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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1347304
審判番号 不服2018-224  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-09 
確定日 2019-01-08 
事件の表示 特願2013- 31165「相分離構造を含む構造体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日出願公開、特開2014-160770、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成25年2月20日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成28年 8月22日付け:拒絶理由通知
平成28年10月31日 :意見書・手続補正書
平成29年 3月10日付け:拒絶理由通知(最初)
平成29年 5月19日 :意見書・手続補正書
平成29年10月 2日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年 1月 9日 :審判請求書

2 原査定の概要
原査定の理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1?2に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2013-28013号(以下「先願」という。特開2014-157929号公報参照。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願請求項1?2に係る発明をした者が先願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、本願の出願の時において、本願の出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

3 本願発明の認定
本願請求項1?2に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明2」という。)は、平成29年5月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「基板上に、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する表面処理剤を含む中性化膜を形成する工程と、
前記中性化膜の上に、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成し、露光し、現像して感光性樹脂パターンを形成する工程と、
前記感光性樹脂パターン上に、前記感光性樹脂パターン及び中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、
当該感光性樹脂パターン及び中性化膜上の、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させ、当該感光性樹脂パターン上及び中性化膜上に相分離構造を形成する工程と、
を有し、前記感光性樹脂パターンは、基板表面からの高さが22nm未満であることを特徴とする相分離構造を含む構造体の製造方法。」

なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。

4 先願明細書等の記載事項及び先願明細書等発明の認定
(1)先願(上記2)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されていると認められる(下線は、当審が付した。以下同じ。)。
ア 「次に、以上のように構成された基板処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。図9は、かかるウェハ処理の主な工程の例を示すフローチャートである。」(【0079】)、
「先ず、複数のウェハWを収納したカセットCが、基板処理システム1のカセットステーション10に搬入され、ウェハ搬送装置23によりカセットC内の各ウェハWが順次処理ステーション11の受け渡し装置53に搬送される。」(【0080】)、
「次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって熱処理装置40に搬送され、温度調節される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって反射防止膜形成装置32に搬送され、図10に示すようにウェハW上に反射防止膜400が形成される(図9の工程S1)。その後ウェハWは、熱処理装置40に搬送され、加熱され、温度調節される。」(【0081】)、
「次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって中性層形成装置33に搬送される。中性層形成装置33では、図10に示すようにウェハWの反射防止膜400上に中性剤が塗布されて、中性層401が形成される(図9の工程S2)。その後ウェハWは、熱処理装置40に搬送され、加熱され、温度調節され、その後受け渡し装置53に戻される。」(【0082】)、
「次にウェハWは、ウェハ搬送装置100によって受け渡し装置54に搬送される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によってアドヒージョン装置42に搬送され、アドヒージョン処理される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によってレジスト塗布装置34に搬送され、ウェハWの中性層401上にレジスト液が塗布されて、レジスト膜が形成される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって熱処理装置40に搬送されて、プリベーク処理される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって受け渡し装置55に搬送される。」(【0083】)、
「次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって周辺露光装置43に搬送され、周辺露光処理される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって受け渡し装置56に搬送される。次にウェハWは、ウェハ搬送装置100によって受け渡し装置52に搬送され、シャトル搬送装置80によって受け渡し装置62に搬送される。」(【0084】)、
「その後ウェハWは、インターフェイスステーション13のウェハ搬送装置110によって露光装置12に搬送され、露光処理される。」(【0085】)、
「次にウェハWは、ウェハ搬送装置110によって露光装置12から受け渡し装置60に搬送される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって熱処理装置40に搬送され、露光後ベーク処理される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって現像装置30に搬送され、現像される。現像終了後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって熱処理装置40に搬送され、ポストベーク処理される。こうして、図11に示すようにウェハWの中性層401上に所定のレジストパターン402が形成される(図9の工程S3)。本実施の形態では、レジストパターン402は、平面視において円形状のホール部402aが所定の配置で並んだパターンである。なお、ホール部402aの幅は、後述するようにホール部402aに親水性ポリマーと疎水性ポリマーが同心円状に配置されるように設定される。」(【0086】)、
「その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第4のブロックG4の受け渡し装置62に搬送される。そして、ウェハWはウェハ搬送装置100によって検査ユニット63に搬送され、ウェハWの検査が行われる。ここでは、例えばレジストパターン402の寸法の検査が行われる。検査ユニット63で検査結果は制御部300に入力される。」(【0087】)、
「次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によってブロック共重合体塗布装置35に搬送される。ブロック共重合体塗布装置35では、ミキサー190により所定量の溶剤が混合されたブロック共重合体がウェハWに供給され、図12に示すように、レジストパターン402のホール部402a内にブロック共重合体403が塗布される(図9の工程S4)。」(【0088】)、
「次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によってポリマー分離装置41に搬送され、熱板202に載置される。それ共に、ポリマー分離装置41の処理容器200内に処理ガスとしてブロック共重合体403の溶剤の蒸気が供給される。この際、制御部300により供給機器群223が制御され、処理容器200内の溶剤濃度が所定の値に設定される。なお、処理容器200内の溶剤濃度の設定値の決定方法については後述する。」(【0089】)、
「処理容器200内の溶剤濃度が所定の濃度に調整されると、次にポリマー分離装置41では、まず熱板202によりウェハWが熱処理される。この熱処理においては、例えば図13に示すパターンでウェハWが加熱される。図13の縦軸は熱板202の温度、横軸はウェハWの加熱時間である。図13に示すように、熱処理においては熱板202を第1の温度T1まで昇温し一定時間保持する。この第1の温度T1で加熱処理することで、ブロック共重合体403の親水性ポリマーと疎水性ポリマーを拡散させる。本実施の形態における第1の温度T1は、例えば350℃である。このように所定濃度の溶剤雰囲気内でウェハWを加熱処理することで、ウェハW上のブロック共重合体403からの溶剤の蒸発を抑えられる。換言すれば、ウェハWを溶剤雰囲気内で加熱処理することで、ウェハWのブロック共重合体403に含まれる当該ブロック共重合体の溶剤の濃度が所定の濃度に維持される。なお、本発明者らによれば、処理容器200内の溶剤はブロック共重合体403の表面から内部に徐々に浸透するため、処理容器200内の溶剤濃度や熱板202での加熱時間を調整することで、ブロック共重合体403に含まれる溶剤の濃度を調整することもできる。」(【0090】)、
「ウェハWが第1の温度T1で所定時間熱処理されると、図13に示すように熱板202が第1の温度T1より低い第2の温度T2に降温され、一定時間維持される。この第2の温度T2で所定の期間Y1の間加熱処理することで、図14及び図15に示すようにウェハW上のブロック共重合体403が親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405に相分離される(図9の工程S5)。ここで、上述したように、ブロック共重合体403において親水性ポリマー404の分子量の比率は20%?40%であり、疎水性ポリマー405の分子量の比率は80%?60%である。そうすると、工程S5において、図14及び図15に示すように、レジストパターン402のホール部402a内に、円柱形状の親水性ポリマー404と円筒形状の疎水性ポリマー405が同心円状に相分離される。なお、本実施の形態における第2の温度は、例えば170℃である。また、期間Y1の経過と共に処理容器200内への溶剤蒸気の供給を停止すると共に、処理容器200内を排気しながら非酸化性ガスとして窒素ガスが処理容器200内に供給される。」(【0091】)

イ 「なお、以上の実施の形態では、親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405を、同心円状に分離したパターンを例にして説明したが、本発明は様々な場面で適用が可能であり、例えば相分離後の親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405が直線状に交互に配列する、いわゆるラメラ構造である場合に、ブロック共重合体403の溶剤の濃度を調整することで、親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405のパターンの寸法を調整してもよい。ラメラ構造の場合は、ブロック共重合体403において、親水性ポリマー404の分子量の比率は40%?60%であり、疎水性ポリマー405の分子量の比率は60%?40%である。」(【0108】)、
「例えば、図18に示すように、ブロック共重合体403によりラメラ構造を形成する場合も、シリンダー状に相分離させる場合と同様に、レジストパターン402に沿って親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405が配列する。この際のレジストパターン402は、平面視において直線状のライン部と直線状のスペース部を有する、いわゆるラインアンドスペースのレジストパターンである。かかるラメラ構造のパターンにおいても、ピッチサイズP0はχパラメータの値に依存して変化する。そして、ブロック共重合体403をラメラ構造に相分離させる場合は、スペース部の幅は、当該スペース部に親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405が交互に奇数層に配置されるように設定される。」(【0109】)、
「しかしながら、何らかの不具合によりレジストパターン402のスペース部の幅が所望の値より小さくなり、例えば親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405が交互に3層に配置されるべきところが2層分のスペースとなってしまった場合は、スペース部に親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405が適正に配列しなくなる。その結果、所望のパターンを得ることができなくなる。かかる場合も、加熱処理の所定期間Y1終了時においてブロック共重合体403に含まれる溶剤の濃度を調整し、親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405によるパターンのピッチサイズP0を小さくすることで、レジストパターン402のスペース部に親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405を交互に3層配置させることができる。」(【0110】)

ウ 図18からは、【0108】の「相分離後の親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405が直線状に交互に配列する、いわゆるラメラ構造である場合」との記載を併せれば、相分離後のラメラ構造が、レジストパターン402上及び中性層401上に形成されることが見て取れる。


(2)上記(1)の各事項によれば、先願明細書等には、次の発明(以下「先願明細書等発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、先願明細書等発明の認定に使用した先願明細書等の段落番号等を、括弧内に付記してある。
「ウェハW上に反射防止膜400が形成され、ウェハWの反射防止膜400上に中性剤が塗布されて、中性層401が形成される工程と、(【0081】・【0082】)
ウェハWの中性層401上にレジスト液が塗布されて、レジスト膜が形成され、露光処理され、露光後ベーク処理され、現像され、ウェハW上の中性層401上に所定のレジストパターン402が形成される工程と、(【0083】・【0085】・【0086】)
ウェハWに、ブロック共重合体403が塗布される工程と、(【0088】)
ウェハW上のブロック共重合体403が親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405に相分離され、相分離後のラメラ構造が、レジストパターン402上及び中性層401上に形成される工程と、(【0091】・上記(1)ウ)
を有する、
相分離構造の製造方法。」

5 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と先願明細書等発明とを対比する。
(ア)本願発明1の「基板上に、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する表面処理剤を含む中性化膜を形成する工程」との特定事項について
a 先願明細書等発明の「ウェハW」は、本願発明1の「基板」に相当する。
b 先願明細書等発明の「『中性剤』を含む『中性層401』」は、本願発明1の「ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する表面処理剤を含む中性化膜」に相当する。
c よって、先願明細書等発明は、本願発明1の「基板上に、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する表面処理剤を含む中性化膜を形成する工程」との特定事項を備える。

(イ)本願発明1の「前記中性化膜の上に、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成し、露光し、現像して感光性樹脂パターンを形成する工程」との特定事項について
a 先願明細書等発明の「レジスト液」、「レジスト膜」及び「レジストパターン402」は、それぞれ、本願発明1の「感光性樹脂組成物」、「感光性樹脂膜」及び「感光性樹脂パターン」に相当する。
b よって、先願明細書等発明は、本願発明1の上記特定事項のうち、「前記中性化膜の上に、」「感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成し、露光し、現像して感光性樹脂パターンを形成する工程」を備える。
c しかし、先願明細書等発明は、「レジスト液」(本願発明1の「感光性樹脂組成物」に相当。)が「露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する」ことを、特定しない。

(ウ)本願発明1の「前記感光性樹脂パターン上に、前記感光性樹脂パターン及び中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程」との特定事項について
a 先願明細書等発明の「ブロック共重合体403」は、本願発明1の「複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマー」に相当する。
b 先願明細書等発明では、「相分離後のラメラ構造が、レジストパターン402上及び中性層401上に形成される」ところ、このことと上記aとを併せれば、先願明細書等発明が、本願発明1の「前記感光性樹脂パターン上に、前記感光性樹脂パターン及び中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程」との特定事項を備えることは、明らかである。

(エ)本願発明1の「当該感光性樹脂パターン及び中性化膜上の、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させ、当該感光性樹脂パターン上及び中性化膜上に相分離構造を形成する工程」との特定事項について
先願明細書等発明は、「ウェハW上のブロック共重合体403が親水性ポリマー404と疎水性ポリマー405に相分離され、相分離後のラメラ構造が、レジストパターン402上及び中性層401上に形成される」から、本願発明1の「当該感光性樹脂パターン及び中性化膜上の、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させ、当該感光性樹脂パターン上及び中性化膜上に相分離構造を形成する工程」との特定事項を備える。

(オ)本願発明1の「前記感光性樹脂パターンは、基板表面からの高さが22nm未満である」との特定事項について
先願明細書等発明は、「前記感光性樹脂パターンは、基板表面からの高さが22nm未満である」との特定事項を備えない。

(カ)本願発明1の「相分離構造を含む構造体の製造方法」との特定事項について
先願明細書等発明の「相分離構造の製造方法」は、本願発明1の「相分離構造を含む構造体の製造方法」に相当する。

イ 上記アによれば、本願発明1と先願明細書等発明とは、

「基板上に、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する表面処理剤を含む中性化膜を形成する工程と、
前記中性化膜の上に、感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成し、露光し、現像して感光性樹脂パターンを形成する工程と、
前記感光性樹脂パターン上に、前記感光性樹脂パターン及び中性化膜を被覆するように、複数種類のポリマーが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、
当該感光性樹脂パターン及び中性化膜上の、当該ブロックコポリマーを含む層を相分離させ、当該感光性樹脂パターン上及び中性化膜上に相分離構造を形成する工程と、
を有し、相分離構造を含む構造体の製造方法。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]「感光性樹脂組成物」について、本願発明1は、「露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する」ものであるのに対し、先願明細書等発明は、そのような特定を備えない点。

[相違点2]本願発明1は、「前記感光性樹脂パターンは、基板表面からの高さが22nm未満である」のに対し、先願明細書等発明は、そのような特定を備えない点。

相違点の判断
上記各相違点が実質的かどうかについて判断する。
(ア)相違点1について
先願明細書等発明の「レジスト膜」(本願発明1の「感光性樹脂組成膜」に相当。)は、露光処理された後、現像される前に、「露光後ベーク処理」がされるものである。そして、「露光後ベーク処理」される「レジスト膜」として、「露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する感光性樹脂組成物」を用いるものがあることは、例示するまでもなく技術常識であると認められる。
したがって、相違点1は、実質的なものではない。

(イ)相違点2について
a 先願明細書等は、「レジストパターン402」(本願発明1の「感光性樹脂パターン」に相当する。)の「基板表面からの高さが22nm未満」であることを何ら記載しない。加えて、先願明細書等発明を実施するに当たり、「レジストパターン402」の「基板表面からの高さ」を「22nm未満」とすることが技術常識であることを示す証拠がなく、さらにいえば、「22nm未満」という具体的数値のみならず、「レジストパターン402」の「基板表面からの高さ」に「上限値」を設けることでさえ、これが技術常識であることを示す証拠がない。
したがって、相違点2は、実質的であるというべきである。

b これに対し、原査定は、先願明細書等の図18において「レジストパターン402をブロック共重合体403で完全に被覆した上で相分離させている様子が認められる」ことから、「レジストパターン402の基板表面からの高さの上限を22nmと設定することの有無は、レジストパターン402をブロック共重合体403で完全に被覆するための具体化手段における微差にすぎない」旨判断する。
しかしながら、先願明細書等発明が「レジストパターン402をブロック共重合体403で完全に被覆」している状態であるとしても、その状態を実現するための具体的手段は、「レジストパターン402の基板表面からの高さ」に上限値を設けることに限られるものではなく、ブロック共重合体403の厚さを大きくすることもあり得るところであり、むしろ、後者の方が自然であるとも解される。そうすると、「レジストパターン402をブロック共重合体403で完全に被覆した上で相分離させている様子が認められる」ことは、上記aの判断を左右しない。

c なお、原査定は、本願発明2に対する判断において、ポストベーク処理を180℃以上で行うことが周知技術であることを立証するための周知例として特開昭60-210842号公報及び国際公開第2005/008337号を提示するが、これらの証拠をもって、上記aの判断が左右されることはない。

(ウ)小括
したがって、本願発明1は、先願明細書等発明と同一とはいえない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を減縮したものであるから、上記(1)と同様の理由で、先願明細書等発明と同一とはいえない。

6 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-18 
出願番号 特願2013-31165(P2013-31165)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 赤尾 隼人  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 野村 伸雄
山村 浩
発明の名称 相分離構造を含む構造体の製造方法  
代理人 松本 将尚  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 飯田 雅人  
代理人 宮本 龍  

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