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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1346976
審判番号 不服2017-9971  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-05 
確定日 2018-12-12 
事件の表示 特願2014-542312「新規の太陽光モジュール、支持層スタック、およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日国際公開、WO2013/074224、平成27年 1月22日国内公表、特表2015-502659〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年10月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年11月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 6月18日:国際出願翻訳文提出書の提出
平成27年 8月31日:出願審査請求書の提出
平成28年 5月27日:拒絶理由通知(5月31日発送)
同年 9月21日:手続補正書・意見書の提出
平成29年 2月27日:拒絶査定(3月7日送達。以下「原査定」
という。)
同年 7月 5日:審判請求書・手続補正書の提出

第2 平成29年7月5日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年7月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[補正却下の決定の理由]
1 補正内容
本件補正は、明細書及び特許請求の範囲についてするものであり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項19(平成28年9月21日付け手続補正後のもの)について、
「太陽電池と、
前記太陽電池に隣接し、前記太陽電池を機械的に支持する太陽電池支持層スタックであって、前記太陽電池支持層スタックが、
剛性発泡層、ならびに
前記剛性発泡層に隣接して配設された1つまたは複数の外皮層
を含み、
前記剛性発泡層ならびに前記1つまたは複数の外皮層は、前記支持層スタックが前記太陽電池に隣接して配設されたときに、前記太陽電池に機械的支持を提供することが可能である、
太陽電池支持層スタックと
を備える、太陽光モジュール。」とあったものを、

本件補正後の請求項15の
「太陽電池と、
前記太陽電池に隣接し、前記太陽電池を機械的に支持する太陽電池支持層スタックであって、前記太陽電池支持層スタックが、
約1mm?約12mmの厚さを持つ剛性発泡層であって、かつ前記剛性発泡層がポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも1つの材料で作製される、剛性発泡層と、
ガラス繊維含有ポリエチレン樹脂、および/または、ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂からから作製される、2つまたはそれ以上の外皮層と、
エチレン酢酸ビニルおよび/またはポリオレフィンから作製される、2つの接着層であって、2つの接着層の各々が前記剛性発泡層を前記外皮層の1つへと接着し、前記発泡層が前記外皮層の2つの間に挟まれて前記支持層スタックを形成するようにしている、2つの接着層と、
を含み、
前記剛性発泡層ならびに前記2つまたはそれ以上の外皮層は、前記支持層スタックが前記太陽電池に隣接して配設されたときに、前記太陽電池に機械的支持を提供する、
太陽電池支持層スタックと
を備える、太陽光モジュール。」と補正する内容を含むものである(下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)。

2 補正目的
上記「1」の補正内容は、本件補正前の請求項19に係る発明の「剛性発泡層」の厚み及び材料を限定し、同様に、「外皮層」の材料を限定し、さらに、「2つまたはそれ以上の外皮層」が「剛性発泡層」と「エチレン酢酸ビニルおよび/またはポリオレフィンから作製される、2つの接着層」により接着されることを限定するものであり、その補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
よって、本件補正後の請求項15についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められることから、本件補正後の請求項15に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「第2 1」に、本件補正後の請求項15として記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載の事項
本願の優先日(2011年11月18日)前に、頒布された刊行物である、再公表特許第2007/088892号(2009年6月25日発行。以下「引用文献A」という。)には、図とともに以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

ア 「【請求項1】
縦弾性係数が500kgf/mm^(2)以上10000kgf/mm^(2)以下である層(A層)、縦弾性係数が10kgf/mm^(2)以上500kgf/mm^(2)未満である層(B層)、および縦弾性係数が500kgf/mm^(2)以上10000kgf/mm^(2)以下である層(A’層)の少なくとも3層を有する構造体を含む太陽電池モジュール用裏面保護基板であって、該構造体の面積あたりの重量が0.5kg/m^(2)以上10kg/m^(2)以下である、太陽電池モジュール用裏面保護基板。
【請求項2】
……
【請求項3】
前記A層およびA’層の少なくとも一方が、熱可塑性樹脂および強化繊維を含有し、且つ、前記強化繊維の容積含有率が30%以上85%以下である複合材料層である、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護基板。
【請求項4】
……
【請求項7】
前記強化繊維が、ガラス繊維または炭素繊維である、請求項3から6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護基板。
【請求項8】
……
【請求項10】
前記B層が、樹脂発泡体からなる層である、請求項1から6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護基板。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護基板を有する、太陽電池モジュール。
【請求項12】
太陽電池モジュール用表面保護シート(I)、封止材層(II)、太陽電池セル(III)、封止材層(IV)、および、請求項1から10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用裏面保護基板(V)がこの順に直接または間接に積層されてなる、請求項11に記載の太陽電池モジュール。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、鋭意検討の結果、特定の層構造を有し、かつ、曲げ剛性、面積あたり重量、および絶縁破壊電圧が特定の範囲にある構造体からなる太陽電池モジュール用裏面保護基板が、機械的特性に優れ、たわみが有効に抑制され、その結果太陽電池モジュール用裏面保護としての使用に適していることを見出し、本発明に至った。」

ウ 「【0057】
(熱可塑性樹脂)
本発明において好ましく使用される、熱可塑性樹脂および強化繊維を含有するプリプレグに用いられる熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂(ポリアクリロニトリル・ポリスチレン・ポリアクリル酸エステル)、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアリレート等を挙げることが出来るが、これらに限定はされない。中でも、ポリプロピレン等のプロピレン系(共)重合体は、耐熱性、リサイクル性に優れ、比較的低コストで入手することができるので好ましい。これら熱可塑性樹脂は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。」

エ 「【0079】
(樹脂発泡体(好ましいB層))
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護基板においては、上記B層が、樹脂発泡体からなる層であることが好ましい。上記B層が、樹脂発泡体からなる層であると、太陽電池モジュール用裏面保護基板の軽量化およびその結果として太陽電池モジュールの軽量化が可能であり、たわみの防止にも有効であるという利点がある。
【0080】
……
【0081】
具体的に本発明で好ましく使用される樹脂発泡体としてはポリプロピレン発泡体等のプロピレン系(共)重合体発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリスチレン発泡体又はポリプロピレン発泡体を外層に有するポリスチレン発泡体等が挙げられるが、これらには限定されない。この中でも、コスト、強度、耐熱性等の観点から、プロピレン系(共)重合体発泡体が特に好ましい。」

オ 「【0088】
(積層体の構成、製造方法)
A層またはA’層として好ましく用いられるプリプレグと、B層として好ましく用いられる樹脂発泡体とを接合する方法には特に制限はなく、接着剤塗布による接着、または熱融着のいずれも実施できる。接着剤塗布の場合は、予め接着剤を塗布して接着する方法と、塗布型のホットメルト系接着剤を塗布して乾燥した後に加熱ロールまたは熱プレスで挟んで接着する方法、またはフィルムタイプのホットメルト系接着剤を挟んで加熱ロールまたは熱プレスで挟んで接着する方法等が例示できる。中でも熱融着は、特別な接着性樹脂を必要としないこと、比較的短時間で接合が可能であること、また十分に高い接着強度が得られること等から、好ましい接合方法である。

カ 「【0129】
<太陽電池モジュール用裏面保護基板>
[実施例1]
A層として、ガラス繊維強化複合シートL15(プレグロン(登録商標)、三井化学(株)製、厚み:0.25mm、縦弾性係数:1600kgf/mm2、ガラス繊維含量:50容量%、面積あたり重量:300g/m2)、B層としてPP3倍発泡シート(商品名パロニアボード、三井化学ファブロ(株)製、縦弾性係数:50kgf/mm2、厚み8mm、面積あたり重量:2.9kg/m2)、A’層に前記ガラス繊維強化複合シートL15を用い、これら3層のシートを重ねて熱プレス成形機にて220℃で予熱時間2分の条件で熱融着し、更に冷却して長さ1400mm、幅1000mm、厚み8.4mmの太陽電池モジュール用裏面保護基板を得た。この太陽電池モジュール用裏面保護基板の単位面積あたりの重量は3.5kg/m2と軽く、たわみは75mmと小さく、曲げ剛性は5.8×106kgf・mm2で優れていた。また絶縁破壊電圧は35kVで、太陽電池の絶縁保護基板としては十分な値であった。」

キ 「【符号の説明】
【0142】
1 A層
2 B層
3 A’層
4 L:はりの長さ
5 δ:最大たわみ量 」

ク 図1は、以下のものである。


(3)引用文献Aに記載された発明
ア 上記(1)アの記載からして、引用文献Aには、
「太陽電池モジュール用表面保護シート(I)、封止材層(II)、太陽電池セル(III)、封止材層(IV)、および、太陽電池モジュール用裏面保護基板(V)がこの順に直接または間接に積層されてなる、太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池モジュール用裏面保護基板(V)は、
縦弾性係数が500kgf/mm^(2)以上10000kgf/mm^(2)以下である層(A層)、
縦弾性係数が10kgf/mm^(2)以上500kgf/mm^(2)未満である層(B層)、
および縦弾性係数が500kgf/mm^(2)以上10000kgf/mm^(2)以下である層(A’層)の少なくとも3層を有する構造体を含み、
前記A層およびA’層が、熱可塑性樹脂および強化繊維を含有し、且つ、前記強化繊維の容積含有率が30%以上85%以下である複合材料層であり、
該構造体の面積あたりの重量が0.5kg/m^(2)以上10kg/m^(2)以下である、太陽電池モジュール。」(請求項1、請求項3、請求項11及び請求項12を参照。)が記載され、
上記「強化繊維」は、「ガラス繊維」(請求項7を参照。)であり、
上記「B層」は、「樹脂発泡体層」(請求項10を参照。)であってもよいものと認められる。

イ 上記(1)イの記載からして、
上記アの「太陽電池モジュール用裏面保護基板」は、機械的特性に優れ、たわみが有効に抑制されたものであると認められる。

ウ 上記(1)ウの記載からして、
上記アの「A層およびA’層」における「熱可塑性樹脂」は、耐熱性、リサイクル性等の観点から、「ポリプロピレン樹脂」が好ましいものと認められる。

エ 上記(1)エの記載からして、
上記アの「B層」における「樹脂発泡体層」は、コスト、強度、耐熱性等の観点から、「ポリプロピレン発泡体層」が好ましいものと認められる。

オ 上記(1)オの記載からして、
上記アの「A層およびA’層」は、接着剤によりB層の両側に接合してもよいことが理解できる。

カ 上記(1)カ及びキの記載を踏まえて、図1を見ると、
上記アの「太陽電池モジュール用裏面保護基板」は、A’層(1)、B層(2)及びA層(3)の3層を有する構造体であることが理解できる。

キ 上記アないしカより、引用文献Aには、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されているものと認められる。

「太陽電池モジュール用表面保護シート(I)、封止材層(II)、太陽電池セル(III)、封止材層(IV)、および、太陽電池モジュール用裏面保護基板(V)がこの順に直接または間接に積層されてなる、太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池モジュール用裏面保護基板(V)は、
機械的特性に優れ、たわみが有効に抑制されたものであり、
縦弾性係数が500kgf/mm^(2)以上10000kgf/mm^(2)以下であるガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂層(1)、
縦弾性係数が10kgf/mm^(2)以上500kgf/mm^(2)未満である、ポリプロピレン発泡体層(2)、
縦弾性係数が500kgf/mm^(2)以上10000kgf/mm^(2)以下であるガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂層(3)の3層を有する構造体を含み、
前記ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂層(1)及び前記ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂層(2)は、接着剤により前記ポリプロピレン発泡体層(2)の両側に接合され、
前記ガラス繊維の容積含有率が30%以上85%以下であり、
前記構造体の面積あたりの重量が0.5kg/m^(2)以上10kg/m^(2)以下である、太陽電池モジュール。」

(4)対比
ア 本願補正発明と引用発明Aとを対比する。
(ア)引用発明Aの「太陽電池セル(III)」及び「太陽電池モジュール」は、それぞれ、本願補正発明の「太陽電池」及び「太陽光モジュール」に相当する。

(イ)引用発明Aの「ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂層(1)」及び「ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂層(3)」は、本願補正発明の「ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂からから作製される、2つまたはそれ以上の外皮層」に相当する。

(ウ)本願補正発明の「約1mm?約12mmの厚さを持つ剛性発泡層であって、かつ前記剛性発泡層がポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも1つの材料で作製される、剛性発泡層」と引用発明Aの「ポリプロピレン発泡体層(2)」とは、「所定の厚さを持つ剛性発泡層であって、かつ前記剛性発泡層が樹脂材料で作製される、剛性発泡層」である点で一致する。

(エ)引用発明Aの「太陽電池モジュール用裏面保護基板」は、「3層を有する構造体」を含み、太陽電池セル(III)に機械的支持を提供するものであることは明らかであるから、「太陽電池支持層スタック」と呼べるものである。
また、引用発明Aの「ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂層(1)」及び「ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂層(2)」は、接着剤によりポリプロピレン発泡体層(2)の両側に接合されていることから、
本願補正発明と引用発明Aとは、「所定材料から作製される、2つの接着層であって、2つの接着層の各々が剛性発泡層を外皮層の1つへと接着し、前記発泡層が前記外皮層の2つの間に挟まれて支持層スタックを形成するようにしている、2つの接着層を含む」点で一致する。

(オ)よって、本願補正発明と引用発明Aとは、以下の点で一致する。
<一致点>
「太陽電池と、
前記太陽電池に隣接し、前記太陽電池を機械的に支持する太陽電池支持層スタックであって、前記太陽電池支持層スタックが、
所定の厚さを持つ剛性発泡層であって、かつ前記剛性発泡層が樹脂材料で作製される、剛性発泡層と、
ガラス繊維含有ポリプロピレン樹脂からから作製される、2つまたはそれ以上の外皮層と、
特定材料から作製される、2つの接着層であって、2つの接着層の各々が前記剛性発泡層を前記外皮層の1つへと接着し、前記発泡層が前記外皮層の2つの間に挟まれて前記支持層スタックを形成するようにしている、2つの接着層と、
を含み、
前記剛性発泡層ならびに前記2つまたはそれ以上の外皮層は、前記支持層スタックが前記太陽電池に隣接して配設されたときに、前記太陽電池に機械的支持を提供する、
太陽電池支持層スタックと
を備える、太陽光モジュール。」

(カ)一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
(剛性発泡層の)所定の厚さに関して、
本願発明1は、「約1mm?約12mm」であるのに対して、
引用発明Aは、不明である点。

<相違点2>
(剛性発泡層の)樹脂材料に関して、
本願発明1は、「ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも1つの材料」であるのに対して、
引用発明Aは、ポリプロピレンであり、上記樹脂材料ではない点。

<相違点3>
(接着剤の)所定材料に関して、
本願発明1は、「エチレン酢酸ビニルおよび/またはポリオレフィン」であるのに対して、
引用発明Aは、不明である点。

(5)判断
ア 上記<相違点1>及び<相違点2>について検討する。
(ア)太陽電池を支持する発泡樹脂として、ポリプロピレン以外にも、ポリエチレンテレフタレートやポリ塩化ビニル等を用いることは、下記の文献に記載されているように、本願の優先日時点でよく知られていることである(以下「周知技術1」という。)。

特開2003-49509号公報(【0026】)
特開2001-44480号公報(【0019】)
特開平6-314809号公報(【0008】)

(イ)また、引用発明Aの「ポリプロピレン発泡体層(2)」の具体的な厚みをどの程度に設定するかは、当業者が引用発明Aを実施する際に、強度や重さ等を勘案して適宜決めるべき事項であるところ、引用文献1の【0129】には「…B層としてPP3倍発泡シート(商品名パロニアボード、三井化学ファブロ(株)製、縦弾性係数:50kgf/mm2、厚み8mm、面積あたり重量:2.9kg/m2)…厚み8.4mmの太陽電池モジュール用裏面保護基板を得た。」と記載され、厚みとして、8mm程度に設定することが示唆されている。

(ウ)してみると、引用発明Aにおいて、例えば、「約8mmの厚さを持つポリエチレンテレフタレート発泡体層」を採用することは、当業者が引用文献Aの記載及び上記周知技術1に基づいて容易になし得たことである。

(エ)よって、引用発明Aにおいて、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記<相違点3>について検討する。
(ア)太陽電池の分野において、接着剤として「エチレン酢酸ビニル接着剤」を利用することは、下記の文献に記載されているように、本願の優先日時点でよく知られていることである(以下「周知技術2」という。)。

特開2007-305784号公報(【0027】)
特開平9-64392号公報(【0015】)

(イ)してみると、引用発明Aにおいて、接着剤として「エチレン酢酸ビニル」を採用することは、当業者が上記周知技術2に基づいて容易になし得たことである。

(ウ)よって、引用発明Aにおいて、上記<相違点3>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

エ 判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、引用発明Aにおいて、上記<相違点1>ないし<相違点3>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明Aの奏する効果から予測し得る範囲内のものであり、上記<相違点1>ないし<相違点3>を総合判断しても、本願補正発明は、当業者が容易に発明することができたものであるというほかない。
よって、本願補正発明は、当業者が引用発明Aに基づいて容易に発明することができたものである。

(6)審判請求書における主張
請求人は、審判請求書(第4頁上段)において、以下のように主張していることから、この点について検討する。

「一方で引用文献1?7のいずれも、単独でも組み合わせたとしても、このような層構造と材料の組み合わせについていっさい開示も示唆もしていません。」

ア しかしながら、本願明細書には、「太陽電池支持層スタック」を形成する「剛性発泡層」、「外皮層」及び「接着層」の材料について、いずれも「好ましくは……からなる群から選択される少なくとも1つの材料……」(【0012】、【0014】及び【0021】を参照。)と記載されているように、好ましい材料が単に複数列挙されているたげで、特定の組合せを示唆するものではない。
また、【0016】に「ただし、本発明の代替実施形態では、支持層スタックを形成するために、接着剤を使用せずに、発泡層を外皮層のうちの1つまたは複数と融合させることができる。」及び【0037】に「接着材層がない場合、図5の得られた支持層スタック420は、比較的軽量であり、安価に製造することができ、支持層スタックまたは太陽光モジュールの製造プロセス中に必要な材料が少なくなる。」とも記載され、接着剤を用いることなく支持スタック層を形成することが示唆されている。

イ してみると、本願明細書に記載された各材料は、当業者が「太陽電池支持層スタック」を形成する際の参考として、単に列挙されているだけで、特定の材料を組合わせることにより、予測できない効果を奏するものとはいえない。

ウ よって、請求人の上記主張は、上記「(5)判断」の判断を左右するものではない。

(7)独立特許要件についてのまとめ
本願補正発明は、当業者が引用発明Aに基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定の理由のむすび
上記「3」のとおり、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項19に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」に、本件補正前の請求項19として記載した、以下のとおりのものである(再掲)。

「太陽電池と、
前記太陽電池に隣接し、前記太陽電池を機械的に支持する太陽電池支持層スタックであって、前記太陽電池支持層スタックが、
剛性発泡層、ならびに
前記剛性発泡層に隣接して配設された1つまたは複数の外皮層
を含み、
前記剛性発泡層ならびに前記1つまたは複数の外皮層は、前記支持層スタックが前記太陽電池に隣接して配設されたときに、前記太陽電池に機械的支持を提供することが可能である、
太陽電池支持層スタックと
を備える、太陽光モジュール。」(下線は、当審で付した。)

2 引用文献
(1)引用文献に記載の事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された、国際公開第2011/039299号(2011年4月7日 国際公開。以下「引用文献1」という。)には、図とともに以下の記載がある。

ア 「

………

」(第21ないし22頁)
(日本語訳:
1. サンドイッチ要素(6)と、接着剤層(2)中に埋込まれた1つ以上の太陽電池(3)と、および稼働する間に光源に面する透明層(1)から成るソーラーモジュール(10)を作成する方法であって、
第1工程において、少なくとも1つのコア層(5)と該コア層(5)の両側に存在する少なくとも1種の外層(4)とを含有するサンドイッチ要素(6)、および接着剤層(2b)から第1複合材(7)が作成され、
第2工程において、該透明層(1)と、接着剤層(2a)および少なくとも1つの太陽電池(3)を含有する第2複合材(8)が作成され、および
第3工程において、該第1工程および該第2工程からの該複合材は、各接着剤面を介して相互に接着される
ことを特徴とする、該方法。
………
7. 硬質フォーム、バルサ材、波形の金属シート、スペーサー、または金属製、浸漬紙製もしくはプラスチック製のハニカム構造を含有する少なくとも1種のコア層(5)と、
および該コア層(5)の少なくとも両側に取付けられる少なくとも1種の外層(4)を含む複合材が、サンドイッチ要素(6)として使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
8. 繊維強化ポリウレタンが、外層(4)として使用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。)

イ 「

」(第9頁中段)
(日本語訳:
したがって、本発明に係る方法は、サンドイッチ要素(6)の十分な曲げ強度に起因して十分な安定性を有する図1に係るソーラーモジュール(10)を作成できる。十分に高い硬直性に起因して、ソーラーモジュール(10)は容易に扱え、長期間経過しても撓まない。このような複合材の場合、該複合材の長期安定性も優れている。なぜならば、サンドイッチ要素(6)の熱膨張係数と太陽電池の熱膨張係数の差は、透明層(1)と太陽電池の該差と比べて、極めて低いからである。したがって、機械的応力はほとんど生じず、層間剥離のリスクは極めて低い。)

ウ 「

(第10頁中段)
(日本語訳:
サンドイッチ要素(6)のコア層(5)に使用できる適当な材料には、例えば、硬質フォーム、好ましくはポリウレタン(PUR)またはポリスチレンフォーム、バルサ、木材、波形の金属シート、スペーサー(例えば、大きな孔、オープンセルのプラスチックフォーム製のスペーサー)、例えば金属、浸漬紙(soaked paper)またはプラスチック製のハニカム構造、あるいは、先行技術(例えばKlein,B.,Leichtbau-konstruktion,Verlag Vieweg,Braunschweig/wiesbaden,2000年,186頁以下)から既知のサンドイッチコア材料が含まれる。より好ましくは、発泡性、特に熱発泡性の、硬質フォーム(例えばPUR硬質フォーム)およびハニカム構造であり、これらは、製造されるソーラーモジュール(10)において、ドーム型または三次元デザインを可能とする。)

エ 図1は、以下のものである。


(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)アないしウの記載を踏まえて、図1を見ると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「サンドイッチ要素(6)と、
接着剤層(2)中に埋込まれた1つ以上の太陽電池(3)と、
稼働する間に光源に面する透明層(1)から成るソーラーモジュール(10)であって、
前記サンドイッチ要素(6)は、
熱発泡性硬質フォームのコア層(5)と該コア層(5)の両側に存在する繊維強化ポリウレタンの外層(4)とを含有する、
ソーラーモジュール(10)。」

3 対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「太陽電池(3)」及び「ソーラーモジュール(10)」は、それぞれ、本願発明の「太陽電池」及び「太陽光モジュール」に相当する。

イ 引用発明の「熱発泡性硬質フォームのコア層(5)」は、本願発明の「剛性発泡層」に相当する。

ウ 引用発明の「コア層(5)の両側に存在する繊維強化ポリウレタンの外層(4)」は、本願発明の「剛性発泡層に隣接して配設された複数の外皮層」に相当する。

エ 引用発明の「サンドイッチ要素(6)」は、「太陽電池(3)」を機械的に支持するものであるから、本願発明の「太陽電池支持層スタック」に相当する。

オ 以上のことから、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、相違点はない。

「太陽電池と、
前記太陽電池に隣接し、前記太陽電池を機械的に支持する太陽電池支持層スタックであって、前記太陽電池支持層スタックが、
剛性発泡層、ならびに
前記剛性発泡層に隣接して配設された複数の外皮層
を含み、
前記剛性発泡層ならびに前記複数の外皮層は、前記支持層スタックが前記太陽電池に隣接して配設されたときに、前記太陽電池に機械的支持を提供することが可能である、
太陽電池支持層スタックと
を備える、太陽光モジュール。」

4 平成28年9月21日提出の意見書における主張
請求人は、意見書(第2頁上段)において、以下のように主張していることから、この点について検討する。

「このように、引用文献1のサンドイッチ構造においては、コア層は、外皮層に対して、圧縮成型を用いて結合され、接着剤の使用については記載も示唆もしていません。」

ア しかしながら、本願発明は、その発明特定事項として「接着剤」を含むものではない。

イ よつて、請求人の上記主張は、本願発明の構成に基づかないものであるから、上記「3 対比・判断」の判断を左右するものではない。

5 まとめ
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-12 
結審通知日 2018-07-17 
審決日 2018-07-31 
出願番号 特願2014-542312(P2014-542312)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 元彦  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 新規の太陽光モジュール、支持層スタック、およびその製造方法  
代理人 高岡 亮一  
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