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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1346979 |
審判番号 | 不服2017-11762 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-07 |
確定日 | 2018-12-13 |
事件の表示 | 特願2015- 57403「ヒートシンク、放熱構造、冷却構造及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月 6日出願公開、特開2016-178208〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年3月20日の出願であって、平成28年4月18日付け拒絶理由通知に対して同年6月23日付けで手続補正がなされ、同年8月24日付け拒絶理由通知に対して同年10月24日付けで手続補正がなされ、更に、同年12月9日付け最後の拒絶理由通知に対して平成29年2月17日付けで手続補正がなされたが、同年4月28日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年8月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 平成29年8月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年8月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成29年8月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであり、請求項1については、 本件補正前に、 「【請求項1】 基板上に設置された冷却対象の発熱体上に設けられ、送風部から送風される風の送風方向に沿って複数の領域を有し、各領域の熱抵抗が風下方向に向かって低くなるよう、各領域が構成され、前記複数の領域は、送風方向における長さが風下方向に向かって長くなるよう、各領域が形成され、前記各領域間が分離されている ことを特徴とするヒートシンク。」 とあったところを、 本件補正により、 「【請求項1】 基板上に設置された冷却対象の発熱体上に設けられ、送風部から送風される風の送風方向に沿って複数の領域を有し、各領域の熱抵抗が風下方向に向かって低くなるよう、各領域が構成され、前記複数の領域は、送風方向における長さが風下方向に向かって長くなるよう、各領域が形成され、前記各領域間が分離され、 前記複数の領域のうち少なくとも一つで、前記発熱体が送風方向と交わる方向に複数設けられていることを特徴とするヒートシンク。」 とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。 上記補正の内容は、本件補正前の請求項1において、「複数の領域」について、「前記複数の領域のうち少なくとも一つで、前記発熱体が送風方向と交わる方向に複数設けられている」との限定を付加したものである。 よって、本件補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項の限定を目的にするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-314278号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0002】 【従来の技術】以下に従来の空冷装置について説明する。図11は従来の電子部品の空冷装置の基本構成1を示す斜視図である。前記従来の電子部品の空冷装置は、複数の発熱する電子部品1を搭載した基板2と、前記電子部品1のうち少なくとも一つの前記電子部品1の上に配置されたヒートシンク3と、前記ヒートシンク3に送風する冷却ファン4によって構成されている。」 イ.「【0006】 【発明が解決しようとする課題】従来の空冷装置では図13および図14に示すように、冷却風がヒートシンクを通過する際、前記ヒートシンクの周囲の圧力が高くなるため、冷却風は周囲に拡散し、且つ流速も低下する。そのため、発熱の大きな電子部品が複数個ある場合には図11に示すように下流側の前記ヒートシンクの大型化や、図12に示すように発熱の大きな前記電子部品個々に冷却ファンを取り付けるなどの対策がとられている。しかしながら、基板の高密度実装化により、個々の前記電子部品が要求する冷却能力は増大しているが、電子機器の小型化や前記電子部品の信頼性の問題から所望の機能を有する大型の前記ヒートシンクを使用できないという問題点を有していた。また、冷却ファンを使用の場合には、上記実装空間の制約の他に騒音および消費電力の増大という問題点も有り、この問題は冷却ファンの使用個数に比例して増大する。」 ウ.「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1の実施例における電子部品の空冷装置の基本構成を示す斜視図 【図2】本発明の第2の実施例における電子部品の空冷装置の基本構成を示す斜視図 【図3】本発明の第1の実施例におけるヒートシンクの形状を示す斜視図 【図4】本発明の第1の実施例における空冷装置の基本構成を示す上面図 【図5】本発明の第1の実施例における空冷装置の基本構成を示す図 【図6】本発明の第2の実施例におけるヒートシンクの形状を示す斜視図 【図7】本発明の第2の実施例における空冷装置の基本構成を示す上面図 【図8】本発明の第2の実施例における空冷装置の基本構成を示す側面図 【図9】本実施例を投射型映像装置に適用した場合の斜視図 【図10】本実施例を投射型映像装置に適用した場合の側面図 【図11】従来の電子部品の空冷装置の基本構成1を示す正面図 【図12】従来の電子部品の空冷装置の基本構成2を示す正面図 【図13】従来の電子部品の空冷装置の基本構成1を示す上面図 【図14】従来の電子部品の空冷装置の基本構成1を示す側面図」 エ.【図11】 オ.【図13】 カ.【図14】 上記アないしカから、引用例1には以下の事項が記載されている。 ・上記アによれば、電子部品の空冷装置に係るものであり、電子部品の空冷装置は、ヒートシンク3を備えて構成されるものである。 ・上記アによれば、複数の発熱する電子部品1は基板2に搭載されるものである。 ・上記アによれば、ヒートシンク3は、電子部品1のうち少なくとも一つの電子部品1の上に配置されるものである。 ・上記アによれば、冷却ファン4はヒートシンク3に送風するものである。 ・上記ウによれば、図11、図13、図14は、それぞれ、電子部品の空冷装置の基本構成の正面図、上面図、側面図を表すものであり、図13、図14によれば、ヒートシンク3として、冷却ファン4から送風される風の送風方向に沿って、上流側に1つのヒートシンク3(図13で左側に存在するヒートシンク3)が存在し、下流側に2つのヒートシンク3(図13で右上及び右下に存在するヒートシンク3)が存在するものである。そして、上流側のヒートシンク3(図13で左側に存在するヒートシンク3)と下流側の2つのヒートシンク3の一方(図13で右上または右下に存在するヒートシンク3)との位置関係を鑑みれば、上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3が存在するものである。 ・上記イによれば、下流側のヒートシンクは大型化されるものであり、図11、図13、図14によれば、下流側のヒートシンク3は、上流側のヒートシンク3よりも、送風方向における長さ(図13の左右方向の長さ)が長く、送風方向における幅(図13の上下方向の長さ)が幅広であり、送風方向における高さ(図14の上下方向の長さ)が高く、送風方向におけるフィンの数が多い(図11、図13)ものである。 ・図11、図13、図14によれば、上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3は分離されているものである。 そうすると、上記摘示事項を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「電子部品の空冷装置を構成するヒートシンク3であって、 ヒートシンク3は、基板2に搭載された複数の発熱する電子部品1のうち少なくとも一つの電子部品1の上に配置され、 ヒートシンク3として、ヒートシンク3に送風する冷却ファン4から送風される風の送風方向に沿って、上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3が存在し、 下流側のヒートシンク3は、上流側のヒートシンク3よりも、送風方向における長さが長く、送風方向における幅が幅広であり、送風方向における高さが高く、送風方向におけるフィンの数が多く、 上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3は分離されている ヒートシンク3。」 3.対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「基板2」は、本願補正発明の「基板」に相当する。また、引用発明の「複数の発熱する電子部品1」は、電子部品の空冷装置により冷却されるものであるから、本願補正発明の「冷却対象の発熱体」に相当する。 (2)引用発明の「上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3」の集合体は、全体としてヒートシンクとして機能するものであるから、本願補正発明の「ヒートシンク」に相当する。 そして、引用発明の「ヒートシンク3」は、基板2に搭載された複数の発熱する電子部品1のうち少なくとも一つの電子部品1の上に配置されるものであるから、「上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3」の集合体も、基板2に搭載された複数の発熱する電子部品1の上に配置されるものである。そうすると、引用発明の「上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3」の集合体は、本願補正発明の「ヒートシンク」と同様に、「基板上に設置された冷却対象の発熱体上に設けられ」ているものであるといえる。 また、引用発明の「上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3」のそれぞれは、上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3の集合体における領域を形成しているものであるといえるから、本願補正発明の「複数の領域」に相当する。さらに、引用発明の「ヒートシンク3に送風する冷却ファン4」は、本願補正発明の「送風部」に相当する。そして、引用発明の「上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3」は、ヒートシンク3に送風する冷却ファン4から送風される風の送風方向に沿って存在するものであるから、本願補正発明の「複数の領域」と同様に、「送風部から送風される風の送風方向に沿って」いるものであるといえる。 よって、引用発明の「ヒートシンク3として、ヒートシンク3に送風する冷却ファン4から送風される風の送風方向に沿って、上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3が存在」することは、本願補正発明の「基板上に設置された冷却対象の発熱体上に設けられ、送風部から送風される風の送風方向に沿って複数の領域を有」するものである。 (3)引用発明の「上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3」について、「下流側のヒートシンク3は、上流側のヒートシンク3よりも、送風方向における長さが長く、送風方向における幅が幅広であり、送風方向における高さが高く、送風方向におけるフィンの数が多い」ことにより、下流側のヒートシンク3は、上流側のヒートシンク3よりも、表面積が大きいことは明らかである。 そして、ヒートシンクの熱抵抗がヒートシンクの表面積に反比例するものであることは技術常識であるから、引用発明において、表面積が大きな下流側のヒートシンク3は、表面積が小さな上流側のヒートシンク3よりも、熱抵抗が低いものである。 したがって、引用発明の「下流側のヒートシンク3は、上流側のヒートシンク3よりも、送風方向における長さが長く、送風方向における幅が幅広であり、送風方向における高さが高く、送風方向におけるフィンの数が多」いことは、本願補正発明の「各領域の熱抵抗が風下方向に向かって低くなるよう、各領域が構成され」ているものであるといえる。 (4)引用発明の「下流側のヒートシンク3は、上流側のヒートシンク3よりも、送風方向における長さが長」いことは、本願補正発明の「前記複数の領域は、送風方向における長さが風下方向に向かって長くなるよう、各領域が形成され」ていることに相当する。 (5)引用発明の「上流側のヒートシンク3と下流側のヒートシンク3は分離されて」いることは、本願補正発明の「前記各領域間が分離され」ていることに相当する。 (6)本願補正発明は「前記複数の領域のうち少なくとも一つで、前記発熱体が送風方向と交わる方向に複数設けられている」のに対し、引用発明はその旨の特定はされていない。 そうすると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「基板上に設置された冷却対象の発熱体上に設けられ、送風部から送風される風の送風方向に沿って複数の領域を有し、各領域の熱抵抗が風下方向に向かって低くなるよう、各領域が構成され、前記複数の領域は、送風方向における長さが風下方向に向かって長くなるよう、各領域が形成され、前記各領域間が分離されていることを特徴とするヒートシンク。」 <相違点> 本願補正発明は「前記複数の領域のうち少なくとも一つで、前記発熱体が送風方向と交わる方向に複数設けられている」のに対し、引用発明はその旨の特定がされていない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 一般に、1つのヒートシンクに何個の発熱体を配置するかは、ヒートシンクの大きさや放熱能力、各発熱体の大きさや発熱量などを考慮して、当業者が適宜選択し得る設計事項であるところ、例えば、特開2010-40188号公報(段落【0008】ないし【0016】、【図3】、【図4】参照)及び特開2010-203786号公報(段落【0033】、【0038】、【図2】ないし【図4】参照)にそれぞれ示されるように、送風部から送風される風の送風方向に沿って複数のヒートシンクを設ける際に、少なくとも1つのヒートシンクに、送風方向と交わる方向に複数の発熱体を設けることは、周知の技術事項である。 したがって、引用発明において、上流側のヒートシンク3や下流側のヒートシンク3(本願補正発明の「複数の領域」に相当)の少なくとも1つに、送風方向と交わる方向に複数の発熱する電子部品1(本願補正発明の「発熱体」に相当)を設けることは、当業者が容易に想到し得ることである。 よって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項により当業者が容易になし得たものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明と周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成29年8月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成29年2月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された特開2002-314278号公報(引用例1)の記載事項は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の「前記複数の領域のうち少なくとも一つで、前記発熱体が送風方向と交わる方向に複数設けられている」(上記相違点に対応。)との限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項は、上記「第2 3.」に記載したとおり、引用例1に記載された発明と全て一致し相違する点はないので、引用例1に記載された発明と実質同一である。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-10-15 |
結審通知日 | 2018-10-16 |
審決日 | 2018-10-29 |
出願番号 | 特願2015-57403(P2015-57403) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 馬場 慎、秋山 直人 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
東 昌秋 井上 信一 |
発明の名称 | ヒートシンク、放熱構造、冷却構造及び装置 |
代理人 | 下坂 直樹 |
代理人 | 机 昌彦 |