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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B01J
管理番号 1347241
審判番号 不服2018-4119  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-26 
確定日 2019-01-15 
事件の表示 特願2014-539281「排ガス処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月10日国際公開、WO2013/064373、平成27年 1月22日国内公表、特表2015-502244、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成24年10月17日(優先権主張外国庁受理 平成23年11月 4日 ドイツ連邦共和国(DE))を国際出願日とする出願であって、原審にて、平成29年 2月22日付けの拒絶理由が通知され、これに対し同年 5月30日付けの意見書が提出されたが、同年11月21日付けで拒絶査定(原査定)がされたので、この査定を不服として、平成30年 3月26日に本件審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2.本願発明の認定

本願の請求項1?10に係る発明(以下、「本願発明1?10」という。)は、審判請求時の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。

【請求項1】
排ガスが通って流れることができて、入口側から出口側まで軸線方向において排ガスが通って流れることができるダクトが形成されるように少なくとも部分的に構造を有するシートメタル層を用いて巻回されるかまたは積み重ねられるハニカム体を有する排ガス処理装置であって、前記シートメタル層の第1の部分は、少なくとも前記入口側または前記出口側に割り当てられる第1の端面で平らに終端し、前記シートメタル層の第2の部分は、少なくとも前記入口側または前記出口側に同様に割り当てられる第2の端面で終端し、前記第2の端面は、前記シートメタル層の前記第2の部分の前記軸線方向における第2の長さよりも大きい前記シートメタル層の前記第1の部分の前記軸線方向における第1の長さのせいで前記第1の端面に対して間隔を有し、前記第1の端面と前記第2の端面との間の前記間隔によって、加熱エレメントが配置される受容部は、形成され、
前記加熱エレメントは、前記ハニカム体の生産後に配置されることができ、
前記加熱エレメントは、平らなシートメタル層によって支持される、排ガス処理装置。
【請求項2】
前記シートメタル層は、交互に配置された平らなシートメタル層および波形シートメタル層を有し、前記シートメタル層の前記第2の部分は、波形シートメタル層だけを備える、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記加熱エレメントは、前記軸線方向における前記第2の端面の多くても50%をカバーする、請求項1または2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記加熱エレメントは、前記シートメタル層の前記第1の部分のシートメタル層に固定される、請求項1?3のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記第1の端面と前記第2の端面との間の前記間隔は、少なくとも0.1cmである、請求項1?4のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
少なくとも、前記シートメタル層の前記第1の部分または前記シートメタル層の前記第2の部分は、触媒活性コーティングを有する、請求項1?5のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
2つ以上の受容部がハニカム体において形成され、前記受容部の各々に加熱エレメントが配置される、請求項1?6のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
前記加熱エレメントは、電気的に直列に接続される、請求項7に記載の排ガス処理装置。
【請求項9】
2つ以上のハニカム体が前記軸線方向において直列に配置され、ハニカム体の各々は、少なくとも1つの加熱エレメントを有する、請求項1?8のいずれか1項に記載の排ガス処理装置。
【請求項10】
ハニカム体の各々は、少なくとも1つの加熱エレメントを有し、前記加熱エレメント(16)は、電気的に直列に接続される、請求項9に記載の排ガス処理装置。

第3.原査定の理由

原査定の理由は、本願の優先権の基礎とされた先の出願前に公知となった、
特開平7-197808号公報 (以下、「引用文献1」という。)
米国特許第5546746号明細書(以下、「引用文献2」という。)
特開平5-59939号公報 (以下、「引用文献3」という。)
特開平11-132034号公報 (以下、「引用文献4」という。)
特開平8-117609号公報 (以下、「引用文献5」という。)
を引用し、
「本願発明1?10は、引用文献1?5に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。

第4.引用文献の記載

引用文献2

摘示2-1(1欄7?23行)
「This invention relates to a core element which is useful in forming a core through which a gas is passed, e.g., exhaust gas from an internal combustion engine or a gas turbine engine, or a stream of volatile organic emissions, for the purpose of undergoing chemical reaction, e.g., oxidation. A plurality of such core elements is normally used in the core. A catalyst may be present in the core. These core elements are used in making converters, especially catalytic converters, particularly for automotive vehicles, which treat pollutant-laden exhaust gases in such a way as to reduce the exhaust pollutants to an acceptable level. While the following discussion will be limited to catalytic converters for vehicles, it will be understood that the principles hereof apply to stationary as well as mobile devices, and to chemical reactors other than converters for exhaust gas pollutants.」
<当審訳>
本発明は、例えば、酸化などの化学反応を受ける目的のために、例えば、内燃機関またはガスタービンエンジンからの排気ガス、又は揮発性有機排出物の流れなどのガスを通過させているコアを形成するために有用なコアエレメントに関するものである。複数のコアエレメントは、通常、コアの中に使用される。触媒は、コア中に存在することができる。これらのコアエレメントは、排気汚染物を許容レベルまで減少させるために、特に自動車のように、汚染物質を含む排気ガスを処理するための、特に触媒コンバータを製造するのに使用される。以下の説明では、車両用の触媒コンバータに限定されるであろうが、本発明の原理は、固定装置のほか、可動装置に、排気ガス汚染物の変換器以外の化学反応器に適用されることが理解されるであろう。

摘示2-2(請求項2)
「2. A composite core element comprising (a) an elongated corrugated thin metal strip having a flat transversely extending central portion and having parallel longitudinally extending marginal edges spaced a predetermined distance apart and having a leading portion and a trailing portion, and (b) a flat thin metal strip having parallel longitudinally extending marginal edges, and being in contiguous relation to said corrugated thin metal strip, said flat thin metal strip being longitudinally divided intermediate the marginal edges thereof into (1) a first flat thin metal band, and (2) a second flat thin metal band coplanar with said first thin metal band, and said first flat thin metal band being spaced from and out of electricity conducting contact with said second flat thin metal band.」
<当審訳>
2.(a)横方向に延びる平坦な中央部分を有し、所定の間隔をもって縦方向に延びる平行な縁部を有し、前縁部分および後縁部分を有する細長い波型の薄い金属ストリップと、(b)縦方向に延びる平行な縁部を有し、前記波型の薄い金属ストリップと隣接関係にある平坦な薄い金属ストリップと、を備え、前記平坦な薄い金属ストリップが(1)第1の平坦な薄い金属バンドと、(2)前記第1の薄い金属バンドと同一の平面にある第2の平坦な薄い金属バンドに、中間部で縦方向に分割されており、前記第1の平坦な薄い金属バンドは前記第2の平坦な薄い金属バンドと電気的に接触しないように離間している、複合コアエレメント。

摘示2-3(請求項25)
「25. A core useful in a combined electrically heatable catalytic converter and a light-off converter comprising (a) a central rigid metallic pin, (b) a plurality of composite core elements as defined in claim 2 tightly spirally wrapped about said central rigid metallic pin with the metal tabs thereof in overlapping relation and defining two electrically isolated retaining shell segments, said metal tabs being secured into said overlapped relation, and (c) means for applying an electric current to the first flat thin metal band of said composite spirally wound core elements.」
<当審訳>
25.(a)中央硬質金属ピンと、(b)2つの電気的に隔離した保持シェルセグメントを画定するように重なり合って固定される金属タブを付けて、前記中央硬質金属ピンの周りに緊密に螺旋状に巻き付けられた請求項2に特定された複数の複合コアエレメントと、(c)前記螺旋状に巻かれた複合コアエレメントの第1の平坦な薄い金属バンドに電流を印加するための手段と、を備えている電気的に加熱可能な複合触媒コンバータと着火コンバータに有用なコア。

摘示2-4(図1)




摘示2-5(図4)




引用文献3

摘示3-1(【0015】)
「図6にこの発明の第3実施例を示す。この実施例では、触媒コンバータ6は、前後に2分割されたステンレスなど導電性の耐熱金属製ハニカム状担体60を有し、後担体61の接合面61Aに、リボンヒータ7の形状に対応して形成された、複数の溝62を有する。電気抵抗金属製のリボンヒータ7は、その外周をセラミックなどの絶縁層77で覆うことによって、金属製ハニカム状担体60と絶縁させてある。溝62は、リボンヒータ7を形成する電気抵抗金属板の厚みより僅かに広く、リボンヒータ7の曲げピッチに合わせて接合面61Aを削り取って形成されて、リボンヒータ7は蛇行状部73のうち直線状部76を溝62に嵌め込んで固定する。このため、リボンヒータ7の直線状部76は、四方を担体60に接近して囲まれ、リボンヒータ7で発生した熱の触媒コンバータ6の加熱効率が高くなり、加熱時間の短縮ができる。」

摘示3-2(図6)




第5.引用発明の認定

引用文献2には、複合コアエレメント(摘示2-2,2-4)を複数巻き付けて形成されたコア(摘示2-3,2-5)を用いた内燃機関の排ガスを処理する触媒コンバータ(摘示2-1)について、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「排ガスを通過させるコアであって、細長い波型の薄い金属ストリップと、前記波型の薄い金属ストリップに隣接し、互いに離間した第1の平坦な薄い金属バンドと第2の平坦な薄い金属バンドからなる平坦な薄い金属ストリップを含む複合コアエレメントを複数、中央硬質金属ピンに巻き付けて形成されたコアを備え、前記第1の平坦な薄い金属バンドが電気的に加熱可能とされている内燃機関の排ガスを処理する触媒コンバータ。」

第6.発明の対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「内燃機関の排ガスを処理する触媒コンバータ」は、本願発明1の「排ガス処理装置」に相当し、以下、「薄い金属ストリップ」は、「シートメタル層」に、「コア」は、巻回された薄い金属ストリップにより排ガスを通過させるダクトを形成するから「ハニカム体」に、「第1の平坦な薄い金属バンド」は、電気的に加熱されるから「加熱エレメント」に相当する。
そして、引用発明の「波型の薄い金属ストリップ」は、巻回後にコアの排ガス入口側出口側に2つの平坦な端面を形成する(摘示2-5)ことになるから本願発明1の「第1の部分」に相当し、隣接する「第2の平坦な薄い金属バンド」が「第2の部分」に相当し、この二つの金属ストリップの幅(本願発明1の「排ガスが通過する軸線方向の長さ」)の大小関係により、巻回後に両者が形成する端面には間隔が生じ、当該間隔の部分(本願発明1の「受容部」)に、「第1の平坦な薄い金属バンド」が配置されるもの(摘示2-4)と認められる。

してみると、本願発明1のうち、
「排ガスが通って流れることができて、入口側から出口側まで軸線方向において排ガスが通って流れることができるダクトが形成されるように少なくとも部分的に構造を有するシートメタル層を用いて巻回されるかまたは積み重ねられるハニカム体を有する排ガス処理装置であって、前記シートメタル層の第1の部分は、少なくとも前記入口側または前記出口側に割り当てられる第1の端面で平らに終端し、前記シートメタル層の第2の部分は、少なくとも前記入口側または前記出口側に同様に割り当てられる第2の端面で終端し、前記第2の端面は、前記シートメタル層の前記第2の部分の前記軸線方向における第2の長さよりも大きい前記シートメタル層の前記第1の部分の前記軸線方向における第1の長さのせいで前記第1の端面に対して間隔を有し、前記第1の端面と前記第2の端面との間の前記間隔によって、加熱エレメントが配置される受容部は、形成される、排ガス処理装置。」
の点は、引用発明と一致し、両者は次の点で相違する。

本願発明1の「前記加熱エレメントは、前記ハニカム体の生産後に配置されることができ、前記加熱エレメントは、平らなシートメタル層によって支持される」のに対し、引用発明の第1の平坦な薄い金属バンドは、コアを形成する複合コアエレメントの一部となっており、隣接する波型の薄い金属ストリップに挟持される点。

第7.相違点の判断

上記相違点について検討するに、引用文献3には、耐熱金属製のハニカム状担体を作成後に溝を形成して、リボンヒータの直線状部を嵌め込むこと(摘示3-1,3-2)が記載されているが、当該溝はリボンヒータの厚みより広く、担体はリボンヒータに接近しているものの、これを支持しているとはいえない。また、引用文献1、4には、ハニカム状担体の一部または全部を通電加熱すること、引用文献5には、2つのハニカム体の間の空所に電気加熱式のヒータを設けることが記載されているにすぎない。
してみると、引用文献1?5には、引用発明において上記相違点を解消することについて記載も示唆もない。

したがって、本願発明1及びこれを引用する本願発明2?10は、引用文献1?5に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第8.むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2014-539281(P2014-539281)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 増山 淳子  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 後藤 政博
宮澤 尚之
発明の名称 排ガス処理装置  
代理人 関口 正夫  
代理人 小野寺 隆  

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