニットにおけるフレームに設けられているといえる。
また、甲1発明の「駆動系ユニットにおけるフレームの基板部から直交するように突出している」は、本件訂正発明1の「前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出する」に相当する。
したがって、甲1発明の構成1cと本件訂正発明1の構成Cは、一致する。

(d)本件訂正発明1の構成Dと、甲1発明の構成1dとの対比
甲1発明の「ギヤ軸に装着され、駆動モータの回転力を給紙ローラやレジストローラに伝達するギヤ」において、「ギヤ」は、回転力を伝達するものであるから、回転可能なものといえる。
そうすると、甲1発明の「ギヤ軸に装着」は、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸に回転可能に支持」に相当する。
また、甲1発明の「駆動モータの回転力」は、本件訂正発明1の「駆動源が発生する駆動力」に相当する。
したがって、甲1発明の構成1dと本件訂正発明1の構成Dは、一致する。

(e)本件訂正発明1の構成Eと、甲1発明の構成1eとの対比
甲1発明の「支持金属板」は、「各ギヤ軸と直交」する「金属板」であるから、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をな」すものといえ、「支持金属板」は、本件訂正発明1の「保持部」に相当する。
甲1発明の「各ギヤ軸の自由端が挿通されて、嵌まる孔」は、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する」ものといえる。
したがって、甲1発明の構成1eと本件訂正発明1の構成Eは、一致する。

(f)本件訂正発明1の構成Fと、甲1発明との対比
甲1発明は、本件訂正発明1のように「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部を備える」ものではない。

(g)本件訂正発明1の構成G?Jと、甲1発明の構成1fとの対比
甲1発明の「ギヤ軸」は、甲1発明の構成1cのように、「駆動系ユニットにおけるフレームの基板部から直交するように突出している」ので、本件訂正発明1の「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸」に相当する。
甲1発明の「ギヤ軸に装着されたギヤ61」は、本件訂正発明1の「前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤ」に相当する。
甲1発明の「ギヤ61の外周に沿って回動可能となる遊転歯車であるギヤ62」は、本件訂正発明1の「前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤ」に相当する。
甲1発明の「ギヤ62に当接しているギヤ63」は、本件訂正発明1の「前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤ」に相当する。
したがって、甲1発明の構成1fと本件訂正発明1の構成G?Jは、一致する。

(h)本件訂正発明1の構成Kと、甲1発明との対比
甲1発明は、本件訂正発明1のように「前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」ものではない。

(i)本件訂正発明1の構成Lと、甲1発明の構成1gとの対比
甲1発明の「用紙を給送及び排出する装置」は、本件訂正発明1の「シート搬送装置」に相当する。
したがって、甲1発明の構成1gと本件訂正発明1の構成Lは、一致する。

(j)一致点、相違点
したがって、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の点で、一致ないし相違する。

(一致点)
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部と、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、
前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、
前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、
前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備える、
シート搬送装置。

(相違点)
(相違点1)
本件訂正発明1は、「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備えるのに対し、甲1発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点2)
本件訂正発明1の保持カバー部は、さらに、「前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」のに対し、甲1発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。

b 新規性についての判断
上記a(j)のように、本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明1は、甲1発明でない。

c 進歩性についての判断
(a)相違点1について
甲4発明の「樹脂製ギヤケースを介して駆動部取付基板と対向し、スタッドの先端部を位置決め保持するユニットフレームの張出部を備える」構成や、甲6技術の「整列板を介して左側壁と対向し、スタッドを保持するナット状の部材を有する技術」のように、すでにスタッドのような軸を保持している部材(甲4発明の「樹脂製ギヤケース」、甲6技術の「整列板」)を挟んで、フレームと対向し、軸の先端を更に保持するような構成は、周知技術であるから、甲1発明において、「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備えることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(b)相違点2について
上記(a)で検討したように、相違点1に係る構成が、甲1発明及び周知技術から容易に想到し得るものであるとしても、当該「保持カバー部」に関して、更に、本願の太陽ギヤ軸が撓むことを抑制するために、「前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」構成とすることは、甲4発明や甲6技術のような周知の構成を勘案しても、容易に想到し得るものでなく、また、他の甲号証のいずれにも記載も示唆も無く、当業者が容易に想到し得るものではない。

d 小括
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明及び他の甲号証に記載された発明や技術から容易に想到し得るものでない。

(イ)甲2発明との対比、判断
a 対比
(a)本件訂正発明1の構成Aと、甲2発明の構成2aとの対比
甲2発明の「記録媒体」、「送り出す」、「ローラ」は、それぞれ、本件訂正発明1の「シート」、「搬送する」、「搬送部」に相当する。
したがって、甲2発明の構成2aと本件訂正発明1の構成Aは、一致する。

(b)本件訂正発明1の構成Bと、甲2発明の構成2bとの対比
甲2発明の「駆動系支持フレーム」は、本件訂正発明1の「駆動フレーム」に相当する。
したがって、甲2発明の構成2bと本件訂正発明1の構成Bは、一致する。

(c)本件訂正発明1の構成Cと、甲2発明の構成2cとの対比
甲2発明の「駆動系支持フレームから立ててなる複数のギヤ支持軸」において、「ギヤ支持軸」は、「駆動系支持フレームから立ててなる」ことから、駆動系支持フレームに設けられているといえる。
甲2発明の「ギヤ支持軸」は、本件訂正発明1の「ギヤ軸」に相当する。
また、甲2発明の「駆動系支持フレームと直交し、駆動系支持フレームから立ててなる」は、本件訂正発明1の「前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出する」に相当する。
したがって、甲2発明の構成2cと本件訂正発明1の構成Cは、一致する。

(d)本件訂正発明1の構成Dと、甲2発明の構成2dとの対比
甲2発明の「回転自在」、「メインモータの駆動力」は、それぞれ、本件訂正発明1の「回転可能」、「駆動源が発生する駆動力」に相当する。
また、甲2発明の「給紙ローラやレジストローラ」は、構成2aの「ローラ」を具体化したものであり、本件訂正発明1の「搬送部」に相当する。
したがって、甲2発明の構成2dと本件訂正発明1の構成Dは、一致する。

(e)本件訂正発明1の構成Eと、甲2発明の構成2eとの対比
甲2発明の「側板フレーム」は、「ギヤ支持軸と直交」する「側板」であるから、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をな」すものといえる。
甲2発明の「各ギヤ支持軸の先端が挿通されて、嵌合孔に緩みなくはめ付けるようにした」ことは、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する」ことに相当する。
また、「側板フレーム」は、本件訂正発明1の「保持部」に相当する。
したがって、甲2発明の構成2eと本件訂正発明1の構成Eは、一致する。

(f)本件訂正発明1の構成F?Kと、甲2発明との対比
甲2発明は、本件訂正発明1のように「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備え、「前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」ものでなく、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るものでもない。

(g)本件訂正発明1の構成Lと、甲2発明の構成2fとの対比
甲2発明の「記録媒体を送り出す装置」は、本件訂正発明1の「シート搬送装置」に相当する。’
したがって、甲2発明の構成2fと本件訂正発明1の構成Lは、一致する。

(h)一致点、相違点
したがって、本件訂正発明1と甲2発明は、以下の点で、一致ないし相違する。

(一致点)
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部とを備える、
シート搬送装置。

(相違点)
(相違点1)
本件訂正発明1は、「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備えるのに対し、甲2発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点2)
本件訂正発明1の保持カバー部は、さらに、「前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」のに対し、甲2発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点3)
本件訂正発明1は、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るのに対し、甲2発明は、そのような太陽ギヤ軸と、太陽ギヤと、遊星ギヤと、従動ギヤとを備えるものではない点。

b 新規性についての判断
上記a(h)のように、本件訂正発明1と甲2発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明1は、甲2発明でない。

c 進歩性についての判断
相違点2について検討する。
上記(ア)c(b)の検討を援用すると、本願の太陽ギヤ軸が撓むことを抑制するために、「前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」構成とすることは、甲4発明や甲6技術のような周知の構成を勘案しても、容易に想到し得るものでなく、また、他の甲号証のいずれにも記載も示唆も無く、当業者が容易に想到し得るものではない。

d 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明及び他の甲号証に記載された発明や技術から容易に想到し得るものでない。

(ウ)甲3発明との対比、判断
a 対比
(a)本件訂正発明1の構成Aと、甲3発明の構成3aとの対比
甲3発明の「印画用紙」は、本件訂正発明1の「シート」に相当する。
また、甲3発明の「送り力を付与する」ことにより、フィードローラは、印画用紙を搬送するものであるから、甲3発明の「送り力を付与する」、「フィードローラ」は、それぞれ、本件訂正発明1の「搬送する」、「搬送部」に相当する。
したがって、甲3発明の構成3aと本件訂正発明1の構成Aは、一致する。

(b)本件訂正発明1の構成Bと、甲3発明の構成3bとの対比
甲3発明の「樹脂製プレート」は、支軸、ギヤ等の駆動に関する部材を保持するものであるから、本件訂正発明1の「駆動フレーム」に相当する。
したがって、甲3発明の構成3bと本件訂正発明1の構成Bは、一致する。

(c)本件訂正発明1の構成Cと、甲3発明の構成3cとの対比
甲3発明の「樹脂製プレートから片持ち状に突出させる支軸」において、「支軸」は、「樹脂製プレートから片持ち状に突出させる」ことから、樹脂製プレートに設けられているといえる。
甲3発明の「支軸」は、本件訂正発明1の「ギヤ軸」に相当する。
また、甲3発明の「樹脂製プレートと直交し、樹脂製プレートから片持ち状に突出させる」は、本件訂正発明1の「前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出する」に相当する。
したがって、甲3発明の構成3cと本件訂正発明1の構成Cは、一致する。

(d)本件訂正発明1の構成Dと、甲3発明の構成3dとの対比
甲3発明の「回転自在」、「モータMの動力」、「中間ギヤ」は、それぞれ、本件訂正発明1の「回転可能」、「駆動源が発生する駆動力」、「ギヤ」に相当する。
したがって、甲3発明の構成3dと本件訂正発明1の構成Dは、一致する。

(e)本件訂正発明1の構成Eと、甲3発明の構成3eとの対比
甲3発明の「板金製プレート」は、「支軸と直交」する「板金」であるから、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をな」すものといえる。
甲3発明の「支軸の先端部が挿通されて、円形の支持孔部に嵌合支持させる」ことは、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する」ものといえる。
また、「板金製プレート」は、本件訂正発明1の「保持部」に相当する。
したがって、甲3発明の構成3eと本件訂正発明1の構成Eは、一致する。

(f)本件訂正発明1の構成F?Kと、甲3発明との対比
甲3発明は、本件訂正発明1のように「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備え、「前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」ものでなく、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るものでもない。

(g)本件訂正発明1の構成Lと、甲3発明の構成3fとの対比
甲3発明の「印画用紙に送り力を付与する装置」は、本件訂正発明1の「シート搬送装置」に相当する。
したがって、甲3発明の構成3fと本件訂正発明1の構成Lは、一致する。

(h)一致点、相違点
したがって、本件訂正発明1と甲3発明は、以下の点で、一致ないし相違する。

(一致点)
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部とを備える、
シート搬送装置。

(相違点)
(相違点1)
本件訂正発明1は、「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備えるのに対し、甲3発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点2)
本件訂正発明1の保持カバー部は、さらに、「前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」のに対し、甲3発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点3)
本件訂正発明1は、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るのに対し、甲3発明は、そのような太陽ギヤ軸と、太陽ギヤと、遊星ギヤと、従動ギヤとを備えるものではない点。

b 新規性についての判断
上記a(h)のように、本件訂正発明1と甲3発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明1は、甲3発明でない。

c 進歩性についての判断
相違点2について検討する。
上記(ア)c(b)の検討を援用すると、本願の太陽ギヤ軸が撓むことを抑制するために、「前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」構成とすることは、甲4発明や甲6技術のような周知の構成を勘案しても、容易に想到し得るものでなく、また、他の甲号証のいずれにも記載も示唆も無く、当業者が容易に想到し得るものではない。

d 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲3発明及び他の甲号証に記載された発明や技術から容易に想到し得るものでない。

(エ)甲4発明との対比、判断
a 対比
(a)本件訂正発明1の構成Aと、甲4発明の構成4aとの対比
甲4発明の「記録紙」、「感光体ドラム」は、それぞれ、本件訂正発明1の「シート」、「搬送部」に相当する。
したがって、甲4発明の構成4aと本件訂正発明1の構成Aは、一致する。

(b)本件訂正発明1の構成Bと、甲4発明の構成4bとの対比
甲4発明の「駆動部取付基板」は、本件訂正発明1の「駆動フレーム」に相当する。
したがって、甲4発明の構成4bと本件訂正発明1の構成Bは、一致する。

(c)本件訂正発明1の構成Cと、甲4発明の構成4cとの対比
甲4発明の「駆動部取付基板に植設されているスタッド」において、「スタッド」は、「駆動部取付基板に植設されている」ことから、駆動部取付基板に設けられているといえる。
甲4発明の「スタッド」は、本件訂正発明1の「ギヤ軸」に相当する。
また、甲4発明の「駆動部取付基板と直交し、駆動部取付基板に植設されている」は、本件訂正発明1の「前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出する」に相当する。
したがって、甲4発明の構成4cと本件訂正発明1の構成Cは、一致する。

(d)本件訂正発明1の構成Dと、甲4発明の構成4dとの対比
甲4発明の「軸回転可能」、「モータの回転駆動力」、「ドラム駆動用伝達ギヤ」は、それぞれ、本件訂正発明1の「回転可能」、「駆動源が発生する駆動力」、「ギヤ」に相当する。
したがって、甲4発明の構成4dと本件訂正発明1の構成Dは、一致する。

(e)本件訂正発明1の構成Eと、甲4発明の構成4eとの対比
甲4発明の「樹脂製ギヤケース」は、「スタッドと直交」するものであり、スタッドに対しては、樹脂製ギヤケースの面で直交するものであるから、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をな」すものといえる。
甲4発明の「スタッドの先端部を突出させるようにした」ことは、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する」ものといえる。
また、「樹脂製ギヤケース」は、本件訂正発明1の「保持部」に相当する。
したがって、甲4発明の構成4eと本件訂正発明1の構成Eは、一致する。

(f)本件訂正発明1の構成Fと、甲4発明の構成4fとの対比
甲4発明の「スタッドの先端部を位置決め保持するユニットフレームの張出部」は、本件訂正発明1の「前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」に相当する。
また、甲4発明の「ユニットフレームの張出部」は「樹脂製ギヤケースを介して駆動部取付基板と対向」しており、樹脂製ギヤケースを介していることから、『樹脂製ギヤケースを挟んで駆動部取付基板と対向して配置されている』といえ、甲4発明の「樹脂製ギヤケースを介して駆動部取付基板と対向」することは、本件訂正発明1の「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され」ていることに相当する。
したがって、甲4発明の構成4fと本件訂正発明1の構成Fは、一致する。

(g)本件訂正発明1の構成G?Kと、甲4発明との対比
甲4発明は、本件訂正発明1のように「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るものでなく、「前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」ものでもない。

(h)本件訂正発明1の構成Lと、甲4発明の構成4gとの対比
甲4発明の「記録紙を搬送する装置」は、本件訂正発明1の「シート搬送装置」に相当する。
したがって、甲4発明の構成4gと本件訂正発明1の構成Lは、一致する。

(i)一致点、相違点
したがって、本件訂正発明1と甲4発明は、以下の点で、一致ないし相違する。

(一致点)
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部と、
前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部とを備える、
シート搬送装置。

(相違点)
(相違点1)
本件訂正発明1は、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るのに対し、甲4発明は、そのような太陽ギヤ軸と、太陽ギヤと、遊星ギヤと、従動ギヤとを備えるものではない点。

(相違点2)
本件訂正発明1は、「前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」のに対し、甲4発明の保持カバー部(ユニットフレームの張出部)は、そのような構成に限定されるものではない点。

b 新規性についての判断
上記a(i)のように、本件訂正発明1と甲4発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明1は、甲4発明でない。

c 進歩性についての判断
相違点2について検討する。
上記(ア)c(b)の検討を援用すると、本願の太陽ギヤ軸が撓むことを抑制するために、「前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」構成とすることは、甲6技術のような周知の構成を勘案しても、容易に想到し得るものでなく、また、他の甲号証のいずれにも記載も示唆も無く、当業者が容易に想到し得るものではない。

d 小括
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲4発明及び他の甲号証に記載された発明や技術から容易に想到し得るものでない。

イ 本件訂正発明4、5について
本件訂正発明4、5は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用している発明である。

したがって、本件訂正発明4、5と、甲1発明?甲4発明のそれぞれの発明とを対比すると、それぞれ、上記ア(ア)a(j)、上記ア(イ)a(h)、ア(ウ)a(h)、上記ア(エ)a(i)に示した相違点を少なくとも有するものである。

よって、本件訂正発明4、5と甲1発明?甲4発明のいずれかの発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明4、5は、甲1発明?甲4発明のいずれかの発明でない。

また、各相違点については、上記ア(ア)c、上記ア(イ)c、上記ア(ウ)c、上記ア(エ)cで検討したとおりである。

よって、本件訂正発明4、5は、甲1発明?甲4発明及び他の甲号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

ウ 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、訂正により新たに追加された発明であるが、訂正前の請求項1を引用する請求項6を引用する請求項8を独立請求項にした発明であるから、訂正前の請求項1に対する取消理由通知に記載した取消理由について検討する。

(ア)甲1発明との対比、判断
a 対比
(a)本件訂正発明9の構成A?E、Lと、甲1発明の構成1a?1e、1gとの対比
本件訂正発明9の構成A?E、Lは、本件訂正発明1の構成A?E、Lと同一の構成であるから、上記ア(ア)a(a)?(e)、(i)の記載を援用する。

(b)本件訂正発明9の構成Fと、甲1発明との対比
本件訂正発明9の構成Fは、本件訂正発明1の構成Fと同一の構成であるから、上記ア(ア)a(f)の記載を援用する。

(c)本件訂正発明9の構成G?K’と、甲1発明の構成1fとの対比
甲1発明の「ギヤ軸」は、甲1発明の構成1cのように、「駆動系ユニットにおけるフレームの基板部から直交するように突出している」ので、本件訂正発明1の「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸」に相当する。
甲1発明の「ギヤ軸に装着されたギヤ61」は、本件訂正発明9の「前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤ」に相当する。
甲1発明の「ギヤ61の外周に沿って回動可能となる遊転歯車であるギヤ62」は、本件訂正発明9の「前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤ」に相当する。
甲1発明の「ギヤ62に当接しているギヤ63」は、本件訂正発明9の「前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤ」に相当する。
しかしながら、甲1発明のギヤ63は、ギヤ61よりも下方に位置するものではなく、本件訂正発明9の従動ギヤのように、「前記太陽ギヤよりも下方に位置」する構成ではない。
また、甲1発明は、本件訂正発明9のように「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」ものではない。
したがって、甲1発明の構成1fと本件訂正発明9の構成G?K’は、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」る点で一致する。
しかしながら、甲1発明のギヤ63は、ギヤ61よりも下方に位置するものではなく、本件訂正発明9の従動ギヤのように、「前記太陽ギヤよりも下方に位置」する構成でなく、また、甲1発明は、本件訂正発明9のように「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」ものではない。

(d)一致点、相違点
したがって、本件訂正発明9と甲1発明は、以下の点で、一致ないし相違する。

(一致点)
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部と、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、
前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、
前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、
前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備える、
シート搬送装置。

(相違点)
(相違点1)
本件訂正発明9は、「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備えるのに対し、甲1発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点2)
本件訂正発明9の保持カバー部は、さらに、「前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」のに対し、甲1発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点3)
本件訂正発明9の従動ギヤは、「前記太陽ギヤよりも下方に位置」する構成であるのに対し、甲1発明の従動ギヤは、そのような位置ではない点。

b 新規性についての判断
上記a(d)のように、本件訂正発明9と甲1発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明9は、甲1発明でない。

c 進歩性についての判断
(a)相違点1について
甲4発明の「樹脂製ギヤケースを介して駆動部取付基板と対向し、スタッドの先端部を位置決め保持するユニットフレームの張出部を備える」構成や、甲6技術の「整列板を介して左側壁と対向し、スタッドを保持するナット状の部材を有する技術」のように、すでにスタッドのような軸を保持している部材(甲4発明の「樹脂製ギヤケース」、甲6技術の「整列板」)を挟んで、フレームと対向し、軸の先端を更に保持するような構成は、周知技術であるから、甲1発明において、「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備えることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(b)相違点2について
上記(a)で検討したように、相違点1に係る構成が、甲1発明及び周知技術から容易に想到し得るものであるとしても、当該「保持カバー部」に関して、更に、本願の太陽ギヤ軸が撓むことを抑制するために、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」構成とすることは、甲4発明や甲6技術のような周知の構成を勘案しても、容易に想到し得るものでなく、また、他の甲号証のいずれにも記載も示唆も無く、当業者が容易に想到し得るものではない。

d 小括
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件訂正発明9は、甲1発明及び他の甲号証に記載された発明や技術から容易に想到し得るものでない。

(イ)甲2発明との対比、判断
a 対比
(a)本件訂正発明9の構成A?E、Lと、甲2発明の構成2a?2fとの対比
本件訂正発明9の構成A?E、Lは、本件訂正発明1の構成A?E、Lと同一の構成であるから、上記ア(イ)a(a)?(e)、(g)の記載を援用する。

(b)本件訂正発明9の構成F?K’と、甲2発明との対比
甲2発明は、本件訂正発明9のように「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備え、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」ものでなく、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記太陽ギヤよりも下方に位置し、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るものでもない。

(c)一致点、相違点
したがって、本件訂正発明9と甲2発明は、以下の点で、一致ないし相違する。

(一致点)
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部とを備える、
シート搬送装置。

(相違点)
(相違点1)
本件訂正発明9は、「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備えるのに対し、甲2発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点2)
本件訂正発明9の保持カバー部は、さらに、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」のに対し、甲2発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点3)
本件訂正発明9は、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記太陽ギヤよりも下方に位置し、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るのに対し、甲2発明は、そのような太陽ギヤ軸と、太陽ギヤと、遊星ギヤと、従動ギヤとを備えるものではない点。

b 新規性についての判断
上記a(c)のように、本件訂正発明9と甲2発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明9は、甲2発明でない。

c 進歩性についての判断
相違点2について検討する。
上記(ア)c(b)の検討を援用すると、本願の太陽ギヤ軸が撓むことを抑制するために、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」構成とすることは、甲4発明や甲6技術のような周知の構成を勘案しても、容易に想到し得るものでなく、また、他の甲号証のいずれにも記載も示唆も無く、当業者が容易に想到し得るものではない。

d 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明9は、甲2発明及び他の甲号証に記載された発明や技術から容易に想到し得るものでない。

(ウ)甲3発明との対比、判断
a 対比
(a)本件訂正発明9の構成A?E、Lと、甲3発明の構成3a?3fとの対比
本件訂正発明9の構成A?E、Lは、本件訂正発明1の構成A?E、Lと同一の構成であるから、上記ア(イ)a(a)?(e)、(g)の記載を援用する。

(b)本件訂正発明9の構成F?K’と、甲3発明との対比
甲3発明は、本件訂正発明9のように「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備え、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」ものでなく、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記太陽ギヤよりも下方に位置し、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るものでもない。

(c)一致点、相違点
したがって、本件訂正発明9と甲3発明は、以下の点で、一致ないし相違する。

(一致点)
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部とを備える、
シート搬送装置。

(相違点)
(相違点1)
本件訂正発明9は、「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部」を備えるのに対し、甲3発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点2)
本件訂正発明9の保持カバー部は、さらに、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」のに対し、甲3発明は、そのような保持カバー部を備えるものではない点。
(相違点3)
本件訂正発明9は、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記太陽ギヤよりも下方に位置し、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るのに対し、甲3発明は、そのような太陽ギヤ軸と、太陽ギヤと、遊星ギヤと、従動ギヤとを備えるものではない点。

b 新規性についての判断
上記a(c)のように、本件訂正発明9と甲3発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明9は、甲3発明でない。

c 進歩性についての判断
相違点2について検討する。
上記(ア)c(b)の検討を援用すると、本願の太陽ギヤ軸が撓むことを抑制するために、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」構成とすることは、甲4発明や甲6技術のような周知の構成を勘案しても、容易に想到し得るものでなく、また、他の甲号証のいずれにも記載も示唆も無く、当業者が容易に想到し得るものではない。

d 小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明9は、甲3発明及び他の甲号証に記載された発明や技術から容易に想到し得るものでない。

(エ)甲4発明との対比、判断
a 対比
(a)本件訂正発明9の構成A?F、Lと、甲4発明の構成4a?4gとの対比
本件訂正発明9の構成A?F、Lは、本件訂正発明1の構成A?F、Lと同一の構成であるから、上記ア(イ)a(a)?(f)、(h)の記載を援用する。

(b)本件訂正発明9の構成G?K’と、甲4発明との対比
甲4発明は、本件訂正発明9のように「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記太陽ギヤよりも下方に位置し、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るものでなく、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」ものでもない。

(c)一致点、相違点
したがって、本件訂正発明9と甲4発明は、以下の点で、一致ないし相違する。

(一致点)
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部と、
前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部とを備える、
シート搬送装置。

(相違点)
(相違点1)
本件訂正発明9は、「前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、前記太陽ギヤよりも下方に位置し、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え」るのに対し、甲4発明は、そのような太陽ギヤ軸と、太陽ギヤと、遊星ギヤと、従動ギヤとを備えるものではない点。
(相違点2)
本件訂正発明9は、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」のに対し、甲4発明の保持カバー部(ユニットフレームの張出部)は、そのような構成に限定されるものではない点。

b 新規性についての判断
上記a(c)のように、本件訂正発明9と甲4発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明9は、甲4発明でない。

c 進歩性についての判断
相違点2について検討する。
上記(ア)c(b)の検討を援用すると、本願の太陽ギヤ軸が撓むことを抑制するために、「前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える」構成とすることは、甲6技術のような周知の構成を勘案しても、容易に想到し得るものでなく、また、他の甲号証のいずれにも記載も示唆も無く、当業者が容易に想到し得るものではない。

d 小括
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明9は、甲4発明及び他の甲号証に記載された発明や技術から容易に想到し得るものでない。

エ 本件訂正発明10、11について
本件訂正発明10、11は、本件訂正発明9を直接または間接的に引用している発明である。

したがって、本件訂正発明10、11と、甲1発明?甲4発明のそれぞれの発明とを対比すると、それぞれ、上記ウ(ア)a(d)、上記ウ(イ)a(c)、上記ウ(ウ)a(c)、上記ウ(エ)a(c)に示した相違点を少なくとも有するものである。

よって、本件訂正発明10、11と甲1発明?甲4発明のいずれかの発明を対比すると、相違点を有することから、本件訂正発明10、11は、甲1発明?甲4発明のいずれかの発明でない。

また、各相違点については、上記ア(ア)c、上記ア(イ)c、上記ア(ウ)c、上記ア(エ)cで検討したとおりである。

よって、本件訂正発明10、11は、甲1発明?甲4発明及び他の甲号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(2)特許法第36条第6項第1号、同条同項第2号について
上記3.2で記載したように、平成29年11月1日付け取消理由及び平成30年4月16日付け取消理由<決定の予告>において、訂正前の請求項2に係る特許発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない旨の通知を行った。
しかしながら、訂正前の請求項2に係る特許発明は、訂正により削除されたので、当該取消理由の対象となる請求項が存在しない。

3.4.2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第1項第3号、同条第2項について
ア 特許異議申立人の主張する特許異議申立理由
特許異議申立人は、訂正前の請求項4に係る特許発明が、甲第1号証に記載された発明と同一である、もしくは、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたことを主張している(以下、「主張1」という。)。
また、訂正前の請求項6?8に係る特許発明が、甲第1号証に記載された発明と甲第4号証?甲第7号証に開示された周知技術、もしくは、甲第2号証に記載された発明と甲第4号証?甲第7号証に開示された周知技術から当業者が容易に発明できたことを主張している(以下、「主張2」という。)。

イ 判断
(ア)主張1について
訂正前の請求項4に係る特許発明は、訂正により、本件訂正発明4となった。
そして、本件訂正発明4は、上記3.4.1(1)イで検討したように、甲1発明と同一でなく、また、甲1発明から当業者が容易に発明できたものでない。

(イ)主張2について
訂正前の請求項6?8に係る特許発明は、訂正により削除されたので、当該取消理由の対象となる請求項が存在しない。
なお、本件訂正発明1、4、5、9?11は、訂正前の請求項6、7もしくは訂正前の請求項6、8の構成を含むものであるが、上記3.4.1(1)ア(ア)(イ)、上記3.4.1(1)イ、上記3.4.1(1)ウ(ア)(イ)、上記3.4.1(1)エで検討したように、甲1発明と甲4発明、甲5技術?甲7技術、もしくは、甲2発明と甲4発明、甲5技術?甲7技から当業者が容易に発明できたものでない。

(2)特許法第36条第6項第1号、同条同項第2号について
ア 特許異議申立人の主張する特許異議申立理由
特許異議申立人は、訂正前の請求項1に係る特許発明に対して、「請求項1において「保持部」は、「前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する」としか規定されていないから、ギヤ軸の撓み抑制に寄与しない構成も包含している。(中略)請求項1の「保持部」が、ギヤ軸の撓みを抑制するためには、「保持部」自体の固定構造や、「保持部」が紙やゴム等ではなく、一定の剛性をもつ材料であること等が特定されることが必須であるところ、請求項1にはこのような規定はなく、Eリング4等も広く包含している。(中略)したがって、請求項1は、「保持部」がギヤ軸の撓みを抑制しない構成を包含している点で明確性違反がある。また、請求項1は、「保持部」がギヤ軸の撓みを抑制しない構成を包含している一方、本件特許明細書にはその構成例が開示されておらず、サポート要件違反がある。」(異議申立書75頁20行?77頁3行)ことを主張している(以下、「主張3」という。)。
また、訂正前の請求項6に係る特許発明に対して、「請求項6において「保持カバー部」は、「前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する」としか規定されていないから、(中略)ギヤ軸の撓み抑制に寄与しない構成も包含している。請求項6の「保持カバー部」が、ギヤ軸の撓みを抑制するためには、「保持カバー部」自体の固定構造や、「保持カバー部」が紙やゴム等ではなく、一定の剛性をもつ材料であること等が特定されることが必須であるところ、請求項6にはこのような規定はなく、Eリング4等も広く包含している。(中略)したがって、請求項6は、「保持カバー部」がギヤ軸の撓みを抑制しない構成を包含している点で明確性違反がある。また、請求項6は、「保持カバー部」がギヤ軸の撓みを抑制しない構成を包含している一方、本件特許明細書にはその構成例が開示されていない点、及び、「カバー」する部位を規定しておらず、本件特許明細書にはハーネスサポートしか開示されていない点で、サポート要件違反がある。」(異議申立書80頁14行?81頁10行)ことを主張している(以下、「主張4」という。)。

イ 判断
(ア)主張3について
発明の詳細な説明の記載によれば、本件訂正発明の目的は、「ギヤに駆動力が入力されたときに、ギヤ軸が撓むことを防止できる、シート搬送装置を提供すること」(段落0005)であり、課題を解決するための手段として、「ギヤ軸の先端部は、ギヤ軸と直交する面を有する板状をなす保持部に挿通されて保持されている。これにより、ギヤに大きなトルクが入力されたときに、ギヤ軸が撓むことを抑制できる。」(段落0008)と記載され、発明の効果として、「本発明によれば、ギヤ軸の先端部が保持部に挿通されて保持されているので、そのギヤ軸に支持されているギヤに大きなトルクが入力されたときに、ギヤ軸が撓むことを抑制できる。」(段落0023)と記載されている。
また、段落0082?0088には、「駆動フレーム261には、図7に示されるように、保持部の一例としての第1サポートプレート421が取り付けられている。第1サポートプレート421は、たとえば、板金のプレス加工によって形成されている。(中略)第1サポートプレート421が駆動フレーム261に取り付けられた状態で、軸保持孔424,425には、それぞれ第3ギヤ軸267および第4ギヤ軸269の先端部が挿通される。これにより、第3ギヤ軸267および第4ギヤ軸269の先端部が第1サポートプレート421に保持される。また、図7に示されるように、第5ギヤ軸270、第6ギヤ軸272および第7ギヤ軸273の各先端部は、保持部の一例としての第2サポートプレート431に保持されている。第2サポートプレート431は、たとえば、板金のプレス加工によって形成されている。」と記載されている。

本件訂正発明の目的が、ギヤ軸が撓むことを防止できることであり、発明の詳細な説明のサポートプレートに対応するギヤ軸の先端部を保持する保持部を、本件訂正発明が備えることにより当該課題が解決できるものである以上、本件訂正発明の保持部は、特許異議申立人が主張する紙やゴムやEリングのような構成は含まれないものであり、本件訂正発明1において、「保持部」自体の固定構造や、「保持部」が紙やゴム等ではなく、一定の剛性をもつ材料であることまで特定されなくても、保持部は、ギヤ軸が撓むことを防止できる構成であればよいことは明らかなものである。
また、ギヤ軸が撓むことを防止できる構成からなることは明らかである以上、「請求項1は、「保持部」がギヤ軸の撓みを抑制しない構成を包含している一方、本件特許明細書にはその構成例が開示されておらず」という特許異議申立人の主張は、理由がなく、保持部の一例として、板金のプレス加工によって形成されているサポートプレートが挙げられていることから、本件特許明細書にはその構成例が開示されているといえる。

(イ)主張4について
発明の詳細な説明の記載によれば、課題を解決するための手段として、「保持部および保持カバー部の両方により、ギヤ軸の先端部が保持されるので、ギヤ軸の撓みを一層抑制することができる。」(段落0018)と記載されている。
また、段落0091、0092には、「また、駆動フレーム261には、図10、図11および図12に示されるように、保持カバー部の一例としてのハーネスサポート441が取り付けられている。ハーネスサポート441は、樹脂による一体成形品である。」と記載され、段落0104には、「また、ハーネスサポート441が駆動フレーム261に取り付けられた状態で、軸保持孔448,450,451には、それぞれ第3ギヤ軸267、第5ギヤ軸270および第6ギヤ軸272が挿通されて保持される。」と記載され、段落0118?0120には、「また、第3ギヤ軸267、第5ギヤ軸270および第6ギヤ軸272の各先端部は、ハーネスサポート441に保持されている。第1サポートプレート421およびハーネスサポート441の両方により、第3ギヤ軸267の先端部が保持されているので、第3ギヤ軸267の撓みを一層抑制することができる。第2サポートプレート431およびハーネスサポート441の両方により、第5ギヤ軸270の先端部が保持されているので、第5ギヤ軸270の撓みを一層抑制することができる。」と記載されている。

本件訂正発明の目的が、ギヤ軸が撓むことを防止できることであり、本件訂正発明により当該課題が解決できるものである以上、本件訂正発明の保持カバー部は、特許異議申立人が主張する紙やゴムやEリングのような構成は含まれないものであり、本件訂正発明において、「保持カバー部」自体の固定構造や、「保持カバー部」が紙やゴム等ではなく、一定の剛性をもつ材料であることまで特定されなくても、保持カバー部は、ギヤ軸が撓むことを防止できる構成であればよいことは明らかなものである。
また、ギヤ軸が撓むことを防止できる構成からなることは明らかである以上、「請求項6は、「保持カバー部」がギヤ軸の撓みを抑制しない構成を包含している一方、本件特許明細書にはその構成例が開示されていない」という特許異議申立人の主張は、理由がなく、保持カバー部の一例として、樹脂による一体成形品であるハーネスサポートが挙げられている以上、本件特許明細書にはその構成例が開示されているといえる。

さらに、段落0082?0088、0091、0092、0104、0118?0120の記載から、第3ギヤ軸267および第4ギヤ軸269の先端部が第1サポートプレート421に保持され、第5ギヤ軸270、第6ギヤ軸272および第7ギヤ軸273の各先端部が第2サポートプレート431に保持され、第3ギヤ軸267、第5ギヤ軸270および第6ギヤ軸272の各先端部がハーネスサポート441に保持されている。そして、図10より、第3ギヤ軸267、第5ギヤ軸270および第6ギヤ軸272の各先端部では、ハーネスサポートは、サポートプレートを取り付けた後に、取り付けられていることが見てとれる。
そうすると、保持カバー部であるハーネスサポートは、保持部であるサポートプレートをカバーしているものといえ、保持カバー部がカバーする部位を規定しているものである。

したがって、特許異議申立人の主張は理由がない。

4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、4、5、9ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、4、5、9ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

さらに、本件請求項2、3、6ないし8に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2、3、6ないし8に対して、特許異議申立人椎名彊がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部と、
前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部と、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、
前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、
前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、
前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え、
前記保持カバー部は、前記遊星ギヤと前記従動ギヤとが当接しているときの前記遊星ギヤの中心と前記従動ギヤの中心とを結ぶ直線方向において、前記太陽ギヤに対して前記従動ギヤと反対側に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える、シート搬送装置。
【請求項2】 (削除)
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
前記保持部は、前記駆動フレームにねじ止めされている、請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記ギヤには、前記駆動源が発生する駆動力が減速されて入力される、請求項1または4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】 (削除)
【請求項7】 (削除)
【請求項8】 (削除)
【請求項9】
シートを搬送するように構成された搬送部と、
上下方向に延びる面を有する駆動フレームと、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームの前記面から前記面と直交する第1方向に延出するギヤ軸と、
前記ギヤ軸に回転可能に支持され、駆動源が発生する駆動力を前記搬送部に伝達するためのギヤと、
前記ギヤ軸と直交する面を有する板状をなし、前記ギヤ軸の先端部が挿通されて、前記ギヤ軸の先端部を保持する保持部と、
前記保持部を挟んで前記駆動フレームと対向して配置され、前記ギヤ軸の前記先端部を保持する保持カバー部と、
前記駆動フレームに設けられ、前記駆動フレームから第1方向に延出する太陽ギヤ軸と、
前記太陽ギヤ軸に回転可能に支持された太陽ギヤと、
前記太陽ギヤ軸の周りを回転する遊星ギヤと、
前記太陽ギヤよりも下方に位置し、前記遊星ギヤに当接可能な従動ギヤとを備え、
前記保持カバー部は、前記太陽ギヤ軸の上方に、前記太陽ギヤ軸と当接可能な当接部を備える、シート搬送装置。
【請求項10】
前記保持部は、前記駆動フレームにねじ止めされている、請求項9に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記ギヤには、前記駆動源が発生する駆動力が減速されて入力される、請求項9または10に記載のシート搬送装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-10-16 
出願番号 特願2012-153072(P2012-153072)
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (H04N)
P 1 651・ 113- YAA (H04N)
P 1 651・ 857- YAA (H04N)
P 1 651・ 537- YAA (H04N)
P 1 651・ 121- YAA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊田 好一  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 清水 正一
渡辺 努
登録日 2017-02-17 
登録番号 特許第6089468号(P6089468)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 シート搬送装置  

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