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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1347240
審判番号 不服2017-17742  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-30 
確定日 2019-01-15 
事件の表示 特願2016-119078「ファイル一括処理方法及びそれによるプログラムを遂行するデジタルデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月12日出願公開、特開2017- 10547、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月15日の出願(パリ条約による優先権主張2015年6月16日、大韓民国)であって、平成29年2月20日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年5月30日付けで手続補正がされたが、平成29年7月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後、平成30年8月29日付けで当審より拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由」という。)、平成30年11月29日に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年7月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1、5、7、8、10、11、13に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2 本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献A-Eに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2013-109666号公報
B.特開2015-22479号公報
C.特開2000-259306号公報
D.特開2010-108277号公報
E.特開2013-105410号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1、4-13に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2 本願請求項1、4-13に係る発明は、引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2012/0030566号明細書(当審において新たに引用した文献)

理由3 本件出願は、特許請求の範囲の請求項6の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由4 本件出願は、特許請求の範囲の請求項6の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成30年11月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1方向に沿ってファイルに対応する項目が表示されると共に前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記項目が複数配列され、タッチ入力可能な表示装置を備えるデジタルデバイスを用いて、
前記複数の項目のうち少なくとも2つ以上の項目を選択可能な選択モードに進み、
前記少なくとも2つ以上の項目を前記第2方向へとタッチ入力することで選択し、
前記少なくとも2つ以上の項目に対応する2つ以上の前記ファイルを一括処理するための実行命令を選択及び処理すること、
を含み、
前記選択モードに進むことは、
前記複数の項目のうちいずれか一つの項目をタッチ入力することで前記いずれか一つの項目を決定することを含み、
前記選択することは、
前記いずれか一つの項目を基点として前記第2方向へとタッチ入力することで、前記2つ以上の項目のうち前記第2方向へのタッチ入力で交差する少なくとも一つの項目を選択することを含み、
前記第2方向へとタッチ入力することは、
前記選択モードに進むためのタッチ入力を遂行した後手を離さないで連続して遂行するタッチ入力であることを含み、
前記いずれか一つの項目を決定することは、
前記複数の項目のうちいずれか一つの項目上で、前記第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である場合に、選択された項目に決定することであることを特徴とするファイル一括処理方法。」

なお、本願発明2-11の概要は以下のとおりである。
請求項2-10は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明11は、本願発明1に対応するデジタルデバイスの発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
当審拒絶理由に引用した引用文献1(米国特許出願公開第2012/0030566号明細書)には、図面(特に、図24-27を参照)とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。訳は当審訳。以下同様。)。

(1) 段落[0011]-[0012]
「[0011] Swipe gestures such as two-finger swipe gestures may be used to select ranges of data items. For example, a user may swipe over a number of data items in a list. Each data item that is touched by part of the swipe may be selected and highlighted. A subset of the selected data items may be deselected using a two-finger swipe gesture. When swiping over both selected and unselected data items, all touched data items may be selected. Separate ranges of selected items can be merged into a unified range by swiping across all intervening unselected items.
[0012] After selecting data items of interest using touch gestures such as these, actions may be taken on the selected data items. For example, items may be deleted, moved, copied, cut, renamed, compressed, attached to an email, or otherwise processed using application and operating system code.」
(訳:
[0011] 2本指スワイプ・ジェスチャなどのスワイプ・ジェスチャによって、データアイテムを範囲選択できる。例えば、ユーザは、リスト内の多数のデータアイテムに渡ってスワイプできる。スワイプの一部が接触した各データが選択されて、強調表示され得る。選択済みデータアイテムのサブセットを、2本指のスワイプジェスチャを使用して選択解除できる。選択済みおよび未選択のデータアイテムの両方の上でスワイプしたとき、タッチされた全データアイテムを選択することができる。点在する選択済みアイテムの範囲を、間に介在する未選択アイテムをすべてスワイプすることによって、一体化された範囲に統合できる。
[0012] これらのタッチジェスチャを用いて、関心のあるデータアイテムを選択した後に、選択されたデータアイテムに対してアクションを起こすことができる。例えば、アイテムは、削除され、移動され、コピーされ、カットされ、リネームされ、圧縮され、電子メールに添付され、または、アプリケーションとOSプログラムを用いてその他の処理をすることができる。)

(2) 段落[0064]
「[0064] Touch commands (gestures) may be gathered using a single touch element (e.g., a touch sensitive button), a one-dimensional touch sensor array (e.g., a row of adjacent touch sensitive buttons), or a two-dimensional array of touch sensitive elements (e.g., a two-dimensional array of capacitive touch sensor electrodes or other touch sensor pads). Two-dimensional touch sensor arrays allow for gestures such as swipes and flicks that have particular directions in two dimensions (e.g., right, left, up, down). Touch sensors may, if desired, be provided with multitouch capabilities, so that more than one simultaneous contact with the touch sensor can be detected and processed. With multitouch capable touch sensors, additional gestures may be recognized such as multifinger swipes, multifinger taps, pinch commands, etc.」
(訳:
[0064] タッチ・コマンド(ジェスチャ)は、シングルタッチ要素(例えば、タッチ感応ボタン)を用いて、一次元のタッチセンサ・アレイ(例えば、互いに隣接するタッチ感応ボタンの列)を用いて、または、タッチ感知素子の2次元アレイ(例えば、静電容量式タッチセンサの電極の2次元のアレイ又は他のタッチセンサパッド)を用いて、収集することができる。2次元のタッチセンサアレイを用いることで、2次元方向(例えば右、左、上、下)の特定の方向を有するスワイプ、フリック等のジェスチャが可能となる。必要に応じて、タッチセンサにはマルチタッチ機能が設けられてもよい、タッチセンサとの複数の同時接触を検出及び処理することができる。マルチタッチ可能なタッチセンサを用いて、複数指のスワイプ、複数指のタップ、ピンチコマンド等の付加的なジェスチャを認識することができる。)

(3) 段落[0112]-[0117]
「[0112] Gestures such as multifinger swipes may be used in selecting data items 76. An illustrative example is shown in FIG. 24-27.
[0113] As shown in FIG. 24, computing equipment 12 may display data items 76 (e.g., clickable files) in list 74 on screen 72. A user may use a multifinger gesture such as a two-finger tap or hold (gesture 124) to select and highlight a desired one of data items 76. Highlight 80 may be used to highlight the selected data item.
[0114] The user may perform a swipe such as two-finger swipe 126 of FIG. 25 to select multiple data items (e.g., to select range R of data items 76).
[0115] Items that have been selected and highlighted can be deselected. For example, a user may use swipe gesture 128 of FIG. 26 to deselect the data items in range R2 of list 74, thereby breaking range R into sub-ranges R1 and R2(当審注:「R3]の誤記と認める。) of selected items 76.
[0116] FIG. 27 shows how computing equipment 12 may respond to detection of a swipe gesture such as a two-finger swipe gesture that passes over the selected items of range R1 and range R2(当審注:「R3]の誤記と認める。) and the deselected (unselected) items of range R2. As shown in FIG. 27, when two-finger swipe gesture 130 is detected, computing equipment 12 may select and highlight all data items that are covered by the swipe, thereby forming a unified group (range R4) of selected data items 76, each of which is highlighted with a respective highlight 80.
[0117] Swipe gestures such as gestures 126, 128, and 130 may be performed directly on data items 76 or may be performed adjacent to data items 76 (i.e., at a location that is horizontally offset from data items 76 when data items 76 are oriented in a vertical one-dimensional list as in the example of FIGS. 24-27). The swipe gestures may be one-finger gestures, two-finger gestures, or may use three or more fingers.」
(訳:
[0112] 複数指のスワイプなどのジェスチャを、データアイテム76を選択する際に使用できる。図24-27に、例示的な実施例が示される。
[0113] 図24に示すように、コンピューティング装置12は、スクリーン72上にリスト74として、データアイテム76(例えば、クリック可能なファイル)を表示できる。ユーザは2本指のタップやホールド(ジェスチャ124)のような複数指のジェスチャを使用して、データアイテム76のうちの所望の1つを選択して強調する。ハイライト80は選択されたデータアイテムを強調表示するために使用できる。
[0114] 図25のように、ユーザは2本指のスワイプ126などのスワイプを実行して、複数のデータアイテム(例えば、データアイテム76の範囲R)を選択できる。
[0115] 選択されて強調表示されたアイテムを選択解除することができる。例えば、図26のようにユーザはスワイプジェスチャ128によって、リスト74の範囲R2のデータアイテムを選択解除して、これによって、範囲Rを、選択された項目76の部分的な範囲であるR1とR3に分断することができる。
[0116] 図27は、コンピューティング装置12が、範囲R1、R3の選択されたアイテムと、選択されていない(未選択の)アイテムの範囲R2の上を通過する2本指のスワイプジェスチャなどのスワイプジェスチャを検出したとき、どのように反応するかを示している。図27に示されるように、2本指のスワイプジェスチャ130が検出されると、コンピューティング装置12は、スワイプされた範囲の全データアイテムを選択して、強調表示することができ、これによって、選択されたデータアイテム76の一体化されたグループ(範囲R4)を形成し、ここで、それぞれは、ハイライト80で強調表示されている。
[0117] ジェスチャ126、128、130などのスワイプジェスチャは、データアイテム76上で直接行ってもよいし、データアイテム76の隣接位置で(すなわち、図24-27に示されるように、データ・アイテム76が垂直方向の1次元リストとして並べられている場合には、データアイテム76から水平方向にオフセットした位置)実行することができる。スワイプジェスチャは、1本指ジェスチャ、2本指ジェスチャでもよく、または、3本以上の指を使用できる。)

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「タッチジェスチャを用いて、関心のあるデータアイテムを選択した後に、選択されたデータアイテムに対してアクションを起こすことができ、例えば、アイテムは、削除され、移動され、コピーされ、カットされ、リネームされ、圧縮され、電子メールに添付され、または、アプリケーションとOSプログラムを用いてその他の処理をすることができ、
2次元のタッチセンサアレイを用いることで、2次元方向(例えば右、左、上、下)の特定の方向を有するスワイプ、フリック等のジェスチャが可能となり、マルチタッチ可能なタッチセンサを用いて、複数指のスワイプ、複数指のタップ、ピンチコマンド等の付加的なジェスチャを認識することができ、
複数指のスワイプなどのジェスチャを、データアイテム76を選択する際に使用できる方法であって、
コンピューティング装置12は、スクリーン72上にリスト74として、データアイテム76(例えば、クリック可能なファイル)を表示でき、
ユーザは2本指のタップやホールド(ジェスチャ124)のような複数指のジェスチャを使用して、データアイテム76のうちの所望の1つを選択して強調し、
ユーザは2本指のスワイプ126などのスワイプを実行して、複数のデータアイテム(例えば、データアイテム76の範囲R)を選択でき、
選択されて強調表示されたアイテムを選択解除することができ、
データ・アイテム76が垂直方向の1次元リストとして並べられている、
スワイプジェスチャは、1本指ジェスチャ、2本指ジェスチャでもよく、または、3本以上の指を使用できる、方法。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「データアイテム76(例えば、クリック可能なファイル)」は、本願発明1の「ファイルに対応する項目」に相当する。
よって、引用発明の「スクリーン72上にリスト74として、データアイテム76(例えば、クリック可能なファイル)を表示でき」、「データ・アイテム76が垂直方向の1次元リストとして並べられている」、「複数指のスワイプなどのジェスチャを、データアイテム76を選択する際に使用できる」、「コンピューティング装置12」は、本願発明1の「第1方向に沿ってファイルに対応する項目が表示されると共に前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記項目が複数配列され、タッチ入力可能な表示装置を備えるデジタルデバイス」に相当する。

イ 引用発明において、「ユーザは2本指のタップやホールド(ジェスチャ124)のような複数指のジェスチャを使用して、データアイテム76のうちの所望の1つを選択して強調し、ユーザは2本指のスワイプ126などのスワイプを実行して、複数のデータアイテム(例えば、データアイテム76の範囲R)を選択でき」ること(引用文献1の図24、図25を参照。)は、本願発明1の「前記複数の項目のうち少なくとも2つ以上の項目を選択可能な選択モードに進み」、「前記選択モードに進むことは、前記複数の項目のうちいずれか一つの項目をタッチ入力することで前記いずれか一つの項目を決定することを含み」、「前記いずれか一つの項目を決定することは、前記複数の項目のうちいずれか一つの項目上で、前記第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である場合に、選択された項目に決定することであること」と、「前記複数の項目のうち少なくとも2つ以上の項目を選択可能な選択モードに進み」、「前記選択モードに進むことは、前記複数の項目のうちいずれか一つの項目をタッチ入力することで前記いずれか一つの項目を決定することを含」む点で共通するといえる。

ウ 引用発明において、「ユーザは2本指のスワイプ126などのスワイプを実行して、複数のデータアイテム(例えば、データアイテム76の範囲R)を選択でき」(引用文献1の図25を参照。)、「スワイプジェスチャは、1本指ジェスチャ、2本指ジェスチャでもよく、または、3本以上の指を使用できる」ことは、本願発明1の「前記少なくとも2つ以上の項目を前記第2方向へとタッチ入力することで選択し」、「前記選択することは、前記いずれか一つの項目を基点として前記第2方向へとタッチ入力することで、前記2つ以上の項目のうち前記第2方向へのタッチ入力で交差する少なくとも一つの項目を選択することを含み」、「前記第2方向へとタッチ入力することは、前記選択モードに進むためのタッチ入力を遂行した後手を離さないで連続して遂行するタッチ入力であることを含」むことと、「前記少なくとも2つ以上の項目を前記第2方向へとタッチ入力することで選択し」、「前記選択することは、前記いずれか一つの項目を基点として前記第2方向へとタッチ入力することで、前記2つ以上の項目のうち前記第2方向へのタッチ入力で交差する少なくとも一つの項目を選択することを含む」点で共通するといえる。

エ 引用発明において、「タッチジェスチャを用いて、関心のあるデータアイテムを選択した後に、選択されたデータアイテムに対してアクションを起こすことができ、例えば、アイテムは、削除され、移動され、コピーされ、カットされ、リネームされ、圧縮され、電子メールに添付され、または、アプリケーションとOSプログラムを用いてその他の処理をすることができ」ることは、本願発明1の「前記少なくとも2つ以上の項目に対応する2つ以上の前記ファイルを一括処理するための実行命令を選択及び処理すること」に相当する。

オ 引用発明の「複数のデータアイテム(例えば、データアイテム76の範囲R)を選択でき」る方法は、本件発明の「ファイル一括処理方法」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「第1方向に沿ってファイルに対応する項目が表示されると共に前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記項目が複数配列され、タッチ入力可能な表示装置を備えるデジタルデバイスを用いて、
前記複数の項目のうち少なくとも2つ以上の項目を選択可能な選択モードに進み、
前記少なくとも2つ以上の項目を前記第2方向へとタッチ入力することで選択し、
前記少なくとも2つ以上の項目に対応する2つ以上の前記ファイルを一括処理するための実行命令を選択及び処理すること、
を含み、
前記選択モードに進むことは、
前記複数の項目のうちいずれか一つの項目をタッチ入力することで前記いずれか一つの項目を決定することを含み、
前記選択することは、
前記いずれか一つの項目を基点として前記第2方向へとタッチ入力することで、前記2つ以上の項目のうち前記第2方向へのタッチ入力で交差する少なくとも一つの項目を選択することを含む、
ファイル一括処理方法。」

[相違点1]
本願発明1では、「前記第2方向へとタッチ入力することは、前記選択モードに進むためのタッチ入力を遂行した後手を離さないで連続して遂行するタッチ入力であることを含み、前記いずれか一つの項目を決定することは、前記複数の項目のうちいずれか一つの項目上で、前記第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である場合に、選択された項目に決定することである」のに対して、引用発明では、選択モードへ進むための「第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である」タッチ入力と、複数項目を選択するための第2方向へのタッチ入力とを「手を離さないで連続して遂行する」ことは特定されていない点。

(2) 当審の判断
ア 本願発明1と引用発明との間には上記[相違点1]があるから、本願発明1は引用発明ではない。

イ 上記[相違点1]に係る「前記第2方向へとタッチ入力することは、前記選択モードに進むためのタッチ入力を遂行した後手を離さないで連続して遂行するタッチ入力であることを含み、前記いずれか一つの項目を決定することは、前記複数の項目のうちいずれか一つの項目上で、前記第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である場合に、選択された項目に決定することである」という構成、要するに、選択モードへ進むための「第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である」タッチ入力と、複数項目を選択するための第2方向へのタッチ入力とを「手を離さないで連続して遂行する」という構成は、上記引用文献1には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえないから、引用発明において、データアイテムの選択に、そのような構成を採用することが、当業者に容易に想到し得たということはできない。
したがって、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 請求項2-11について
(1) 本願発明2-10について
本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1の上記[相違点1]に係る「前記第2方向へとタッチ入力することは、前記選択モードに進むためのタッチ入力を遂行した後手を離さないで連続して遂行するタッチ入力であることを含み、前記いずれか一つの項目を決定することは、前記複数の項目のうちいずれか一つの項目上で、前記第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である場合に、選択された項目に決定することである」という構成と、同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-10は、引用発明ではなく、また、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 本願発明11について
本願発明11は、本願発明1に対応するデジタルデバイスの発明であり、本願発明1の上記[相違点1]に係る「前記第2方向へとタッチ入力することは、前記選択モードに進むためのタッチ入力を遂行した後手を離さないで連続して遂行するタッチ入力であることを含み、前記いずれか一つの項目を決定することは、前記複数の項目のうちいずれか一つの項目上で、前記第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である場合に、選択された項目に決定することである」という構成と、同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明11は、引用発明ではなく、また、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 当審拒絶理由の理由3及び理由4について
当審では、補正前の請求項6の「前記任意の位置には、前記選択モードに進むためのアイコンが表示されること」を構成として有する発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、記載が不明確であるとの拒絶の理由3及び4を通知しているが、平成30年11月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項4において「任意の位置」との記載が「2つ以上の項目以外の位置」と補正された結果、これらの拒絶の理由3及び4は解消した。

第7 原査定についての判断
平成30年11月29日付けの補正により、補正後の請求項1-11は、「前記第2方向へとタッチ入力することは、前記選択モードに進むためのタッチ入力を遂行した後手を離さないで連続して遂行するタッチ入力であることを含み、前記いずれか一つの項目を決定することは、前記複数の項目のうちいずれか一つの項目上で、前記第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である場合に、選択された項目に決定することである」という技術的事項を有するものとなった。当該「前記第2方向へとタッチ入力することは、前記選択モードに進むためのタッチ入力を遂行した後手を離さないで連続して遂行するタッチ入力であることを含み、前記いずれか一つの項目を決定することは、前記複数の項目のうちいずれか一つの項目上で、前記第1方向へとタッチ入力することが基準距離以上である場合に、選択された項目に決定することである」ことは、原査定における引用文献A-引用文献Eには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-11は、引用文献Aに記載された発明ではなく、また、当業者であっても、原査定における引用文献A-引用文献Eに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2016-119078(P2016-119078)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 徳浩  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 ファイル一括処理方法及びそれによるプログラムを遂行するデジタルデバイス  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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