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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1347252
審判番号 不服2017-16346  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-02 
確定日 2019-01-15 
事件の表示 特願2014- 64111号「移動体機器制御装置、携帯端末、移動体機器制御システムおよび移動体機器制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月22日出願公開、特開2015-182755号、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成26年3月26日の出願であって、平成29年3月28日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2.原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1、2、7?9に係る発明は、以下の引用文献1?3に基いて、本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献1?4に基いて、本願請求項4に係る発明は、以下の引用文献1?3、5に基いて、本願請求項5に係る発明は、以下の引用文献1?3、6に基いて、本願請求項6に係る発明は、以下の引用文献1?3、6?8に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-301692号公報
2.特開2005-211229号公報
3.特開2010-193319号公報
4.特開2006-040056号公報
5.特開2006-036012号公報
6.特開2006-040055号公報
7.特開2013-203103号公報
8.特開2010-026807号公報

第3.本願発明
本願請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」という。)は、平成29年6月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
移動体に搭載された移動体機器の動作を制御する移動体機器制御装置であって、
前記移動体に持ち込まれた携帯端末と通信を行う移動体側通信部と、
前記移動体側通信部により受信された前記携帯端末を携帯する乗員が申告した酔いやすさのレベルおよび前記乗員の移動体内の座席位置を含む個人データを記憶する個人データ記憶部と、
酔いやすさのレベル、移動体内の座席位置、乗員の負荷状態および移動体の移動場所の特徴を示す各情報と、この情報の組み合わせに対応した各状況における酔いやすさのレベルが設定された判定用のテーブルデータを参照して、前記移動体側通信部により逐次受信される前記乗員の負荷状態と前記移動体の移動場所の特徴および前記個人データ記憶部から読み出した前記乗員の個人データに対応する状況の酔いやすさのレベルを特定し、特定した酔いやすさのレベルから前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部と、
前記乗員が酔いやすい状況であると判定された場合に、酔い予防動作を行うように前記移動体機器を制御する機器制御部とを備える移動体機器制御装置。
【請求項2】
前記乗員の負荷状態は、前記乗員に加わる振動および加速度のうちの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1記載の移動体機器制御装置。
【請求項3】
前記移動体の移動場所の特徴は、前記移動体が移動している道路のカーブ数であることを特徴とする請求項1記載の移動体機器制御装置。
【請求項4】
前記機器制御部は、前記乗員が酔いやすい状況であると判定された場合に、前記移動体に搭載されたオーディオ機器を、予め定めた高音域および低音域の音量を低下させて音声を出力するように制御することを特徴とする請求項1記載の移動体機器制御装置。
【請求項5】
前記機器制御部は、前記乗員が酔いやすい状況であると判定された場合に、前記移動体に搭載された表示装置を、表示画面の輝度または彩度を低下させるように制御することを特徴とする請求項1記載の移動体機器制御装置。
【請求項6】
前記機器制御部は、前記乗員が酔いやすい状況であると判定された場合に、前記移動体に搭載された表示装置または点灯装置を、表示画面または表示灯における光の点滅の周期を低下させるように制御することを特徴とする請求項1記載の移動体機器制御装置。
【請求項7】
移動体の乗員に携帯された携帯端末であって、
前記携帯端末を携帯する乗員が申告した酔いやすさのレベルおよび前記乗員の移動体内の座席位置を含む個人データの入力を受け付ける個人データ取得部と、
前記乗員の負荷状態を計測する負荷状態計測部と、
前記移動体が移動する移動場所の特徴情報を取得する移動場所特徴取得部と、
酔いやすさのレベル、移動体内の座席位置、乗員の負荷状態および移動体の移動場所の特徴を示す各情報と、この情報の組み合わせに対応した各状況における酔いやすさのレベルが設定された判定用のテーブルデータを参照して、逐次取得される前記乗員の負荷状態と前記移動体の移動場所の特徴および前記個人データ取得部で受け付けた前記乗員の個人データに対応する状況の酔いやすさのレベルを特定し、特定した酔いやすさのレベルから前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部と、
前記移動体に搭載され、前記乗員が酔いやすい状況である場合に酔い予防動作を行うように移動体機器を制御する移動体機器制御装置と通信を行って、前記状況判定部の判定結果を送信する端末側通信部とを備える携帯端末。
【請求項8】
移動体の乗員が携帯する携帯端末と、前記移動体に搭載された移動体機器の動作を制御する移動体機器制御装置とを備える移動体機器制御システムであって、
前記携帯端末を携帯する乗員が申告した酔いやすさのレベルおよび前記乗員の移動体内の座席位置を含む個人データの入力を受け付ける個人データ取得部と、
前記乗員の負荷状態を計測する負荷状態計測部と、
酔いやすさのレベル、移動体内の座席位置、乗員の負荷状態および移動体の移動場所の特徴を示す各情報と、この情報の組み合わせに対応した各状況における酔いやすさのレベルが設定された判定用のテーブルデータを参照して、前記移動体側の通信部により逐次受信される前記乗員の負荷状態と前記移動体の移動場所の特徴および前記個人データ取得部で受け付けた前記乗員の個人データに対応する状況の酔いやすさのレベルを特定し、特定した酔いやすさのレベルから前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部と、
前記乗員が酔いやすい状況であると判定された場合に、酔い予防動作を行うように前記移動体機器を制御する機器制御部とを備える移動体機器制御システム。
【請求項9】
移動体に搭載された移動体機器の動作を制御する移動体機器制御方法であって、
移動体側通信部が、携帯端末と通信して、前記携帯端末を携帯する乗員が申告した酔いやすさのレベルおよび前記乗員の移動体内の座席位置を含む個人データを受信するステップと、
個人データ記憶部が、前記移動体側通信部により受信された前記個人データを記憶するステップと、
状況判定部が、酔いやすさのレベル、移動体内の座席位置、乗員の負荷状態および移動体の移動場所の特徴を示す各情報と、この情報の組み合わせに対応した各状況における酔いやすさのレベルが設定された判定用のテーブルデータを参照して、前記移動体側通信部により逐次受信される前記乗員の負荷状態と前記移動体の移動場所の特徴および前記個人データ記憶部から読み出した前記乗員の個人データに対応する状況の酔いやすさのレベルを特定し、特定した酔いやすさのレベルから前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定するステップと、
機器制御部が、前記乗員が酔いやすい状況であると判定された場合に、酔い予防動作を行うように前記移動体機器を制御するステップとを備える移動体機器制御方法。」

第4.引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用ナビゲーション装置等に関連し、詳細には、乗員の車酔いを予防することができる自動車用ナビゲーション装置等に関連する。」

「【0021】
図2は、自動車6に搭載された移動体ナビゲーション装置を示すブロック図である。この移動体ナビゲーション装置20は、入力されたデータやドライバの操作に基づき、目的地までの経路を設定するとともに、車両を目的地まで経路路誘等する制御手段であるCPU22と、情報センタ2との間でネットワーク4を経由して後述する乗員の車酔いに関する情報等を送受信する通信装置24を備えている。この通信装置24は、具体的には、携帯電話である。
【0022】
移動体ナビゲーション装置20は、更に、情報センタ2から受信した情報を記憶する記憶装置(例えば、HDD)26と、情報センタ2から受信した情報、経路情報、さらに、乗員の車酔いに関する警報等を表示するディスプレイ28と、地図情報を格納したDVD-ROM30と、ドライバが目的地や乗員等に関する設定、登録等を行うための操作スイッチ32を備えている。
また、移動体ナビゲーション装置20は、車両の現在位置を検出する位置検出手段を構成するGPS受信機34、車速センサ36及びジャイロセンサ38を備えている。ここで、GPS受信機34は衛星から電波を受信して現在位置を検出し、車速センサ36は移動距離を求めるために車両の速度を検出し、ジャイロセンサ38は車両の移動方向を検出し、これらの各センサ34,36,38の検出値により、車両の現在位置を正確に検出するようになっている。」

「【0029】
次に、図4により、本実施形態の自動車用車酔い防止システムの詳細について説明する。図4に示すように、情報センタ(自動車用防止サーバ)2は、データベース50を備え、このデータベース50は、地図データ52、顧客一般データ54は、施設関連データ56、乗員別車酔い関連データ58、及び、車両特性補正データ60等を格納している。」

「【0032】
乗員別車酔い関連データ58は、情報センタ2と契約した顧客によって登録された個人(乗員)の車酔いに関するデータである。このデータは、例えば、車酔いするか否か、過去に車酔いを起こしたときの症状(体調変化、前兆)、過去に車酔いを起こしたルート、過去に車酔いを起こしたとき乗車していた車両タイプ(セダン、ミニバン、スポーツカー、RV車)、過去に車酔いを起こしたときの走行状況(速度、舵角、経路等)、走行したくない経路、走行したい経路等が、乗員別に記憶されている。このデータは、自動車6から送られてくる、その乗員の車酔い状態とその車酔い状態が起こったときの走行状況(車両タイプ、走行経路等)とに関する情報の蓄積により、常時、更新されるように構成されている。
【0033】
また、車両特性補正データ60は、車酔いを起こした、あるいは、車酔いを起こす可能性が高い車両特性(ステアリング操舵感度、ブレーキ制動性能およびサスペンション減衰力)を補正するための補正値、運転に対するしきい値等が、車両タイプ毎に記憶されている。さらに、車両特性補正データ60には、特定の乗員に関するものではなく、一般的に、車酔いを起こしやすいとされる運転状態、車両特性等に関するデータも含まれている。」

「【0035】
又、自動車6(移動体ナビゲーション装置20)から情報センタ2へは、誰が乗車しているかに関する乗員情報、乗員の体調(車酔い)に関する体調情報、現在位置および車両情報(走行状況、車両特性)等が逐次、送信されるように構成されている。
【0036】
一方、情報センタ2から自動車6(移動体ナビゲーション装置20)へは、入力された目的地までの経路情報、車酔いを考慮して補正した補正経路情報、乗員の車酔いに関する車酔い情報、乗員の車酔いのしきい値に関するしきい値情報等が、送信されるように構成されている。
さらに、情報センタ2から医療機関(病院)16へは、自動車6に乗車中の乗員の車酔いがひどいとき等に、その乗員の診断予約及び到着予想時間等が送信される。また、医療機関(病院)16から情報センタ2へは、車酔いを起こした乗員が、この医療機関で受付られるか等の情報が送信される。
【0037】
次に、図5に沿って、本実施形態の自動車用車酔い防止システムにおける自動車(移動体ナビゲーション装置)、情報センタ、及び、医療機関/自宅の間で行われる情報の送受信を説明する。図5は、自動車用車酔い防止システムにおける処理を示すフローチャートである。図5のフローチャートにおいて、Sは、各ステップを示す。
図5に示すように、S1において、PDA8または自宅10または自動車6から、乗員の車酔いに関連する個人データが、情報センタ(車酔い防止サーバ)2に送信され、このデータは、この乗員の車酔い関連データの初期設定値として、この乗員と関連付けて、乗員別車酔い関連データ58中に登録される(S2)。」

「【0048】
目的地への走行が開始されると、S8で、走行状態が判定される。この判定で、車酔いを起こしやすい運転状態が検出されると、運転者に音声または表示による警報が発せられ、車酔いを起こしにくい運転を行うように促される。例えば、急ブレーキ、急発進、或いは、その連続等が検出されると、このような警報が発せられる。警報は、ディスプレイ28上での文字による警報あるいはスピーカからの音声による警報として行われる。車酔いを起こしやすい運転状態は、乗員別車酔い関連データ58に含まれる一般的に車酔いを起こしやすいとされる運転状態でも、あるいは、乗車中の車酔いを起こす乗員が、過去に実際に車酔いを起こした運転状態のいずれを採用してもよい。後者のほうが、オーダメードのきめ細かい制御となる。
【0049】
このような警報に加えて、車両の特性(ステアリング操舵感度、ブレーキ制動性能、サスペンション減衰力)を、車両特性補正データ60に基づいて、車酔いが起こらない特性に変更する補正制御を行っても良い。この補正制御は、情報センタ2が、補正制御の内容を決定し、自動車6の移動体ナビゲーション装置20に補正内容を送信して行われるものである。」

「【0052】
さらにまた、車両特性の変更の内容を、車酔いする乗員の乗車位置(例えば、フロントシートか、リアシートか)に応じて、変更する構成でもよい。乗車位置によって、車酔いの発生状態がかなり変わってくるからである。
さらに、S9で、車酔い検出装置40の検出に基づいて、車酔いが起こっているか否かが判定される。複数の乗員が車酔いする可能性があるときには、乗員毎にこの判定が行われるのが好ましい。」

(2)上記各記載事項から次のことが認定できる。
段落【0021】に記載されている「乗員の車酔いに関する情報等」は、段落【0029】、段落【0032】及び段落【0037】の記載内容によれば、乗員別車酔い関連データ58、及び、車両特性補正データ60があり、前記乗員別車酔い関連データ58は、PDA8または自宅10または自動車6から情報センタ2に送信されるものであって、前記情報センタ2と契約した顧客によって登録された乗員の車酔いするか否かに関する情報を含むこと。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「入力されたデータやドライバの操作に基づき、目的地までの経路を設定するとともに、車両を目的地まで経路路誘等する制御手段であるCPU22と、情報センタ2との間でネットワーク4を経由して乗員の車酔いに関する情報等を送受信する通信装置24と、前記情報センタ2から受信した情報を記憶する記憶装置26と、前記情報センタ2から受信した情報、経路情報、さらに、乗員の車酔いに関する警報等を表示するディスプレイ28と、地図情報を格納したDVD-ROM30と、ドライバが目的地や乗員等に関する設定、登録等を行うための操作スイッチ32を備えている移動体ナビゲーション装置20であって、
前記情報センタ2は、データベース50を備え、このデータベース50は、乗員別車酔い関連データ58、及び、車両特性補正データ60等を格納しており、
前記乗員の車酔いに関する情報等は、前記乗員別車酔い関連データ58、及び、前記車両特性補正データ60があり、前記乗員別車酔い関連データ58は、PDA8または自宅10または自動車6から情報センタ2に送信されるものであって、前記情報センタ2と契約した顧客によって登録された乗員の車酔いするか否かに関する情報を含むものであり、
前記移動体ナビゲーション装置20から前記情報センタ2へは、誰が乗車しているかに関する乗員情報が逐次、送信されるように構成され、前記情報センタ2から前記移動体ナビゲーション装置20へは、前記乗員の車酔いに関する情報等が、送信されるように構成され、
目的地への走行が開始されると、走行状態が判定され、この判定で、車酔いを起こしやすい運転状態が検出されると、運転者に音声または表示による警報が発せられることに加えて、車両の特性(ステアリング操舵感度、ブレーキ制動性能、サスペンション減衰力)を、前記車両特性補正データ60に基づいて、車酔いが起こらない特性に変更する補正制御をする移動体ナビゲーション装置20。」


2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0116】
まず、車載器50の制御部15は、運転席の携帯機40に身体情報の測定を指示する。この指示に応じて、運転席の携帯機40は、乗員(ドライバ)の身体情報を測定し、得られた身体情報を車載器50に無線送信する。車載器50の制御部15は、運転席の携帯機40から取得した身体情報に基づいて、判定条件に従って乗員の体調を判定する。ここで、判定条件としては、判定条件設定部15bにより設定されたもの、すなわち車両状態量や道路状況に応じて座席毎に設定されたものが使用される。そして、車載器50の報知部14は、得られた判定結果を報知する。」
したがって、引用文献2には、車両内の個人データの入力において、乗員の携帯端末を利用するという事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0028】
(携帯端末10の構成)
図2に示すように、車載システム1における携帯端末10は、近距離通信部11と、通信制御I/F部12と、GPS)13と、加速度センサ14と、記憶部15と、制御部17とを有し構成され、さらに、これ以外にも表示部や入力部など様々な機能を有していてもよい。
【0029】
近距離通信部11は、制御部17に接続され、携帯端末10から所定の距離内に存在する装置との間でやり取りする各種情報に関する近距離無線通信を制御する。具体的には、近距離通信部11は、センター30から受信したサービス情報を車載装置20に送信したり、携帯端末10の位置情報や加速度情報を車載装置20に送信したりする。また、近距離通信部11は、車両の車両情報を車載装置20から受信したり、車載装置20のタッチパネルによってサービスが選択されたサービス選択情報などを車載装置20から受信したりする。」
したがって、引用文献3には、加速度、移動場所の取得において、乗員の携帯している携帯端末を利用するという事項が記載されていると認められる。

第5.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア.後者の「車両」及び「自動車6」は前者の「移動体」に相当し、後者の「ステアリング」、「ブレーキ」及び「サスペンション」は前者の「移動体機器」に相当するから、後者の「車両の特性(ステアリング操舵感度、ブレーキ制動性能、サスペンション減衰力)を、車両特性補正データ60に基づいて、車酔いが起こらない特性に変更する補正制御をする移動体ナビゲーション装置20」は、前者の「移動体に搭載された移動体機器の動作を制御する移動体機器制御装置」に相当する。

イ.後者の「情報センタ2との間でネットワーク4を経由して乗員の車酔いに関する情報等を送受信する通信装置24」と、前者の「前記移動体に持ち込まれた携帯端末と通信を行う移動体側通信部」とは、「通信を行う移動体側通信部」の限度で共通する。

ウ.後者の「情報センタ2から受信した情報」には「乗員の車酔いに関する情報」が含まれているところ、該「前記乗員の車酔いに関する情報」としては、「前記乗員別車酔い関連データ58」「があり、前記乗員別車酔い関連データ58は、」「情報センタ2と契約した顧客によって登録された乗員の車酔いするか否かに関する情報を含むものであ」る。そして、後者の「乗員の車酔いするか否かに関する情報」は、前者の「乗員が申告した酔いやすさのレベル」「を含む個人データ」に相当するといえるから、後者の「情報センタ2から受信した情報を記憶する記憶装置26」と前者の「前記移動体側通信部により受信された前記携帯端末を携帯する乗員が申告した酔いやすさのレベルおよび前記乗員の移動体内の座席位置を含む個人データを記憶する個人データ記憶部」とは、「前記移動体側通信部により受信された乗員が申告した酔いやすさのレベルを含む個人データを記憶する個人データ記憶部」の限度で共通する。

エ.後者の「目的地への走行が開始されると、走行状態が判定され、この判定で、車酔いを起こしやすい運転状態が検出される」構成と、前者の「酔いやすさのレベル、移動体内の座席位置、乗員の負荷状態および移動体の移動場所の特徴を示す各情報と、この情報の組み合わせに対応した各状況における酔いやすさのレベルが設定された判定用のテーブルデータを参照して、前記移動体側通信部により逐次受信される前記乗員の負荷状態と前記移動体の移動場所の特徴および前記個人データ記憶部から読み出した前記乗員の個人データに対応する状況の酔いやすさのレベルを特定し、特定した酔いやすさのレベルから前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部」とは、「前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部」の限度で共通する。

オ.上記ア.及びエ.を踏まえると、後者の「車両の特性(ステアリング操舵感度、ブレーキ制動性能、サスペンション減衰力)を、車両特性補正データ60に基づいて、車酔いが起こらない特性に変更する補正制御をする」構成は前者の「前記乗員が酔いやすい状況であると判定された場合に、酔い予防動作を行うように前記移動体機器を制御する機器制御部」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「移動体に搭載された移動体機器の動作を制御する移動体機器制御装置であって、
通信を行う移動体側通信部と、
前記移動体側通信部により受信された乗員が申告した酔いやすさのレベルを含む個人データを記憶する個人データ記憶部と、
前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部と、
前記乗員が酔いやすい状況であると判定された場合に、酔い予防動作を行うように前記移動体機器を制御する機器制御部とを備える移動体機器制御装置。」

(相違点)
(相違点1)
「通信を行う移動体側通信部」に関し、
本願発明1は、「前記移動体に持ち込まれた携帯端末と」通信を行うのに対し、
引用発明は、「情報センタ2との間でネットワーク4を経由して」送受信する点。

(相違点2)
「個人データ記憶部」に関し、
本願発明1は、「前記携帯端末を携帯する」乗員が申告した情報であり、「前記乗員の移動体内の座席位置」を含む個人データを記憶するものであるのに対し、
引用発明は、「情報センタ2から受信した情報」であり、かかる座席位置の情報を含むことが特定されていない点。

(相違点3)
「前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部」に関し、
本願発明1は、「酔いやすさのレベル、移動体内の座席位置、乗員の負荷状態および移動体の移動場所の特徴を示す各情報と、この情報の組み合わせに対応した各状況における酔いやすさのレベルが設定された判定用のテーブルデータを参照して、前記移動体側通信部により逐次受信される前記乗員の負荷状態と前記移動体の移動場所の特徴および前記個人データ記憶部から読み出した前記乗員の個人データに対応する状況の酔いやすさのレベルを特定し、特定した酔いやすさのレベルから」判定しているのに対し、
引用発明は、「走行状態が判定され、この判定で、車酔いを起こしやすい運転状態が検出される」ことで判定するものである点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
まず、引用発明の「車酔いを起こしやすい運転状態」について、引用文献1の記載内容から想定される具体的な内容について検討する。
ア.引用文献1の段落【0048】の「この判定で、車酔いを起こしやすい運転状態が検出されると、運転者に音声または表示による警報が発せられ、車酔いを起こしにくい運転を行うように促される。例えば、急ブレーキ、急発進、或いは、その連続等が検出されると、このような警報が発せられる。」との記載によれば、引用発明の「車酔いを起こしやすい運転状態」とは、急ブレーキ、急発進、或いは、その連続等を想定しているものといえる。

イ.引用文献1の段落【0048】に「車酔いを起こしやすい運転状態は、乗員別車酔い関連データ58に含まれる一般的に車酔いを起こしやすいとされる運転状態でも、あるいは、乗車中の車酔いを起こす乗員が、過去に実際に車酔いを起こした運転状態のいずれを採用してもよい。」と記載されている。
(ア)「乗員別車酔い関連データ58に含まれる一般的に車酔いを起こしやすいとされる運転状態」を採用した場合について検討する。
「乗員別車酔い関連データ58」に含まれるデータは、引用文献1の段落【0032】に列挙されているようなデータであり、いずれも乗員別である個人データであるところ、該個人データから、「一般的に車酔いを起こしやすいとされる運転状態」という状態をどのように導き出すものか、その具体的手段の開示はない。

(イ)「乗車中の車酔いを起こす乗員が、過去に実際に車酔いを起こした運転状態」を採用した場合について検討する。
引用文献1の段落【0048】に「後者のほうが、オーダメードのきめ細かい制御となる。」と記載されているように、「車酔いを起こしやすい運転状態」は、「顧客によって登録された乗員」に限られるものであり、乗員、一般に対して判定し得るものでない。

ウ.上記「ア.」、「イ.(ア)」及び「イ.(イ)」のいずれの場合であっても、引用発明は、乗員の乗車位置を考慮して、「車酔いを起こしやすい運転状態」が検出されるものではないから、本願発明1のように「移動体内の座席位置」を考慮して「乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する」ものとはいえない。この点に関し、引用文献1の段落【0052】に「車両特性の変更の内容を、車酔いする乗員の乗車位置(例えば、フロントシートか、リアシートか)に応じて、変更する構成でもよい。」と記載されているが、この「乗員位置」は、車両特性の変更つまり、引用発明における「車両の特性(ステアリング操舵感度、ブレーキ制動性能、サスペンション減衰力)を、車両特性補正データ60に基づいて、車酔いが起こらない特性に変更する補正制御をする」際に考慮されるものであるから、「車酔いを起こしやすい運転状態」を検出する際に考慮されるものとはいえない。
なお、引用文献2、3に記載された事項は、上記相違点3を容易想到とするための事項ではない。

以上の検討したように、引用発明の「車酔いを起こしやすい運転状態」を、上記「ア.」、「イ.(ア)」及び「イ.(イ)」のいずれの場合を想定ないし採用したとしても、上記相違点3に係る本願発明1の「酔いやすさのレベル、移動体内の座席位置、乗員の負荷状態および移動体の移動場所の特徴を示す各情報と、この情報の組み合わせに対応した各状況における酔いやすさのレベルが設定された判定用のテーブルデータを参照」して「乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部」に至るものではないから、当業者といえども、引用発明及び引用文献2、3に記載された事項から、相違点3に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
したがって、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2?6について
本願発明2?6も、本願発明1の「酔いやすさのレベル、移動体内の座席位置、乗員の負荷状態および移動体の移動場所の特徴を示す各情報と、この情報の組み合わせに対応した各状況における酔いやすさのレベルが設定された判定用のテーブルデータを参照して、前記移動体側通信部により逐次受信される前記乗員の負荷状態と前記移動体の移動場所の特徴および前記個人データ記憶部から読み出した前記乗員の個人データに対応する状況の酔いやすさのレベルを特定し、特定した酔いやすさのレベルから前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部」と同一の構成を備えるものであり、引用文献4?8は、上記相違点3を容易想到とするために引用された文献ではないから、本願発明1と同様の理由により、本願発明2は引用文献1?3に基いて、本願発明3は引用文献1?4に基いて、本願発明4は引用文献1?3、5に基いて、本願発明5は引用文献1?3、6に基いて、本願発明6は引用文献1?3、6?8に基いて、当業者であっても容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7?9について
本願発明7?9は、本願発明1の「酔いやすさのレベル、移動体内の座席位置、乗員の負荷状態および移動体の移動場所の特徴を示す各情報と、この情報の組み合わせに対応した各状況における酔いやすさのレベルが設定された判定用のテーブルデータを参照して、前記移動体側通信部により逐次受信される前記乗員の負荷状態と前記移動体の移動場所の特徴および前記個人データ記憶部から読み出した前記乗員の個人データに対応する状況の酔いやすさのレベルを特定し、特定した酔いやすさのレベルから前記乗員が酔いやすい状況であるか否かを判定する状況判定部」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明1?9は、当業者が引用発明及び引用文献2?8に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-26 
出願番号 特願2014-64111(P2014-64111)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森本 康正  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 島田 信一
中川 真一
発明の名称 移動体機器制御装置、携帯端末、移動体機器制御システムおよび移動体機器制御方法  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 英昭  
代理人 坂元 辰哉  
代理人 井上 和真  
代理人 中島 成  
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