ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G |
---|---|
管理番号 | 1347266 |
審判番号 | 不服2018-4075 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-03-23 |
確定日 | 2019-01-08 |
事件の表示 | 特願2016-182148「映像処理装置、テレビジョン受像機、映像処理方法、制御プログラム、および記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日出願公開、特開2018- 45206、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この審判事件に関する出願(本願)は、平成28年9月16日にされた特許出願である。 本願について、平成29年5月17日付けで拒絶理由が通知され、同年7月4日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲についての補正がなされたが、同年12月28日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、査定の謄本が翌平成30年1月9日に送達された。これに対し、同年3月23日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。 なお、本願の請求項の数は、本件補正前(すなわち、原査定時)は9であり、本件補正後は8である。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし請求項8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、本件補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 映像信号が示す階調値から輝度値を設定する変換手段を複数有し、 上記映像信号の最大輝度レベルに関する情報に応じて、上記変換手段を切り替える切替部と、 上記映像信号の最大輝度レベルに関する情報を参照し、当該最大輝度レベルが所定の最大輝度レベルよりも大きいか否かを判定する判定部と、を備え、 上記変換手段は、変換関数による階調値と輝度値との変換関数であり、 上記切替部は、上記判定部が、上記最大輝度レベルが所定の最大輝度レベルよりも大きいと判定した場合に、上記変換関数を、上記映像信号が示す最大の階調値に対応する輝度値が上記所定の最大輝度レベルの値になるように階調値と輝度値とを変換する変換関数に、切り替えることを特徴とする、映像処理装置。 【請求項2】 使用者による、上記所定の最大輝度レベルの更新指示を受け付ける受付部をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の映像処理装置。 【請求項3】 上記切替部は、上記変換関数を、表示モードに応じた変換関数に切り替えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の映像処理装置。 【請求項4】 第1の映像フォーマットよりも輝度範囲の広い第2の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値を変換する映像処理装置であって、 上記第2の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値のうち、所定の最大輝度レベル以下の各輝度レベルに対応する階調値を、上記第1の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値に変換する変換部と、 上記第2の映像フォーマットに従う映像信号の最大輝度レベルに関する情報を参照し、当該最大輝度レベルが上記所定の最大輝度レベルよりも大きいか否かを判定する判定部と 、 上記判定部が、上記最大輝度レベルが上記所定の最大輝度レベルよりも大きいと判定した場合に、上記所定の最大輝度レベルを、より高い値に設定する設定部と、を備えていることを特徴とする、映像処理装置。 【請求項5】 請求項1?4の何れか1項に記載の映像処理装置を備えているテレビジョン受像機。 【請求項6】 映像信号が示す階調値から輝度値を設定する複数の変換手段のうちで、上記映像信号の最大輝度レベルに関する情報に応じて上記変換手段を切り替える切替ステップと、 上記映像信号の最大輝度レベルに関する情報を参照し、当該最大輝度レベルが所定の最大輝度レベルよりも大きいか否かを判定する判定ステップと、を含み、 上記変換手段は、変換関数による階調値と輝度値との変換関数であり、 上記切替ステップでは、上記判定ステップで上記最大輝度レベルが所定の最大輝度レベルよりも大きいと判定した場合に、上記変換関数を、上記映像信号が示す最大の階調値に対応する輝度値が上記所定の最大輝度レベルの値になるように階調値と輝度値とを変換する変換関数に、切り替えることを特徴とする、映像処理方法。 【請求項7】 請求項1に記載の映像処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、上記切替部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。 【請求項8】 請求項7に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」 第3 原査定における拒絶理由の概要 この出願の請求項1ないし請求項9に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.国際公開第2015/194102号 第4 引用文献に記載された発明等 1 引用文献1 引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。 (1) 段落0039 「 本開示は、輝度範囲が高い高輝度信号であるHDR(High Dynamic Range)信号を、最大輝度値が100nitである輝度範囲の通常輝度信号であるSDR(Standard Dynamic Range)信号に対応したTV、プロジェクタ、タブレット、スマートフォン等のディスプレイ装置で表示させるための画像変換・再生方法、装置に関する。」 (2) 段落0052 「 [1-4.SDRTV] SDRに対応した映像の表示(以下、「SDR表示」という。)のみに対応したTV(以下、「SDRTV」という。)は、通常、輝度値が100nitまでの入力信号が入力される。このため、SDRTVは、その表示能力が100nitであれば入力信号の輝度値を表現するのに十分である。しかし、SDRTVは、実際は、視聴環境(暗い部屋:シネマモード、明るい部屋:ダイナミックモード等)に合わせて、最適な輝度値の映像を再生する機能を有し、200nit以上の映像表現が可能な能力を持っているものが多い。つまり、このようなSDRTVは、視聴環境に応じた表示モードを選択することで、表示能力の最大輝度(例えば、300nit)までの映像を表示できる。」 (3) 段落0063から段落0064まで 「 [1-7.HDR→疑似HDR変換] 以上のことからHDRの普及を促進するためには、HDRTVの普及を待たずに、HDRコンテンツや配信方式の事業化を推進できることが重要であると言える。このためには、既存のSDRTVで、HDR信号を、SDR映像としてではなく、HDR映像または、SDR映像よりもHDR映像に近づけた疑似HDR映像として視聴可能にすることができれば、ユーザは、HDRTVを買わなくても、SDR映像とは明らかに異なる、HDR映像に近いより高画質な映像を視聴できる。つまり、ユーザは、SDRTVで疑似HDR映像を視聴できれば、HDRTVを用意しなくてもHDRコンテンツやHDR配信機器を用意するだけで、SDR映像よりも高画質な映像を視聴することができるようになる。要するに、疑似HDR映像をSDRTVで視聴できるようにすることは、HDRコンテンツやHDR配信機器を購入するためのユーザの動機になり得る(図7参照)。 疑似HDR映像をSDRTVに表示させることを実現するために、HDR配信方式にSDRTVが接続された構成で、HDRコンテンツを再生した時に、SDRTVでHDRコンテンツの映像が正しく表示できるように、HDR信号をSDR映像信号に変換する代わりに、SDRTVの100nitを最大値とする映像信号の入力を用いて、SDRTVが持つ表示能力の最大輝度、例えば、200nit以上の映像を表示させるための疑似HDR信号を生成し、生成した疑似HDR信号をSDRTVに送ることを可能にする「HDR→疑似HDR変換処理」を実現することが必要になる。」 (4) 段落0067から段落0069まで 「 EOTFは、一般的にガンマカーブと呼ばれるものであり、コード値と輝度値との対応を示し、コード値を輝度値に変換するものである。つまり、EOTFは、複数のコード値と輝度値との対応関係を示す関係情報である。 …(略)… 逆EOTFは、輝度値とコード値との対応を示し、EOTFとは逆に輝度値を量子化してコード値に変換するものである。つまり、逆EOTFは、輝度値と複数のコード値との対応関係を示す関係情報である。例えば、HDRに対応した映像の輝度値を10ビットの階調のコード値で表現する場合、10,000nitまでのHDRの輝度範囲における輝度値は、量子化されて、0?1023までの1024個の整数値にマッピングされる。つまり、逆EOTFに基づいて量子化することで、10,000nitまでの輝度範囲の輝度値(HDRに対応した映像の輝度値)を、10ビットのコード値であるHDR信号に変換する。HDRに対応したEOTF(以下、「HDRのEOTF」という。)またはHDRに対応した逆EOTF(以下、「HDRの逆EOTF」という。)においては、SDRに対応したEOTF(以下、「SDRのEOTF」という。)またはSDRに対応した逆EOTF(以下、「SDRの逆EOTF」という。)よりも高い輝度値を表現することが可能であり、例えば、図8Aおよび図8Bにおいては、輝度の最大値(ピーク輝度)は、10,000nitである。つまり、HDRの輝度範囲は、SDRの輝度範囲を全て含み、HDRのピーク輝度は、SDRのピーク輝度より大きい。HDRの輝度範囲は、SDRの輝度範囲の最大値である100nitから、10,000nitまで、最大値を拡大した輝度範囲である。」 (5) 段落0082から段落0083まで 「 [1-11.変換装置および表示装置] 図11は、実施の形態の変換装置および表示装置の構成を示すブロック図である。図12は、実施の形態の変換装置および表示装置により行われる変換方法および表示方法を示すフローチャートである。 図11に示すように、変換装置100は、HDRのEOTF変換部101、輝度変換部102、逆輝度変換部103、および逆SDRのEOTF変換部104を備える。また、表示装置200は、表示設定部201、SDRのEOTF変換部202、輝度変換部203、および表示部204を備える。」 (6) 段落0085から段落0095まで 「 [1-12.変換方法および表示方法] 変換装置100が行う変換方法について、図12を用いて説明する。なお、変換方法は、以下で説明するステップS101?ステップS104を含む。 まず、変換装置100のHDRのEOTF変換部101は、逆HDRのEOTF変換が行われたHDR映像を取得する。変換装置100のHDRのEOTF変換部101は、取得したHDR映像のHDR信号に対して、HDRのEOTF変換を実施する(S101)。これにより、HDRのEOTF変換部101は、取得したHDR信号を、輝度値を示すリニアな信号に変換する。HDRのEOTFは、例えばSMPTE 2084がある。 次に、変換装置100の輝度変換部102は、HDRのEOTF変換部101により変換されたリニアな信号を、ディスプレイ特性情報とコンテンツ輝度情報とを用いて変換する第1輝度変換を行う(S102)。第1輝度変換において、HDRの輝度範囲に対応した輝度値(以下、「HDRの輝度値」という。)を、ディスプレイの輝度範囲に対応した輝度値(以下、「ディスプレイ輝度値」という。)に変換する。詳細は後述する。 上記のことから、HDRのEOTF変換部101は、映像の輝度値が量子化されることで得られたコード値を示す第1輝度信号としてのHDR信号を取得する取得部として機能する。また、HDRのEOTF変換部101および輝度変換部102は、取得部により取得されたHDR信号が示すコード値を、ディスプレイ(表示装置200)の輝度範囲に基づいて決定する、HDRの輝度範囲の最大値(HPL)よりも小さく、かつ、100nitよりも大きい最大値(DPL)であるディスプレイの輝度範囲に対応するディスプレイ輝度値へ変換する変換部として機能する。 …(略)… また、変換装置100は、ステップS102の前に、映像(コンテンツ)の輝度の最大値(CPL:Content Peak luminance)および映像の平均輝度値(CAL:Content Average luminance)の少なくとも一方を含むコンテンツ輝度情報をHDR信号に関する情報として取得している。CPL(第1最大輝度値)は、例えば、HDR映像を構成する複数の画像に対する輝度値のうちの最大値である。また、CALは、例えば、HDR映像を構成する複数の画像に対する輝度値の平均である平均輝度値である。 また、変換装置100は、ステップS102の前に、表示装置200から表示装置200のディスプレイ特性情報を取得している。なお、ディスプレイ特性情報とは、表示装置200が表示できる輝度の最大値(DPL)、表示装置200の表示モード(後述参照)、入出力特性(表示装置が対応するEOTF)などの表示装置200の表示特性を示す情報である。 …(略)… 次に、変換装置100の逆輝度変換部103は、表示装置200の表示モードに応じた逆輝度変換を行う。これにより、逆輝度変換部103は、ディスプレイの輝度範囲に対応した輝度値を、SDRの輝度範囲(0?100〔nit〕)に対応する輝度値に変換する第2輝度変換を行う(S103)。詳細は後述する。つまり、逆輝度変換部103は、ステップS102で得られたディスプレイ輝度値について、当該ディスプレイ輝度値に予め関係付けられた、100nitを最大値とするSDRの輝度範囲に対応する第3輝度値としてのSDRに対応した輝度値(以下、「SDRの輝度値」という。)SDRの輝度値を決定し、ディスプレイの輝度範囲に対応するディスプレイ輝度値を、SDRの輝度範囲に対応するSDRの輝度値へ変換する第2輝度変換を行う。 そして、変換装置100の逆SDRのEOTF変換部104は、逆SDRのEOTF変換を行うことで、疑似HDR映像を生成する(S104)。つまり、逆SDRのEOTF変換部104は、HDRの輝度範囲における輝度値と、複数の第3コード値とを関係付けた第3関係情報であるSDR(Standard Dynamic Range)の逆EOTF(Electro-Optical Transfer Function)を用いて、決定したSDRの輝度値を量子化し、量子化により得られた第3コード値を決定し、SDRの輝度範囲に対応するSDRの輝度値を、第3コード値を示す第3輝度信号としてのSDR信号へ変換することで、疑似HDR信号を生成する。なお、第3コード値は、SDRに対応したコード値であり、以下では、「SDRのコード値」という。つまり、SDR信号は、SDRの輝度範囲における輝度値と、複数のSDRのコード値とを関係付けたSDRの逆EOTFを用いて、映像の輝度値が量子化されることで得られたSDRのコード値で表される。そして、変換装置100は、ステップS104で生成した疑似HDR信号(SDR信号)を表示装置200へ出力する。」 (7) 段落0107から段落0109まで 「 [1-13.第1輝度変換] 次に、ステップS102の第1輝度変換(HPL→DPL)の詳細について、図13Aを用いて説明する。図13Aは、第1輝度変換の一例について説明するための図である。 変換装置100の輝度変換部102は、ステップS101で得られたリニアな信号(HDRの輝度値)を、ディスプレイ特性情報と、HDR映像のコンテンツ輝度情報とを用いて変換する第1輝度変換を行う。第1輝度変換は、HDRの輝度値(入力輝度値)を、ディスプレイピーク輝度(DPL)を超えないディスプレイ輝度値(出力輝度値)に変換する。DPLは、ディスプレイ特性情報であるSDRディスプレイの最大輝度および表示モードを用いて決定する。表示モードは、例えば、SDRディスプレイに暗めに表示するシアターモードや、明るめに表示するダイナミックモード等のモード情報である。表示モードが、例えば、SDRディスプレイの最大輝度が1,500nitであり、かつ、表示モードが最大輝度の50%の明るさにするモードである場合、DPLは、750nitとなる。ここで、DPL(第2最大輝度値)とは、SDRディスプレイが現在設定されている表示モードにおいて表示できる輝度の最大値である。つまり、第1輝度変換では、SDRディスプレイの表示特性を示す情報であるディスプレイ特性情報を用いて、第2最大輝度値としてのDPLを決定する。 また、第1輝度変換では、コンテンツ輝度情報のうちのCALとCPLとを用い、CAL付近以下の輝度値は、変換の前後で同一とし、CPL付近以上の輝度値に対してのみ輝度値を変更する。つまり、図13Aに示すように、第1輝度変換では、当該HDRの輝度値がCAL以下の場合、当該HDRの輝度値を変換せず、当該HDRの輝度値を、ディスプレイ輝度値として決定し、当該HDRの輝度値がCPL以上の場合、第2最大輝度値としてのDPLを、ディスプレイ輝度値として決定する。」 [図13A] (8) 段落0142 「 また、HDR映像のCPLやCALは、コンテンツ1つに対して1つでもよいし、シーン毎に存在していてもよい。つまり、変換方法では、映像の複数のシーンのそれぞれに対応した輝度情報であって、当該シーン毎に、当該シーンを構成する複数の画像に対する輝度値のうちの最大値である第1最大輝度値と、当該シーンを構成する複数の画像に対する輝度値の平均である平均輝度値との少なくとも一方を含む輝度情報(CPL、CAL)を取得し、第1輝度変換では、複数のシーンのそれぞれについて、当該シーンに対応した輝度情報に応じてディスプレイ輝度値を決定してもよい。」 (9) 段落0150から段落0153まで 「 また、変換装置100の第1輝度変換(HPL→DPL)は例えば次の算式で変換する。 …(略)… つまり、第1輝度変換では、SDRの輝度値が、平均輝度値(CAL)と第1最大輝度値(CPL)との間である場合、自然対数を用いて、当該HDRの輝度値に対応するディスプレイ輝度値を決定する。 HDR映像のコンテンツピーク輝度やコンテンツ平均輝度等の情報を用いてHDR映像を変換することにより、コンテンツに応じて変換式を変えることができ、HDRの階調をなるべく保つように変換することが可能となる。また、暗すぎる、明るすぎるといった悪影響を抑制することができる。具体的には、HDR映像のコンテンツピーク輝度をディスプレイピーク輝度にマッピングすることにより、階調をなるべく保つようにしている。また、平均輝度付近以下の画素値を変えないことにより、全体的な明るさが変わらないようにしている。」 ここで、段落0150の「また、変換装置100の第1輝度変換(HPL→DPL)は例えば次の算式で変換する。」との記載の後で、記載されるべき「次の算式」が記載されておらず、その後の段落0152では「つまり、第1輝度変換では、SDRの輝度値が、平均輝度値(CAL)と第1最大輝度値(CPL)との間である場合、自然対数を用いて、当該HDRの輝度値に対応するディスプレイ輝度値を決定する。」と記載されているが、段落0150及び段落0152の記載が、HDRの輝度範囲に対応したHDRの輝度値を、ディスプレイの輝度範囲に対応したディスプレイ輝度値に変換する「第1輝度変換」に関するものであるということ(上記(6)を参照。)、及び「第1輝度変換」の一例を示すものとされている図13Aの内容(上記(7)を参照。)を考慮すれば、段落0152の「SDRの輝度値が」との記載は「HDRの輝度値が」の誤記であって、段落0150の上記記載の後に記載されるべき「次の算式」は、「HDRの輝度値が、平均輝度値(CAL)と第1最大輝度値(CPL)との間である場合、自然対数を用いて、当該HDRの輝度値に対応するディスプレイ輝度値を決定する」ような変換式であるということが明らかといえる。 上記(1)ないし(9)の記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「 輝度範囲が高い高輝度信号であるHDR信号を、最大輝度値が100nitである輝度範囲の通常輝度信号であるSDR信号に対応したTV(SDRTV)で表示させるための画像変換・再生方法に用いられる変換装置100であって、 HDRのEOTF変換部101、輝度変換部102、逆輝度変換部103及び逆SDRのEOTF変換部104を備え、 まず、HDRのEOTF変換部101が、階調のコード値を示す第1輝度信号としてのHDR信号を取得し、取得したHDR映像のHDR信号に対して、HDRのEOTF変換を実施することにより、取得したHDR信号を、輝度値を示すリニアな信号に変換し、 次に、輝度変換部102が、HDRのEOTF変換部101により変換されたリニアな信号におけるHDRの輝度範囲に対応したHDRの輝度値を、ディスプレイの輝度範囲に対応したディスプレイ輝度値に変換する第1輝度変換を行い、 次に、逆輝度変換部103が、ディスプレイの輝度範囲に対応したディスプレイ輝度値を、SDRの輝度範囲に対応するSDRの輝度値へ変換する第2輝度変換を行い、 そして、逆SDRのEOTF変換部104が、SDRの輝度範囲に対応するSDRの輝度値を、第3コード値を示す第3輝度信号としてのSDR信号へ変換することで、疑似HDR信号を生成し、 生成した疑似HDR信号(SDR信号)を表示装置200へ出力するようにすることで、既存のSDRTVで、HDR信号を、SDR映像としてではなく、HDR映像または、SDR映像よりもHDR映像に近づけた疑似HDR映像として視聴可能にするものであり、 HDRのEOTF変換部101及び輝度変換部102は、取得されたHDR信号が示すコード値を、HDRの輝度範囲の最大値(HPL)よりも小さく、かつ、100nitよりも大きい最大値(DPL)であるディスプレイの輝度範囲に対応するディスプレイ輝度値へ変換する変換部として機能するものであり、 輝度変換部102が第1輝度変換を行う前に、映像(コンテンツ)の輝度の最大値(CPL)および映像の平均輝度値(CAL)の少なくとも一方を含むコンテンツ輝度情報をHDR信号に関する情報として取得し、また、表示装置200が表示できる輝度の最大値(DPL)などのディスプレイ特性情報を表示装置200から取得し、HDR映像のCPLやCALは、コンテンツ1つに対して1つでもよいし、シーン毎に存在していてもよく、 第1輝度変換は、HDRの輝度値(入力輝度値)を、ディスプレイピーク輝度(DPL)を超えないディスプレイ輝度値(出力輝度値)に変換するものであり、また、コンテンツ輝度情報のうちのCALとCPLとを用い、HDRの輝度値がCAL以下の場合は当該HDRの輝度値を変換せずに当該HDRの輝度値をディスプレイ輝度値として決定し、HDRの輝度値がCPL以上の場合は第2最大輝度値としてのDPLをディスプレイ輝度値として決定し、HDRの輝度値がCALとCPLとの間である場合は自然対数を用いて当該HDRの輝度値に対応するディスプレイ輝度値を決定するものであり、HDR映像のコンテンツピーク輝度(CPL)やコンテンツ平均輝度(CAL)等の情報を用いてHDR映像を変換することにより、コンテンツに応じて変換式を変えることができ、HDRの階調をなるべく保つように変換することが可能となる変換装置100。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。 ア 引用発明の「輝度範囲が高い高輝度信号であるHDR信号を、最大輝度値が100nitである輝度範囲の通常輝度信号であるSDR信号に対応したTV(SDRTV)で表示させるための画像変換・再生方法に用いられる変換装置100」は、本願発明1の「映像処理装置」に相当する。 イ 引用発明の「階調のコード値を示す第1輝度信号としてのHDR信号」が、本願発明1の「映像信号」に相当し、引用発明の「HDR信号」が示す「階調のコード値」が、本願発明1の「映像信号が示す階調値」に相当する。 ウ 引用発明における「変換装置100」の構成である「HDRのEOTF変換部101及び輝度変換部102」は、「取得されたHDR信号が示すコード値を、HDRの輝度範囲の最大値(HPL)よりも小さく、かつ、100nitよりも大きい最大値(DPL)であるディスプレイの輝度範囲に対応するディスプレイ輝度値へ変換する変換部として機能するもの」であり、つまり「階調のコード値」から「ディスプレイ輝度値」を設定するものである。 そして、引用発明の「HDRのEOTF変換部101及び輝度変換部102」のうちの「輝度変換部102」が行う「第1輝度変換」は、「HDRのEOTF変換部101により変換された」「HDRの輝度値」を「ディスプレイ輝度値」に変換するものであり、「HDR映像のコンテンツピーク輝度(CPL)やコンテンツ平均輝度(CAL)等の情報を用いてHDR映像を変換することにより、コンテンツに応じて変換式を変えることができ、HDRの階調をなるべく保つように変換することが可能となる」ものであることから、「輝度変換部102」は複数の「変換式」を備えるものであり、これらの複数の「変換式」は、上述の「HDRのEOTF変換部101及び輝度変換部102」による「階調のコード値」から「ディスプレイ輝度値」を設定するという処理の一部、具体的には、「HDRの輝度値」から「ディスプレイ輝度値」を設定するという処理を行うものであるといえる。 以上によれば、引用発明の「変換装置100」の構成である「輝度変換部102」が複数の「変換式」を備えるということと、本願発明の「映像処理装置」が「映像信号が示す階調値から輝度値を設定する変換手段を複数有し」、「上記変換手段は、変換関数による階調値と輝度値との変換関数であ」るということとは、「映像処理装置」が、「映像信号が示す階調値から輝度値を設定する」という処理の少なくとも一部を行う「変換手段を複数有し」、「上記変換手段は、」「変換関数であ」るという点で共通するものである。 エ 引用発明の「映像(コンテンツ)の輝度の最大値(CPL)」は、本願発明1の「映像信号の最大輝度レベルに関する情報」に相当する。 また、引用発明の「輝度変換部102」が行う「第1輝度変換」は、「HDR映像のコンテンツピーク輝度(CPL)やコンテンツ平均輝度(CAL)等の情報を用いてHDR映像を変換することにより、コンテンツに応じて変換式を変える」ものであり、これは、本願発明1の「切替部」の「上記映像信号の最大輝度レベルに関する情報に応じて、上記変換手段を切り替える」という機能に相当するものといえる。 オ 引用発明の「輝度変換部102」が行う「第1輝度変換」は、「HDRの輝度値(入力輝度値)を、ディスプレイピーク輝度(DPL)を超えないディスプレイ輝度値(出力輝度値)に変換するものであり」、「HDRの輝度値がCPL以上の場合は第2最大輝度値としてのDPLをディスプレイ輝度値として決定」するものであり、「HDR映像のコンテンツピーク輝度(CPL)やコンテンツ平均輝度(CAL)等の情報を用いてHDR映像を変換することにより、コンテンツに応じて変換式を変える」ものであるから、「輝度変換部102」は、「HDRの輝度値がCPL」の場合に「第2最大輝度値としてのDPLをディスプレイ輝度値として決定」する「変換式」への切り替えを行うものである。 このような「変換式」における「第2最大輝度値としてのDPL」(つまり「表示装置200が表示できる輝度の最大値(DPL)」)は、本願発明1の「所定の最大輝度レベル」に相当し、また、このように「HDRの輝度値がCPL」の場合に「第2最大輝度値としてのDPLをディスプレイ輝度値として決定」する「変換式」への切り替えを行うということは、本願発明1の「上記映像信号が示す最大の階調値に対応する輝度値が上記所定の最大輝度レベルの値になるように階調値と輝度値とを変換する変換関数に、切り替える」ということに相当する。 (2) 一致点及び相違点 上記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 ア 一致点 「 映像信号が示す階調値から輝度値を設定するという処理の少なくとも一部を行う変換手段を複数有し、 上記映像信号の最大輝度レベルに関する情報に応じて、上記変換手段を切り替える切替部を備え、 上記変換手段は、変換関数であり、 上記切替部は、上記変換関数を、上記映像信号が示す最大の階調値に対応する輝度値が上記所定の最大輝度レベルの値になるように階調値と輝度値とを変換する変換関数に、切り替えることを特徴とする、映像処理装置。」 イ 相違点 (ア) 相違点1 「変換手段」が、本願発明1では、「映像信号が示す階調値から輝度値を設定する」ものであり、「変換関数による階調値と輝度値との変換関数」であるのに対して、引用発明では、「階調のコード値」から「ディスプレイ輝度値」を設定するという処理の一部、具体的には、「HDRの輝度値」から「ディスプレイ輝度値」を設定するという処理を行う「変換式」である点。 (イ) 相違点2 本願発明1では、「映像信号の最大輝度レベルに関する情報を参照し、当該最大輝度レベルが所定の最大輝度レベルよりも大きいか否かを判定する判定部」が設けられ、切替部は、「判定部が、上記最大輝度レベルが所定の最大輝度レベルよりも大きいと判定した場合」に、切り替えを行うのに対して、引用発明では、判定部に相当する構成が設けられていない点。 (3) 相違点についての判断 事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。 引用発明が相違点2に係る本願発明1の構成を備えるようにするには、引用発明において、「映像(コンテンツ)の輝度の最大値(CPL)」を参照し、当該「CPL」が「表示装置200が表示できる輝度の最大値(DPL)」よりも大きいか否かを判定する判定部を設け、当該判定部が、「CPL」が「DPL」よりも大きいと判定した場合に、、「輝度変換部102」が「変換式」の切り替えを行うようにする必要がある。 ところが、引用発明の「第1輝度変換は、HDRの輝度値(入力輝度値)を、ディスプレイピーク輝度(DPL)を超えないディスプレイ輝度値(出力輝度値)に変換するものであり、また、コンテンツ輝度情報のうちのCALとCPLとを用い、HDRの輝度値がCAL以下の場合は当該HDRの輝度値を変換せずに当該HDRの輝度値をディスプレイ輝度値として決定し、HDRの輝度値がCPL以上の場合は第2最大輝度値としてのDPLをディスプレイ輝度値として決定し、HDRの輝度値がCALとCPLとの間である場合は自然対数を用いて当該HDRの輝度値に対応するディスプレイ輝度値を決定する」という事項や図13A(上記第4の1(7))の内容は、「CPL」が「DPL」よりも大きいということを前提としたものであり、「CPL」が「DPL」よりも小さくなり得るといったことは引用文献1において記載も示唆もされていないことから、「CPL」が「DPL」よりも大きいか否かを判定するということも、引用文献1からは示唆されない。 したがって、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 (4) 本願発明1についてのまとめ 以上のとおりであるから、本願発明1は、相違点1を検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 2 本願発明2及び本願発明3について 本願発明2及び本願発明3は、本願発明1の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点(上記1(2)イ)で引用発明と相違する。 そして、上記1(3)のとおり、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということはできないから、相違点2に係る本願発明2及び本願発明3の構成も同様である。 したがって、本願発明2及び本願発明3は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 3 本願発明4について (1) 対比 本願発明4と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。 ア 引用発明の「最大輝度値が100nitである輝度範囲の通常輝度信号であるSDR信号」のフォーマット及び「輝度範囲が高い高輝度信号であるHDR信号」のフォーマットは、本願発明4の「第1の映像フォーマット」及び「第1の映像フォーマットよりも輝度範囲の広い第2の映像フォーマット」にそれぞれ相当し、引用発明の「輝度範囲が高い高輝度信号であるHDR信号を、最大輝度値が100nitである輝度範囲の通常輝度信号であるSDR信号に対応したTV(SDRTV)で表示させるための画像変換・再生方法に用いられる変換装置100」は、本願発明4の「第1の映像フォーマットよりも輝度範囲の広い第2の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値を変換する映像処理装置」に相当する。 イ 引用発明の「階調のコード値を示す第1輝度信号としてのHDR信号」が、本願発明4の「上記第2の映像フォーマットに従う映像信号」に相当し、引用発明の「HDR信号」が示す「階調のコード値」が、本願発明4の「上記第2の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値」に相当する。 また、引用発明の「第3コード値を示す第3輝度信号としてのSDR信号」が、本願発明4の「上記第1の映像フォーマットに従う映像信号」に相当し、引用発明の「SDR信号」が示す「第3コード値」が、本願発明4の「上記第1の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値」に相当する。 ウ 引用発明は、「まず、HDRのEOTF変換部101が、階調のコード値を示す第1輝度信号としてのHDR信号を取得し、取得したHDR映像のHDR信号に対して、HDRのEOTF変換を実施することにより、取得したHDR信号を、輝度値を示すリニアな信号に変換し」、「次に、輝度変換部102が、HDRのEOTF変換部101により変換されたリニアな信号におけるHDRの輝度範囲に対応したHDRの輝度値を、ディスプレイの輝度範囲に対応したディスプレイ輝度値に変換する第1輝度変換を行い」、「次に、逆輝度変換部103が、ディスプレイの輝度範囲に対応したディスプレイ輝度値を、SDRの輝度範囲に対応するSDRの輝度値へ変換する第2輝度変換を行い」、「そして、逆SDRのEOTF変換部104が、SDRの輝度範囲に対応するSDRの輝度値を、第3コード値を示す第3輝度信号としてのSDR信号へ変換する」ものであり、「HDRのEOTF変換部101」、「輝度変換部102」、「逆輝度変換部103」及び「逆SDRのEOTF変換部104」の4つの構成全体としては、「階調のコード値を示す第1輝度信号としてのHDR信号」を「第3コード値を示す第3輝度信号としてのSDR信号」へ変換するものである。 また、引用発明の「輝度変換部102」が行う「第1輝度変換」は、「HDRの輝度値(入力輝度値)を、ディスプレイピーク輝度(DPL)を超えないディスプレイ輝度値(出力輝度値)に変換するものであり、また、コンテンツ輝度情報のうちのCALとCPLとを用い、HDRの輝度値がCAL以下の場合は当該HDRの輝度値を変換せずに当該HDRの輝度値をディスプレイ輝度値として決定し、HDRの輝度値がCPL以上の場合は第2最大輝度値としてのDPLをディスプレイ輝度値として決定し、HDRの輝度値がCALとCPLとの間である場合は自然対数を用いて当該HDRの輝度値に対応するディスプレイ輝度値を決定するもの」であり、すなわち、「HDRの輝度値(入力輝度値)」のうち「CPL」以下の輝度値を、当該輝度値の大きさに応じた「ディスプレイ輝度値(出力輝度値)」に変換し、「CPL」を超える輝度値を、当該輝度値の大きさによらない1つのディスプレイ輝度値である「DPL」に変換する。 以上によれば、引用発明の「HDRのEOTF変換部101」、「輝度変換部102」、「逆輝度変換部103」及び「逆SDRのEOTF変換部104」の4つの構成全体としては、「階調のコード値を示す第1輝度信号としてのHDR信号」のうち、「CPL」以下の輝度値に対応する「コード値」を、当該「コード値」の大きさに応じた「第3コード値を示す第3輝度信号としてのSDR信号」へ変換し、「CPL」を超える輝度値に対応する「コード値」を、当該「コード値」の大きさによらない1つのディスプレイ輝度値である「DPL」に対応する「第3コード値を示す第3輝度信号としてのSDR信号」へ変換するものである。 ここで、引用発明の「CPL」が、本願発明4の「所定の最大輝度レベル」に相当し、引用発明の、「階調のコード値を示す第1輝度信号としてのHDR信号」のうち、「CPL」以下の輝度値に対応する「コード値」を、当該「コード値」の大きさに応じた「第3コード値を示す第3輝度信号としてのSDR信号」へ変換する機能に係る「HDRのEOTF変換部101」、「輝度変換部102」、「逆輝度変換部103」及び「逆SDRのEOTF変換部104」の4つの構成全体が、本願発明4の「上記第2の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値のうち、所定の最大輝度レベル以下の各輝度レベルに対応する階調値を、上記第1の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値に変換する変換部」に相当する。 エ 引用発明では、「輝度変換部102が第1輝度変換を行う前に、映像(コンテンツ)の輝度の最大値(CPL)」「を含むコンテンツ輝度情報をHDR信号に関する情報として取得し」、「HDR映像のCPL」は「コンテンツ1つに対して1つでもよいし、シーン毎に存在していてもよく」、また、「第1輝度変換」は「HDR映像のコンテンツピーク輝度(CPL)」「の情報を用いてHDR映像を変換することにより、コンテンツに応じて変換式を変える」ものであるから、「シーン」若しくは「コンテンツ」が変わって「CPL」が変われば、それに応じて「変換式」も変わることになる。すなわち、「輝度変換部102」は「シーン」若しくは「コンテンツ」が変わるごとに「CPL」を参照し、新たに参照した「CPL」がそれまでの「CPL」よりも大きい場合には、「変換式」をより大きい値の新たに参照した「CPL」を用いた「変換式」に変更している。 ここで、引用発明の「輝度変換部102」が新たな「CPL」を参照するということは、本願発明4の「判定部」が「上記第2の映像フォーマットに従う映像信号の最大輝度レベルに関する情報を参照」するということに相当し、また、引用発明の「輝度変換部102」が新たに参照した「CPL」がそれまでの「CPL」よりも大きい場合に、「変換式」をより大きい値の新たに参照した「CPL」を用いた「変換式」に変更するということは、本願発明4の「設定部」が「上記最大輝度レベルが上記所定の最大輝度レベルよりも大きい」場合に「上記所定の最大輝度レベルを、より高い値に設定する」ということに相当する。 (2) 一致点及び相違点 上記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明4と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 ア 一致点 「 第1の映像フォーマットよりも輝度範囲の広い第2の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値を変換する映像処理装置であって、 上記第2の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値のうち、所定の最大輝度レベル以下の各輝度レベルに対応する階調値を、上記第1の映像フォーマットに従う映像信号において各画素が取る階調値に変換する変換部と、 上記第2の映像フォーマットに従う映像信号の最大輝度レベルに関する情報を参照する判定部と、 上記最大輝度レベルが上記所定の最大輝度レベルよりも大きい場合に、上記所定の最大輝度レベルを、より高い値に設定する設定部と、を備えていることを特徴とする、映像処理装置。」 イ 相違点 (ア) 相違点3 本願発明1では、「判定部」が、参照した「最大輝度レベル」が「所定の最大輝度レベルよりも大きいか否かを判定」するものであり、「設定部」は、最大輝度レベルが所定の最大輝度レベルよりも大きいと「判定部」が「判定」した場合に所定の最大輝度レベルの設定を行うのに対して、引用発明1では、新たに参照した「CPL」がそれまでの「CPL」よりも大きいか否かの「判定」を行っていない(若しくは行っているかどうかが不明である)が、「CPL」が変わればそれに応じて「変換式」も変わることから、新たに参照した「CPL」がそれまでの「CPL」よりも大きい場合には、より大きい値の新たに参照した「CPL」を用いた「変換式」に結果的に変更される点。 (3) 相違点についての判断 引用発明が相違点3に係る本願発明4の構成を備えるようにするには、引用発明において、新たに参照した「CPL」がそれまでの「CPL」よりも大きいか否かの「判定」を行い、新たに参照した「CPL」がそれまでの「CPL」よりも大きいと「判定」した場合に、より大きい値の新たに参照した「CPL」を用いた「変換式」に変更するようにする必要がある。 ところが、引用発明は、「CPL」の大小に関わらず新たに参照した「CPL」を用いた「変換式」への変更を行うものであるから、その過程で敢えて、新たに参照した「CPL」がそれまでの「CPL」よりも大きいか否かの「判定」を行う必要性はなく、引用文献1には、新たに参照した「CPL」がそれまでの「CPL」よりも大きいか否かの「判定」を行うことについて、記載も示唆もされていない。 したがって、相違点3に係る本願発明4の構成は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 (4) 本願発明4についてのまとめ 以上のとおりであるから、本願発明4は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 4 本願発明5について 本願発明5は、本願発明1又は本願発明4のいずれかの構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点(上記1(2)イ)又は本願発明4と引用発明との相違点(上記3(2)イ)で引用発明と相違する。 そして、上記1(3)及び上記3(3)のとおり、相違点2に係る本願発明1の構成及び相違点3に係る本願発明4の構成はいずれも、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということはできないから、相違点2及び相違点3に係る本願発明5の構成も同様である。 したがって、本願発明5は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 5 本願発明6ないし本願発明8について 本願発明6は、本願発明1に係る映像処理装置の動作を方法の発明として表現したものであり、相違点2に係る本願発明1の構成に対応する構成、すなわち、「上記映像信号の最大輝度レベルに関する情報を参照し、当該最大輝度レベルが所定の最大輝度レベルよりも大きいか否かを判定する判定ステップ」との構成及び「上記切替ステップでは、上記判定ステップで上記最大輝度レベルが所定の最大輝度レベルよりも大きいと判定した場合に、上記変換関数を、上記映像信号が示す最大の階調値に対応する輝度値が上記所定の最大輝度レベルの値になるように階調値と輝度値とを変換する変換関数に、切り替える」との構成を備えるものである。 また、本願発明7は、本願発明1に係る映像処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであり、本願発明8は、本願発明7に係る制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、いずれも相違点2に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものである。 そして、前記1(3)で述べたのと同様に、引用発明において「CPL」が「DPL」よりも大きいか否かを判定するということは、引用文献1から示唆されないから、相違点2に係る本願発明1の構成に対応する本願発明6ないし本願発明8の上記構成は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということができない。 したがって、本願発明6ないし本願発明8は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第6 原査定について 上記第5のとおり、本件補正がされた本願発明1ないし本願発明8は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、原査定の理由は、維持することができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。 また、他に、本願は拒絶をするべきものであるとする理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-12-17 |
出願番号 | 特願2016-182148(P2016-182148) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G09G)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 橋本 直明 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
櫻井 健太 須原 宏光 |
発明の名称 | 映像処理装置、テレビジョン受像機、映像処理方法、制御プログラム、および記録媒体 |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |