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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02F |
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管理番号 | 1347134 |
審判番号 | 不服2018-2678 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-26 |
確定日 | 2019-01-08 |
事件の表示 | 特願2016-511558「ショベル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日国際公開、WO2015/151917、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成27年3月24日(優先権主張 平成26年3月31日)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月7日付け拒絶理由通知がされ、平成29年10月13日に手続補正され、平成29年11月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正(以下、この手続補正を「本件補正」という。)がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年11月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性) この出願の請求項1-3、9-10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2010-106513号公報 2.特開2010-173599号公報 3.特開2010-133235号公報 4.特開平8-207600号公報 5.特開平11-107320号公報(拒絶理由通知で引用された文献である。また、拒絶査定の理由からみて、拒絶査定記載の引用文献4は本文献の誤記であると解される。) 第3 審判請求時の補正について 1 本件補正について(補正の内容) (1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1ないし7の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有するショベルであって、 前記制御装置は、当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給し、 前記蓄電系が前記制限状態である場合、前記制限状態に移行する前と比べ、前記旋回用電動機による旋回の動きを遅くし、かつ、前記油圧ポンプにより駆動される油圧アクチュエータの動きを遅くする、 ショベル。 【請求項2】 前記蓄電系の制限状態は、前記蓄電系の過放電、過充電、劣化、電圧異常、温度異常を含む異常が生じたときに、前記蓄電系の充電が制限された状態、前記蓄電系の充電が停止された状態、又は、スイッチにより前記蓄電系と前記旋回用電動機とが電気的に遮断された状態を含む、 請求項1に記載のショベル。 【請求項3】 油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有するショベルであって、 前記制御装置は、当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給し、 前記制御装置は、前記ショベルが傾斜地に位置すること、旋回速度が所定値以上であること、アタッチメントの先端が前記ショベルから所定距離だけ離れていること、または、前記アタッチメントの先端に所定の重量がかかっていること、或いは、前記ショベルが不安定な姿勢であること、を含む不安定状態にあるか否かを判定し、 前記不安定状態にある場合、且つ、前記蓄電系が前記制限状態である場合に前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給させる、 ショベル。 【請求項4】 油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有するショベルであって、 前記制御装置は、当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給し、 前記旋回用電動機により旋回駆動される旋回体を有し、 前記制御装置は、前記蓄電系が前記制限状態である場合、前記ショベルの姿勢に応じて前記旋回体に加える制動トルクを低下させる、 ショベル。 【請求項5】 油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有するショベルであって、 前記制御装置は、当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給し、 前記蓄電系が制限状態になり、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給するとき、前記油圧ポンプを回転させるために必要な力を大きくする、 ショベル。 【請求項6】 前記制御装置は、前記油圧ポンプが吐出する作動油の流量を流量制御弁で制限する、或いは、エンジンの回転数を低くする、 請求項5に記載のショベル。 【請求項7】 油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有するショベルであって、 前記制御装置は、当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給し、 当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を停止される停止状態の場合、前記ショベルの姿勢に応じて旋回体の旋回を停止させるか蓄電系停止時旋回制御を採用するかを決定する、 ショベル。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成29年10月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有するショベルであって、 前記制御装置は、当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給する、 ショベル。 【請求項2】 前記蓄電系の制限状態は、前記蓄電系の過放電、過充電、劣化、電圧異常、温度異常を含む異常が生じたときに、前記蓄電系の充電が制限された状態、前記蓄電系の充電が停止された状態、又は、スイッチにより前記蓄電系と前記旋回用電動機とが電気的に遮断された状態を含む、 請求項1に記載のショベル。 【請求項3】 前記制御装置は、前記蓄電系が前記制限状態である場合、前記制限状態に移行する前と比べ、前記旋回用電動機による旋回の動きを遅くし、かつ、前記油圧ポンプにより駆動される油圧アクチュエータの動きを遅くする、 請求項1又は2に記載のショベル。 【請求項4】 前記制御装置は、前記ショベルが傾斜地に位置すること、旋回速度が所定値以上であること、アタッチメントの先端が前記ショベルから所定距離だけ離れていること、または、前記アタッチメントの先端に所定の重量がかかっていること、或いは、前記ショベルが不安定な姿勢であること、を含む不安定状態にあるか否かを判定し、 前記不安定状態にある場合、且つ、前記蓄電系が前記制限状態である場合に前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給させる、 請求項1?3のいずれか1項に記載のショベル。 【請求項5】 前記旋回用電動機により旋回駆動される旋回体を有し、 前記制御装置は、前記蓄電系が前記制限状態である場合、前記ショベルの姿勢に応じて前記旋回体に加える制動トルクを低下させる、 請求項1?4のいずれか1項に記載のショベル。 【請求項6】 前記制御装置は、前記蓄電系が制限状態になり、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給するとき、前記油圧ポンプを回転させるために必要な力を大きくする、 請求項1?5のいずれか1項に記載のショベル。 【請求項7】 前記制御装置は、前記油圧ポンプが吐出する作動油の流量を流量制御弁で制限する、或いは、エンジンの回転数を低くする、 請求項6に記載のショベル。 【請求項8】 前記制御装置は、当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を停止される停止状態の場合、前記ショベルの姿勢に応じて旋回体の旋回を停止させるか蓄電系停止時旋回制御を採用するかを決定する、 請求項1?7のいずれか1項に記載のショベル。 【請求項9】 前記制御装置は、前記蓄電系を停止させ、前記旋回用電動機により駆動される旋回体を停止させた場合に、 その後でも、前記電動発電機の発電電力を用いた前記旋回用電動機の駆動を許可し、前記旋回用電動機の回生電力を用いた前記電動発電機の駆動を許可する、 請求項1?8のいずれか1項に記載のショベル。 【請求項10】 前記制御装置は、前記旋回用電動機及び前記電動発電機の駆動を許可する場合、前記旋回用電動機による旋回の動きを遅くし、かつ、前記電動発電機及び油圧ポンプにより駆動される油圧アクチュエータの動きを遅くするよう前記旋回用電動機及び前記電動発電機の出力を抑制する、 請求項9に記載のショベル。」 2 補正の適否について 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、 本件補正前の請求項1、9、10を削除すると共に、 本件補正前の請求項1を引用していた請求項3、4、5、6、8を、それぞれ独立形式として本件補正後の請求項1、3、4、5、7とし、 本件補正前の請求項1を引用していた請求項2を、本件補正後の請求項1を引用する請求項2とし、 本件補正前の請求項1を引用していた請求項6を引用していた請求項7を、本件補正後の請求項5を引用する請求項6としたものであるから、 本件補正は、特許法第17条の2第5項第1及び2号に掲げる、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また新規事項を追加するものではない。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 以上のように、本件補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものではない。 したがって、本件補正は適法になされたものである。 第4 本願発明 本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」といい、全体を「本願発明」という。)は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、上記第3の1(1)に記載したとおりのものである。 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-106513号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は審決で付与した。)。 (1) 「【技術分野】【0001】本発明はエンジン動力と電力とを併用するハイブリッド作業機械に関するものである。」 (2) 「【発明が解決しようとする課題】【0007】このハイブリッドショベルにおいて、蓄電装置がたとえばリレーダウン等によって故障し、電源として使用できなくなる可能性がある。 【0008】この場合、従来は、 (イ)発電機出力の蓄電先であり、かつ、旋回電動機の電源の一つがなくなることで、発電機(発電機インバータ)と旋回電動機(旋回電動機インバータ)とを結ぶ直流母線電圧が不安定となること、 (ロ)発電機の発電力が旋回電動機の消費電力を賄いきれなくなること、 (ハ)エンジン負荷が大きくなることで油圧ポンプの出力が低下すること により、旋回、油圧両動作とも安定して行えなくなるという問題があった。 ・・・ 【0014】ところで、蓄電装置が健在であれば、旋回減速時に発生する回生電力が蓄電装置に蓄電されるが、蓄電装置が使用不能となると、回生電力の受け皿がなくなり、回生ブレーキ作用が正常に働かなくなるおそれがある。」 (3) 「【発明を実施するための最良の形態】【0017】実施形態では適用対象としてハイブリッドショベルを例にとっている。 ・・・ 【0019】図示のように動力源としてのエンジン1に、一台で発電機作用と電動機作用の双方を行う発電電動機2と油圧ポンプ3とが接続され、これらがエンジン1によって駆動される。 【0020】油圧ポンプ3には、図示しないコントロールバルブを含む油圧回路4を介してブームシリンダその他の油圧アクチュエータ(一括して符号5を付している)が接続され、油圧ポンプ3から供給される圧油によって油圧アクチュエータ5が駆動される。 【0021】一方、発電電動機2には、制御手段を構成する発電電動機インバータ6及び旋回電動機インバータ7を介して旋回電動機8が接続されるとともに、両インバータ6,7を結ぶ直流母線9a,9bにバッテリ接続回路10を介してバッテリ(蓄電装置)11が接続され、発電電動機2とバッテリ10を電源として旋回電動機8が駆動される。 【0022】また、直流母線9a,9bには、旋回減速時の回生電力を消費して回生ブレーキ作用を発揮する回生抵抗回路12がバッテリ11と並列に接続されている。13はこの回生抵抗回路12の回生抵抗を制御する回生抵抗制御手段である。 ・・・ 【0025】このハイブリッドショベルにおいては、上記基本構成に加えて、直流母線電圧を検出する電圧センサ14、故障検出手段15、制御手段を構成する発電電動機制御手段16及び旋回電動機制御手段17が設けられている。 【0026】故障検出手段15は、システムスタート時(キースイッチオン時)に電圧センサ14で検出される直流母線電圧が正常時のバッテリ電圧(たとえば150V)以上か否かに基づいてバッテリ11が故障(使用不能)か否かを判断し、使用不能と判断したときに故障信号が発電電動機制御手段16及び旋回電動機制御手段17に送られ、所定の制御が行われる。 ・・・ 【0037】上記制御により、バッテリ11が使用不能の状態下で、直流母線電圧をシステム全体の通常動作電圧以上に保ちながら、旋回電動機8の消費電力を発電電動機2の発電電力以下に抑え、旋回電動機8及び油圧アクチュエータ5を必要最小限の動力ながら安定して動作させることができる。 【0038】また、旋回減速時に旋回電動機8に発生する回生電力は、旋回電動機インバータ7を介して回生抵抗回路12に送られ、ここで消費される。これにより、バッテリ健在時と同様の回生ブレーキ作用を確保することができる。」 (4) 以上(1)ないし(3)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「動力源としてのエンジン1と、 エンジン1によって駆動される、一台で発電機作用と電動機作用の双方を行う発電電動機2、及び油圧ポンプ3と、 油圧ポンプ3から供給される圧油によって駆動されるブームシリンダその他の油圧アクチュエータ5と、 発電電動機2に接続されたバッテリ(蓄電装置)11と、 発電電動機2とバッテリ(蓄電装置)11を電源として駆動される旋回電動機8と、 バッテリ(蓄電装置)11に並列に接続される回生抵抗回路12と、 故障検出手段15と、を有し、 旋回電動機8が旋回減速時に発生する回生電力がバッテリ(蓄電装置)11に蓄電される、 ハイブリッドショベルであって、 故障検出手段15は、バッテリ電圧に基づいてバッテリ(蓄電装置)11が故障(使用不能)か否かを判断し、 バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態下では、 蓄電先かつ電源であるバッテリ(蓄電装置)11がなくなることで、旋回、油圧両動作とも安定して行えなくなることに対応し、旋回電動機8の消費電力を発電電動機2の発電電力以下に抑えることにより、旋回電動機8及び油圧アクチュエータ5を必要最小限の動力ながら安定して動作させ、 さらに、旋回電動機8が旋回減速時に発生する回生電力の受け皿がなくなり、回生ブレーキ作用が正常に働かなくなることに対応し、旋回減速時に旋回電動機8に発生する回生電力を回生抵抗回路12に送りここで消費することにより、バッテリ健在時と同様の回生ブレーキ作用を確保するように、 所定の制御を行う、 ハイブリッドショベル。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2010-173599号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【技術分野】【0001】本発明は作業機械に係り、特に蓄電器からの電力により電動機を駆動して油圧ポンプを駆動するハイブリッド式作業機械の制御方法及びサーボ制御システムの制御方法に関する。」 (2) 「【発明が解決しようとする課題】【0010】上述のような構成のハイブリッド式作業機械において、急峻な負荷変動(油圧負荷要求の急激な変化)があった場合、一時的にエンジンの回転数が変動することがある。すなわち、エンジンの定回転数制御が負荷変動に追従できずに、エンジンの回転数が一時的に変動してしまう。」 (3) 「【発明の効果】【0018】本発明によれば、エンジンへの負荷が急激に変動した場合でも、エンジンの出力を先に変化させてから電動機又は発電機により速度制御を行なうので、エンジン回転数の大きな変動が無く、エンジンの燃焼条件を良好な状態に維持することができ、操作性の悪化を防止することができる。」 (4) 「【発明を実施するための形態】【0020】本発明が適用されるハイブリッド式作業機械としては、バッテリからの電力により駆動する電動発電機でエンジンをアシストしながら油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプで発生した油圧で作業を行なう油圧式作業機械であればどのような作業機械であってもよい。そのようなハイブリッド式作業機械として、例えば、パワーショベル、リフティングマグネット、クレーン、ホイルローダなどが挙げられる。」 (5) 「【0104】そこで、本発明の一実施形態では、このような問題を解消するために、電動発電機12のアシスト運転を行なうより前に、まずエンジン11のトルクを低下させることで、エンジン11の回転数の大きな上昇を抑制し、上述の問題を解消する。 【0105】図16は、図9に示す制御系において、図13に示す駆動制御処理と同様に、キャパシタ19の充電率(SOC)が高く、キャパシタ19への電力を供給できない状態で、旋回用電動機21を回生運転(減速)させた場合の、エンジン11と電動発電機12の駆動制御のフローチャートである。 【0106】まず、ステップS31において、上部旋回部3を減速させるために電気負荷要求出力(回生)が増加したことが検出される。すなわち、トルク指令決定部30hは、電気負荷要求出力算出部30gから供給される電気負荷要求出力(回生)が増加したことを検出し、且つ充電率(SCO)算出部30dから供給される充電率が目標充電率より高いことを検出する。充電率が目標充電率より高い場合は、キャパシタ19への充電は行なわず、電動発電機12をアシスト運転して回生電力を消費するように制御する。 ・・・ 【0109】エンジン11の回転数が低下するとエンジンに直結されている電動発電機12の回転数も低下する。電動発電機12は一定の回転速度に維持されるように定回転速度制御が行なわれているので、速度センサ60からの速度検出値が増大すると、ステップS34において、速度制御部30aは、アシスト運転指令をインバータ18に出力し、インバータ18は電動発電機12をアシスト運転させる。これにより、電気負荷である旋回用電動機21からの回生電力が電動発電機12に供給されて電動発電機12がアシスト運転(力行運転)し、回生電力が消費される。このステップS31からステップS34の制御は、コントローラ30の制御周期毎に繰り返し実行される。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2010-133235号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【技術分野】【0001】本発明は、昇圧用スイッチング素子及び降圧用スイッチング素子を有し、負荷への電力供給の制御と、負荷より得られる回生電力の蓄電器への供給の制御とを行う昇降圧コンバータを用いたハイブリッド型建設機械に関する。」 (2) 「【発明が解決しようとする課題】・・・【0008】そこで、本発明のハイブリッド型建設機械では、電動発電機、電動作業要素と蓄電器との間に蓄電制御部を設けることで、電動発電機や電動作業要素への供給電圧の安定化を図り、さらに、アシスト用の電動発電機、旋回用の電動機等の電動作業要素、又はこれらを駆動する駆動制御系に異常が発生した場合においても、ある程度の期間にわたって電動発電機や旋回用の電動機等の電動作業要素の駆動制御を行えるようにすることにより、信頼性の向上を図ったハイブリッド型建設機械を提供することを目的とする。」 (3) 「【課題を解決するための手段】・・・【0011】また、前記蓄電系には蓄電系異常検出部が備えられ、前記主制御部は、前記蓄電系異常検出部の検出値が予め定められた閾値を超えると、前記蓄電系を停止させてもよい。」 (4) 「【発明を実施するための形態】・・・【0016】「実施の形態1」 図1は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械を示す側面図である。 【0024】また、バッテリ19には、バッテリ電圧値を検出するためのバッテリ電圧検出部112と、バッテリ電流値を検出するためのバッテリ電流検出部113が配設されている。これらによって検出されるバッテリ電圧値とバッテリ電流値は、コントローラ30に入力される。なお、バッテリ19、DCバス110と昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行う蓄電系を構成する。 【0027】このような実施の形態1の建設機械は、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型建設機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。 ・・・ 【0042】バッテリ電圧検出部112は、バッテリ19の電圧値を検出するための電圧検出部であり、バッテリの充電状態を検出するために用いられる。検出されるバッテリ電圧値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。そして、DCバス電圧検出部111とバッテリ電圧検出部112とは、昇降圧コンバータ100とバッテリ19の間で異常が発生すると、バッテリ電圧検出部112とDCバス電圧検出部111との電圧値を比較することで、蓄電系における異常の発生と異常発生箇所の特定を行うことができる蓄電系異常検出部としても機能する。 そして、蓄電系異常検出部からの検出値が、異常判断の閾値を超えると、コントローラ30は蓄電系で異常が発生したと判断し、蓄電系を停止させる。」 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平8-207600号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ハイブリッド型車両に関するものである。 【0002】【従来の技術】従来、ハイブリッド型車両には、内燃エンジンを駆動することによって発生させられた回転を発電機に伝達して発電機を駆動し、該発電機によって得られた電力を直流電流に変換してバッテリに送って充電し、更に該バッテリの電力を交流電流に変換して電気モータを駆動するようにしたシリーズ式のハイブリッド型車両がある。また、内燃エンジンと電気モータとをクラッチを介して連結し、発進時に電気モータを駆動し、その後、クラッチを係合させ、内燃エンジンを駆動することによってハイブリッド型車両を走行させ、急加速時においては電気モータを駆動するようにしたパラレル式のハイブリッド型車両がある。さらに、シリーズ式のハイブリッド型車両とパラレル式のハイブリッド型車両とを組み合わせたハイブリッド型車両も提供されている。 【0003】これらのハイブリッド型車両においては、車両の減速エネルギーを電気モータによって回生電流に変換し、該回生電流をバッテリに送って充電するようにしている。そして、例えば、長い下り坂等で回生状態が長時間続いた場合、前記回生電流が、バッテリに充電することができる電流の許容量(以下「充電許容量」という。)を超えてしまうので、前記バッテリに充電することができない余剰の回生電流を放熱抵抗器によって熱に変換して消費するようにしている。」 5 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平11-107320号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、バッテリから電力が供給される電動機によって油圧ポンプを駆動し、その油圧ポンプから吐出される吐出油でアクチュエータを作動させるバッテリ駆動の油圧作業機械に関する。」 (2) 「【0005】本発明は、上記した従来のバッテリ駆動の油圧作業機械における事情を考慮してなされたものであり、バッテリの電気量がほとんど残っていないことをオペレータに認知させて過放電を防止することができるとともに、充電設備まで自力で移動できる電気量を確保して油圧作業機械が立ち往生することを防止することができるバッテリ駆動の油圧作業機械を提供することを目的とする。」 (3) 「【0011】本発明に従えば、バッテリ使用状態においてその電気量がバッテリ残量検出手段によって検出され、バッテリ残量検出手段によって検出されたバッテリ残量が、バッテリ設定値よりも完全充電側に設定されている第二のバッテリ設定値(例えば完全充電時の35%)に達すると、警報発生手段により警報が発せられる。警報が発っせられてもなおバッテリが使用され、検出されたバッテリ残量がバッテリ設定値(例えば完全充電時の30%)に達すると、作動制御手段が一部または全部のアクチュエータの作動を制限する。一部のアクチュエータについて作動を制限するときは、例えば、走行用アクチュエータについては作動可能な状態とし、それ以外のアクチュエータ、例えばフロントアタッチメントについてはその作動が停止される。 【0012】また、全部のアクチュエータを制限するときは、全部のアクチュエータの作動速度が低下されるかまたは作動が停止される。この場合、アタッチメントの作動制限を解除するための解除手段をオペレータがオン操作すると油圧作業機械の作動を再開させることができ、油圧作業機械を速やかに充電設備まで移動させることができる。 ・・・ 【0014】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態を示すバッテリ駆動の油圧作業機械(本実施形態では油圧ショベルを例に取り説明する)の側面図である。・・・」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「ハイブリッドショベル」は、本願発明1の「ショベル」に相当する。 イ 引用発明1の「油圧ポンプ3」は、本願発明1の「油圧ポンプ」に相当する。 ウ ハイブリッドショベルにおいてはエンジンと発電電動機のハイブリッドで油圧ポンプが駆動されることは文献を示すまでもなく技術常識であるから、引用発明1のハイブリッドショベルの発電電動機2も油圧ポンプ3を駆動可能なものと解される。 よって、引用発明1の「発電電動機2」は、本願発明1の「前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機」に相当する。 エ 引用発明1の「バッテリ(蓄電装置)11」、「旋回電動機8」は、それぞれ本願発明1の「蓄電系」、「旋回用電動機」に相当する。 オ 引用発明1のハイブリッドショベルは、バッテリ(蓄電装置)11が故障(使用不能)か否かを判断し、その判断結果に応じて「所定の制御」を行うものであるから、そのための制御装置を有するものと解される。よって、引用発明1のハイブリッドショベルは、本願発明のショベルと、制御装置を有する点で一致する。 カ 引用発明1における「バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態」は、バッテリ(蓄電装置)11が蓄電先かつ電源ではなくなり、かつ旋回電動機8の回生電力も受けない状態であるから、バッテリ(蓄電装置)11と他の系との間での電力の流出入が停止あるいは少なくとも制限された状態と解され、また旋回電動機8の回生電力が発生し得る状況であるから、ハイブリッドショベルが作動中における状態であると解される。 よって、引用発明1の「バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態」は、本願発明の「当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態」に相当する。 キ 引用発明1における、バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態下で「旋回電動機8の消費電力を発電電動機2の発電電力以下に抑えることにより、旋回電動機8」「を必要最小限の動力」で動作させるということは、バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態となる前と比べ、旋回電動機8による旋回の動きを遅くすることと解される。 よって、引用発明1で、バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態下で「旋回電動機8の消費電力を発電電動機2の発電電力以下に抑えることにより、旋回電動機8」「を必要最小限の動力」で動作させることは、本願発明で「前記蓄電系が前記制限状態である場合、前記制限状態に移行する前と比べ、前記旋回用電動機による旋回の動きを遅く」することに相当する。 したがって、以上アないしキから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有するショベルであって、 前記制御装置は、当該ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合、前記制限状態に移行する前と比べ、前記旋回用電動機による旋回の動きを遅くする、 ショベル。」 (相違点1A) 本願発明1では、蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合に、制御装置が「旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給」するのに対し、 引用発明1では、バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態下で、旋回減速時に旋回電動機8に発生する回生電力を発電電動機2に供給するとは特定されていない点。 (相違点1B) 本願発明1では、蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合、制御装置が「油圧ポンプにより駆動される油圧アクチュエータの動きを遅くする」する制御を行うのに対し、 引用発明1はそのような特定を有していない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点1Bについて先に検討する。 本願発明1における「制御装置は」「油圧ポンプにより駆動される油圧アクチュエータの動きを遅くする」という制御は、本願明細書を参照して「【0048】旋回トルク等を制限すると、上部旋回体3の最大旋回速度は低下する。このとき、油圧アクチュエータの操作が行われている場合、コントローラ30は、最大旋回速度の低下に応じて油圧アクチュエータの動作速度を低下させ・・・操作者が望む操作感に合わせる・・・」と記載されるように、蓄電系が制限状態となったことに対応して旋回用電動機による旋回の動きを遅くするとともに、油圧アクチュエータの動き(動作速度)を能動的に制御するものである(受動的に油圧アクチュエータの動きが遅くなるというものではない。)。 これに対して、引用文献1ないし4にはそのような制御を行うことの記載はなく、また当業者にとり周知技術ともいえない。 ここで、引用文献5には油圧アクチュエータの作動速度を低下させる制御の記載があるが、ハイブリッドではないバッテリ駆動において、バッテリが(故障による使用不能ではなく)残電気量が残っていないときに、バッテリ切れに起因する立ち往生を防止するための制御であり、これを、引用発明1の、ハイブリッドで、しかもバッテリ(蓄電装置)11が故障して使用不能な状況(すなわちバッテリ(蓄電装置)11からの電気で駆動されるものではない。)での制御に適用する動機付けはない。 したがって、引用発明1において、本願発明1の相違点1Bに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。 よって、上記相違点1Aについて検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2ないし5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1の構成をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明1及び引用文献2ないし5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本願発明3について (なお、上記第2及び第3のとおり、本願発明3は本件補正前の請求項1を引用する請求項4に対応するものであり、原査定の対象ではない。本願発明4ないし7も同様。)。 (1)対比 上記1(1)での本願発明1と引用発明1との対比を踏まえると、本願発明3と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有する、 ショベル。」 (相違点3A) 本願発明3では、蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合に、制御装置が「旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給」するのに対し、 引用発明1では、バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態下で、旋回減速時に旋回電動機8に発生する回生電力を発電電動機2に供給するとは特定されていない点。 (相違点3B) 本願発明3では、「前記制御装置は、前記ショベルが傾斜地に位置すること、旋回速度が所定値以上であること、アタッチメントの先端が前記ショベルから所定距離だけ離れていること、または、前記アタッチメントの先端に所定の重量がかかっていること、或いは、前記ショベルが不安定な姿勢であること、を含む不安定状態にあるか否かを判定し、前記不安定状態にある場合、且つ、前記蓄電系が前記制限状態である場合に前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給させる」のに対し、 引用発明1はそのような特定を有していない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点3Bについて先に検討する。 引用文献1ないし5には「不安定状態にあるか否かを判定」して「不安定状態にある場合、且つ、前記蓄電系が前記制限状態である場合に前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給させる」ことは何ら記載されておらず、またこの点が当業者にとり周知技術であるともいえない。 したがって、引用発明1において、本願発明3の相違点3Bに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。 よって、上記相違点3Aについて検討するまでもなく、本願発明3は、引用発明1及び引用文献2ないし5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 本願発明4について (1)対比 上記1(1)での本願発明1と引用発明1との対比、及び、旋回用電動機を有するハイブリッドショベルが、旋回用電動機により旋回駆動される旋回体を有することは明らかであり、引用発明1のハイブリッドショベルも当該旋回体を有するものと解されることを踏まえると、本願発明4と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、 前記旋回用電動機により旋回駆動される旋回体、を有する、 ショベル。」 (相違点4A) 本願発明4では、蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合に、制御装置が「旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給」するのに対し、 引用発明1では、バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態下で、旋回減速時に旋回電動機8に発生する回生電力を発電電動機2に供給するとは特定されていない点。 (相違点4B) 本願発明4では、「前記制御装置は、前記蓄電系が前記制限状態である場合、前記ショベルの姿勢に応じて前記旋回体に加える制動トルクを低下させる」のに対し、 引用発明1はそのような特定を有していない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点4Bについて先に検討する。 引用文献1ないし5には「蓄電系が前記制限状態である場合、前記ショベルの姿勢に応じて前記旋回体に加える制動トルクを低下させる」ことは何ら記載されておらず、またこの点が当業者にとり周知技術であるともいえない。 したがって、引用発明1において、本願発明4の相違点4Bに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。 よって、上記相違点4Aについて検討するまでもなく、本願発明4は、引用発明1及び引用文献2ないし5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 本願発明5について (1)対比 上記1(1)での本願発明1と引用発明1との対比を踏まえると、本願発明5と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有する、 ショベル。」 (相違点5A) 本願発明5では、蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合に、制御装置が「旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給」するのに対し、 引用発明1では、バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態下で、旋回減速時に旋回電動機8に発生する回生電力を発電電動機2に供給するとは特定されていない点。 (相違点5B) 本願発明5では、制御装置は、「前記蓄電系が制限状態になり、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給するとき、前記油圧ポンプを回転させるために必要な力を大きくする」のに対し、 引用発明1はそのような特定を有していない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点5Bについて先に検討する。 引用文献1ないし5には「蓄電系が制限状態になり、前記旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給するとき、前記油圧ポンプを回転させるために必要な力を大きくする」ことは何ら記載されておらず、またこの点が当業者にとり周知技術であるともいえない。 したがって、引用発明1において、本願発明5の相違点5Bに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。 よって、上記相違点5Aについて検討するまでもなく、本願発明5は、引用発明1及び引用文献2ないし5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 本願発明6について 本願発明6は、本願発明5の構成をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、本願発明5と同様の理由により、引用発明1及び引用文献2ないし5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 7 本願発明7について (1)対比 上記1(1)での本願発明1と引用発明1との対比を踏まえると、本願発明7と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「油圧ポンプと、 前記油圧ポンプを駆動可能な電動発電機と、 蓄電系と、 旋回用電動機と、 制御装置と、を有する、 ショベル。」 本願発明7と引用発明1とを対比する。 (相違点7A) 本願発明7では、蓄電系と他の系との間での電力の流出入を制限される制限状態である場合に、制御装置が「旋回用電動機が減速中に発生させる電力を前記電動発電機に供給」するのに対し、 引用発明1では、バッテリ(蓄電装置)11が使用不能の状態下で、旋回減速時に旋回電動機8に発生する回生電力を発電電動機2に供給するとは特定されていない点。 (相違点7B) 本願発明7では、制御装置は、「ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を停止される停止状態の場合、前記ショベルの姿勢に応じて旋回体の旋回を停止させるか蓄電系停止時旋回制御を採用するかを決定する」のに対し、 引用発明1はそのような特定を有していない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点7Bについて先に検討する。 引用文献1ないし5には「ショベルの作動中に前記蓄電系が、前記蓄電系と他の系との間での電力の流出入を停止される停止状態の場合、前記ショベルの姿勢に応じて旋回体の旋回を停止させるか蓄電系停止時旋回制御を採用するかを決定する」ことは何ら記載されておらず、またこの点が当業者にとり周知技術であるともいえない。 したがって、引用発明1において、本願発明7の相違点7Bに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。 よって、上記相違点7Aについて検討するまでもなく、本願発明7は、引用発明1及び引用文献2ないし5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 原査定について 上記第6で説示したように、本願発明1及び2は、拒絶理由において引用された引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない(本願発明3ないし7は、原査定の対象ではない)。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、 原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-12-18 |
出願番号 | 特願2016-511558(P2016-511558) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(E02F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 亀谷 英樹 |
特許庁審判長 |
小野 忠悦 |
特許庁審判官 |
前川 慎喜 井上 博之 |
発明の名称 | ショベル |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |