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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07F
管理番号 1347161
審判番号 不服2016-16059  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-27 
確定日 2018-12-18 
事件の表示 特願2014-530958「シロキサンコポリマーの調製プロセス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日国際公開、WO2013/043725、平成26年11月27日国内公表、特表2014-531445〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年9月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年9月19日、アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成26年5月15日に上申書と手続補正書が提出され、平成27年9月8日付けで拒絶理由が通知され、同年12月14日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年5月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年10月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出され、同年12月7日に手続補正書(方式)が提出され、平成29月1月20日付けで前置報告がされ、同年10月10日付けで当審から審尋が通知されたところ、それに対して何ら回答がされなったものである。


第2 平成28年10月27日にされた手続補正についての却下の決定
[結論]
平成28年10月27日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成28年10月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成27年12月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲を補正するものであって、以下の補正事項1及び2を含むものである。

(1) 補正事項1
補正前の請求項8に係るプロセスの発明において、請求項1又は7のプロセスの発明を引用していたところ、請求項1の削除に伴い、新たな請求項6に係るプロセスの発明を引用して整合性をとるとともに、新たに、補正後の請求項1に係る組成物の発明を引用し、発明を「組成物又はプロセス。」とする補正。

補正前:「【請求項8】
前記アルケンが1-オクテン、1-ドデセン又は1-イソオクテンである、請求項1又は7に記載のプロセス。」

補正後:「【請求項7】
前記アルケンが1-オクテン、1-ドデセン又は1-イソオクテンである、請求項1又は6に記載の組成物又はプロセス。」
(なお、下線は当審で付した。)

(2) 補正事項2
補正事項1と同様に、補正前の請求項9ないし11に係るプロセスの発明において、請求項1の削除にともなう請求項の引用の整合性をとると共に、新たに、補正後の請求項1に係る組成物の発明を引用し、補正後の請求項8ないし10に係る発明を「組成物又はプロセス。」とする補正。

2 補正の適否
補正事項1及び2に係る本件補正は、補正前はプロセスに係る発明であったところ、補正後は、新たに請求項1に係る組成物の発明も引用し、「組成物又はプロセス。」に係る発明とするものである。
当該補正により、プロセスの発明に加えて、新たに組成物の発明も含むこととなったので、当該補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするものではない。

3 補正却下の決定のむすび
以上のとおり、補正事項1及び2を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反しているから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の[結論]のとおり、決定する。


第3 本願発明
平成28年10月27日付けの手続補正は上記のように却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成27年12月14日に提出の手続補正書により補正された請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
シロキサンコポリマーの調製プロセスであって、
1)
i)8?12個の炭素原子を含む1-アルケンと、
ii)次の式:
【化1】


を有する環状シロキサンと、
を、白金触媒の存在下で反応させる工程であって、式中、Rは1?3個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、cは4以上であり、これにより次の式:
【化2】


を含む環状コポリマーが形成され、式中、R’は8?12個の炭素原子を有するアルキル基であり、a+b=cである、工程と、
2)前記未反応のアルケン及び揮発性環状シロキサンを前記反応混合物から除去する工程であって、ここにおいてアルケン:環状シロキサンのモル比は≧1である、工程と、
により、前記環状コポリマーは、100g/L未満の、ASTM 5095による揮発性有機物含有量を有する、プロセス。」


第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下の理由を含むものである。

本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることはできず、また、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2003-261783号公報

第5 原査定の理由に対する当審の判断
当審は、原査定の理由のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることはできず、また、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。
以下、詳述する。

1 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
(1) 引用文献1に記載された事項
ア 「【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分として含有する硬化性組成物であって、(B)成分が、SiH基と反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物(α)と、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることを特徴とする硬化性組成物。

【請求項4】
(α)成分が炭素数7?10の炭化水素であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。

【請求項6】
(β)成分が下記一般式(II)
【化2】

(式中、R^(5)R^(2)は炭素数1?6の有機基を表し、nは3?10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」(請求項1、4、6)
(当審注:請求項6の式の説明の「R^(5)R^(2)」 は「R^(2)」の誤記と思われる。)

イ 「【0007】
・・・
(β)成分が下記一般式(II)
【0008】
【化4】

(式中、R^(2)は炭素数1?6の有機基を表し、nは3?10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性組成物(請求項6)であり、・・・である。」

ウ 「【0073】(α)成分の具体的な例としては、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ヘキセン、2,3,3-トリメチル-1-ブテン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン等のような鎖状脂肪族炭化水素系化合物類、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、αピネン、βピネン等のような環状脂肪族炭化水素系化合物類、・・・ビニルトリフェニルシラン等のシリコン化合物等が挙げられる。さらに、片末端アリル化ポリエチレンオキサイド、片末端アリル化ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系樹脂、片末端アリル化ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、片末端アリル化ポリブチルアクリレート、片末端アリル化ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、等の片末端にビニル基を有するポリマーあるいはオリゴマー類等も挙げることができる。」

エ 「【0078】上記のような(α)成分としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
((β)成分)
(β)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンである。
【0079】具体的には、例えば
【0080】
・・・
【0081】
・・・が挙げられる。ここで、(α)成分との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(II)
【0082】
【化34】

(式中、R^(2)は炭素数1?6の有機基を表し、nは3?10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0083】一般式(II)で表される化合物中の置換基R^(2)は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0084】入手容易性等から、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。」

オ 「【0087】(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合の(α)成分と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、得られる(B)成分と(A)成分とのヒドロシリル化による硬化物の強度を考えた場合、(B)成分のSiH基が多い方が好ましいため、一般に前記(α)成分中のSiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合の数(X)と、前記(β)成分中のSiH基の数(Y)との比が、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。また(B)成分の(A)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧Y/Xであることが好ましく、5≧Y/Xであることがより好ましい。
【0088】(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、・・・も本発明において有用である。
【0089】・・・
【0090】これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。」

カ 「【0098】(α)成分と(β)成分を反応させた後に、溶媒あるいは/および未反応の(α)成分あるいは/および(β)成分を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(B)成分が揮発分を有さないため(A)成分との硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。 ・・・」(【0098】)

キ 「【0171】
・・・
(合成例3)
200mLの四口フラスコに、磁気攪拌子、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン40g、1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン38.8gを入れ、窒素雰囲気下オイルバス中で50℃に加熱、攪拌した。1-オクテン18.1g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)6.1μL、トルエン10gの混合物を滴下漏斗から、35分かけて滴下した。40分同温で加熱した後、未反応の1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。^(1)H-NMRによりこのものは1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部が1-オクテンとヒドロシリル化反応したものであることがわかった(反応物Cと称する)。また、1,2-ジブロモメタンを内部標準に用いて^(1)H-NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、6.82mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0172】
【化39】



(2) 引用文献1に記載された発明
摘示事項アないしキ、特にキから、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「200mLの四口フラスコに、磁気攪拌子、滴下漏斗、冷却管をセットしトルエン40g、1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン38.8gを入れ、窒素雰囲気下オイルバス中で50℃に加熱、攪拌し、1-オクテン18.1g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)6.1μL、トルエン10gの混合物を滴下漏斗から、35分かけて滴下し、40分同温で加熱した後、未反応の1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去して、1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部が1-オクテンとヒドロシリル化反応した反応物を得るための方法。」(以下、「引用発明」という。)

2 対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン」、「1-オクテン」、「白金ビニルシロキサン錯体」は、それぞれ本願発明の「ii)次の式:
【化1】


を有する環状シロキサン」、「i)8?12個の炭素原子を含む1-アルケン」、「白金触媒」に相当する。
また、引用発明の「1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部が1-オクテンとヒドロシリル化反応した反応物」は、本願発明の「次の式:
【化2】


を含む環状コポリマーが形成され、式中、R’は8?12個の炭素原子を有するアルキル基であり、a+b=cである」環状ポリマーに相当する。
すると、引用発明の「200mLの四口フラスコに、磁気攪拌子、滴下漏斗、冷却管をセットしトルエン40g、1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン38.8gを入れ、窒素雰囲気下オイルバス中で50℃に加熱、攪拌し、1-オクテン18.1g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)6.1μL、トルエン10gの混合物を滴下漏斗から、35分かけて滴下し、40分同温で加熱した後、」との工程は、「1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部が1-オクテンとヒドロシリル化反応した反応物」が得られる工程であるから、本願発明の
「1)
i)8?12個の炭素原子を含む1-アルケンと、
ii)次の式:
【化1】


を有する環状シロキサンと、
を、白金触媒の存在下で反応させる工程であって、式中、Rは1?3個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、cは4以上であり、これにより次の式:
【化2】


を含む環状コポリマーが形成され、式中、R’は8?12個の炭素原子を有するアルキル基であり、a+b=cである、工程」
に相当する。
また、引用発明の「未反応の1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去し」た工程は、「揮発性環状シロキサンを反応混合物から除去する工程」の限りにおいて、本願発明の「2)前記未反応のアルケン及び揮発性環状シロキサンを前記反応混合物から除去する工程」に相当する。
そして、引用発明の「1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部が1-オクテンとヒドロシリル化反応した反応物を得るための方法」は、「シロキサンコポリマーの調製プロセス」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、
「シロキサンコポリマーの調製プロセスであって、
1)
i)8?12個の炭素原子を含む1-アルケンと、
ii)次の式:
【化1】


を有する環状シロキサンと、
を、白金触媒の存在下で反応させる工程であって、式中、Rは1?3個の炭素原子を
有するアルキルラジカルであり、cは4以上であり、これにより次の式:
【化2】


を含む環状コポリマーが形成され、式中、R’は8?12個の炭素原子を有するアルキル基であり、a+b=cである、工程と、
を有する、プロセス。」
の発明である点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点1>
本願発明では、「2)前記未反応のアルケン及び揮発性環状シロキサンを前記反応混合物から除去する工程であって、ここにおいてアルケン:環状シロキサンのモル比は≧1である、工程と、」との特定があるのに対し、引用発明1では、「未反応の1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去」するとの特定がある点。

<相違点2>
環状コポリマーについて、本願発明は、「前記環状コポリマーは、100g/L未満の、ASTM 5095による揮発性有機物含有量を有する」との特定があるのに対し、引用発明は、この特定がない点。

(2) 判断
上記相違点1について検討する。
まず、引用発明において、1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの沸点は約134℃であり(必要であれば、下記の参考情報1、2参照)、また、1-オクテンの沸点は122?123℃であるから(必要であれば、参考情報3、4参照)、未反応の「1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン」を減圧留去する際に、それよりも沸点の低い未反応の「1-オクテン」も減圧留去されるのは自明である。

参照情報1:Chemical Book、「1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラシラ-2,4,6,8-テトラオキサシクロオクタン」、[online]、[平成30年6月27日検索]、インターネット(URL:http://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB1453337.htm)
参照情報2:東京化成工業株式会社 製品情報、[2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン]、[online]、[平成30年6月27日検索]、インターネット[http://www.tcichemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/T2076/
参考情報3:Chemical Book、「1-オクテン」、[online]、[平成30年6月27日検索]、インターネット(URL:http://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB6708177.htm)
参考情報4:国際化学物質安全性カード(ICSC)、「1-オクテン」、[online]、[平成30年6月27日検索]、インターネット(URL:http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0934c.html)

そうすると、引用発明の「未反応の1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去」する工程は、本願発明の「2)前記未反応のアルケン及び揮発性環状シロキサンを前記反応混合物から除去する工程」に相当することになる。
また、本願発明の「ここにおいてアルケン:環状シロキサンのモル比は≧1である、工程」について、本願明細書の段落【0013】の記載からみて、これは反応時のアルケン/環状シロキサンのモル比であると理解できる。この観点から引用発明をみると、「1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン38.8g」は分子量240.51なので約0.1613モルに相当し、「1-オクテン18.1g」は分子量112.21なので約0.1604モルとなり、ほぼアルケン:環状シロキサンのモル比は1であるから、本願発明の「アルケン:環状シロキサンのモル比は≧1である」との条件も満たすものである。
よって、相違点1は、両発明において実質的な相違点とはならない。

次に相違点2について検討する。
引用発明には、揮発性有機物含有量についての特定はない。
本願明細書の段落【0013】には、低VOC撥水性活性物質化合物を得るためには、未反応の揮発性反応物を反応生成物から除去することが重要であり、アルケンの環状シロキサンに対する最小比が必要であることが記載されている。そして、本願発明の実施例では、揮発性成分を反応混合物から減圧又は真空で除去しているのに対し、比較実施例でVOC含有量は100g/L以上のものは、すべて真空除去せずにそのまま用いたものである(【0061】ないし【0066】)。
この点について、引用発明では、未反応の1、3、5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(環状シロキサンに相当)を減圧で除去し、それに伴って1-オクテンも除去され、かつ、アルケンと環状シロキサンのモル比の関係も相違点1の関係を満たすから、引用発明も本願発明と同程度の揮発性有機物含有量となる蓋然性が極めて高いものである。
そうすると、相違点2について、両発明における実質的な相違点とは認めることはできない。
よって、本願発明は、引用発明と相違するところはなく、引用文献1に記載された発明である。

また、仮に相違点1又は2において両発明が異なるとしても、相違点1については、アルケンと環状シロキサンのモル比を引用発明における割合を基に近接範囲で設定することは当業者が適宜なし得たことである。相違点2についても、引用発明において、反応後に未反応物等を除去する工程が特定されているから、揮発性有機物含有量を低く抑えることは、当業者であれば容易になし得たことと認められる。

本願発明の効果についても検討するに、本願発明の実施例では、揮発性有機化合物の除去を全くしないものとの比較のみであって、揮発性有機物含有量の量を特定量とすることにより、その閾値の前後で予測できない効果が奏されることを示すものでもないから、本願発明に係る効果が格別顕著なものとは認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることはできない。
また、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることはできない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、その理由により拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-17 
結審通知日 2018-07-23 
審決日 2018-08-07 
出願番号 特願2014-530958(P2014-530958)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C07F)
P 1 8・ 121- Z (C07F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 洋樹山本 昌広  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 岡崎 美穂
渕野 留香
発明の名称 シロキサンコポリマーの調製プロセス  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  

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