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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
管理番号 1346801
異議申立番号 異議2018-700646  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-06 
確定日 2018-12-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6276777号発明「自然光を模擬する人工照明システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6276777号の請求項1?41に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6276777号の請求項1?41に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)11月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年11月14日(IT)イタリア 2013年3月15日(US)米国)を国際出願日とするものであって、平成30年1月19日に特許の設定登録がされ、同年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、特許異議申立人 池田 憲保(以下「異議申立人」という。)は、同年8月6日に特許異議の申立てを行い、同年8月27日付けで異議申立人に対し通知書及び手続補正指令書(方式)が通知され、同年9月12日に申立ての理由を補正する手続補正書が提出され、同年9月19日に甲第1、2号証の訳文を追加する手続補正書(方式)が提出された。

第2 本件発明
特許第6276777号の請求項1?41に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?41に記載された事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
自然光をシミュレートする照明を用いて環境(6)を照明する(1)照明システムであって、
- 可視光のビームを放出するように構成された第1の光源(2)と、
- 前記光ビームを受け取るように構成された内面(S_(1)、S_(3))および外面(S_(2))によって境界画定された拡散光発生器(4;68)であり、前記光ビームに対して少なくとも部分的に透明であり、前記光ビームの少なくとも部分を透過させるように構成されており、さらに、前記外面を通して可視拡散光を放出するように構成されており、前記透過光の相関色温度(CCT)が前記可視拡散光のCCTよりも低い拡散光発生器と
を備え、
前記照明システムが、前記拡散光発生器を介して前記環境に光学的に結合されるように構成されたダーク構造体(10、12;300;310)をさらに備え、
- 該ダーク構造体の少なくとも一部分が、可視範囲において実質的に均一な吸収係数を有し、前記ダーク構造体が、実質的に均一な背景を前記第1の光源に提供するように構成されており、かつ/または
- 前記ダーク構造体の少なくとも一部分が、可視範囲において少なくとも70%に等しい吸収係数を有し、前記ダーク構造体が、前記第1の光源にダーク背景を提供するように構成されており、
前記ダーク構造体の前記一部分が、前記内面の面積の50%以上の面積を有する照明システム。
【請求項2】
前記ダーク構造体(10、12;300;310)の前記少なくとも一部分が、可視範囲において実質的に均一な吸収係数を有し、前記ダーク構造体が、実質的に均一な背景を前記第1の光源に提供するように構成されており、前記ダーク構造体の前記少なくとも一部分が、可視範囲において少なくとも70%に等しい吸収係数を有し、前記ダーク構造体が、前記第1の光源にダーク背景を提供するように構成されている請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
外光が前記拡散光発生器(4;68)を上流から照明することを防ぐように、前記ダーク構造体(10、12;300;310)が構成された請求項1または2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記第1の光源(2)がオンであるときに、少なくとも0.1ステラジアンのトップ・アングルを有する方向束(200)が与えられた場合に、前記外面(S_(2))の少なくとも一部分の任意の第1の点(220)において、該第1の点の第1の背景輝度と第2の背景輝度が、前記第1の背景輝度の50%以下だけ互いに異なるように、前記ダーク構造体(10、12;300;310)が構成されており、前記第1および第2の背景輝度がそれぞれ、第1および第2の観察方向(230、240)に測定され、該第1の観察方向が、前記方向束の方向のうちのどの方向に対しても平行であり、局所眩目方向(250)のうちのどの方向に対しても平行ではなく、前記第2の観察方向が、前記第1の観察方向から、範囲0.3°?1°の角距離だけ離して設定され、局所眩目方向のうちのどの方向に対しても平行ではなく、前記局所眩目方向が、前記第1の点から前記第1の光源を見る任意の方向(260)から3°未満だけ離して設定された方向であり、前記第1および第2の背景輝度がそれぞれ、前記ダーク構造体に当たった、前記環境(6)をこれまで通過しなかった前記光線だけによって形成される請求項1から3のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項5】
前記方向束(200)が円錐形であり、軸方向に沿って向けられた軸(210)を有し、該軸方向が、前記外面(S_(2))の前記一部分の少なくとも1つの第2の点から前記第1の光源(2)を見る方向(260)に対して平行である請求項4に記載の照明システム。
【請求項6】
前記第1の光源(2)がオンであるときに、前記第1の背景輝度が、前記環境(6)から到来する光線がない場合に、前記第1の点(220)の前記第1の観察方向(230)の全輝度の30%に等しいしきい輝度値よりも大きくなることを防ぐように、前記ダーク構造体(10、12;300;310)がさらに構成された請求項4または5に記載の照明システム。
【請求項7】
前記ダーク構造体(310)の前記一部分がエッジ・フリーである請求項1から6のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項8】
前記拡散光発生器(4;68)が、前記透過光のCCTが前記光ビームのCCTよりも大きくならないような拡散光発生器である請求項1から7のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項9】
前記拡散光発生器(4;68)が、前記可視拡散光のCCTが前記光ビームのCCTよりも大きくなるような拡散光発生器である請求項1から8のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項10】
前記内面(S_(1))上で、照度が、最小値と最大値の間で変化するように前記第1の光源(2)が構成されており、前記最大値が、前記最小値の3倍以下である請求項1から9のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項11】
関係
【数1】

が当てはまるように、前記拡散光発生器(6;68)が前記第1の光源(2)に対して配置されており、上式で、
- θ_(1)が、前記第1の光源の放出面(S_(f))の重心(O”)から生じた前記光ビームの第1の光線が前記内面の重心に衝突する角度であり、
- θ_(e)が、前記第1の光源の前記放出面の重心から生じた第2の光線が前記内面の境界の点に衝突する角度であり、前記点が、境界の点のうち、前記内面の重心からの距離が最大である点である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項12】
前記内面(S_(1)、S_(3))の重心(O)からXだけ離隔した前記内面(S_(1))の少なくとも1つの点について、関係
【数2】

が当てはまるように、前記拡散光発生器(4;68)が前記第1の光源(2)に対して配置されており、上式で、
- θ_(1)が、前記第1の光源の放出面(S_(f))の重心(O”)から生じた前記光ビームの第1の光線が前記内面の重心に衝突する角度であり、
- θ_(2)が、前記第1の光源の前記放出面の重心から生じた第2の光線が、前記内面の前記少なくとも1つの点に衝突する角度であり、
- Lが、3メートルに等しいかまたは3メートルよりも大きい、
請求項1から10のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項13】
前記内面(S_(1)、S_(3))の重心(O)からXだけ離隔した前記内面(S_(1))の少なくとも1つの点について、関係
【数3】

が当てはまるように、前記拡散光発生器(6;68)が前記第1の光源(2)に対して配置されており、上式で、
- θ_(1)が、前記第1の光源の放出面(S_(f))の重心(O”)から生じた前記光ビームの第1の光線が前記内面の重心に衝突する角度であり、
- θ_(2)が、前記第1の光源の前記放出面の重心から生じた第2の光線が、前記内面の前記少なくとも1つの点に衝突する角度であり、
- Lが、前記内面の任意の2点間の最大距離の少なくとも70%に等しい、
請求項1から10のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項14】
前記第1の光源(2)が、前記内面(S_(1)、S_(3))の重心(O)を通る、前記内面(S_(1)、S_(3))に対して直角な線(H)に関して、軸外れで配置された請求項1から13のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項15】
前記ダーク構造体(10)の内側に配置された反射光学システム(20)であり、前記内面(S_(1)、S_(3))上へ前記光ビームを運ぶように構成された反射光学システム(20)をさらに備え、該反射光学システムが、使用時に前記内面から到来し前記反射光学システムに衝突した光線が前記内面上へ反射されないような反射光学システムである請求項1から14のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項16】
前記反射光学システム(20)が、平面型の第1のミラー(22)を備える請求項15に記載の照明システム。
【請求項17】
前記内面を含む平面上への前記第1のミラーの投影が前記内面と重ならないような方式で、前記第1のミラー(22)が、前記内面(S_(1)、S_(3))に対して平行に配置された請求項16に記載の照明システム。
【請求項18】
前記反射光学システム(20)が、収束型の第1のミラー(22;24)を備える請求項15に記載の照明システム。
【請求項19】
前記第1のミラー(22)が、円形放物面の一部分として形づくられた請求項18に記載の照明システム。
【請求項20】
前記第1のミラー(22)が、放物柱の一部分として形づくられた請求項18に記載の照明システム。
【請求項21】
前記反射光学システム(20)が、放物柱の一部分として形づくられた第2のミラー(24)をさらに備え、前記第1のミラーの軸と前記第2のミラーの軸が互いに対して実質的に直交する請求項20に記載の照明システム。
【請求項22】
前記第1および第2のミラー(22;24)が、共通の焦点を共有するように配置されており、前記第1の光源(2)が実質的に前記共通の焦点に配置されている請求項21に記載の照明システム。
【請求項23】
前記反射光学システム(20)が、前記第1の光源(2)を前記内面(S_(1)、S_(3))に接続する光路を形成し、前記第1のミラー(22)が、前記内面(S_(1)、S_(3))の前の前記光路の最後の偏向を引き起こし、前記反射光学システムを介して前記第1のミラーの重心(O’)を前記内面の重心(O)に接続する光線が、前記内面の重心において、前記内面に対して直角な方向に対して40°を含む40°から65°を含む65°までの範囲の角度を形成する請求項16から22のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項24】
前記ダーク構造体(310)の内側に配置された反射光学システム(20)であり、前記内面(S_(1)、S_(3))上へ前記光ビームを運ぶように構成された反射光学システム(20)をさらに備え、該反射光学システムが、使用時に前記内面から到来し前記反射光学システムに衝突した光線は前記内面上へ反射されないような反射光学システムであり、前記反射光学システムが、第1のミラー(22)を備え、前記第1の光源(2)を前記内面(S_(1)、S_(3))に接続する光路を形成し、前記第1のミラー(22)が、前記内面(S_(1)、S_(3))の前の前記光路の最後の偏向を引き起こし、前記内面(S_(1))と前記第1のミラー(22)の最も近い2つの点を通る線が、前記ダーク構造体(310)の前記一部分に衝突する請求項1から7のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項25】
前記第1の光源(2)が、複数の発光装置(52)および複数の反射集光器(54)によって形成され、それぞれの反射集光器が漏斗形であり、入力開口(IN)および出力開口(OUT)を有し、前記入力開口の面積が前記出力開口の面積よりも小さく、それぞれの発光装置が、対応するそれぞれの反射集光器の前記入力開口に光学的に結合された請求項1から24のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項26】
それぞれの反射集光器(54)の前記出力開口(OUT)が長方形として形づくられた請求項25に記載の照明システム。
【請求項27】
前記第1の光源(2)が、複数の発光装置(52)および複数の反射集光器(54)によって形成され、それぞれの反射集光器が漏斗形であり、入力開口(IN)および出力開口(OUT)を有し、前記入力開口の面積が前記出力開口の面積よりも小さく、それぞれの発光装置が、対応するそれぞれの反射集光器の前記入力開口に光学的に結合されており、前記出力開口(OUT)が伸長方向(57)に沿って細長く、前記光ビームが、最大発散軸(58)を有し、前記反射光学システム(20)が、使用時に、前記第1の光源(2)の放出面(S_(f))の重心(O”)から出る、最大発散平面にある光線の束が、前記内面の重心を通り、前記第1のミラー上へのキャリア光線の入射平面に対して直角な軸(y)に接する線に沿って前記内面(S_(1)、S_(3))に衝突するように構成されており、前記キャリア光線が、前記反射光学システムを介して前記放出面の重心を前記内面の重心に接続する光線である請求項15から24のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項28】
前記反射光学システム(20)が、前記キャリア光線が単一の平面にあるように構成され、前記第1の光源(2)が、前記最大発散軸が前記単一の平面に対して直角になるように配置された請求項27に記載の照明システム。
【請求項29】
前記第1の光源(2)が、円形または楕円形の全体開口(62)を有するマスク(60)をさらに備え、前記マスクが、前記出力開口(OUT)と共面であり、前記マスクが、前記全体開口の周りに配置された前記出力開口の部分から到来した光を遮断するのに適している請求項25から28のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項30】
前記拡散光発生器が、可視範囲の光を実質的に吸収しないように構成された第1の拡散器(4)であり、前記光ビームの長波長成分よりも効率的に短波長成分を拡散するように構成された第1の拡散器(4)を備え、該拡散器が、450nmに等しい波長を有する光線を、650nmに等しい波長を有する光線よりも少なくとも1.2倍効率的に拡散させるように構成された請求項1から29のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項31】
前記第1の拡散器(4)が、第2の材料の第1の粒子がその中に分散した第1の材料のマトリックスを含み、前記第1および第2の材料がそれぞれ第1および第2の屈折率を有し、前記第1の粒子が、相当直径に前記第1の屈折率をかけた積が範囲5nm?350nmにあるような相当直径を有する、請求項30に記載の照明システム。
【請求項32】
前記第1の光源(2)および前記第1の拡散器(4)を横切る粒子分布の密度が、前記密度と使用時に前記第1の光源によって前記第1の拡散器上に提供される照度との積が前記第1の拡散器上で実質的に一定であるようなものである請求項31に記載の照明システム。
【請求項33】
前記第1の拡散器(4)がパネルの形状を有し、前記内面および前記外面(S_(1)、S_(2))のうちの少なくとも一方の面が前記第1の拡散器によって形成された請求項30から32のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項34】
前記拡散光発生器が、前記第1の光源(2)から独立して前記可視拡散光の少なくとも一部分を放出するように構成された第2の光源(68)を備える請求項1から33のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項35】
前記第2の光源(68)が、
- 光ガイド・パネルとして形づくられ、縁が照らされるように構成された第2の拡散器(64)と、
- 前記第2の拡散器(64)の縁を照らす照明器(66)と
を備える請求項34に記載の照明システム。
【請求項36】
前記第1の光源(2)と前記照明器(66)のうちの少なくとも一方のCCTが、制御可能な形で可変である請求項35に記載の照明システム。
【請求項37】
前記第2の光源(68)がOLEDを備える請求項34から36のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項38】
前記拡散光発生器(4;68)が細長い形状を有する請求項1から37のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項39】
前記拡散光発生器(4;68)の下流に配置され、反射面(320)によって形成された光学基準をさらに備え、前記反射面の一部分が、対応する縁部分によって境界画定されており、前記反射面の前記一部分が、
- 前記反射面の前記一部分および前記縁部分が、前記第1の光源(2)によって生み出され前記拡散光発生器を透過した光によって照らされ、
- 前記第1の光源を前記反射面の前記一部分に接続する前記光路のうちの最も短い光路が、前記反射面の前記一部分の任意の2点間の最大距離の少なくとも70%に等しい長さを有する
ように構成されている請求項1から38のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項40】
前記拡散光発生器(4;68)の下流に配置され、環境間の開口を境界画定する隔壁(350)によって形成された光学基準をさらに備え、環境間の前記開口の一部分が、対応する縁部分によって境界画定されており、環境間の前記開口の前記一部分が、
- 環境間の前記開口の前記一部分および前記縁部分が、前記第1の光源(2)によって生み出され前記拡散光発生器を透過した光によって照らされ、
- 前記第1の光源を環境間の前記開口の前記一部分に接続する前記光路のうちの最も短い光路が、環境間の前記開口の前記一部分の任意の2点間の最大距離の少なくとも70%に等しい長さを有する
ように構成されている請求項1から38のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項41】
請求項1から40のいずれか一項に記載の照明システム(1)と、前記環境(6)の壁(P_(2))とを備え、該壁がキャビティ(8)を形成し、該キャビティ(8)の中に前記拡散光発生器(4;68)が延びている建造物。」

第3 特許異議申立理由の概要
1 異議申立理由1(特許法第36条第6項第1号及び第2号)
異議申立人は、請求項1に「前記ダーク構造体が、実質的に均一な背景を前記第1の光源に提供する」、「前記ダーク構造体が、前記第1の光源にダーク背景を提供する」と記載されているが、どのような状態を意味するのか明確でなく、また、段落【0116】(図13に係る例)においては、「ダーク構造体」に相当する吸収パッチ310が第1の光源の背後に位置するように記載されておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて特許を請求することになっているから、請求項1及び請求項1を直接的ないし間接的に引用する請求項2?41は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、請求項1?41に係る特許を取り消すべきものである旨主張する(以下「異議申立理由1」という。)。

2 異議申立理由2(特許法第36条第6項第2号)
異議申立人は、請求項1に「ダーク構造体の少なくとも一部分が、可視範囲において実質的に均一な吸収係数を有し」と記載されているが、吸収係数の範囲が規定されておらず、例えば吸収係数が1%の場合も含んでおり、不明確であるから、請求項1及び請求項1を直接的ないし間接的に引用する請求項2?41は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、請求項1?41に係る特許を取り消すべきものである旨主張する(以下「異議申立理由2」という。)。

3 異議申立理由3(特許法第29条第2項)
異議申立人は、主たる証拠として下記の甲第1号証及び従たる証拠として下記の甲第2号証を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する(以下「異議申立理由3」という。なお、平成30年9月12日付けの手続補正により、特許異議申立書の特許法第29条第2項に関する請求項2?41の記載は削除されている。)。
・甲第1号証:国際公開第2009/156347号
・甲第2号証:米国特許第1406115号明細書

第4 特許異議申立理由についての検討
1 異議申立理由1(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について
一般に「背景」とは、「絵画・写真などで、その主要題材の背後の光景。後景。」を意味する用語であり、「光景」とは「そこに見えるありさま。様子。景色。」を意味する用語である(いずれも「株式会社岩波書店 広辞苑第六版」)。
そうすると、請求項1における「前記ダーク構造体が、実質的に均一な背景を前記第1の光源に提供するように構成されており」という記載及び「前記ダーク構造体が、前記第1の光源にダーク背景を提供するように構成されており」という記載は、「第1の光源」の背後に見えるありさまとして、それぞれ「実質的に均一な背景」及び「ダーク背景」を、「ダーク構造体」が「環境」に対し提供するという構成であることが把握でき、上記記載が、「第1の光源」に対し「ダーク構造体」が「背後の位置」(可視光のビームを放出する方向の反対側)にあるという位置関係を特定するものでないことは、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)、特許請求の範囲及び図面の記載から明らかといえる。(図13に係る例においても、「第1の光源2」からの可視光のビームは「第1のミラー22」によって反射されて「環境6」に届くのであるから、「吸収パッチ310」により、「第1の光源2」に「実質的に均一な背景」及び「ダーク背景」を提供していることは構成上明らかといえる。)
したがって、請求項1及び請求項1を直接的ないし間接的に引用する請求項2?41の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないとまではいえない。
よって、異議申立理由1によっては、請求項1?41に係る特許を取り消すことはできない。

2 異議申立理由2(特許法第36条第6項第2号)について
「ダーク構造体」について検討すると、本件特許明細書の段落【0024】に「言い換えると、支持要素10および内層12は一種のダーク・ボックス(dark box)(またはチャンバ(chamber))を画定する。用語『ダーク』は、後に説明するように、ボックスをほとんど見えなくするような、照明がほとんどない条件および/または光を吸収する能力に関係する。」と記載されている。
そうすると、請求項1の「該ダーク構造体の少なくとも一部分が、可視範囲において実質的に均一な吸収係数を有し、前記ダーク構造体が、実質的に均一な背景を前記第1の光源に提供するように構成されており」という記載において、「吸収係数」の具体的な数値ないし数値範囲の記載がなかったとしても、上記段落【0024】の「ダーク」という用語の意味及び段落【0012】の「具体的には、光投射体の周囲の背景が黒色でかつ均一であると、窓を通して投射体を見ている観察者は、投射体までの距離が5メートル(好ましくは7メートル)よりも大きいときに、投射体がどのくらい遠くにあるのかを評価する能力を失うことに本出願の出願人は気づいた。このような状況に遭遇すると、観察者には、投射体からの距離がよく分からない。」という記載を参酌すると、請求項1の上記記載における「実質的に均一な吸収係数」は、そもそも「ダーク構造体」におけるものであるから「第1の光源」の光の投射位置がよく分からなくなる効果を奏する程度の吸収係数であることは自明のことであり、光投射体の周囲に黒色かつ均一である背景を提供することができないような、例えば1%の吸収係数のようなものは含まれないことは当業者にとって明らかであるので、特許を取り消すべき不備があるとまではいえない。
したがって、請求項1及び請求項1を直接的ないし間接的に引用する請求項2?41の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとまではいえない。
よって、異議申立理由2によっては、請求項1?41に係る特許を取り消すことはできない。

3 異議申立理由3(特許法第29条第2項)について
(1) 刊行物等の記載事項等
ア 甲第1号証
(ア)記載事項
本件の優先日前に電気通信回路を通じて利用可能となった甲第1号証には以下の記載がある。なお、異議申立人が提出した翻訳文を参考に当審で翻訳した翻訳文を併記し、発明の認定は翻訳文に用いた用語等を用いることとする。
a 「The present invention relates to an illumination device. More in particular, the invention relates to an artificial illumination device capable of reproducing in indoor environments the light and colors of the sun and of the sky, by combining a broad-band artificial light source and a particular nanostructured chromatic diffuser.」(明細書第1頁第3?6行)

「本発明は、照明装置に関する。より詳細には、本発明は、広帯域の人工光源と特定のナノ構造有彩色拡散体とを組み合わせることにより、屋内環境において太陽及び空の光及び色を再現することができる人工照明装置に関する。」

b 「Embodiments of the illumination device in "midday" configuration
A first example of device according to the invention is illustrated in Fig. 5A, where an anisotropic source of white light 52 emits light of uniform spectrum over a wide solid angle, illuminating the nanodiffuser element 56 subtending this angle. In the presence of the nanodiffuser, the yellow component 57 is scattered less than the blue component 55. The result from the viewpoint of method of illuminating an object on the scene is illustrated in Figs. 5B-D. In Fig. 5B an object 53 is illuminated both by direct light (yellow) and by the light scattered by the panel (blue); in Fig. 5C an object 53c is illuminated principally by direct light (yellow), in this case being provided with a screen 58 which removes the majority of the light coming from the diffuser panel 56, while object 53cc is illuminated only by the light back diffused (blue) from the diffuser panel 56; finally, in Fig. 5D an object 53d is illuminated principally by the scattered light (blue), as the direct light is removed by a screen 58d which generates shadow on this object.
The effect in the case of illumination of an environment by means of a source 52e combined with a diffuser 56e is shown in Fig. 5E. Here the scene is partly illuminated by the sum of direct and scattered light 51 and partly only by scattered light 59. 」(明細書第19頁下から3行?第20頁第13行)

「”正午”構成の照明装置の実施形態
本発明に係る装置の第1の例は、図5Aに示され、白色ライト52の異方性光源は、広角の立体角にわたって不均一なスペクトルの光を放出し、この角度に対するナノディフューザ素子56を照らす。ナノディフューザの存在下では、黄色成分57は青色成分55よりも少なく散乱される。場面上の物体を照らす方法の観点からの結果は、図5B-Dに示される。図5Bにおいて、物体53は、直接光(黄色)とパネルによって散乱光(青色)の両方により照らされ、図5Cにおいて、物体53cは、主に直接光(黄色)により照らされ、この場合、ディフューザパネル56からの光の大部分を除去するスクリーン58が設けられ、一方、物体53ccは、ディフューザパネル56から拡散された光(青色)のみにより照らされ、最後に、図5Dにおいて、この物体上に影を生成するスクリーン58dにより直接光が除去されるので、物体53dは、主に散乱光(青色)によって照らされる。
ディフューザ56eと組み合わされた光源52eによって環境を照明する際の効果は、図5Eに示されている。ここでシーンは、直接及び散乱の和による光51によって部分的に照射され、また散乱だけによる光59によって部分的に照射される。」

(イ)認定事項
a 図5Eの記載から、光源52eとディフューザ56eとの間を覆う断面ハの字状の部材が看取できる。
〔参考図〕(甲第1号証の図5Eに当審が矢印と説明文を付加)

b 図5Eに係る光源52eは、その前提を示す図5Aに係る白色ライト52と同数字の符号が付されていることから、同様に白色ライトであるものと認められる。そして、上記(ア)bに、光源52は「広角の立体角にわたって不均一なスペクトルの光を放出」することが記載されており、図5Eの記載をみても光源52eからの光は広角の立体角にわたって光を放出するものであることが看取できることから、光源52eは、光源52と同様の光を放出するものであると認められる。
また、同様に、図5Eに係るディフューザ56eは、その前提を示す図5Aに係るディフューザ56と同数字の符号が付されていることから、ディフューザ56eもディフューザ56と同様の散乱を行うものと認められる。

(ウ)記載された発明
上記(ア)、(イ)より、甲第1号証には次の発明(図5Eに係る例に対応。以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「屋内環境において太陽及び空の光及び色を再現することができる人工照明装置であって、
白色ライトである光源52eと、
光源52eは広角の立体角にわたって不均一なスペクトルの光を放出し、この角度に対するディフューザ56eを照らし、
ディフューザ56eは、黄色成分を青色成分よりも少なく散乱するものであり、屋内環境のシーンは、直接光(黄色)とディフューザ56eによって散乱した光(青色)の両方による光51によって部分的に照射され、
光源52eとディフューザ56eとの間を覆う断面ハの字状の部材を有する
人工照明装置。」

イ 甲第2号証
(ア)記載事項
本件の優先日前に頒布された甲第2号証には以下の記載がある。なお、異議申立人が提出した翻訳文を参考に当審で翻訳した翻訳文を併記し、技術的事項の認定は翻訳文に用いた用語等を用いることとする。また、摘示箇所の行数は公報の左右に付された番号による。
a 「My invention relates to headlights for vehicles, and the object of my invention is to provide a powerful non-glaring projecting headlight for use on automobiles, trolley cars, and other vehicles provided with a suitable source of electric energy;」(第1頁第9?14行)

「本発明は乗り物用ヘッドライトに関するものであり、本発明の目的は、自動車、トロリー車両、及び電気エネルギー源を備えたその他の乗り物に使用するための強力で眩惑のない投影ヘッドライトを提供することである;」

b 「My improved non-glare headlight comprises a casing,2,of any desired shape, but preferably substantially round in cross-section and parabolic in longitudinal section, and provided with raised portions,20,adapted to be connected to the usual supporting brackets.
The inside of the casing,2,is provided with some suitable dull,non-reflecting finish adapted to absorb rather than to reflect any light rays which may come in contact therewith.」(第1頁第33?44行)

「本改良された眩惑のないヘッドライトは、任意の所望の形状のケーシング2を備えているが、好ましくは、断面が実質的に丸みを帯び、長手方向断面が放物線状であり、通常の支持ブラケットに接続されるようにされた隆起部20を備える。
ケーシング2の内部には、そこに接触する可能性のある光線を反射するのではなく、吸収するように適合された、いくらかの適切な鈍い非反射仕上げが施されている。」

c 「Over the open end of the casing,2,and fastened thereto in any suitable manner,is a face plate,5,the major portion of the lower half thereof being an opening closed by a plate of glass,11,through which the light rays are to be projected.
Formed on the inner side of the face plate and near the center thereof,is a shelf,6,to which are attached the standards,7,7, between which is adjustably mounted a suitable reflector,8,carrying the electric lamp,9,connected by suitable insulated wires,10,to a source of electric energy.」(第1頁第49?61行)

「ケーシング2の開口端部上に配置され、任意の適切な方法でそこに固定されるフェースプレート5は、その下半分の大部分が投射される光線を透過するガラス板11によって閉じられた開口部を有する。
フェースプレートの内側で、その中央付近に形成された棚6には、適切な絶縁ワイヤ10によって電気エネルギー源に接続されている電気ランプ9を支える適切な反射器8を調整可能に取り付けられているランプ台7,7が取り付けられている。」

d 「Light rays from the lamp,9,which is preferably of comparatively high candle power,will be projected against the back reflector,4,which will deflect the rays and cause them to be projected horizontally or downward through the glass,11.」(第1頁第71?76行)

「比較的高いカンデラパワーを有することが好ましいランプ9からの光線は、後部反射鏡4に対して投射され、後部反射鏡4は光線を偏向させ、ガラス11を通って光線を水平または下方に投射させる。」

(イ)記載された技術的事項
上記(ア)より、甲第2号証には次の技術的事項(以下「甲2技術」という。)が記載されているものと認める。
「乗り物用ヘッドライトであって、
任意の所望の形状のケーシング2を備え、
ケーシング2の開口端部上に配置され、任意の適切な方法でそこに固定されるフェースプレート5は、その下半分の大部分が投射される光線を透過するガラス板11によって閉じられた開口部を有し、
フェースプレート5の内側で、その中央付近に形成された棚6には、適切な絶縁ワイヤ10によって電気エネルギー源に接続されている電気ランプ9を支える適切な反射器8を調整可能に取り付けられているランプ台7,7が取り付けられ、
比較的高いカンデラパワーを有することが好ましいランプ9からの光線は、後部反射鏡4に対して投射され、後部反射鏡4は光線を偏向させ、ガラス11を通って光線を水平または下方に投射させ、
ケーシング2の内部には、そこに接触する可能性のある光線を反射するのではなく、吸収するように適合された、いくらかの適切な鈍い非反射仕上げが施されている
乗り物用ヘッドライト。」

(2)対比・判断
ア 対比
請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)と、甲1発明とを対比する。
(ア)後者の「屋内環境」は前者の「環境」に相当し、以下同様に、「人工照明装置」は「照明システム」に、「光源52e」は「第1の光源」に、「ディフューザ56e」は「拡散光発生器」に、「直接光(黄色)」は「透過光」に、「散乱した光(青色)」は「可視拡散光」にそれぞれ相当する。

(イ)後者の「屋内環境において太陽及び空の光及び色を再現することができる人工照明装置」は、前者の「自然光をシミュレートする照明を用いて環境を照明する照明システム」に相当する。

(ウ)後者の「広角の立体角にわたって不均一なスペクトルの光を放出し、この角度に対するディフューザ56eを照ら」す「白色ライトである光源52e」と、前者の「可視光のビームを放出するように構成された第1の光源」とは、「可視光を放出するように構成された第1の光源」の限度で一致するといえる。

(エ)後者の「ディフューザ56e」は、光源52eの光により照らされるものであるから、その内面は光を受け取るように構成され、さらに、内面、外面によって境界画定しているものといえ、また、光源52eの光に対して少なくとも部分的に透明であり、外面を通して散乱した光を放出するといえる。そして、後者の「ディフューザ56eは、黄色成分を青色成分よりも少なく散乱するものであり、屋内環境のシーンは、直接光(黄色)とディフューザ56eによって散乱した光(青色)の両方による光51によって部分的に照射され」ということについては、「直接光(黄色)」の相関色温度が「散乱した光(青色)」の相関色温度よりも低くなっていることは自明のことといえる。
そうすると、後者の「ディフューザ56eは、黄色成分を青色成分よりも少なく散乱するものであり、屋内環境のシーンは、直接光(黄色)とディフューザ56eによって散乱した光(青色)の両方による光51によって部分的に照射され」ることと、前者の「前記光ビームを受け取るように構成された内面および外面によって境界画定された拡散光発生器であり、前記光ビームに対して少なくとも部分的に透明であり、前記光ビームの少なくとも部分を透過させるように構成されており、さらに、前記外面を通して可視拡散光を放出するように構成されており、前記透過光の相関色温度(CCT)が前記可視拡散光のCCTよりも低い拡散光発生器とを備え」ることとは、「前記光を受け取るように構成された内面および外面によって境界画定された拡散光発生器であり、前記光に対して少なくとも部分的に透明であり、前記光の少なくとも部分を透過させるように構成されており、さらに、前記外面を通して可視拡散光を放出するように構成されており、前記透過光の相関色温度(CCT)が前記可視拡散光のCCTよりも低い拡散光発生器とを備え」ることの限度で一致するといえる。

(オ)後者の「断面ハの字状の部材」は、ディフューザ56eを介して屋内環境に光学的に結合されているといえる。
そうすると、後者の「光源52eとディフューザ56eとの間を覆う断面ハの字状の部材を有する」ことと、前者の「前記照明システムが、前記拡散光発生器を介して前記環境に光学的に結合されるように構成されたダーク構造体をさらに備え」ることとは、「前記照明システムが、前記拡散光発生器を介して前記環境に光学的に結合されるように構成された構造体をさらに備え」ることの限度で一致するといえる。

(カ)以上のことから、本件発明と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりと認める。
〔一致点〕
「自然光をシミュレートする照明を用いて環境を照明する照明システムであって、
- 可視光を放出するように構成された第1の光源と、
- 前記光を受け取るように構成された内面および外面によって境界画定された拡散光発生器であり、前記光に対して少なくとも部分的に透明であり、前記光の少なくとも部分を透過させるように構成されており、さらに、前記外面を通して可視拡散光を放出するように構成されており、前記透過光の相関色温度(CCT)が前記可視拡散光のCCTよりも低い拡散光発生器と
を備え、
前記照明システムが、前記拡散光発生器を介して前記環境に光学的に結合されるように構成された構造体をさらに備えている照明システム。

〔相違点1〕
「第1の光源」が放出する可視光に関し、本件発明が「可視光のビーム」であるのに対し、甲1発明は「広角の立体角にわたって不均一なスペクトルの光」であり、「ビーム」ではない点。

〔相違点2〕
「構造体」に関し、本件発明が「ダーク構造体」であり、「- 該ダーク構造体の少なくとも一部分が、可視範囲において実質的に均一な吸収係数を有し、前記ダーク構造体が、実質的に均一な背景を前記第1の光源に提供するように構成されており、かつ/または - 前記ダーク構造体の少なくとも一部分が、可視範囲において少なくとも70%に等しい吸収係数を有し、前記ダーク構造体が、前記第1の光源にダーク背景を提供するように構成されており、前記ダーク構造体の前記一部分が、前記内面の面積の50%以上の面積を有する」のに対し、甲1発明の「断面ハの字状の部材」は「ダーク構造体」の特定がない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
本件発明が「ダーク構造体」に係る事項を有するのは、本件特許明細書の段落【0012】に記載される「光投射体の周囲の背景が黒色でかつ均一であると、窓を通して投射体を見ている観察者は、投射体までの距離が5メートル(好ましくは7メートル)よりも大きいときに、投射体がどのくらい遠くにあるのかを評価する能力を失う」という作用効果を得るためのものである。
ここで、甲2技術は、「ケーシング2の内部には、そこに接触する可能性のある光線を反射するのではなく、吸収するように適合された、いくらかの適切な鈍い非反射仕上げが施されている」ものであるが、「乗り物用ヘッドライト」に関するものであるから、上記のような作用効果が求められるものではもとよりなく、また、そのような作用効果を奏することの記載は甲第2号証にはない。
そして、甲2技術は照明に関する技術ではあるものの、甲1発明のような「屋内環境において太陽及び空の光及び色を再現することができる人工照明装置」とは技術分野を異にするものであり、課題や作用効果(甲2技術については上記(1)イ(ア)aを参照。)においても共通する点があるものでもないから、甲1発明の「断面ハの字状の部材」に対し、甲2技術を適用する動機付けは見当たらないし、作用効果の予測性があるともいえない。
したがって、甲1発明において、少なくとも上記相違点2に係る本件発明の事項を有するものとすることが当業者にとって容易になし得たということはできない。

(3)小括
上記のとおり、本件発明(請求項1に係る発明)は、甲1発明及び甲2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、異議申立理由3の理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上検討したとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?41に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?41に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-11-28 
出願番号 特願2015-542399(P2015-542399)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (F21S)
P 1 651・ 121- Y (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 津田 真吾  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
仁木 学
登録日 2018-01-19 
登録番号 特許第6276777号(P6276777)
権利者 コエルクス ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
発明の名称 自然光を模擬する人工照明システム  
代理人 上田 邦生  
代理人 川上 美紀  
代理人 藤田 考晴  

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