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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1347263
審判番号 不服2017-14471  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-29 
確定日 2019-01-08 
事件の表示 特願2013- 19812「導電率測定計及びその初期状態設定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日出願公開、特開2014-149281、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成25年2月4日
拒絶査定: 平成29年6月27日(送達日:同年7月4日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年9月29日
手続補正: 平成29年9月29日
拒絶理由通知: 平成30年10月31日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年11月1日)
手続補正: 平成30年11月7日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成30年11月7日


第2 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1-9は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
一次側磁束環を形成する一次コイル及び二次側磁束環を形成する二次コイルと、前記一次コイルに所定の交流電圧を印加する電源部と、前記一次コイル及び二次コイルをそれらの磁束環に閉ループをなす測定対象が貫通するように配設した状態において、前記二次コイルに発生する誘導電流を整流して、これにより得られる出力誘導電流から前記測定対象の導電率を測定する測定部とを具備した導電率測定計の初期状態設定方法において、
前記一次側磁束環及び二次側磁束環を貫通する環状回路であって、該環状回路のインピーダンスを変化させるインピーダンス可変素子と該環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向を正逆反転させる反転機構とを具備した環状回路を設けるステップと、
前記反転機構によって前記環状回路の前記ループ方向を、前記一次コイルに所定の交流電圧を印加し、前記インピーダンス可変素子によって前記環状回路のインピーダンスを変化させたときに、インピーダンスの変化に伴って前記出力誘導電流が減少から増大に転じる極小点が現れる方向に設定するステップと、
前記ループ方向を設定した後に、前記測定対象の導電率と前記出力誘導電流との関係が線形となるように、前記インピーダンス可変素子によって前記環状回路のインピーダンスを調整するステップとを備えることを特徴とする導電率測定計の初期状態設定方法。
【請求項2】
前記極小点でのインピーダンスよりも小さい値のインピーダンスであって、前記出力誘導電流との関係が略線形となるインピーダンスの中で、略最大のインピーダンスとなるように前記インピーダンス可変素子を調整することを特徴とする請求項1記載の導電率測定計の初期状態設定方法。
【請求項3】
前記環状回路が、前記一次側磁束環を貫通する一次側配線と、前記二次側磁束環を貫通する二次側配線とをさらに具備したものであって、
前記反転機構が、前記一次側配線の一端及び他端をそれぞれ前記二次側配線の一端及び他端に接続した状態である正ループ接続状態と、前記一次側配線の一端及び他端をそれぞれ前記二次側配線の他端及び一端に接続した状態である逆ループ接続状態とを切り替えるスイッチを具備し、
前記インピーダンス可変素子が、前記一次側配線上又は前記二次側配線上に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の導電率測定計の初期状態設定方法。
【請求項4】
前記インピーダンス可変素子が、可動接点の位置に応じて抵抗値を変化させる可変抵抗素子であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電率測定計の初期状態設定方法。
【請求項5】
一次側磁束環を形成する一次コイル及び二次側磁束環を形成する二次コイルと、前記一次コイルに所定の交流電圧を印加する電源部と、前記一次コイル及び二次コイルをそれらの磁束環に閉ループをなす測定対象が貫通するように配設した状態において、前記二次コイルに発生する誘導電流を整流して、これにより得られる出力誘導電流から前記測定対象の導電率を測定する測定部とを具備した導電率測定計において、
前記一次側磁束環及び二次側磁束環を貫通するように取り付けられた一定のインピーダンスを有する環状回路を具備し、該環状回路によって二次コイルに生じる誘導電流である付加誘導電流が発生するように構成されており、
前記一定のインピーダンスが、請求項1乃至4の何れかに記載の初期状態設定方法により調整されたものであることを特徴とする導電率測定計。
【請求項6】
前記環状回路を取り外した状態で前記測定対象の導電率をゼロから増加させた時の前記出力誘導電流が単調増加する場合、前記環状回路を取り付けることによって、前記出力誘導電流が前記環状回路を取り外した状態に比べて減少するように、前記環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向が設定されていることを特徴とする請求項5記載の導電率測定計。
【請求項7】
前記環状回路を取り外した状態で前記測定対象の導電率をゼロから増加させた時の前記出力誘導電流が減少から増加に転じる極小点が現れる場合、前記環状回路を取り付けることによって、前記極小点が消滅するように、前記環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向が設定されていることを特徴とする請求項5記載の導電率測定計。
【請求項8】
前記環状回路のインピーダンスが、前記測定対象の導電率をゼロから増加させた時の前記出力誘導電流が減少から増大に転じる極小点での前記出力誘導電流と該環状回路を取り付けた状態での前記出力誘導電流とが一致するインピーダンスより小さい値のインピーダンスであって、前記出力誘導電流と前記測定対象の導電率との関係が略線形となるインピーダンスの中で略最大のインピーダンスであることを特徴とする請求項6又は7記載の導電率測定計。
【請求項9】
一次側磁束環を形成する一次コイル及び二次側磁束環を形成する二次コイルと、前記一次コイルに所定の交流電圧を印加する電源部と、前記一次コイル及び二次コイルをそれらの磁束環に閉ループをなす測定対象が貫通するように配設した状態において、前記二次コイルに発生する誘導電流を整流して、これにより得られる出力誘導電流から前記測定対象の導電率を測定する測定部とを具備した導電率測定計において、
前記一次側磁束環及び二次側磁束環を貫通するように取り付けられたインピーダンス可変素子を有する環状回路を具備し、該環状回路によって二次コイルに生じる誘導電流である付加誘導電流が発生するように構成されており、
前記環状回路が、前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向を正逆反転させる反転機構を備えていることを特徴とする導電率測定計。」


第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(実公昭38-5072号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は当審による。)

「本考案は・・・電磁濃度計または抵抗計において、・・・
図は本案の構造を示す概略図で、T_(1)は入力変圧器、T_(2)は出力変圧器、C_(1)は絶縁環状管で前記入力変圧器T_(1)の二次側と出力変圧器T_(2)の一次側に各交叉せしめ、管内に被検液を注入し得るように形成してある。・・・Mは検出装置である。
今絶縁環状管C_(1)内に被検液を注入した後入力変換器T_(1)の一次側に交番電圧を印加すると、・・・これによる出力が検出装置Mに導入されることとなる。よつてこの指示が零となるように標準可変抵抗R_(S)を調整すれば、そのときの抵抗R_(S)の値から管C_(1)内の被検液の抵抗が求められ、・・・この計器の動作状況を検査するため実際測定に先立つてその較正を行う必要の生じた場合には・・・方法もある・・・
本考案は・・・変圧器T_(1)の二次側およびT_(2)の一次側に新たに較正回路C_(3)を交叉せしめ、その交叉方向を前記環状管C_(1)と同一に保つと共に、回路中に各値の異る校正用抵抗R_(1)およびR_(2)を挿入し、これを切換開閉器Sで切換えるように構成してある。」(第1頁左欄第4行?同右欄第18行)



したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「入力変圧器T_(1)及び出力変圧器T_(2)と、前記入力変圧器T_(1)の二次側と出力変圧器T_(2)の一次側に各交叉せしめ、管内に被検液を注入し得るように形成してある絶縁環状管C_(1)と、検出装置Mとを具備した抵抗計の較正方法において、
入力変圧器T_(1)の一次側に交番電圧を印加し、検出装置Mの指示が零となるように標準可変抵抗R_(S)を調整すれば、そのときの抵抗の値から管C_(1)内の被検液の抵抗が求められ、
変圧器T_(1)の二次側およびT_(2)の一次側に較正回路C_(3)を交叉せしめ、回路中に各値の異なる校正用抵抗R_(1)およびR_(2)を挿入し、これを切換開閉器Sで切換えるようにした抵抗計の較正方法。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(米国特許第6414493号明細書)には、次の事項が記載されている。

「The equivalent circuit of the sensor is illustrated in FIG. 4 . It will be appreciated by those skilled in the art that the fluid resistance 42 and fixed resistor 36 are electrically in parallel. 」(第3欄第17行?同第20行)
(当審訳:「センサの等価回路は図4に示される。流体抵抗42および固定抵抗36が電気的に並列となることが当業者に理解されるであろう。」)



3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(米国特許第2709785号明細書)には次の事項が記載されている。

「Referring to Figure 1, the liquid under test is introduced into a pipe 1 of insulating material such as glass which has two branches 2,3 forming a closed loop.」(第1欄の下から第7行?同下から第5行)
「・・・A balancing winding 10, including a variable resistance may be provided if desired, which is linked with one core in the same direction as, and with the other core in the opposite direction to, the pipe loop.」(第2欄第16行?同第20行)
(当審訳:「図1に示されるように、測定時の液体は、ガラスのような絶縁材からなり、分岐2,3を有して閉ループを構成するパイプ1に導入される。」「・・・望ましくは、可変抵抗を含むバランス整合用の巻部材10が設けられ、それは、一方のコアに対してパイプのループと同方向に、また他方のコアに対して反対方向にリンクしている。」)



4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(米国特許出願公開第2011/0298478号明細書)には、次の事項が記載されている。

「[0020]FIG.1 shows a schematic representation of an inductive, conductivity sensor 1 as applied for measuring electrical conductivity of media, especially liquids. ・・・A variable compensation impedance R_(K) is arranged in a second conductor loop 7 , ・・・
[0021]The equivalent circuit diagram in FIG.2 shows that the second conductor loop 7 containing the variable compensation impedance R_(K) is led through the exciter coil 2 and the measuring coil 3 in such a way that it acts on the exciter and the measuring coil 2, 3 with a phase shift of 180°.・・・」
(当審訳:「[0020]図1は、媒体、特に液体の電気伝導度を測定するために適用される導電率センサ1の概略図を示す。・・・第2の導体ループ7内に配置されている可変補償インピーダンスR_(K)は、・・・
[0021]図2の等価回路図は、可変補償インピーダンスR_(K)を含む第2の導体ループ7は、180度の位相シフトで励磁及び測定コイル2,3に作用するように励磁コイル2及び測定コイル3を通って導かれることを示している。・・・」)



5.引用文献5について
また、原査定において周知技術を示す文献として新たに引用された文献である引用文献5(特開2000-131286号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0012】図3に示すように、このセンサは、上述したセンサ本体1と、その駆動・検出処理を実行するセンサ回路部3と、これらを接続するケーブル2とにより構成されている。センサ回路部3は、発振コイル13に励磁のための発振信号を供給する発振回路21と、受信コイル14で検出された信号を受信する受信回路22と、白金抵抗16に電流を流して温度を検出する温度検出回路23と、リサーチコイル15に直列に接続される抵抗24及びスイッチ25と、発振回路21及びスイッチ25を制御すると共に、受信回路22及び温度検出回路23の検出値から被検出液の抵抗値を算出する制御回路26とにより構成されている。抵抗24は、その抵抗値が既知の校正用抵抗として使用される。
【0013】このように構成された無極型電導度センサを用いて被測定液の電導度を測定する際には、制御回路26を介してスイッチ25をオフ状態にして、センサ本体1を被測定液に浸漬したのち、制御回路26が発振回路21を駆動して所定周波数の発振信号を発振コイル13に供給する。これによって、トロイダルコア11の内部に交番磁界が発生し、この交番磁界は被測定液中に図中点線矢印で示した電流ループを生じさせる。この電流ループを流れる電流の大きさは、被測定液の電導度に依存する。この電流ループは、トロイダルコア12にも鎖交しているので、受信コイル14によって電流が検出される。受信回路22は、この電流を受信し、制御回路26は、その大きさから被測定液の電導度を算出する。」



第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
まず、引用発明における「入力変圧器T_(1)及び出力変圧器T_(2)」は、それぞれ本願発明1における「一次側磁束環を形成する一次コイル及び二次側磁束環を形成する二次コイル」に相当する。
また、引用発明において「絶縁環状管C_(1)」が「入力変圧器T_(1)の二次側と出力変圧器T_(2)の一次側に各交叉せしめ、管内に被検液を注入し得るように形成してある」ことは、本願発明1において「前記一次コイル及び二次コイルをそれらの磁束環に閉ループをなす測定対象が貫通するように配設した状態」とすることに相当する。
次に、引用発明における「検出装置M」は、本願発明1における「測定部」に相当し、引用発明における「抵抗計の較正方法」は、本願発明1における「導電率測定計の初期状態設定方法」に相当する。
さらに、引用発明における「変圧器T_(1)の二次側およびT_(2)の一次側に」「交叉せしめ」られた「較正回路C_(3)」は、本願発明1における「前記一次側磁束環及び二次側磁束環を貫通する環状回路」に相当し、また引用発明において「較正回路C_(3)」の「回路中に」「挿入し、これを切換開閉器Sで切換えるようにした」「各値の異なる校正用抵抗R_(1)およびR_(2)」は、本願発明1における「該環状回路のインピーダンスを変化させるインピーダンス可変素子」に相当する。したがって、引用発明において「変圧器T_(1)の二次側およびT_(2)の一次側に較正回路C_(3)を交叉せしめ、回路中に各値の異なる校正用抵抗R_(1)およびR_(2)を挿入し、これを切換開閉器Sで切換えるように」することと、本願発明1の「前記一次側磁束環及び二次側磁束環を貫通する環状回路であって、該環状回路のインピーダンスを変化させるインピーダンス可変素子と該環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向を正逆反転させる反転機構とを具備した環状回路を設けるステップ」とは、「前記一次側磁束環及び二次側磁束環を貫通する環状回路であって、該環状回路のインピーダンスを変化させるインピーダンス可変素子を具備した環状回路を設けるステップ」である点で共通するといえる。
また、引用発明においては、「入力変圧器T_(1)の一次側に交番電圧を印加」するのであるから、該交番電圧を出力する電源部を備えていることは明らかであり、この電源部が、本願発明1の「前記一次コイルに所定の交流電圧を印加する電源部」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「一次側磁束環を形成する一次コイル及び二次側磁束環を形成する二次コイルと、前記一次コイルに所定の交流電圧を印加する電源部と、前記一次コイル及び二次コイルをそれらの磁束環に閉ループをなす測定対象が貫通するように配設した状態において、測定する測定部とを具備した導電率測定計の初期状態設定方法において、
前記一次側磁束環及び二次側磁束環を貫通する環状回路であって、該環状回路のインピーダンスを変化させるインピーダンス可変素子を具備した環状回路を設けるステップ、
を備えることを特徴とする導電率測定計の初期状態設定方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1の「測定部」は「前記二次コイルに発生する誘導電流を整流して、これにより得られる出力誘導電流から前記測定対象の導電率を測定する」ものであるのに対し、引用発明は「検出装置Mの指示が零となるように標準可変抵抗R_(S)を調整すれば、そのときの抵抗の値から管C_(1)内の被検液の抵抗が求められ」るというものである点。

(相違点2)本願発明1の「環状回路」は「該環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向を正逆反転させる反転機構」を具備するのに対し、引用発明の「較正回路C_(3)」はそのような構成を備えていない点。

(相違点3)本願発明1は「前記反転機構によって前記環状回路の前記ループ方向を、前記一次コイルに所定の交流電圧を印加し、前記インピーダンス可変素子によって前記環状回路のインピーダンスを変化させたときに、インピーダンスの変化に伴って前記出力誘導電流が減少から増大に転じる極小点が現れる方向に設定するステップ」を備えるのに対し、引用発明はそのようなステップを備えていない点。

(相違点4)本願発明1は「前記ループ方向を設定した後に、前記測定対象の導電率と前記出力誘導電流との関係が線形となるように、前記インピーダンス可変素子によって前記環状回路のインピーダンスを調整するステップ」を備えるのに対し、引用発明はそのようなステップを備えていない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献2-5には、ループ方向が正方向、もしくは逆方向とされた環状回路の構成が記載されてはいるものの、それらのループ方向を反転させることは示されておらず、またそのような反転が必要であることを読み取ることもできない。
よって、相違点2に係る本願発明1の「該環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向を正逆反転させる反転機構」を具備する「環状回路」という構成は、上記引用文献2-5には記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点1,3,4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1の「該環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向を正逆反転させる反転機構」を具備する「環状回路」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明5について
本願発明5は、「前記一定のインピーダンスが、請求項1乃至4の何れかに記載の初期状態設定方法により調整されたものであることを特徴とする導電率測定計」の発明であり、実質的に本願発明1の「該環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向を正逆反転させる反転機構」を具備する「環状回路」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明6-8について
本願発明6-8は、本願発明5を減縮する発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5.本願発明9について
本願発明9は、本願発明1に対応する導電率測定計の発明であり、本願発明1の「該環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向を正逆反転させる反転機構」を具備する「環状回路」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-8について上記引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、本件補正により補正された請求項1-9は、それぞれ「該環状回路の前記磁束環に対する貫通方向であるループ方向を正逆反転させる反転機構」を具備する「環状回路」という事項、もしくはそれに対応する事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-9は、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
当審では、平成29年9月29日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、との拒絶の理由を通知しているが、本件補正により補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-9は、当業者が引用文献1ないし5に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-17 
出願番号 特願2013-19812(P2013-19812)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
P 1 8・ 55- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
中村 説志
発明の名称 導電率測定計及びその初期状態設定方法  
代理人 齊藤 真大  
代理人 西村 竜平  

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