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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47L |
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管理番号 | 1347390 |
審判番号 | 不服2017-11710 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-04 |
確定日 | 2018-12-27 |
事件の表示 | 特願2014- 34904「電気掃除機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 7日出願公開、特開2015-159841〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成26年2月26日の出願であって、平成29年6月29日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成29年7月4日)、これに対し、平成29年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、平成29年11月30日付で上申書が提出され、当審により平成30年7月13日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年7月17日)、これに対し、平成30年8月15日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2.特許請求の範囲及び明細書 平成30年8月15日付手続補正で、特許請求の範囲、明細書は以下のように補正された。 「【請求項1】 吸込口体と、前記吸込口体に連結される掃除機本体と、前記掃除機本体の上部に設けられたハンドルと、を備え、前記掃除機本体から小型掃除機を分離可能な電気掃除機において、 前記掃除機本体に内蔵されたファンモータと、 前記掃除機本体に着脱自在に配置された第1の蓄電池と、 前記掃除機本体又は前記ハンドルの内部に着脱自在に配置された第2の蓄電池と、を備え、 前記ファンモータと前記第1の蓄電池とを含む部位は、前記小型掃除機として着脱自在に構成され、 前記小型掃除機を前記掃除機本体から取り外した状態では、前記第1の蓄電池を用いて前記ファンモータが駆動され、前記小型掃除機を前記掃除機本体に装着した状態では、前記第1の蓄電池又は前記第2の蓄電池を用いて前記ファンモータが駆動され、 前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池とは、相互に交換可能に構成され、 前記小型掃除機を前記掃除機本体に装着した状態で前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池を充電する充電手段を更に備え、 前記充電手段は、前記第2の蓄電池よりも使用頻度の高い前記第1の蓄電池を優先的に充電し、当該第1の蓄電池の電圧値が充電の完了を示す値となった場合に前記第2の蓄電池の充電を実行する電気掃除機。 【請求項2】 前記第2の蓄電池は、前記第1の蓄電池よりも電流容量が大きい請求項1に記載の電気掃除機。 【請求項3】 前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池の電圧をそれぞれ測定する測定手段と、 前記ファンモータと前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池との間の接続回路を切り替える切替手段と、を更に備え、 前記小型掃除機を前記掃除機本体に装着した状態では、前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池のうち電圧の高い一方が前記ファンモータと接続され、前記第1の蓄電池と前記第2の蓄電池の電圧が等しくなった時点で前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池の両方が並列接続によって前記ファンモータと接続される請求項1又は2に記載の電気掃除機。 【請求項4】 前記ファンモータと前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池との間の接続回路を切り替える切替手段と、を更に備え、 前記小型掃除機を前記掃除機本体に装着した状態では、前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池の両方が直列接続によって前記ファンモータと接続される請求項1又は2に記載の電気掃除機。 【請求項5】 前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池の容量をそれぞれ表示する表示手段を更に備える請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電気掃除機。」 「この発明に係る電気掃除機は、吸込口体と、吸込口体に連結される掃除機本体と、掃除機本体の上部に設けられたハンドルと、を備え、掃除機本体から小型掃除機を分離可能な電気掃除機において、掃除機本体に内蔵されたファンモータと、掃除機本体に着脱自在に配置された第1の蓄電池と、掃除機本体又はハンドルの内部に着脱自在に配置された第2の蓄電池と、を備え、ファンモータと第1の蓄電池とを含む部位は、小型掃除機として着脱自在に構成され、小型掃除機を掃除機本体から取り外した状態では、第1の蓄電池を用いてファンモータが駆動され、小型掃除機を掃除機本体に装着した状態では、第1の蓄電池又は第2の蓄電池を用いてファンモータが駆動され、第1の蓄電池と第2の蓄電池とは、相互に交換可能に構成され、小型掃除機を掃除機本体に装着した状態で第1の蓄電池及び第2の蓄電池を充電する充電手段を更に備え、充電手段は、第2の蓄電池よりも使用頻度の高い第1の蓄電池を優先的に充電し、当該第1の蓄電池の電圧値が充電の完了を示す値となった場合に第2の蓄電池の充電を実行するものである。」(【0006】) 3.当審の拒絶の理由 平成30年7月13日付の当審の拒絶の理由は以下のとおりである。 「この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項1に「前記ファンモータと前記第1の蓄電池とを含む部位は、前記小型掃除機として着脱自在に構成され」とあるから、小型掃除機は掃除機本体から取り外して用いることができることとなり、明細書【0013】に「小型掃除機支持部3の内部であって小型掃除機5の外部には、制御部9が配設されている。制御部9は、第1の蓄電池7及び第2の蓄電池8とファンモータ6との接続状態を制御する。」とあるから、小型掃除機の内部には制御部は無く、且つ制御部は電池とモータの接続状態を制御することとなる。図3に制御部と電池とモータの回路が示されているが、小型掃除機を掃除機本体から取り外すと小型掃除機と制御部の回路も切断され、第1の蓄電池はモータと接続されなくなるが、何故小型掃除機は駆動が可能であるのか不明である。 (2)更に、請求項1に「前記小型掃除機を前記掃除機本体に装着した状態では、前記第1の蓄電池又は前記第2の蓄電池を用いて前記ファンモータが駆動され」とあり、請求項4に「前記小型掃除機を前記掃除機本体に装着した状態では、前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池の両方が直列接続によって前記ファンモータと接続される」とあり、明細書【0015】に「ファンモータ6に第1の蓄電池7及び第2の蓄電池が直列に接続された回路」とあるから、第1及び第2の蓄電池はモータと直列接続できることとなる。図3に制御部と電池とモータの回路が示されているが、第1及び第2の蓄電池のマイナス極同士が接続されているから、どの様にすれば第1及び第2の蓄電池はモータと直列接続できるのか不明である。 (3)更に、請求項1に「前記充電手段は、前記第2の蓄電池よりも使用頻度の高い前記第1の蓄電池の充電を先立って実行し、当該第1の蓄電池の充電が完了した後に前記第2の蓄電池の充電を実行する」とあるから、充電順序は第1の蓄電池、第2の蓄電池の順になり、明細書【0015】に電気掃除機の回路について「制御部9は、第1の電圧測定部91及び第2の電圧測定部92の測定値に基づいて上記4つの回路の中から適した回路を選択し、スイッチング部93を操作する。」とあるから、制御部は蓄電池の電圧に基づいて回路を選択してモータを駆動することとなる。図4にスイッチング部が第1の蓄電池側に接続された回路が示されているが、制御部の上記記載より判断すると、充電直前にスイッチング部が第2の蓄電池側に接続される場合が考えられ、第1の蓄電池を先に充電するためには、制御部が充電装置の出力端子が入力端子に接続されたときにスイッチング部を第1の蓄電池側に接続しなければならないが、制御部が充電装置が接続されたことを検出する能力を有することは明細書に記載されておらず、何故スイッチング部を第1の蓄電池側に接続できるのか不明である。 また、明細書【0035】に「そして、第1の電圧測定部91により測定された第1の蓄電池7の電圧値が充電の完了を示す値となった場合に、制御部9は第2の蓄電池8が充電されるようにスイッチング部93を操作する。」とあるが、充電開始時に第1の蓄電池の電圧値が充電の完了を示す値の場合でも、使用頻度の高い第1の蓄電池の充電を先立って実行するのか否か不明であり、仮に第1の蓄電池を充電するのであれば、充電完了状態であるにもかかわらず何故充電をするのか不明であり、仮に第1の蓄電池の充電を行わずに第2の蓄電池を充電するのであれば、制御部が充電装置が接続された場合に第1の蓄電池が充電完了のときに第2の蓄電池のみを充電する能力を有することは明細書に記載されていないから、何故第2の蓄電池のみを充電できるのか不明である。」 4.拒絶の理由に対する当審の判断 (1)請求項1に、「前記ファンモータと前記第1の蓄電池とを含む部位は、前記小型掃除機として着脱自在に構成され」とあるから、小型掃除機は掃除機本体から取り外して用いることができることとなり、明細書【0013】に「小型掃除機支持部3の内部であって小型掃除機5の外部には、制御部9が配設されている。制御部9は、第1の蓄電池7及び第2の蓄電池8とファンモータ6との接続状態を制御する。」とあるから、小型掃除機の内部には制御部は無く、且つ制御部は蓄電池とモータの接続状態を制御することとなる。図3、4に制御部と蓄電池とモータの回路が示されているが、小型掃除機を掃除機本体から取り外すと小型掃除機と外部の制御部の回路が切断され、制御部は接続状態を制御できず、第1の蓄電池はモータと接続されなくなるが、何故小型掃除機は駆動が可能であるのか不明である。 なお、請求人は、平成30年8月15日付意見書「3.」において、「出願当初の明細書の段落[0017]及び[0018]には、「・・・使用者は小型掃除機5を小型掃除機支持部3から取り外して小型掃除機5に設けられた操作部12bを押圧しファンモータ6を駆動させる。これにより、使用者は小型掃除機5をハンディタイプの電気掃除機として使用することができる。・・・コードレス掃除機1から小型掃除機5を取り外してハンディタイプとして使用する場合には、ファンモータ6への電力供給源は小型掃除機5に内蔵された第1の蓄電池7から得ることができる。」と記載されています。この構成の具体的な実施態様は本願の出願時において既に種々の文献において開示されており、この当時の技術常識に属するものです。具体的には、例えば、特開2007-75319号公報には、掃除機本体6に第1の蓄電池8が装備され、床用吸込み具7に第2の蓄電池9が装備された電気掃除機が開示されています。そして、この電気掃除機では、床用吸込み具7を掃除機本体6に接続している場合には、掃除機本体6は第1の蓄電池8と第2の蓄電池9から出力を得て電動送風機を動作し、掃除機本体6と床用吸込み具7の接続を外すことによって、掃除機本体6は第1の蓄電池8のみを駆動源として動作することが開示されています。」と主張しているが、当該技術が技術常識であったとしても、当該技術常識をどの様に図3、4に示される回路に適用するのか本願に記載も示唆も無く、しかも、特開2007-75319号公報には、掃除機本体6、床用吸込み具7(小型掃除機)の構造が示されるのみで、電気回路が何ら示されていないから、本願の図3、4に示される回路にどの様な技術常識を適用して小型掃除機単体を動作させることができるのか依然として不明であり、請求人の上記主張は採用できない。 (2)請求項1に「前記小型掃除機を前記掃除機本体に装着した状態では、前記第1の蓄電池又は前記第2の蓄電池を用いて前記ファンモータが駆動され」とあり、請求項4に「前記小型掃除機を前記掃除機本体に装着した状態では、前記第1の蓄電池及び前記第2の蓄電池の両方が直列接続によって前記ファンモータと接続される」とあり、明細書【0015】に「スイッチング部93は、ファンモータ6と第1の蓄電池7及び第2の蓄電池8との間の接続回路を切り替えることにより、ファンモータ6に第1の蓄電池7が接続された回路、ファンモータ6に第2の蓄電池8が接続された回路、ファンモータ6に第1の蓄電池7及び第2の蓄電池が直列に接続された回路、及びファンモータ6に第1の蓄電池7及び第2の蓄電池が並列に接続された回路を形成可能に構成されている。」とあるから、スイッチング部93の切替により、第1及び第2の蓄電池はモータと直列接続できることとなる。しかし、図3、4に制御部と蓄電池とモータの回路が示されてはいるが、第1及び第2の蓄電池のマイナス極同士が接続されており、第1及び第2の蓄電池をモータと直列接続するためには一方の蓄電池の+極と他方の蓄電池の-極を接続しなければならず、どの様にスイッチング部93を切り替えれば第1及び第2の蓄電池はモータと直列接続できるのか不明である。 なお、請求人は、平成30年8月15日付意見書「3.」において、「出願当初の明細書の段落[0015]には、「・・・スイッチング部93は、ファンモータ6と第1の蓄電池7及び第2の蓄電池8との間の接続回路を切り替えることにより、ファンモータ6に第1の蓄電池7が接続された回路、ファンモータ6に第2の蓄電池8が接続された回路、ファンモータ6に第1の蓄電池7及び第2の蓄電池が直列に接続された回路、及びファンモータ6に第1の蓄電池7及び第2の蓄電池が並列に接続された回路を形成可能に構成されている。制御部9は、第1の電圧測定部91及び第2の電圧測定部92の測定値に基づいて上記4つの回路の中から適した回路を選択し、スイッチング部93を操作する。」と記載されています。第1の蓄電池7と第2の蓄電池8の接続状態を並列接続と直列接続との間で切り替えるための詳細な回路構成は、図3に記載の回路よりも複雑ですが、このような回路は本願の出願時において種々の文献において既に開示されています。例えば、特開2005-131224号公報には、主電池と補助電池を有する電気掃除機において、主電池と補助電池を直列に接続して使用することと並列に接続して使用することが可能な回路構成が開示されています。また、特開2007-89895号公報には、スティック型電気掃除機において、掃除機内部の電池9とスティックの内部の電池12との接続関係を直列接続と並列接続とで選択的に切り替えることが可能な技術が開示されています。このように、複数の蓄電池の接続回路を直列接続と並列接続との間で切り替える技術は、本願の出願時において種々の文献において既に開示されており、この当時の技術常識に属するものです。」と主張しているが、当該技術が技術常識であったとしても、当該技術常識を適用することは本願に記載も示唆も無く、しかも、特開2005-131224号公報には、主電池と補助電池を有する電気掃除機において、主電池と補助電池の直列接続と並列接続をスイッチング部で切り替えて使用することについては何等記載されておらず、又、特開2007-89895号公報には、掃除機内部の電池9とスティックの内部の電池12との接続関係を直列接続と並列接続とで選択的に切り替えることが可能なことが示されるのみで、電気回路が何ら示されていないから、本願の図3、4にどの様な技術常識を適用して第1及び第2の蓄電池をモータと直列接続できるのか依然として不明であるから、請求人の上記主張は採用できない。 (3)請求項1に「前記充電手段は、前記第2の蓄電池よりも使用頻度の高い前記第1の蓄電池を優先的に充電し」とあるから、充電順序は第1の蓄電池、第2の蓄電池の順になり、明細書【0015】に電気掃除機の回路について「制御部9は、第1の電圧測定部91及び第2の電圧測定部92の測定値に基づいて上記4つの回路の中から適した回路を選択し、スイッチング部93を操作する。」とあるから、制御部は蓄電池の電圧に基づいて4つの回路を選択してモータを駆動することとなる。図4にスイッチング部が第1の蓄電池側に接続された回路が示されているが、制御部の上記記載より判断すると、充電直前にスイッチング部が第2の蓄電池側に接続されている場合が考えられ、第1の蓄電池を先に充電するためには、制御部が充電装置の出力端子が入力端子に接続されたときにスイッチング部を第1の蓄電池側のみに接続しなければならないが、制御部が充電装置が接続されたことを検出する能力を有することは明細書に記載されておらず、何故スイッチング部を第1の蓄電池側のみに接続できるのか不明である。 なお、請求人は、平成30年8月15日付意見書「3.」において、「確かに、本願の明細書には、制御部が充電装置に接続されたことを検出する構成を備えることについての明確な言及がありません。しかしながら、蓄電池を充電する充電装置を備えた電気掃除機においては、制御部が充電装置に接続されたことを検出する機能を備えることは技術常識とも云える必須事項であり、当業者にとって自明な設計事項に該当します。例えば、特開2005-131224号公報には、このような検出手段を備える電気掃除機の例として、掃除機本体を充電台から外すことでONするスイッチSW1を備える電気掃除機の構成が開示されています。」と主張しているが、当該技術が技術常識であったとしても、当該技術常識を適用することは本願に記載も示唆も無く、しかも、特開2005-131224号公報には、回路がどの様な接続状態であっても第2の蓄電池よりも使用頻度の高い小型掃除機に配置される第1の蓄電池を優先的に充電することは何等記載されていないから、請求人の上記主張は採用できない。 (4)したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 5.むすび したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-10-22 |
結審通知日 | 2018-10-23 |
審決日 | 2018-11-12 |
出願番号 | 特願2014-34904(P2014-34904) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(A47L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 栗山 卓也 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
長馬 望 堀川 一郎 |
発明の名称 | 電気掃除機 |
代理人 | 小泉 康男 |
代理人 | 高橋 英樹 |
代理人 | 高田 守 |
代理人 | 小泉 康男 |
代理人 | 高田 守 |
代理人 | 高橋 英樹 |