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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E04F
管理番号 1347336
審判番号 不服2018-3260  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-06 
確定日 2019-01-08 
事件の表示 特願2013-264537「構造物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日出願公開、特開2015-121027、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年12月20日の出願であって、平成29年7月4日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成29年8月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年12月22日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成30年3月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要

原査定(平成29年12月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)本願請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2011-220586号公報
2.特開2002-155635号公報
3.特開2012-63049号公報

第3 審判請求時の補正について

(1)補正事項

審判請求時の補正は以下のとおりである。(下線は補正事項を示す。)

補正前の請求項1に、「前記上層に第一電子機器が設置可能とされ、前記下層が通風空間として利用可能な第一エリアと、前記上層と前記下層とをそれぞれ二重床とし、第二電子機器が設置可能な第二エリアと、」とあるのを、「前記上層に第一電子機器が設置され、前記下層を通風空間として利用し、前記第一電子機器を冷却する第一エリアと、前記上層と前記下層とをそれぞれ二重床とし、前記第一電子機器よりも発熱量が小さい第二電子機器が前記上層及び前記下層に設置され、前記第一エリアよりも低い冷却能力で前記第二電子機器を冷却する第二エリアと、」と補正する。

(2)補正の適否

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第一エリア」及び「第二エリア」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、本件出願の出願当初の明細書に「【0008】・・・下層が通風空間として利用可能な第一エリアの上層は高い冷却能力を有するので、発熱量の多い第一電子機器を設置することができる。一方、上層と下層とをそれぞれ二重床とした第二エリアは、第一エリアよりも冷却能力は低いが上層と下層とにそれぞれ発熱量の少ない第二電子機器を設置することができる。・・・」などと記載されていることから、新規事項を追加するものではない。

そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

(3)まとめ

補正事項は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件を違反しているものとはいえない。

第4 本願発明

本願請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」といい、全体を「本願発明」という。)は、平成30年3月6日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
上下二層で構成された電子機器設置ルームの上層と下層とを、それぞれパネルで左右に仕切ることで、
前記上層に第一電子機器が設置され、前記下層を通風空間として利用し、前記第一電子機器を冷却する第一エリアと、
前記上層と前記下層とをそれぞれ二重床とし、前記第一電子機器よりも発熱量が小さい第二電子機器が前記上層及び前記下層に設置され、前記第一エリアよりも低い冷却能力で前記第二電子機器を冷却する第二エリアと、
が横方向に並んで形成されている、構造物。
【請求項2】
前記パネルは、移設可能に構成され、
前記パネルを移設することで、前記第一エリア及び前記第二エリアが占める領域が変更可能となっている、
請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
前記電子機器設置ルームの前記上層と前記下層との間は、前記第一電子機器及び前記第二電子機器の荷重を支持することが可能な支持部材で構成され、
前記第一エリアでは、通風機能を有する第一床材が前記支持部材に支持され、
前記第二エリアでは、断熱機能を有する第二床材が前記支持部材に支持され、前記第二床材によって前記上層と前記下層との間が仕切られている、
請求項1又は請求項2に記載の構造物。」

第5 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は審決で付与した。以下同様。)

「【0001】 本発明はデータセンターや電算センターにおける空調システム、特に多数のサーバをサーバラックに収容して設置するサーバ室を対象とする空調システムに関する。」

「【0013】 図1?図2に本発明の実施形態である空調システムの概要を示す。 これは、多数のサーバをサーバラック1に収容して設置するサーバ室2を対象とするもので、図2に示すようにサーバ室2全体を通風可能なグレーチング5により上下に区画して上層のサーバフロア3と下層のメカニカルフロア4とによる二層構造とし、サーバフロア3に多数のサーバラック1を並べて設置するとともに、メカニカルフロア4に所望台数のユニット型空調機6を分散設置し、それらユニット型空調機6により調製した冷気をメカニカルフロア4とサーバフロア3の間で強制循環させてサーバラック1を冷却することを主眼とする。」

したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「通風可能なグレーチングにより上下に区画されて、上層と下層で構成されたサーバ室が形成されたデータセンターであって、上層のサーバフロアにサーバを収容したサーバラックを設置し、下層のメカニカルフロアの空調機器により調製した冷気でサーバラックを冷却するサーバ室が形成されたデータセンター。」

2 引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0004】しかして、現状は図8、9に示される如くデータセンタ用に振り分けられた建物内の一室のフロア1上にOAフロア脚2、…を介してOAフロアパネル3、…を持ち上げ支持して空調気流4の通路並びにケーブル配線用空間を確保し、該OAフロアパネル3上に載置のサーバ本体5の側辺より排熱気流を立ち上げるとしている。」

図8は次のものである。


図9は次のものである。


そして、段落【0004】の記載事項、及び、図8、9の図示内容から、OAフロアパネルとサーバ本体が設けられたデータセンタ用の室が上下二層に形成された建物が記載されていると認められる。

したがって、上記引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「OAフロアパネルとサーバ本体が設けられたデータセンタ用の室が上下二層に形成された建物であって、前記データセンタ用の室は、上層と下層それぞれのOAフロアパネル上にサーバ本体が載置され、空調気流でサーバ本体を冷却する室である、建物。」

3 引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0019】 図1?3に示すように、データセンター1の外壁10の内部には、空調室11が設けられている。なお説明のため、図1では天井26を省略して示している。空調室11の床12の上には、ICT機器を収納するラック13が置かれている。なお、床12の下方は、フリーアクセスフロア空間14となっている。図示の例では、空調室11の床12の上に2台のラック13が置かれている。ラック13に収納されているICT機器は、コンピュータ、サーバ、HUBなどの発熱を伴う機器であり、冷却することが要求される。」

図1は次のものである。


図2は次のものである。


図3は次のものである。


そして、段落【0019】の記載事項、及び、図1ないし3の図示内容から、フリーアクセスフロア上にICT機器を収納するラック13が置かれたデータセンター1の内部(一部)を、空調室11として仕切る構成が記載されていると認められる。

したがって、上記引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「フリーアクセスフロア上にICT機器を収納するラックが置かれたデータセンターの一部を、空調室として仕切ったデータセンター。」

第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「サーバ室」、「サーバ」、「メカニカルフロア」、「データセンター」 は、それぞれ本願発明1の「電子機器設置ルーム、第一エリア」 、「第一電子機器」 、「通風空間」 、「構造物」 に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
上下二層で構成された電子機器設置ルームの前記上層に第一電子機器が設置され、前記下層を通風空間として利用し、前記第一電子機器を冷却する第一エリアが形成されている、構造物。

(相違点)
本願発明1では、上下二層で構成された電子機器設置ルームの上層と下層とを、それぞれパネルで左右に仕切ることで、前記上層と前記下層とをそれぞれ二重床とし、前記第一電子機器よりも発熱量が小さい第二電子機器が前記上層及び前記下層に設置され、上記第一エリアよりも低い冷却能力で前記第二電子機器を冷却する第二エリアが、前記第一エリアと横方向に並んで形成されているのに対して、引用発明1はそのような特定を有していない点。

(2) 相違点についての判断
本願発明1は、「発熱量が異なる電子機器を効率的に設置することが可能な構造物を提供すること」(段落【0006】)を目的とするものであって、「電子機器設置ルームの上層と下層とがパネルで仕切られることで、第一エリアと第二エリアとが形成される。よって、パネルを設置する位置を変更することで、電子機器設置ルームにおける第一電子機器を設置する第一エリアが占める領域の大きさと第二電子機器を設置する第二エリアが占める領域の大きさとを任意に設定することがきる。したがって、発熱量が異なる電子機器を効率的に設置することができる。」(段落【0011】)といった作用効果を奏するものである。

これに対して、引用文献1には第一エリアの構成、引用文献2には第二エリアの構成が開示されているものの、それぞれ、単独のエリア構成が開示されているにすぎず、それらをパネルで仕切ることで横方向に並んで形成するとの記載も示唆もない。

隣り合うエリアをパネル(間仕切)により仕切ることは周知技術であると認められるが、引用発明1の上層のサーバフロアと下層のメカニカルフロアとからなるサーバ室の横に、構造の異なる引用発明2の上層と下層それぞれのOAフロアパネル上にサーバ本体が載置された室を設けることは動機付けがなく、当業者にとって想到容易とはいえない。

また、引用文献3には、データセンターの一部を空調室として仕切った構成が開示されているが、本願発明1の第一エリアの下層と第二エリアの下層とをパネルで仕切る構成が開示されているものではなく、第一エリアの上層と第二エリアの上層をパネルで仕切る構成が開示されているものでもない。

よって、引用発明1、2、3を組み合わせ、パネルで仕切ることで第一エリアと第二エリアとを横方向に並んで形成し、本願発明1の相違点に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たということができない。

したがって、本願発明1は、引用文献1、2、3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2、3について

本願発明2、3は、本願発明1の構成をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1、2、3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1ないし3は、「前記第一電子機器よりも発熱量が小さい第二電子機器が前記上層及び前記下層に設置され、前記第一エリアよりも低い冷却能力で前記第二電子機器を冷却する第二エリアと、が横方向に並んで形成されている、構造物。」という事項を有するものとなっており、当業者であっても上記第6で説示したように、拒絶理由において引用された引用文献1、2、3に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-11 
出願番号 特願2013-264537(P2013-264537)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E04F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 五十幡 直子  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 前川 慎喜
井上 博之
発明の名称 構造物  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
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