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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 G06F |
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管理番号 | 1346781 |
異議申立番号 | 異議2018-700756 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-09-19 |
確定日 | 2018-11-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6296674号発明「光学用粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6296674号の請求項1及び4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第6296674号の請求項1?4に係る特許についての出願は、2010年(平成22年)6月10日(優先権主張 平成21年6月18日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年3月2日にその特許権の設定登録がされ、同年3月20日に特許公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月19日に、特許異議申立人森谷晴美(以下、単に、「申立人」という。)により、請求項1及び4に係る特許について、特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 特許第6296674号の請求項1?4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1?4の特許に係る発明を、項番号に応じて「本件発明1」などという。)。 「【請求項1】 アクリル系粘着剤層を含む光学用粘着シートであって、 前記アクリル系粘着剤層が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1?14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとし、 前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、さらに、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマーが含まれ、 前記の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1?14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して40?70重量部であり、 (メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して0?59重量部であり、 前記のアクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマーの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して1?30重量部であり、 周波数1MHzでの比誘電率が3.16?5.96であり、 周波数1MHzでの誘電正接が0.065?0.116であり、 周波数1.0×10^(6)Hzでの比誘電率が周波数1.0×10^(4)Hzでの比誘電率の73?91%であり、 周波数1.0×10^(6)Hzでの誘電正接と周波数1.0×10^(4)Hzでの誘電正接との差の絶対値が0.034?0.090であり、 厚み精度が、10%以下であり、静電容量方式のタッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられることを特徴とする光学用粘着シート。 【請求項2】 前記アクリル系粘着剤層が、さらに(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとする請求項1記載の光学用粘着シート。 【請求項3】 前記アクリル系粘着剤層が、紫外線照射による紫外線重合方法で調製された粘着剤組成物から形成される請求項1又は2記載の光学用粘着シート。 【請求項4】 請求項1?3の何れか1項に記載の光学用粘着シートを用いた液晶表示装置又は入力装置。」 3.申立理由の概要 申立人は、証拠として、甲第1号証(特開2009-79203号公報。以下、単に「甲1」という。)を提出し、本件発明1、4は甲1に記載の発明と同一であり、本件発明1、4は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない旨主張している。 4.判断 (1)甲1の記載 甲1には、次の記載が認められる。 ア 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、アクリル系粘着剤組成物に関する。詳しくは、ガラスおよびアクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明プラスチックに対する接着性、耐発泡・剥がれ性、透明性、塗工性に優れ、特に金属薄膜に対して腐食を生じさせない粘着剤組成物に関する。また、該粘着剤組成物を塗布した粘着製品、該粘着製品を貼り合わせたディスプレイに関する。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の目的は、塗工性、接着性、透明性、耐発泡・剥れ性に優れており、なおかつ、耐腐食性能に優れた粘着剤組成物を提供することにある。さらに、それを用いた信頼性の高い粘着製品、ディスプレイを提供することにある。 【0008】 また、用途によっては、粘着剤の黄変抑制に対して厳しい要求がある場合があり、例えば、架橋剤として芳香族系イソシアネート化合物を使用する場合などには、黄変が問題となり対策が必要となる場合がある。このような黄変を抑制する方法としては、脂肪族系イソシアネート架橋剤を用いることが有効であるが、かかる場合には架橋速度が非常に遅くなり、生産性に問題が生じる場合があることがわかった。一般的な粘着シートでは、加温により架橋反応を促進することも可能であるが、ディスプレイ用途においては厳しい外観要求があるため、打痕を発生、及び助長させやすい加温による架橋促進の手法は用いにくい場合がある。 【0009】 従って、本発明の他の目的は、さらに、耐黄変性と生産性にも優れた粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着製品、ディスプレイを提供することにある。」 ウ 「【0062】 [粘着製品] 上記本発明の粘着剤組成物を、基材または剥離ライナー上に塗工し、粘着剤層とすることにより、粘着製品が得られる。本発明の粘着製品には、例えば、粘着シート、粘着テープ等が含まれる。本発明の粘着製品は、上記粘着剤組成物を剥離ライナー上に塗工した、基材を有しない(基材レスの)シート状やテープ状の形態であってもよいし、基材の片面または両面に本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層が設けられたシート状やテープ状の形態であってもよい。 【0063】 上記粘着剤層の厚み(粘着剤組成物の塗工、乾燥後の厚み)としては、特に制限されず、例えば、5?1000μmが好ましく、より好ましくは10?100μmである。なお、粘着剤層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。 【0064】 上記粘着剤層(架橋構造化した粘着剤)のゲル分率は、耐発泡・剥がれ性のバランスをとる観点から、前述の通り、40?80%が好ましく、より好ましくは50?70%である。 【0065】 上記粘着剤層が、基材上に設けられる場合、基材としては、特に制限されないが、プラスチックフィルム、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられる。上記プラスチックフィルムなどの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、商品名「アートン(環状オレフィン系ポリマー;JSR社製)」、商品名「ゼオノア(環状オレフィン系ポリマー;日本ゼオン社製)」等のプラスチック材料などが挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記基材の厚さは、特に限定されず、例えば、10?1000μmが好ましい。なお、上記基材は単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、基材表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの適宜な公知乃至慣用の表面処理が施されていてもよい。 【0066】 なお、本発明の粘着製品を製造する際の、粘着剤組成物の塗工には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いることができる。 【0067】 本発明の粘着製品における粘着剤層部分は、ディスプレイなどの光学用途に用いられる場合には、高い透明性を有していることが好ましく、例えば、可視光波長領域における全光線透過率(JIS K 7361に準じる)が90%以上であることが好ましく、さらに好ましくは91%以上である。また、粘着製品における粘着剤層部分のヘイズ値(JIS K 7136に準じる)は、例えば、1.0%未満が好ましく、より好ましくは0.8%未満である。なお、上記全光線透過率及びヘーズは、例えば、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘーズ値0.4%のもの)に貼り合わせ、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所製、商品名「HM-150」)を用いて測定することができる。 【0068】 上記粘着製品(粘着シート、粘着テープ)の被着体としては、特に限定されないが、アクリル樹脂板、ポリカーボネート板、ガラス、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げあれる。 【0069】 本発明の粘着製品は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、タッチパネル、液晶パネルなどのディスプレイに好適に用いられる。中でも、耐腐食性能、透明性、粘着特性の観点から、タッチパネルなどの金属薄膜に直接貼り付け固定する用途に特に好ましく用いられる。」 エ 「【実施例】 【0070】 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。 【0071】 アクリル系ポリマーの調製例1 (アクリル系ポリマーA) モノマー成分としてアクリル酸2-メトキシエチル:70重量部、アクリル酸2-エチルヘキシル:29重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル:1重量部、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部、および重合溶媒として酢酸エチル:100重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら、1時間攪拌した。このようにして、重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し、10時間反応させて、トルエンを加え、固形分濃度25重量%のアクリル系ポリマー溶液(「アクリル系ポリマー溶液A」と称する場合がある。)を得た。該アクリル系ポリマー溶液Aにおけるアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマーA」と称する場合がある)の重量平均分子量は150万であった。 【0072】 (アクリル系ポリマーB?K) 表1に示すように、モノマー成分の種類、配合量、溶媒(酢酸エチル)の配合量を変更して、アクリル系ポリマー溶液(それぞれ「アクリル系ポリマー溶液B?K」と称する場合がある。)を得た。該アクリル系ポリマー溶液B?Kにおけるアクリル系ポリマー(それぞれ「アクリル系ポリマーB?K」と称する場合がある)の重量平均分子量は表1に示したとおりである。 【0073】 実施例1 固形分換算で、アクリル系ポリマー溶液A:100重量部(アクリル系ポリマーA:100重量部)に対して、架橋剤として多官能イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)、商品名「コロネートL」)0.3重量部を加え、粘着剤組成物(溶液)を調製した。 上記で得られた溶液を、表面に離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)(剥離ライナー)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、130℃で3分間加熱乾燥し、さらに50℃で72時間エージングを行い、基材レスの粘着シートを作製した。 【0074】 実施例2?8、比較例1?5 表2に示すように、アクリル系ポリマー溶液の種類および架橋剤の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物および粘着シートを作製した。」 オ 「【0081】 【表1】 【0082】 【表2】 」 カ 「【0085】 アクリル系ポリマーの調製例2 (アクリル系ポリマーL) 表3に示すように、所定量のモノマー成分及び重合溶媒として酢酸エチルを仕込み、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら、1時間攪拌した。このようにして、重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部を投入し、10時間反応させて、MEK(メチルエチルケトン)を加え、固形分濃度25重量%のアクリル系ポリマー溶液(「アクリル系ポリマー溶液L」と称する場合がある。)を得た。 【0086】 (アクリル系ポリマーM?T) 表3に示すように、モノマー成分の種類、配合量、溶媒(酢酸エチル)の配合量を変更して、アクリル系ポリマー溶液(それぞれ「アクリル系ポリマー溶液M?T」と称する場合がある。)を得た。 なお、アクリル系ポリマー溶液L?Tにおけるアクリル系ポリマー(それぞれ「アクリル系ポリマーL?T」と称する場合がある)の重量平均分子量は表3に示したとおりである。 【0087】 実施例9 固形分換算で、アクリル系ポリマー溶液L:100重量部(アクリル系ポリマーL:100重量部)に対して、架橋剤として脂肪族系の多官能イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)、商品名「コロネートHL」)0.7重量部、架橋助剤としてエチレンジアミンにプロピレンオキシドを付加したポリオール((株)ADEKA製、商品名「EDP-300」)0.3重量部を加え、粘着剤組成物(溶液)を調製した。 上記で得られた溶液を、表面に離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)(剥離ライナー)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、130℃で3分間加熱乾燥し、さらに23℃で7日間エージングを行い、基材レスの粘着シートを作製した。 【0088】 実施例10?23、比較例6?10 表4、5に示すように、アクリル系ポリマー溶液の種類および架橋剤、架橋助剤の種類、配合量を変更した以外は実施例9と同様にして、粘着剤組成物および粘着シートを作製した。」 キ 「【0092】 【表3】 【0093】 【表4】 【0094】 【表5】 」 (2)甲1に記載された発明の認定(甲1発明) 甲1の【0070】?【0074】、【0081】?【0082】(上記(1)エ、オ)に記載された実施例3及び比較例1、並びに、【0087】?【0088】、【0092】?【0094】(上記(1)カ、キ)に記載された実施例12及び比較例8について、以下の発明が記載されていると認められる。 ア 実施例3に記載の発明(甲1実施例3発明) 甲1の【0073】?【0074】(上記(1)エ)と【表2】(上記(1)オ)から、実施例3の粘着シートは、固形分換算で、アクリル系ポリマー溶液C:100重量部(アクリル系ポリマーC:100重量部)に対して、架橋剤として多官能イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)、商品名「コロネートL」)0.3重量部を加え、粘着剤組成物(溶液)を調製し、得られた溶液を、表面に離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)(剥離ライナー)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、130℃で3分間加熱乾燥し、さらに50℃で72時間エージングを行って作製したものであって、アクリル系ポリマーCの組成は、表1((1)オ)より、アクリル酸2-エチルヘキシル49重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1重量部、アクリル酸2-メトキシエチル50重量部である。 そうすると、上記粘着シートの粘着剤は、アクリル系ポリマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル49重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1重量部及びアクリル酸2-メトキシエチル50重量部から作製されるものといえる。 そして、【0062】(上記(1)ウ)には、「上記本発明の粘着剤組成物を、基材または剥離ライナー上に塗工し、粘着剤層とすることにより、粘着製品が得られる。本発明の粘着製品には、例えば、粘着シート、粘着テープ等が含まれる。」と記載され、【0069】(上記(1)ウ)には、「本発明の粘着製品は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、タッチパネル、液晶パネルなどのディスプレイに好適に用いられる。中でも、耐腐食性能、透明性、粘着特性の観点から、タッチパネルなどの金属薄膜に直接貼り付け固定する用途に特に好ましく用いられる。」と記載されていることから、【0069】における「粘着製品」には、上記実施例3に記載された「粘着シート」が含まれるといえ、しかも、【0069】から、該「粘着シート」が透明性の観点から、タッチパネルなどに用いられるというのであるから、上記実施例3に記載された粘着シートは、タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シートであるということができる。 そうすると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1実施例3発明」という。)が記載されていると認められる。 「アクリル系ポリマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル49重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1重量部、アクリル酸2-メトキシエチル50重量部から作製される粘着剤層を備えた、タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シート。」 イ 比較例1に記載の発明(甲1比較例1発明) 甲1の【0073】?【0074】(上記(1)エ)、【表1】及び【表2】(上記(1)オ)から、比較例1の粘着シートは、固形分換算で、アクリル系ポリマー溶液G:100重量部(アクリル系ポリマーG:100重量部)に対して、架橋剤として多官能イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)、商品名「コロネートL」)0.3重量部を加え、粘着剤組成物(溶液)を調製し、得られた溶液を、表面に離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)(剥離ライナー)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、130℃で3分間加熱乾燥し、さらに50℃で72時間エージングを行って作製したものであって、アクリル系ポリマーGの組成は、【表1】より、アクリル酸2-エチルヘキシル59重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1重量部、アクリル酸2-メトキシエチル40重量部である。 そうすると、上記粘着シートの粘着剤は、アクリル系ポリマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル59重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1重量部及びアクリル酸2-メトキシエチル40重量部から作製されるものといえる。 そして、比較例1は、実施例ではないものの、上記実施例3に記載された粘着シートと同様に、タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シートとして用いられたものであるということができる。 そうすると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1比較例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「アクリル系ポリマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル59重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1重量部及びアクリル酸2-メトキシエチル40重量部から作製される粘着剤層を備えた、タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シート。」 ウ 実施例12に記載の発明(甲1実施例12発明) 【0087】?【0088】(上記(1)カ)、【表3】及び【表4】(上記(1)キ)から、実施例12の粘着シートは、固形分換算で、アクリル系ポリマー溶液M:100重量部(アクリル系ポリマーM:100重量部)に対して、架橋剤として脂肪族系の多官能イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)、商品名「コロネートHL」)0.4重量部、架橋助剤としてエチレンジアミンにプロピレンオキシドを付加したポリオール((株)ADEKA製、商品名「EDP-300」)0.3重量部を加え、粘着剤組成物(溶液)を調製し、得られた溶液を、表面に離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)(剥離ライナー)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、130℃で3分間加熱乾燥し、さらに23℃で7日間工一ジングを行って作製したものであって、アクリル系ポリマーMの組成は、【表3】より、アクリル酸2-エチルヘキシル48重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル3重量部、アクリル酸2-メトキシエチル49重量部である。 そうすると、上記粘着シートの粘着剤は、アクリル系ポリマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル48重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル3重量部及びアクリル酸2-メトキシエチル49重量部から作製されるものといえる。 そして、上述したように、上記実施例12の粘着シートは、タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シートといえる。 そうすると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1実施例12発明」という。)が記載されていると認められる。 「アクリル系ポリマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル48重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル3重量部及びアクリル酸2-メトキシエチル49重量部から作製される粘着剤層を備えた、タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シート。」 エ 比較例8に記載の発明(甲1比較例8発明) 【0087】?【0088】(上記(1)カ)、【表3】及び【表4】(上記(1)キ)から、比較例8の粘着シートは、固形分換算で、アクリル系ポリマー溶液R:100重量部(アクリル系ポリマーR:100重量部)に対して、架橋剤として脂肪族系の多官能イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)、商品名「コロネートHL」)2重量部、架橋助剤としてエチレンジアミンにプロピレンオキシドを付加したポリオール((株)ADEKA製、商品名「EDP-300」)0.3重量部を加え、粘着剤組成物(溶液)を調製し、得られた溶液を、表面に離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)(剥離ライナー)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、130℃で3分間加熱乾燥し、さらに23℃で7日間工一ジンクを行って作製したものであって、そして、アクリル系ポリマーRの組成は、【表3】より、アクリル酸2-エチルヘキシル49重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1重量部、アクリル酸2-メトキシエチル50重量部である。 そうすると、上記粘着シートの粘着剤は、アクリル系ポリマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル49重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1重量部、アクリル酸2-メトキシエチル50重量部から作製されるものといえる。 そして、比較例8は、実施例ではないものの、上記実施例12に記載された粘着シートと同様に、タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シートとして用いられたものであるということができる。 そうすると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1比較例8発明」という。)が記載されていると認められる。 「アクリル系ポリマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル49重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル1重量部、アクリル酸2-メトキシエチル50重量部から作製される粘着剤層を備えた、タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シート。」 (3)対比・判断 ア 本件発明1について a 対比 まず、本件発明1と甲1実施例3発明とを対比する。 甲1実施例3発明における「アクリル酸2-エチルヘキシル」、「アクリル酸4-ヒドロキシブチル」及び、「アクリル酸2-メトキシエチル」は、それぞれ本件発明1の「直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1?14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル」、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、N-ビニルー2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマー」及び「(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル」に相当することは明らかであり、それらの配合量について、甲1実施例3発明のものは、本件発明1に含まれる。 また、本件発明1の「静電容量方式のタッチパネル」と、甲1実施例3発明の「タッチパネル」とは、「タッチパネル」である点で共通する。 そして、甲1実施例3発明における「タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シート」の「粘着剤層」は、「アクリル系ポリマー」から作製されるから「アクリル系粘着剤層」ということができ、本件発明1の「アクリル系粘着剤層を含む光学用粘着シート」に相当する。 また、本件発明1の「粘着剤層」と甲1実施例3発明の「粘着剤層」とは、「アクリル系ポリマー」について、「直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1?14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマー」と、「アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、N-ビニルー2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマーが含まれ」る点で共通する。 そうすると、本件発明1と甲1実施例3発明とは、 「アクリル系粘着剤層を含む光学用粘着シートであって、 前記アクリル系粘着剤層が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1?14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーと、 前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、さらに、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、N-ビニルー2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマーが含まれ、 前記の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1?14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して40?70重量部であり、 (メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して0?59重量部であり、 前記のアクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、N-ビニルー2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドから選択される少なくとも1つのモノマーの割合が、前記アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分100重量部に対して1?30重量部であり、タッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着シート。」の点で一致し、以下の相違点1?4で相違が認められる。 (相違点1) 「ベースポリマー」について、本件発明1では、「直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1?14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマー」であるのに対し、甲1実施例3発明では、ベースポリマーについて規定されておらず、「アクリル酸2-エチルヘキシル」が、ベースポリマーかどうかは不明な点。 (相違点2) 光学用粘着シートの特性について、本件発明1では、周波数1MHzでの比誘電率が3.16?5.96であり、周波数1MHzでの誘電正接が0.065?0.116であり、周波数1.0×10^(6)Hzでの比誘電率が周波数1.0×10^(4)Hzでの比誘電率の73?91%であり、周波数1.0×10^(6)Hzでの誘電正接と周波数1.0×10^(4)Hzでの誘電正接との差の絶対値が0.034?0.090であるのに対し、甲1実施例3発明では、そのような特性を有するかどうか不明な点。 (相違点3) 光学用粘着シートの厚み精度について、本件発明1では、10%以下であるのに対し、甲1実施例3発明では、厚み精度は不明な点。 (相違点4) タッチパネルの方式について、本件発明1では、静電容量方式であるのに対し、甲1実施例3発明では、どのような方式なのかは不明な点。 b 判断 ここで、事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。 タッチパネルの方式について、本件に係る出願の優先日前において、タッチパネルの方式には、静電容量方式以外にも、アナログ抵抗膜方式やデジタル抵抗膜方式、超音波方式、電磁誘導方式などがあることは技術常識であり(必要であれば、特開2009-122655号公報の【0006】の「タッチパネルには、アナログ抵抗膜方式やデジタル抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式などがある。」という記載を参照されたい。)、また、粘着シートを抵抗膜方式のタッチパネルに用いることは周知(必要であれば、特開2010-77287号公報の【0088】の「本発明の粘着シートを用いて部材を貼り合わせて形成された抵抗膜方式のタッチパネルの一例(概略断面図)を図1に示す。」という記載を参照されたい。)であるから、甲1実施例3発明のタッチパネルは、「静電容量方式」に限らず、抵抗膜方式等のものも包含されるというべきであり、上記相違点3は、実質的な相違点といわざるを得ない。 そして、本件発明1では、本件発明1に係る光学用粘着シートを、静電容量方式のタッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いることで、「タッチパネルとした場合の誤動作の発生を防止することができる」(本件明細書【0018】)というものであり、静電容量方式と誤動作の発生メカニズムが異なる抵抗膜方式等のタッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いたものからは予測しえない、格別顕著な作用効果を奏するものである。 また、甲1比較例1発明、甲1実施例12発明及び甲1比較例8発明についても、甲1実施例3発明と同様な一致点、相違点を有することは明らかである。 そうすると、上記相違点1?3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1実施例3発明、甲1比較例1発明、甲1実施例12発明及び甲1比較例8発明と同一とすることはできない。 イ 本件発明4について 本件発明4は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲1実施例3発明、甲1比較例1発明、甲1実施例12発明及び甲1比較例8発明と、同一とすることはできない。 (申立人の主張) 申立人は、上記相違点4に関連して、「タッチパネルとして、静電容量方式のものは通常採用されているものである。」(特許異議申立書16頁13?14行)と主張している。 しかしながら、上述したように、タッチパネルとして静電容量方式以外にも、抵抗膜方式によるもの等は周知であって、静電容量方式のものが、「通常」採用されるものであるということはできない。 5.むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-11-16 |
出願番号 | 特願2011-519745(P2011-519745) |
審決分類 |
P
1
652・
113-
Y
(G06F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 澤村 茂実 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
川端 修 天野 宏樹 |
登録日 | 2018-03-02 |
登録番号 | 特許第6296674号(P6296674) |
権利者 | 日東電工株式会社 |
発明の名称 | 光学用粘着シート |
代理人 | 後藤 幸久 |