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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1347000
審判番号 不服2017-19320  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-26 
確定日 2018-12-13 
事件の表示 特願2016-188368号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月5日出願公開、特開2018- 50766号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年9月27日に出願された特願2016-188368号であって、平成29年3月1日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月19日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、同年7月14日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年9月13日付けで前記平成29年7月14日付け手続補正が却下されるとともに、同日付け(発送日:平成29年9月27日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月26日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年12月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年12月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
遊技球が流下可能な遊技領域を前面に有する遊技盤と、
発射装置から発射された遊技球を前記遊技領域へと案内する案内路と、
遊技球が衝突することでその遊技球の流下方向を変更可能な樹脂突部と、を備え、
前記樹脂突部には、前記遊技領域内の遊技球が前記案内路へ逆戻りすることを抑制する球戻り抑制部が設けられ、
前記樹脂突部として、少なくとも、第1樹脂突部と、前記第1樹脂突部よりも前記案内路の出口に近い側に配される第2樹脂突部と、を有し、
前記第2樹脂突部のうち前記第1樹脂突部側を向く部分には、前記第1樹脂突部へ近づくに従って下るように傾斜する第1傾斜面が形成され、
前記球戻り抑制部は、少なくとも前記第2樹脂突部に設けられて、前記第1傾斜面の上端部から突出し、
前記第1樹脂突部のうち前記第2樹脂突部側を向く部分には、鉛直方向に沿って延びる第1鉛直面が形成されていることを特徴とする遊技機。」(平成29年4月24日付けの手続補正)
から、
「【請求項1】
遊技球が流下可能な遊技領域を前面に有する遊技盤と、
発射装置から発射された遊技球を前記遊技領域へと案内する案内路と、
遊技球が衝突することでその遊技球の流下方向を変更可能な樹脂突部と、を備え、
前記樹脂突部には、前記遊技領域内の遊技球が前記案内路へ逆戻りすることを抑制する球戻り抑制部が設けられ、
前記樹脂突部として、少なくとも、第1樹脂突部と、前記第1樹脂突部よりも前記案内路の出口に近い側に配される第2樹脂突部と、を有し、
前記第2樹脂突部のうち前記第1樹脂突部側を向く部分には、前記第1樹脂突部へ近づくに従って下るように傾斜する第1傾斜面が形成され、
前記球戻り抑制部は、少なくとも前記第2樹脂突部に設けられて、前記第1傾斜面の上端部から突出すると共に、その上側に遊技球が2個同時に通過できないスペースを形成し、
前記第1樹脂突部のうち前記第2樹脂突部側を向く部分には、鉛直方向に沿って延びる第1鉛直面が形成され、
前記球戻り抑制部は、前記第1樹脂突部側を向く面として、前記第1傾斜面とは異なる角度で傾斜する傾斜面を有し、
前記球戻り抑制部の前記第1傾斜面からの突出方向は、前記案内路の出口から発射された遊技球の発射方向と異なる方向へ向かうように構成されていることを特徴とする遊技機。」(平成29年12月26日付けの手続補正)
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。

2 補正の適否について
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「球戻り抑制部」に関して、「その上側に遊技球が2個同時に通過できないスペースを形成し」、「前記第1樹脂突部側を向く面として、前記第1傾斜面とは異なる角度で傾斜する傾斜面を有し」、及び、「前記第1傾斜面からの突出方向は、前記案内路の出口から発射された遊技球の発射方向と異なる方向へ向かうように構成されている」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0021】、【0044】等の記載、及び、図9ないし11等の記載からみて、新規事項を追加するものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)引用文献及び引用発明
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2016-54952号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機、アレンジボール機等の遊技機に関するものである。」

(イ)「【0013】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0014】
図1?図13は本発明をパチンコ機に採用した第1の実施形態を例示する。パチンコ機は、図1、図2に示すように矩形状の外枠1と、この外枠1の前側にヒンジ2により縦軸廻りに開閉自在に枢着された前枠3とを備えている。なお、外枠1と前枠3とにより、遊技機本体1,3が構成されている。
【0015】
前枠3は上部側に遊技盤装着部3aを有し、その遊技盤装着部3aに遊技盤4が前側又は後側から着脱自在に装着されている。また、前枠3の前側には、遊技盤4の前側に対応する第1前扉5と、この第1前扉5の下側に配置された第2前扉6とが、ヒンジ2と略同一軸心上のヒンジ7により縦軸廻りに開閉自在に枢支されている。なお、上下の第1前扉5と第2前扉6とを一体にして、一つの前扉とすることも可能である。
【0016】
第2前扉6の前側には発射用の遊技球を貯留する球供給皿8が配置され、その側方に遊技球を発射する発射手段の発射ハンドル9が設けられている。・・・
【0018】
遊技盤4の前面には、図2?図5に示すように、発射手段から発射された遊技球を案内するガイドレール15と、略円弧状の内周面を有する外飾り部材16とが周方向に装着され、そのガイドレール15と外飾り部材16との内側が略円形状の遊技領域11となっている。ガイドレール15は内レール17と外レール18とを有する。・・・
【0021】
前構造体23は遊技領域11の左右方向の略中央で開口部37に対応して遊技盤4の前側に配置されている。この前構造体23の左右両側の遊技領域11には、図3に示すように、前構造体23と左側のガイドレール15との間に左側通路38が、前構造体23と右側の外飾り部材16との間に右側通路39が夫々形成されており、遊技領域11の上部に打ち込まれた遊技球が、その左側通路38、右側通路39の何れかを経て落下した後、前構造体23の下側の遊技領域11で合流するようになっている。・・・
【0025】
なお、支持枠40、前部材41は光透過性を有する透明、半透明の合成樹脂材料により成型され、必要に応じてメッキ、シール材等の遮光手段により装飾部、遮光部が設けられている。また、台板43は外周部が遊技盤4の前面に当接する等、その一部が遊技盤4の前面に当接すればよいし、略全周が遊技盤4の前面に当接してもよい。また、補強壁部45は台板43に周方向の全周に設けてもよいし、その一部に設けてもよい。」

(ウ)「【0040】
左側通路38は、図3、図4、図9に示すように、ガイドレール15の内レール17の上端部の上下近傍に対応する打ち込み領域60と、この打ち込み領域60の下側に配置された減速領域61と、この減速領域61の下側で多数の遊技釘が設けられた釘打ち領域62とを有する。
【0041】
台板43は、図4?図9に示すように、打ち込み領域60及び減速領域61では支持枠40の前周壁部44から内レール17の近傍、及び内レール17の延長線上の近傍まで張り出している。この打ち込み領域60及び減速領域61の台板43は、遊技盤4の前面に装着された通路板38Aを構成し、その打ち込み領域60及び減速領域61の通路板38Aに、前側へと突出する障害突起(遊技部品)63、内外通路壁64,65が一体的に設けられている。・・・
【0044】
障害突起63は、ガイドレール15から遊技領域11に打ち込まれた遊技球を衝突させて衝撃を緩和し、又は遊技球の落下方向に変化を与えるためのもので、図3?5、図8に示すように、前側が閉塞され裏側に開口する角柱状、その他の適宜形状の中空状に構成され、内レール17の戻り防止具20よりも上側で打ち込み領域60に外レール18の円弧方向に所定の間隔をおいて複数個(2個)設けられている。
【0045】
各障害突起63は上当接板部66から突出する周壁部63aと、この周壁部63aの前端側を塞ぐ前壁部(支持壁)63bとを一体に有する中空の角柱状であり、その突出量は遊技球が先端部に衝突可能な長さになっている。即ち、図7に示すように、障害突起63の突出量Aは、遊技球の略直径(2R)程度であり、この障害突起63の先端とガラス板13との間隔Bは遊技球の半径R未満の略半径近くである。そのため周壁部63aの先端側が遊技球の衝突可能な衝突部63cとなっている。
【0046】
なお、周壁部63aの基部には、台板43と上当接板部66との間を補強する肉盛り状の補強部63dが略全周に形成されており、その補強部63dの外周面は遊技球の半径R未満で滑らかに変化する円弧状に形成されている。
【0047】
従って、遊技球が障害突起63の周壁部63aに直接衝突する場合にはその前後方向の略中央又はそれよりも前側に衝突し、またガラス板13に接触した状態で衝突する場合にも、その遊技球の重心位置側が周壁部63a上に略位置するように衝突する。また、遊技球が周壁部63aに衝突する衝突部63cの直下に前壁部63bがあるか、又は衝突部63cの近傍に前壁部63bがあるため、遊技球の衝撃による周壁部63aの損傷を極力少なくすることができる。
【0048】
支持枠40の打ち込み領域60に対応する前周壁部44は、図4に示すように、各障害突起63との間に遊技球が通過し得る間隔をおいて凹部44aと凸部44bとが上側から下側へと交互に形成されると共に、その下側に戻り防止具20と対向する傾斜部44cが設けられ、凹部44a、凸部44b、傾斜部44cを経由しながら遊技球が減速領域61へと斜め下方に落下するようになっている。・・・
【0069】
左打ち時に左側通路38の打ち込み領域60に打ち込まれた遊技球は、2個の障害突起63の一方又は両方に衝突するか、障害突起63に衝突せずに前構造体23の打ち込み領域60側の前周壁部44に衝突した後、落下方向を適宜変えながら打ち込み領域60の下側を経て減速領域61へと移動する。」

(エ)図4、5、17は次のものである。
【図4】

【図5】


(オ)図4の2つの障害突起63について
a 図4の2つの障害突起63に関して、各箇所を以下のように呼ぶこととする。
(a)図4の2つの障害突起63のうち、図面視左側の障害突起63を以下「左側障害突起63」と呼ぶとともに、図面視右側の障害突起63を以下「右側障害突起63」と呼ぶ。
(b)「左側障害突起63」のガイドレール15側を向いた周壁部63aの「右側障害突起63」側にある凸状の部分を以下「左側障害突起63の凸部」と呼ぶ。
(c)「右側障害突起63」の左下側の「左側障害突起63」側を向いた周壁部63aを以下「右側障害突起63の左下側周壁部63a」と呼ぶとともに、「左側障害突起63」の「左側障害突起63の凸部」の右下に続く「右側障害突起63」側を向いた周壁部63aを以下「左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」と呼ぶ。

b そうすると、図4の2つの障害突起63付近は次の図のとおりとなる(以下「図4´」という。)
【図4´】


c 上記(ウ)の記載を踏まえて、上記(エ)の図4を見ると、「左側障害突起63の凸部」は、その形状から見て、ガイドレール15から右側障害突起63付近に落下した遊技球が、「左側障害突起63の凸部」の右側から「左側障害突起63の凸部」に衝突した際に、遊技領域11内の遊技球がガイドレール15側へ逆戻りすることを抑制することは明らかであるから、遊技領域11内の遊技球がガイドレール15へ逆戻りすることを抑制する球戻り抑制部であると認められる。
そうすると、上記(ア)ないし(ウ)の記載を踏まえて、上記(エ)の図4(図4´)を見ると、次のことが見てとれる。
(a)障害突起63として、「右側障害突起63」と、前記「右側障害突起63」よりも前記戻り防止具20に近い側に配される「左側障害突起63」とを有すること。
(b)「左側障害突起63」には、「遊技領域11内の遊技球がガイドレール15へ逆戻りすることを抑制する球戻り抑制部である左側障害突起63の凸部」が設けられること。
(c)「左側障害突起63」のうち「右側障害突起63」側を向く部分には、傾斜する「左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」が形成されること。
(d)「左側障害突起63の凸部」は、「左側障害突起63」に設けられて、「左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」の上端部から突出すること。
(e)「右側障害突起63」のうち「左側障害突起63」側を向く部分には、「右側障害突起63の左下側周壁部63a」が形成されること。
(f)「左側障害突起63の凸部」は、「右側障害突起63側」を向く面として、「左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」とは異なる角度で傾斜する傾斜面を有すること。
(g)「左側障害突起63の凸部」の「左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」からの突出方向は、戻り防止具20から発射された遊技球の発射方向と異なる方向へ向かうように構成されていること。

(カ)上記(ア)ないし(ウ)の記載と上記(オ)の検討を踏まえて、上記(エ)の図4、5、17を見ると、「左側障害突起63の凸部」の上側とガイドレール15の外レール18との間には、図面上、遊技球約2個分のスペースがあることが見てとれる。

(キ)「台板43は、図4?図9に示すように、打ち込み領域60及び減速領域61では支持枠40の前周壁部44から内レール17の近傍、及び内レール17の延長線上の近傍まで張り出している。この打ち込み領域60及び減速領域61の台板43は、遊技盤4の前面に装着された通路板38Aを構成し、その打ち込み領域60及び減速領域61の通路板38Aに、前側へと突出する障害突起(遊技部品)63、内外通路壁64,65が一体的に設けられている。」(上記(ウ)段落【0041】)との記載、及び、「支持枠40、前部材41は光透過性を有する透明、半透明の合成樹脂材料により成型され、必要に応じてメッキ、シール材等の遮光手段により装飾部、遮光部が設けられている。また、台板43は外周部が遊技盤4の前面に当接する等、その一部が遊技盤4の前面に当接すればよいし、略全周が遊技盤4の前面に当接してもよい。また、補強壁部45は台板43に周方向の全周に設けてもよいし、その一部に設けてもよい。」(上記(イ)段落【0025】)との記載から、支持枠40は合成樹脂材料により成型され、前記支持枠40の前周壁部44から台板43が張り出し、前記台板43は通路板38Aを構成し、前記通路板38Aに障害突起(遊技部品)63が一体的に設けられているといえる。
したがって、引用文献1には、「障害突起63」は、合成樹脂材料により成型されたものであることが記載されている。

(ク)引用発明
上記(ア)ないし(キ)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「矩形状の外枠1と、この外枠1の前側にヒンジ2により縦軸廻りに開閉自在に枢着された前枠3とを備え、
前記前枠3の前側には、遊技盤4の前側に対応する第1前扉5と、この第1前扉5の下側に配置された第2前扉6とが、開閉自在に枢支され、
前記第2前扉6の前側には発射用の遊技球を貯留する球供給皿8が配置され、その側方に遊技球を発射する発射手段の発射ハンドル9が設けられ、
前記遊技盤4の前面には、発射手段から発射された遊技球を案内するガイドレール15と、略円弧状の内周面を有する外飾り部材16とが周方向に装着され、そのガイドレール15と外飾り部材16との内側が略円形状の遊技領域11となっているとともに、ガイドレール15は内レール17と外レール18とを有し、
前記遊技領域11の上部に打ち込まれた遊技球が、その左側通路38、右側通路39の何れかを経て落下した後、前構造体23の下側の遊技領域11で合流するようになっていて、
前記ガイドレール15の内レール17の上端部の上下近傍に対応する打ち込み領域60と、この打ち込み領域60の下側に配置された減速領域61と、この減速領域61の下側で多数の遊技釘が設けられた釘打ち領域62とを有し、
前記打ち込み領域60及び減速領域61の台板43は、遊技盤4の前面に装着された通路板38Aを構成し、その打ち込み領域60及び減速領域61の通路板38Aに、前側へと突出する障害突起(遊技部品)63、内外通路壁64,65が一体的に設けられ、
前記障害突起63は、ガイドレール15から遊技領域11に打ち込まれた遊技球を衝突させて衝撃を緩和し、又は遊技球の落下方向に変化を与え、前側が閉塞され裏側に開口する角柱状、その他の適宜形状の中空状に構成され、内レール17の戻り防止具20よりも上側で打ち込み領域60に外レール18の円弧方向に所定の間隔をおいて複数個(2個)設けられ、
前記各障害突起63は上当接板部66から突出する周壁部63aと、この周壁部63aの前端側を塞ぐ前壁部(支持壁)63bとを一体に有する中空の角柱状であり、周壁部63aの先端側が遊技球の衝突可能な衝突部63cとなっていて、
前記障害突起(遊技部品)63は合成樹脂材料により成型され、
前記障害突起63として、右側障害突起63と、前記右側障害突起63よりも前記戻り防止具20に近い側に配される左側障害突起63とを有し、
前記左側障害突起63には、遊技領域11内の遊技球がガイドレール15へ逆戻りすることを抑制する球戻り抑制部である左側障害突起63の凸部が設けられ、
前記左側障害突起63のうち右側障害突起63側を向く部分には、傾斜する左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63aが形成され、
前記左側障害突起63の凸部は、左側障害突起63に設けられて、左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63aの上端部から突出し、
前記左側障害突起63の凸部の上側とガイドレール15の外レール18との間には、遊技球約2個分のスペースがあり、
前記右側障害突起63のうち左側障害突起63側を向く部分には、右側障害突起63の左下側周壁部63aが形成され、
前記左側障害突起63の凸部は、右側障害突起63側を向く面として、左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63aとは異なる角度で傾斜する傾斜面を有し、
前記左側障害突起63の凸部の左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63aからの突出方向は、戻り防止具20から発射された遊技球の発射方向と異なる方向へ向かうように構成されている、遊技機。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2008-161467号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技球を遊技領域内で流下させて遊技を行う弾球遊技機に関する。」

(イ)「【0067】
ベース板54には、第1?第3の樹脂製障害突部51?53が一体形成されている。これら第1?第3の樹脂製障害突部51?53はベース板54から前方に突出し、図8に示すように、ガイドレール12における円弧形案内部12Eに沿って並べられている。そして、第1の樹脂製障害突部51が最も右側かつ上方に位置し、その斜め左下に第2の樹脂製障害突部52が位置し、さらに、その斜め左下に第3の樹脂製障害突部53が位置している。また、各樹脂製障害突部51?53は、共にベース板54から前方に起立した角筒状の筒壁(図4の符号51T参照)の先端を天井壁(図4の符号51S参照)で塞いだ構造になっている。
【0068】
第1?第3の樹脂製障害突部51?53と円弧形案内部12Eとの間は、球進入口12Kから遊技領域R1内に進入した遊技球が円弧形案内部12Eに沿って移動するための遊技球通過路R2になっている。そして、この遊技球通過路R2を間に挟んで第1?第3の樹脂製障害突部51?53と円弧形案内部12Eとが対峙しており、それら第1?第3の樹脂製障害突部51?53と円弧形案内部12Eとの間からは、従来は存在していた障害壁11Nが排除されている。・・・
【0070】
第1の樹脂製障害突部51は、前方から見ると全体が略三角形になっており、その略三角形の一角部を面取りして、本発明に係る第1受球面51Aが形成されている。第1受球面51Aは、水平方向かつ球進入口12K側を向いた平面になっている。この第1受球面51Aは、遊技者が、遊技領域R1内に進入した遊技球を直接衝突させるための、所謂、「ぶっ込み位置」に相当する。また、第1の樹脂製障害突部51のうち第1受球面51Aの下方には、第1反射面51Bが形成されている。第1反射面51Bは、第1受球面51Aの下端部から右斜め下方に向かって僅かに傾斜している。
【0071】
第2の樹脂製障害突部52は、前方から見ると全体が4辺の長さが異なった略四角形になっており、その一辺に相当する部分が、右斜め上方の第1の樹脂製障害突部51側を向いた第2受球面52Aになっている。そして、図9に示すように、球進入口12Kから放物線を描いて第1受球面51Aに衝突した遊技球が第2の樹脂製障害突部52に向かって跳ね返ったときに、その遊技球を第2受球面52Aが受け止めて、第1の樹脂製障害突部51側に跳ね返す。また、第2受球面52Aは、第1受球面51Aとの間の開き角度が90度以下になるように傾斜している。そして、第2受球面52Aと第1反射面51Bとの間は、下方に向かうに従って徐々に接近しており、それら第2受球面52Aと第1反射面51Bとの間の最小の幅(図8のL1参照)は、遊技球1球分以上、1.5球分未満(本実施形態では、13.78[mm]未満)になっている。さらには、第2の樹脂製障害突部52のうち第3の樹脂製障害突部53側を向いた角部は面取りされ、その面取り面が本発明に係る第2反射面52Bになっている。その第2反射面52Bは、右斜め下方に向かって傾斜している。・・・
【0075】
第1受球面51Aに衝突した遊技球の一部は、図9の実線矢印で示したように、第2の樹脂製障害突部52の第2受球面52Aに向かって跳ね返り、そこで再び第1の樹脂製障害突部51に跳ね返され、さらに、その遊技球が第1の樹脂製障害突部51の第1反射面51Bで第2受球面52A側に跳ね返される。このようにして、遊技球が第1と第2の樹脂製障害突部52の間を往復するように複数回跳ね返されて勢いを抑えられる。また、第1反射面51Bと第2受球面52Aとの間隔は、下方に向かうに従って徐々に狭くなっているので、遊技球が第1と第2の樹脂製障害突部51,52の間を下方に向かうに従って往復頻度が高まり効率良く遊技球の勢いが抑えられる。そして、樹脂製表示枠40の枠内進入規制壁40B上へと流下する。」

(ウ)図9は次のものである。
【図9】


(エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2に記載の事項」という。)が記載されている。
「弾球遊技機において、第1受球面51Aに衝突した遊技球の一部は、第2の樹脂製障害突部52の第2受球面52Aに向かって跳ね返り、そこで再び第1の樹脂製障害突部51に跳ね返され、さらに、その遊技球が第1の樹脂製障害突部51の第1反射面51Bで第2受球面52A側に跳ね返され、第1反射面51Bと第2受球面52Aとの間隔は、下方に向かうに従って徐々に狭くなっているので、遊技球が第1と第2の樹脂製障害突部51,52の間を下方に向かうに従って往復頻度が高まり効率良く遊技球の勢いが抑えられ、樹脂製表示枠40の枠内進入規制壁40B上へと流下する点。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「矩形状の外枠1と、この外枠1の前側にヒンジ2により縦軸廻りに開閉自在に枢着された前枠3とを備え、前記前枠3の前側には、遊技盤4の前側に対応する第1前扉5と、この第1前扉5の下側に配置された第2前扉6とが、開閉自在に枢支され」、「前記遊技領域11の上部に打ち込まれた遊技球が、その左側通路38、右側通路39の何れかを経て落下した後、前構造体23の下側の遊技領域11で合流するようになってい」る「遊技盤4」は、遊技球が落下する遊技領域11を前側に備えるから、本願補正発明の「遊技球が流下可能な遊技領域を前面に有する遊技盤」に相当する。

イ 引用発明の「前記第2前扉6の前側には発射用の遊技球を貯留する球供給皿8が配置され、その側方に遊技球を発射する発射手段の発射ハンドル9が設けられ、前記遊技盤4の前面には、発射手段から発射された遊技球を案内するガイドレール15と、略円弧状の内周面を有する外飾り部材16とが周方向に装着され、そのガイドレール15と外飾り部材16との内側が略円形状の遊技領域11となっているとともに、ガイドレール15は内レール17と外レール18とを有し」ている「ガイドレール15」は、発射手段から発射された遊技球を遊技領域11へと案内するから、本願補正発明の「発射装置から発射された遊技球を前記遊技領域へと案内する案内路」に相当する。

ウ 引用発明の「ガイドレール15から遊技領域11に打ち込まれた遊技球を衝突させて衝撃を緩和し、又は遊技球の落下方向に変化を与え」る「合成樹脂材料により成型され」た「障害突起63」は、本願補正発明の「遊技球が衝突することでその遊技球の流下方向を変更可能な樹脂突部」に相当する。

エ 引用発明の「合成樹脂材料により成型され」た「左側障害突起63」に、「遊技領域11内の遊技球がガイドレール15へ逆戻りすることを抑制する球戻り抑制部である左側障害突起63の凸部」が設けられることは、本願補正発明の「前記樹脂突部には、前記遊技領域内の遊技球が前記案内路へ逆戻りすることを抑制する球戻り抑制部が設けられ」ることに相当する。

オ 引用発明の「合成樹脂材料により成型され」た「前記障害突起63として、右側障害突起63と、前記右側障害突起63よりも前記戻り防止具20に近い側に配される左側障害突起63とを有し」ていることは、引用発明の戻り防止具20の配される位置が本願補正発明の案内路の出口に対応するから、本願補正発明の「前記樹脂突部として、少なくとも、第1樹脂突部と、前記第1樹脂突部よりも前記案内路の出口に近い側に配される第2樹脂突部と、を有し」ていることに相当する。

カ 引用発明の「合成樹脂材料により成型され」た「前記左側障害突起63のうち右側障害突起63側を向く部分には、傾斜する左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63aが形成され」ることは、本願補正発明の「前記第2樹脂突部のうち前記第1樹脂突部側を向く部分には、前記第1樹脂突部へ近づくに従って下るように傾斜する第1傾斜面が形成され」ることと、「前記第2樹脂突部のうち前記第1樹脂突部側を向く部分には、傾斜する第1傾斜面が形成され」る点で一致する。

キ 引用発明の「合成樹脂材料により成型され」た「前記左側障害突起63の凸部は、左側障害突起63に設けられて、左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63aの上端部から突出し、前記左側障害突起63の凸部の上側とガイドレール15の外レール18との間には、遊技球約2個分のスペースがあ」ることは本願補正発明の「前記球戻り抑制部は、少なくとも前記第2樹脂突部に設けられて、前記第1傾斜面の上端部から突出すると共に、その上側に遊技球が2個同時に通過できないスペースを形成し」ていることと、「前記球戻り抑制部は、前記第2樹脂突部に設けられて、前記第1傾斜面の上端部から突出すると共に、その上側に遊技球約2個分のスペースを形成し」ている点で一致する。

ク 引用発明の「前記右側障害突起63のうち左側障害突起63側を向く部分には、右側障害突起63の左下側周壁部63aが形成され」ることは、本願補正発明の「前記第1樹脂突部のうち前記第2樹脂突部側を向く部分には、鉛直方向に沿って延びる第1鉛直面が形成され」ることと、「前記第1樹脂突部のうち前記第2樹脂突部側を向く部分には、第1面が形成され」る点で一致する。

ケ 引用発明の「合成樹脂材料により成型され」た「前記左側障害突起63の凸部は、右側障害突起63側を向く面として、左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63aとは異なる角度で傾斜する傾斜面を有し」ていることは、本願補正発明の「前記球戻り抑制部は、前記第1樹脂突部側を向く面として、前記第1傾斜面とは異なる角度で傾斜する傾斜面を有し」ていることに相当する。

コ 引用発明の「合成樹脂材料により成型され」た「前記左側障害突起63の凸部の左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63aからの突出方向は、戻り防止具20から発射された遊技球の発射方向と異なる方向へ向かうように構成されている」ことは、本願補正発明の「前記球戻り抑制部は、前記第1樹脂突部側を向く面として、前記第1傾斜面とは異なる角度で傾斜する傾斜面を有し」ていることは、本願補正発明の「前記球戻り抑制部の前記第1傾斜面からの突出方向は、前記案内路の出口から発射された遊技球の発射方向と異なる方向へ向かうように構成されていること」に相当する。

サ 引用発明の「遊技機」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

シ したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「遊技球が流下可能な遊技領域を前面に有する遊技盤と、
発射装置から発射された遊技球を前記遊技領域へと案内する案内路と、
遊技球が衝突することでその遊技球の流下方向を変更可能な樹脂突部と、を備え、
前記樹脂突部には、前記遊技領域内の遊技球が前記案内路へ逆戻りすることを抑制する球戻り抑制部が設けられ、
前記樹脂突部として、少なくとも、第1樹脂突部と、前記第1樹脂突部よりも前記案内路の出口に近い側に配される第2樹脂突部と、を有し、
前記第2樹脂突部のうち前記第1樹脂突部側を向く部分には、傾斜する第1傾斜面が形成され、
前記球戻り抑制部は、前記第2樹脂突部に設けられて、前記第1傾斜面の上端部から突出すると共に、その上側に遊技球約2個分のスペースを形成し、
前記第1樹脂突部のうち前記第2樹脂突部側を向く部分には、第1面が形成され
前記球戻り抑制部は、前記第1樹脂突部側を向く面として、前記第1傾斜面とは異なる角度で傾斜する傾斜面を有し、
前記球戻り抑制部の前記第1傾斜面からの突出方向は、前記案内路の出口から発射された遊技球の発射方向と異なる方向へ向かうように構成されている遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(ア)「第1傾斜面」の「傾斜」が、本願補正発明では「第1樹脂突部へ近づくに従って下るように傾斜する」と特定されるとともに、「第1面」が、本願補正発明では「鉛直方向に沿って延びる第1鉛直面」と特定されるのに対し、引用発明では、「左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」の傾斜がこのように特定されず、また、「右側障害突起63の左下側周壁部63a」がこのように特定されない点(以下「相違点1」という。)。

(イ)「球戻り抑制部」の上側に形成される「スペース」が、本願補正発明では「遊技球が2個同時に通過できない」と特定されるのに対し、引用発明は遊技球約2個分である点(以下「相違点2」という。)。

(3)判断
ア 上記相違点1について検討する。
引用発明の遊技機の「左側障害突起63」及び「右側障害突起63」は、「2個の障害突起63の一方又は両方に衝突するか、障害突起63に衝突せずに前構造体23の打ち込み領域60側の前周壁部44に衝突した後、落下方向を適宜変えながら打ち込み領域60の下側を経て減速領域61へと移動する」(上記「(1)」「ア」「(ウ)」段落「【0069】」)ように遊技球を減速しつつ落下するためのものである。
ここで、弾球遊技機において、「2個の障害突起63の」「両方に衝突」「した後、落下方向を適宜変えながら打ち込み領域60の下側を経て減速領域61へと移動する」構成として、「第1受球面51Aに衝突した遊技球の一部は、第2の樹脂製障害突部52の第2受球面52Aに向かって跳ね返り、そこで再び第1の樹脂製障害突部51に跳ね返され、さらに、その遊技球が第1の樹脂製障害突部51の第1反射面51Bで第2受球面52A側に跳ね返され、第1反射面51Bと第2受球面52Aとの間隔は、下方に向かうに従って徐々に狭くなっているので、遊技球が第1と第2の樹脂製障害突部51,52の間を下方に向かうに従って往復頻度が高まり効率良く遊技球の勢いが抑えられ、樹脂製表示枠40の枠内進入規制壁40B上へと流下する点。」(引用文献2に記載の事項)が公知である。
したがって、引用発明の遊技機の「左側障害突起63」及び「右側障害突起63」と引用文献2に記載の事項の「第2の樹脂製障害突部52」及び「第1の樹脂製障害突部51」とは遊技領域11(遊技領域R1)へ打ち込まれた遊技球を減速させるという共通の作用を奏するものである。
そうすると、引用発明における、遊技領域11へ打ち込まれた遊技球を減速するための構成として、引用文献2に記載の事項の「第1反射面51Bと第2受球面52Aとの間隔は、下方に向かうに従って徐々に狭くなっている」構成を採用して、引用発明の「左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」の「傾斜」を「左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」と「右側障害突起63の左下側周壁部63a」との間隔を、「下方に向かうに従って徐々に狭く」するとともに、当該「下方に向かうに従って徐々に狭く」するために、「(右下方向へ)傾斜する左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」に対する「右側障害突起63の左下側周壁部63a」の傾斜を鉛直となすことは当業者が容易になし得ることである。
そして、その際に、「右側障害突起63の左下側周壁部63a」の角度をどのようにするかは設計的事項であるところ、引用発明の「障害突起63」は、「前記障害突起63は、ガイドレール15から遊技領域11に打ち込まれた遊技球を衝突させて衝撃を緩和し、又は遊技球の落下方向に変化を与え、前側が閉塞され裏側に開口する角柱状、その他の適宜形状の中空状に構成され、内レール17の戻り防止具20よりも上側で打ち込み領域60に外レール18の円弧方向に所定の間隔をおいて複数個(2個)設けられ」るものであるから、「右側障害突起63の左下側周壁部63a」の角度を、「遊技球を衝突させて衝撃を緩和し、又は遊技球の落下方向に変化を与え」る範囲で「適宜」の角度とすればよく、これを略垂直とすることに格別の技術的困難性はない。
したがって、引用発明において、「右側障害突起63の左下側周壁部63a」の角度を略垂直とするとともに、「左側障害突起63の凸部の右下側周壁部63a」と「右側障害突起63の左下側周壁部63a」の傾斜の関係を下方に向かうに従って徐々に狭くなっているものとなすことで、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易になし得ることである。

イ 上記相違点2について検討する。
引用発明の「左側障害突起63の凸部」の上側に形成されるガイドレール15の外レール18と間のスペースは遊技球約2個分であるところ、「障害突起63は、ガイドレール15から遊技領域11に打ち込まれた遊技球を衝突させて衝撃を緩和し、又は遊技球の落下方向に変化を与えるため」「内レール17の戻り防止具20よりも上側で打ち込み領域60に外レール18の円弧方向に所定の間隔をおいて複数個(2個)設けられ」るものである。
したがって、引用発明の「左側障害突起63の凸部」の上側に形成されるガイドレール15の外レール18と間のスペースは遊技球約2個分前後の範疇で適宜の間隔とすればよく、当該間隔を遊技球が2個同時に通過できない間隔(スペース)とすることに格別の技術的困難性はない。

(4)本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1及び2によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(5)請求人の主張について
ア 請求人は、特に上記相違点2の補正の根拠に関して、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(1)補正の説明及び根拠」において、「図9において、第2樹脂突部42の上端突起42Tとガイドレール12の円弧状案内部12Eとの間の間隔が、第1樹脂突部41と縦壁33との間に形成された第1流路R1の幅の約1.5倍であること、及び、明細書の段落[0044]に、第1流路R1が遊技球1つずつ通過可能な幅であることが示されていること、を根拠にしています。」と主張している。
そして、上記相違点2が奏する効果に関して、同「(2)本願発明の説明」において、「遊技領域へ打ち込まれた遊技球は案内路に沿って移動することが多く、遊技球の移動軌跡のバラつきが小さくなります。従って、球戻り抑制部の上側に遊技球が1個だけ通過可能なスペースがあれば、球戻り抑制部の上側を通るように遊技球を打ち込むことは容易となります。一方、遊技領域から案内路側へ戻ろうとする遊技球は、その移動軌跡のバラつきが大きくなります。従って、球戻り抑制部の上側のスペースが狭ければ、遊技球の逆戻りが起こり難くなります。特に、本願発明の第1の特徴のように、球戻り抑制部の上側のスペースが、遊技球が2個同時に通過できない程度に狭ければ、案内路から打ち込まれる遊技球との衝突によって球戻りを抑制することが可能となります。」と主張している。
さらに、上記相違点2に関して、同「(3)引用文献との対比」において、「引用文献1の発明では、第2樹脂突部の上側のスペース(同文献の図4において、鉛直方向での障害突起63とガイドレール15の間の間隔)は、同文献の図5及び図17に示されている遊技球の大きさを考慮すれば、遊技球2個分以上になっていると考えられます。」とも主張している。

イ しかしながら、「第1流路R1が遊技球1つずつ通過可能な幅であること」は、必ずしも「その上側に遊技球が2個同時に通過できないスペースを形成し」ていることを意味しない。
また、図に関して、本願明細書では「以下、本発明をパチンコ遊技機に適用した一実施形態を図面に基づいて説明する。」(段落【0016】)と記載するとおり、一実施形態を説明するにとどまり、図9、10は第2樹脂突部42の上端突起42Tとガイドレール12の円弧状案内部12Eとの間の間隔を厳密に記載したものとまではいえず、また、たとえ、図9において第1樹脂突部41と縦壁33との間に形成された第1流路R1の幅の約1.5倍であっても、そのことが直ちに「その上側に遊技球が2個同時に通過できないスペースを形成し」ていることまでを意味しているとまではいえない。
そして、「その上側に遊技球が2個同時に通過できないスペースを形成し」ていることの効果も本願明細書には記載されておらず、あくまで、「球戻り抑制部の上側のスペースが狭ければ、遊技球の逆戻りが起こり難くな」るという、当業者なら予測し得る程度の効果にすぎない。
さらに、引用発明は、「左側障害突起63の凸部の上側とガイドレール15の外レール18との間には、遊技球約2個分のスペースがあ」るものであって、請求人は、引用発明について、図面から「左側障害突起63の凸部」とガイドレール15の外レール18との間隔が遊技球2個分以上になっていると主張するが、引用文献1は「左側障害突起63の凸部」とガイドレール15の外レール18との間隔については、図4、5、17の記載から見て、「左側障害突起63の凸部」の上側とガイドレール15の外レール18との間に、図面上、遊技球約2個分のスペースがあることが見てとれるにとどまり、引用発明の「左側障害突起63の凸部」とガイドレール15の外レール18との間隔が遊技球2個分以上になっていると考えるべき格別の理由も見当たらない。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。

(6)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]「1 補正の内容」において、平成29年4月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1として記載したとおりのものである。

2 拒絶の理由
原査定の平成29年5月19日付けの拒絶理由の概要は、
「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1
・引用文献等 1、2
・・・
<引用文献等一覧>
1.特開2016-54952号公報
2.特開2008-161467号公報」
というものである。

3 引用文献及び引用発明
引用発明及び引用文献2に記載された事項は、上記「第2」[理由]「3」「(1)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「球戻り抑制部」に関して、「その上側に遊技球が2個同時に通過できないスペースを形成し」、「前記第1樹脂突部側を向く面として、前記第1傾斜面とは異なる角度で傾斜する傾斜面を有し」、及び、「前記第1傾斜面からの突出方向は、前記案内路の出口から発射された遊技球の発射方向と異なる方向へ向かうように構成されている」との限定を省くものである。
そうすると、上記「第2」[理由]「3」「(2)」での検討を踏まえると、本願発明と引用発明とは、相違点1で相違し、その余の点で一致する。
したがって、上記「第2」[理由]「3」「(3)」で検討した理由と同じ理由により、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-02 
結審通知日 2018-10-10 
審決日 2018-10-30 
出願番号 特願2016-188368(P2016-188368)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也足立 俊彦  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 赤穂 州一郎
松川 直樹
発明の名称 遊技機  
代理人 松浦 弘  

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