• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
管理番号 1346795
異議申立番号 異議2018-700433  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-29 
確定日 2018-12-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第6277313号発明「照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6277313号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6277313号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成22年3月8日(優先権主張 平成21年7月13日 平成21年7月13日 平成21年7月30日 平成21年7月30日 平成21年7月30日 平成21年7月30日 平成21年7月30日 平成21年7月30日 平成21年7月30日 平成21年9月17日 平成21年9月29日 平成21年12月4日 平成21年12月10日)に出願した特願2010-51082号の一部を、平成26年4月10日に新たな特許出願とした特願2014-81073号の一部を、平成27年9月14日に新たな特許出願とした特願2015-180567号の一部を、平成29年3月7日に新たな特許出願とした特願2017-42900号の一部を、平成29年5月12日に新たな特許出願とした特願2017-95131号の一部を、平成29年8月3日に新たな特許出願としたものであって、平成30年1月19日にその特許権の設定登録がされ、平成30年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年5月29日に特許異議申立人井出正威(以下、「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6277313号の請求項1?5の特許に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1?5」という。)は、それぞれ、その特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数のLEDモジュールと、
前記複数のLEDモジュールが長手方向に沿って配列された長尺状の基板と、
前記基板を覆うカバーと、
前記複数のLEDモジュールに電力を供給する電力変換部と、
前記基板、前記カバーおよび前記電力変換部を支持する長尺状のブラケットと、
前記電力変換部に電気的に接続された第1のコネクタおよび第2のコネクタと、
前記電力変換部および前記第1のコネクタを接続する第1の電線と、
前記電力変換部および前記第2のコネクタを接続する第2の電線と、を備え、
前記第1のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の一端に設けられた第1の開口に前記第1の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の一端側から露出可能に設けられ、
前記第2のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の他端に設けられた第2の開口に前記第2の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の他端側から露出可能に設けられており、
前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとは、互いに嵌合可能な形状であり、
前記カバーは、前記LEDモジュールからの光を拡散させつつ透過し、且つ前記ブラケットの長手方向両端部にまで配置されている、照明装置。
【請求項2】
前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタと前記電力変換部とは、電線群によって繋がれており、
前記電線群は、前記ブラケットの内部に収容されている、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記ブラケットは、前記基板が載置される底面部および前記底面部の幅方向両端に繋がる2つの側面部を有しており、
前記カバーは、前記ブラケットの長手方向に沿って延びる断面円弧状である、請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記カバーの短手方向における両端縁には、前記ブラケットと係止される係止片が設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記第1のコネクタは、凹部を有する直方体状であり、
前記第2のコネクタは、前記凹部に嵌合する凸部を有する、請求項1ないし4のいずれかに記載の照明装置。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、以下の甲第1?5号証を提出して、甲第1号証を主たる証拠として、甲第2?5号証を従たる証拠として、本件の請求項1?5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件の請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
[甲号証]
1.特開2009-146608号公報
2.登録実用新案第3150817号公報
3.特開2004-6274号公報
4.「T型蛍光器具ユニット」及び「意匠登録申請済06-10-5-S」
という記載が有る、株式会社彩ユニオンのパンフレットの写し
5.「T型蛍光器具ユニット」及び「意匠登録申請済2007-10-10-S」
という記載が有る、株式会社彩ユニオンのパンフレットの写し
以下、それぞれ、「引用文献1?5」という。

第4 引用文献について
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下、同様である。)
(1a)
「【0022】
以下、本発明に係る照明装置の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は照明装置の斜視図、図2は図1に示した照明装置の分解斜視図、図3は図1に示した照明装置の入力用連結コネクタと出力用連結コネクタの斜視図である。
照明装置100は、レール部材55と、照明用発光素子57(図2参照)と、装飾用発光素子59と、入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63とを具備する。入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、レール部材55の長手方向両端から導出され、図3に示すように、相互に結合可能となる。入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、相互に結合されることで、照明用発光素子57及び装飾用発光素子59へ給電可能に導通し、後述する連結された複数の棚板11(図7参照)、すなわち、連結棚65(図8参照)を同一の電源回路に構成する。
【0023】
図4は図1に示した照明装置の正面視を(a)、平面視を(b)、側面視を(c)に表した説明図である。
照明用発光素子57は、レール部材55に沿って延在する基板67に所定間隔で複数個(図例では5つ)が配設される。装飾用発光素子59は、基板69に一つのものが実装されレール部材55の両端近傍に分割して配置されている。基板67、基板69は、レール部材55にビス71等によって密着固定される。基板67には不図示の印刷配線が形成され、印刷配線は入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63を、各照明用発光素子57に電気的に接続している。また、基板67と基板69とは不図示の接続線で接続され電源回路が導通されている。レール部材55に基板67を介して取り付けられた照明用発光素子57は、透明カバー73によって覆われる。
【0024】
図5は発光素子、カバー部材とともに表したレール部材の拡大断面図である。
レール部材55は、長手方向に直交する断面形状が、図5に示す上部水平板75と下部水平板77とを垂直板78で連結した略Z字に形成される。照明用発光素子57は、基板67を介して上部水平板75に固定され、下方向に光を出射、照明する。また、装飾用発光素子59は、基板69を介して下部水平板77に固定され、上方向へ光を出射する。
そして、このレール部材55は、後述する棚板11の下面前部13に取り付けられ、棚板11の前面幅方向に延在する。これにより、照明用発光素子57は、下方となる下段の棚板11を照明し、また、上方へ出射される装飾用発光素子59からの光は、後述する透光装飾部材43の背面に照射される。」
(1b)
「【0028】
照明用発光素子57及び装飾用発光素子59は、例えば、GaN系青色LEDが好ましい。・・・」
(1c)
「【0029】
なお、図6に示すように、照明装置100に、電源ユニット101を接続した構成として照明ユニットとし、それぞれ単体で商用電源に接続可能な構成としてもよく、図に示すように、直列接続させて照明用光源及び装飾用光源を得るような構成としてもよい。」
(1d)
「【0041】
【図1】本発明に係る照明装置の斜視図である。
【図2】図1に示した照明装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示した入力用連結コネクタと出力用連結コネクタの斜視図である。
【図4】図1に示した照明装置の正面視を(a)、平面視を(b)、側面視を(c)に表した説明図である。
【図5】発光素子、カバー部材とともに表したレール部材の断面図である。
【図6】照明装置を連結した状態の斜視図である。
【図7】本発明の照明装置を用いた陳列棚を構成する棚板の分解斜視図である。
【図8】棚板を多段状に組み付けた陳列棚の斜視図である。
【図9】照明装置が設けられた棚板の要部拡大側面図である。
【符号の説明】
【0042】
55…レール部材
57…照明用発光素子
59…装飾用発光素子
61…入力用連結コネクタ
63…出力用連結コネクタ
67,69…回路基板(基板)
75…上部水平板
77…下部水平板
78…垂直板
79…冷却フィン
100…照明装置」
(1e)
図1?6は、以下のとおりである。


(2)引用文献1に記載された発明

図1?5(特に図2)から、基板67および入力用連結コネクタ61を接続する電線群と、基板67および出力用連結コネクタ63を接続する電線群と、基板67を覆うカバー73とが看取できる。

摘記(1a)の段落【0022】には、「照明装置100は、レール部材55と、照明用発光素子57(図2参照)と、装飾用発光素子59と、入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63とを具備する」こと及び「照明用発光素子57は、レール部材55に沿って延在する基板67に所定間隔で複数個(図例では5つ)が配設される」ことが、摘記(1a)の段落【0023】には、「レール部材55に基板67を介して取り付けられた照明用発光素子57は、透明カバー73によって覆われる」ことが、それぞれ記載されている。
図1、2及び4は、照明装置の図面であること(摘記(1d)の段落【0041】)、摘記(1a)の段落【0022】?【0023】(特に上記の記載)、摘記(1d)の段落【0041】?【0042】、及び、上記アを併せて参照すると、照明装置100は、複数個の照明用発光素子57と、基板67と、基板67を覆う透明カバー73と、レール部材55と、入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63と、基板67および入力用連結コネクタ61を接続する電線群と、基板67および出力用連結コネクタ63を接続する電線群と、を具備している、照明装置100であることが明らかである。

図2及び5から、レール部材55は、カバー73を支持し(図5)、長尺状であることが明らかである(図2)。

摘記(1a)の段落【0022】の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、レール部材55の長手方向両端から導出され」ていることに関して、図1、2及び4を併せて参照すると、入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、レール部材55の長手方向両端の各開口(各凹形状の開口)にそれぞれ電線群が挿通された状態で(特に図1及び2)、レール部材55の長手方向両端からそれぞれ導出されていることが明らかである。

摘記(1a)の段落【0022】の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、相互に結合されることで、照明用発光素子57及び装飾用発光素子59へ給電可能に導通し」ていることに関して、図3を併せて参照すると、入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、出力用連結コネクタ63の凹部に入力用連結コネクタ61の凸部が差込まれ(図3)、相互に結合されることで、照明用発光素子57へ給電可能に導通していることが明らかである。

摘記(1a)の段落【0023】の「レール部材55に基板67を介して取り付けられた照明用発光素子57は、透明カバー73によって覆われる」という記載の「透明カバー73」に関して、図2及び4を併せて参照すると、透明カバー73は、レール部材55に基板67を介して取り付けられた照明用発光素子57を覆い、レール部材55の長手方向両端部にまで配置されていること(図2及び4)が明らかである。

摘記(1a)の段落【0024】の「レール部材55は、長手方向に直交する断面形状が、図5に示す上部水平板75と下部水平板77とを垂直板78で連結した略Z字に形成される」という記載、摘記(1a)の段落【0023】の「レール部材55に基板67を介して取り付けられた照明用発光素子57は、透明カバー73によって覆われる」という記載、及び、図1?5を参照すると、レール部材55は、下部水平板77と、上部水平板75の両端部のそれぞれに垂直板78が連結されて形成された長手方向に延びる凹形状の部分とを備え、その凹形状の部分を透明カバー73で塞いで形成された空間内に、照明用発光素子57が取り付けられていることが明らかである。

上記摘記(1a)?(1d)、図1?5(摘記(1e)参照)並びに上記ア?キから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「複数個の照明用発光素子57と、
照明用発光素子57が、所定間隔で複数個配設され、長尺状のレール部材55に沿って延在する基板67と、
基板67を覆う透明カバー73と、
透明カバー73を支持し、 基板67がビス71等によって密着固定される、長尺状のレール部材55と、
入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63と、
基板67および入力用連結コネクタ61を接続する電線群と、
基板67および出力用連結コネクタ63を接続する電線群と、
を具備し、
入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、レール部材55の長手方向両端の各開口にそれぞれ電線群が挿通された状態で、レール部材55の長手方向両端からそれぞれ導出され、
入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、出力用連結コネクタ63の凹部に入力用連結コネクタ61の凸部が差込まれ、相互に結合されることで、照明用発光素子57へ給電可能に導通し、
透明カバー73は、レール部材55に基板67を介して取り付けられた照明用発光素子57を覆い、レール部材55の長手方向両端部にまで配置され、
レール部材55は、下部水平板77と、上部水平板75の両端部のそれぞれに垂直板78が連結されて形成された長手方向に延びる凹形状の部分とを備え、その凹形状の部分を透明カバー73で塞いで形成された空間内に、照明用発光素子57が取り付けられている、照明装置100。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【請求項2】
前記LED点灯のための交流/直流変換電源回路を内蔵する請求項1記載のLED照明装置。」
(2b)
「【0010】
LED照明装置1は、照明装置本体3とそれを壁面等に取り付ける一対の取り付け具6とからなる。照明装置本体3は断面形態が正円であるアルミニウム製の筒状ケース5内にLEDユニット7及び電源回路ユニット8が納められるとともに、筒状ケース5の両端にプラスチックス製のサイドキャップ9が装着されて構成されている。」
(2c)
「【0011】
上記筒状ケース5の周壁部10には長手方向に沿って光照射開口12が設けられ、その光照射開口12にはプラスチックス製の透明カバー15が装着されている。上記LEDユニット7はアルミニウム製のベースプレート14と、ベースプレート14上に沿って配置固定される細幅の回路基板16と、回路基板16上に所定の間隔をおいて並設搭載される複数個のLED18とからなる。上記電源回路ユニット8は、管体11内にトランジスター、コンデンサ、抵抗、コイル等の各種電子部品17が納められて構成されている。上記サイドキャップ9の一方のものはLED18への電源供給のためのコネクタとしても機能する。」
(2d)
「【0013】
次に、照明装置本体3の組み立て構成を説明する。まず、サイドキャップ9のコネクタと電源回路ユニット8間、電源回路ユニット8とLEDユニット7間がリード線20、21それぞれにより接続され、その接続された状態において両ユニット7、8が筒状ケース5内に差し入れられ、サイドキャップ9それぞれが筒状ケース5の両端に嵌合されて取り付けられる。その際LEDユニット7はそのLED18のそれぞれが光照射開口12に沿って相対するように配置され、そのLEDユニット7の下側に電源回路ユニット8が配置され、LEDユニット7はその両端25がサイドキャップ9の固定溝26に側方から嵌入されることで所定位置に配置され、電源回路ユニット8はリード線20、21それぞれで支持される状態で設けられている。」
(2e)
「【0015】
電源コード33をコンセントに接続することで電源回路ユニット8を介して直流電源が与えられてLED18それぞれは点灯し、その照射光により所望位置が明るく照明される。照射方向の変更、修正は照明装置本体3をその軸方向において回転させることで容易に行える。」
(2f)
「【0019】
図7は上記連結時の回路構成を示し、電源コード133に接続される照明装置本体103から順次後段に接続される照明装置本体103に交流電源が与えられるようになっている。図7における要素において図4と同一の番号を付したものは、図4の要素と同様の機能を発揮する。」
(2g)
図1?7は、以下のとおりである。


3 引用文献3について
引用文献3には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0018】
電子アセンブリ50は少なくとも1つ、望ましくは2つ伸びており、互いに平行にしかも上下に配置されており、比較的狭い回路基板52、54を含んでいる。実施例に示す様に、上側の基板54にはLED光源60のLEDが乗せられている。下側の基板52にはLED光源60用の駆動及び熱保護回路が乗せられている。・・・」
(3b)
「【0030】
好ましくは、レンズ100がLEDの光源60を覆うようにハウジング40の上に置かれている。色とLEDを覆うレンズ100の構造を変えることにより、色温度補正と拡散を得ることができる。望ましくは、レンズ100は澄んだ又は色合いの有る材料から作られた長いみぞ形のシートになるプラスチック材料であり、円筒形の膨張部102内で両方の底のかどに沿って末端をなすプラスチック材料から突き出ている。円筒形の膨張部102は、LEDが広がる開口部に隣り合ったハウジングの管40の開いた端の上に作られているクリップ形の構造と連絡するタブの役目をしている。レンズ100は、該端から長手方向でハウジング40の中にスライド又は該クリップ形の構造体の中に締まる。レンズ100に対し拡散特性を与える技術には、横への拡散を改善するため、該レンズ内の全表面を通り、又は横の内部の表面のみに沿い、表面の構造物を加えることが含まれる。
【0031】
該ユニットの両端では、エンドキャップ110が該ハウジング40の横方向の開口部とレンズ110を密閉するため該アセンブリに望ましくは接着又はしっかり締め付けられる。ハウジング40の管のそれぞれの端には、一方の端が雄形で向い合った側の端が雌形であるコネクタ116と118にワイヤ114が出て行くつぎ輪112が望ましくは乗せられている。この配置によりユニットを容易に取り付け、端と端を電気的に接続することができる。」
(3c)
図1及び2は、以下のとおりである。

4 引用文献4について
引用文献4には、図とともに、「最大10台の連続点灯が可能。」及び「接続コネクターを引っ張り出し、接続後コードを隠す構造になっています。」と記載されている。

5 引用文献5について
引用文献5には、図とともに、「最大10台の連続点灯が可能。」及び「接続コネクターを引っ張り出し、接続後コードを隠す構造になっています。」と記載されている。

第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

本件発明1の「複数のLEDモジュール」に関して、単体のLEDモジュール20は、リード21、LEDチップ22、封止樹脂23等を備えている構造となっている(本件の特許明細書の段落【0040】等を参照。)。
単体の照明用発光素子が上記の構造となっていることは、技術常識といえることから、引用発明の「照明用発光素子57」も、実質的には、上記の構造と同様の構造となっていることが明らかである。
したがって、引用発明の「照明用発光素子57」と、本件発明1の「LEDモジュール」とは、構造が同様のものであるといえるから、引用発明の「複数個の照明用発光素子57」は、本件発明1の「複数のLEDモジュール」に相当する。

引用発明の「長尺状のレール部材55に沿って延在する基板67」から、引用発明の「基板67」は、「レール部材55」と同様に、長尺状であり、長手方向を備えているといえる。
そして、引用発明では、その長手方向を備えている「基板67」に、「照明用発光素子57が、所定間隔で複数個配設され」ていることから、「照明用発光素子57」は、「基板67」の長手方向に沿って、「所定間隔で複数個配設され」ているものであると理解できる(図2も参照。)。
したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「照明用発光素子57が、所定間隔で複数個配設され、長尺状のレール部材55に沿って延在する基板67」は、本件発明1の「前記複数のLEDモジュールが長手方向に沿って配列された長尺状の基板」に相当する。

上記イを踏まえると、引用発明の「基板67を覆う透明カバー73」は、本件発明1の「前記基板を覆うカバー」に相当する。

引用発明の「長尺状のレール部材55」には、「基板67がビス71等によって密着固定される」ことから、引用発明の「長尺状のレール部材55」は、「基板67」を支持しているといえる。
引用発明の「長尺状のレール部材55」は、本件発明1の「長尺状のブラケット」に相当する。
これらのことと、上記イ及びウとを踏まえると、引用発明の「透明カバー73を支持し、基板67がビス71等によって密着固定される、長尺状のレール部材55」と、本件発明1の「前記基板、前記カバーおよび前記電力変換部を支持する長尺状のブラケット」とは、「前記基板および前記カバーを支持する長尺状のブラケット」の限りで共通している。

引用発明の「出力用連結コネクタ63」及び「入力用連結コネクタ61」は、それぞれ、本件発明1の「第1のコネクタ」及び「第2のコネクタ」に相当することから、引用発明の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63」と、本件発明1の「前記電力変換部に電気的に接続された第1のコネクタおよび第2のコネクタ」とは、「第1のコネクタおよび第2のコネクタ」の限りで共通している。

引用発明の「電線群」は、本件発明1の「電線」に相当する。
したがって、上記オを踏まえると、引用発明の「基板67および入力用連結コネクタ61を接続する電線群」と、本件発明1の「前記電力変換部および前記第2のコネクタを接続する第2の電線」とは、「前記第2のコネクタを接続する第2の電線」の限りで共通し、引用発明の「基板67および出力用連結コネクタ63を接続する電線群」と、本件発明1の「前記電力変換部および前記第1のコネクタを接続する第1の電線」とは、「前記第1のコネクタを接続する第1の電線」の限りで共通している。

引用発明の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63」は、「レール部材55の長手方向両端からそれぞれ導出され」ていることから(図1、2及び3も参照)、引用発明の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63」が「レール部材55」の外部に存在していることは、明らかである。
このことと、引用文献1の図1、2及び3を踏まえると、引用発明の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63」が、「端から」「導出され」ること、すなわち、端から導き出されることは、実質的に、引用発明の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63」が、「端から」露出可能に設けられていることを意味しているものと理解できる。
したがって、上記エ?カをも踏まえると、引用発明の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、レール部材55の長手方向両端の各開口にそれぞれ電線群が挿通された状態で、レール部材55の長手方向両端からそれぞれ導出され」る構成は、本件発明1の「前記第1のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の一端に設けられた第1の開口に前記第1の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の一端側から露出可能に設けられ、前記第2のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の他端に設けられた第2の開口に前記第2の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の他端側から露出可能に設けられて」いる構成に相当する。

引用発明の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63」は、「出力用連結コネクタ63の凹部に入力用連結コネクタ61の凸部が差込まれ、相互に結合される」ことから、互いに嵌合可能な形状であるといえる。
したがって、引用発明の「入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63は、出力用連結コネクタ63の凹部に入力用連結コネクタ61の凸部が差込まれ、相互に結合されることで、照明用発光素子57へ給電可能に導通し」ている構成は、本件発明1の「前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとは、互いに嵌合可能な形状であ」る構成に相当する。

引用発明の「透明カバー73」は、「レール部材55に基板67を介して取り付けられた照明用発光素子57を覆」うことから、発光素子57からの光を透過しているといえる。
したがって、上記ア、ウ及びエをも踏まえると、引用発明の「透明カバー73は、レール部材55に基板67を介して取り付けられた照明用発光素子57を覆い、レール部材55の長手方向両端部にまで配置され」ている構成と、本件発明1の「前記カバーは、前記LEDモジュールからの光を拡散させつつ透過し、且つ前記ブラケットの長手方向両端部にまで配置されている」構成とは、「前記カバーは、前記LEDモジュールからの光を透過し、且つ前記ブラケットの長手方向両端部にまで配置されている」構成の限りで共通している。

引用発明の「照明装置100」と、本件発明1の「照明装置」とは、「照明装置」の限りで共通している。

以上から、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「複数のLEDモジュールと、
前記複数のLEDモジュールが長手方向に沿って配列された長尺状の基板と、
前記基板を覆うカバーと、
前記基板および前記カバーを支持する長尺状のブラケットと、
第1のコネクタおよび第2のコネクタと、
前記第1のコネクタを接続する第1の電線と、
前記第2のコネクタを接続する第2の電線と、を備え、
前記第1のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の一端に設けられた第1の開口に前記第1の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の一端側から露出可能に設けられ、
前記第2のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の他端に設けられた第2の開口に前記第2の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の他端側から露出可能に設けられており、
前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとは、互いに嵌合可能な形状であり、
前記カバーは、前記LEDモジュールからの光を透過し、且つ前記ブラケットの長手方向両端部にまで配置されている、照明装置。」
<相違点1>
本件発明1は、
「前記複数のLEDモジュールに電力を供給する電力変換部」と、前記基板、前記カバー「および前記電力変換部」を支持する長尺状のブラケットと、「前記電力変換部に電気的に接続された」第1のコネクタおよび第2のコネクタと、「前記電力変換部および」前記第1のコネクタを接続する第1の電線と、「前記電力変換部および」前記第2のコネクタを接続する第2の電線と、を備えるのに対して、
引用発明は、
「透明カバー73を支持し、基板67がビス71等によって密着固定される、長尺状のレール部材55と、入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63と、基板67および入力用連結コネクタ61を接続する電線群と、基板67および出力用連結コネクタ63を接続する電線群と、を具備し」、「レール部材55は、下部水平板77と、上部水平板75の両端部のそれぞれに垂直板78が連結されて形成された長手方向に延びる凹形状の部分とを備え、その凹形状の部分を透明カバー73で塞いで形成された空間内に、照明用発光素子57が取り付けられている」点。
<相違点2>
本件発明1では、カバーは、前記LEDモジュールからの光を「拡散させつつ」透過するのに対して、引用発明では、「透明カバー73は、レール部材55に基板67を介して取り付けられた照明用発光素子57を覆」う点。

(2)判断
相違点について、以下、検討する。
ア 相違点1について
(ア)
a
引用文献1には、「基板67には不図示の印刷配線が形成され、印刷配線は入力用連結コネクタ61及び出力用連結コネクタ63を、各照明用発光素子57に電気的に接続している。」(摘記(1a)の段落【0023】)と記載され、「なお、図6に示すように、照明装置100に、電源ユニット101を接続した構成として照明ユニットとし、それぞれ単体で商用電源に接続可能な構成としてもよく、図に示すように、直列接続させて照明用光源及び装飾用光源を得るような構成としてもよい。」(摘記(1c)の段落【0029】)と記載されていること、及び、図6を参照すると、引用文献1の図6の「電源ユニット101」は、商用電源等からの電力を「照明用発光素子57」に適した電力に変換して、「複数個の照明用発光素子57」に電力を供給する電力変換部であり、入力用連結コネクタと出力用連結コネクタとにそれぞれ電線群で接続されていることが、明らかである。
このことと、(1)ア及びエを踏まえると、引用文献1(図6)には、次の技術事項(以下、引用文献1に記載された技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「複数のLEDモジュールに電力を供給する電力変換部である電源ユニット101と、
電源ユニット101に電気的に接続された入力用連結コネクタおよび出力用連結コネクタと、
電源ユニット101および入力用連結コネクタを接続する電線群と、
電源ユニット101および出力用連結コネクタを接続する電線群とを、
ブラケットであるレール部材55を備える照明装置100の外に設ける、照明装置ユニット。」
b
引用文献1には、「図6に示すように、照明装置100に、電源ユニット101を接続した構成として照明ユニットとし」「てもよく」(摘記(1c)の段落【0029】)と記載されていることから、引用発明(照明装置100の発明)に、引用文献1に記載された技術事項を適用することが示唆されているといえる。
c
上記bのとおりであるから、引用発明に引用文献1に記載された技術事項を適用して、引用発明において、複数のLEDモジュールに電力を供給する電力変換部である電源ユニット101と、電源ユニット101に電気的に接続された入力用連結コネクタ61および出力用連結コネクタ63と、電源ユニット101および入力用連結コネクタ61を接続する電線群と、電源ユニット101および出力用連結コネクタ63を接続する電線群とを、ブラケットであるレール部材55の外に設けることは、当業者にとって格別に困難なことではない。
しかしながら、この場合、引用発明において(特に図1参照)、電源ユニット101および出力用連結コネクタ63を接続する電線群及び電源ユニット101および入力用連結コネクタ61を接続する電線群は、全ての部分がレール部材55の外に配置されることになり、これらの電線群はレール部材55の開口に挿通された状態にはならない(引用文献1の図6に示唆されているように、基板に接続され開口に挿通された電線群は、電源ユニット101に直接繋がるようになる。)。
d
したがって、引用発明に引用文献1に記載された技術事項を適用する動機付けは存在するものの(上記b)、その適用では、本件発明1の「前記第1のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の一端に設けられた第1の開口に前記第1の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の一端側から露出可能に設けられ、前記第2のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の他端に設けられた第2の開口に前記第2の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の他端側から露出可能に設けられ」る構成には至らないから(上記c)、本件発明1の構成を想到することはできない。
(イ)
さらに、引用文献1(特に図6)には、電源ユニット101をレール部材55の内側に支持することを示唆する記載は無く、引用文献1に記載された技術事項は、上記(ア)aのとおりであることから、引用発明において、電源ユニット101をレール部材55の内側に配置して支持することは、記載も示唆もされていないと言わざるをえない。
(ウ)
引用文献2には、筒状ケース5の周壁部10やベースプレート14に、電源回路ユニット8を支持することは、記載されていないことから(摘記(2d))、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用してみても、上記相違点1に係る本願発明1の構成(特に、「前記電力変換部を支持する長尺状のブラケット」の構成)には至らない。
(エ)
そして、本件発明1の「前記第1のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の一端に設けられた第1の開口に前記第1の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の一端側から露出可能に設けられ、前記第2のコネクタは、前記ブラケットの長手方向の他端に設けられた第2の開口に前記第2の電線が挿通された状態で前記ブラケットの長手方向の他端側から露出可能に設けられており、」という構成と、その前提となっている、上記相違点1に係る本件発明1の構成すなわち「前記複数のLEDモジュールに電力を供給する電力変換部と、前記基板、前記カバーおよび前記電力変換部を支持する長尺状のブラケットと、前記電力変換部に電気的に接続された第1のコネクタおよび第2のコネクタと、前記電力変換部および前記第1のコネクタを接続する第1の電線と、前記電力変換部および前記第2のコネクタを接続する第2の電線と、を備え」る構成との両方を備えた構成は、引用文献1?5にも記載も示唆もされていない。
(オ)
以上から、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、引用文献1?5にも記載も示唆もされておらず(上記(エ))、当該構成を想到するこことは、引用発明及び引用文献1?5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易になし得たとはいえない(上記(ア)?(エ))。

イ 小括
したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たことではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び引用文献1?5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、引用発明及び引用文献1?5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 特許異議申立人の主張について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のとおり主張する。
ア 16頁3?5行
「甲第2号証には、複数の照明装置を直列に接続して使用するものにおいて、各照明装置においてそれぞれのブラケットに電力変換部を支持させ、各照明装置は交流電流をそれぞれ直流電流に変換して使用する態様が記載されている。」(以下、「主張1」という。)
イ 16頁13?18行
「この甲1発明においてブラケットに電力変換部を支持させてコネクタを電力変換部に接続する形式とする場合、コネクタはその接続先を基板から電力変換部に変更するだけで、その他の態様は甲1発明と同様とすること、つまり、そのままブラケットの両端の開口に電線を挿通した状態でブラケットの一端側および他端側から露出可能に設けることは、甲1発明のコネクタの配設態様をそのまま踏襲するだけのことであり、当業者が容易に想到し得たものである。」(以下、「主張2」という。)
ウ 17頁1?7行
「長尺状の照明装置を接続して使用する場合、ブラケットの長手方向の端に開口を設け、開口に電線が挿通した状態で接続コネクタを開口から露出可能に設け、接続時はコネクタを引き出して接続し、接続前後は電線をブラケットの内部に収容する構成は、甲第4号証および甲第5号証に記載されているように、本件特許発明1の出願前から公知であり、蛍光灯照明装置であろうがLED照明装置であろうが、そのような構成による接続は何ら新規な技術思想ではなく、そのような構成を採用することに特許性は認められない。」(以下、「主張3」という。)

(2)検討

上記第4 2(2b)?(2d)のとおりであり、ブラケットに電力変換部が支持されていることは記載されていないから、主張1は採用できない。

上記1(2)ア(ア)?(オ)で述べたとおりであって、引用発明において、コネクタの接続先を基板から電力変換部に変更して、そのままブラケットの両端の開口に電線を挿通した状態でコネクタをブラケットの一端側および他端側から露出可能に設けることは、想定し得ないことであるから、主張2も採用できない。

引用文献4には「意匠登録申請済06-10-5-S」との記載が有り、引用文献5には「意匠登録申請済2007-10-10-S」との記載があるが、これらの記載(特に数字と記号の部分)は何を意味しているのか定かでない。
そして、仮に、これらの記載が、意匠登録申請日を示していたとしても、引用文献4及び5は、いずれも意匠公報ではなく、引用文献4及び5のパンフレットの公知日は、不明であることから、上記主張2ないし3に関連する証拠として採用することはできない。
さらに、電力変換部も記載されていないことから、上記相違点1に係る本件発明1の構成についての検討(上記1(2)ア)のための証拠として採用できるものでもない。
したがって、引用文献4及び5に基づく特許異議申立人の主張2ないし3も採用できない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-11-22 
出願番号 特願2017-150741(P2017-150741)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 出口 昌哉
仁木 学
登録日 2018-01-19 
登録番号 特許第6277313号(P6277313)
権利者 アイリスオーヤマ株式会社
発明の名称 照明装置  
代理人 齊藤 智和  
代理人 田中 達也  
代理人 土居 史明  
代理人 小淵 景太  
代理人 吉田 稔  
代理人 鈴木 泰光  
代理人 臼井 尚  
代理人 鈴木 伸太郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ