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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1347159
審判番号 不服2016-13660  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-12 
確定日 2018-12-18 
事件の表示 特願2014-240175「デジタルビデオコンテンツのマクロブロックレベルにおける適応フレーム/フィールド符号化」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日出願公開、特開2015- 62314〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2002年11月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年11月21日、米国 2001年11月27日、米国 2002年7月12日、米国 2002年7月23日、米国 2002年11月20日、米国)を国際出願日とする特願2003-548553号の一部を数次の分割を経て平成26年11月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成26年12月26日 :手続補正書の提出
平成27年10月14日付け:拒絶理由通知書
平成28年 3月18日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 4月21日付け:拒絶査定
平成28年 5月10日 :拒絶査定の謄本の送達
平成28年 9月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 3月 5日付け:拒絶理由通知書(最後)
平成30年 6月 8日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし26に係る発明は、平成30年6月8日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
なお、A?Kは、説明のために当審にて付したものであり、以下、「構成A」?「構成K」という。

「A 画像シーケンスのピクチャを符号化する符号化方法であって、
B 上記ピクチャを複数のマクロブロックに分割するステップと、
C 複数の処理ブロックを生成するステップと、
D 上記処理ブロックのうちの少なくとも1つを、フレーム符号化モードで一度に選択的に符号化し、及び、上記処理ブロックのうちの少なくとも1つを、フィールド符号化モードで一度に選択的に符号化するステップとを有し、
E 上記各マクロブロックは、複数のブロックを有し、
F 上記各処理ブロックは、マクロブロック対を含む複数のマクロブロックを処理ブロックとして集めることによって生成され、
G 上記符号化は、水平スキャンパス又は垂直スキャンパスで実行され、
H 上記選択的に符号化するステップは、上記処理ブロックの少なくとも一つについてフレーム符号化モードとフィールド符号化モードの何れで符号化されたかを示すフラグの挿入を含み、
I 上記処理ブロックに含まれる上記マクロブロックのトップフィールドの画素及びボトムフィールドの画素はフレーム符号化モードでは一緒に処理され、上記処理ブロックに含まれる上記マクロブロックのトップフィールドの画素及びボトムフィールドの画素はフィールド符号化モードでは別々に処理され、
J 上記処理ブロックに含まれるマクロブロックは、フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの両方で処理可能な同一のサイズを含むより小さいサイズを有する小ブロックに分割され、この小ブロックは動き補償による時間的予測に用いられ、
K 上記小ブロックのサイズは、フィールド符号化モードの場合またはフレーム符号化モードの場合、16×16画素、16×8画素、8×16画素、8×8画素、8×4画素、4×8画素、4×4画素の何れかのブロックサイズを含む、
A ことを特徴とする符号化方法。」

第3 当審が通知した平成30年3月5日付け拒絶理由について
当審が通知した平成30年3月5日付け拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。

この出願の請求項1?28に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開平4-108285号公報
引用文献2.特開平10-262249号公報
引用文献3.国際公開第01/86961号
引用文献4.特開2001-320715号公報

第4 各引用文献の記載事項及び引用発明について
(1)引用文献1の記載事項及び引用発明
当審が通知した拒絶理由で引用文献1として引用された特開平4-108285号公報には、図面とともに、次の記載がある。
なお、下線は、説明のために当審にて付したものである。

a「本発明は,画像データの高能率符号化方式に関するものである。」(1頁右下欄3行?4行)

b「一般に画像データの高能率化方式では,隣接画素との相関を利用してデータの圧縮を行う。従ってTVカメラ出力などのインタレース画像を符号化する場合はノンインタレース変換し,ノンインタレースデータとして垂直方向の画素相関を強くしてから符号化する方が圧縮効率が高くなる。しかし画像内に動きが生じた場合,ノンインタレースデータでは動いた物体のエッジがライン単位のくしの歯状になるなど垂直方向の相関が著しく低下する。このため動きのある部分ではインタレースデータで符号化した方が良い場合が多い。
そこで本発明では,ノンインタレースデータとインタレースデータの両方を作り,各々の垂直方向の相関を求め,より相関の強い方のデータを選択し符号化することで,動きのある部分はインタレースデータで,静止している部分はノンインタレースデータで適応的に符号化することを可能とした。これにより,従来問題であった動画に対する劣化を改善し,より効率良く符号化することができるようになる。」(1頁右下欄6行?2頁左上欄5行)

c「本発明の動作について以下に述べる。第1図のカメラ1はインタレース画像2を出力し,そのインタレース画像2をA/D変換器3でディジタル化する。次にこのA/D変換器3の出力であるインタレースデータ4を,ノンインタレース変換部5によってデータの並びを替えノンインタレースデータ6とし,全体に垂直方向の隣接画素の相関を強める。次にブロック分割部7でブロック符号化処理がし易いようにブロック単位のデータの並びに変更し,かつ垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたブロック順として,これをブロックノンインタレースデータ8とする。このブロックノンインタレースデータ8をそのまま符号化処理すると前述のように動きのある部分で問題となる。そこで前記ペアのブロックノンインタレースデータ8をインタレース変換部9に入力し,2ブロック間でインタレース変換をする。
例えば第4図(a)に示すブロック1,ブロック2という垂直2ブロックのブロックノンインタレースデータ8を前記インタレース変換部9で処理したブロックインタレースデータ10は,第4図(b)のようにフィールド1のデータがブロック1,フィールド2のデータがブロック2になる。このとき第4図(b)のブロック1とブロック2の境界に画像として,不連続が生じ画素の値に大きな隔たりが生じる恐れがありうるが,基本的にブロック符号化ではブロック内に前記隔たりが生じなければ良いので問題とならない。
次に前記ブロックノンインタレースデータ8とブロックインタレースデータ10についてそれぞれ相関演算部11,12を用い垂直方向の画素相関を求める。具体的には符号化処理部19の符号化方式に対する圧縮のし易さを求めるわけで,符号化処理部19の符号化方式が異なれば,前記相関演算部11,12の内容も多少異なることはある。そしてその結果である相関強度を示す相関値13,14を比較器15で比較し,制御信号16によってセレクタ17を制御することで,ブロックノンインタレースデータ8とブロックインタレースデータ10のうちより圧縮し易い方をデータ18として後段の符号化処理部19に入力することができる。また,セレクタ制御信号16も符号化処理部19に入力し,各ブロックがブロックノンインタレースデータ8とブロックインタレースデータ10のどちらを選択したかを示す情報として,符号データに付加する。従って,符号化処理ではこの情報をもとにもとの画像データの並びに構成することができる。」(2頁右下欄4行?3頁右上欄11行)

d「この符号化方式は,例えば16画素×16画素のブロックに対し,各ブロック内の画素の変化に応じて16画素×16画素,8画素×8画素,4画素×4画素,2画素×2画素の各ブロックで適応的にさらにブロック分割をするもので,分割されたブロック内の画素を(1)式に示す双線形関数で近似する。なお,この時16画素×16画素を基本処理ブロックと呼ぶことにする。」(3頁左下欄20行?右下欄7行)

e「では,第5図の説明をする。ここでは前記非等長ブロック分割符号化の基本処理ブロックを16画素×16画素とする。従って第5図のデータ28は,16画素×16画素に分割されたノンインタレースデータで,かつ垂直方向に連続したペアの基本処理ブロックになっているとする。」(3頁右下欄16行?4頁左上欄1行)

上記記載、並びにこの分野における技術常識を考慮し、引用文献1に記載される発明を以下に検討する。

(a)上記aの記載から、引用文献1には、画像データの符号化方式についての記載がある。また、上記bの記載から、引用文献1の画像データは、TVカメラ出力の画像であり、当該画像の符号化方式により、動画に対する劣化を改善し、より効率良く符号化することができるようになるものであるから、引用文献1の画像データは、動画像データであるといえる。
したがって、引用文献1には、動画像データの符号化方式が記載されている。

(b)上記b、cの記載から、引用文献1の動画像データの符号化方式は、TVカメラ出力などのインタレース画像をノンインタレース変換したノンインタレースデータを、ブロック符号化処理がし易いようにブロック単位のデータの並びに変更するものである。
そして、上記d、eの記載から、ブロック単位のデータは、ノンインタレースデータを基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックに分割したデータである。
以上まとめると、引用文献1の動画像データの符号化方式は、TVカメラ出力などのインタレース画像をノンインタレース変換したノンインタレースデータを、ブロック符号化処理がし易いように基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックに分割したデータの並びに変更する構成を有している。

(c)上記cの記載から、引用文献1の動画像データの符号化方式は、上記基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックを、垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたブロックノンインタレースデータとする構成を有している。

(d)上記cの記載から、引用文献1の動画像データの符号化方式は、上記ブロックノンインタレースデータを、インタレース変換部で処理して、フィールド1のデータがブロック1、フィールド2のデータがブロック2になるブロックインタレースデータとし、ブロックノンインタレースデータとブロックインタレースデータのうちより圧縮し易い方を符号化処理部に入力する構成を有している。

(e)上記dの記載から、引用文献1の動画像データの符号化方式は、上記基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックを、各ブロック内の画素の変化に応じて16画素×16画素、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素の各ブロックで適応的にさらにブロック分割をする構成を有している。

(f)上記cの記載から、引用文献1の動画像データの符号化方式は、各ブロックがブロックノンインタレースデータとブロックインタレースデータのどちらを選択したかを示す情報として、符号データに付加する構成を有している。

よって、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
なお、a?fは、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成a」?「構成f」という。)

(引用発明)
「a 動画像データの符号化方式であって、
b TVカメラ出力などのインタレース画像をノンインタレース変換したノンインタレースデータを、ブロック符号化処理がし易いように基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックに分割したデータの並びに変更し、
c 上記基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックを、垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたブロックノンインタレースデータとし、
d 上記ブロックノンインタレースデータを、インタレース変換部で処理して、フィールド1のデータがブロック1、フィールド2のデータがブロック2になるブロックインタレースデータとし、ブロックノンインタレースデータとブロックインタレースデータのうちより圧縮し易い方を符号化処理部に入力し、
e 上記基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックを、各ブロック内の画素の変化に応じて16画素×16画素、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素の各ブロックで適応的にさらにブロック分割し、
f 各ブロックがブロックノンインタレースデータとブロックインタレースデータのどちらを選択したかを示す情報として、符号データに付加する
a 動画像データの符号化方式。」

(2)引用文献2の記載事項
当審が通知した拒絶理由で、周知技術を示す文献として引用された引用文献2(特開平10-262249号公報)には、図面とともに、次の記載がある。
なお、下線は、説明のために当審にて付したものである。

【0038】図2は画像データにおけるMCUの区分の例を表す図である。図2に示す画像データは垂直方向にHmax 列、水平方向にVmax 行に分割されており、合計(Hmax ×Vmax )個のMCUに区分されている。MCU1個当たりの画素サイズは画像圧縮時の設定によるため不定である。また、各MCUの符号化ビット長は可変長符号化されているので一定ではないここで列h,行vのMCU位置を(h,v) と表す。水平走査方向の順とは(1,1)から(Hmax,1)まで、(1,2) から(Hmax,2)まで、…、(1,Vmax)から(Hmax,Vmax) までというように画像を水平方向に走査する順序のことをいい、垂直走査方向の順とは(1,1) から(1,Vmax)まで、(2,1) から(2,Vmax)まで、…、(Hmax,1)から(Hmax,Vmax) までというように画像を垂直方向に走査する順序のことをいうものとする。

(3)引用文献3の記載事項
当審が通知した拒絶理由で、周知技術を示す文献として引用された引用文献3(国際公開第01/86961号)には、図面とともに、次の記載がある。(なお、ウムラウトについては、eを後に付ける代用した記載とし、エスツェットについては、ssで代用した記載とする。)
訳については、引用文献3の国際出願の公表公報である特表2003-533141号公報の記載を参考に、当審で作成したものである。
なお、下線は、説明のために当審にて付したものである。

「Im Testmodell zu H.26L werden zur Bewegungskompensation Blockgroessen von 16 x 16 bis 4 x Pixel verwendet. Zur Transformationscodierung werden diese im Testmodell in 4 x 4 Bloecke zerlegt.」(2頁21?24行)
(H.26Lのテストモデルでは、動き補償に16×16ピクセルから4×4ピクセルまでのブロックサイズが使用される。このテストモデルでは変換符号化の際にブロックが4×4の大きさまで分解される。)

「In den standardisierten Codierverfahren und in H.26L erfolgt eine Teilung der Bildsequenz-Frames in Macrobloecke (MB) , die aus einem Block mit 16 x 16 Pixeln der Luminanzkomponente und zwei dazu korrespondierenden Chrominanz-Bloecken bestehen, haeufig 8 x 8 Pixel, 4:2:0 YUV-Format [5]. Im folgenden wird nur die Luminanz-Komponente betrachtet und mit MB bezeichnet. In Figur 1 sind die fuer H.26L vorgeschlagenen moeglichen Teilungen eines Macroblockes MB dargestellt. Der erste Block repraesentiert einen Macroblock mit 16 x 16 Pixeln, wohingegen der am feinsten unterteilte Macroblock 4 x 4 Unterbloecke aufweist.

Bei der Erfindung werden zwischen einem aktuellen Referenzbildsignal, insbesondere einem zeitlich zuvor uebertragenen oder ermittelten Bildsignal, und einem aktuellen Bildsignal einer Bewegtbildssequenz blockweise die Bewegungsvektoren geschaetzt, mit denen die Bewegungskompensation durchgefuehrt wird. Es werden dabei unterschiedliche Blockgroessen eingesetzt. Der Praediktionsfehler wird transformationscodiert. Die Blockgroesse der Transformationscodierung wird an die bei der Bewegungskompensation verwendete Blockgroesse gekoppelt, insbesondere wird die Blockgroesse fuer die Transformationscodierung des Praediktionsfehlers gleich der Blockgroesse gewaehlt, die fuer die Bewegungskompensation verwendet wurde. Dabei werden nicht nur quadratische sondern auch rechteckige Bloecke zugelassen, um maximal grosse Teile des Praediktionsfehler gemeinsam transformieren zu koennen. Dies fuehrt zu einer sehr effektiven Codierung, da die Blockgroessen fuer die Bewegungskompensation bereits im Uebertragungsbitstrom zu codieren sind und so fuer die adaptive Transformationscodierung bezueglich deren Blockgroessen keine weitere Signalisierung erforderlich ist.

Die Zahl von aufeinanderfolgenden Nullen innerhalb der Bloecke kann zu einer effektiven Codierung, insbesondere einer Lauflaengencodierung verwendet werden.

Figur 2 zeigt einige Macrobloecke MB mit 16 x 16 Bildpunkten in der linken oberen Ecke eines Frames. Die Macrobloecke MB sind hier mit kleinen Buchstaben fuer die Zeilen und grossen Buchstaben fuer die Spalten gekennzeichnet. Beispiel: Der erste Macroblock MB in der zweiten Zeile wird mit MB(bA) referenziert .

Dargestellt ist die Aufteilung der Macrobloecke, die zur Bewegungskompensation ermittelt wurde. Das heisst, Macroblock MB(aA) ist in vier Unterbloecke geteilt, denen jeweils ein Bewegungsvektor zugeordnet ist. Jeder dieser Unterbloecke wird unabhaengig von den anderen aus dem Referenz-Frame praediziert. MB(aB) hat nur einen Bewegungsvektor, der Unterblock entspricht hier also hier dem gesamten Makroblock MB. Im Beispiel MB(bA) gibt es acht Unterbloecke, die mit eigenen Bewegungsvektoren unabhaengig voneinander praediziert werden. Der Praediktionsfehler, der bei der Bewegungskompensation verbleibt, zeigt ebenfalls die dargestellte Blockstruktur.

Fuer die Transformationen mit adaptiver Blockgroesse wird auf die von der Bewegungskompensation bekannte Information ueber die Unterblock-Aufteilung der Macrobloecke zurueckgegriffen. Fuer jeden Macroblock MB wird jene Block-Transformation gewaehlt, die dieselbe Blockgroesse wie die Unterbloecke besitzen. Also: im Macroblock MB(aA) wird jeder der vier Unterbloecke mit einer 8 x 8-Transformation transformiert. Makroblock MB(aB) bekommt eine 16 x 16-Transformation, Makroblock MB (aC) zwei 8 x 16-Transformationen u.s.w. Die Blockgroesse der Transformationen entspricht also der Blockgroesse der Bewegungskompensation (Groesse der Unterbloecke).」(4頁4行?6頁2行)
(標準化された符号化プロセスおよびH.26Lでは、画像シーケンスのフレームを、16×16ピクセルのルミナンス成分のブロックとこれに相応する通常8×8ピクセルの2つのクロミナンスのブロックとからなるマクロブロック(MB)、4:2:0のYUVフォーマットに分割する[5]。以下ではルミナンス成分についてのみ考察し、そのブロックをMBとする。図1にはH.26Lで提案されるマクロブロックMBの可能な分割が示されている。第1のブロックは16×16ピクセルのマクロブロックを表しており、これに対して最も精細に分割されたマクロブロックは4×4ピクセルのサブブロックを有する。

本発明では現在の参照画像信号、特に時間的に以前に送信又は決定された画像信号と、動画像シーケンスの現在の画像信号とのあいだでブロックごとに動きベクトルが推定され、動き補償が行われる。このとき異なるブロックサイズが使用される。予測誤差が変換符号化される。変換符号化のブロックサイズが動き補償に使用されるブロックサイズに結合され、特に予測誤差変換符号化に対するブロックサイズは動き補償に使用されたブロックサイズと等しくなる。予測誤差の最大成分を共通に変換できるようにするために、正方ブロックだけでなく、矩形ブロックも使用できる。動き補償のブロックサイズがすでに送信ビットストリームとして符号化されているので、効率的な符号化が達成される。このようにすればブロックサイズのみの適応変換符号化のためのさらなるシグナリングは不要である。

ブロック内で連続するゼロの個数が効率的な符号化、特にランレングス符号化のために用いられる。

図2にはフレームの左上方の隅の16×16ピクセルのマクロブロックMBが示されている。ここではマクロブロックMBの行は小文字で、列は大文字で示される。例えば第2行の第1列のマクロブロックはMB(bA)と表す。

動き補償のために求められたマクロブロックを分割する様子が示されている。すなわちマクロブロックMB(aA)が4つのサブブロックへ分割され、それぞれに動きベクトルが関連付けられる。各サブブロックは相互に独立に基準フレームから予測される。MB(aB)は動きベクトルを1つしか持たないので、ここではサブブロックはマクロブロックMB全体に相応している。MB(bA)の場合には独立した動きベクトルを有する独立した8つのサブブロックが存在する。動き補償の際に残留する予測誤差も同様に図示のブロック構造を呈する。

適応型のブロックサイズでの変換は、動き補償から既知となるマクロブロックのサブブロック分割に関する情報が使用される。各マクロブロックMBごとにサブブロックと同じブロックサイズによるブロック変換が選択される。したがって、マクロブロックMB(aA)では4つのサブブロックが8×8変換により変換され、マクロブロックMB(aB)では16×16変換により変換され、マクロブロックMB(aC)では8×16変換により変換される。したがって、変換のブロックサイズは動き補償のブロックサイズ(サブブロックのサイズ)に相応する。)

また、図1において、図1の1は、16×16であるから、以下、16×8、8×16、8×8、8×4、4×8、4×4のサブブロックが示されている。

(4)引用文献4の記載事項
当審が通知した拒絶理由で、周知技術を示す文献として引用された引用文献4(特開2001-320715号公報)には、図面とともに、次の記載がある。
なお、下線は、説明のために当審にて付したものである。

【0017】本発明による方法においては、既に伝送された目下のBLフレームが、サンプリングレートと補間フィルタリングの引上げによってELフレームのサイズと分解能にもたらされる。参照基準としては、先行するEL画像フレームが用いられる。これは符号器側と復号器側において既存のものである。また参照フレームは任意に低域ろはしてもよい。それにより、相応に高度補間されるBLフレームよりも高い周波数成分は含まれなくなる。高度補間されたBLフレームと参照フレームの間では動き予測が実施される。使用されるフレームは、送信器側(符号器)にも受信器(復号器)側にも既知であるので、この動き予測は、符号器においても復号器においても実施され得る。そのため予測変位ベクトルの伝送は必要ない。変位ベクトルは、目下の符号化すべきELフレームの動き補償予測BKPのために用いられる。この動き補償予測BKPの際の参照基準として再び、先行のELフレームが用いられる。これも任意に事前に低域ろはしてもよい。動き補償予測BKPの際に1つのブロックが様々なサイズの下位ブロックに分割可能であるような符号化方法は、符号器のもとでも下位ブロックへのELブロックの最適な分割が任意に求められてもよいし、サブ情報として受信器側に伝送されてもよい。
【0018】本発明の方法は、符号化すべきELフレームの全てのブロックに対して任意に用いることができるし、あるいは既に符号化方式において存在する動き補償予測BKPモードに対して代替的に用いられてもよい。
【0019】以下では本発明による方法を、画像シーケンスの輝度成分の例で説明する。この場合の符号化は、16×16画素のいわゆるマクロブロック(MB)に基づいたブロック方式で行われるものとする。

【0036】ブロック分割の伝送
【0037】
復号器側の動き予測に対する探索コストを最小化するために、ブロックベースの方式のもとでは、マクロブロックMBの分割が許容され、(以下略)
【0038】予測モードの選択
この作動モードは、本発明による方法では既知の予測モードに並行して用いられる。それに対しては符号化コストがEIP(S1=open,S2=b,S3=a,S4=b)とEFP(S1=open,S2=b,S3=b,S4=a)とEBP(前述したようなスイッチ位置)の間で比較され、各マクロブロックMB毎に最も有利な方式が選択される。
【0039】様々なブロックサイズの適用
マクロブロックの可能な分割は、ビデオ符号化規格H.26LのテストモデルTML-3において提案された分割に基づいている(例えば公知文献“Telecom.Standardization Sector of ITU, H.26L test model long term 3, in study Group 16, Question 15, Meeting J. (Osaka, Japan), ITU, Mar. 2000”参照)。マクロブロックは、図3に示されているように、下位ブロックに分解される。それにより、16×16、16×8、8×16、8×8、8×4、4×8、4×4ピクセルのサイズの下位ブロックが生じる。エンハンスレイヤにおいては4つのマクロブロックが高度補完されたベースレイヤに相応する。(以下略)

第5 対比及び一致点、相違点について
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(a)構成Aと構成aの対比について
構成aの「符号化方式」は、構成b?構成fの処理を行うものであり、構成b?構成fの処理を行う『符号化方法』の発明を含むものといえる。
また、「動画像データの符号化方式」は、動画像データを符号化するものであり、動画像データを符号化する場合、動画像データを構成する一連の画像における各画像を符号化するものであるから、構成aは、『動画像データを構成する一連の画像における各画像を符号化する符号化方法』であるといえる。

そして、構成aの『動画像データを構成する一連の画像における各画像』は、構成Aの「画像シーケンスのピクチャ」に相当する。

したがって、構成aは構成Aに相当する。

(b)構成Bと構成bの対比について
構成bの「TVカメラ出力などのインタレース画像をノンインタレース変換したノンインタレースデータ」は、『動画像データを構成する一連の画像における各画像』であるといえる。
そうすると、構成bは、『動画像データを構成する一連の画像における各画像を複数の基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックに分割する』ものといえる。

そして、構成bの『動画像データを構成する一連の画像における各画像』は、上記(a)と同様に、構成Aの「画像シーケンスのピクチャ」、すなわち、構成Bの「上記ピクチャ」に相当する。
また、構成bの「基本処理ブロックである16画素×16画素のブロック」は、当該ブロックを基本として符号化するためのブロックであるから、構成Bの「マクロブロック」に相当する。

したがって、構成bは、構成Bに相当する。

(c)構成C、Fと構成cの対比について
構成cの「ブロックノンインタレースデータ」は、構成b、cより、ノンインタレースデータを分割して得られた基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックを、垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたものであるから、1つの画像には、複数のブロックノンインタレースデータが含まれていることとなり、構成cは、『複数のブロックノンインタレースデータを生成する』(以下、「構成c1」という。)ものといえる。
また、構成cは、『各ブロックノンインタレースデータは、基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックにおける垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたブロックノンインタレースデータとして集めることによって生成される』(以下、「構成c2」という。)ものといえる。

上記(b)で検討したように、「基本処理ブロックである16画素×16画素のブロック」が、構成Bの「マクロブロック」に相当する。

そして、構成c2の『基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックにおける垂直方向に連続する2ブロックをペア』とすることは、構成Fの「マクロブロック対を含む複数のマクロブロック」とすることに相当することから、構成c2の『ブロックノンインタレースデータ』は、構成Fの「処理ブロック」に相当するものである。

そうすると、構成c1は、構成Cの「複数の処理ブロックを生成する」ことに相当し、構成c2は、構成Fの「上記各処理ブロックは、マクロブロック対を含む複数のマクロブロックを処理ブロックとして集めることによって生成され」ることに相当する。

したがって、構成cは、構成C及び構成Fに相当する。

(d)構成Dと構成dの対比について
構成dの「ブロックノンインタレースデータ」は、上記(c)で検討したように、構成Dの「処理ブロック」に相当する。
そして、構成dは、垂直方向に連続する2ブロックをペアとした「ブロックノンインタレースデータ」と、垂直方向に連続する2ブロックをペアとした「ブロックノンインタレースデータを、インタレース変換部で処理して、フィールド1のデータがブロック1、フィールド2のデータがブロック2になるブロックインタレースデータ」のいずれかを符号化処理する構成であるといえる。
ここで、構成dの「ブロックノンインタレースデータ」を符号化処理することは、フレームを符号化するものといえるので、構成Dの「フレーム符号化モード」に相当するモードで符号化しているといえ、構成dの「フィールド1のデータがブロック1、フィールド2のデータがブロック2になるブロックインタレースデータ」を符号化処理することは、フィールドに対応する各ブロックを符号化するものといえるので、構成Dの「フィールド符号化モード」に相当するモードで符号化しているといえる。
また、「ブロックノンインタレースデータ」、「ブロックインタレースデータ」のいずれかを符号化処理する際には、いずれかのデータを選択し、2ブロックをペアとした「ブロックノンインタレースデータ」、「ブロックインタレースデータ」のいずれかを一度に符号化しているものといえるので、構成dは、構成Dのように「一度に選択的に符号化する」ものであるといえる。

そうすると、構成dは、構成Dの「上記処理ブロックのうちの少なくとも1つを、フレーム符号化モードで一度に選択的に符号化し、及び、上記処理ブロックのうちの少なくとも1つを、フィールド符号化モードで一度に選択的に符号化する」ことに相当する。

(e)構成E、J、Kと構成eの対比について
(e-1)構成Eと構成eの対比について
構成eは、「基本処理ブロックである16画素×16画素のブロック」を、「16画素×16画素、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素の各ブロック」で「さらにブロック分割」する構成であり、「基本処理ブロックである16画素×16画素のブロック」は、さらに分割された複数の「ブロック」を有するものといえる。
そして、上記(b)で検討したように、「基本処理ブロックである16画素×16画素のブロック」が、構成Eの「マクロブロック」に相当することから、構成eは、構成Eの「上記各マクロブロックは、複数のブロックを有」することに相当する。

(e-2)構成Jと構成eの対比について
構成cが「上記基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックを、垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたブロックノンインタレースデータ」とするものであるから、構成eは、『垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたブロックノンインタレースデータに含まれる基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックを、16画素×16画素、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素の各ブロックでさらにブロック分割する』ものといえる。
ここで、『垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたブロックノンインタレースデータに含まれる基本処理ブロックである16画素×16画素のブロック』は、構成Jの「上記処理ブロックに含まれるマクロブロック」に相当する。
また、『16画素×16画素、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素の各ブロックでさらにブロック分割する』ことは、16画素×16画素が基本処理ブロックと同一のサイズであり、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素がそれより小さいサイズといえるので、構成Jの「同一のサイズを含むより小さいサイズを有する小ブロックに分割され」ることに相当する。

さらに、『基本処理ブロックである16画素×16画素のブロック』は、上記(d)で検討したように、「フレーム符号化モード」、「フィールド符号化モード」に相当するモードで符号化するものといえ、いずれの符号化モードでも処理できるものといえるので、構成Jのように「フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの両方で処理可能な」構成を有するものといえる。

そうすると、構成eと構成Jは、「上記処理ブロックに含まれるマクロブロックは、フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの両方で処理可能な同一のサイズを含むより小さいサイズを有する小ブロックに分割され」る点で共通する。
しかしながら、小ブロックに関して、本願発明は、「動き補償による時間的予測に用いられ」ているのに対し、引用発明は、そのような限定がない点で相違する。

(e-3)構成Kと構成eの対比について
構成eは、「基本処理ブロックである16画素×16画素のブロック」を、「16画素×16画素、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素の各ブロック」で「さらにブロック分割」する構成であり、上記(d)で検討したように、「基本処理ブロックである16画素×16画素のブロック」は、「フレーム符号化モード」、「フィールド符号化モード」に相当するモードで符号化するものといえることから、構成eは、『分割されたブロックのサイズは、フィールド符号化モードの場合、フレーム符号化モードの場合、16画素×16画素、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素の何れかのブロックサイズを含む』構成である。

ここで、構成eの『分割されたブロック』は、構成Kの「小ブロック」に相当する。
そうすると、構成eと構成Kは、「上記小ブロックのサイズは、フィールド符号化モードの場合またはフレーム符号化モードの場合、16×16画素、8×8画素、4×4画素の何れかのブロックサイズを含む」点で共通する。
しかしながら、小ブロックのサイズに関して、本願発明は、「16×16画素、16×8画素、8×16画素、8×8画素、8×4画素、4×8画素、4×4画素の何れか」であるのに対し、引用発明は、『16画素×16画素、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素の何れか』である点で相違する。

(f)構成Gについて
構成Gは、「上記符号化は、水平スキャンパス又は垂直スキャンパスで実行され」るのに対し、引用発明は、そのように限定されるものではない点で相違する。

(g)構成Hと構成fの対比について
上記(d)で検討したように、構成fの「ブロックノンインタレースデータ」と「ブロックインタレースデータ」は、それぞれ、構成Hの「フレーム符号化モード」、「フィールド符号化モード」に相当するモードで符号化するものといえるので、構成fの「各ブロックがブロックノンインタレースデータとブロックインタレースデータのどちらを選択したかを示す」は、構成Hの「フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの何れで符号化されたかを示す」に相当する。

また、構成fの「情報として、符号データに付加する」ことと、構成Hの「処理ブロックの少なくとも一つについて」「フラグの挿入」をすることは、情報を挿入するという点で共通する。
そうすると、構成Hと構成fは、「上記選択的に符号化するステップは、フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの何れで符号化されたかを示す情報の挿入」を含む点で共通する。

しかしながら、「フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの何れで符号化されたかを示す情報」に関して、本願発明は、「処理ブロックの少なくとも一つについて」「フラグの挿入」をするものであるのに対し、引用発明は、情報をどのように挿入するかについての限定がない点で相違する。

(h)構成Iについて
構成Iは、「上記処理ブロックに含まれる上記マクロブロックのトップフィールドの画素及びボトムフィールドの画素はフレーム符号化モードでは一緒に処理され、上記処理ブロックに含まれる上記マクロブロックのトップフィールドの画素及びボトムフィールドの画素はフィールド符号化モードでは別々に処理され」るのに対し、引用発明の符号化処理は、そのように限定されるものではない点で相違する。


2 一致点、相違点
以上より、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)

画像シーケンスのピクチャを符号化する符号化方法であって、
上記ピクチャを複数のマクロブロックに分割するステップと、
複数の処理ブロックを生成するステップと、
上記処理ブロックのうちの少なくとも1つを、フレーム符号化モードで一度に選択的に符号化し、及び、上記処理ブロックのうちの少なくとも1つを、フィールド符号化モードで一度に選択的に符号化するステップとを有し、
上記各マクロブロックは、複数のブロックを有し、
上記各処理ブロックは、マクロブロック対を含む複数のマクロブロックを処理ブロックとして集めることによって生成され、
上記選択的に符号化するステップは、データについて、フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの何れで符号化されたかを示す情報の挿入を含み、
上記処理ブロックに含まれるマクロブロックは、フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの両方で処理可能な同一のサイズを含むより小さいサイズを有する小ブロックに分割され、
上記小ブロックのサイズは、フィールド符号化モードの場合またはフレーム符号化モードの場合、16×16画素、8×8画素、4×4画素の何れかのブロックサイズを含む、
ことを特徴とする符号化方法。

(相違点)
(1)本願発明は、「上記符号化は、水平スキャンパス又は垂直スキャンパスで実行され」るのに対し、引用発明は、そのような限定がない点。(以下、「相違点1」という。)

(2)フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの何れで符号化されたかを示す情報に関して、本願発明は、「処理ブロックの少なくとも一つについて」「フラグの挿入」をするものであるのに対し、引用発明は、情報をどのように挿入するかについての限定がない点。(以下、「相違点2」という。)

(3)符号化処理に関して、本願発明は、「上記処理ブロックに含まれる上記マクロブロックのトップフィールドの画素及びボトムフィールドの画素はフレーム符号化モードでは一緒に処理され、上記処理ブロックに含まれる上記マクロブロックのトップフィールドの画素及びボトムフィールドの画素はフィールド符号化モードでは別々に処理され」るのに対し、引用発明は、そのような限定がない点。(以下、「相違点3」という。)


(4)小ブロックに関して、本願発明は、「動き補償による時間的予測に用いられる」のに対し、引用発明は、そのような限定がなく、小ブロックのサイズに関して、本願発明は、「16×16画素、16×8画素、8×16画素、8×8画素、8×4画素、4×8画素、4×4画素の何れか」であるのに対し、引用発明は、「16画素×16画素、8画素×8画素、4画素×4画素、2画素×2画素の何れか」である点。(以下、「相違点4」という。)

第6 判断
上記相違点1?4について検討する。

(1)相違点1について
上記第4(2)で周知技術を示す文献として提示した引用文献2に記載されているように、画像データを圧縮する際に、画像データを分割し、水平方向もしくは垂直方向に操作する順序で圧縮すること、すなわち、「符号化が水平スキャンパス又は垂直スキャンパスで実行され」ることは、周知技術であり、引用発明の処理単位であるブロックノンインタレースデータもしくはブロックインタレースデータの符号化に際して、当該周知技術を適用して本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
引用発明において、ブロックノンインタレースデータは、基本処理ブロックである16画素×16画素のブロックを、垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたデータであり、ブロックインタレースデータは、垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたデータであるブロックノンインタレースデータをインタレース変換部で処理して、フィールド1のデータがブロック1、フィールド2のデータがブロック2になるデータである。

すなわち、引用発明のブロックノンインタレースデータ及びブロックインタレースデータは、いずれも垂直方向に連続する2ブロックをペアとした単位のデータであり、引用発明の符号化処理部に入力するデータがブロックノンインタレースデータであるかブロックインタレースデータであるかは、ブロック単位で異なるものでなく、垂直方向に連続する2ブロックをペアとした単位で異なるものである。
そうすると、引用発明において、符号化処理部に入力したデータをブロックノンインタレースデータとブロックインタレースデータのどちらを選択したかを示す情報として、符号データに付加する際には、各ブロックに付加するのではなく、垂直方向に連続する2ブロックをペアとした単位で付加するように設計しようと考えるのが自然である。
また、符号化処理において、情報を符号データに付加する際に、フラグとして挿入することは、周知の技術思想である。

したがって、引用発明において、フレーム符号化モードとフィールド符号化モードの何れで符号化されたかを示す情報に関して、垂直方向に連続する2ブロックをペアとした単位についてフラグとして挿入する、すなわち、「処理ブロックの少なくとも一つについて、フラグとして挿入する」ようにして、本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(3)相違点3について
引用発明におけるブロックノンインタレースデータとは、構成bより、インタレース画像をノンインタレース変換したノンインタレースデータを、16画素×16画素のブロックに分割し、垂直方向に連続する2ブロックをペアとしたデータである。
ここで、ブロックノンインタレースデータを符号化処理する場合には、上記第4(1)cに記載されたように、垂直方向の相関が強いデータであるから、垂直方向に連続する2ブロックを単位として順次符号化するようにし、ブロックノンインタレースデータに含まれるトップフィールドとボトムフィールドの画素を一緒に処理するように考えるのが自然である。
一方、ブロックインタレースデータは、上記第4(1)cに記載されたように、ブロック1とブロック2が、それぞれ、フィールド1とフィールド2であるので、その境界に不連続が生じているものである。
境界が不連続であるブロックを符号化する場合に、個々に符号化することは、符号化技術における常套手段であるから、フィールド1とフィールド2をまとめて符号化せずに、個々に符号化するようにし、それぞれのフィールドに含まれるトップフィールドとボトムフィールドの画素を別々に処理するように考えるのが自然である。

そうすると、引用発明の符号化処理に関して、本願発明のように、「上記処理ブロックに含まれる上記マクロブロックのトップフィールドの画素及びボトムフィールドの画素はフレーム符号化モードでは一緒に処理され、上記処理ブロックに含まれる上記マクロブロックのトップフィールドの画素及びボトムフィールドの画素はフィールド符号化モードでは別々に処理され」るようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(4)相違点4について
上記第4(3)、(4)で周知技術を示す文献として提示した引用文献3、4に記載されているように、マクロブロックを16×16、16×8、8×16、8×8、8×4、4×8、4×4画素の下位ブロックに分割し、分割された下位ブロックを動き補償に用いることは周知技術であり、引用発明の小ブロックに当該周知技術を適用して、本願発明のように、「動き補償による時間的予測に用いられ」、「16×16画素、16×8画素、8×16画素、8×8画素、8×4画素、4×8画素、4×4画素の何れか」とする構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2?4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

第7 まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2?4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-18 
結審通知日 2018-07-23 
審決日 2018-08-07 
出願番号 特願2014-240175(P2014-240175)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 鳥居 稔
渡辺 努
発明の名称 デジタルビデオコンテンツのマクロブロックレベルにおける適応フレーム/フィールド符号化  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  

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